JP5263173B2 - 摩擦ローラ式伝動装置 - Google Patents
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Description
この文献に記載の駆動力配分装置は、遊星歯車組を用いた四輪駆動車両のトランスファーで、
遊星歯車組のキャリアに変速機からのトルクを入力し、このトルクをキャリアから、サンギヤおよびリングギヤを経て主駆動輪および従駆動輪に分配出力することにより、主従駆動輪間の駆動力配分を決定するものである。
主駆動輪へのトルク(主駆動輪トルク)と、従駆動輪へのトルク(従駆動輪トルク)の配分比が、歯車諸元(特許文献1の構成では、サンギヤ歯数およびリングギヤ歯数)で一義的に決まってしまう。
そして、かかる車両の軽量化を実現しようとすると、車両のコンパクト化を避けて通れず、そのため、四輪駆動車両における従駆動輪の駆動系も、その強度を必要最小限のものにして小型化する必要がある。
大トルク入力時に従駆動輪トルクが、上記の理由から小型化せざるを得ない従駆動輪駆動系の強度を越えてしまうことになる。
本発明は更に、かかる摩擦ローラ式伝動装置を、摩擦ローラ間径方向押し付け力制御により伝達トルク容量を制御可能にして一層有用なものにすると共に、摩擦ローラ間径方向押し付け反力がハウジングに入力されることのないようにしてハウジングの軽量化を実現し、併せて、上記摩擦ローラ間径方向押し付け力制御(伝達トルク容量制御)の制御精度を向上させることを目的とする。
一対の摩擦ローラを互いに、直接的または間接的に径方向に押し付けて摩擦接触させ、これにより該摩擦ローラ間で動力の受け渡しが可能となるようにしたものであって、
前記摩擦ローラの一方をクランクシャフトに対して偏心軸線を中心に回転自在に支持して、該クランクシャフトの回転位置制御により前記摩擦ローラ間の径方向押し付け力を加減し得るようになし、
前記摩擦ローラ対を挟んでその軸線方向両側に配置したベアリングサポートにそれぞれ、前記一方の摩擦ローラに係わるクランクシャフト、および、他方の摩擦ローラに係わる摩擦ローラ軸を軸受嵌合することにより、前記摩擦ローラ間の径方向押し付け反力を前記両ベアリングサポートで受け止めるようになし、
前記各ベアリングサポートの両端軸受嵌合部間における中央部に、前記摩擦ローラ間径方向押し付け反力に対する支持剛性を低下させるための括れ部を設けたことを特徴とするものである。
第1の方向の回転軸を有する第1の摩擦ローラと、
前記第1の摩擦ローラと摩擦によるトルク伝達可能に配置された第2の摩擦ローラであって、前記第1の摩擦ローラの前記回転軸から第2の方向上に位置し、前記第1の方向に略平行の回転軸を有する該第2の摩擦ローラと、
前記第2の摩擦ローラを偏心軸線を中心に回転自在に支持するクランクシャフトであって、回転によって前記第1及び第2の摩擦ローラ間の径方向押し付け力を変化させる該クランクシャフトと、
前記第1の摩擦ローラ軸支する第1の軸受支持部、及び前記クランクシャフトを軸支する第2の軸受支持部を有するベアリングサポートであって、該軸受支持部間に、前記第1及び第2の方向に共に垂直な方向の寸法が該軸受支持部と比較して小さい中央部を有する該ベアリングサポート、
を有するものである。
第1の方向の回転軸を有する第1の摩擦ローラと、
前記第1の摩擦ローラと摩擦によるトルク伝達可能に配置された第2の摩擦ローラであって、前記第1の方向に略平行の回転軸を有する該第2の摩擦ローラと、
前記第2の摩擦ローラを偏心軸線を中心に回転自在に支持するクランクシャフトであって、回転によって前記第1及び第2の摩擦ローラ間の径方向押し付け力を変化させる該クランクシャフトと、
前記第1の摩擦ローラ軸支する第1の軸受支持部、及び前記クランクシャフトを軸支する第2の軸受支持部を有するベアリングサポートであって、該軸受支持部間に、前記第1の方向の寸法が該軸受支持部と比較して小さい中央部を有する該ベアリングサポート、
を有するものである。
一対の摩擦ローラ間で摩擦接触により動力の受け渡しを行うことから、摩擦ローラ間径方向押し付け力で決まる伝達トルク容量の範囲を越えた大きなトルクがローラ間で受け渡されることがなく、
四輪駆動車両の駆動力配分装置として用いた場合において、従駆動輪へのトルクを上限設定し得ることとなる。
本発明の摩擦ローラ式伝動装置は、車両コンパクト化などの要求から従駆動輪駆動系を小型化せざるを得なくなった四輪駆動車両においても、その駆動力配分装置として用いることができる。
前記摩擦ローラの一方をクランクシャフトに対して偏心軸線を中心に回転自在に支持して、該クランクシャフトの回転位置制御により前記摩擦ローラ間の径方向押し付け力を加減し得るようになしたから、
摩擦ローラ間径方向押し付け力で決まる伝達トルク容量を自由に制御することができ、この伝達トルク容量に関する広範な要求に自由に応え得て大いに有用である。
摩擦ローラ対の軸線方向両側に配置したベアリングサポートが、摩擦ローラ間径方向押し付け反力を受け止めてハウジングに伝達しないため、ハウジングの軽量化を実現することができる。
摩擦ローラ間径方向押し付け反力によるベアリングサポートの撓み量が大きくなり、その分だけ、クランクシャフトの回転角に対する摩擦ローラ間径方向押し付け力変化割合(伝達トルク容量変化割合)が緩やかで、摩擦ローラ間径方向押し付け力制御(伝達トルク容量制御)に用い得るクランクシャフトの回転角範囲が広くなり、当該制御の精度を向上させることができる。
図1は、本発明の一実施例になる摩擦ローラ式伝動装置を駆動力配分装置(トランスファー)1として具えた四輪駆動車両のパワートレーンを、車両上方から見て示す概略平面図である。
左右後輪(主駆動輪)6L,6Rへのトルクの一部を、駆動力配分装置1の摩擦伝動より、フロントプロペラシャフト7およびフロントファイナルドライブユニット8を経て左右前輪(従駆動輪)7L,7Rへ伝達することにより、四輪駆動走行が可能となるようにした車両である。
入力軸12は、その両端をハウジング11の軸貫通孔11a,11bに挿通し、該入力軸12の両端と、ハウジング11の軸貫通孔11a,11bとの間にボールベアリング14,15を介在させ、これらボールベアリング14,15を介し入力軸12の両端をハウジング11に回転自在に支持する。
ローラベアリング18,21はそれぞれ、出力軸13およびクランクシャフト41の同軸突き合わせ軸受嵌合部に介在させたニードルベアリング42とほぼ同じ軸直角面内に位置させ、ローラベアリング19,22は、ローラベアリング18,21から軸線方向に離間した別の軸直角面内に位置させる。
また、別の軸直角面内に位置させた、入力軸12およびクランクシャフト41用のローラベアリング19,22をそれぞれ、共通な第2のベアリングサポート25の軸受嵌合部25a,25b内に抱持し、このベアリングサポート25をハウジング11の対応する内側面に沿うよう配置する。
出力軸13の図中左端を、該出力軸13とハウジング11の軸貫通孔11cとの間に介在させたシールリング29による液密封止下でハウジング11から突出させ、該出力軸13の突出左端はフロントプロペラシャフト7(図1参照)を介してフロントファイナルドライブユニット8に結合する。
従って入力軸12は、第1摩擦ローラ31の軸(摩擦ローラ軸)をも構成する。
クランクシャフト41は、両端回転支承部17,42間に半径がRの偏心軸部41aを有し、この偏心軸部41aは、その軸心O3をクランクシャフト41(出力軸13)の回転軸線O2からεだけオフセットさせると共に、入力軸12上の第1摩擦ローラ31と同じ軸直角面内に位置させる。
そして、クランクシャフト41の偏心軸部41a上にローラベアリング44を介し、第2摩擦ローラ32を回転自在に、しかし軸線方向位置決め状態で取り付け、クランクシャフト41と出力軸13とよりなる軸ユニットは、第2摩擦ローラ32の軸(摩擦ローラ軸)をも構成する。
第1摩擦ローラ31に対する第2摩擦ローラ32の径方向押し付け力(第1,2摩擦ローラ31,32間の伝達トルク容量)を自在に制御することができる。
そして、クランクシャフト41の露出端面に、ローラ間押し付け力制御モータ45の出力軸45aをセレーション嵌合などにより駆動結合し、このローラ間押し付け力制御モータ45をハウジング11に取着する。
これにより回転される第2摩擦ローラ32の回転を、第2摩擦ローラ32の摩擦ローラ軸である出力軸13へ伝達し得るようにするため、出力軸13の内端にフランジ部13aを一体成形して設け、該フランジ部13aの直径を第2摩擦ローラ32と軸線方向に対面する大きさにする。
出力軸フランジ部13aと対面する第2摩擦ローラ32の端面には、駆動ピン46が個々に貫入して第2摩擦ローラ32から出力軸13(フランジ部13a)へのトルク伝達を可能にするための複数個の孔47を穿設する。
そして、これら駆動ピン貫入孔47を図3に明示するごとく、駆動ピン46の直径よりも大径の円孔とし、その直径は、出力軸13の回転軸線O2および第2摩擦ローラ32の回転軸線O3間の偏心量εを吸収しつつ上記した第2摩擦ローラ32から出力軸13(フランジ部13a)へのトルク伝達を可能にするのに必要な直径とする。
変速機3からの出力トルクは図2の左端から軸12へ入力され、一方では、この入力軸12からそのままリヤプロペラシャフト4およびリヤファイナルドライブユニット5を経て左右後輪6L,6R(主駆動輪)に伝達される。
他方で駆動力配分装置(摩擦ローラ式伝動装置)1は、左右後輪6L,6Rへのトルクの一部を、第1摩擦ローラ31から、第1摩擦ローラ31および第2摩擦ローラ32間の摩擦接触部31a,32a、第2摩擦ローラ32、駆動ピン46、出力軸フランジ13aを順次経て出力軸13に向かわせ、
その後このトルクを、出力軸13の図2中左端から、フロントプロペラシャフト7およびフロントファイナルドライブユニット8を経て左右前輪(従駆動輪)7L,7Rへ伝達する。
かくして車両は、左右後輪6L,6R(主駆動輪)および左右前輪(従駆動輪)7L,7Rの全てを駆動しての四輪駆動走行が可能である。
前記した第1摩擦ローラ31に対する第2摩擦ローラ32の径方向押し付け力(摩擦ローラ間径方向押し付け力)に応じた伝達トルク容量の範囲を越えた大きなトルクを第1摩擦ローラ31から第2摩擦ローラ32へ伝達させることがない。
駆動力配分装置1は、車両コンパクト化などの要求から左右前輪(従駆動輪)の駆動系を小型化せざるを得なくなった四輪駆動車両においても、左右前輪(従駆動輪)駆動系の強度不足を気にすることなく、当該四輪駆動車両の駆動力配分装置として用いることができる。
第2摩擦ローラ回転軸線O3(偏心軸部41aの軸心)が、クランクシャフト回転軸線(出力軸回転軸線)O2の周りに回転され、第1摩擦ローラ31および第2摩擦ローラ32の軸間距離L1を加減することができる。
ちなみに、第1摩擦ローラ31および第2摩擦ローラ32間の径方向押し付け力Frに対し摩擦ローラ間伝達トルク容量Trは、例えば図6に示すような比例関係をもって変化する。
従って、左右前輪(従駆動輪)へのトルクの上限値を、モータ45によるクランクシャフト41の回転位置制御(第1摩擦ローラ31に対する第2摩擦ローラ32の径方向押し付け力制御)により自在に変更することができ、左右後輪(主駆動輪)6L,6Rおよび左右前輪(従駆動輪)9L,9R間の駆動力配分特性を、いつも運転状況に応じた最適なものにすることができる。
第2摩擦ローラ32を挟んで第1のベアリングサポート23と反対の側における軸直角面内に配設した第2のベアリングサポート25に、第2摩擦ローラ32に係わるクランクシャフト41、および、第1摩擦ローラ31に係わる摩擦ローラ軸(入力軸)12をそれぞれ、軸受22,19を介して嵌合することから、
第1摩擦ローラ31に対し第2摩擦ローラ32を径方向に押し付けて相互に摩擦接触させる時に発生する摩擦ローラ間径方向押し付け反力を第1および第2ベアリングサポート23,25で受け止めることとなる。
よって、摩擦ローラ間径方向押し付け反力がベアリングサポート23,25内で内力として消失し、この摩擦ローラ間径方向押し付け反力がハウジング11にそのまま入力されることがなく、ハウジング11の強度を大きくする必要がなくなる分だけハウジング11を軽量化することができる。
第2ローラ32の軸線方向両側から突出する出力軸13の両端にそれぞれ、クランクシャフト51L,51Rの中心孔51La,51Ra(半径Ri)を嵌合し、この嵌合部に軸受52L,52Rを介在させて出力軸13をクランクシャフト51L,51Rの中心孔51La,51Ra内で、これらの中心軸線O2の周りに自由に回転し得るよう支持する。
クランクシャフト51L,51Rの偏心外周部51Lb,51Rbはそれぞれ、軸受53L,53Rを介して対応する側におけるベアリングサポート23,25内に回転自在に支持し、
この際、クランクシャフト51L,51Rをそれぞれ、第2ローラ32と共に、スラストベアリング54L,54Rで軸線方向に位置決めする。
これらリングギヤ51Lc,51Rcに、共通のクランクシャフト駆動ピニオン55を噛合させる。
なおこの噛合に当たっては、クランクシャフト51L,51Rを両者の偏心外周部51Lb,51Rbが円周方向において相互に整列する回転位置にした状態で、リングギヤ51Lc,51Rcにクランクシャフト駆動ピニオン55を噛合させる。
図4の右側におけるピニオンシャフト56の右端をハウジング11の外に露出させ、
該ピニオンシャフト56の露出端面には、ハウジング11に取着して設けたローラ間押し付け力制御モータ45の出力軸45aをセレーション嵌合などにより駆動結合する。
従って、ローラ間押し付け力制御モータ45、ピニオン55およびクランクシャフト51L,51Rは、ベアリングサポート23,25と共に本発明におけるローラ間径方向押圧部を構成する。
これらシールリング57,58により、ハウジング11から突出するクランクシャフト51Lおよび出力軸13の突出部をそれぞれ液密封止する。
クランクシャフト51Lの上記端部外径とハウジング11との間にシールリング57を介在させ、クランクシャフト51Lの上記端部内径と出力軸13との間にシールリング58を介在させる。
かかるシール構造によれば、出力軸13の上記旋回によりその回転軸線O2が旋回変位するにもかかわらず、出力軸13をハウジング11から突出する箇所において良好にシールすることができる。
結果として、摩擦ローラ間径方向押し付け力制御(伝達トルク容量制御)に用い得るクランクシャフトの回転角範囲がθ1までの狭い範囲となり、当該制御の精度が悪くなる傾向にある。
この括れ部23eは、ベアリングサポート23の両端軸受嵌合部23a,23b間における中央部の横断面積を減ずる結果、摩擦ローラ間径方向押し付け反力に対するベアリングサポート23の支持剛性を低下させることとなり、
摩擦ローラ間径方向押し付け反力によるベアリングサポート23の対応方向撓み量が大きくなる。
この括れ部25eは、ベアリングサポート25の両端軸受嵌合部25a,25b間における中央部の横断面積を減ずる結果、摩擦ローラ間径方向押し付け反力に対するベアリングサポート25の支持剛性を低下させることとなり、
摩擦ローラ間径方向押し付け反力によるベアリングサポート25の対応方向撓み量が大きくなる。
本実施例においては、摩擦ローラ間径方向押し付け反力によるベアリングサポート23,25の対応方向撓み量が大きくなり、その分だけ図7に実線で例示するごとく、クランクシャフト41の回転角θに対する摩擦ローラ間径方向押し付け力Frの変化割合(伝達トルク容量の変化割合)が緩やかで、摩擦ローラ間径方向押し付け力制御(伝達トルク容量制御)に用い得るクランクシャフト41の回転角範囲をθ2まで拡大することができ、当該制御の精度を向上させることができる。
これら括れ部23hおよび25h はそれぞれ、ベアリングサポート23および25の両端軸受嵌合部23a,23b間および25a,25b間における中央部の横断面積を減ずる結果、摩擦ローラ間径方向押し付け反力に対するベアリングサポート23および25の支持剛性を低下させることとなり、摩擦ローラ間径方向押し付け反力によるベアリングサポート23および25の対応方向撓み量が大きくなる。
摩擦ローラ間径方向押し付け反力によるベアリングサポート23,25の対応方向撓み量が括れ部23hおよび25hの設定により大きくなり、その分だけ図7に実線で例示するごとく、クランクシャフト41の回転角θに対する摩擦ローラ間径方向押し付け力Frの変化割合(伝達トルク容量の変化割合)が緩やかで、摩擦ローラ間径方向押し付け力制御(伝達トルク容量制御)に用い得るクランクシャフト41の回転角範囲をθ2まで拡大することができ、当該制御の精度を向上させることができる。
これら括れ部23iおよび25i はそれぞれ、ベアリングサポート23および25の両端軸受嵌合部23a,23b間および25a,25b間における中央部の横断面積を、図8,9における実施例よりも更に減じて、摩擦ローラ間径方向押し付け反力に対するベアリングサポート23および25の支持剛性を更に低下させることとなり、摩擦ローラ間径方向押し付け反力によるベアリングサポート23および25の対応方向撓み量が更に大きくなる。
当該摩擦ローラ間径方向押し付け力制御(伝達トルク容量制御)の精度を更に向上させることができる。
また、図9におけるベアリングサポート23(25)の幅方向溝23f,23g(25f,25g)は図12に示すごとく、溝底部の断面形状をU字状として溝底部に角部が存在しない形状にすることができる。図12においても、ベアリングサポート23(25)の中央部の厚みTは軸受支持部の最大厚みT1, T2よりも小さく設定されている。
これら図11,12に示す溝形状は勿論組み合わせて用いることも可能で、これら溝形状によれば、角部が存在しないことによって、ベアリングサポート23(25)の強度低下を防止しつつ前記の作用効果を達成することができる。
図13は、摩擦ローラ31,32間の径方向押し付け力制御の概念図で、
(a)は、摩擦ローラ31の半径R1と摩擦ローラ32の半径R2との和値を、入出力軸12,13間の軸間距離L0、つまり、入力軸12の軸線O1および出力軸13(クランクシャフト41)の軸線O2間の距離L0と同じにした場合の摩擦ローラ間径方向押し付け力制御の概念図、
(b)は、摩擦ローラ31の半径R1+αと摩擦ローラ32の半径R2+βとの和値を、入出力軸12,13間の軸間距離L0よりもα+βだけ大きくした場合の摩擦ローラ間径方向押し付け力制御の概念図を示す。
これにより、第1摩擦ローラ31に対する第2摩擦ローラ32の径方向オーバーラップ量δが0から漸増し、この摩擦ローラ間径方向オーバーラップ量δに応じて大きくなる摩擦ローラ間径方向押し付け力が発生して、摩擦ローラ31,32間の伝達トルク容量が0から漸増する。
以上のことから明らかなように、クランクシャフト41の軸線O2から、第2摩擦ローラ32を回転自在に支持するクランクシャフト偏心軸部41aの軸線(第2摩擦ローラ32の回転軸線)O3までの偏心量εは、要求される摩擦ローラ31,32間の伝達トルク容量最大値に応じて決まる摩擦ローラ間径方向最大オーバーラップ量δmaxと同じにする必要がある。
しかし、摩擦ローラ31,32間に未だ径方向押し付け力は発生しておらず、両者間の伝達トルク容量も0である。
これにより、第1摩擦ローラ31に対する第2摩擦ローラ32の径方向オーバーラップ量δが0から漸増し、この摩擦ローラ間径方向オーバーラップ量δに応じて大きくなる摩擦ローラ間径方向押し付け力が発生して、摩擦ローラ31,32間の伝達トルク容量が0から漸増する。
この寸法差(α+β)は、要求される摩擦ローラ31,32間の伝達トルク容量最大値に応じた摩擦ローラ間径方向最大オーバーラップ量δmaxと一致するよう定める。
クランクシャフト41の軸線O2から、第2摩擦ローラ32を回転自在に支持するクランクシャフト偏心軸部41aの軸線(第2摩擦ローラ32の回転軸線)O3までの偏心量εが、要求される摩擦ローラ31,32間の伝達トルク容量最大値に応じて決まる摩擦ローラ間径方向最大オーバーラップ量δmaxの半分でよく、クランクシャフト41の小径化により構成のコンパクト化を実現することができる。
図7に実線で例示した、クランクシャフト41の回転角θに対する摩擦ローラ間径方向押し付け力Frの変化割合(伝達トルク容量の変化割合)を更に緩やかなものにし得て、摩擦ローラ間径方向押し付け力制御(伝達トルク容量制御)に用い得るクランクシャフト41の回転角範囲をθ2よりも更に大きな回転角まで拡大することができ、当該制御の精度を更に向上させることができる。
クランクシャフト41の回転角制御に当たってこれを回転させるのに必要なクランクシャフト回転駆動トルクTcは、図13(b)のように摩擦ローラ31,32の半径の和値を入出力軸間距離L0よりも大きくした場合につき代表的に示した図14の一点鎖線特性のごとく、
クランクシャフト回転角θが180度(第2摩擦ローラ32の回転軸線O3を第1摩擦ローラ31の回転軸線O1に最接近させる回転角)の手前側におけるθ=θrであるとき最大となり、
クランクシャフト回転角θがこのθrを越えると、クランクシャフト回転角θの増大につれクランクシャフト回転駆動トルクTcは低下する。
つまりクランクシャフト回転駆動トルクTcは、クランクシャフト回転角θがθ=θrであるときに最大となる変極点(極大点)を持った特性を呈する。
クランクシャフト回転角θが増大するにつれ、θ>θrの領域においても図14に実線で示すごとく確実に大きくなる。
摩擦ローラ間径方向押し付け力制御(摩擦ローラ間伝達トルク容量制御)に用いるクランクシャフト41の摩擦ローラ間径方向押し付け力増大方向における回転角最大値を、クランクシャフト回転駆動トルクTcの変化割合が正から負へと逆転する変極点のクランクシャフト回転角θrよりも大きくし、好ましくは180度にするのがよい。
クランクシャフト回転角θをθrよりも大きくする領域において、クランクシャフト回
転駆動トルクTcが低下するのに摩擦ローラ間伝達トルク容量Trを増大させることができ、
ローラ間押し付け力制御モータ45(図2参照)の駆動負荷を抑制しつつ摩擦ローラ間伝達トルク容量Trを増大させ得るという優れた作用効果をも奏し得る。
遊転ローラを介し第1,2摩擦ローラ31,32を間接的に摩擦接触させるようにした摩擦ローラ式伝動装置である場合についても、本発明の前記した着想は同様の考え方により適用可能であること勿論であり、この場合も前記したと同様な作用効果が奏し得られることは言うまでもない。
Claims (9)
- 一対の摩擦ローラを互いに、直接的または間接的に径方向に押し付けて摩擦接触させ、これにより該摩擦ローラ間で動力の受け渡しが可能となるようにした摩擦ローラ式伝動装置において、
前記摩擦ローラの一方をクランクシャフトに対して偏心軸線を中心に回転自在に支持して、該クランクシャフトの回転位置制御により前記摩擦ローラ間の径方向押し付け力を加減し得るようになし、
前記摩擦ローラ対を挟んでその軸線方向両側に配置したベアリングサポートにそれぞれ、前記一方の摩擦ローラに係わるクランクシャフト、および、他方の摩擦ローラに係わる摩擦ローラ軸を軸受嵌合することにより、前記摩擦ローラ間の径方向押し付け反力を前記両ベアリングサポートで受け止めるようになし、
前記各ベアリングサポートの両端軸受嵌合部間における中央部に、前記摩擦ローラ間径方向押し付け反力に対する支持剛性を低下させるための括れ部を設けた摩擦ローラ式伝動装置。 - 請求項1に記載の摩擦ローラ式伝動装置において、
前記括れ部は、前記ベアリングサポートの中央部に、前記軸受嵌合部の中心軸線方向へ延在する厚さ方向溝を設けて設定した摩擦ローラ式伝動装置。 - 請求項1または2に記載の摩擦ローラ式伝動装置において、
前記括れ部は、前記ベアリングサポートの中央部に、前記両端軸受嵌合部の中心軸線を含む面を横切る方向へ延在する幅方向溝を設けて設定した摩擦ローラ式伝動装置。 - 前記一対の摩擦ローラを互いに直接径方向に押し付けて摩擦接触させた、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の摩擦ローラ式伝動装置において、
前記一対の摩擦ローラの半径の合計を、前記一方の摩擦ローラに係わるクランクシャフト、および、他方の摩擦ローラに係わる摩擦ローラ軸間の軸間距離よりも大きくした摩擦ローラ式伝動装置。 - 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の摩擦ローラ式伝動装置において、
前記摩擦ローラ間径方向押し付け力の制御に用いる前記クランクシャフトの摩擦ローラ間径方向押し付け力増大方向における回転角最大値を、クランクシャフトの回転に必要なクランクシャフト回転駆動トルクの変化割合が逆転する変極点のクランクシャフト回転角よりも大きくした摩擦ローラ式伝動装置。 - 第1の方向の回転軸を有する第1の摩擦ローラと、
前記第1の摩擦ローラと摩擦によるトルク伝達可能に配置された第2の摩擦ローラであって、前記第1の摩擦ローラの前記回転軸から第2の方向上に位置し、前記第1の方向に略平行の回転軸を有する該第2の摩擦ローラと、
前記第2の摩擦ローラを偏心軸線を中心に回転自在に支持するクランクシャフトであって、回転によって前記第1及び第2の摩擦ローラ間の径方向押し付け力を変化させる該クランクシャフトと、
前記第1の摩擦ローラを軸支する第1の軸受支持部、及び前記クランクシャフトを軸支する第2の軸受支持部を有するベアリングサポートであって、該軸受支持部間に、前記第1及び第2の方向に共に垂直な方向の寸法(W)が該軸受支持部と比較して小さい中央部を有する該ベアリングサポート、
を有する摩擦ローラ式伝動装置。 - 第1の方向の回転軸を有する第1の摩擦ローラと、
前記第1の摩擦ローラと摩擦によるトルク伝達可能に配置された第2の摩擦ローラであって、前記第1の方向に略平行の回転軸を有する該第2の摩擦ローラと、
前記第2の摩擦ローラを偏心軸線を中心に回転自在に支持するクランクシャフトであって、回転によって前記第1及び第2の摩擦ローラ間の径方向押し付け力を変化させる該クランクシャフトと、
前記第1の摩擦ローラを軸支する第1の軸受支持部、及び前記クランクシャフトを軸支する第2の軸受支持部を有するベアリングサポートであって、該軸受支持部間に、前記第1の方向の寸法(T)が該軸受支持部と比較して小さい中央部を有する該ベアリングサポート、
を有する摩擦ローラ式伝動装置。 - 請求項6又は7のいずれか1項に記載の摩擦ローラ式伝動装置において、
前記第1及び第2の摩擦ローラは互いに直接接触してトルク伝達を行い、
前記第1及び第2の摩擦ローラの半径の合計が、前記クランクシャフトの回転軸及び前記第1の摩擦ローラの前記回転軸間の距離よりも大きい、
摩擦ローラ式伝動装置。 - 請求項6乃至8のいずれか1項に記載の摩擦ローラ式伝動装置において、
前記クランクシャフトの回転に必要なトルクが、前記クランクシャフトの制御回転範囲の両端以外で変化割合が逆転する変極点をもつ、
摩擦ローラ式伝動装置。
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