JP5277682B2 - セメント系組成体の表面処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、セメント系組成体の表面処理方法に関し、特に、セメント系組成体の表面に表面処理液を塗布して該表面を処理するセメント系組成体の表面処理方法に関する。
建築物には、コンクリート打放し仕上げがなされたものがある。このコンクリート打放し仕上げの美観を保つために、コンクリートの表面に表面処理液を塗布することで、コンクリート表面を処理することが行われている。
表面処理液としては、例えば、浸透性を有する吸水防止材(以下、「浸透性吸水防止材」という)がある。この浸透性吸水防止材をコンクリート表面に塗布すると、浸透性吸水防止材はコンクリート表面に浸透して、コンクリートの表面からの吸水を防止する。このとき、浸透性吸水防止材は、コンクリート表面に皮膜を形成することがないので、コンクリートの質感が損なわれることがない。このため、浸透性吸水防止材は、コンクリート打放し仕上げの美観を保つために、多用されている。
また、表面処理液には、コンクリートの劣化を抑止するための結晶増殖剤もある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の結晶増殖剤は、水ガラス(Na2O・2SiO2)や珪弗化マグネシウム(MgSiF6)を成分として含んでいる。
上記珪弗化マグネシウムは、コンクリートに含まれる水酸化カルシウム(Ca(OH)2)と反応して、不溶性の弗化カルシウム(CaF2)を生成する。つまり、珪弗化マグネシウムは、上記結晶増殖剤において、コンクリートの劣化の原因となる水酸化カルシウムを減らす成分である。
また、上記水ガラスは、水の存在下において、コンクリートに含まれる水酸化カルシウムと反応して、セメント硬化体組織と同一の無機質結晶(3CaO・2SiO2・3H2O)を生成する(結晶増殖)。このようにして生成された無機質結晶は、コンクリートの劣化部分を修復する。つまり、水ガラスは、上記結晶増殖剤において、コンクリートの劣化の原因となる水酸化カルシウムを減らす成分であるとともに、コンクリートの劣化部分を修復する成分である。
したがって、上記結晶増殖剤は、上述したような成分を含むため、水酸化カルシウムに起因したコンクリートの劣化を抑止することができるだけでなく、コンクリートの劣化部分に誘発される凍害も抑止することができる。
特許第2521274号公報
しかしながら、上記浸透性吸水防止材を塗布したコンクリートや上記結晶増殖剤を塗布したコンクリートにおいて、凍結やその融解が繰り返されると、そのコンクリートの表面にスケーリング(表層部分の剥離)が生じることがある。すなわち、上記浸透性吸水防止材や上記結晶増殖剤では、コンクリートの凍害を抑止する効果が十分ではなかった。また、結晶増殖剤に含まれる水ガラスは、耐水性が乏しく、水酸化カルシウムとの反応が不十分な状態で水がかかると容易に溶出してしまうという問題がある。
本発明の目的は、凍害抑止効果を高めることができるセメント系組成体の表面処理方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明のセメント系組成体の表面処理方法は、セメント系組成体の表面に、珪弗化水素酸金属塩の水溶液を塗布し、乾燥後に、前記セメント系組成体の表面に、浸透性を有する吸水防止材を塗布することを特徴とする。
この表面処理方法によれば、セメント系組成体の凍害抑止効果を高めることができる。また、吸水防止材を用いているので、セメント系組成体の表面からの吸水や透水などを抑制して、セメント系組成体の耐久性を高めることができる。これらにより、セメント系組成体の美観を長い期間に亘って保つことができる。
上記珪弗化水素酸金属塩を塗布すると、この珪弗化水素酸金属塩は、表面が中性化していない前記セメント系組成体の表層部分に含まれる水酸化カルシウムと、下記式(1)で反応する。
2Ca(OH)2+XSiF6
→SiO2+XF2+2CaF2+2H2O …(1)
但し、前記式(1)において、Xは、前記珪弗化水素酸金属塩を構成する金属である。
また、上記珪弗化水素酸金属塩は、表面が中性化している前記セメント系組成体の表層部分に含まれる炭酸カルシウムと、下記式(2)で反応する。
2CaCO3+MSiF6
→SiO2+MF2+2CaF2+2CO2 …(2)
但し、前記式(2)において、Mは、前記珪弗化水素酸金属塩を構成する金属である。
上述したように、珪弗化水素酸金属塩は、セメント系組成体の表層部分に含まれるカルシウム成分と反応して、弗化カルシウムなどを生成する。このように生成した弗化カルシウムなどは、セメント系組成体の表層部分の緻密性を高めて、セメント系組成体の強度を高めることもできる。これによっても、セメント系組成体の美観を長い期間に亘って保つことができる。また、この表面処理方法によれば、水ガラスを用いる必要がないので、セメント系組成体の耐水性が損なわれることがない。
本発明のセメント系組成体の表面処理方法によれば、凍害抑止効果を高めることができる。また、セメント系組成体の強度や耐久性も高めることができる。これらによって、セメント系組成体の美観を長い期間に亘って保つことができる。
本発明者らは、上記目的を達成すべく、セメント系組成体の表面処理方法について鋭意研究を行った結果、セメント系組成体の表面に、珪弗化水素酸金属塩の水溶液を塗布し、乾燥後に、そのセメント系組成体の表面に、浸透性を有する吸水防止材を塗布すると、凍害抑止効果を高めることができるのを見出した。一方で、セメント系組成体の表面に、珪弗化水素酸金属塩の水溶液のみを塗布したものや、セメント系組成体の表面に、浸透性を有する吸水防止材のみを塗布したものでは、凍害抑止効果を十分に高めることができないことを見出した。
本発明は、上記研究の結果に基づいてなされたものである。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るセメント系組成体の表面処理方法による表面処理手順を示すフローチャート(工程図)である。
まず、ステップS10では、凍害を抑止したいセメント系組成体の表面に、珪弗化水素酸金属塩の水溶液を塗布して、乾燥させる(ステップS20)。
珪弗化水素酸金属塩としては、例えば、珪弗化マグネシウム、珪弗化亜鉛、及び珪弗化鉄(II)から成る群から選択された1種以上の珪弗化水素酸金属塩(単体又は混合物)を用いることができる。珪弗化水素酸金属塩を含む表面処理液としては、市販されているリトリン(Lithurin)がある。このリトリンは、珪弗化水素酸金属塩の他に、潤滑剤などを含んだ白色粉末であり、水溶性がある。なお、リトリンは、一般的には、コンクリートの床面を強化するための床面強化剤(ハードナー)として用いられている。
ここで塗布された珪弗化水素酸金属塩の水溶液は、セメント系組成体の表面から浸透し、セメント系組成体の表層部分のカルシウム成分と反応する。このカルシウム成分は、セメント系組成体の表面が中性化している場合と、中性化していない場合とで異なる。
まず、セメント系組成体の表面が中性化している場合について説明する。この場合、セメント系組成体の表層部分には、炭酸カルシウム(CaCO3)が含まれている。そして、この炭酸カルシウムは、上記珪弗化水素酸金属塩の水溶液と、下記式(1)に従って反応する。
2CaCO3+XSiF6
→SiO2+XF2+2CaF2+2CO2 …(1)
但し、上記式(1)において、珪弗化水素酸金属塩を構成する金属Xは、Mg、Zn、又はFeである。
他方、セメント系組成体の表面が完全に中性化していない場合について説明する。この場合、セメント系組成体の表層部分には、アルカリ性のカルシウム成分、つまり、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)が含まれている。そして、この水酸化カルシウムは、上記珪弗化水素酸金属塩の水溶液と、下記式(2)に従って反応する。
2Ca(OH)2+MSiF6
→SiO2+MF2+2CaF2+2H2O …(2)
但し、上記式(2)において、珪弗化水素酸金属塩を構成する金属Mは、Mg、Zn、又はFeである。
実際には、セメント系組成体の表層部分には、炭酸カルシウムも水酸化カルシウムも含まれている場合が多い。このため、上記式(1),(2)に示した化学反応は、同時に起こり得る。同時に起こる場合、上記金属Xと上記金属Mは同じであってもよいし、異なってもよい。
上記式(1),(2)から分かるように、生成物には、弗化カルシウム(CaF2)や、金属X,Mの弗化物が含まれていることが分かる。これらの生成物は、セメント系組成体の表層部分の内部や表面に、結晶として析出するため、セメント系組成体の緻密性を高める。また、このとき析出する結晶は、セメント系組成体の表面に皮膜を形成しない。
続いて、表層部分の緻密性を高めたセメント系組成体の表面に、吸水防止材を塗布し(ステップS30)、その後、乾燥させる(ステップS40)。
吸水防止材としては、浸透性を有するもの(以下、「浸透性吸水防止材」という)を用いる。浸透性吸水防止材としては、市販されているデックガードP20(Dekguard P20)などのシラン系の撥水剤がある。デックガードP20は、主成分(吸水防止成分)であるシロキサンを溶媒に溶かした液体である。
ここで塗布された浸透性吸水防止材は、セメント系組成体の表面から浸透し、その後、乾燥時に、溶媒が蒸発する。これにより、浸透性吸水防止材の吸水防止成分がセメント系組成体の表層部分に残存する。ここで、吸水防止材として、浸透性を有するものを用いることで、セメント系組成体の表面に皮膜が形成されることを防止することができる。
なお、図1の処理において、珪弗化水素酸金属塩の水溶液の塗布及び乾燥(ステップS10〜S20)を、繰り返し行ってもよい。また、浸透性吸水防止材の塗布及び乾燥(ステップS30〜S40)も、繰り返し行ってもよい。
図1を用いて説明したような表面処理をセメント系組成体に施すことにより、セメント系組成体の凍害抑止効果を高めることができる。具体的には、セメント系組成体の表層部分が凍害を受けることによる、セメント系組成体のスケーリング(表層部分の剥離)を生じにくくすることができる。特に、本実施の形態によって得られたセメント系組成体は、凍害を繰り返し受けても、スケーリングが生じにくい。したがって、本実施の形態によれば、セメント系組成体、例えばコンクリート打放し仕上げの美観を長い期間に亘って保つことができる。
また、珪弗化水素酸金属塩の水溶液を用いている(ステップS10)ので、セメント系組成体の表層部分における緻密性を高めることができる。このため、セメント系組成体の強度(耐摩耗性や防塵性)を高めることができる。また、吸水防止材を用いている(ステップS30)ので、セメント系組成体の表面からの吸水や透水などを抑制することができる。このため、セメント系組成体の耐久性を高めることができる。これらによっても、セメント系組成体の美観を長い期間に亘って保つことができる。また、この表面処理方法によれば、水ガラスを用いる必要がないので、セメント系組成体の耐水性が損なわれることがない。
さらに、珪弗化水素酸金属塩の水溶液や浸透性吸水防止材を塗布しても、セメント系組成体の表面に皮膜が形成されることがないので、セメント系組成体の質感(風合い)が損なわれることがない。また、珪弗化水素酸金属塩の水溶液や浸透性吸水防止材は、セメント系組成体の表面にエフロレセンス(白華)が生じることも抑止することができる。
なお、上述した実施の形態において、珪弗化水素酸金属塩の水溶液を塗布する前、浸透性吸水防止材を塗布する前、浸透性吸水防止材を塗布して乾燥させた後などに、セメント系組成体の表面の洗浄を行うことが好ましい。
また、珪弗化水素酸金属塩として、珪弗化マグネシウム、珪弗化亜鉛、及び珪弗化鉄(II)から成る群から選択された1種以上の珪弗化水素酸金属塩を用いるとしたが、珪弗化マグネシウムを用いることが好ましい。この場合、珪弗化マグネシウムは、下記式(3),(4)に従って、セメント系組成体に含まれるカルシウム成分と反応する。
2CaCO3+MgSiF6
→SiO2+MgF2+2CaF2+2CO2 …(3)
2Ca(OH)2+MgSiF6
→SiO2+MgF2+2CaF2+2H2O …(4)
次に、本発明の実施例を説明する。
本発明者らは、セメント系組成体の凍害抑止効果を高めるために、未塗布のコンクリートに、表面処理液を用いて表面処理を施したコンクリートの実験片(実施例1及び比較例1,2)を作製し、表面処理液の研究を行った。具体的には、各実験片のコンクリートに対して複数の試験項目で試験を行った。また、参考のため、未塗布のコンクリート(参考例1)についても同様の試験を行った。それらの結果から、各実験片の凍害抑止効果について評価するとともに、実験片の耐久性(耐水性、耐塩化物イオン性)などについて評価した。また、参考のため、表面処理液を塗布しなかった未塗布のコンクリート(参考例1)についても同様の試験を行った。
(参考例1)
参考例1の試験片は、下記表1に示す調合表に従って、コンクリートを構成するための材料(セメント、水、細骨材、粗骨材、AE減水剤)を調合し、乾燥させることで作製した。なお、粗骨材の最大寸法は20mmであった。作製時のスランプは18cmであった。
表1に示す調合表によれば、作製されたコンクリートの水セメント比は62.9%であり、細骨材率は48.2%である。そして、このようにして作製された参考例1の試験片は、呼び強度が21N/mm2であり、また、空気量が4.5%であった。
(実施例1)
実施例1の試験片は、参考例1と同様に作製した未塗布のコンクリートに、上述した表面処理方法(図1)に従って、表面処理を施すことにより作製した。表面処理液としては、珪弗化水素酸金属塩の水溶液に、リトリンを用い、浸透性吸水防止材に、デックガードP20を用いた。
(比較例1)
比較例1の試験片は、参考例1と同様に作製した未塗布のコンクリートに、表面処理液として、デックガードP20を用いて、表面処理を施すことにより作製した。デックガードP20の使用量は、実施例1で用いたデックガードP20の使用量と同量とした。
(比較例2)
比較例2の試験片は、参考例1と同様に作製した未塗布のコンクリートに、表面処理液として、リトリンを用いて、表面処理を施すことにより作製した。リトリンの使用量は、実施例1で用いたリトリンの使用量と同量とした。
上述したようにして作製した試験片の試験結果を下記表2に示す。また、表2に示す凍結融解試験の試験結果を図2に示す。
ここで、表2に示す各種の試験方法について説明する。
表2に示す試験項目のうち、透水量試験、吸水率試験、及び塩化物イオン浸透に対する抵抗性試験は、「2005年制定 コンクリート標準示方書〔規準編〕土木学会規準および関連規準」の第342頁〜第355頁に記載の「表面含浸材の試験方法(案)(JSCE-K 571-2005)」に準拠して行った。また、表2に示す凍結融解試験は、日本工業規格の「コンクリートの凍結融解試験方法(規格番号JIS A 1148)」に準拠して行った。
透水量試験とは、概略的には、試験片の或る表面に、所定体積の水を接触させ、所定期間(7日)経過後における、水の体積の減少量(ml)を算出するものである。また、透水比(%)は、参考例1の試験片の透水量に対する割合(%)を示している。
吸水率試験とは、概略的には、所定形状の試験片を水中に浸漬し、所定期間(7日)経過後に試験片を取り出して、試験片が水を吸収した割合(質量%)を吸水率(%)として算出するものである。つまり、吸水率は、水に浸漬する前の試験体の質量(g)に対する、試験体が吸収した水の質量(g)の割合を示している。また、吸水比(%)は、参考例1の試験片の透水量に対する割合(%)を示している。
塩化物イオン浸透に対する抵抗性試験は、概略的には、所定形状の試験片を、濃度が3%の塩化ナトリウム水溶液の中に浸漬し、所定期間(63日)経過後に、試験片を取り出し、取り出した試験片の含浸面に垂直な方向における、塩化物イオン浸透深さ(mm)をノギスを用いて測定するものである。また、塩化物イオン浸透深さ比(%)は、参考例1の試験片の塩化物イオン浸透深さに対する割合(%)を示している。
凍結融解試験は、概略的には、所定形状の試験片を水中に浸漬し、試験片の凍結(試験片の中心温度が−18℃)と融解(試験体の中心温度が5℃)とを1サイクルとして、所定サイクル後において、試験片の質量が変化していたときの質量変化量の割合(質量%)を質量減少率(%)として算出するものである。ここで、質量減少率は、水に浸漬する前の試験体の質量(g)から所定サイクル後に測定した試験体の質量(g)を引き、その引き算で得られた値を、水に浸漬する前の試験体の質量(g)で割ることで得られた値を百分率(%)に換算することで得られる。
また、凍結融解試験の欄に示す「外観上のスケーリング」の項目では、凍結融解試験を180サイクル行った後の試験体の表面に、外観上、スケーリングがみとめられた場合、「有り」とし、みとめられなかった場合、「無し」とした。ここで、表2に示す凍害抑止効果の項目には、試験片の凍害抑止効果が高いと評価したものには、「○」を、凍害抑止効果が十分ではないと評価したものには、「×」を記載した。ここで、凍害抑止効果の評価は、180サイクルの凍結融解を行った後の試験片に、スケーリングがみとめられなかったか否かによって行った。
そして、上述した凍結融解試験後に得られた試験片の外観は、図3(a)〜図3(g)に示す通りである。図から分かるように、比較例1や比較例2の試験片では、凍結融解試験を繰り返す度に、表面状態の劣化、つまりスケーリングが進行することが分かった。具体的には、比較例1や比較例2の試験片では、凍結融解を60サイクル行った後には、図3(c)に示すように、表面状態が悪化していることが確実にみとめられる。一方、実施例1の試験片では、凍結融解を180サイクル行っても、スケーリングがほとんど進行しないことがみとめられる。
また、上述したような外観上の差異は、表2や図2に示す凍結融解試験の試験結果にも現れることが分かった。実施例1の試験片の質量減少率は、比較例1,比較例2の試験片の質量減少率や、参考例1の試験片の質量減少率とは異なる傾向にあることが分かった。
以上詳細に説明したように、本実施例によれば、実施例1の実験片のように、コンクリートに珪弗化水素酸金属塩の水溶液を塗布した後に、浸透性吸水防止材を塗布することで、凍害抑止効果を高めることができることが分かった。具体的には、凍結及びその融解を繰り返し受けても、コンクリートにスケーリングが生じにくい。
また、実施例1及び比較例1のように、吸水防止材を用いることで、コンクリートの表面からの吸水や透水、及び塩化物イオンの浸透などを抑制することができることが分かった。したがって、吸水防止材を用いることで、コンクリートの耐久性(凍害に対する耐久性は含まれない)を高めることができる。
ここで、比較例1と実施例1の差異について検討すると、表2から分かるように、凍結融解試験の試験結果が大きく異なる。この差異は、浸透性吸水防止材を塗布する前に、珪弗化水素酸金属塩の水溶液を塗布しているか否かの違いに起因している。つまり、実施例1の実験片のように、珪弗化水素酸金属塩の水溶液を塗布してコンクリートの緻密性などを予め高めておくことで、凍害抑止効果が高まると考えられる。言い換えると、比較例1の実験片のように、コンクリートの緻密性などを予め高めていない場合、吸水防止材を塗布してコンクリートの耐久性を高めても、凍害によってコンクリートを劣化させる要素である水がコンクリートの表層部分に残存しているか又は浸入することが推測される。
なお、上述した実施例では、セメント系組成体として、コンクリートを用いた場合を示したが、モルタルを用いた場合でも同等の結果が得られた。
本発明の実施の形態に係るセメント系組成体の表面処理方法による表面処理手順を示すフローチャート(工程図)である。 本発明の実施例の各試験片に凍結融解試験を行ったときの試験結果を示す図である。 各試験片の外観を示す図であり、(a)は、凍結融解試験を行う前を、(b)は、凍結融解試験において凍結及びその融解を30サイクル行った後を、(c)は、同60サイクル後を、(d)は、同90サイクル後を、(e)同120サイクル後を、(f)同150サイクル後を、(g)同180サイクル後を示している。

Claims (3)

  1. セメント系組成体の表面に、珪弗化水素酸金属塩の水溶液を塗布し、
    乾燥後に、前記セメント系組成体の表面に、浸透性を有する吸水防止材を塗布する、
    ことを特徴とするセメント系組成体の表面処理方法。
  2. 表面が中性化していない前記セメント系組成体の表層部分に含まれる水酸化カルシウムは、前記珪弗化水素酸金属塩と下記式(1)で反応する、
    2Ca(OH)2+XSiF6
    →SiO2+XF2+2CaF2+2H2O …(1)
    但し、前記式(1)において、Xは、前記珪弗化水素酸金属塩を構成する金属である、
    ことを特徴とする請求項1に記載のセメント系組成体の表面処理方法。
  3. 表面が中性化している前記セメント系組成体の表層部分に含まれる炭酸カルシウムは、前記珪弗化水素酸金属塩と下記式(2)で反応する、
    2CaCO3+MSiF6
    →SiO2+MF2+2CaF2+2CO2 …(2)
    但し、前記式(2)において、Mは、前記珪弗化水素酸金属塩を構成する金属である、
    ことを特徴とする請求項1に記載のセメント系組成体の表面処理方法。
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