JP2018035688A - 遮熱膜の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】陽極酸化膜の頂面に形成される封孔膜の耐熱性を向上できる製造方法を提供する。【解決手段】封孔処理は、開気孔12の開口部12aを少なくとも塞いで、陽極酸化膜10の遮熱性を高めるために行われる。封孔処理の第1ステップでは、無溶剤タイプの封孔剤(第1封孔剤)が使用され、第1シリコン系酸化膜16が形成される。封孔処理の第2ステップでは、溶剤タイプの封孔剤(第2封孔剤)が使用され、第2シリコン系酸化膜18が形成される。第2シリコン系酸化膜18を構成する無機系ポリマーは、第1シリコン系酸化膜16を構成する無機系ポリマーに比べて融解温度が高く、また、硬度も十分に高い。従って、実機耐久性が十分な遮熱膜を得ることができる。【選択図】図1

Description

この発明は遮熱膜の製造方法に関し、詳細には、エンジンの燃焼室の構成面に設けられる遮熱膜の製造方法に関する。
エンジンの燃焼室は一般に、シリンダヘッドとシリンダブロックを合わせたときに、当該シリンダブロックのボア面と、当該ボア面に収容されるピストンの頂面と、当該シリンダヘッドの底面と、当該シリンダヘッドに配設される吸気バルブおよび排気バルブの傘部の底面と、によって囲まれる空間として定義される。このような燃焼室の構成面には、エンジンでの冷却損失の低減や、燃料の燃焼に伴い発生する熱からの保護を目的として、遮熱膜が設けられることがある。
特許文献3(特開2010−249008号公報)には、エンジンの燃焼室の構成面に、遮熱膜として陽極酸化膜を設ける技術が開示されている。陽極酸化膜は、燃焼室を構成する部品の母材(例えば、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタン合金)よりも低い熱伝導率を有している。そのため、陽極酸化膜によれば、燃焼室の遮熱性を向上して冷却損失を低減できる。また、陽極酸化膜は、上述した母材よりも低い体積熱容量を有している。そのため、陽極酸化膜によれば、燃焼室内の作動ガスの温度に膜の表面温度を追従させることも可能となる。即ち、吸気行程では吸気の温度に、膨張行程では燃焼ガスの温度に、それぞれ膜の表面温度を追従させることが可能となる。故に、陽極酸化膜によれば、膨張行程での冷却損失を低減し、尚且つ、吸気行程での作動ガスの加熱を抑制して、燃費を向上することができる。
特許文献3には、また、陽極酸化膜の頂面に形成される無数の空孔を封じる処理(封孔処理)を行うことが好ましい旨開示されている。封孔処理の一例として、特許文献3は、陽極酸化膜の頂面に封孔剤としての有機シリコン溶液を塗布してこれを加熱し、シリコン系酸化膜を形成する方法を紹介している。
特許文献1(特開2002−363539号公報)には、溶射物の表面に形成される気孔を封じる封孔剤が開示されている。この封孔剤は、下記化学式(1)で表されるアルコキシシラン化合物またはその部分加水分解縮合物を含む無溶剤型の封孔剤である。
Si(OR4−n (1)
(式(1)中、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜8の1価炭化水素基、Rは炭素数1〜4のアルキル基、nは0〜3の整数を示す。)
特許文献2(特開2009−280716号公報)には、多孔性材料の表層に形成される細孔を封じる封孔剤として、特許文献1に開示された封孔剤と同様のアルコキシシラン化合物を含む無溶剤型の封孔剤が開示されている。
特開2002−363539号公報 特開2009−280716号公報 特開2010−249008号公報
上述した特許文献1や2は、エンジンの燃焼室の構成面に関するものではない。但し、仮に、これらの文献に開示されている無溶剤型の封孔剤を、上述した特許文献3の有機シリコン溶液の代わりに使用すれば、陽極酸化膜の頂面に形成される無数の空孔を封じることができると予想される。しかし、上記化学式(1)から分かるように、アルコキシシラン化合物は分子内に炭化水素基を含む。そのため、この化合物から得られる封孔膜の融解温度は、有機シリコン溶液から得られる封孔膜の融解温度に比べて低くなることも予想される。よって、特許文献1や2の無溶剤型の封孔剤を使用した封孔処理では、得られる封孔膜の耐熱性の面で懸念が残る。
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、陽極酸化膜の頂面に形成される封孔膜の耐熱性を向上できる製造方法を提供することにある。
本発明は、上記の目的を達成するための遮熱膜の製造方法であって、陽極酸化工程と、第1封孔工程と、第2封孔工程と、を備えている。前記陽極酸化工程は、エンジンの燃焼室を構成する部品を陽極酸化処理して、無数の空孔が形成された頂面を有する陽極酸化膜を形成する工程である。前記第1封孔工程は、前記陽極酸化膜の頂面に、下記化学式(1)で表されるアルコキシシラン化合物またはその部分加水分解縮合物を含む無溶剤型の第1封孔剤を塗布し、当該アルコキシシラン化合物およびその部分加水分解縮合物の少なくとも一方の重合により第1シリコン系酸化膜を形成する工程である。前記第2封孔工程は、前記第1シリコン系酸化膜の頂面に、ポリシラザンと有機溶剤とを含む溶剤型の第2封孔剤を塗布し、当該ポリシラザンの重合により第2シリコン系酸化膜を形成する工程である。
Si(OR4−n (1)
(式(1)中、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜8の1価炭化水素基、Rは炭素数1〜4のアルキル基、nは0〜3の整数を示す。)
本発明において、前記第2封孔剤に含まれるポリシラザンが、ペルヒドロポリシラザンであってもよい。
本発明によれば、遮熱膜の頂面を第2シリコン系酸化膜で構成することができる。第2シリコン系酸化膜を構成するポリマーはポリシラザン由来のポリマーであり、第1シリコン系酸化膜を構成するポリマーに比べて、耐熱性に優れる。従って、遮熱膜の頂面を第1シリコン系酸化膜で構成する場合に比べて、当該頂面の耐熱性を向上することができる。
本発明において、第2封孔剤に含まれるポリシラザンがペルヒドロポリシラザンである場合は、遮熱膜の頂面をシリカガラスで構成できるので、当該頂面の耐熱性を特に向上することができる。
本発明の実施の形態に係る遮熱膜の製造方法の流れを説明する図である。 燃焼室部品の母材上に形成された陽極酸化膜の断面模式図である。 第1シリコン系酸化膜が形成された陽極酸化膜の断面模式図である。 アルコキシシラン化合物の反応を模式的に示す図である。 第2シリコン系酸化膜が形成された陽極酸化膜の断面模式図である。 ペルヒドロポリシラザンの反応を模式的に示す図である。 封孔処理前の陽極酸化膜の頂面を模式的に示す図である。 開気孔の開口部や亀裂開口が不完全に塞がれている場合の問題点を説明する図である。 頂面10a上に第1シリコン系酸化膜16を形成した場合の効果を説明する図である。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。また、以下の実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
[製造方法の説明]
図1は、本発明の実施の形態に係る遮熱膜の製造方法の流れを説明する図である。本実施の形態に係る製造方法では、先ず、エンジンの燃焼室を構成する部品(以下、「燃焼室部品」ともいう。)の陽極酸化処理が行われる。既に述べたように、エンジンの燃焼室は、シリンダブロックのボア面と、当該ボア面に収容されるピストンの頂面と、シリンダヘッドの底面と、当該シリンダヘッドに配設される吸気バルブおよび排気バルブの傘部の底面と、によって囲まれる空間として定義される。本実施の形態1の燃焼室部品には、シリンダブロック、シリンダヘッド、ピストン、吸気バルブおよび排気バルブのうちの少なくとも1つが含まれている。
陽極酸化処理は、陽極としての燃焼室部品の表面に、電解液(一例としてリン酸、シュウ酸、硫酸、クロム酸等の水溶液)を供給しながら行う電気分解である。電気分解に際しては、電流密度と通電時間が調節される。電気分解に際しては、また、燃焼室部品の表面のうちの所定領域にのみ陽極酸化膜が形成されるよう、マスキング部材等を用いて電解液の接触領域が制限される。燃焼室部品の母材は、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタン合金等である。そのため、陽極酸化処理が行われると、合金の酸化膜(つまり、陽極酸化膜)が上述した所定領域に形成される。
図2は、燃焼室部品の母材上に形成された陽極酸化膜の断面模式図である。図2に示す陽極酸化膜10は、頂面10aに開口する無数の開気孔12を有している。開気孔12は、陽極酸化処理の過程において形成されるものである。開気孔12を有することで、陽極酸化膜10は、燃焼室部品の母材よりも低い熱伝導率と低い体積熱容量(単位体積あたりの熱容量を意味する。以下同じ。)を有する遮熱膜として機能することが可能となる。陽極酸化膜10は、また、内部に閉気孔14を有している。閉気孔14は、陽極酸化処理の過程において形成されるものであり、燃焼室部品の機械的性質を向上するための添加物(主にSi)に由来している。閉気孔14を有することで、陽極酸化膜10の低い体積熱容量が実現されている。
本実施の形態に係る製造方法では、続いて、図2に示した開気孔12を封じる処理(封孔処理)が行われる。封孔処理は、頂面10aに近い開気孔12の開口部12aを少なくとも塞いで、陽極酸化膜10の遮熱性を高めるために行われる。封孔処理は、第1ステップと第2ステップとを備えている。封孔処理の第1ステップでは、先ず、無溶剤タイプの封孔剤(第1封孔剤)が、図2に示した頂面10aの全領域に塗布される。無溶剤タイプの封孔剤は、下記化学式(1)で表されるアルコキシシラン化合物またはその部分加水分解縮合物(オリゴマー)を含んでいる。
Si(OR4−n (1)
(式(1)中、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜8の1価炭化水素基、Rは炭素数1〜4のアルキル基、nは0〜3の整数を示す。)
無溶剤タイプの封孔剤は、必要に応じて、硬化反応の速度を調整する硬化触媒と、得られる膜を着色する無機顔料と、無機添加物とを含むことができる。硬化触媒、無機顔料や無機添加物は特に限定されず、公知のものを用いることができる。硬化触媒としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート等の有機スズ化合物、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン等の有機チタン化合物、トリイソプロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム等の有機アルミニウム化合物、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム等の有機ジルコニウム化合物が挙げられる。無機顔料としては、金属及び合金並びにこれらの酸化物、水酸化物、炭化物、硫化物、窒化物等が挙げられる。添加剤としては、光沢調整剤、粘度調整剤等が挙げられる。
無溶剤タイプの封孔剤の一例として、ディ・アンド・ディ社製のパーミエイト(商品名)が挙げられる。このパーミエイトは、上記化学式(1)で表されるアルコキシシラン化合物またはその部分加水分解縮合物を主成分とする無溶剤1液型の封孔剤である。
無溶剤タイプの封孔剤の塗布方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。公知の方法としては、刷毛塗り、スプレーコート、ディッピングコート、フロートコート、スピンコート等が挙げられる。なお、塗布の際に封孔剤が膜表面に堆積すると、ひび割れによる面粗度の悪化や体積熱容量の増大に繋がる懸念がある。そのため、無溶剤タイプの封孔剤が陽極酸化膜の表面に堆積したときには、封孔剤の塗布後にウェス等を使用して、堆積した封孔剤を拭き取ってもよい。
封孔処理の第1ステップでは、続いて、無溶剤タイプの封孔剤の焼成が行われる。焼成条件は一例として、80℃で2時間である。無溶剤タイプの封孔剤の焼成が行われることで、上述したアルコキシシラン化合物同士、部分加水分解縮合物同士、または、アルコキシシラン化合物と部分加水分解縮合物とが縮合重合する。その結果、図2に示した頂面10a上に、シリコン系酸化膜(第1シリコン系酸化膜)が形成される。図3は、第1シリコン系酸化膜が形成された陽極酸化膜の断面模式図である。図3に示すように、第1シリコン系酸化膜16は、頂面10aや、開気孔12の構成面に形成される。その結果、図2に示した開口部12aの全てが、第1シリコン系酸化膜16によって塞がれることになる。なお、図3においては、第1シリコン系酸化膜16によって塞がれていない開気孔12の深部12bが描かれている。但し、このような深部12bが形成されること自体には問題はなく、寧ろこれが閉気孔14と同様に機能することで、遮熱膜の低い体積熱容量に寄与することになる。
図4は、アルコキシシラン化合物の反応を模式的に示す図である。図4に示すように、アルコキシシラン化合物は、水と反応することで、メタノール(CHOH)を放出しながらネットワークを形成する。上述したパーミエイトを無溶剤タイプの封孔剤として使用すると、アルコキシシラン化合物またはその部分加水分解縮合物が大気中の水分と反応し、その結果、−Si−O−Si−O−を主鎖とする無機系ポリマーからなる第1シリコン系酸化膜16が形成されることになる。
封孔処理の第2ステップでは、続いて、溶剤タイプの封孔剤(第2封孔剤)が、図3に示した第1シリコン系酸化膜16の頂面16aの全領域に塗布される。溶剤タイプの封孔剤は、ペルヒドロポリシラザンおよび/またはオルガノポリシラザン(一例として、ポリジメチルシラザン、ポリ(ジメチル−メチル)シラザン)と、有機溶剤とを含んでいる。溶剤タイプの封孔剤は、必要に応じて添加剤を含むことができる。添加剤としては、レベリング剤、界面活性剤、粘度調整剤等が挙げられる。
溶剤タイプの封孔剤の一例として、AZエレクトロニック・マテリアルズ社製のアクアミカ(登録商標)が挙げられる。このアクアミカは、ペルヒドロポリシラザンをジブチルエーテル、アニソールといったエーテル系溶剤で薄めたものである。
上述した無溶剤タイプの封孔剤同様、溶剤タイプの封孔剤の塗布方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。また、溶剤タイプの封孔剤が第1シリコン系酸化膜の表面に堆積したときには、封孔剤の塗布後にウェス等を使用して、堆積した封孔剤を拭き取ってもよい。
封孔処理の第2ステップでは、続いて、溶剤タイプの封孔剤の焼成が行われる。焼成条件は一例として、180℃で5時間である。溶剤タイプの封孔剤の焼成が行われることで、上述した有機溶剤が揮発し、一方でポリシラザンが縮合重合する。その結果、図3に示した頂面16aを覆う、第1シリコン系酸化膜16とは別のシリコン系酸化膜(第2シリコン系酸化膜)が形成される。図5は、第2シリコン系酸化膜が形成された陽極酸化膜の断面模式図である。図5に示すように、第2シリコン系酸化膜18は、頂面16a上に形成される。
図6は、ペルヒドロポリシラザンの反応を模式的に示す図である。図6に示すように、ペルヒドロポリシラザンは、水(HO)と反応することで、アンモニア(NH)と水素(H)を放出しながらシリカガラスに転化する。上述したアクアミカを溶剤タイプの封孔剤として使用した場合には、ペルヒドロポリシラザンが大気中の水分と反応し、その結果、シリカガラスからなる第2シリコン系酸化膜18が形成されることになる。
上述した陽極酸化処理と封孔処理により、燃焼室部品の母材上に遮熱膜が形成される。因みに、図5に示した陽極酸化膜10、第1シリコン系酸化膜16および第2シリコン系酸化膜18が、本実施の形態に係る製造方法によって得られる遮熱膜に相当する。
[製造方法の効果]
先ず、封孔処理の第1ステップによる効果について説明する。図7は、封孔処理前の陽極酸化膜の頂面を模式的に示す図である。図7に示すように、頂面10aには、無数の開口部12aが点在している。但し、これらの開口部12aを比べると、サイズに差が生じていることが分かる。また、図7に示すように、頂面10aには、亀裂開口20が形成されている。この亀裂開口20は、開気孔12が形成される過程において生じ得るものである。開口部12aのサイズ同様、亀裂開口20のサイズも様々であるが、図7に示す亀裂開口20のサイズは、同図に示す開口部12aの最大サイズよりも大きくなっている。
開口部12aのサイズが大きい場合や亀裂開口20が形成されている場合に、上述した第2封孔剤を第1封孔剤よりも先に頂面10aに塗布すると、これらを完全に塞ぐことができなくなる。この理由は、塗布段階において全ての開口部12aや亀裂開口20に溶剤タイプの封孔剤を充填できたとしても、その後の焼成段階において有機溶剤が揮発する分だけ、封孔剤の体積が減少してしまうからである。封孔剤の体積が減少した場合には、第2封孔剤から形成されたシリコン系酸化膜によって不完全に塞がれた開口部12aや亀裂開口20が残ることになる。
図8は、開気孔の開口部や亀裂開口が不完全に塞がれている場合の問題点を説明する図である。第2封孔剤を頂面10aに塗布すると、頂面10a上には第2シリコン系酸化膜18と同一種類のシリコン系酸化膜(第3シリコン系酸化膜)が形成されることになる。但し、上述した理由により、第3シリコン系酸化膜22では、開口部12aの全てを塞ぐことができない。そうすると、閉塞不全な開口部12aに、燃焼ガスが侵入することができてしまう。故に、開口部12aが完全に塞がれている場合に比べ、陽極酸化膜10による遮熱性や、作動ガスへの追従性が低下してしまう。また、ガソリンエンジンの場合は、閉塞不全な開口部12aに侵入した燃料が燃焼に寄与することなく、ここに残留してしまう可能性もある。
この点、本実施の形態に係る製造方法では、無溶剤タイプの封孔剤を使用した封孔処理の第1ステップが行われる。溶剤タイプの封孔剤とは異なり、無溶剤タイプの封孔剤は、塗布段階や焼成段階での体積収縮が殆ど無い。そのため、第1シリコン系酸化膜16によって開口部12aの全てを確実に塞ぐことができる。図9は、頂面10a上に第1シリコン系酸化膜16を形成した場合の効果を説明する図である。図9に矢印で示すように、第1シリコン系酸化膜16によって開口部12aの全てを塞いだ場合には、燃焼ガスや燃料の侵入を遮断することができる。なお、図9には図5に示した第2シリコン系酸化膜18が描かれていない。しかし、第1シリコン系酸化膜16によって開口部12aの全てが塞がれていることから、その上に第2シリコン系酸化膜18が形成された場合には当然、燃焼ガスや燃料の侵入を遮断することができる。
次に、封孔処理の第2ステップによる効果について説明する。図4から理解できるように、第1シリコン系酸化膜16を構成する無機系ポリマーは、側鎖に炭化水素基を含んでいる。そのため、この無機系ポリマーは、側鎖に炭化水素基を一切含まない無機系ポリマーに比べて融解温度が低くなり易い。事実、上述したパーミエイトは、融解温度が500℃程度しかなく、また、硬度も低い。そのため、遮熱膜の頂面を第1シリコン系酸化膜16で構成した場合には、当該頂面の耐熱性と硬度の面で懸念が残る。
この点、本実施の形態に係る製造方法では、第1ステップの後に第2ステップが行われる。第2シリコン系酸化膜18を構成する無機系ポリマーは、第1シリコン系酸化膜16を構成する無機系ポリマーに比べて融解温度が高く、また、硬度も十分に高い。特に、上述したペルヒドロポリシラザンから形成されるシリカガラスは、融解温度が1000℃程度と高い。このように、本実施の形態に係る製造方法によれば、第2シリコン系酸化膜18を形成する第2ステップによって、頂面の耐熱性と硬度を高めた実機耐久性の高い遮熱膜を得ることができる。
10 陽極酸化膜
10a,16a 頂面
12開気孔
12a 開口部
12b 深部
14 閉気孔
16 第1シリコン系酸化膜
18 第2シリコン系酸化膜
20 亀裂開口
22 第3シリコン系酸化膜

Claims (2)

  1. エンジンの燃焼室を構成する部品を陽極酸化処理して、無数の空孔が形成された頂面を有する陽極酸化膜を形成する陽極酸化工程と、
    前記陽極酸化膜の頂面に、下記化学式(1)で表されるアルコキシシラン化合物またはその部分加水分解縮合物を含む無溶剤型の第1封孔剤を塗布し、当該アルコキシシラン化合物およびその部分加水分解縮合物の少なくとも一方の重合により第1シリコン系酸化膜を形成する第1封孔工程と、
    前記第1シリコン系酸化膜の頂面に、ポリシラザンと有機溶剤とを含む溶剤型の第2封孔剤を塗布し、当該ポリシラザンの重合により第2シリコン系酸化膜を形成する第2封孔工程と、
    を備えることを特徴とする遮熱膜の製造方法。
    Si(OR4−n (1)
    (式(1)中、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜8の1価炭化水素基、Rは炭素数1〜4のアルキル基、nは0〜3の整数を示す。)
  2. 前記第2封孔剤に含まれるポリシラザンが、ペルヒドロポリシラザンであることを特徴とする請求項1に記載の遮熱膜の製造方法。
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