JP2009280716A - 無溶剤一液常温硬化型含浸材 - Google Patents

無溶剤一液常温硬化型含浸材 Download PDF

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Abstract

【課題】一度の塗工作業で多孔性材料の表層から細孔内部にまで浸透させて細孔を防ぎ、多孔性材料表面に塗膜を形成させることなく、透水性を大幅に抑制するとともに、二酸化炭素ガス等の細孔への侵入も大幅に抑制可能で、かつ、塗膜を形成させる場合にあっては、塗膜剥離が起こらない含浸材を提供する。
【解決手段】OR基を有するアルコキシシラン化合物又はその部分加水分解縮合物と硬化触媒を含有し、25℃における初期粘度が2〜80mPa・sであり、25℃における塗布後30分間の重量減少率が0.5〜16重量%となる硬化速度である、無溶剤一液常温硬化型含浸材を作製する。
【選択図】なし

Description

この発明は、多孔性材料に塗布してその材料への水、空気、ガス、蒸気の透過を抑制又は防止する含浸材に関する。
コンクリートやモルタル、セメント板、漆喰、煉瓦などの多孔性材料は、そのまま風雨に曝される環境に置くと、細孔から浸入した水が内部で凍結膨張してひび割れを起こすことがある。また、コンクリートやモルタルなどのセメントを用いた材料は、主成分である水酸化カルシウムと、コンクリート内に侵入した空気中の二酸化炭素とが反応することで中性の炭酸カルシウムを生じ中性化することにより、材料内部の鉄筋を錆びさせてしまうことがある。さらに、海が近い地域においては飛来した海水塩分が水に溶解して、排ガスが多い環境では排ガスに含まれる硫黄系ガスが水分と結びついて亜硫酸や硫酸を生じ、これらがコンクリート内部に浸透することにより材料内部の鉄筋を錆びさせてしまうことがある。その他、これらの多孔性材料をそのまま曝露環境に置いておくことによるデメリットは多々あり、これらの有害成分が材料内部に浸入することを防ぐ塗布剤、含浸材が検討されている。
その方法として、従来は、エポキシ系、ウレタン系、フッ素系、合成ゴム系の各樹脂を主体とした塗料を用いて多層・厚膜塗装する方法(1)や、ケイ酸アルカリ金属塩、コロイダルシリカ、アルキルアルコキシシランおよびそれらのオリゴマー、前記方法(1)にて記述された塗料樹脂等を、水またはメタノール等のアルコール類、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン等の芳香族炭化水素、酢酸メチル等のエステル類、メチルエチルケトン等のケトン類、ケロシン、石油エーテル、灯油等の多成分混合溶剤を用いて溶解または分散させた含浸性防水剤を塗布含浸させる方法(2)、さらに、前記方法(2)で含浸性防水剤を処理した後に前記方法(1)の塗装を行う複合方法などが行われている。
例えば、特許文献1には、アルキルアルコキシシランの一種であるオクチルトリエトキシシランを、界面活性材と、非極性溶剤及び水とともに用いた浸透型の吸水防止剤が記載さている。これは非極性溶剤と水とを有し、エマルジョンとして用いられている。この吸水防止剤は、硬化剤が含まれていないので、エトキシ基が水と反応してシラノール(Si−OH結合)となり、このシラノール基がコンクリートと水素結合することによって、コンクリート表面に、疎水性のオクチル基が外側を向いてオクチルトリエトキシシランが配列されることで疎水性を発揮すると考えられる。
また、特許文献2は、上記方法(2)を行う組成物として、アルコキシシランからなるマトリクス形成材料と、シリカ等の中空微粒子とからなるコーティング材組成物を塗布して乾燥して被膜を形成させるコーティング組成物が記載されている。これは、特許文献2[0010]に記載のように、材料を溶剤に溶解させて得られる液体混合物を基材に塗布し溶剤を蒸発乾燥させて被膜とするものであり、特許文献2請求項1においても乾燥を行うものであることが示されている。
さらに、特許文献3には、上記方法(2)を行う組成物として、水とアルコキシシランを混合して得られる、アルコキシシランの加水分解物であるシリコーンオリゴマーを含有する溶液と滲透防止剤と硬化剤とを含む多孔質基材用コーティング組成物が記載されている。この溶液は特許文献3[0006]に記載のように水を含むとともに、加水分解により生じるアルコールも含むものであり、実施例に示すように、塗布後に水分が蒸発する温度で加熱するとともに硬化剤で硬化させて用いる。
さらにまた、シラン系含浸材の中でも、塗布したコンクリート表面に濡れ色を呈さず、含浸材自体は細孔内部に浸透して水及び水に溶解する塩化物の浸透を抑制できるシラン系含浸材として、特許文献4や特許文献5に記載のものが挙げられる。
特許文献4に記載のシラン系含浸材は(A)アルコキシシランと(B)ポリオルガノシロキサン、(C)乳化剤、及び(D)水からなる水エマルジョン系コンクリート用含浸材であり、コンクリート表面に濡れ色を呈することなく、9mmほどの浸透深さを達成している。また、特許文献5に記載のシラン系含浸材も同様の構成からなるエマルジョン系含浸材であり、浸透深さが4〜7mmで、吸水比が0.05〜0.09となっており、水の浸入を特許文献4のシラン系含浸材よりも大きく抑制したものである。
なお、シラン系含浸材の透水抑制効果については、非特許文献1にも詳細な記載がある。
特開2008−13645号公報 特開2003−201443号公報 特開2000−281974号公報 特開2004−338980号公報 特開2005−314492号公報
土木学会119表面保護工法・設計施工指針(案)
しかし、上記方法(1)では、塗装直後の初期時点では十分な透水抑制性能を発揮するが、コンクリート自体の膨張及び収縮の繰り返し、コンクリートに最初から含まれる水分や空気の圧力、紫外線等により塗膜が劣化、疲労し、外部からの損傷などに起因して、塗膜のクラックや剥離を生じやすかった。
また、上記方法(2)のうち、ケイ酸アルカリ金属塩やコロイダルシリカを用いた含浸防水材は、溶媒として多量の水を使用していることから、多孔性材料への浸透は深く、多孔性材料表面に濡れ色を呈さないものの、細孔に固定化される固形分量が少ないため細孔を塞ぐことはできず、非特許文献1Page203−217に見られるように、透水抑制効果はほとんど得られていない。すなわち、細孔の入口に留まらず、細孔の内部表面を薄く覆うに過ぎないものであるため、塗布後も水は細孔に浸入してしまう。
さらに、上記方法(2)のうち、アルキルアルコキシシランおよびそれらのオリゴマーを用いた含浸防水材では、非特許文献1Page203−217に見られるように良好な透水抑制が得られるものの、これはアルキルアルコキシシランおよびそれらのオリゴマーの撥水性を利用した透水抑制である。溶剤を多量に含有させており、かつ、アルキルアルコキシシラン及びそれらのオリゴマーと多孔性材料との反応結合を促進させるものの、モノマーおよびまたはオリゴマー間の縮合によるポリマーが形成し難いことから、多孔性材料の細孔を塞いでおらず、材料表面及び細孔表面に分子膜を形成しているのみなので、水圧が撥水力より大きくなるような条件下においてはその透水抑制は発現できていない。更に、形成している撥水層が分子膜であるので、風化等により経時的に消失し、その効果が長期持続できない欠点を持っている。
なお、アルキルアルコキシシラン及びそれらのオリゴマー系含浸防水材にて処理した多孔性材料の細孔が塞がれていない事実は、非特許文献1Page224中性化抵抗性評価において、二酸化炭素ガスの浸透性がブランクコンクリートと含浸材処理コンクリートでほぼ同一値を示していることより、根拠付けられる。
例えば、特許文献1の吸水防止剤は分子膜を形成するものであるため、オクチル基による撥水効果はある程度発揮される可能性があるが、二酸化炭素ガスが透過してしまうので、多孔性材料の保護としては不十分なものである。また、文献中で実際に吸水抑制、中性化抑制の成果がどの程度となるか実証されていない。
これに対し、硬化剤を併用してアルコキシシラン及びそれらのオリゴマーを結合させる特許文献2及び3に示すような方法では、単なる分子膜ではなくポリマーを形成する。しかし、いずれも多量の溶剤に溶解させることは同じであるため、細孔に浸入したとしても細孔を塞ぐことはできず、細孔の内部表面を覆うに過ぎないものである。このため、水や外気等は多孔性材料と直接接触はしないものの、細孔内には浸入可能である。
なお、特許文献2に記載の材料は、実施例[0109]に示されるように、固形分濃度を1%まで希釈して塗布するものであり、得られる塗膜は極めて薄いものである。
さらに、方法(2)で含浸性防水剤を処理した後に方法(1)の塗装を行う複合方法では、多孔性材料表面に形成された塗膜によって透水抑制がなされており含浸材施工の意味合いが薄く、且つ施工に二段階の作業が必要であるため、作業効率が悪い。また、含浸材と塗膜との付着性が悪いと塗膜の剥離が生じる等の欠点がある。
特許文献4では、水と二酸化炭素ガスの浸入抑制については言及されていない。文献からはその特性を把握出来ないものの、非特許文献1Page203−217に見られるように、長鎖アルキル基による撥水性により良好な透水抑制効果が得られると考えられる。しかし、水を約20wt%含有しており、かつ、アルキルアルコキシシラン及びポリオルガノシロキサンと多孔性材料との反応結合を促進させるものの硬化触媒を添加していないため、アルキルアルコキシシラン、及び/又はポリオルガノシロキサン間の加水分解縮合によるポリマーが形成し難い。このため、特許文献4にかかるシラン系含浸材では、多孔性材料の細孔を十分に塞ぐことができないので、二酸化炭素ガスの浸入を抑制できない。
特許文献5では、二酸化炭素ガスの浸入抑制については言及されていない。上記と同様に、非特許文献1Page203−217に見られるように、長鎖アルキル基による撥水性によって良好な透水抑制効果が得られていると考えられる。しかし、特許文献4以上に大量の水を含んでおり(25〜66wt%)、かつ、上記と同様に硬化触媒を添加していないために、アルキルアルコキシシラン、及び/又はポリオルガノシロキサン間の加水分解縮合によるポリマーが形成し難い。このため、特許文献5にかかるシラン系含浸材でも、多孔性材料の細孔を十分に塞ぐことができないので、二酸化炭素ガスの浸入を抑制できない。
そこで本発明は、第一の目的として、含浸材を多孔性材料の表層細孔に浸透させて硬化させ、細孔を塞ぐことにより、多孔性材料表面全体を覆う塗膜を形成させず、水、二酸化炭素等の浸入を抑制するか、又は、第二の目的として、含浸材を多孔性材料の細孔へ浸透させ硬化させて細孔を塞ぐと共に多孔性材料の表面全体を覆う塗膜を形成させることにより塗膜剥離が生じることなく、水、二酸化炭素等の浸入を大幅に抑制する、施工作業性に優れた含浸材を提供することを目的とする。
この発明は、下記の(A)及び(C)の各成分、又は、(A)、(B)及び(C)の各成分を含有し、25℃における初期粘度が2〜80mPa・sであり、25℃における塗布後30分間の重量減少率が0.5〜16重量%となる硬化速度である、無溶剤一液常温硬化型含浸材を作製することにより、上記の課題を解決したのである。
ここで、(A)成分とは、下記式(1)で示されるアルコキシラン化合物、及びその部分加水分解縮合物から選ばれる1種類の化合物又は複数種の化合物の混合物である。
Si(OR4−n (1)
(上記式(1)中、Rは炭素数1〜10の芳香族基を含んでも良い炭化水素基を示す。Rは、炭素数1〜4のアルキル基を示す。上記RとRとは、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、nは1〜3の整数を示す。)
また、(B)成分とは、下記式(2)で示されるアルコキシシラン化合物、及びその部分加水分解縮合物から選ばれる1種類の化合物又は複数種の化合物の混合物である。この(B)成分は、含有していてもよいし、含有していなくてもよい。
(R−RSi(OR (2)
(上記式(2)中、Rは、メルカプト基、アミノ基、フェニルアミノ基、アミノエチルアミノ基、メタクリロキシ基、グリドキシ基、イソシアネート基、又はビニル基を示す。Rは炭素数0〜4の二価の炭化水素基を示す。Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す。Rは炭素数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基を示す。また、mは1〜3の整数を、pは1〜3の整数を、qは0〜2の整数を示し、m+p+q=4である)
そして、(C)成分とは硬化触媒である。
すなわち、この無溶剤一液常温硬化型含浸材は、アルコキシシラン化合物又はその部分加水分解縮合物として、上記の初期粘度となるものを選択しており、なおかつ、硬化剤との組み合わせで、塗布後の硬化速度が上記の重量減少率を示すようになるものとする。このような構成とした含浸材は、水やその他の溶剤に溶解させなくても多孔性材料の細孔に十分に浸透可能な粘度の液状となる。従って、水や溶剤に分散させる必要がないため、多孔性材料に塗工すると高濃度の状態で細孔内に入り込むことができ、細孔内部表面を薄く覆うのではなく、細孔内部で固定化し、細孔自体を封孔することができる。ここで固まる際には、(A)成分及び(B)成分が加水分解してアルコールが抜けつつ多量体を形成していき、硬化剤がその反応を促進させて、好ましい速度で硬化する。
ただし、初期粘度が小さすぎると、分子量が小さく沸点が低い物質であるが故、塗工時に蒸発し易く、細孔に浸透する量が減少し、細孔を塞ぐことができず、一方で初期粘度が高すぎると細孔内に浸透しづらくなるということになるが、この初期粘度は上記の材料により実現可能である。
なおかつ、上記の(A)、(B)成分の選択と共に、(C)成分である硬化剤を選択することにより、上記の重量減少率を達成させることで、加熱によって反応を促進させなくとも、空気中の水分と加水分解縮合反応を起こして、塗布後常温環境下において24時間程度で、表面全体を覆う塗膜を形成させた場合にその表面を指で擦っても傷が付かない程度に硬化させることができる。なお、加水分解縮合反応自体はその後も六ヶ月程度に亘って進行していき、ポリマー硬度はその後も大きくなっていく。
なお、上記の(A)乃至(C)成分の組み合わせは無限にあり、構成要素のうちの一つが極端な性質であると、他の成分が好適なものであっても上記の条件を満たすことは困難であり、一方で、(A)〜(C)成分のうちの一つが、ある組み合わせでは上記の条件を満たすものでなくても、別の組み合わせでは上記の条件を実現可能である場合がある。このため本発明では、成分とともに初期粘度と硬化速度を規定することで発明を特定している。
さらに、無機顔料や有機顔料を含んでいると、多孔性材料に好適な着色を行うといった効果を発揮させることができる。その際の平均粒子径は0.1〜5μmであると好ましい。さらにまた、粘度調整用添加剤や紫外線吸収剤などのその他の成分を含ませることで、物性の調整および紫外線吸収などの性能を追加することができる。
この発明にかかる含浸材により、多孔性材料の細孔を塞ぎ、二酸化炭素や水等が多孔性材料の内部へ浸透することを抑制又は防止できる。更に含浸剤を細孔へ浸透させ細孔を塞ぐとともに多孔性材料表面に剥離しない塗膜を形成させることにより、二酸化炭素や水等が多孔性材料の内部へ浸透することをより大きく抑制又は防止できる。
以下、この発明について詳細に説明する。
この発明は、多孔性材料に塗工して用い、細孔内部で硬化して細孔を閉塞させることで、二酸化炭素や水などが前記多孔性材料に浸入、含浸することを遮る無溶剤一液常温硬化型含浸材である。
この発明で対象とする多孔性材料は、数十nmから数百μmの細孔を持つ材料であり、例えば、打放しコンクリート・軽量コンクリート・プレキャストコンクリート等のコンクリート、モルタル、石綿セメント板・パルプセメント板・木毛セメント板等のセメント板、ケイ酸カルシウム板、石膏ボード、ハードボード、しっくい、レンガ、タイル、瓦、天然石、人工石などの多孔質無機質材料、および木材、合板、パーティクルボード、ファイバーボード、樹脂を含浸させた木材などの有機質材料が例示される。
この発明にかかる無溶剤一液常温硬化型含浸材は、アルコキシシラン化合物、その部分加水分解縮合物又はその両方と、硬化触媒とを含む。具体的には、アルコキシシラン化合物、又はその部分加水分解縮合物としては、少なくとも下記の(A)成分を有し、下記の(B)成分を含んでいてもよい。また、前記硬化触媒を(C)成分と記載する。
上記(A)成分は、下記式(1)で示されるアルコキシシラン化合物、及びその部分加水分解縮合物から選ばれる1種の化合物又は複数種の化合物の混合物である。この(A)成分を用いることにより、硬化後、多孔性材料の表層に存在する細孔を封する、すなわち、封孔作用を発揮することができる。
Si(OR4−n (1)
上記式(1)中、Rは炭素数1〜10の芳香族基を含んでも良い炭化水素基を示す。Rは、炭素数1〜4のアルキル基を示す。上記RとRとは、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、nは1〜3の整数を示す。
上記Rとしては、具体的には、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基等の芳香族基等が挙げられる。
このようなアルコキシシラン化合物の例としては、メチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシランやジアルキルジアルコキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のフェニル基含有アルコキシシラン等が挙げられる。
また、上記アルコキシシラン化合物の部分加水分解縮合物とは、上記アルコキシシラン化合物の単一物又は混合物に水を加え、塩酸、酢酸、蟻酸等の触媒の存在下で撹拌しながら昇温することにより、部分的に加水分解を生じさせて縮合させることにより得られた化合物をいう。
上記の複数種の化合物の混合物とは、上記アルコキシシラン化合物である複数種の化合物の混合物、上記アルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と上記アルコキシシラン化合物の部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種の化合物との混合物、上記部分加水分解縮合物である複数種の化合物の混合物をいう。上記のうち、上記部分加水分解縮合物から選ばれる化合物を複数種用いて混合する場合、上記の各アルコキシシラン化合物を、別々に加水分解縮合してから混合してもよく、複数種の上記アルコキシシラン化合物を混合してから加水分解縮合してもよい。
上記の部分的な加水分解縮合を行う際に必要に応じて溶剤を用いることができる。溶剤としては、上記混合物を溶解して均一な溶液を与えるものであれば特に制限はないが、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素化合物、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類等が用いられる。なお、ここで用いた溶剤は、加水分解後に除去しておくと好ましい。溶剤が残存していると、この発明にかかる無溶剤一液常温硬化型含浸材を使用する際に、溶剤によって固形分量が低下し細孔を塞げない場合がある。
次に、上記(B)成分は、下記式(2)で示されるアルコキシシラン化合物、及びその部分加水分解縮合物から選ばれる1種の化合物又は複数種の化合物の混合物である。この(B)成分を用いることにより、アルコキシシラン化合物又はその部分加水分解縮合物として、上記(A)成分のみを使用した場合に比べて、上記一液常温硬化型含浸材を多孔性材料に塗布等して注入・浸透させたとき、得られるポリマー又はこのポリマーからなる塗膜と多孔性材料との密着力がより向上し、表面全体を覆う塗膜を形成させた場合の耐久性が飛躍的に向上する。なお、(B)成分としては、下記式(2)の構造を有する1種類の化合物でもよいし、2種類以上の化合物を併用してもよい。
(R−RSi(OR (2)
上記式(2)中、Rは、メルカプト基、アミノ基、フェニルアミノ基、アミノエチルアミノ基、メタクリロキシ基、グリドキシ基、イソシアネート基、又はビニル基を示す。Rは炭素数0〜4の二価の炭化水素基を示す。Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す。Rは炭素数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基を示す。また、mは1〜3の整数を、pは1〜3の整数を、qは0〜2の整数を示し、m+p+q=4である。
上記(B)成分としてのアルコキシシラン化合物を加水分解縮合する方法、加水分解縮合の程度、及び、使用する溶剤の種類については、上記した(A)成分の場合と同様な方法、程度、溶剤の種類等を採用することができる。また、アルコキシシラン化合物とその部分加水分解縮合物についての混合物の混合のさせ方や、加水分解縮合する手順も上記(A)成分と同様の方法が採用できる。
上記(B)成分を構成するアルコキシシラン化合物の例としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
上記(A)成分及び(B)成分の好ましい混合比は、この発明にかかる無溶剤一液常温硬化型含浸材によって、上記多孔性材料の表面に塗膜を形成させるか否かにより異なる。
このうち、細孔を封孔し表面に塗膜は形成させない場合、上記混合比は、(B)成分/(A)成分=0/100〜20/80がよく、0/100〜10/90が好ましい。上記(B)成分が20重量%より多くなると、透水抑制が悪化する傾向があると共に、紫外線によるポリマーの劣化を受けやすくなる。
ここで、上記の表面全体を覆う塗膜を形成する状況及び形成しない状況について説明する。封孔後の多孔性材料11とポリマー12との関係を図1に示す。図1(a)のように、表層13から細孔14内部の入り込んだ箇所をポリマー12が塞いでいると、塗膜を形成させず封孔するだけであるので濡れ色は呈しない。図1(b)のように、ポリマー12が細孔14の縁15まで存在して細孔14を塞いでいると、塗膜は形成していないものの表面にポリマー12が露出しており、この露出部分16により濡れ色を呈する。図1(c)のように、表層にポリマー12の塗膜17が形成されている場合も、図1(b)と同様に細孔14を封じてポリマーが露出しているので、塗膜の厚さに拘わらず濡れ色を呈する。但し、(D)成分を添加した場合にあっては(D)成分による着色が支配するので、濡れ色は呈さない。
本発明は、多孔性材料の表面全体を覆う塗膜を形成させない場合においては、含浸後に多孔性材料の外観をあまり変化させない、つまり濡れ色をあまり呈さない材を提供することになる。この場合、図1(c)は存在させず、全ての細孔14を図1(a)のようにするか、一部に図1(b)のようになった細孔14は存在するものの図1(a)のようになった細孔14が主体となるように組成および硬化触媒を選定している。
一方、多孔性材料の表面全体を覆う塗膜を形成させる場合においては、表面にある全ての細孔14を図1(c)のようにポリマー12で塞ぐとともに周辺に塗膜17を形成させるように、組成及び硬化触媒、更に塗布量を選定する。
ただし、多孔性材料の細孔の径及び存在密度によっては、含浸材の浸透量も大きな影響を受けるため、濡れ色を呈することを抑える場合には、多孔性材料の状態に応じて塗布量を制限するとよい。
なお、参考までに従来の溶剤を用いる含浸材を用いた際の多孔性材料11とポリマー12との関係を、図1(d)に示す。細孔14の内表面に薄い塗膜を形成しており、細孔14自体を封じることが出来ていないため、塗膜17が生じているにも拘わらず、濡れ色が出ることが少ない。
また、細孔を封孔するとともに表面に塗膜を形成させる場合、上記混合比は、(B)成分/(A)成分=0/100〜20/80がよく、0/100〜10/90が好ましい。(B)成分が20重量%より多いと、透水抑制が悪化する傾向があると共に、紫外線によるポリマーの劣化を受けやすくなる。
なお、後述する硬化触媒との組み合わせ次第では、上記の混合比の条件外であっても、塗膜を形成させたり、逆に形成させなかったりすることは可能である。しかし、上記混合比の範囲であると、塗膜の形成の有無を高い精度で調整できるので特に好ましい。
上記(A)成分及び(B)成分の組合せとして好ましいものとしては、塗膜を形成させるか否かにより異なる。まず、細孔を封孔し表面に塗膜は形成させない場合は、アルコキシシラン化合物として、分子量200から500、沸点200℃以上、液粘度6mPa・s以下が好ましく、例えば、上記(A)成分を構成するアルコキシシラン化合物として、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシランオリゴマー、フェニルトリメトキシシランオリゴマーを用い、(B)成分を構成するアルコキシシラン化合物として、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシランを用いる場合が挙げられる。分子量、液粘度が高いと細孔への浸透性が悪く、多孔性材料表面に濡れ色を呈したり、塗膜を形成する傾向が強くなる。一方、沸点が低いと塗工時に蒸発逸散し、所定量の浸透が妨げられる。
また、細孔を封孔するとともに表面に塗膜を形成させる場合は、アルコキシシラン化合物として、分子量200以上、沸点200℃以上、液粘度3mPa・s以上が好ましく、例えば、上記(A)成分を構成するアルコキシシラン化合物として、メチルトリメトキシシランオリゴマー、フェニルトリメトキシシランオリゴマーを用い、(B)成分を構成するアルコキシシラン化合物として、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシランを用いる場合が挙げられる。この場合、細孔への浸透は若干悪くなっても、耐久性ある塗膜を形成させることが主目的となるため、分子量が1000以上のオリゴマーおよびフェニル基、グリシドキシ基、メルカプトプロピル基等のポリマーに耐久性向上等特異な特性を持たせることができるアルコキシシランを配合することが適している。
これらの上記(A)成分及び(B)成分は、空気中の水分などの水とOR基とが反応する加水分解反応で脱アルコール縮合を起こし、ポリマー化することで、細孔を閉塞させるとともに塗膜を形成する。また同時に、多孔性材料がコンクリートなどのシリコンを含有する素材である場合には、シリコンとの間にSi−O−Si結合を形成し、強固に結合する。
さらに、この発明にかかる一液常温硬化型含浸材は、アルコキシシラン化合物やその部分加水分解縮合物である(A)成分及び(B)成分とは別に、(C)成分となる上記硬化触媒を有する。この硬化触媒は、上記のアルコキシシラン化合物やその部分加水分解縮合物を常温において実用的な時間で十分に縮合させて硬化させるために必要な成分である。上記硬化触媒である(C)成分の例としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート等の有機スズ化合物、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン等の有機チタン化合物、トリイソプロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム等の有機アルミニウム化合物、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム等の有機ジルコニウム化合物等の有機金属化合物、塩酸、クロム酸等の無機酸、酢酸、蟻酸、グリコール酸等の有機カルボン酸等から選ばれる1種の化合物又は2種以上の化合物の混合物が挙げられる。
上記硬化触媒の中でも、常温で硬化可能となり、多孔性材料の劣化への影響がなく、使用条件に応じた硬化時間の調整が可能である点で、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート等の有機スズ化合物、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン等の有機チタン化合物、トリイソプロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム等の有機アルミニウム化合物、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム等の有機ジルコニウム化合物が好ましい。
上記(C)成分となる上記硬化触媒の使用量(固形分)は、上記アルコキシシラン化合物又はその部分加水分解縮合物である(A)成分及び(B)成分の合計量100重量部(固形分)に対し、0.1〜10重量部が好ましく、0.5〜5重量部がより好ましい。0.1重量部より少ないと、常温での硬化速度が異常に遅くなったり、硬化塗膜の強度が不足したりする場合がある。一方、10重量部より多いと、硬化速度が速くなりすぎて、形成されるポリマーに内部応力が蓄積され、経時的に塗膜にクラックが発生する傾向がある。
この発明にかかる無溶剤一液常温硬化型含浸材の、温度25℃における初期粘度は、2〜80mPa・sである必要がある。2mPa・s未満だと、分子量が小さく沸点が低い物質であるが故、塗工時に蒸発し易く、細孔に浸透する量が減少し、細孔を塞ぐことができず、一方で、80mPa・sを超えると粘度が高すぎて多孔性材料の細孔内に含浸材が十分に浸入できずに塗膜が形成されるだけとなってしまう場合があると共に、形成された塗膜の耐久性が悪くなる傾向もあり、かつ無溶剤での扱いが困難となる場合がある。なお、この粘度は、上記(A)成分と上記(B)成分とを併用する場合にはそれらを混合した直後の値である。なお、この粘度の範囲は、東機産業(株)製:TVE−22H型粘度計を用い、コーン:1°34′(R:24)、20rpmの条件下で測定した値で評価したものである。
また、この発明にかかる無溶剤一液常温硬化型含浸材の硬化速度は、塗布後30分間の重量減少率にして、0.5〜16重量%となる必要がある。この無溶剤一液常温硬化型含浸材は、加水分解によって縮合し、この際にアルコールが抜けていく。塗布後の重量減少率の値は、加水分解が進んでこのアルコールが抜ける反応の進行を示すものである。この値は主に硬化触媒の種類および添加量によって調整することができるが、上記(A)成分及び(B)成分との組み合わせによっても変化する値である。この重量減少率が0.5重量%未満であると加水分解縮合の進行が遅すぎて、硬化までにかかる時間がかかりすぎ、実用上問題が生じてしまうおそれがある。一方で、16重量%を超えると、形成されるポリマーに内部応力が蓄積され、経時的に塗膜にクラックが発生する傾向がある。なお、この硬化速度の範囲は、エー・アンド・ディ社製電子天秤HR−200(最小表示0.1mg)にて重量減少を秤量して、塗布30分後の重量減少率を算定した値で評価したものである。
この中でも、細孔内部を閉塞させて細孔を封孔し、かつ多孔性材料の表面全体を塗膜で覆わない場合には、初期粘度を30mPa・s以下とするとよく、10mPa・s以下であると濡れ色を呈さないのでより好ましい。初期粘度が10mPa・sを超えると、硬化するまでに表面近傍に残留して濡れ色を呈しやすくなってしまい、30mPa・sを超えるとほとんどの場合に塗膜を形成することとなってしまう。一方、封孔を確実に行うために、2mPa・s以上であると好ましい。なお、表面全体を塗膜で覆わない、とは、表面の一部に限って塗膜が生じている場合も含む。ただし、表面の構造は出来るだけ均一であることが好ましく、表面全体を塗膜で覆うので無ければ、表面のどこにも塗膜が生じていないことが好ましく、なおかつ濡れ色を呈していないとより好ましくなる。
また、細孔を封孔しつつ表面全体を塗膜で覆わない場合の硬化速度は、塗布後30分間での重量減少率が0.5重量%以上であるとよく、1重量%以上であると好ましい。1重量%未満だと広がりすぎて細孔を完全には塞ぐことができなくなる場合があり、0.5重量%未満だと細孔の封孔が困難となる。一方で、5重量%以下であるとよく、4重量%以下であると好ましい。4重量%を超えると、硬化するまでに表面近傍に残留して塗膜を形成しやすくなり、5重量%を超えるとほぼ確実に塗膜を形成するようになってしまう。
逆に、細孔を封孔するとともに、多孔性材料の表面に塗膜を形成させる場合には、初期粘度を2mPa・s以上とするとよく、10mPa・s以上とすると好ましい。初期粘度が10mPa・s未満だと含浸剤の細孔への浸透量が多くなり、塗膜形成が不十分となり意匠性に不備が生じるおそれがあり、2mPa・s未満だとその可能性が無視できなくなってくる。一方、80mPa・s以下であるとよく、70mPa・s以下であると好ましい。70mPa・sを超えると含浸剤の細孔への浸透量が少なくなり、細孔内の閉塞が起こりにくく、塗膜厚みが必要以上に大きくなってしまい、80mPa・sを超えると細孔内に入り込む前に塗膜だけが形成され、塗膜厚みが大きくなりすぎ、経時的に塗膜にクラックが生じる可能性が無視できなくなる。
また、細孔を封孔するとともに、多孔性材料の表面に塗膜を形成させる場合の硬化速度は、塗布後30分間での重量減少率が5重量%以上であるとよく、6重量%以上であると好ましい。6重量%未満であると、硬化までに時間がかかることで含浸剤の細孔への浸透量が多くなり、塗膜が十分に形成されなくなって意匠性に不備が生じる場合があり、5重量%未満であるとその可能性が無視できなくなってくる。一方で、16重量%以下である必要があり、10重量%以下であると好ましい。10重量%を超えると、浸透が遅くなることで塗膜が厚くなりすぎ、かつ形成されるポリマーに内部応力が蓄積され、経時的に塗膜にクラックが発生する傾向がある。16重量%を超えると経時的に塗膜にクラックが生じやすくなって、含浸材としての防護効果が果たせなくなる場合がある。
この発明で用いる無溶剤一液常温硬化型含浸材には、必要に応じて(D)成分として無機顔料及び/又は有機顔料を含有させることができる。すなわち、無機顔料と有機顔料とのどちらか一方でもよいし、併用してもよい。これらは、目的とする色彩を得るために、後述する化合物の1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもよい。
上記無機顔料は、得られる塗膜の着色の他、防食性、耐熱性などの諸性能を付与するために使用される。この無機顔料としては、特に制限されないが、金属及び合金並びにこれらの酸化物、水酸化物、炭化物、硫化物、窒化物等が挙げられる。具体例としては、酸化チタン、酸化クロム、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化コバルト、ケイ酸鉛、クロム酸鉛、モリブデン酸鉛、硫酸鉛、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭化珪素、窒化珪素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫化銅、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、雲母、カーボンブラック等が挙げられる。
また、上記有機顔料は、得られる塗膜の着色のために使用されるものであり、アゾ化合物、フタロシアニン化合物、染色レーキ、キノン化合物等が挙げられる。具体例としては、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、溶性アゾ顔料、フタロシアニンブルー、染色レーキ、イソインドリン、キナクリドリン、ジオキサジンバイオレット等の有機顔料を挙げることができる。
上記(D)成分を構成する無機顔料、有機顔料又はその両方の平均粒子径は、0.1から5μmが好ましく、0.2から2μmがより好ましい。0.1μm未満だと隠蔽性が低くなりやすく、5μmを越えると顔料の沈降が起こり扱いにくくなる。
また、上記(D)成分の配合量は、アルコキシシラン化合物やその部分加水分解縮合物である(A)成分及び(B)成分の合計量100重量部に対して、5重量部以上であるとよく、10重量部以上であると好ましい。添加量が10重量部未満では得られる塗膜の隠蔽性が十分ではない場合があり、5重量部未満では得られる塗膜の隠蔽性が低くなって添加することによる効果を発揮できない場合がある。一方で、100重量部以下であるとよく、40重量部以下であると好ましい。100重量部を超えると顔料の沈降が起こりやすくなったり、塗膜の可撓性が低下したりするなど良好な塗膜が得られない場合がある。
この発明で用いる無溶剤一液常温硬化型含浸材には、必要に応じて(E)成分として粘度調整用添加剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有させてもよい。その具体例としては、アエロジルシリカ、酸化セリウム、酸化亜鉛等を挙げることができる。これらは1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもよい。
また、上記(E)成分の配合量は、アルコキシシラン化合物やその部分加水分解縮合物である(A)成分及び(B)成分の合計量100重量部に対して、60重量部以下が好ましく、20重量部以下であるとより好ましい。添加量が20重量部を超えると塗膜の可撓性が低下したりするなど良好な塗膜が得られない場合があり、60重量部を超えるとこの可能性が特に高くなってしまう。
この発明にかかる無溶剤一液常温硬化型含浸材は、上記の成分を混合することで製造することができる。具体的には上記(A)成分、(C)成分、場合により(B)成分、必要に応じて(D)成分および(E)成分を、それぞれ上記した量ずつ混合することにより製造することができる。
また、上記(D)成分を含む上記無溶剤一液常温硬化型含浸材の粘度は、当該無溶剤一液常温硬化型含浸材から、(D)成分を除いたときに、上記の粘度範囲を満たせばよい。これは、(D)成分および(E)成分を含有する場合、この(D)成分は、多孔性材料の表面に残るが、残りの(A),(B),(C)および(E)の各成分は、材料の細孔へ浸透していくので、(A),(B),(C)および(E)の各成分の混合物のみが、上記粘度条件を満たせば十分だからである。
上記無溶剤一液常温硬化型含浸材は、単独で上記の初期粘度であるので、溶剤に溶解させる必要なく多孔性材料に含浸させて細孔を封じることができる。ただし、絶対に溶剤を含んではいけないというものではなく、微量であれば、溶剤を含んだものを含浸させたとしても、この発明にかかる無溶剤一液常温硬化型含浸材としての効果は発揮できることがあり、少量の溶剤を含むことを妨げるものではない。しかし、溶剤を用いない完全な無溶剤型とした方が、多孔性材料に注入又は浸透させて硬化させることにより、溶剤の揮散を行うことなく、多孔性材料の気孔を一液常温硬化型含浸材が反応して生じるポリマーによってより確実に閉塞できることにより、より水や二酸化炭素などの浸入を抑制できる。また、溶剤の揮発を起こさせないことで、多孔性材料表面に形成される硬質塗膜に、溶剤の揮発による気孔が生じることを防止でき、より水や二酸化炭素などの透過を抑制できる。
上記無溶剤一液常温硬化型含浸材とは、上記(A)成分、(C)成分、及び必要に応じて(B)成分、(D)成分、(E)成分を混合した後、また、必要に応じて、部分加水分解した後で加水分解に使用していた溶剤を留出させ、この溶剤の留出がなくなった状態での含浸材をいう。具体的には、一般的に溶剤と呼ばれる化合物、例えば、沸点が145℃以下の炭化水素化合物や、酸素含有炭化水素化合物、窒素含有炭化水素化合物等の含有割合が、0.1重量%以下の無溶剤一液常温硬化型含浸材をいう。このような溶剤の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トリエチルアミン、トリメチルアミン等が挙げられる。
この発明にかかる無溶剤一液常温硬化型含浸材を用いて、上記多孔性材料の細孔の封孔を行うには上記多孔性材料を予め乾燥させることが必要となる。多孔性材料の細孔、特に材料表層の細孔が水で充満されていると、含浸剤は細孔へ浸透できずに水面上でポリマーを形成してしまい、封孔することができなくなるためである。また、この場合、封孔することができないだけでなく、塗膜を生じても材料と付着せずに剥離してしまう。
この発明にかかる無溶剤一液常温硬化型含浸材を塗工する際の、上記多孔性材料の乾燥の程度は、該当する多孔性材料が最大に保有できる水分量の10〜50%が好ましい。50%より大きいと、上記無溶剤一液常温硬化型含浸材の注入又は浸透が十分でない場合がある。一方、10%より少なくともよいが、乾燥に手間がかかるとともに、無駄なコストをかけてしまうことになるので、10%あれば十分である。乾燥させる方法は、自然乾燥でも加熱乾燥でもよい。
なお、上記の含水率は、重量Wの多孔性材料を、換気の良い炉を使って100〜105℃にて恒量になるまで乾燥した状態(全乾状態)にし、そのときの重量W0として、その全乾状態の材料を水に浸漬して恒量になるまで水を浸透させたときの重量をWSとして、下記式(3)により算出する。
含水率(%)=(W−W)/(W−W)×100 ……(3)
上記多孔性材料を乾燥させた上で、上記無溶剤一液常温硬化型含浸材を、刷毛塗り、ローラー塗り、吹きつけ、浸漬等の方法によって材料の表面全体に塗工することにより、この無溶剤一液常温硬化型含浸材を上記多孔性材料の細孔内に注入又は浸透させる。注入、浸透後は速やかに上記硬化触媒が反応し、上記アルコキシシラン化合物やその部分分解縮合物を加水分解縮合させて硬化することにより、材料表層部細孔内に含浸材のポリマーを固定化させると共に、必要に応じて材料表面に含浸材の硬化塗膜を形成させた多孔性材料を速やかに得ることが出来る。
また、塗工量の調節によっても、材料表面に塗膜を形成させることなく、材料表層部細孔内に含浸材のポリマーを固定化した改質材料を得ることが出来るが、細孔内のポリマーが少なくなり透水量抑制等の性能が低下するので適正な塗工量を保つ必要がある。
この発明にかかる無溶剤一液常温硬化型含浸材の上記多孔性材料への注入量又は浸透量は、上記多孔性材料の種類および乾燥程度によって大きく左右される。上記無溶剤一液常温硬化型含浸材を注入または浸透させるべき上記多孔性材料が決定された場合、その材料固有の気孔率が規定され、注入または浸透する含浸材の最大量は一義的に規定されることとなるが、上記多孔性材料の乾燥が不充分であると含浸材の注入量または浸透量は大きく制約を受けることとなる。
上記多孔性材料の表面全体を覆う塗膜を形成させず、材料表層部内の細孔内に含浸材ポリマーを固定化し封孔する場合の上記無溶剤一液常温硬化型含浸材の多孔性材料への注入量又は浸透量は、20g/m以上がよく、50g/m以上だと好ましい。50g/mより少ないと、上記多孔性材料の水および二酸化炭素等の侵入抑制効果が不十分な場合があり、20g/mより少ないと、多孔性材料の水および二酸化炭素等の侵入抑制が不充分となりやすくなってしまう。一方で、400g/m以下であるとよく、150g/m以下であると好ましい。400g/mより多くてもよいが、注入又は浸透処理に無駄なコストを掛けてしまうこととなり、得策ではない。現実的には、100g/mも塗工すれば十分な効果を発揮できることが多い。なお、より多孔質であるものほど、多量に塗工しても塗膜を形成しにくく、珪酸カルシウムや石膏ボードの場合、コンクリートよりも塗膜が形成されにくい。一般的なコンクリートでは150g/mを超えると塗膜が生じやすくなるが、珪酸カルシウムや石膏ボードでは400g/mでも塗膜がほとんど生じない場合がある。
また、上記(D)成分を含有した上記無溶剤一液常温硬化型含浸材からなる硬質塗膜を上記多孔性材料表面に形成させる場合、得られる硬化塗膜の厚みは、10μm以上がよく、40μm以上だと好ましい。10μmより薄いと、隠蔽性が不十分で、意匠性を発揮できない場合がある。一方で、300μm以下がよく、120μm以下であると好ましい。300μmより厚いと、経時的に、塗膜にクラックを発生することがある。
一方、上記(D)成分を含まず、(A)成分〜(C)成分のみ又は(A)成分〜(C)成分と(E)成分からなる上記無溶剤一液常温硬化型含浸材によって硬質塗膜を上記多孔性材料表面に形成させる場合、得られる硬化塗膜の厚みは、1μm以上がよく、5μm以上が好ましい。5μmより薄いと塗膜の存在が明確でなく、意匠性を発揮できない場合があり、1μmより薄いと塗膜の効果がほとんど得られない。一方、300μm以下がよく、120μm以下であると好ましい。300μmより厚いと、経時的に、塗膜にクラックを発生することがある。
このような厚みとするため、上記無溶剤一液常温硬化型含浸材を上記多孔性材料中に注入又は浸透させ細孔封孔し、かつ、上記多孔性材料表面に硬質塗膜を形成させる場合の、上記無溶剤一液常温硬化型含浸材の塗工量は、40g/m以上がよく、100g/m以上であると好ましい。40g/mより少ないと、材料表面に塗膜が形成されない場合がある。一方、1000g/m以下であるとよく、300g/m以下であると好ましい。1000g/mより多いと、塗膜が厚くなりすぎ、経時的に、塗膜にクラックが発生する場合がある。
この発明で用いる無溶剤一液常温硬化型含浸材は、常温で十分硬化可能であり、速やかに細孔を封孔された多孔性材料を得ることができる。また必要に応じて加熱処理を行うとより速く硬化を行うことができる。
この発明にかかる無溶剤一液常温硬化型含浸材は、コンクリート、モルタル、セメント板に適用すると、水および二酸化炭素ガス、Clイオン等の浸透を大幅に抑制し、中性化、塩害等による劣化を防止できると共に白華現象も防止できる。
また、ケイ酸カルシウム板、石膏ボード、ハードボードに適用すると、それらの細孔を封孔することで空気の透過を防止し、断熱性を大幅に向上できる。タイルに適用すると、タイル及び目地モルタルの白華現象を防止すると共に劣化を防止することができる。天然石、人工石に適用すると、それらの細孔を封孔し、コーヒー、ジュース等有色液体による汚れを防止しうる。さらに、有機質材料に適用することで、紫外線による劣化を抑制しうる。
以下、この発明について具体的な実施例を示す。まず、用いる原材料と評価方法について説明する。
<(A)成分>
・メチル基及びフェニル基含有アルコキシシランオリゴマー…信越化学工業(株)製:KR−213(以下、「KR213」と称する。)メチルトリメトキシシランおよびフェニルトリメトキシシランを部分加水分解縮合した4量体。分子量約440、粘度18mPa・s。
・メチルトリメトキシシランオリゴマー…信越化学工業(株)製:KC89S(以下、「KC89S」と称する。)メチルトリメトキシシランを部分加水分解縮合した約2量体。分子量約280、粘度5mPa・s。
・デシルトリメトキシシラン…信越化学工業(株)製:KBM−3103C(以下、「KBM31」と称する。)部分加水分解していないモノマー。分子量263、粘度3mPa・s。
・メチル基含有アルコキシシランオリゴマー…信越化学工業(株)製:KR−500(以下、「KR500」と称する)メチルトリメトキシシランを部分加水分解縮合した約10量体。分子量約550、粘度25mPa・s。
・メチル基及びフェニル基含有アルコキシシランオリゴマー…信越化学工業(株)製:X−40−9227(以下、「X409227」と称する)フェニルトリメトキシシランとジメチルジメトキシシランを部分加水分解縮合したオリゴマー。分子量約400、粘度15mPa・s。
・メチル基含有アルコキシシランオリゴマー…信越化学工業(株)製:X−40−9225(以下、「X409225」と称する。)メチルトリメトキシシランを部分加水分解縮合した約20量体。分子量約1700、粘度80mPa・s。
<(B)成分>
・3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン…信越化学工業(株)製:KBM−803(以下、「KBM803」と称する。)部分加水分解していないモノマー。分子量196、粘度4mPa・s。
・3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン…東レ・ダウコーニング(株)製:SH6040(以下、「SH6040」と称する。)部分加水分解していないモノマー。分子量236、粘度4mPa・s。
<(C)成分>
・テトラ−n−ブトキシチタン…日本曹達(株)製:B−1(以下、「B1」と称する。)(反応速度高)
・ジイソプロポキシチタンビストリエタノールアミネート…松本製薬工業(株)製:TC−400(以下、「TC400」と称する。)(反応速度低)
<(D)成分>
・顔料…アサヒ化成工業(株)製:コバルトグリーン1250(以下、「コバルト」と称する。)
<(E)成分>
・酸化セリウム…日本電工(株)製:セリガードSC−4060(以下、「酸化セリウム」と称する。)
・シリカ……日本アエロジル(株)製:アエロジルR−972(以下「シリカ」と称する。)
<液粘度測定方法>
東機産業(株)製:TVE−22H型粘度計を用い、コーン:1°34′(R:24)、20rpmの条件下で測定した。なお、実施例3においては、(A)乃至(C)成分を混合した段階で測定し、次いで(D)及び(E)成分を加えた後も測定した。
<硬化速度測定方法>
底面積23.7cm(5.5cmφ)のアルミ箔トレーにサンプルを0.1g滴下し、25℃に保持し、5分ごとにエー・アンド・ディ社製電子天秤HR−200(最小表示0.1mg)にて重量減少を秤量して、塗布30分後の重量減少率を算定した。なお、この測定方法では、(D)成分及び(E)成分を混合する前の、(A)〜(C)成分のみを混合した状態で測定している。
<濡れ色評価方法>
JSCE−K571−2004に規定する「表面含浸材の試験方法6.1外観観察試験」により評価した。コンクリート供試体(水セメント比:60%、細骨材率:45%、スランプ:18±2cm、空気量4±1%)10cm×10cm×厚さ5cmの切断面1面に、各例の試料含浸材を刷毛にて100g/m塗布し、室温(約20℃)にて24時間養生後、塗布面を目視観察して、下記の基準により「無し」、「薄」、「やや濃」、「濃」の四段階に分類した。なお、この測定方法では、(D)成分及び(E)成分を混合する前の、(A)〜(C)成分のみを混合した状態で測定している。
・濡れ色無し :全面的に濡れ色なく、含浸材塗布前と外観は変化せず
・濡れ色薄 :全面的もしくは部分的に淡い濡れ色が観察される
・濡れ色やや濃:全面的もしくは部分的にやや濃い濡れ色が観察される
・濡れ色濃 :ほぼ全面的に水が浸透した直後に見られるような濃い濡れ色が観察される
また、上記の目視観察時に併せて、目視にて表面を覆う塗膜が形成されているか否かについても目視で確認した。このとき、含浸材を塗工した領域のうち、塗膜に覆われていると確認できる面積が50%以上である場合を「あり」、1%未満である場合は「なし」とし、1%以上50%未満の場合は「少」とした。
<透水量測定方法>
日本テストパネル((株))製:フレキハード(スレート板)150mm×150mm×厚さ5mmに、各例の試料含浸材を刷毛にて100g/m塗布し、7日間室温(約20℃)で養生した後、漏斗をコニシ(株)製:ボンドシリコーンシーラントBS−Cで固定し、4日間室温で養生し、JSCE−K571−2004に規定する漏斗法により7日間の累積透水量を測定した。ただし、この試験に用いるフレキハードは、試験実施前に、サンプルを塗布することなく上記漏斗法にて透水量を測定し、7日間の透水量が26〜30mlであるものを選定して使用した。
<中性化評価方法>
コンクリート供試体(水セメント比:60%、細骨材率:45%、スランプ:18±2cm、空気量4±1%)10cm×10cm×10cmの切断面1面に各例の試料含浸材を刷毛にて100g/mもしくは150g/m塗布し、被塗布面の背面切断面以外の面をエポキシ樹脂(コニシ(株)製:ボンドクイックメンダー)でシールし、室温(約20℃)にて2週間養生後、JSCE−K571−2004に規定する「表面含浸材の試験方法6.6中性化に対する抵抗性試験」を行い、4週間後の中性化を評価した。
<塩分浸透>
上記中性化評価方法に用いるものと同じコンクリート供試体の切断面1面に各例の試料含浸材を刷毛にて100g/m塗布し、被塗布面の背面切断面以外の面を上記エポキシ樹脂でシールし、室温にて2週間養生した後、JSCE−K571−2004に規定する「表面含浸材の試験方法6.7塩化物イオン浸透に対する抵抗性試験」を行い、4週間後の塩分浸透を評価した。
<耐久性評価>
日本テストパネル((株))製:フレキハード(スレート板)150mm×150mm×厚さ5mmに、各例の試料含浸材を刷毛にて150g/m塗布し、7日間室温(約20℃)で養生した後、JIS A6909 7.11に従い、試験体を20±2℃の水中に18時間浸漬した後、−20±3℃の恒温器中で3時間冷却し、次いで50±3℃の恒温器中で3時間加温し、この24時間を1サイクルとする操作を10回繰り返した後、室温に2時間静置し、塗膜のはがれ、ひび割れ及び膨れの有無を目視により確認した。なおこの評価は、塗膜を形成させる実施例1から9および比較例1から3について実施した。
<耐候性評価>
(B)成分を加えた実施例4、5および9について、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100重量部に対して、(D)成分コバルトを30重量部加えた試料を別途作製し、日本テストパネル(株)製:フレキハード(スレート板)150mm×150mm×厚さ5mmに、各例の試料含浸材を刷毛にて150g/m塗布し、7日間室温(約20℃)で養生した後、岩崎電気(株)製:アイスーパーUVテスターSUV−W151にて、UV照射8時間−結露4時間−休止0.5時間の繰り返し操作を行い、照射開始前および照射200時間後の塗膜光沢を、スガ試験機製デジタル変角光沢計を用いて入射角度60度にて光沢を測定し、光沢保持率80%以上を劣化無しと判定した。
表1及び表2に記載の組成で、(株)東洋精機製作所製試験用分散機(俗称ペイントシェイカー、容器200cc、溶液/東ソ−(株)製YTZボール1mmφの容積比=50/50、充填率:80%、回転数750rpm)にて、(A)、(B)、(D)および(E)成分を1時間混合した後、(C)成分を所定量滴下し2分間混合して得られた無溶剤一液常温硬化型含浸材について上記の評価を行った。その結果を表1及び表2に示す。但し、(D)及び/又は(E)成分を含む場合の粘度測定は、上記試料作製とは別に(A)、(B)および(C)成分の混合品を作製し行った。
Figure 2009280716
Figure 2009280716
<含浸被覆>
(実施例1〜9、比較例1〜3)
いずれも、表面を覆う塗膜を形成するよう、硬化速度を示す重量減少率が5wt%以上となるように(A)〜(E)成分を調製して含浸材を作製し、上記の評価を行った。このうち、比較例1及び2は硬化速度を示す重量減少率が16wt%を超えるものである。比較例2では、縮合度が小さく初期粘度が小さいオリゴマーを早く硬化させたことで、クラックが生じやすくなっている。また、比較例3は、(A)成分として縮合度が高く初期粘度が高いもののみを使用し初期粘度を100mPa・sと大きくしたことで、経時的に塗膜クラックを発生しやすくなったものである。なお、実施例9は初期粘度、硬化速度ともに含浸被覆材としての適正範囲に入っており、通常の環境では塗膜クラックなどは生じないものの、(B)成分が多いがゆえに紫外線照射による塗膜劣化が大きくなっている。
<含浸>
(実施例10〜22)
いずれも、表面に生じる濡れ色を抑え、又は濡れ色を呈しないよう、重量減少率が5wt%以下となるように(A)〜(C)成分を調製して含浸材を作製し、上記の評価を行った。濡れ色が「薄」の状態は、表面にある細孔の大部分が上記図1(a)であり、一部が図1(b)となっていると考えられ、「やや濃」の状態は、図1(a)もあるが、図1(b)及び(c)の比率が多いものが「やや濃」となっていると考えられる。
上記の実施例及び比較例の、初期粘度及び重量減少率の値を、初期粘度を横軸に、重量減少率を縦軸としてプロットしたものを図2に示す。また、上記の、塗膜を形成させる場合とさせない場合とにおける、初期粘度と重量減少率のよい値の値を点線で、好ましい値の範囲を太実線で囲み、示す。
(a)封孔のみで濡れ色を呈さない状態の概念図、(b)塗膜は生じないが濡れ色を呈する状態の概念図、(c)塗膜を生じ濡れ色を呈する状態の概念図、(d)溶剤を用い細孔を塞がない状態の概念図 実施例における初期粘度と重量減少率との関係を示すグラフ
符号の説明
11 多孔性材料
12 ポリマー
13 表層
14 細孔
15 縁
16 露出部分
17 塗膜

Claims (7)

  1. 下記の(A)及び(C)の各成分、又は、(A)、(B)及び(C)の各成分を含有し、25℃における初期粘度が2〜80mPa・sであり、25℃における多孔性材料への塗布後30分間の重量減少率が0.5〜16重量%となる、無溶剤一液常温硬化型含浸材。
    ・(A)成分:下記式(1)で示されるアルコキシラン化合物、及びその部分加水分解縮合物から選ばれる1種類の化合物又は複数種の化合物の混合物。
    Si(OR4−n (1)
    (上記式(1)中、Rは炭素数1〜10の芳香族基を含んでも良い炭化水素基を示す。Rは、炭素数1〜4のアルキル基を示す。上記RとRとは、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、nは1〜3の整数を示す。)
    ・(B)成分:下記式(2)で示されるアルコキシシラン化合物、及びその部分加水分解縮合物から選ばれる1種類の化合物又は複数種の化合物の混合物。
    (R−RSi(OR (2)
    (上記式(2)中、Rは、メルカプト基、アミノ基、フェニルアミノ基、アミノエチルアミノ基、メタクリロキシ基、グリドキシ基、イソシアネート基、又はビニル基を示す。Rは炭素数0〜4の二価の炭化水素基を示す。Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す。Rは炭素数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基を示す。また、mは1〜3の整数を、pは1〜3の整数を、qは0〜2の整数を示し、m+p+q=4である)
    ・(C)成分:硬化触媒
  2. 上記初期粘度が2〜30mPa・sであり、上記重量減少率が0.5〜5重量%であって、塗布した多孔性材料の表面全体を塗膜で覆うことなく、その細孔内部を閉塞させることを特徴とする、請求項1に記載の無溶剤一液常温硬化型含浸材。
  3. 上記初期粘度が2〜80mPa・sであり、上記重量減少率が5〜16重量%であって、塗布した多孔性材料の表面に塗膜を形成させつつ、表面の細孔の内部を閉塞させることを特徴とする、請求項1に記載の無溶剤一液常温硬化型含浸材。
  4. 無機顔料、有機顔料、若しくはそれらの両方からなる(D)成分、粘度調整用添加剤、紫外線吸収剤、若しくはそれらの両方からなる(E)成分、又は、それらの両方の成分を含み、前記(D)成分および(E)成分を除いたときの25℃における初期粘度が上記の値の範囲である請求項1乃至3のいずれかに記載の無溶剤一液常温硬化型含浸材。
  5. 上記(D)成分を構成する無機顔料、有機顔料又はその両方の平均粒子径が、0.1〜5μmである請求項4に記載の無溶剤一液常温硬化型含浸材。
  6. 上記(C)成分である硬化触媒が、有機スズ化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、及び有機アルミニウム化合物から選ばれる1種の化合物、又は2種以上の化合物の混合物である請求項1乃至5のいずれかに記載の無溶剤一液常温硬化型含浸材。
  7. 多孔性材料に、請求項1乃至6のいずれかに記載の無溶剤一液常温硬化型含浸材を塗布し、上記(A)成分、又は上記(A)成分及び上記(B)成分の加水分解縮合によって上記無溶剤一液常温硬化型含浸材が前記多孔性材料の細孔内部で固定化した多孔性材料。
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