JP5276837B2 - マグネタイトバルク材の製造方法 - Google Patents

マグネタイトバルク材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、マグネタイト相の様々な物性を把握するための測定用試料として用いることができるマグネタイトバルク材を製造する方法に関するものである。
鉄鋼製品の製造プロセスにおいては、表面に酸化皮膜(スケール)が形成され、製品の品質や性能を劣化させたり、生産歩留まりを低下させる原因となっている。例えば、加熱炉で形成された厚い1次スケールの除去が不完全で、一部が残ったまま圧延に供されると、スケールの破壊や押し込みが生じ、鋼材にスケール疵が発生することがある。また、2次スケールに起因してメカニカルデスケーリング(MD)性が不良となったり、メッキ性が不良になることがある。このようにスケールは、鋼材の表面性状に大きく影響を与えている。そこでスケールに起因する問題を解決するには、圧延プロセス中におけるスケール形成挙動やスケール破壊・変形挙動など動的な挙動を把握すればよい。特に、圧延プロセス過程におけるスケールの破壊・変形挙動を把握するには、高温状態におけるスケールの物性(例えば、物理的特性や機械的特性など)を把握すればよい。
ところで上記スケールは、通常、Fe系酸化物[例えば、FeO(ウスタイト),Fe34(マグネタイト),Fe23(ヘマタイト)など]で構成されている。そこで高温状態におけるスケールの物性を把握するには、こうしたFe系酸化物の単体試料を作製し、高温状態における硬度やヤング率(弾性定数)、線膨張率などの物性を測定すればよいと考えられる。特にマグネタイト(Fe34)は、スケールを構成する主要な酸化物であり、スケールの物性に大きく影響を及ぼしていると考えられる。
マグネタイトの物理的特性を評価した技術として、非特許文献1には、鋼板を加熱して鋼材表面にスケールを形成させ、露出させたスケール断面のうちマグネタイト層のビッカース硬度を1000℃で測定することが開示されている。しかしこの非特許文献1が開示する技術は、マグネタイト純度の高い塊状(以下、バルクとよぶことがある)の単体試料を作製するためのものではないため、マグネタイト層のビッカース硬度については測定できるものの、その他の機械的特性(例えば、マグネタイトのヤング率や線膨張率など)を測定することはできない。
一方、マグネタイト純度の高いバルク材を提供する技術ではないが、特許文献1には、合成したマグネタイト粉末を成形、焼成してマグネタイト焼結体を得ることが記載されている。
Materials Science Forum Vols.522-523 (August 2006) pp.469-476 特開2003−20286号公報
上記特許文献1には、合成したマグネタイト粉末を成形、焼成してマグネタイト焼結体を得ることが記載されている。しかしこの特許文献1には、マグネタイト焼結体を製造するための具体的な条件について記載されていない。従って上記特許文献1で得られた焼結体のマグネタイト純度は不明である。
というのもFeはFeOやFe34、Fe23などの酸化物を形成するが、本発明者らが検討したところ、夫々の酸化物を形成する平衡酸素圧は、温度によって順位が変化するため、焼結温度によっては原料として用いたマグネタイト(Fe34)が容易に酸化されてヘマタイト(Fe23)を形成したり、還元されてウスタイト(FeO)を形成し、マグネタイト純度が高い焼結体を得ることができない場合があることが判明した。
本発明は、この様な状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、マグネタイト純度が高く、機械的特性を測定できる程度の大きさで密度が高いバルク材を製造できる方法を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係るマグネタイトバルク材の製造方法とは、Fe34粉末を成型して成型体を得る工程と、得られた成型体を焼結する工程を含み、前記成型は、98〜294MPaの圧力で行い、前記焼結は、不活性ガス雰囲気で、1000〜1300℃で行う点に要旨を有する。前記焼結は、10〜120分で行うことが好ましい。
焼結後は、更にホットプレスを行うことによって得られたマグネタイトバルク材の焼結密度を一段と高めることができる。前記ホットプレスは、不活性ガス雰囲気または0.13Pa以下の真空雰囲気で、700〜1000℃で、39.2〜78.5MPaで行うことが好ましい。
本発明によれば、原料としてFe34粉末を用い、これを成型した成型体を適切な条件で焼結することによって、マグネタイト純度が高く、密度が高いバルク材を製造できる。また、得られたマグネタイトバルク材に、更にホットプレスを行うと、バルク材の密度を一段と高めることができる。
本発明で得られたマグネタイトバルク材を用いれば、マグネタイトの機械的特性(例えば、ヤング率や線膨張率など)を測定することができるため、高温状態におけるスケールの物性を把握するのに役立つ
本発明者らは、マグネタイト純度が高く、密度が高いバルク材を製造するために、鋭意研究を重ねてきた。その結果、原料としてFe34粉末を用い、これを成型した成型体を適切な条件で焼結すれば、マグネタイト純度の高い高密度バルク材を製造できることを見出し、本発明を完成した。
マグネタイト自体は、粉末の形態で市販されているが、機械的特性を測定できる程度の大きさのマグネタイト単体試料は市販されておらず、各種素材として利用されることもない。そこで本発明者らは、粉末冶金技術に着目し、Fe34粉末を成型して成型体を作製し、この成型体を適切な条件で焼結すれば、マグネタイト純度が高く、高密度のバルク材を製造できるのではないかと考えて研究を重ねてきた。その結果、
(1)Fe34粉末を成型して成型体を得る工程と、
(2)得られた成型体を焼結する工程を含み、
前記成型は、98〜294MPaの圧力(成形荷重1.0〜3.0tonf/cm2)で行い、前記焼結は、不活性ガス雰囲気で、1000〜1300℃で行えば、マグネタイト純度が高く、高密度のバルク材を製造できることが明らかとなった。以下、各工程について順を追って詳細に説明する。
[(1)成型体を得る工程]
本発明では、原料として、Fe34粉末を用いることが重要である。Fe34粉末を成型して得られた成型体を所定の条件で焼結することで、高純度のマグネタイトバルク材を製造できるからである。
Fe34粉末は、例えば、和光純薬工業社などから入手できる。なお、Fe34粉末としては、粒子径(最大径)が、約10〜200μmの粉末を用いることが好ましい。粒子径が10μm未満では、取り扱い性が悪いことに加え、表面積が大きくなり過ぎるために焼結工程で酸化・還元をおこしやくなる。また、分級も難しくなる。好ましくは50μm以上である。一方、粒子径が200μmを超えると、粒子径が大き過ぎるため、バルク材を高密度化できない。好ましくは100μm以下である。
本発明では、Fe34粉末を成型して成型体を得るが、成型圧力は98〜294MPa(1.0〜3.0tonf/cm2)とすることが重要である。成型圧力が98MPa(1.0tonf/cm2)を下回ると、荷重不足となり、成型体を形成することができない。従って成型圧力は98MPa(成形荷重1.0tonf/cm2)以上とする。しかし成型圧力が294MPa(3.0tonf/cm2)を超えると、成型体に残留する応力が大きくなり、後の焼結工程においてバルク材にクラックが発生して良好なバルク材を得ることができない。従って成型圧力は294MPa(3.0tonf/cm2)以下とする。
Fe34粉末を成型する方法は特に限定されず、プレス成型を行ってもよいし、CIP成型を行ってもよい。
成型する際に用いる型の種類は特に限定されず、金型を用いてもよいし、ゴム製の型を用いてもよい。ゴム製の型を用いる場合は、CIP成型を行ってもよい。例えば、円柱状の成型体を作製する場合は、ネオプレンゴム製のチューブを所望の長さに切断し、これにFe34粉末をできるだけ均一かつ高密度に充填し、チューブの両端をネオプレンゴム製の栓で止めてシールする。この試料を静水圧98〜294MPa(1.0〜3.0tonf/cm2)でCIP成型すれば、円柱状の成型体を作製することができる。なお、成型体の形状は特に限定されるものではなく、各種試験片の形状であってもよいし、板状やブロック状であってもよい。
[(2)焼結する工程]
本発明では、上記成型体を焼結するが、この焼結は、不活性ガス雰囲気で、1000〜1300℃で行うことが重要である。焼結雰囲気を不活性ガス雰囲気とすることによって、Fe34粉末が焼結中に酸化あるいは還元されるのを防止することができる。
不活性ガスとしては、純Arガスや純N2ガス、純Heガス、或いはこれらのガスを混合したガスなどを用いればよい。コストを削減するためには、純Arガスや純N2ガスを用いることが好ましい。
なお、後述する実施例から明らかなように、焼結雰囲気を酸素含有雰囲気(例えば、大気)とすると、Fe34の一部が酸化されてFe23を生成する。従ってマグネタイト純度が低下する。また、焼結雰囲気を0.13Pa(1×10-3Torr)以下の真空雰囲気とすると、酸素分圧が低くなり過ぎるため、焼結温度(1000〜1300℃)では、Fe34の一部が還元されてFeOを生成する。従ってマグネタイト純度の高いバルク材を製造することができない。
本発明では、焼結温度を1000〜1300℃で行う必要がある。焼結温度が1000℃未満では、焼結不充分となり、バルク材の密度を高めることができず、機械的特性を測定できない。従って焼結温度は1000℃以上とする。好ましくは1050℃以上であり、より好ましくは1100℃以上である。しかし焼結温度が1300℃を超えると、焼結雰囲気中に不可避的に含まれる酸素によってFe34粉末の一部が酸化され、Fe23を生成する。従って焼結温度は1300℃以下とする。好ましくは1250℃以下である。
なお、焼結するに当っては、焼結温度に到達するまでの昇温速度は、例えば、100〜1200℃/hとすればよい。
焼結時間は、焼結温度に影響を受けるため一律に規定することはできず、機械的特性を測定できる程度の密度となるように焼結温度を考慮しつつ焼結すればよい。焼結時間は、例えば、10〜120分とすればよい。焼結時間が短過ぎると焼結不足となる傾向があり、焼結時間が長過ぎても経済的に無駄となるからである。焼結時間のより好ましい下限は15分であり、より好ましい上限は90分である。なお、焼結後、室温まで冷却するに当っては、焼結炉内で放冷すればよい。
焼結して得られたマグネタイトバルク材は、後述する実施例から明らかなように、焼結ままの状態で、焼結密度が90%以上の高密度なものになっている。
本発明では、焼結後、更にホットプレスを行うことが好ましい。ホットプレスを行うことで、焼結して得られたマグネタイトバルク材の焼結密度を一段と高めることができる。
[(3)ホットプレス]
ホットプレスは、不活性ガス雰囲気または0.13Pa(1.0×10-3Torr)以下の真空雰囲気で行うことが好ましい。酸素をできる限り除去した雰囲気でホットプレスを行うことにより、Fe34が酸化または還元するのを防止できるため、マグネタイトバルク材の純度を低下させることなく高密度化できる。なお、上述したように、真空雰囲気で焼結を行った場合には、焼結温度が高いためにFe34の一部が還元されるが、ホットプレスは焼結より低温で行なわれるため、真空雰囲気でホットプレスを行っても還元は起こらない。
不活性ガスとしては、純Arガスや純N2ガス、純Heガス、或いはこれらのガスを混合したガスなどを用いればよい。コストを削減するためには、純Arガスや純N2ガスを用いることが好ましい。
ホットプレスを行うときの温度と圧力は特に限定されないが、温度は700〜1000℃、圧力は29.4〜78.5MPa(成形荷重300〜800kgf/cm2)とすることが好ましい。
ホットプレス温度が700℃以上であれば、高密度のマグネタイトバルク材が得やすくなる。但し、ホットプレス温度が1000℃を超えると、マグネタイトバルク材自体や金型に割れが発生することがある。従ってホットプレス温度は1000℃以下とすることが好ましい。
ホットプレス圧力は、マグネタイトバルク材の密度が高くなるように、ホットプレス温度に応じて設定すればよい。例えば、29.4〜78.5MPa(300〜800kgf/cm2)とすることが好ましい。ホットプレス圧力を29.4MPa(300kgf/cm2)以上とすることで、高密度のマグネタイトバルク材を容易に得ることができる。ホットプレス圧力は、39.2MPa以上(400kgf/cm2以上)とすることが好ましい。しかしホットプレス圧力が78.5MPa(800kgf/cm2)を超えると、マグネタイトバルク材自体や金型に割れが発生することがある。従ってホットプレス圧力は78.5MPa(800kgf/cm2)以下とすることが好ましい。
ホットプレスを、特に、比較的低温(700〜800℃程度)で行う場合は、圧力を39.2MPa程度以上(400kgf/cm2程度以上)に加圧することで、マグネタイトバルク材の焼結密度を95%以上とすることができる。一方、ホットプレスを、特に、比較的高温(900〜1000℃程度)で行う場合は、圧力を29.4MPa程度以上(300kgf/cm2程度以上)に加圧することで、マグネタイトバルク材の焼結密度を95%以上とすることができる。
ホットプレス時間は、ホットプレス時の温度や圧力に影響を受けるため一律に規定することはできないが、例えば、30〜120分とすればよい。ホットプレス時間が短過ぎると密度向上作用が充分に発揮されないし、焼結時間が長過ぎても経済的に無駄となるからである。ホットプレス時間のより好ましい下限は40分であり、より好ましい上限は110分である。
ホットプレスは、焼結して得られたマグネタイトバルク材を任意の金型に入れて行えばよい。なお、マグネタイトバルク材を任意の金型に入れる際には、該マグネタイトバルク材を金型形状に応じて前もって機械加工すればよい。
ホットプレスを行うときに用いる金型の材質は特に限定されないが、耐熱性の確保や成型体と反応しないことを考慮すると、グラファイト製金型を使用することが好ましい。
焼結後に、更にホットプレスを行うと、後述する実施例から明らかなように、焼結密度を一層高めることができ、例えば、95%以上の高密度マグネタイトバルク材を製造できる。
本発明で得られたマグネタイトバルク材を用いれば、マグネタイトの硬度を測定できる他、ヤング率や線膨張率を測定することができ、マグネタイトの機械的特性を調べることができる。マグネタイトの機械的特性を詳細に調べることで、圧延プロセス中におけるスケール破壊・変形挙動などを把握することができるようになる
以下、本発明を実験例によって更に詳細に説明するが、下記実験例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
[実験1]
粉末状の四三酸化鉄試薬(和光純薬工業社製)を円筒状の金型(φ10mm×10mm)と角状の金型(55mm×55mm×8mmt)に各々仕込み、圧力をかけて成型した。成型圧力は、49MPa(0.5tonf/cm2)、98MPa(1.0tonf/cm2)、196MPa(2.0tonf/cm2)、294MPa(3.0tonf/cm2)、または392MPa(4.0tonf/cm2)とした。
その結果、成型時の圧力を49MPa(0.5tonf/cm2)とした場合は、円筒状金型と角状金型のいずれの金型を用いても、金型から取り出した時点で成型体が崩れた。一方、成型時の圧力を98MPa(1.0tonf/cm2)以上とした場合は、円筒状金型と角状金型のいずれの金型を用いて成型しても、金型から取り出した成型体は崩壊せず、安定な成型体が形成されたことを確認した。
次に、金型から取り出した成型体を、純Arガス雰囲気中で、1300℃で1時間加熱して焼結し、バルク材(焼結体)を得た。焼結に当たっては、1300℃に昇温する際の昇温速度は300℃/hで行い、1300℃で1時間焼結した後の冷却は焼結炉内で放冷することによって行った。
得られたバルク材を目視にて観察した結果、成型時の圧力を392MPa(4.0tonf/cm2)とすることによって得られたバルク材には、クラックが発生しており、一部、バルク材の崩壊も目視にて確認された。一方、成型時の圧力を98〜294MPa(1.0〜3.0tonf/cm2)として得られたバルク材には、クラックの発生は認められず、良好なバルク材が作製できたことを目視にて確認した。
[実験2]
粉末状の四三酸化鉄試薬(和光純薬工業社製)を円筒状の金型(φ10mm×10mm)に仕込み、147MPa(1.5tonf/cm2)の圧力をかけて成型した。その結果、金型から取り出した成型体はいずれも崩壊せず、安定な成型体が形成されたことを確認した。
金型から取り出した成型体を、下記表1に示す雰囲気中で、下記表1に示す温度で、下記表1に示す時間加熱して焼結し、バルク材(焼結体)を得た。焼結に当たっては、下記表1に示す焼結温度に昇温する際の昇温速度は300℃/hとし、焼結した後の冷却は焼結炉内で放冷することによって行った。なお、表1において、焼結雰囲気が「真空」とは、ガス分圧が0.13Pa(1×10-3Torr)以下で焼結を行ったことを意味する。焼結雰囲気が「純Ar」とは、常圧の純Arガス雰囲気中で焼結を行ったことを意味する。焼結雰囲気が「純N2」とは、常圧の純N2ガス雰囲気中で焼結を行ったことを意味する。焼結雰囲気が「大気」とは、常圧の大気雰囲気中で焼結を行ったことを意味する。
得られたバルク材をXRD(X線回折)測定し、バルク材を構成する酸化物種を調べた。各バルク材について、検出された酸化物種を下記表1に示す。表1において、「○」は、酸化物種を同定できる程度に回折ピークが検出されたことを意味し、「−」は、酸化物種を同定できる程度に回折ピークが検出されなかったことを意味する。なお、本実験で用いたバルク材には、Fe23、Fe34、FeOの酸化物種が検出されたが、これら以外の酸化物種は検出されなかった。
下記表1から次のように考察できる。No.1のバルク材からは酸化物種のうちFe34に由来する回折ピークのみが検出され、純度の高いマグネタイトバルク材が得られているが、焼結時間がやや短いため焼結不充分となり、バルク材の強度が若干低くなって機械的特性の測定用試験片としては用いることができなかった。
No.2〜5,11〜14のバルク材からは、酸化物種のうちFe34に由来する回折ピークのみが検出され、純度の高いマグネタイトバルク材が得られた。なお、No.2〜5,11〜14のバルク材のマグネタイト純度は、95%以上であると考えられる。
No.6〜10は、0.13Pa(1×10-3Torr)以下の真空雰囲気で焼結しているため、酸素分圧が低くなり過ぎてFe34の一部が還元されてFeOが生成していた。従ってマグネタイト純度の高いバルク材を製造することができない。
No.15〜20のバルク材からは、酸化物種のうちFe34に由来する回折ピーク以外に、他の酸化物種に由来する回折ピークも検出された。ピーク強度比から、マグネタイト純度は低いと考えられた。従ってNo.15〜20のバルク材は、機械的特性の測定用試験片には用いることができなかった。
Figure 0005276837
[実験3]
粉末状の四三酸化鉄試薬(和光純薬工業社製)を円盤状の金型(φ180mm×20mm)に仕込み、147MPa(1.5tonf/cm2)の圧力をかけて成型した。その結果、金型から取り出した成型体はいずれも崩壊せず、安定な成型体が形成されたことを確認した。
次に、金型から取り出した成型体を、上記実験1と同じ条件で焼結し、バルク材(焼結体)を得た。得られたバルク材を目視にて観察した結果、クラックの発生は認められず、良好なバルク材が作製できた。
得られたバルク材を90mm×90mm×20mmの角形ブロック状に機械加工した後、内径が90mm×90mmのグラファイト製の金型に入れ、温度と圧力をかけて0.13Pa(1×10-3Torr)以下の真空雰囲気で60分間ホットプレスを行った。
ホットプレスして得られたバルク材をXRD(X線回折)測定し、バルク材を構成する酸化物種を調べた。その結果、バルク材からは、酸化物種のうちFe34に由来する回折ピークのみが検出され、純度の高いマグネタイトバルク材が得られていることが分かった。
また、ホットプレスして得られたマグネタイトバルク材の見かけ密度をアルキメデス法によって測定した。一方、マグネタイトの真密度の値は5.18g/cm3であるから、見かけ密度と真密度から下記式で焼結密度を算出した。温度と圧力を変えてホットプレスを行ったときにおけるマグネタイトバルク材の焼結密度の測定結果を図1に示す。
焼結密度=(マグネタイトバルク材の見かけ密度)÷(マグネタイトの真密度)
図1から次のように考察できる。ホットプレスを700℃で行った場合は、39.2MPa(400kgf/cm2)程度以上に加圧することで、マグネタイトバルク材の焼結密度を95%以上とすることができる。一方、ホットプレスを900〜1000℃で行った場合は、29.4MPa(300kgf/cm2)程度以上に加圧することで、マグネタイトバルク材の焼結密度を95%以上とすることができる。即ち、700℃以上で、39.2MPa(400kgf/cm2)以上でホットプレスを行えば、焼結密度を95%以上とすることができる。なお、真空雰囲気の代わりに、純Arガス雰囲気または純N2ガス雰囲気でホットプレスを行ってもFe34の相変態は認められず、純度が高く、高密度のマグネタイトバルク材が得られた。一方、真空雰囲気の代わりに、大気雰囲気でホットプレスを行った場合は、バルク材の表面にヘマタイト(Fe23)が生成しており、バルク材の純度が低下していた。
[実験4]
上記実験3において、ホットプレスして得られたマグネタイトバルク材の硬度(ビッカース硬度)を、室温または1000℃で測定した。硬度測定には日本光学製MQ型高温顕微硬度計を使用し、JIS Z 2244に従い測定を行った。測定結果を下記表2に示す(No.21)。
比較対象として、鉄の純度が99.99%の高純度鉄を10mm×20mm×3mmの大きさに切断した供試材を用い、この供試材を1000℃で30分間、酸素雰囲気中で加熱することにより、表面を酸化させた比較用試料を作製した。比較用試料には、厚さ約600μmのスケールが生成していた。比較用試料を加工してスケール断面を露出させ、Fe34が層状に形成されている部分において、室温または1000℃で硬度(ビッカース硬度)測定を行った。測定結果を下記表2に示す(No.22)。
下記表2から次のように考察できる。室温と1000℃のいずれの条件で測定した場合でも、マグネタイトバルク材の硬度は、比較用試料に生成したスケールのうち、Fe34が層状に形成されている部分の硬度にほぼ近い値となっていた。従って硬度測定の結果からも、得られたマグネタイトバルク材は高密度で、高純度のマグネタイトで構成されていることが分かる。
Figure 0005276837
[実験5]
上記実験3において、ホットプレスして得られたマグネタイト(Fe34)バルク材を、3.5mm×3.5mm×20mmの大きさの角形ブロック状に機械加工して、供試体を得た。得られた供試体について、熱機械分析(TMA)装置を用いて、室温から1000℃までの線膨張率を測定し、熱膨張係数を算出した。算出した熱膨張係数の結果を図2に示す。また、参考データとして、ヘマタイト(Fe23)バルク材を作成し、同様の方法で線膨張率を測定して熱膨張係数を算出した結果を図2に示す。図2中、マグネタイトバルク材の結果を実線で、ヘマタイトバルク材の結果を点線で表示した。
図2から明らかなように、マグネタイトバルク材とヘマタイトバルク材では、線膨張率の温度変化に差異があることが認められ、これらの材料の熱膨張係数は相互に異なることが確認できた。
図1は、実験3においてマグネタイトバルク材の焼結密度を算出した結果を示すグラフである。 図2は、実験5において熱膨張係数を算出した結果を示すグラフである。

Claims (5)

  1. Fe34粉末を成型して成型体を得る工程と、
    得られた成型体を焼結する工程を含み、
    前記成型は、98〜294MPaの圧力で行い、
    前記焼結は、純Arガス、純N 2 ガス、純Heガス、或いはこれらの混合ガス雰囲気で、1000〜1300℃で行うことを特徴とするマグネタイトバルク材の製造方法。
  2. 前記マグネタイトバルク材は、マグネタイト相の物性測定用に用いられるものである請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記焼結は、10〜120分で行う請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 焼結後、更にホットプレスを行う請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 前記ホットプレスは、不活性ガス雰囲気または0.13Pa以下の真空雰囲気で、700〜1000℃で、39.2〜78.5MPaで行う請求項に記載の製造方法。
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