JP5264147B2 - プラズマ溶融装置、プラズマ溶融方法および坩堝 - Google Patents
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例えば、特許文献1には、ワイヤソーを用いてシリコンを切断する際に生じる廃液(廃スラリ)から粉末シリコンを回収する方法が開示されている。
しかし、一般に粉末シリコンを加熱、溶融することには幾つかの問題点があることが知られている。例えば、特許文献2の[0005]には「プラズマアークやガス・ジェットは粉状原料を投入した際の飛散ロスが大きいために歩留りが低くなり、また直流アーク法もアーク火点での10000℃にも達する高温の影響でシリコンが蒸発してしまう」などと記載されている。
前記坩堝内に前記溶融対象を搬入する搬入機構と、溶融した溶融対象を前記坩堝から搬出する搬出機構をさらに備えてもよい。
また、この発明は、さらに別の観点から上部に開口を備え内部に溶融対象を収容するための有底筒状部材と、前記有底筒状部材の内部底面に設けられた凸型の突起とを備えることを特徴とする坩堝を提供するものである。
プラズマトーチとは、一般にガス雰囲気中で直流電源又は高周波電源によるアークを発生させ、それによってプラズマを生成する装置である。
(1)図10に示すように、トーチ4の電極41と被加熱物15との間に、直流電源21から電圧を印加し、プラズマトーチ4と被加熱物間15との間に形成される通電状態のプラズマ7aを利用して非加熱物15を加熱する移行形プラズマトーチと、
(2)図11に示すように、プラズマトーチ4から吹き出す非通電状態のプラズマ7bを利用する非移行形プラズマトーチの2種類に大別される。
非移行型プラズマトーチ(図11)においては、通電状態のプラズマ7aは電極41とノズル42の間にのみ生成され、非加熱物15に向かって吹き出されることはない。
<実施形態1>
(1)プラズマ溶融装置
図1に示すプラズマ溶融装置100は、坩堝50とプラズマトーチ4を具備する。坩堝50は、上部の第1開口部11と、溶融対象5aを収容する凹部20とを有する有底筒状の坩堝本体1と、第1開口部11よりも小さな第2開口部61を有して第1開口部11を閉じる蓋部6とを備える。
(坩堝)
坩堝本体1は、通電状態のプラズマ、非通電状態のプラズマおよび/または加熱ガスの温度に耐えることができる材料からなり、溶融された溶融対象つまり、溶湯5bを適宜保持できるものであればいかなるものであってもよい。
蓋部6は、坩堝本体1を閉じるように配置される板状部材であり、坩堝本体1と同様の材料から形成されることが好ましい。
(凹部)
坩堝1には、溶融対象5aを収容するための凹部が必要である。従って、通常、坩堝1は上部が開放され側面と底面とを有する有底筒状部材により形成され、内部にその凹部を備える。
坩堝50における第1開口部11と、蓋部6における第2開口部61とは、一般に坩堝本体1の上部および蓋部6を構成する板状部材に開けられた円形孔であるが、その形状に限定は無い。
搬入機構2の好ましい例として、傾斜した供給管を挙げることができる。もちろん、これに限られるものではなく、ベルトコンベアなどを用いてもよい。さらに、本発明に用いる搬出機構3としては、略水平に配置された(又は傾斜した)排出管を挙げることができる。これらの部材は坩堝1と同様の材料からなることが好ましい。
プラズマトーチ4として、直流プラズマトーチが好ましく用いられる。ただし、直流プラズマトーチに限らず、たとえば高周波プラズマトーチを用いてもよい。
プラズマトーチ4は図2に示すように、棒状の電極(陰極)41と、それを囲む円筒形のノズル42とを備える。電極41の先端部はトリア(二酸化トリウム)とタングステンの合金などを用い、ノズル42は銅などの金属やセラミックスで構成される。
溶融対象5aは各種金属、金属酸化物および半導体材料の単体または混合物であるが、主に粉末シリコンである。また、シリコンウェハの製造時の廃液から回収した粉末シリコンを使用してもよい。
(2)溶融方法
次に、溶融装置100を用いたプラズマ溶融方法について、図3〜図8を用いて説明する。
図3に示すように、溶融装置100では、坩堝本体1に搬入機構2と搬出機構3および蓋部6が配置された坩堝50に対し、開口部61から所定の間隔をあけてプラズマトーチ4(直流プラズマトーチ)を配置する。プラズマトーチ4は前述のように電極(陰極)41と、それを囲むノズル42を備える。
また、プラズマ作動ガス7の流量は、例えば0.3m3/h〜5.0m3/hである。プラズマ作動ガス7の流量と減圧ポンプ(これは必要に応じて設けられる)によって定まる容器310内部の圧力は、通常0.2atm〜2.0atm以下である。
また、粉末シリコンの溶融に非通電状態のプラズマ7bと加熱ガス7cを用いるので、従来型のプラズマを加熱源として用いる溶融方法(一般に通電状態のプラズマを用いる)と異なり、プラズマトーチ4の電極41に由来する汚染(プラズマ生成時の高熱により、電極41が溶融および/または気化してプラズマ7a中に混入することによる)が少ない。
この実施形態においては、図4〜図8に示すように、坩堝本体1aの底部に突起12が配置される。すなわち実施形態2における坩堝本体1aは、実施形態1における坩堝本体1の底面に溶融空間に対して突出する突起12を設けたもので、その他の構成は坩堝本体1と同等である。
また、突起12の材料は、坩堝本体1aに使用される材料で形成されればよく、特に限定されない。特に、突起12は黒鉛製の坩堝1と一体に形成されることが好ましい。
<実施例1>
本実施例1において使用したシリコン溶融装置は、図3と同等に構成され、日本坩堝(株)製の黒鉛製坩堝(内径150mm、高さ200mmであり、その蓋部に直径10mmの円形の開口部を有する)および、前記開口部の上方に先端を15mm離して設置された日産TANAKA(株)製のモリブデン製電極を有するプラズマトーチ(電源としてTSI−120K2を有する)からなり、これを約0.2m3の容積を有する溶融室(密閉可能な容器)内に設置している。
また、溶融室内部の気体雰囲気は特に制御してはいないが、溶融室容量に対して十分な量のプラズマ作動ガスを投入したので、アルゴンと窒素の体積比85:15で1atmの雰囲気にあると考えられる。
また、別途同様の条件下での坩堝内部の温度を測定したところ、1800℃〜2000℃であった。
また、溶融前の粉末シリコンには約10ppmwのリンが含まれていた(ICP−mass分析による)が、溶融後には6ppmwとなっていた。これは溶融時にリンが気化し、除去されたためと考えられる。
また、シリコン中のモリブデンの濃度は、融解前と融解後ともに0.5ppmであった。
坩堝底部に、直径50mm、高さ40mmの円柱状突起を形成した坩堝を用いた以外は、実施例1に準じた実験を行った。
この際、得られた溶融シリコン量やその不純物濃度は実施例1とほとんど変わらなかったが、実施例1の2分間に比べて短い1分程度で溶融可能であった。
図9に示すように溶融室910に溶融室910内にプラズマ溶融装置900を設置し、実施例1,2と同じ粉末シリコンの溶融を行った。
本比較例におけるプラズマ溶融装置900と実施例1,2におけるプラズマ溶融装置100(図3参照)との相違点は、プラズマ溶融装置900には、坩堝本体1に蓋部6が無いこと、通電状態のプラズマ7aをプラズマトーチ4と坩堝本体1の底部との間に生成していること(まず、プラズマトーチ4を坩堝本体1の底部に近づけ、ここに通電状態のプラズマを発生させた後、プラズマトーチ4をある程度引き上げることによる)、そして、粉末シリコンと通電状態のプラズマ7aとが接することで粉末シリコンの溶融が行われることである。
なお、本比較例における溶融シリコン中のリン濃度は実施例と同じく6ppmwであった。
2 搬入機構
3 搬出機構
4,4a プラズマトーチ
5a 溶融対象
5b 溶湯
6 蓋部
7 プラズマ作動ガス
7a 電通状態のプラズマ
7b 非電通状態のプラズマ
7c 加熱ガス
11 第1開口部
12 突起
21 直流電源
22 高周波電源
50 坩堝
61 第2開口部
100,900 プラズマ溶融装置
310 容器
Claims (5)
- 上部に開口を有し内部に溶融対象を収容する有底筒状の坩堝と、電極と電極を囲むノズルからなり電極とノズルの間隙にガスを流すことで得られるガス吹き出し機能を備えるプラズマトーチとを具備し、前記開口は、少なくともその周縁領域が導電材料からなり、プラズマトーチの電極と前記開口の周縁領域との間に電圧を印加するとき前記電極と前記領域との間に通電状態のプラズマが生成され、非通電状態のプラズマと非通電状態のプラズマが消失した後のガスとの少なくとも一方が前記ガス吹き出し機能により坩堝内に吹き込まれるようにプラズマトーチと坩堝が配置されたプラズマ溶融装置。
- 上部が開放され内部に溶融対象を収容する有底筒状の本体と、本体の上部を閉じる蓋部とからなる坩堝と、電極と電極を囲むノズルからなり電極とノズルの間隙にガスを流すことで得られるガス吹き出し機能を備えるプラズマトーチとを具備し、
蓋部は坩堝の外部から内部へ貫通する開口を有し、開口はその周縁領域が導電材料からなり、プラズマトーチが備える電極と前記開口の周縁領域との間に電圧を印加するとき前記電極と前記領域との間に通電状態のプラズマが生成され、非通電状態のプラズマと非通電状態のプラズマが消失した後のガスとの少なくとも一方が前記ガス吹き出し機能により坩堝内に吹き込まれるようにプラズマトーチと坩堝とが配置されたプラズマ溶融装置。 - 前記坩堝内に前記溶融対象を搬入する搬入機構と、溶融した溶融対象を前記坩堝から搬出する搬出機構をさらに備える請求項1または請求項2に記載のプラズマ溶融装置。
- 請求項1〜3のいずれか1つに記載のプラズマ溶融装置を用い、前記プラズマトーチの電極と前記開口の周縁領域との間に電圧を印加して前記電極と前記領域との間に通電状態のプラズマを生成し、非通電状態のプラズマおよび/または前記非通電状態のプラズマが消失した後の加熱ガスを坩堝内に吹き込み、それによって前記溶融対象を溶融する工程を含むことを特徴とするプラズマ溶融方法。
- 前記坩堝にシリコンを含む溶融対象を予め搬入する搬入工程と、溶融した溶融対象を前記坩堝から搬出する搬出工程をさらに含む請求項4記載のプラズマ溶融方法。
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