JP5263926B2 - ダイボンド剤組成物及びそれを用いた半導体装置 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体チップを基板に接着するためのダイボンド剤に関する。詳細には、ポリシロキサン骨格を有する樹脂と、所定のシリカ粉末を含むことによって、耐熱衝撃性に優れ、且つ、ブリード(滲み)の無いダイボンド剤、及び該ダイボンド剤を用いた半導体装置に関する。
ダイボンド剤は半導体チップを基板上に固定する接着剤であり、半導体装置の組み立てに不可欠である。ダイボンド剤は、通常、ディスペンサ又は印刷機によって基板上に塗付された後、溶剤を揮発させて、所謂Bステージにする。生産効率上、Bステージの状態で、数時間〜数日保存される場合がある。しかし、この保存の間に、成分、例えば液状成分、がブリード(滲み出し)するという問題がある。滲み出した物質は、基板上に形成された配線を汚染し、配線間のショートを起こす場合がある。
ところで、樹脂硬化後のブリードを防ぐために、(A)液状エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)メタクリル酸アルキル共重合体、(D)平均粒径が0.5μm以上5μm以下の無機充填剤、及び(F)変性シリコーン樹脂を含むサイドフィル材が知られている(特許文献1)。該サイドフィル材はチップ搭載後に施与され、上述のようなBステージで保管されることは無い。また、チップ周辺部にディスペンサー等により、半田バンプの高さよりも厚く施与される点で、スクリーン印刷等により、薄膜状に施与されるダイボンド剤と相違する。このような相違により、該サイドフィル材をダイボンド用に使用しても、ブリードが未だ認められることが、本発明者らの実験で確認された。即ち、該サイドフィル材を薄膜状に施与するために、希釈剤を加えて印刷した後、B−ステージ状態にするまでの間に、ブリードが発生した。該ブリードは、希釈剤の沸点以上の温度で加熱しても蒸発しなかったことから、希釈剤では無いことが分かった。
特開2005−105243号公報
そこで、本発明は、基板上に施与された後にブリードを起こさないダイボンド剤及び該ダイボンド剤が使用された半導体装置を提供することを目的とする。
即ち、本発明は下記の組成物である。
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤、及び(D)無機充填剤を含むダイボンド剤組成物において、
(A)成分及び(B)成分の少なくとも一つが下記式(1)で表されるシロキサン残基を含むシリコーン変性樹脂を含み、
Figure 0005263926
(Rは、互いに独立に、炭素数1〜10の1価の炭化水素基であり、nは201の整数である)
(D)成分が、BET法により測定される比表面積が50〜500m/gであるシリカ粉末を有機ケイ素化合物で表面処理して得られた無機充填剤を、前記シロキサン残基の総質量100質量部当たり、1〜50質量部で含み、及び、
ダイボンド剤組成物のヘッドスペースGC/MS分析において検出されるシランカップリング剤が、該組成物の固形分重量の0.1重量%未満である、ことを特徴とするダイボンド剤組成物。
また、本発明は、該組成物を用いた半導体装置を提供する。
本発明のダイボンド剤は、基板に施与された後に、半導体装置からブリードを起こすことが無く、且つ、その硬化物は耐熱性に優れる。
(A)エポキシ樹脂
本発明において、(A)エポキシ樹脂としては、公知のものを使用することができる。例えば、ノボラック型、ビスフェノール型、ビフェニル型、フェノールアラルキル型、ジシクロペンタジエン型、ナフタレン型、アミノ基含有型、後述するシリコーン変性エポキシ樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。なかでもビスフェノールA型、ビスフェノールF型及びシリコーン変性エポキシ樹脂が好ましい。特に、25℃において、液状の樹脂が好ましく、より好ましくは25℃における粘度が100Pa・s以下、より好ましくは10Pa・s以下の樹脂が使用される。
(B)硬化剤
硬化剤(B)としては公知のものを使用することができ、例えばフェノール樹脂(後述するシリコーン変性フェノール樹脂を含む)、酸無水物、及びアミン類が挙げられる。この中でも硬化性とBステージでの安定性のバランスを考慮すると、フェノール樹脂及びシリコーン変性フェノール樹脂が好ましい。該フェノール樹脂としては、ノボラック型、ビスフェノール型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、ナフタレン型、シクロペンタジエン型、フェノールアラルキル型等が挙げられ、これらを単独、あるいは2種類以上を混合して用いても良い。なかでもノボラック型、ビスフェノール型が好ましく、また、粘度は100℃において10Pa・s、特に1Pa・s以下であることが望ましい。
(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤の配合比は、(A)中のエポキシ基のモル量と硬化剤中のエポキシ基と反応性基のモル量との比、(エポキシ基)/(反応性基)が0.8〜1.25であることが望ましく、特に0.9〜1.1であることが望ましい。該モル比がこの範囲にない場合、未反応物が残り、硬化物の性能、更にはこれを用いる半導体装置の性能に支障をきたす恐れがある。
上記(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤の少なくとも一方が、分子中に式(1)で表されるシロキサン残基を有するシリコーン変性樹脂を含む。
Figure 0005263926
硬化物中にシリコーン部分が含まれることにより、良好な耐熱衝撃性を有する。また、後述するシリカ粉末の樹脂成分中への分散性が向上され、さらに、ブリードが効果的に抑制される。なお、(A)成分及び(B)成分の双方がシリコーン変性を含んでもよい。その場合には、各成分100重量部中に、シリコーン変性樹脂が1重量部以上、好ましくは10重量部以上となるようにする。
は、互いに独立に、炭素数1〜10の1価の炭化水素基であり、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基、これらの炭化水素基の水素原子の一部または全部をハロゲン原子等で置換したハロゲン置換1価炭化水素基が挙げられる。好ましくは、メチル基或いはフェニル基である。nは1〜1000、好ましくは3〜400の整数である。
該シリコーン変性樹脂の一例として芳香族重合体とオルガノポリシロキサンとを反応させて得られる共重合体が挙げられる。芳香族重合体としては、下式(2)或いは(3)の化合物が挙げられる。

Figure 0005263926

Figure 0005263926

但し、R11は、フェノール樹脂の場合には水素原子であり、エポキシ樹脂である場合には下記式で表されるオキシラン基含有基であり、
Figure 0005263926

12は水素原子又はメチル基であり、Xは水素原子又は臭素原子であり、nは0以上の整数、好ましくは0乃至50、特に好ましくは1乃至20の整数である。
他の芳香族重合体としては、下式(4)〜(7)のアルケニル基含有化合物が挙げられる。

Figure 0005263926

Figure 0005263926

Figure 0005263926

Figure 0005263926
但し、R11、R12、X及びnについては上で述べた通りであり、mは0以上の整数、好ましくは0乃至5の整数、特に好ましくは0或いは1である。
上記芳香族重合体と反応させるオルガノポリシロキサンは、下記平均組成式(8)で示される。
(R13(R14SiO(4−a−b)/2 (8)

但し、R13は水素原子、或いは、アミノ基、エポキシ基、ヒドロキシ基もしくはカルボキシ基を含有する有機基、或いはアルコキシ基であり、R14は置換、或いは非置換の1価炭化水素基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、或いはアルケニルオキシ基であり、aは0.001〜1、bは1〜3、a+bは1〜4を満足する数である。1分子中のケイ素原子数は1乃至1000であり、aは0.001、即ち、1分子中のケイ素原子に直結したR13は1以上である。
ここでR13のアミノ基含有有機基としては、下記のものが例示され、ここで、cは1、2、又は3である。
Figure 0005263926
エポキシ基含有有機基としては、下記のものが例示され、ここで cは1、2、又は3である。
Figure 0005263926

ヒドロキシ基含有有機基としては、下記のものが例示され、ここで、dは0、1、2、又は3であり、eは1、2又は3である。
Figure 0005263926

カルボキシ基含有有機基としては、下記が例示され、ここで、fは1〜10の整数である。

Figure 0005263926
またアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基等の炭素数1〜4のものが挙げられる。
またR14の置換または非置換の1価炭化水素基としては、炭素数1乃至10のものが好ましく、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基や、これらの炭化水素基の水素原子の一部または全部をハロゲン原子等で置換したハロゲン置換1価炭化水素基が挙げられる。
更にa、bは上述した値であるが、好ましくは、aは0.01〜0.1、bは1.8〜2、a+bが1.85〜2.1、ケイ素原子数は2乃至400であ、特に5〜200である。斯かるオルガノポリシロキサンとしては、式(9)或いは(10)の化合物が挙げられる。
Figure 0005263926

Figure 0005263926

但し、R16は上式(8)のR13に相当し、アミノ基、エポキシ基、ヒドロキシ基、又はカルボキシ基含有の1価炭化水素基である。R15は式(8)のR14に相当し、置換、或いは非置換の1価炭化水素基であり、好ましくはメチル基或いはフェニル基であり、pは0〜1000の整数、好ましくは3〜400の整数であり、qは0〜20の整数、好ましくは0〜5の整数である。
斯かるオルガノポロシロキサンの例としては下記を挙げることができる。
Figure 0005263926


Figure 0005263926
式(8)のオルガノポリシロキサンの重量平均分子量は、100〜100000が望ましい。オルガノポリシロキサンの分子量が前記範囲内である場合、該オルガノポリシロキサンと反応させる芳香族重合体の構造或いは分子量により、オルガノポリシロキサンがマトリクスに均一に分散した均一構造、或いはオルガノポリシロキサンがマトリクスに微細な層分離を形成する海島構造が出現する。
オルガノポリシロキサンの分子量が比較的小さい場合、特に100〜10000である場合は均一構造、一方、オルガノポリシロキサンの分子量が比較的大きい場合、特に1000〜100000である場合は、組成物中に海島構造が形成される。均一構造と海島構造の何れが選択されるかは用途に応じて選択される。ここでオルガノポリシロキサンの分子量が100未満であると硬化物は剛直で脆くなり、一方分子量が100000より大きいと、海島が大きくなり、局所的な応力が発生し得るので、好ましくない。
上記の芳香族重合体とオルガノポリシロキサンとを反応させる方法としては公知の方法を用いることができ、例えば、白金系触媒の存在下で、芳香族重合体とオルガノポリシロキサンとを付加反応に付する。
(C)硬化促進剤
(C)硬化促進剤としては、例えば、有機リン化合物、イミダゾール、3級アミン等の塩基性有機化合物が挙げられる。有機リンの例としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−トルイル)ホスフィン、トリ(p−メトキシフェニル)ホスフィン、トリ(p−エトキシフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボレート誘導体、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレート等が挙げられる。イミダゾールの例としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられ、3級アミンの例としてはトリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等が挙げられる。これらのなかでも、2−フェニル−4−ヒドロキシメチルイミダゾール、及び2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールが好ましい。
この硬化促進剤の含有量は(A)成分と(B)成分との総計の100重量部に対して、0.1〜20重量部、特に0.5〜5重量部であることが好ましい。0.1重量部未満である場合はダイボンド剤が硬化不十分になり、また20重量部より多い場合は保存性に支障をきたす恐れがある。
(D)無機充填剤
(D)無機充填剤は、所定のシリカ粉末を含むことを特徴とする。これによって、ブリードが顕著に低減される。その理由として、各成分中の低分子量成分又は低分子量不純物等のポリマーネットワークに組み込まれない物質が、シリカに保持されることによると考えられる。該シリカ粉末は、BET法により測定される比表面積が50〜500m/g、好ましくは100〜400m/gであり、極めて微細な粉末である。比表面積が前記下限値未満であると、ブリード抑制の効果が不十分である一方、前記上限値より大きいと、組成物の粘度が高くなり、作業性に支障をきたす場合がある。斯かる比表面積を有するシリカ粉末の例としては、アエロジル130、アエロジル200、アエロジル300、アエロジル380(全て日本アエロジル(株)製、比表面積は順に130、200、300、380m/g)等のヒュームドシリカ等の湿式シリカが挙げられる。
該シリカ粉末は、有機ケイ素化合物で表面処理されている。有機ケイ素化合物としては、RSi(OR’)4−xで示されるアルコキシシラン、(R3Si)2NHで示されるシラザン、R3SiO(R2SiO)SiR3で示されるオルガノシロキサン等が挙げられる。ここでRは炭素数1〜6、特に1〜3のアルキル基又はフェニル基、R’は炭素数1〜6、特に1〜3のアルキル基を示し、xは1〜3の整数であり、yは0〜10、特に0〜3の整数である。具体的には、CH3Si(OCH33、(CH33SiOCH3、PhSi(OCH33、PhSiCH3(OCH32、{(CH33Si}2NH、CH3CH2Si(OCH33等が挙げられる。これらの有機ケイ素化合物は、シリカ表面上の反応性基、主として−SiOH、と反応して、シリカの吸湿を防止する。加えて、−SiOHがエポキシ基等と反応することを回避し、シリカ粉末の有機成分中への分散性を向上して、組成物の増粘を抑制すると共に上述した低分子量物質を保持する作用を奏する。
表面処理は、先述のブリード抑制の観点から、シリカ粉末が(A)〜(C)成分等と混合される前に、予め行なわれることが必須である。予め表面処理せずに、例えば(A)〜(C)成分等の混合時に有機ケイ素化合物を添加する、所謂インテグラルブレンド法を採ると、シリカ粉末とシリコーン変性樹脂等の馴染みの向上が十分に達成されず、ブリードが発生する恐れがある。
該有機ケイ素化合物の量は、シリカ粉末100重量部に対して、5〜40重量部、特に10〜30重量部とすることが好ましい。前記下限値未満であるとシリカ粉末とシリコーン変性樹脂の馴染みの向上が小さく、また前記上限値より多いと、未反応物が残留し、精製処理が困難になると共に、これらの未反応物がブリードする恐れがある。
シリカ粉末は、(A)成分及び/又は(B)成分に含まれる、式(1)で表されるシロキサン残基の合計100質量部に対して、1〜50、好ましくは1〜30質量部含まれる。前記下限値未満では、ブリード抑制の効果が不十分であり、また前記上限値より多いと、粘度が高くなり作業性に支障をきたす恐れがある。
シリカ粉末に加えて、他の無機充填剤を使用することができる。例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ボロンナイトライド、チッカアルミ、チッカ珪素、マグネシア、マグネシウムシリケート、アルミニウム粉、銀粉などが挙げられる。中でも真球状の溶融シリカが、組成物の低粘度化の点から好ましい。
より好ましくは、該他の無機充填剤は、その最大粒径(d98)が基板上に施与され及びB−ステージ化されたダイボンド剤の厚みの20%以下、特に10%以下であることが望ましく、平均粒径(d50)は該厚みの10%以下、特に5%以下であることが望ましい。通常、前記厚みは、20〜100μmであるので、d98は1〜10μm、d50は0.1〜1μmとなる。なお、これらの粒径は、レーザー光散乱法で測定することができる。最大粒径が上記上限値より大きい、或いは、平均粒径が上記上限値より大きい充填剤は、チップ、基板、又は金配線にダメージを与えたり、或いは無機充填剤とそれ以外の部分との境界において局所的なストレスが発生し、半導体装置の機能を損なう恐れがある。他の無機充填剤として、好ましいものは、例えばアドマテックス社製、SE2030が挙げられる。該他の無機充填剤を配合する場合には、(A)及び(B)成分の合計100質量部に対して、好ましくは50〜200質量部、より好ましくは70〜120質量部配合する。
本発明のダイボンド剤は、下記条件によるヘッドスペースGC/MS分析において検出されるシランカップリング剤が組成物重量に対して0.1重量%未満であることを特徴とする。該分析法の詳細については後述する。シランカップリング剤は低分子量シラン化合物であり、従来、基板との接着性を高めるために、ダイボンド剤に0.2〜1.0重量%程度配合される。しかし、基板が有機基板、例えばBT基板(ビスマレイミド基板)、である場合には、シランカップリング剤による接着力の向上効果が小さいだけでなく、シランカップリング剤がブリードし易いことが見出された。ヘッドスペースGC/MS分析により、典型的なシランカップリング剤、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等は約10ppm程度まで検出可能であり、組成物中の濃度に換算して、約0.1重量%以上を検出することができる。GC/MSで予め定性分析をした後、GCで定量してもよい。また、ヘッドスペース法によらず、有機溶媒可溶性の低分子量成分を予め分取した後に分析をすることで、より検出限界を高めることは可能である。
その他の成分
本発明のダイボンド剤は、上記(A)〜(D)成分に加えて、難燃剤、イオントラップ剤、カルビトールアセテート等の溶剤を、本発明の目的を阻害しない範囲で含んでよい。
溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N-メチル-2-ピロリドン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類等が挙げられ、これらのなかでも、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテートが好ましい。
組成物の製造方法
本発明のダイボンド剤は、ミキサー、ロール等の公知の方法を用い、各成分を混合して得られる。必要に応じて混合順序、時間、温度、気圧等の条件を制御することができる。
樹脂組成物の使用方法とブリードの発生
本発明のダイボンド剤を、基板の表面にディスペンサーで塗布、或いはプリンターで印刷した後、Bステージ状態にし、次いで、ボンダーでチップを搭載する。バッチ処理工程では、印刷された基板が、B−ステージ化されるまでに、数時間〜24時間程度保管される。ブリードは、主にこの工程で発生するが、本発明のダイボンド剤は、従来のダイボンド剤に比べてブリードが顕著に小さい。なお、ブリードの発生は、基板の表面に供給する際の条件、具体的にはプリンターで印刷される際のスキージの圧力などにも依存する。本発明のダイボンド剤は、印刷工程においても、ブリードが抑制されていた。
実施例
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1〜9、比較例1及び2、参考例1〜3
表1及び2に示す量の各成分を、25℃のプラネタリーミキサーで混合し、25℃の3本ロールを通過させ、再度、25℃のプラネタリーミキサーで混合して、組成物を調製した。表1及び2において、a〜lは下記の各原料を、数は質量部を表す。得られた各組成物について、後述する(a)〜(d)の諸試験を行った。結果を表1及び2に示す。
I.使用原料
(A)エポキシ樹脂
シリコーン変性エポキシ樹脂a(合成例1)
シリコーン変性エポキシ樹脂b(合成例2)
エポキシ樹脂c(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、当量180、日本化薬製RE310S)
(B)硬化剤
シリコーン変性フェノール樹脂d(合成例3)
シリコーン変性フェノール樹脂e(合成例4)
硬化剤f(酸無水物系、酸無水物当量172g/eq、新日本理化製リカシッドMH700)
(C)硬化促進剤
硬化促進剤g(2−フェニル−4、ヒドロキシメチルイミダゾール、四国化成製2P4MHZ)
(D)無機充填剤
シリカ粉末h(比表面積200m/g、トリメチルシラザン処理、信越化学工業(株)製、MUSIL120A)
シリカ粉末i(比表面積300m/g、トリメチルシラザン処理、信越化学工業(株)製、MUSIL130A)
球状溶融シリカj(比表面積6m/g、平均粒径0.8ミクロン、最大粒径3ミクロン、アドマテックス製、SE2030)
その他の成分
希釈剤k(カルビトールアセテート)
シランカップリング剤l(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業製KBM−403)
シリコーン変性エポキシ樹脂の合成
(合成例1)
攪拌羽、滴下漏斗、温度計、エステルアダプターと環流管を取り付けたフラスコに、式(11)のエポキシ樹脂(ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、日本化薬製RE810NM)42.0g(0.10mol)とトルエン168.0gを入れ、130℃/2時間で共沸脱水を行った。これを100℃に冷却し、触媒(信越化学製CAT−PL−50T)0.5gを滴下し、直ちに式(13)のオルガノポリシロキサン36.3g(0.05mol)とトルエン145.2gの混合物を30分程度で滴下し、更に100℃/6時間で熟成する。これからトルエンを除去し、黄色透明液体(η=6.2Pa・s/25℃、エポキシ当量410、シロキサン含有量46.4重量部)を得た。これをシリコーン変性エポキシ樹脂aとする。
(合成例2)
攪拌羽、滴下漏斗、温度計、エステルアダプターと環流管を取り付けたフラスコに、式(11)のエポキシ樹脂(ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、日本化薬製RE810NM)42.0g(0.10mol)とトルエン168.0gを入れ、130℃/2時間で共沸脱水を行った。これを100℃に冷却し、触媒(信越化学製CAT−PL−50T)0.5gを滴下し、直ちに式(13)のオルガノポリシロキサン54.5(0.075mol)とトルエン217.8gの混合物を30分程度で滴下し、更に100℃/6時間で熟成する。これからトルエンを除去し、黄色透明液体(η=8.5Pa・s/25℃、エポキシ当量520、シロキサン含有量56.5重量部)を得た。これをシリコーン変性エポキシ樹脂bとする。
シリコーン変性フェノール樹脂の合成
(合成例3)
攪拌羽、滴下漏斗、温度計、エステルアダプターと環流管を取り付けたフラスコに、式(12)のフェノール樹脂(ジアリルビスフェノールA、小西化学製BPA-CA-S)30.8g(0.10mol)とトルエン123.2gを入れ、130℃/2時間で共沸脱水を行う。これを100℃に冷却し、触媒(信越化学製CAT−PL−50T)0.5gを滴下し、直ちに式(13)のオルガノポリシロキサン36.3g(0.05mol)とトルエン145.2gの混合物を30分程度で滴下し、更に100℃/6時間で熟成する。これからトルエンを除去し、黄色透明液体(η=28Pa・s/25℃、フェノール当量350、シロキサン含有量54.1重量部)を得た。これをシリコーン変性フェノール樹脂dとする。
(合成例4)
攪拌羽、滴下漏斗、温度計、エステルアダプターと環流管を取り付けたフラスコに、式(12)のフェノール樹脂(ジアリルビスフェノールA、小西化学製BPA-CA-S)30.8g(0.10mol)とトルエン123.2gを入れ、130℃/2時間で共沸脱水を行う。これを100℃に冷却し、触媒(信越化学製CAT−PL−50T)0.5gを滴下し、直ちに式(14)のオルガノポリシロキサン110.0g(0.075mol)とトルエン439.8gの混合物を30分程度で滴下し、更に100℃/6時間で熟成する。これからトルエンを除去し、黄色透明液体(η=3.8Pa・s/25℃、フェノール当量720、シロキサン含有量78.1重量部)を得た。これをシリコーン変性フェノール樹脂eとする。
Figure 0005263926

Figure 0005263926

Figure 0005263926

Figure 0005263926
シロキサン残基の重量とシリカ粉末の重量比の算出
合成例1〜4で調製されたシリコーン変性エポキシ樹脂aとb、シリコーン変性フェノール樹脂dとeの、シロキサン残基の含有量、例えば合成例1においては、下記式(15)に相当する重量、
Figure 0005263926
を、使用した原料の量から算出して、これを100質量部とした場合のシリカ粉末hとiの質量部を算出した。表1及び2に、シリカ粉末/シロキサン残基として示す。なお、表2において、比較例1は、シリコーン変性樹脂を含まないので、計算をしていない。
試験方法
下記方法により、各組成物を評価した。結果を表1および2に示す。
(a)ブリード
各組成物を、フォトレジスト(AUS308、20ミクロン厚)を塗布したBT基板(200ミクロン厚)上に、ステンシルマスク(SUS製、50ミクロン製、開口部寸法:10mm×10mm)とスキージ(SUS製、500ミクロン厚、角度60°)を用いて、速度10mm/秒、圧力10psiの条件で印刷した後、25℃/50%RHの環境下に24時間放置した。これの縁辺部を実態顕微鏡で観測し、固形状組成物の縁からブリードした物の最大幅(μm)を計測した。
(b)硬化物のヤング率
各組成物を120℃/1時間+165℃/2時間で硬化させ、JIS6911に準じて−55℃、25℃、125℃でのヤング率を測定した。
(c)耐湿、耐半田試験
図1に示す試験片20個を以下の方法により作成した。
試験(a)と同様に、組成物を印刷し、25℃/50%RHの環境下に24時間放置した。塗布された組成物上に、シリコンチップ(200ミクロン厚、10mm×10mm)を、50℃(チップ)/25℃(基板)/0.1kg/0.1秒の条件でボンディングした後、組成物を120℃/1時間+165℃/2時間、窒素通気下で硬化させた。硬化物を室温まで冷却した後、シリコンチップを、KMC−2520(信越化学工業製エポキシ封止材)で封止した。成型条件は金型温度175℃、注入時間10秒、注入圧70KPa、成型時間90秒、後硬化条件は180℃/2時間であり、成型後の試験片全体は1000ミクロン厚、35mm×35mmである。
得られた試験片を、85℃/85%RHの恒温恒湿器に168時間放置して、更に最高温度が260℃であるIRリフローオーブン中を3回通過させた後に、超音波索傷装置で、剥離、クラック等の不良の有無を観測し、不良が見られる試験片数/総試験片数(20個)を数えた。
(d)温度サイクル試験
上記(c)耐湿、耐半田試験を行なった後に、クラック等の無かった試験片を温度サイクル試験機に投入した。ここでの試験条件は−55℃/30分+(−55℃→125℃)/5分+125℃/30分+(125℃→−55℃)/5分を1サイクルとし、500サイクル或いは1000サイクルを施した後に、超音波索傷装置で剥離、クラック等の不良の有無を観測し、不良が見られる試験片数/総試験片数を数えた。
(e)ヘッドスペースGC/MS分析
実施例1の組成物と参考例3の組成物を、以下の方法でGC/MS分析した。
各組成物を、アルミ製板(5mm×66mm)2枚の表面上に、厚みが150μmになるように夫々塗布し、100℃で1時間乾燥して組成物重量を測定した。得られた試料のうちの一つを、150℃に設定したヘッドスペースサンプラー内で1時間保持し、その間に揮発される成分をガスサンプリングして、ガスクロマトグラフィー(SE−30キャピラリカラム、注入温度250℃、50℃で2分間保持後10℃/分で270℃まで昇温、検出器FID)で、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランについて、トータルイオンクロマトグラムの面積を用いて定量した。同じ分析を他の試料についても繰り返した。その結果、実施例1では、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランは、0.1重量%未満であり、参考例3のものは約0.4重量%であった。
Figure 0005263926
Figure 0005263926
表2から分かるように、シリカ粉末を含まないもの(比較例2)及び所定量未満であるもの(参考例1)はブリード幅が大きかった。これに対して、表1に示す実施例の組成物では、いずれもブリード幅が100μm以下であった。比較例1は、シリコーン変性樹脂を含まない。ブリード幅はほとんど0であったが、耐熱衝撃性に劣った。参考例2は、シリカ粉末の量が所定量を超え、組成物の粘度が印刷するには高すぎて、各評価を行なうことができなかった。参考例3の組成物は、シランカップリング剤を含み、ブリード幅が大きかった。
本発明のダイボンド剤は、基板に施与された後のブリードが無く、耐熱衝撃性に優れた硬化物を与え、高密度実装の半導体装置における接着剤用途に好適である。
実施例において作成したシリコンチップを搭載した試験片の構成を示した断面図である。

Claims (6)

  1. (A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤、及び(D)無機充填剤を含むダイボンド剤組成物において、
    (A)成分及び(B)成分の少なくとも一つが下記式(1)で表されるシロキサン残基を含むシリコーン変性樹脂を含み、
    Figure 0005263926
    (Rは、互いに独立に、炭素数1〜10の1価の炭化水素基であり、nは201の整数である)
    (D)成分が、BET法により測定される比表面積が50〜500m/gであるシリカ粉末を有機ケイ素化合物で表面処理して得られた無機充填剤を、前記シロキサン残基の総質量100質量部当たり、1〜50質量部で含み、及び、
    ダイボンド剤組成物のヘッドスペースGC/MS分析において検出されるシランカップリング剤が、該組成物の固形分重量の0.1重量%未満である、ことを特徴とするダイボンド剤組成物。
  2. (D)成分が、d98が1〜10μm及びd50が0.1〜1μmの球状溶融シリカを、(A)及び(B)成分の合計100質量部に対して、50〜200質量部で、さらに含む請求項1記載のダイボンド剤組成物。
  3. (A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、1〜50重量部の(F)カルビトールアセテート及びブチルカルビトールアセテートから選ばれる少なくとも一種の溶剤をさらに含む、請求項1または2記載のダイボンド剤組成物。
  4. 前記有機ケイ素化合物が、アルコキシシラン及びトリメチルシラザンから選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜3のいずれか1項記載のダイボンド剤組成物。
  5. (A)成分及び(B)成分が上記式(1)で表されるシロキサン残基を含むシリコーン変性樹脂である、請求項1〜4のいずれか1項記載のダイボンド剤組成物。
  6. 有機基板と、
    該有機基板の表面に施与された、請求項1〜のいずれか1項に記載のダイボンド剤またはその硬化物を含む半導体装置。
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