以下、本発明の実施の形態の1つにおける画像形成装置について説明する。
画像形成装置は、スキャナ機能、複写機能、プリンタとしての機能、ファクシミリ機能、データ通信機能、及びサーバ機能を備えたMFP(Multi Function Peripheral)である。スキャナ機能では、セットされた原稿の画像を読み取ってそれをHDD(Hard Disk Drive)などに蓄積する。複写機能では、さらにそれを用紙などに印刷(プリント)する。プリンタとしての機能では、PCなどの外部端末から印刷指示を受けるとその指示に基づいて用紙に印刷を行う。ファクシミリ機能では、外部のファクシミリ装置などからファクシミリデータを受信してそれをHDDなどに蓄積する。データ通信機能では、接続された外部機器との間でデータを送受信する。サーバ機能では、複数のユーザでHDDに記憶したデータなどを共有可能にする。
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態の1つにおける画像形成装置を示す斜視図である。
図を参照して画像形成装置1は、給紙カセット3と、排紙トレイ5と、電源部9と、操作部11と、制御部20と、プリント部30と、スキャン部40と、温湿度センサ60とを備える。制御部20は、後述するように、CPU21などを有する(図3参照)。制御部20、プリント部30、及び温湿度センサ60は、画像形成装置1の筐体の内部に配置されている。制御部20及び温湿度センサ60の詳細については、後述する。
この画像形成装置1は、3つの給紙カセット3(給紙カセット3a,3b,3c)を有している。それぞれの給紙カセット3には、例えば、互いに異なるサイズの用紙(B5サイズ、A4サイズ、及びA3サイズなど)が装てんされている。給紙カセット3は、画像形成装置1の下部に、画像形成装置1の筐体に抜き差し可能に配置されている。各給紙カセット3に装てんされた用紙は、印字時に、1枚ずつ給紙カセット3から給紙され、プリント部30に送られる。なお、給紙カセット3の数は3つに限られず、それより多くても少なくてもよい。
排紙トレイ5は、画像形成装置1の筐体のうちプリント部30が収納されている部位の上方でスキャン部40が配置されている部位の下方に配置されている。排紙トレイ5には、プリント部30により画像が形成された用紙が筐体の内部から排紙される。
電源部9は、画像形成装置1の筐体の内部に設けられている。電源部9は、商用電源に接続され、商用電源をもとに、制御部20やプリント部30などに電力を供給する。
操作部11は、画像形成装置1の上部手前側に配置されている。操作部11には、ユーザにより押下操作可能な複数の操作ボタン11aが配置されている。また、操作部11には、表示パネル13が配置されている。表示パネル13は、例えば、タッチパネルを備えたLCD(Liquid Crystal Display)である。表示パネル13は、ユーザに案内画面を表示したり、操作ボタンを表示してユーザからのタッチ操作を受け付けたりする。表示パネル13は、CPU21により制御されて表示を行う。操作部11は、操作ボタン11aや表示パネル13がユーザにより操作されると、その操作に応じた操作信号又は所定のコマンドをCPU21に送信する。すなわち、ユーザは、操作部11に操作を行うことにより、画像形成装置1に種々の動作を実行させることができる。
プリント部30は、おおまかに、トナー像形成部300と、用紙搬送部(図示せず)と、定着装置(図示せず)とを有している。プリント部30は、いわゆるタンデム方式で4色の画像を合成し、用紙にカラー画像を形成可能に構成されている。トナー像形成部300の構成については後述する。
用紙搬送部は、給紙ローラ、搬送ソーラ、及びそれらを駆動するモータなどで構成されている。用紙搬送部は、用紙を給紙カセット3から給紙して、画像形成装置1の筐体の内部で搬送する。また、用紙搬送部は、画像が形成された用紙を画像形成装置1の筐体から排紙トレイ5などに排出する。
定着装置は、加熱ローラ及び加圧ローラを有している。定着装置は、加熱ローラと加圧ローラとでトナー像が形成された用紙を挟みながら搬送し、その用紙に加熱及び加圧を行う。これにより、定着装置は、用紙に付着したトナーを溶融させて用紙に定着させ、用紙に画像を形成する。
スキャン部40は、画像形成装置1の筐体の上部に配置されている。スキャン部40は、ADF(Auto Document Feeder)41を有している。スキャン部40は、上述のスキャナ機能を実行する。スキャン部40は、透明な原稿台に配置された原稿をコンタクトイメージセンサにより走査して、それを画像データとして読み取る。また、スキャン部40は、原稿トレイにセットされた複数枚の原稿を、ADF41により順次取り込みながら、コンタクトイメージセンサによりその画像データを読み取る。
図2は、画像形成装置1のトナー像形成部300の構成を示す側面図である。
トナー像形成部300は、中間転写ベルト305と、転写ローラ307と、4組のプリントヘッド310Y,310M,310C,310K(以下、プリントヘッド310と称する)と、レーザスキャンユニット320などで構成されている。
中間転写ベルト305は、環状であり、2つのローラ間に架けわたされている。中間転写ベルト305は、用紙搬送部と連動して回動する。転写ローラ307は、中間転写ベルト305のうち一方のローラに接触している部分に対向するように配置されている。用紙は、中間転写ベルト305と転写ローラ307との間で挟まれながら搬送される。
各プリントヘッド310は、感光体311、帯電器313、現像部315、ベルト転写ローラ317、及びクリーニングブレード319などを含んでいる。プリントヘッド310は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)のCMYK各色の画像を形成するためのものが4つ配置されている。4組のプリントヘッド310は、中間転写ベルト305に沿うように互いに並んで配置されている。レーザスキャンユニット320は、各プリントヘッド310の感光体311上にレーザ光を走査可能に配置されている。
各プリントヘッド310は、従来のものとほぼ同様に構成されている。すなわち、感光体311は、ドラム形状であり、その胴部に有機感光体(OPC(Organic PhotoConductor/Organic Photoreceptor))を有している。帯電器313は、感光体311の近傍に配置されている。帯電器313は、感光体311との間に高電圧を印加し、感光体311の表面を一様に帯電させる。感光体311の表面のうち帯電した部位には、レーザスキャンユニット320からレーザ光が照射される。これにより、感光体311の表面に潜像が形成される。現像部315は、感光体311の胴部のうち正又は負に帯電している部分にトナーを付着させ、トナー像を形成する。ベルト転写ローラ317は、感光体311との間に中間転写ベルト305を挟みながら電荷を加え、感光体311から中間転写ベルト305上にトナー像を転写する。クリーニングブレード319は、感光体311の表面に接触しており、感光体311の表面に残留しているトナーを収集する。
トナー像形成部300において、各レーザスキャンユニット320は、YMCKの各色別の画像データに基づいて、各プリントヘッド310の感光体311上に潜像を形成する。現像部315は、各感光体311に各色別のトナー像を形成する。各感光体311は、トナー像を中間転写ベルト305に転写し、その中間転写ベルト305上に、用紙に形成するトナー像の鏡像を形成する(1次転写)。その後、転写ローラ307により、中間転写ベルト305に形成されたトナー像が用紙に転写され、用紙上にトナー像が形成される(2次転写)。
図3は、画像形成装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。
図を参照して制御部20は、CPU21と、ROM23と、RAM25と、HDD27と、インターフェイス部29とを有している。制御部20は、操作部11、プリント部30、スキャン部40、及び温湿度センサ60などと共にシステムバスに接続されている。これにより、制御部20と画像形成装置1の各部とが、信号を送受可能に接続されている。
HDD27は、インターフェイス部29を介して外部から送られたジョブ(JOB)のデータや、スキャン部40で読み取った画像データなどを記憶する。また、HDD27は、画像形成装置1の設定情報や、画像形成装置1の種々の動作を行うための制御プログラム(プログラム)27aなどを記憶する。HDD27は、1つのクライアントPC又は複数のクライアントPCなどから送信された複数のジョブを記憶可能である。
インターフェイス部29は、例えば、NIC(Network Interface Card)などのハードウェア部と、所定の通信プロトコルで通信を行うソフトウェア部とが組み合わされて構成されている。インターフェイス部29は、画像形成装置1をLANなどの外部ネットワークに接続する。これにより、画像形成装置1は、外部ネットワークに接続されているクライアントPCなどの外部装置と通信可能になる。図において、画像形成装置1は、PC71やPC73などが接続された外部ネットワークに接続されている。画像形成装置1は、PC71,73から印刷ジョブを受信可能である。また、画像形成装置1は、スキャン部40で読み取った画像データを、PC71に送信したり、メールサーバなどを介してE−mailにより送信したりすることができる。なお、インターフェイス部29は、無線通信により外部ネットワークに接続可能に構成されていてもよい。また、インターフェイス部29は、例えば、USB(Universal Serial Bus)インターフェイスであってもよい。この場合、インターフェイス部29は、通信ケーブルを介して接続された外部装置と画像形成装置1とを通信可能にする。
CPU21は、ROM23、RAM25、又はHDD27などに記憶された制御プログラム27aなどを実行することにより、画像形成装置1の種々の動作を制御する。CPU21は、操作部11から操作信号が送られたり、PC71などから操作コマンドが送信されたりすると、それらに応じて所定の制御プログラム27aを実行する。これにより、ユーザによる操作部11の操作などに応じて、画像形成装置1の所定の機能が実行される。
ROM23は、例えばフラッシュROM(Flash Memory)である。ROM23には、画像形成装置1の動作を行うために用いられるデータが記憶されている。ROM23には、HDD27と同様に、種々の制御プログラムや、画像形成装置1の機能設定データなどが記憶されていてもよい。CPU21は、所定の処理を行うことにより、ROM23からのデータの読み込みや、ROM23へのデータの書き込みを行う。なお、ROM23は、書換え不可能なものであってもよい。
RAM25は、CPU21のメインメモリである。RAM25は、後述のようにCPU21が制御プログラム27aを実行するときに必要なデータを記憶するのに用いられる。
スキャン部40は、上述のように、スキャナ機能を実行し、原稿から画像データを読み取る。スキャン部40により読み取られた画像データは、CPU21によりアプリケーションデータ形式に変換され、HDD27などに記憶される。CPU21は、HDD27などに記憶された画像データを、PC71,73などに送信可能である。
温湿度センサ60は、例えば、画像形成装置1の筐体の内部の温度及び湿度、すなわち画像形成装置1のおかれている環境の温度及び室温を測定可能である。なお、温湿度センサ60は、画像形成装置の筐体の内部及び外部の両方の温度及び湿度、又は画像形成装置の筐体の外部の温度及び湿度を測定可能に構成されていてもよい。温湿度センサ60は、後述するように、CPU21の要求に応じて、測定対象環境の温度及び湿度を測定し、測定結果をCPU21に送信する。なお、温湿度センサ60は、所定の時間間隔(例えば、10秒ごと)で温度及び湿度を測定し、その測定結果をCPU21に送信するように構成されていてもよい。
本実施の形態において、CPU21は、画像形成装置1の湿度環境の変化率(一定時間における変化の勾配)に基づいて、非画像形成時において感光体311を微少回転させる制御を行う。以下、この微少回転制御について説明する。CPU21は、微少回転制御を、所定の動作スケジュール(形成後動作スケジュール)及び微少回転間隔設定値に基づいて行う。微少回転間隔設定値は、後述するように、CPU21の変更動作により適宜変更される。なお、動作スケジュール及び微少回転間隔設定値は、例えばHDD27などに記憶されている。
ここで、本実施の形態において、感光体311の微少回転とは、例えば、感光体311の表面の変位量が約1.2センチメートルとなる程度に感光体311が回転されることをいう。この変位量は、帯電器313の、感光体311の回転方向の長さ(図2に寸法Lで示す)と同じか若干長いものである。感光体311は、微少回転されるとき、その動作音を小さく抑えるために、十分にゆっくり回転される。このとき、感光体311の回転に応じて、中間転写ベルト305も回動される。なお、微少回転は、上記より変位量が大きいものであっても小さいものであってもよい。例えば、微少回転時の変位量は、感光体311が1回転ないし数回転する程度であってもよい。また、微少回転時の回転速度は、通常の画像形成時と同様に速くてもよいし、遅くてもよい。
図4は、微少回転制御の動作の流れを示すフローチャートである。
図を参照して、ステップS101において、CPU21は、画像の形成を行う。
画像の形成が終了すると画像形成休止状態となり、CPU21は、微少回転制御を開始する。ステップS103において、CPU21は、画像形成休止が開始されると、画像形成休止からの計時を開始する。
ステップS105において、CPU21は、例えばHDD27から、形成後動作スケジュールを読み込む。
ステップS107において、CPU21は、画像形成ジョブが実行されないかどうかを確認する。ジョブが実行された場合には、CPU21は、ステップS101からの処理を再び行う。
ステップS107においてジョブが実行されないとき、ステップS109において、CPU21は、動作時刻が到来したかどうか、すなわち画像形成休止開始(S103)から動作スケジュールにおいて設定されている所定の時間が経過したかどうかを確認する。
ステップS109で動作時刻が到来した場合、ステップS111において、CPU21は、感光体311を微少回転させる。
ステップS111で感光体311を微少回転させたとき、又はステップS109で動作時刻が到来していないとき、CPU21は、画像形成休止開始(S103)から、所定時間(例えば、2分間)が経過したかどうかを確認する。ステップS113で所定時間が経過していないとき、CPU21は、所定時間が経過するまで(S113;YES)、ステップS109及びステップS111の処理を繰り返し行う。
ステップS113で、休止開始後から所定時間が経過したとき、CPU21は、形成後動作スケジュールに基づく制御を終了し、微少回転間隔設定値に基づく制御を開始する。ステップS115において、CPU21は、計時を開始する。これにより、次に感光体311の微少回転を行うまでの時間である微少回転間隔が計時される。
ステップS117において、CPU21は、HDD27などに記憶されている微少回転間隔設定値を確認する。
ステップS119において、CPU21は、画像形成ジョブが実行されないかどうかを確認する。ジョブが実行された場合には、CPU21は、そのジョブについて画像形成を行う(S101〜)。この場合、CPU21は、その画像形成が終了後、感光体311の微少回転の制御を、形成後動作スケジュールに基づいて実行する(S103〜S113)。
ステップS119でジョブが実行されない場合には、ステップS121において、CPU21は、動作時刻が到来したかどうかを確認する。すなわち、CPU21は、ステップS115から計時を開始してから経過した時間が、ステップS117で確認した微少回転間隔よりも短くないかどうかを確認する。動作時刻が到来しなければ、CPU21は、ステップS117〜S121の処理を繰り返して行う。
ステップS121で動作時刻が到来したとき、ステップS123において、CPU21は、感光体311を微少回転させる。感光体311を微少回転させると、CPU21は、再度、微少回転間隔の計時を開始し、微少回転間隔設定値を確認し、それに基づいて、微少回転制御を行う(S115〜S123)。
このように、微少回転制御において、CPU21は、画像形成が終了してから所定時間(2分間)は、所定の形成後動作スケジュールに基づいて感光体311を微少回転させる。形成後動作スケジュールは、感光体311を微少回転を実行させるタイミングとして、例えば、画像形成休止の開始から(S103)、30秒後、60秒後、90秒後、120秒後のタイミングが設定されているものである。したがって、画像形成終了後に帯電器313の周辺でオゾンが発生していても、このように頻繁に感光体311が微少回転するので、感光体311の部分的な劣化を防止し、オゾンむらの発生を防止することができる。
また、画像形成が終了してから所定時間(2分間)経過した後には、CPU21は、設定されている微少回転間隔設定値に基づいて感光体311を微少回転させる。したがって、OPC吸湿むらの発生を防止することができる。
図5は、本実施の形態における微少回転間隔設定値の変更動作の流れを示すフローチャートである。
本実施の形態において、微少回転間隔設定値の変更動作は、上述の微少回転制御動作とは別に独立して行われる。
ステップS201において、CPU21は、温湿度センサ60に、画像形成装置1の筐体の内部の湿度を測定させる。CPU21は、温湿度センサ60による測定値を取得する。
ステップS203において、CPU21は、取得した測定値を測定値データベースに記録する。なお、測定値データベースは、例えば、HDD27に記憶されている。
ステップS205において、CPU21は、測定値データベースから、前回の測定値を読み込む。
ステップS207において、CPU21は、今回取得した測定値と、前回の測定値とから、湿度の変化量を算出する。なお、算出した湿度の変化量は、前回の測定時から今回の測定時までの湿度の変化量である。したがって、このとき、CPU21は、画像形成装置1の筐体内部の湿度の変化率を取得したといえる。
ステップS209において、CPU21は、算出した湿度の変化量すなわち取得した湿度の変化率に基づいて、微少回転間隔設定値を設定し、HDD27などに保存する。このとき、CPU21は、それまでの微少回転間隔設定値が記憶されていても、それを、新しく設定した微少回転間隔設定値で置き換える。これにより、以後、上述のように感光体311の微少回転制御において読み込まれる微少回転間隔設定値が変更される。なお、湿度の変化量の算出値に基づく微少回転設定値の設定態様については、後述する。
ステップS211において、CPU21は、最後の測定を行ってから所定時間(例えば、2時間)経過するまで待機する。所定時間が経過すると、CPU21は、再びステップS201〜S209の処理を実行し、微少回転間隔設定値を更新する。
図6は、湿度の変化率に応じて設定される微少回転間隔設定値を示す図である。
図において、2時間ごとの湿度の変化量を湿度の変化率としている。ここで、画像形成装置1の設置環境は、おおまかに、以下の3種類の環境のいずれかに該当することが多い。すなわち、高温高湿環境(HHと称する)、中温中湿環境(NNと称する)、低温低湿環境(LLと称する)の3種類の環境である。画像形成装置1の設置環境が変化する場合として、湿度の減少率(変化後−変化前)が高い順に、「HHからLL」(減少率が60%以上)、「HHからNN」及び「NNからLL」(減少率が59%〜10%)、変化なし(減少率が±10%程度)、「LLからNN」及び「NNからHH」(増加率が59%〜10%)、並びに「LLからHH」(増加率が60%以上)の各場合が考えられる。
本実施の形態においては、湿度の減少率に応じて、設定すべき微少回転間隔設定値が予め設定されている。回転間隔設定値は、湿度の減少率が高いほど短くなる。これは、後述するように、湿度の減少率が高いほどOPC吸湿むらの発生可能性が高いからである。すなわち、「HHからLL」の環境変化があったときすなわち減少率が60%以上には、微少回転間隔設定値は15秒とされる。また、「NNからLL」などの場合のうち、湿度の減少率が40%以上であるときには、回転間隔設定値は30秒とされ、湿度の減少率が30%以上であるときには、回転間隔設定値は60秒とされる。また、湿度の減少率が30%未満であるときには、CPU21は、感光体311の微少回転を行わないようにする。
このような湿度の減少率に応じた回転間隔設定値の相違は、OPC吸湿むらの発生メカニズムを鑑みて設けられている。すなわち、湿度の減少率が高い状況下においては、吸湿していた感光体311の有機感光体は急速に乾燥する一方、クリーニングブレード319に堆積した廃トナーは、有機感光体ほど急速には乾燥しない。そのため、そのような場合には、感光体311と廃トナーとの両者の吸湿量の差が大きくなり、OPC吸湿むらが発生しやすくなる。本実施の形態において、CPU21は、湿度の減少率が高いほど、微少回転間隔設定値を短く設定し、感光体311の微少回転を頻繁に実行させる。換言すると、CPU21は、湿度の増加率が高いほど、微少回転間隔設定値を長く設定して感光体311の微少回転の実行頻度を低くする。また、CPU21は、湿度の減少率が所定の値よりも低い場合には、感光体311の微少回転を実行しない。
このようにCPU21が回転間隔設定値を設定することにより、画像形成装置1は、以下の利点を有する。すなわち、湿度の減少率が高く、OPC吸湿むらが発生しやすい状況下においては、感光体311が頻繁に微少回転されるので、OPC吸湿むらの発生を確実に防止することができる。また、湿度の減少率がそれほど高くはなく、OPC吸湿むらの発生可能性があまり大きくないような状況下においては、感光体311が微少回転される間隔を長くすることにより、画像形成装置1の静音化及び省電力化が可能になる。また、湿度の減少率が所定値(例えば20%)より小さく、OPC吸湿むらが発生しないと考えられる状況下においては、感光体311の微少回転が行われないので、画像形成装置1のさらなる静音化及び省電力化を実現することができる。
なお、CPU21は、微少回転間隔設定値として無限大などを設定し、実質的に感光体311の微少回転を行うタイミングが到来しないようにして、感光体311の微少回転を実行しないようにしてもよい。
図7は、画像形成装置1がおかれる室内環境(オフィス内など)における湿度の推移の一例を示す図である。
図において、例えば、夏(夏場(菱形印))と、春・秋(春秋(四角印))と、冬(冬場(三角印))との3つの場合の湿度の推移を示す。以下、各場合について、微少回転制御の一例について説明する。
まず、春や秋においては、気温がユーザにとって適温であり、室内の湿度もさほど変化しにくく、OPC吸湿むらは発生しにくい。この場合、画像形成装置1のおかれている環境について、2時間ごとの環境変化は、上述の例にならうと「NNからNN」となり、湿度の減少率が所定値(例えば、20%)よりも小さい。したがって、CPU21は、画像形成終了から所定時間経過後(2分経過後)には、感光体311の微少回転を実行しない。湿度が変化しない場合には、廃トナーも感光体311も同様に吸湿している状態であるため、OPC吸湿むらは発生しない。
また、冬においては、気温がユーザにとって低いため、室内において暖房が行われる。暖房が行われると、一般に、室内の湿度が上昇する(「LLからHH」又は「NNからHH」)。湿度が上昇する場合、湿度の減少率が負の値となり、所定値(例えば、20%)よりも小さくなる。CPU21は、感光体311の微少回転を実行しない。湿度が上昇する場合には、廃トナーも感光体311も同様に吸湿するため、OPC吸湿むらは発生しない。
一方、夏においては、気温がユーザにとって高いため、室内において冷房が行われる。冷房が行われると、一般に、室内の湿度が降下する(「HHからLL」)。このとき、CPU21は、湿度の減少率が所定値以上(例えば、20%)であるとき、その減少率に応じて、感光体311の微少回転を実行する。上述したように、湿度の減少率が高いほど、OPC吸湿むらが発生しやすい。しかしながら、OPC吸湿むらが発生しやすい状況下であるほど、高い頻度で感光体311の微少回転が行われるので、OPC吸湿むらの発生が防止される。
ここで、図において、夏の湿度は、0〜2時間までは減少しているが、その後、湿度はほとんど変化していない。このような場合には、CPU21が上記のように取得する湿度の減少率は、時間の経過と共に低くなる。そのため、感光体311の微少回転の頻度は次第に低くなり、湿度の減少率が所定値よりも小さくなったときに微少回転は実行されなくなる。また、余り暑くない日の午前中など、湿度が緩やかに低くなるときには湿度の減少率は比較的低く(「NNからLL」)、上述と同様に微少回転の頻度が低くなる。したがって、OPC吸湿むらが発生しやすいときにはそれを確実に防止することができ、かつ、OPC吸湿むらが発生にくいときには、画像形成装置1の静音化や省電力化を高いレベルで実現することができる。
なお、暖房の種類によっては、気温が上がることにより室内の空気が乾燥することがある。また、冷房の種類によっては、気温が下がっても湿度が降下しないことがある。このようなときには、CPU21は、気温が上がっても、湿度の減少率が高ければ、感光体311の微少回転制御を行い、OPC吸湿むらを防止することができる。また、CPU21は、気温が下がっても、湿度の減少率が低ければ、感光体311の微少回転制御を行わず、画像形成装置を静音化することができる。
[実施の形態における効果]
以上のように構成された画像形成装置では、温湿度センサを用いて取得した湿度の変化率に応じて、感光体の微少回転を行う。そのため、実際にOPC吸湿むらの発生可能性の程度に応じた頻度で感光体を微少回転させることができる。したがって、画像形成不良を確実に防止することができ、かつ、画像形成装置の静音化や省電力化を実現することができる。特に、感光体として、例えば電荷発生層にY型のチタニルオキソフタロシアニンを有するものを用いた場合には、この効果が顕著である。すなわち、湿度の変化率に応じて、必要なときには微少回転を頻繁に実行することができるので、吸湿むら防止と画像形成装置の静音化・省電力化とを高いレベルで両立させることができ、かつ、感度の高い感光体を用いて高品質な画像形成が可能となる。
また、湿度の減少率が所定値より低い場合には、CPUは、感光体の微少回転を実行しない。したがって、例えば湿度が高い場合でも、OPC吸湿むらが発生しないような場合には感光体の微少回転を行わないので、画像形成装置を確実に静音化することができる。
また、CPUは、前回の画像形成終了後に所定時間(例えば、2分間)が経過するまで、形成後動作スケジュールに基づいて感光体の微少回転を行う。したがって、帯電器付近でオゾンが発生することによる劣化むらの発生を確実に抑えることができ、画像形成不良の発生をより確実に防止することができる。
[その他]
なお、CPUは、画像形成終了後の所定時間内に行うオゾンむら対策のための感光体の微少回転は実行しなくてもよい。すなわち、CPUは、画像形成終了後、すぐに、微少回転間隔設定値に基づく、湿度の変化率に応じた間隔での感光体の微少回転を行ってもよい。また、形成後動作スケジュールや、CPUがそれに基づいた微少回転制御を実行する期間は、上述に限られるものではない。
また、CPUは、湿度の測定を2時間よりもさらに短い間隔又は長い間隔で行ってもよい。湿度の測定間隔や、湿度の変化率の取得間隔は、例えば感光体の材料や現像剤の物性などに応じて、又は演算による制御部などの負荷を鑑みて適宜設定すればよい。また、CPUは、湿度の測定を数秒ごとに行い、常にほぼ最新の湿度の変化率を取得するように構成されていてもよい。また、CPUは、湿度の変化率に所定値以上の変化があった場合に、より頻繁に湿度の変化率を確認し、湿度の変化率の変化が少なかった場合には、次回の湿度の測定までの時間を長めにするなど、湿度の変化率の取得間隔を変更してもよい。このように取得間隔を変更することにより、画像形成装置を省電力化し、かつ、湿度の変化に応じて速やかに微少回転制御を行ってOPC吸湿むらの発生を防止することができる。
また、温湿度センサは、画像形成装置に設けられていなくてもよい。すなわち、CPUは、例えばインターフェイス部などを介して画像形成装置に有線接続又は無線接続された外部機器から得た情報に基づいて、微少回転制御を実行してもよい。例えば、CPUは、外部機器から温度や湿度の情報を取得して、CPU自身が算出した変化率の情報を取得してもよい。また、CPUは、外部機器において算出された湿度等の変化率の情報を取得してもよい。この場合、画像形成装置にそのような制御を行うための温湿度センサを設けなくてもよく、画像形成装置の製造コストを低減することができる。
また、CPUは、湿度の変化率に代えて、気温など温度の変化率を取得してそれに応じて微少回転間隔設定値を変更してもよい。上述したように、一般に、画像形成装置が用いられるオフィスなどの室内環境は、気温が高い場合には高湿であることが多く、また、気温が低い場合には低湿であることが多い。したがって、CPUは、取得した気温が高い場合には高湿であるとみなし、取得した気温が低い場合には低湿であるとみなしてもよい。このとき、CPUは、次のように微少回転制御を実行する。すなわち、CPUは、取得した気温の減少率が高いとき、高湿から低湿に変化したとみなし、湿度の減少率が高いと認める。この場合、CPUは、感光体の微少回転を頻繁に実行する。他方、CPUは、取得した気温の増加率が高いとき、湿度の増加率が高いと認める。この場合、CPUは、感光体の微少回転の頻度を低くするか、微少回転を休止する。このように、CPUが、温度の変化率を取得してそれに応じて微少回転制御を行うようすることにより、湿度を測定可能なセンサ又は機器を用いる必要がなくなり、画像形成装置の製造コストを低減することができる。
また、CPUは、湿度の変化率に加えて、気温など温度の変化率を取得してそれらに応じて微少回転間隔設定値を変更してもよい。例えば、湿度の減少率が同様に高い2つの場合であって、一方は温度の増加率が高く、他方は温度の減少率が高いときに、CPUは、互いに異なる間隔で感光体を微少回転するようにしてもよい。これにより、画像形成装置がおかれている環境の種々の変化に適応し、種々の態様で感光体の微少回転を制御することができる。
なお、温湿度センサとしては、画像形成条件を決定するために画像形成装置に通常用いられているものを、微少回転の制御用に兼用することができる。
また、プリンタ部は、上述のような、中間転写ベルトを用いたタンデム方式のものに限られない。プリンタ部は、中間転写ベルトを用いたいわゆる4サイクル方式のものでもよいし、中間転写ベルトを用いず、感光体から用紙に直接にトナー像を転写するように構成されていてもよい。また、プリンタ部は、モノクロ画像のみを形成可能に構成されていてもよい。
また、画像形成装置としては、モノクロ/カラーの複写機、プリンタ、ファクシミリ装置やこれらの複合機(MFP)などいずれであってもよい。
また、上述の実施の形態における処理は、ソフトウェアによって行っても、ハードウェア回路を用いて行ってもよい。
また、上述の実施の形態における処理を実行するプログラムを提供することもできるし、そのプログラムをCD−ROM、フレキシブルディスク、ハードディスク、ROM、RAM、メモリカードなどの記録媒体に記録してユーザに提供することにしてもよい。また、プログラムはインターネットなどの通信回線を介して、装置にダウンロードするようにしてもよい。上記のフローチャートで文章で説明された処理は、そのプログラムに従ってCPUなどにより実行される。
なお、上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。