JP5270936B2 - 燃料電池用膜電極構造体の製造方法 - Google Patents

燃料電池用膜電極構造体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、燃料電池用膜電極構造体の製造方法に関する。
燃料電池としては、固体高分子電解質膜の両面のそれぞれに電極触媒層およびガス拡散層を有する膜電極構造体が、反応ガスの流路を有する一対のセパレータで挟持されたもの(単セル)が知られている。この燃料電池では、カソード側の電極触媒層に供給される空気中の酸素と、アノード側の電極触媒層に供給される燃料ガス中の水素との電気化学反応によって発電が行われる。
従来、膜電極構造体の電極触媒層としては、カーボン粒子(担体)に触媒金属を担持させた担持触媒と、電極電解質とを含むものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、このような電極触媒層では、例えば、燃料電池に電圧反転が生じると、次式(1)に示すように、担体由来の炭素と、水(生成水および加湿水)との反応が進行し得る。
C+2HO→CO+4H+4e・・・(1)
そして、式(1)で示される反応が進行すると、触媒金属の担体であるカーボン粒子が消費されて触媒金属が電極触媒層から脱離することとなる。
そこで、このような触媒金属の脱離を防止するために、触媒金属を担体に担持させていない担体レスの電極触媒層が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
この担体レスの電極触媒層は、触媒金属としての白金黒と、電極電解質としての含フッ素イオン交換樹脂と、含フッ素化合物からなる溶媒との混合組成物を塗工し、前記溶媒を揮発させて形成されたものである。
このような担体レスの電極触媒層は、触媒金属が担体(カーボン粒子)に担持されていないので、担持触媒を含むものと異なって前記式(1)のような反応が進行することがなく触媒金属の脱離を防止することができる。つまり電極触媒層の耐久性が向上することとなる。
特開2005−294264号公報 特開2002−151088号公報
しかしながら、従来の担体レスの電極触媒層を備えた膜電極構造体は、前記したように、電極触媒層からの触媒金属の脱離を防止することができるものの、電極触媒層中に分散する触媒金属が前記した電気化学反応に寄与し得る最適な位置に配置されずに、燃料電池の発電特性が不充分となる問題があった。
そこで、本発明は、耐久性に優れるとともに、燃料電池の発電特性を向上させることができる担体レスの電極触媒層を備える燃料電池用膜電極構造体の製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、担体レスの電極触媒層中に形成される細孔のうち、所定の範囲の細孔径を有するものの細孔容積を制御し、分散する触媒金属の単位質量あたりの前記細孔容積を所定値以下とすることによって、発電特性が向上することを見出してなされたものである。
すなわち、前記課題を解決する本発明の燃料電池用膜電極構造体の製造方法は、触媒金属と電極電解質とを含む担体レスの電極触媒層が固体高分子電解質膜の両面に形成された燃料電池用膜電極構造体の製造方法であって触媒金属と電極電解質と分散剤とを含む触媒組成物を調製する工程と、前記触媒組成物を薄層化して前記電極触媒層を形成する工程と、を有する燃料電池用膜電極構造体の製造方法において、前記電極触媒層中の細孔のうち、細孔径が1.0μm以上、10.0μm以下である細孔の細孔容積が、前記触媒金属1gあたり0.47mL以下となるように、前記触媒組成物中の固形分に対する分散剤の添加率を調整することを特徴とする。
この燃料電池用膜電極構造体の製造方法によれば、電極触媒層中に分散する触媒金属が電気化学反応に寄与し得る最適な位置に配置されることで触媒金属の反応効率が高くなって発電特性が優れた燃料電池用膜電極構造体となる。
また、このような燃料電池用膜電極構造体の製造方法においては、前記電極触媒層中の細孔のうち、細孔径が1.0μm以上、10.0μm以下である細孔の細孔容積が、前記電極触媒層1gあたり0.43mL以下となるように前記分散剤の添加率を調整することが望ましい。
また、このような燃料電池用膜電極構造体の製造方法においては、前記電極触媒層中の細孔のうち、細孔径が1.0μm以上、10.0μm以下である細孔の細孔容積が、前記触媒金属1gあたり0.01mL以上であるとともに、前記電極触媒層1gあたり0.01mL以上となるように前記分散剤の添加率を調整することが望ましい。
そして、前記課題を解決する本発明の燃料電池用膜電極構造体の製造方法は、触媒金属と電極電解質とを含む担体レスの電極触媒層を固体高分子電解質膜の両面に形成する燃料電池用膜電極構造体の製造方法において、触媒金属と電極電解質と分散剤とを含む触媒組成物を調製する工程と、前記触媒組成物を薄層化して前記電極触媒層を形成する工程と、
を有することを特徴とする。
この製造方法によれば、電極触媒層中で触媒金属の凝集によって生じたと考えられる細孔径が1.0μm以上、10.0μm以下である細孔の細孔容積を減少させることができる。その結果、この製造方法では、電極触媒層中に分散する触媒金属が電気化学反応に寄与し得る最適な位置に配置されることで触媒金属の反応効率が高くなって発電特性に優れる燃料電池用膜電極構造体を容易に得ることができる。
また、このような燃料電池用膜電極構造体の製造方法においては、前記分散剤は、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ヒドロキシプロパナール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3−メチル−3−メトキシブタノール、および2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7ジオールから選ばれる少なくとも1種であることが望ましい。
また、このような燃料電池用膜電極構造体の製造方法においては、前記分散剤は、前記触媒組成物中の固形分に対して1.0質量%以上、10.0質量%以下となるように調整することが望ましい。
なお、ここでの「固形分」には、溶媒(水をはじめとする)や、前記した分散剤を含まない。
本発明によれば、耐久性に優れるとともに、燃料電池の発電特性を向上させることができる担体レスの電極触媒層を備える燃料電池用膜電極構造体の製造方法を提供することができる。
次に、本発明の燃料電池用膜電極構造体の実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。参照する図面において、図1は、燃料電池用膜電極構造体の断面を示す模式図である。
図1に示すように、燃料電池用膜電極構造体(以下、単に「膜電極構造体」という)10は、固体高分子電解質膜20と、この固体高分子電解質膜20の両面のそれぞれに設けられた電極触媒層12,12と、この電極触媒層12,12上に設けられたガス拡散層21,21とを備えている。ちなみに、この膜電極構造体10は、反応ガスの流路を有する一対のセパレータ(図示省略)で挟持されることで単セル(図示省略)を構成する。そして、この単セル(燃料電池)では、カソード側となる電極触媒層12に供給される空気中の酸素と、アノード側となる電極触媒層12に供給される燃料ガス中の水素との電気化学反応によって発電が行われる。
固体高分子電解質膜20としては、公知のものでよく、ペルフルオロスルホン酸ポリマ等からなるものが挙げられる。
ガス拡散層21,21は、反応ガス(酸素および空気)を電極触媒層12,12に向かって拡散させるものである。このガス拡散層21,21としては、公知のものでよく、カーボンペーパ等のガス透過性材料からなるものが挙げられる。
電極触媒層12,12は、触媒金属と電極電解質とを含んでいる。触媒金属としては、白金、パラジウム等が挙げられ、電極電解質としては、高分子電解質等のイオン導電性バインダ等が挙げられる。これらの触媒金属および電極電解質は、公知のものでよい。
そして、本実施形態での電極触媒層12,12は、担体レスであって、この担体レスの電極触媒層12,12は、周知のとおり、担持触媒を含むものとは異なって、カーボン粒子等の担体に担持されていない触媒金属を含むものである。つまり、この電極触媒層12,12では、触媒金属のそれ自体が電極電解質に分散している。
また、この電極触媒層12,12は、後記する製造方法を使用して製造することで形成された微細な細孔を有している。そして、電極触媒層12,12中の細孔のうち、比較的に大きなマイクロメータスケールの細孔、具体的には、細孔径が1.0μm以上、10.0μm以下である細孔の細孔容積は、前記触媒金属1gあたり0.47mL以下となっている。
また、細孔径が1.0μm以上、10.0μm以下である細孔の細孔容積は、電極触媒層12の1gあたり0.43mL以下であることが望ましい。
そして、細孔径が1.0μm以上、10.0μm以下である細孔の細孔容積は、触媒金属1gあたり0.01mL以上であるとともに、電極触媒層12の1gあたり0.01mL以上であることが望ましい。
次に、本実施形態に係る膜電極構造体10の作用効果について説明する。
この膜電極構造体10では、前記したように、燃料電池(単セル)が構成されて発電が行われる際に、電極触媒層12,12中の細孔のうち、細孔径が1.0μm以上、10.0μm以下である細孔の細孔容積は、前記触媒金属1gあたり0.47mL以下となっているので、従来の担体レスの電極触媒層を備えた膜電極構造体と比較して電極触媒層12中に分散する触媒金属が電気化学反応に寄与し得る最適な位置に配置される。その結果、この膜電極構造体10は、触媒金属の反応効率が高くなってセル電圧等の発電性能に優れたものとなる。ちなみに、この膜電極構造体10では、触媒金属の配置の最適化によって、電極触媒層12中での物質輸送に起因する過電圧が抑制されることで、発電性能が向上したものと考えられる。
また、細孔径が1.0μm以上、10.0μm以下である細孔の細孔容積が電極触媒層12の1gあたり0.43mL以下となっている膜電極構造体10は、より確実に発電性能を向上させることができる。
そして、細孔径が1.0μm以上、10.0μm以下である細孔の細孔容積が、触媒金属1gあたり0.01mL以上であるとともに、電極触媒層12の1gあたり0.01mL以上となっている膜電極構造体10では、電極触媒層12が緻密になり過ぎずに反応ガス(水素および空気)のガス拡散性が良好となるとともに、水(生成水および加湿水)の排出性が良好となる。これとは逆に触媒金属1gあたりの、および電極触媒層1gあたりの各細孔容積が0.01mLを下回ってもそれに見合う発電性能の向上が期待できない場合がある。
また、膜電極構造体10は、担体レスの電極触媒層12を備えており、触媒金属が担体(カーボン粒子)に担持されていないので、担持触媒を含む電極触媒層を備える膜電極構造体と異なって、前記式(1)のような反応が進行することがなく触媒金属の脱離を防止することができる。つまり、膜電極構造体10では、電極触媒層12の耐久性が向上することとなる。
次に、膜電極構造体10(図1参照)の製造方法について説明する。
この製造方法は、触媒金属と電極電解質と分散剤とを含む触媒ペースト(触媒組成物)を調製する工程と、触媒ペーストを薄層化して電極触媒層12(図1参照)を形成する工程とを有している。この製造方法では、触媒ペーストに分散剤を含むことが主な特徴となっている。
触媒金属および電極電解質としては、前記したものでよい。
分散剤としては、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ヒドロキシプロパナール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3−メチル−3−メトキシブタノール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7ジオール等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
また、これらの分散剤の中でも好ましいのは、低沸点を示す非イオン系界面活性剤であり、更に好ましいのは、低沸点を示すアルキレングリコール系界面活性剤である。ちなみに、分散剤の沸点は、180℃以下のものが好ましい。特に好ましいアルキレングリコール系界面活性剤は、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、および2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7ジオールであり、最も好ましいのは、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールである。
触媒ペーストは、これらの触媒金属と電極電解質と分散剤とを、電極電解質の溶媒とともに混合して調製される。
電極電解質の溶媒としては、例えば、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール等が挙げられる。
なお、触媒金属は、予め純水と混合した後に電極電解質、分散剤、および溶媒と混合することが望ましい。このように予め触媒金属と純水とを混合することによって触媒調製時の触媒金属の燃焼を防止することができる。
分散剤の添加量は、触媒ペースト中の固形分に対して1.0質量%以上、10.0質量%以下となるように設定することが望ましい。ちなみに、ここでの「固形分」には、溶媒(水をはじめとする)や、前記した分散剤を含まない。なお、分散剤の添加量が多すぎると、触媒ペースト中で電極電解質が凝集する場合や、形成した電極触媒層12(図1参照)中に分散剤が残存することによって燃料電池の所期の発電性能が発揮されない場合がある。これとは逆に少なすぎると、後記するこの製造方法の効果が充分に発揮されない場合がある。
溶媒の配合量は、後記する塗工時における触媒ペーストの固形分濃度で15.0〜20.0質量%となるように設定すればよい。
これらの触媒金属、電極電解質、分散剤、および溶媒の混合には、ボールミル等の公知の混合機を使用することができる。
次に、得られた触媒ペーストを使用して電極触媒層12(図1参照)が形成される。本実施形態では、転写法によって電極触媒層12を形成する方法について説明する。この工程では、まず、触媒ペーストが剥離シート上にドクターブレード等を使用した公知の方法で塗工される。この塗工工程によって、触媒ペーストは薄層化される。
剥離シートとしては、例えば、プラスチックフィルムの表面にフッ素樹脂加工を施したものを好適に使用することできる。
触媒ペーストの塗工量は、剥離シートに塗工した単位面積あたりの触媒ペーストに含まれる触媒金属の質量換算で0.01〜1.50mg/cm程度が望ましい。
次に、剥離シートに塗工された触媒ペーストは、乾燥炉で80〜120℃で、5〜15分程度乾燥した後に、用意された固体高分子電解質膜20(図1参照)の両面に転写される。この転写工程は、具体的には、100〜180℃程度の温度で行うことが望ましい。また、この転写工程は、0.5〜5.0MPa程度の加圧下に行われる。そして、剥離シートを除去することによって固体高分子電解質膜20の両面には、電極触媒層12が形成されることとなる。
次に、電極触媒層12上にガス拡散層21(図1参照)が形成されることによって、膜電極構造体10が完成する。このガス拡散層21は、例えば、カーボンシート等のガス透過性材料を電極触媒層12側に100〜180℃程度の加熱下に0.5〜5.0MPa程度で加圧し、相互に接合させることによって形成することができる。
以上のような膜電極構造体10の製造方法によれば、以下の作用効果を奏することができる。
この製造方法では、前記した特定の分散剤を使用して触媒ペーストを調製するので、従来の担体レスの電極触媒層中で触媒金属の凝集によって生じたと考えられる細孔径が1.0μm以上、10.0μm以下の細孔、言い換えればマイクロメータスケールの比較的に大きな細孔の細孔容積を減少させることができる。つまり、この製造方法によれば、前記したように、電極触媒層12中に分散する触媒金属が電気化学反応に寄与し得る最適な位置に配置されることによって、触媒金属の反応効率が高く、発電性能に優れた膜電極構造体10を容易に得ることができる。
また、この製造方法によれば、前記した特定の分散剤を使用して触媒ペーストを調製するので、平滑で塗工性に優れた電極触媒層12を形成することができる。
なお、本発明は、前記実施形態に限定されることなく、様々な形態で実施される。
前記実施形態では、薄層化した触媒ペーストを固体高分子電解質膜20に転写して電極触媒層12を形成したが、本発明は固体高分子電解質膜20に触媒ペーストを塗工して電極触媒層12を形成してもよい。
次に、本発明の膜電極構造体およびその製造方法を実施例に基づいて更に具体的に説明する。
(実施例1〜実施例5および比較例1〜比較例5)
これらの実施例および比較例では、触媒と純水との混合物に、溶媒としての1−プロパノール(関東化学社製NPA、純度99.9%)と、電極電解質と、分散剤とを添加した。そして、これらをボールミル(10mmΦの鉄心入りボール使用)にて100rpmで2時間混合することで触媒ペーストを調製した。
触媒としては、Johnson Matthey社製の白金黒HiSPEC 1000(平均粒径11nm、比表面積27m/g(BET実測値))を使用した。
電極電解質としては、デュポン社製含フッ素イオン交換樹脂溶液 ナフィオン(登録商標)DE2020CS(イオン交換容量1.06meq/g)を使用した。触媒の質量(M)に対する電極電解質の質量(E)の比(E/M)は、表1に示す割合(0.07、0.10、および0.15)とした。この比は、表1中、「触媒金属に対する電極電解質の質量比」として記す。
Figure 0005270936
分散剤としては、日信化学工業社製、サーフィノール61(3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール))を使用した。分散剤は、触媒ペースト中の固形分に対して表1に示す割合(質量%)となるように添加した。
なお、前記した1−プロパノールは、後記する塗工時における触媒ペーストの固形分濃度が15.0〜20.0質量%となるように配合した。
次に、前記した触媒ペーストを剥離シート上に塗工した。このときの触媒ペーストの塗工量は、塗工した単位面積あたりの触媒ペーストに含まれる白金(Pt)の質量換算で0.5mg/cmとした。
そして、触媒ペーストを塗工した剥離シートを65mm×8mmに切り取ったものを13枚用意した。次いで、これらに塗工した触媒ペーストを100℃で10分、乾燥炉にて乾燥させた。つまり、次に説明する固体高分子電解質膜20に形成する電極触媒層12,12と同様のものを剥離シート上に形成した。この電極触媒層12について、細孔容積を全自動細孔分布測定装置にて測定した。全自動細孔分布測定装置としては、Quanta Chrome社製、Pore Master 60−GTを使用した。そして、この測定では、電極触媒層12中の細孔のうち、細孔径が1.0μm以上、10.0μm以下である細孔の細孔容積を求めた。その結果を表1に白金1gあたりの細孔容積(mL/Pt・g)、および電極触媒層12の1gあたりの細孔容積(mL/層・g)として示す。
次に、剥離シートに塗工した触媒ペーストを固体高分子電解質膜20の両面に転写して固体高分子電解質膜20と電極触媒層12,12との接合体(CCM)を作製した。この転写は、100℃で3.9MPa(40kgf/cm)の加圧下に行われた。このCCMの両面にガス拡散層21,21を形成することで膜電極構造体10を作製した。このガス拡散層21,21は、CCMの両面にカーボンペーパを接合することによって形成された。なお、このカーボンペーパの接合は、120℃で2.9MPa(30kgf/cm)の加圧下に行われた。
なお、固体高分子電解質膜20には、ナフィオン(登録商標)膜(デュポン社製、NRE−212)を使用した。
そして、前記した実施例および比較例ごとに作製された膜電極構造体10について燃料電池(単セル)を作製した。
この単セルは、膜電極構造体10を一対のセパレータで挟持することで作製された。ちなみに、この単セルの縦横のサイズは、60×60mmであり、反応ガスの流れ方向に直線溝が形成されている。
次に、この単セルを使用して0.1A/cmの条件で発電を行った際のセル電圧を測定した。この単セルの運転条件としては、セル温度が72℃、水素極側の湿度が50%、空気極側の湿度が30%、水素利用率が18%、空気利用率が14%、水素圧が100kPa(G)、空気圧が100kPa(G)に設定された。
各実施例および各比較例での単セルのセル電圧を表1に示す。
(膜電極構造体の評価)
表1に示すように、細孔径が1.0μm以上、10.0μm以下である細孔の細孔容積が、触媒金属1gあたり0.47mLを超えるとともに、電極触媒層12,12の1gあたり0.43mLを超える比較例5では、セル電圧が615mVとなっている。これに対して、細孔径が1.0μm以上、10.0μm以下である細孔の細孔容積が、触媒金属1gあたり0.47mL以下であるとともに、電極触媒層12,12の1gあたり0.43mL以下である実施例1から実施例5では、比較例5のセル電圧を上回っている。特に、実施例2のセル電圧は、782mVであって、比較例5のセル電圧よりも約30%程度向上している。
また、比較例5では、分散剤を含まない触媒ペーストを使用したことで、細孔径が1.0μm以上、10.0μm以下である細孔の細孔容積が、触媒金属1gあたり0.47mLを超えるとともに、電極触媒層12,12の1gあたり0.43mLを超えている。これに対して、実施例1から実施例5では、分散剤を含む触媒ペーストを使用したことで、細孔径が1.0μm以上、10.0μm以下である細孔の細孔容積が、触媒金属1gあたり0.47mL以下であるとともに、電極触媒層12,12の1gあたり0.43mL以下となっている。つまり、分散剤を含む触媒ペーストを使用して電極触媒層12,12を形成することで、セル電圧が向上することが判明した。
そして、実施例1と比較例1および比較例2との比較、実施例2と比較例3および比較例4との比較、ならびに実施例3から実施例5と比較例5との比較から明らかなように、触媒ペースト中の固形分に対して分散剤を1.0質量%以上、10.0質量%以下となるように調整することによって、前記所定の細孔の細孔容積を前記した範囲内となるように制御できることが判明した。
燃料電池用膜電極構造体の断面を示す模式図である。
符号の説明
10 燃料電池用膜電極構造体
12 電極触媒層
20 固体高分子電解質膜
21 ガス拡散層

Claims (4)

  1. 触媒金属と電極電解質とを含む担体レスの電極触媒層が固体高分子電解質膜の両面に形成された燃料電池用膜電極構造体の製造方法であって
    触媒金属と電極電解質と分散剤とを含む触媒組成物を調製する工程と、
    前記触媒組成物を薄層化して前記電極触媒層を形成する工程と、
    を有する燃料電池用膜電極構造体の製造方法において、
    前記電極触媒層中の細孔のうち、細孔径が1.0μm以上、10.0μm以下である細孔の細孔容積が、前記触媒金属1gあたり0.47mL以下となるように、前記触媒組成物中の固形分に対する分散剤の添加率を調整することを特徴とする燃料電池用膜電極構造体の製造方法
  2. 前記電極触媒層中の細孔のうち、細孔径が1.0μm以上、10.0μm以下である細孔の細孔容積が、前記電極触媒層1gあたり0.43mL以下となるように前記分散剤の添加率を調整することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用膜電極構造体の製造方法
  3. 前記電極触媒層中の細孔のうち、細孔径が1.0μm以上、10.0μm以下である細孔の細孔容積が、前記触媒金属1gあたり0.01mL以上であるとともに、前記電極触媒層1gあたり0.01mL以上となるように前記分散剤の添加率を調整することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池用膜電極構造体の製造方法
  4. 前記分散剤は、前記触媒組成物中の固形分に対して1.0質量%以上、10.0質量%以下となるように調整することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池用膜電極構造体の製造方法。
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