JP4338908B2 - コンクリートの改質工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,コンクリートの改質工法に係り,詳しくは,劣化したコンクリートを簡易な撥水工で補修してコンクリートを改質する工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年,コンクリート構造物において,塩害や中性化等に起因する劣化が顕著となり,補修を要するケースが増加している。このようなコンクリート構造物に対して一般的に実施されている補修方法は,劣化部のコンクリートを除去して断面を修復した後,表面処理を施す方法である。
【0003】
この表面処理方法のうち,撥水材を塗布する方法は,表面に撥水材が含浸して層を形成することから,マイクロクラツクによる機能低下がなく,はがれや膨れを生じないという利点を有している。また,塗布後の撥水材は通常は無色透明であり,構造物の外観を損ねることがない。実際にカリフオルニア州道路局がコンクリート構造物に適用し,防水性および耐凍害性の向上に効果を発揮しているという報告もある。
【0004】
これまでに市販されている一般的なコンクリート用の撥水材は,ほとんどがシラン系撥水材である。シラン系撥水材は,シランという最小単位構造のシリコン分子5〜7%と有機溶剤を中心に形成されており,浸透性が高い反面,揮発しやすいという特徴を有している。このため,シラン系撥水材の塗布に際しては,材料自体の有効成分量が少ない(10重量%以下)上に,揮発によってシリコン層の密度が低下するので,複数回の塗布が必要である。
【0005】
一方,揮発を生じない材料として,高分子のシロキサンを主成分とした撥水材が提案されているが,このものは耐水性には優れていても,コンクリートへの浸透性が低く,長期の耐久性に問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
劣化したコンクリート構造物の補修法として,前記のようにシリコーン系塗膜をコンクリート表面に形成する方法は各種の利点を有しているが,該塗膜を汎用のシラン系撥水材の塗布によって形成する場合には,揮発性有機溶媒中のシリコン系有効成分の濃度が低いので,塗布のあと乾燥し,さらに塗布して乾燥するという工程を数回繰り返さねば有効量の塗膜が形成できず,また粘性も低いので施工時に飛散や液ダレ等を生ずるといった問題があり,塗膜の密度も一般に低いものとなる。
【0007】
他方,高分子のシロキサンを主成分とした撥水材では密度の高い塗膜を形成できるが,コンクリート中に浸透し難いので,ごく表層部のみに高密度の塗膜が形成される結果,コンクリートの凍害性に悪い影響を与えることになるし,長期の耐久性にも問題がある。本発明は,このような従来の問題の解決を課題としたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば,コンクリート表面にシリコーン系塗膜を形成するコンクリートの改質工法において,コンクリートとして,水セメント比50%以上,表面水分率5.0%以下のものを適用対象とすると共に,シリコーン系塗膜形成材料として,アルキルアルコキシシランおよびポリオルガノシロキサンを有効成分とし且つ該有効成分を水系媒体中に75重量%以上の量で含有するシラン・シロキサン系撥水材を使用し,このシラン・シロキサン系撥水材を一回塗りでコンクリート表層部に少なくとも横向き(側面)乃至上向き(下面)に塗布することによりシリコーン系の含浸塗膜を形成することを特徴とするコンクリートの改質工法を提供する。より具体的には,水セメント比50%以上の配合で得られた,表面水分率5.0%以下の状態のコンクリートからなる劣化したコンクリート構造物を補修するにあたり,アルキルアルコキシシランおよびポリオルガノシロキサンを有効成分とし且つ該有効成分を水系媒体中に75重量%以上の量で含有するシラン・シロキサン系撥水材を該コンクリート表面に少なくとも横向き(側面)乃至上向き(下面)に塗布することにより,その表面部にシリコーン系含浸塗膜を形成することを特徴とするコンクリートの耐水性および耐凍害性の改善法を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は,従来の浸透し易いが揮発し易い性質を有するシラン系撥水材と,揮発し難いが浸透し難い性質を有するシロキサン系撥水材を有利に組み合わたシラン・シロキサン系撥水材を撥水工に使用してコンクリートを改質する点に一つの特徴がある。
【0010】
このシラン・シロキサン系撥水材は,一般式,R−Si−(OR’)で表されるアルキルアルコキシシラン(但し,Rは炭素数1〜15のアルキル基,R’は炭素数1〜6のアルコキシ基を表す)と:一般式がR1 aR2 bR3 cSiO(4-a-b-c)/2で表されるポリオルガノシロキサン(但し,R1はメチル基, R2はアミノアルキル基, R3は水酸基またはアルコキシ基を表し, 0<a+b+c<3の関係を有する)と:を有効成分としたものであり,且つこれらの有効成分を水系媒体中に75重量%以上含有する。この場合,アルキルアルコキシシランとポリオルガノシロキサンの重量比は好ましくは2:1〜10:1であるのがよい。また,このシラン・シロキサン系撥水材は少量の界面活性剤を含有することができる。
【0011】
図1に,本発明に従うシラン・シロキサン系撥水材の特徴を図解的に示した。従来のシラン系撥水材は有機溶媒中に有効成分(シラン)が7〜8%程度しか含有されておらず,浸透し易いけれども,揮発し易いので,一回の塗布では,図1(a)のように,低密度の撥水層しか形成できない。また,シロキサン系撥水材は高分子で粘稠であり揮発成分は殆んど存在しないので揮発し難いが浸透し難い。このため図(b)のように,ごく表面部のみの撥水層となり,剥離し易くまた凍害による影響も受けやすい。これに対して,本発明に従うシラン・シロキサン系撥水材は,両者の利点だけを合わせて具備しており,図1(c)に示したように,揮発し難く且つ浸透し易いので,一回の塗布でも十分に浸透した高密度のシリコーン撥水層を形成することができる。労をいとわねば重ね塗りでもよい。
【0012】
本発明で使用するシラン・シロキサン系撥水材は,シラン系撥水材とは異なり有機溶媒を使用せず,水を媒体としている。そして,塗布後においては,この媒体中の水およびコンクリート中の水分がアルキルアルコキシシランと反応し,アルコールを放出しながらコンクリートに化学的に固定されたシリコーン樹脂へと3次元的に架橋し,強固な含浸塗膜を形成する。そして,このシラン・シロキサン系撥水材は,有効成分が75重量%以上,好ましくはほぼ80重量%と多く,揮発性がなく飛散や液ダレも殆んど生じないので,1回の塗布で十分な撥水効果を得ることができる。この点,従来のシラン系撥水材では3回塗り(塗布と乾燥を1サイクルとしてこれを3サイクル行う)を標準としているのと比べると,非常に施工性に優れている。
【0013】
シラン・シロキサン系撥水材をコンクリート表面に塗布する方法としては,エアレススプレーまたはローラー塗布のいずれでもよく,塗布方向としてはコンクリートの上面,側面,下面のいずれでも良好な浸透深さが得られる。そのさい,塗布するコンクリート表面は極力乾いていた方が撥水効果が高くなる。シラン・シロキサン系撥水材を1回で塗布する塗布量は150g/m2以上で300g/m2以下,好ましくは180g/m2以上で250g/m2以下の範囲とすることができ,このような塗布量を1回で施工してもダレ等は生じない。このように,1回の塗布でコンクリート表面に十分な撥水効果を付与できるので,従来のシラン系撥水材に比べて工費および工期上かなり有利であり,且つこの撥水材は揮発性有機溶媒を含まないので非危険物扱いとなり,周囲空気を汚染することもないので,この点でも施工性がよい。また,一般に撥水材を塗布しようとする部位は環境上厳しいところが多く,シラン系撥水材のように数回に分けて塗布しなければならない工法では,複数の塗布工程の間,コンクリート表面を乾燥状態に維持することが実質上困難な場合もある(降雨や降雪等)が,本発明のように1回の塗布工程で済むことは,このような問題に遭遇することなく高品質の塗膜を形成することができる。
【0014】
通常,撥水材によってコンクリート表面に形成されるシリコーン撥水層には水滴を通さない程度の微細な隙間が存在し,水蒸気等の気体を透過するが液体を透過しないという性質を有する。しかし,水圧が加わる場合にはこの微細な隙間からコンクリート内部に水が圧入されることもある。この水蒸気並びに圧力水による水の出入りがコンクリートの凍害性に影響を与える。このため,塗布量の管理と一様で均質な塗膜を形成することが必要であるが,本発明法によれば,1回塗布により,後記の実施例で示すようにコンクリートの耐水性と耐凍害性を同時に改善することができる点で,有利な作用効果を奏する。
【0015】
いずれにしても,シラン・シロキサン系撥水材を用いてコンクリート表面に形成される本発明のシリコーン系含浸塗膜は外気と接する最外表面の露出層とすることができる。
【0016】
また,シラン・シロキサン系撥水材を塗布するコンクリートは,その表面水分率が低いほど良好な浸透深さが得られることがわかった。このため,コンクリートの表面水分率が5.0%以下,好ましくは4.0%以下の状態でシラン・シロキサン系撥水材を塗布するのが好ましい。さらに,塗布対象とするコンクリートの水セメント比が大きなものほどシラン・シロキサン系撥水材の浸透深さが深くなることがわかった。シラン系撥水材ではそのような影響は殆んど見られない点からすると,シラン・シロキサン系撥水材特有の現象であろうと考えられる。このため,水セメントが50%以上,好ましくは55%以上のコンクリートに対して本発明を適用すると特に効果的である。
【0017】
【実施例】
本発明に従うシラン・シロキサン系撥水材を用いたコンクリートの改質法の作用効果を,従来のシラン系撥水材の場合と対比して,試験結果を参照しながら具体的に説明する。
【0018】
〔例1〕・・吸水試験
(1)吸水試験の使用材料およぴモルタル配合
使用材料を表1に示した。シラン・シロキサン系撥水材は本文で定義したものであり,旭化成ワッカーシリコーン株式会社から供給された商品名「BS Creme C」を使用した。また,比較例として使用したシラン系撥水材は,市販されているショーボンド建設株式会社製の商品名スパンガードを用いた。
モルタルは,W/C=65%,セメント:砂=l:2の配合の旧JlSR5201に定められたモルタルを使用した。
【0019】
(2)試験方法
吸水試験では,40×40×160mmのモルタル供試体を水中に浸漬し,浸漬前後の重量を測定した。試験結果は,吸水によって増加した重量を試験前の供試体の重量で除して示した。各撥水材の塗布回数等の試験水準およぴ供試体数を表2に示した。
なお,供試体の養生および撥水材の塗布は以下のように実施した。試験実施前に前記の材料および配合によってモルタルを打設し,14日間水中養生した。その後,供試体を水中から取り出し,1日間乾燥させてから撥水材を塗布し,さらに14日間気中養生した.
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
【表3】
【0023】
吸水試験結果を表3およぴ図2に示した。これらの結果から,撥水材を塗布した供試体は,塗布しない供試体と比較して明確な撥水効果を示すこと,そして,シラン・シロキサン系撥水材を1回塗布した供試体は,シラン系撥水材2回塗布および3回塗布の供試体とほぼ同様の吸水率を示すことがわかる。また,シラン・シロキサン系撥水材を塗布した供試体の試験値のばらつきは,シラン系撥水材を1回あるいは2回塗布した供試体よりも小さいことがわかる。
【0024】
したがって,シラン・シロキサン系撥水材はl回の塗布で,シラン系撥水材を3回塗布した場合と同程度の高密度のシリコン層を形成し,施工のばらつきをほとんど生じないことが明らかである。
【0025】
〔例2〕・・耐水圧試験
(1)耐水圧試験の使用材料およぴコンクリート配合
使用材料を先の表1に示した。シラン・シロキサン系撥水材およびシラン系撥水材は実施例1と同じものである。コンクリート配合は表4の耐水圧試験の欄に示した。
(2)試験方法
耐水圧試験では,内径30mmの底無しのアクリル管を,横置きした100×100×400mmのコンクリート供試体の上に,図3に示すように取り付けて該アクリル管内に水深を調節しながら水を入れ,供試体に吸水されて減少した水量を測定した。試験水準を表5に示した。
なお,供試体の養生および撥水材の塗布は以下のように実施した。試験実施前に前記の材料およぴ配合によってコンクリートを打設し,28日間水中養生した。その後,供試体を水中から取り出し,l日間乾燥させてから撥水材を塗布し,さらに2日間気中養生した。
【0026】
【表4】
【0027】
【表5】
【0028】
14日間経過時の耐水圧試験結果を図4に示した。図4に見られるように,撥水材を塗布しない供試体では水圧に応じて吸水量が多くなるのに対し,撥水材を塗布したコンクリート供試体では,200mm以下の水圧を受ける環境下ではほとんど吸水せず,300mm以上の水圧を受ける環境下において若干吸水する結果となった。
【0029】
〔例3〕・・凍結融解試験その一(水深400mm)
(l)使用材料およぴコンクリート配合
使用材料を先の表1に示した。シラン・シロキサン系撥水材は実施例1と同じものである。コンクリート配合は表4の凍結融解試験の欄に示した。 試験に供したコンクリートは,撥水材の効果をより明確にするため,空気量を2.5%として,凍結融解抵抗性の小さいものとした。
【0030】
(2)試験方法
JSCE−G501に準じた凍結融解試験を実施した。これは,ASTM C666A法(水中凍結水中融解)と同じ方法である(供試体の最下部の水深約400mm)。試験水準は,シラン・シロキサン系撥水材の無塗布と塗布とした。供試体の養生および撥水材の塗布は以下のように実施した。試験実施前に前記の材料および配合によってコンクリートを打設し,6日間水中養生した。その後,供試体を水中から取り出し,l日間乾燥させてから撥水材を塗布し,さらに7日間気中養生した。
【0031】
試験結果を図5(質量減少率と凍結融解サイクル数の関係)に示した。図5より,撥水材を塗布した供試体は,塗布しない供試体と比較して,質量減少率の低下を抑制する傾向が見られた。このことから,シラン・シロキサン系撥水材の塗布は,凍結融解を受けるコンクリートのスケーリング防止に有効であることが確認された。
【0032】
〔例4〕・・凍結融解試験その二(水深100mm)
撥水材を塗布したコンクリートは,水圧を受ける環境下において内部に水が浸透することが考えられる。このため,例3と同じ供試体について,コンクリート供試体に水圧がかからないように,JSCE‐G501に規定されている供試体の寸法を100×100×100mmに変更して,例3と同様の凍結融解試験を実施した(供試体の最下部の水深100mm)。試験水準は,シラン・シロキサン系撥水材の無塗布と塗布とした。供試体の養生およぴ撥水材の塗布は以下のように実施した。試験実施前に前記の材料およぴ配合によってコンクリートを打設し,6日間水中養生した。その後,供試体を水中から取り出し,1日間乾燥させてから撥水材を塗布し,さらに27日問気中養生した。
【0033】
試験結果を図6(相対動弾性係数と凍結融解サイクル数の関係)および図7(質量減少率と凍結融解サイクル数の関係)に示した。
【0034】
図6およぴ図7より,シラン・シロキサン系撥水材を塗布した供試体および塗布しない供試体とも,凍結融解300サイクル時点において,相対動弾性係数およぴ質量減少率に大きな低下は見られない結果となったが,シラン・シロキサン系撥水材を塗布した供試体の方が,相対動弾性係数およぴ質量減少率の低下を抑制する傾向が見られた。
【0035】
このことから,シラン・シロキサン系撥水材は,100mm程度の水圧環境下において,コンクリートの凍結融解抵抗性向上に効果を発揮することが確認された。なお,本例4では例3に比べて,コンクリート供試体が凍結融解300サイクルに達しても劣化しなかったが,これは供試体を長期問養生した結果,コンクリート強度が向上したことが考えられる。
【0036】
JSCE‐G501の試験において,例4のように水深100mm程度に変更した場合に凍結融解抵抗性向上に効果的であるという結果が得られたが,実構造物が供用される環境を考慮すると,コンクリートに接する水が水深200mm以上において激しく凍結融解を繰り返すことはほとんどないと考えられることから,JSCE一G501に準じた凍結融解試験方法よりも,水深を100mm程度とした試験方法の方が実際の環境にそくしていると考えられた。
【0037】
〔例5〕・・撥水材の浸透深さに及ぼす塗布手段および塗布方法の影響
表6に示す配合のコンクリートを用いて100×100×400mmの供試体を作成し,7日間水中養生を行ったあと60℃の乾燥炉で1日乾燥させた。表面水分計を用いてコンクリートの表面水分率が4.5±0.5%の範囲にあることを確認したうえ,供試体の向きを変化させて,打設面と直交する100×400mmの面に対して,撥水材を,表7に示すように下向きに(上面に),横向きに(側面に)または上向きに(下面に)塗布した。
【0038】
塗布にあたっては,アルキルトリアルコキシシラン(分子量:約250)と反応性ポリシロキサンが合計で約80重量%,残部は殆んど水からなる密度が0.9g/cm3のシラン・シロキサン系撥水材を,表7に表示のようにエアレススプレーまたはローラによって塗布量が0.2kg/m2となるように一回塗布した。また,アルキルトリアルコキシシラン(分子量:約180)を乳化剤を介して水に分散させた密度が0.84g/cm3のシラン系撥水材を,表7に表示のようにエアスプレーによって3回塗布で塗布量が0.34kg/m2となるように塗布した。
【0039】
【表6】
【0040】
【表7】
【0041】
各塗布品を14日間の養生期間をおいたあと割裂し,その割裂面に墨汁を噴霧し,着色しない範囲を浸透深さとして測定した。測定された撥水材の浸透深さを図8および図9に示した。
【0042】
図8は,シラン・シロキサン系撥水材についての塗布手段の違いによる浸透深さを整理したものであるが,エアレススプレーとローラでは,浸透深さに実質的な差異は生じないことがわかる。すなわち,いずれの塗布手段を採用しても,下向き,横向きおよび上向きとも良好な浸透深さが得られることが確認された。
【0043】
図9は,シラン・シロキサン系撥水材とシラン系撥水材について,塗布方向の違いによる浸透深さの影響を見たものであるが,シラン系撥水材では下向きだけ良好な浸透深さが得られ,横向きまたは上向きでは浸透深さが浅くなっている(養生中に液ダレを生じてしまった)のに対し,シラン・シロキサン系撥水材はどの塗布方向でも良好な浸透深さが得られたことがわかる。したがって,シラン・シロキサン系撥水材はコンクリート構造物の上面はもとより,側面や下面に対しても上面と同様の浸透深さをもつ良好な撥水層を形成できることがわかる。
【0044】
〔例6〕・・コンクリートの水セメント比が撥水材の浸透深さに及ぼす影響
例5と同じシラン・シロキサン系撥水材とシラン系撥水材を,例5と同じ寸法で水セメント比を変えた供試体に対し,100×400mmの面が地面と直角となるようにして(その面を横向きにして)に塗布した。水セメント比を変えた供試体のコンクリート配合を表8に,また各供試体と塗布した撥水材の関係を表9に示した。シラン・シロキサン系撥水材の塗布はエアレススプレー1回塗布,シラン系撥水材ではエアスプレー3回塗布を採用し,塗布量は例5のものと同量とした。スプレー距離はいずれのものも250mmとした。
【0045】
【表8】
【0046】
【表9】
【0047】
得られた塗布品を7日間の養生期間をおいたあと割裂し,その割裂面に墨汁を噴霧し,着色しない範囲を浸透深さとして測定した。測定された撥水材の浸透深さと供試体の水セメント比の関係を図10に示した。
【0048】
図10から,シラン系撥水材は塗布対象コンクリートの水セメント比には殆んど影響することがないのに対し,シラン・シロキサン系撥水材では水セメントが大きくなると浸透深さが深くなり,シラン系撥水材では達成できないような深い浸透深さが得られることがわかる。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように,本発明によると,1回の塗布で,シラン系撥水材3回塗布と同等の撥水効果を発揮し,施工のばらつきをほとんど生じないで,コンクリート撥水工が実施できる。そして,本発明に従って形成されたシリコーン系塗膜は優れた耐水性能を示し,またこの塗膜を有していても,水深が200mm以下の水圧を受ける環境下において耐凍害性に優れる。したがって,施工性よくコンクリート構造物の改質を図ることができるので,経年コンクリート構造物の修復に大いに貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従うシラン・シロキサン系撥水材の特徴をシラン系撥水材と対比して示した説明図である。
【図2】本発明に従うシラン・シロキサン系撥水材をモルタルに塗布した場合の吸水試験結果をシラン系撥水材の場合と対比して示した図である。
【図3】耐水圧試験の概要を示す斜視図である。
【図4】本発明に従うシラン・シロキサン系撥水材をコンクリートに塗布した場合の耐水圧試験結果をシラン系撥水材の場合と対比して示した図である。
【図5】本発明に従うシラン・シロキサン系撥水材をコンクリートに塗布した場合の凍結融解試験(水深400mm)における質量減少率と凍結融解サイクル数との関係を,シラン系撥水材の場合と対比して示した図である。
【図6】本発明に従うシラン・シロキサン系撥水材をコンクリートに塗布した場合の凍結融解試験(水深100mm)における相対動弾性係数と凍結融解サイクル図との関係を,シラン系撥水材の場合と対比して示した図である。
【図7】本発明に従うシラン・シロキサン系撥水材をコンクリートに塗布した場合の凍結融解試験(水深100mm)における質量減少率と凍結融解サイクル図との関係を,シラン系撥水材の場合と対比して示した図である。
【図8】本発明に従うシラン・シロキサン系撥水材の塗布手段および塗布方向が浸透深さに及ぼす影響を示す図である。
【図9】本発明に従うシラン・シロキサン系撥水材の塗布方向と浸透深さの影響をシラン系撥水材のものと対比して示した図である。
【図10】塗布対象とするコンクリートの水セメント比が撥水材の浸透深さに及ぼす影響を示す図である。
Claims (6)
- コンクリート表面にシリコーン系塗膜を形成するコンクリートの改質工法において,コンクリートとして,水セメント比50%以上の配合で得られた,表面水分率5.0%以下の状態のものを適用対象とすると共に,シリコーン系塗膜形成材料として,アルキルアルコキシシランおよびポリオルガノシロキサンを有効成分とし且つ該有効成分を水系媒体中に75重量%以上の量で含有するシラン・シロキサン系撥水材を使用し,このシラン・シロキサン系撥水材を一回塗りでコンクリート表層部に少なくとも横向き(側面)乃至上向き(下面)に塗布することによりシリコーン系の含浸塗膜を形成することを特徴とするコンクリートの改質工法。
- シリコーン系の含浸塗膜は外気と接する露出層である請求項1に記載のコンクリートの改質工法。
- シラン・シロキサン系撥水材をエアレススプレーで塗布する請求項1または2に記載のコンクリートの改質方法。
- 水セメント比50%以上の配合で得られた,表面水分率5.0%以下の状態のコンクリートからなる劣化したコンクリート構造物を改善するにあたり,アルキルアルコキシシランおよびポリオルガノシロキサンを有効成分とし且つ該有効成分を水系媒体中に75重量%以上の量で含有するシラン・シロキサン系撥水材を該コンクリート表面に少なくとも横向き(側面)乃至上向き(下面)に塗布することにより,その表面部にシリコーン系含浸塗膜を形成することを特徴とするコンクリートの耐水性および耐凍害性の改善法。
- シリコーン系の含浸塗膜は外気と接する露出層である請求項4に記載のコンクリートの耐水性および耐凍害性の改善法。
- シラン・シロキサン系撥水材をエアレススプレーで塗布する請求項4または5に記載のコンクリートの耐水性および耐凍害性の改善法。
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