JP5262846B2 - ジアリルフタレート架橋低収縮性不飽和ポリエステル樹脂成形材料組成物及びその成形品 - Google Patents
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Description
近年、このスチレンは、環境汚染や人体への悪影響が問題とされ、VOC(揮発性有機化合物)として、また、悪臭防止法の特定悪臭物質として規制の対象となり、その放散量や放散速度の自主規制や、自治体の条例による規制が始まっている。
更に、硬化剤として、従来使用されている高温分解の有機過酸化物と併用して、半減期温度の低い有機過酸化物を使用することによって、従来のスチレン系のBMCやSMCの成形条件を変更することなく同等の成形条件で成形加工が可能な、低収縮性不飽和ポリエステル樹脂成形材料組成物及び成形品が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
本発明の低収縮性不飽和ポリエステル樹脂成形材料組成物では、重合性単量体がジアリルフタレートであり、低収縮化剤は重量平均分子量が50,000〜500,000であるスチレン系共重合体を含有するため、従来、重合性単量体としてスチレンを使用していたものに比べて、ジアリルフタレートを使用した場合、スチレンは臭気が強く、VOC(揮発性有機化合物)として、また、悪臭防止法の特定悪臭物質として規制の対象物質となっているのに対して、ジアリルフタレートは臭気がなく、VOC(揮発性有機化合物)や悪臭防止法の特定悪臭物質となっていないため、VOC(揮発性有機化合物)や悪臭防止法の特定悪臭物質の規制をクリヤーできる。また、成形材料の製造環境、成形加工環境、使用環境において、臭気の発生が無く人体への悪影響がない成形材料や成形品とすることができる。
これらの低収縮化剤は、スチレンには容易に溶解したり、膨潤軟化したりするが、ジアリルフタレートには容易に溶解せず塊状に膨潤し分離するか、全く溶解も膨潤もしない。このため、これらの低収縮化剤を使用したジアリルフタレート架橋不飽和ポリエステル樹脂成形材料組成物は、低収縮性が得られないばかりか成形加工時の加熱金型に部分的に低収縮化剤が粘着し金型を汚すと同時に成形品の外観を損ねる結果となる。
本発明における、不飽和ポリエステル樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂の多塩基酸のモル比が不飽和多塩基酸:飽和多塩基酸=100:0〜50:50の範囲であることが好ましいが、より好ましくは不飽和ポリエステル樹脂の多塩基酸のモル比が不飽和多塩基酸:飽和多塩基酸=100:0〜60:40、特に100:0〜80:20の範囲である。このモル比の不飽和ポリエステル樹脂を選択することにより、不飽和ポリエステル樹脂の固形エステル樹脂と重合性単量体としてのジアリルフタレートとの反応性を向上させ、高温硬化試験におけるゲルタイム、硬化時間をより短くでき、重合時に発生する最高発熱温度を重合性単量体としてスチレンを使用した場合と同程度の最高発熱温度にすることができる。
例えば、日本ユピカ社製の商品名「8524」は、不飽和多塩基酸:飽和多塩基酸のモル比が、≧50:≦50の中反応性樹脂で、テレフタル酸系不飽和ポリエステル樹脂の固形エステル樹脂であり、数平均分子量は約3890である。また、日本ユピカ社製の商品名「7365」は、不飽和多塩基酸:飽和多塩基酸のモル比が、80〜100:20〜0の高反応性樹脂で、固形エステル樹脂/ジアリルフタレートの比が55/45重量%のジアリルフタレートで溶解された不飽和ポリエステル樹脂で、固形エステル部分の数平均分子量は約2890である。なお、同社製「7360」は、同様、不飽和多塩基酸:飽和多塩基酸のモル比が、80〜100:20〜0の高反応性樹脂で、固形エステル/スチレンの比が55/45重量%のスチレンで溶解された不飽和ポリエステル樹脂であり、固形エステル部分の数平均分子量は同様に約2890である。
上記多塩基酸類は、不飽和多塩基酸を単独で使用しても良いし、飽和多塩基酸と併用して用いても良い。
本発明に使用する低収縮化剤は、重量平均分子量が50,000〜500,000であるスチレン系共重合体である。スチレン系共重合体は、スチレン系モノマーとアクリル酸系モノマーまたは酢酸ビニルモノマーとの共重合体であることが好ましい。スチレン系共重合体は、非架橋スチレン系共重合物であることが好ましい。
一方、アクリル酸系モノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸の誘導体、特に、アクリル酸エステルが挙げられる。アクリル酸エステルは、アクリル酸と、炭素数1〜20(特に1〜10)のアルコール(例えば、一価アルコールまたは多価(例えば2〜4価)アルコール)とのエステルであってよい。アクリル酸の誘導体の例は、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸プロポキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸メトキシジエチレングリコール、アクリル酸エトキシジエチレングリコール、アクリル酸メトキシエチレングリコール、アクリル酸ブトキシトリエチレングリコール、アクリル酸メトキシジプロピレングリコール、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸フェノキシジエチレングリコール、アクリル酸フェノキシテトラエチレングリコール、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸ジシクロペンテニル、アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、アクリル酸N−ビニル−2−ピロリドン、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル、アクリロニトリル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトナクリルアミドなどが挙げられる。
この内、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどが、低収縮化剤としてのポリマーのガラス転移温度を調整する観点から好ましい。スチレン系モノマーとアクリル酸系モノマーとの共重合体(特に、非架橋スチレン系共重合物)の上記低収縮化剤は、単独で使用しても、2種以上併用して用いても良い。
アクリル酸系モノマーに代えてあるいはアクリル酸系モノマーに加えて酢酸ビニルモノマーを用いてもよい。
低収縮化剤の重量平均分子量が50,000より小さい場合は、低収縮化剤のジアリルフタレートへの溶解性は非常に容易で早く良好であるが、ジアリルフタレート架橋低収縮性不飽和ポリエステル樹脂成形材料組成物の粘度が低くなり、BMCの混練り時の場合は機器への付着が激しく、SMCのシート作成時の場合は樹脂成分が分離しやすく、シートが非常に柔らかく取扱い性も悪くなる。また、成形加工時の計量等においてベタベタ付着し易く作業性が極めて劣る結果になる。
一方、低収縮化剤の重量平均分子量が500,000より大きい場合は、重合性単量体のジアリルフタレートへの溶解性が遅く溶解物の粘度が非常に高くなり、ひいてはその樹脂成形材料組成物の粘度が非常に高くなる結果、BMCの混練り時に混練物が良く混ざらないことや、SMCのシート作成時において、樹脂マトリックスの粘度が高くなるため、樹脂マトリックスをフィルム上に均一に塗付できなかったり、容器からの落下が非常に遅かったりして生産効率を落とす結果となる。更には、成形加工時の計量等において取扱いの作業性が極めて悪い結果になる。
また、本発明に使用する低収縮化剤のガラス転移温度は、30〜100℃を有することが好ましい。ガラス転移温度が30〜100℃であることにより、耐熱性および溶解性が良好である。より好ましいガラス転移温度は、55〜75℃である。
例えば、積水化成品社製の商品名「CS−40」及び「CS−20」は、スチレン:アクリル酸ブチルの重量%比が75:25であり、それぞれの重平均分子量は56,000及び1,000,000である。なお、当該発明には更に、同社製でスチレン:アクリル酸ブチルの重量%比が同様に75:25のスチレン系ランダム共重合体で、重平均分子量が110,000、190,000及び260,000を用いた。また、日油社製の商品名「モディパーS501」は、スチレン:酢酸ビニルモノマーの重量%比が50:50であり、その重平均分子量は213,000のスチレン系ブロック共重合体である。
1分間の半減期温度が160℃以上の有機過酸化物としては、好ましくはジキュミルパーオキサイド、例えば、日油社製「パークミルD」、t−ブチルパーオキシベンゾエート、例えば、日油社製「パーブチルZ」などから選ばれるもので、より好ましくはt−ブチルパーオキシベンゾエートがジアリルフタレート架橋低収縮性不飽和ポリエステル樹脂成形材料組成物の硬化反応に有効に作用する。
1分間の半減期温度が160℃以上の有機過酸化物の使用比率が65重量%〜85重量%である場合は、硬化速度が適切であり、ジアリルフタレート架橋低収縮性不飽和ポリエステル樹脂成形材料組成物のポットライフが適切であり、成形加工性の安定性が高く成形硬化時間が好適であり、成形効率が良好である。さらにバリの剥離が良好であり、作業性が高い。
(A)、(B)及び(C)の割合は、所望の用途によって変更可能であり、特に制限されるものではないが、不飽和ポリエステル樹脂の固形エステル部分が40〜60重量部では成形品の強度物性が高く、低収縮性が得られる。
また、重合性単量体が40〜60重量部では樹脂成分の粘度が低く成形材料の混練りや混合が充分に行われ、作業性が良好であり均質な成形品が得られる。また、低収縮化剤が5〜20重量部では低収縮率が得られ、成形品の物性が良好である。
硬化剤の総量が0.5〜5重量部であると、本発明の低収縮性不飽和ポリエステル樹脂成形材料組成物の硬化速度が適切であり瞬間的な硬化反応が生じず、成形金型からの成形品の脱型が良好であり金型に付着したバリの剥離性も良好である。
係る増粘剤としては、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カリウム、水酸化カリウム、酸化亜鉛等のアルカリ土類金属酸化物または水酸化物などが挙げられるが、増粘性の観点から酸化マグネシウムは、例えば、協和化学工業社製「キョーワマグ150」などが好適に使用される。また場合によっては、イソシアネート系増粘剤または膨潤性熱可塑性樹脂パウダーを使用することができる。
増粘剤の配合量としては、(A)不飽和ポリエステル樹脂の固形エステル部分、(B)重合性単量体、(C)低収縮化剤からなる樹脂成分(A)+(B)+(C)の100重量部に対し、0.05〜1重量部が好ましく、更に好ましくは0.1〜0.5重量部である。増粘剤の配合量が0.05〜1重量部の場合は、本発明の低収縮性不飽和ポリエステル樹脂成形材料組成物の充分な増粘効果が得られ、成形材料組成物の取扱い性が良好であり、適正な材料粘度を得ることができる。
係る離型剤は、本発明の低収縮性不飽和ポリエステル樹脂成形材料組成物の作成時に、例えば、BMCの混練物の内部へ練り込んだりまたはSMCの樹脂液にあらかじめ混合分散されたりするもので、例えばステアリン酸のような脂肪族有機酸やステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム及びステアリン酸マグネシウムなどの脂肪族有機酸の金属塩、ワックス類、シリコン類などが挙げられ、これらを単独で用いても良いし2種以上併用して用いても良い。
その配合量としては、(A)不飽和ポリエステル樹脂の固形エステル部分、(B)重合性単量体、(C)低収縮化剤からなる樹脂成分(A)+(B)+(C)の100重量部に対し、1〜5重量部とすることが好ましい。この範囲内の配合量であれば、離型性が良好で成形品の外観を損ねることもなく、強度物性に影響を与えることはない。
これらは通常、(A)不飽和ポリエステル樹脂の固形エステル部分、(B)重合性単量体、(C)低収縮化剤からなる樹脂成分(A)+(B)+(C)の100重量部に対し、0.005〜0.1重量部(50〜1,000ppm)配合される。
係る強化材としては、強度性能、外観等の諸特性を損なわない限り、材質、形状など、特に限定されるものではないが、例えば、ガラス繊維、セラミック繊維、ウィスカーなどの無機繊維、アミド、アラミド、ビニロン、ポリエステル、フェノール等の有機繊維、カーボン繊維、金属繊維、またはパルプ、コットンなどの天然繊維などを挙げることができる。
繊維強化材を使用する場合の配合量は、(A)不飽和ポリエステル樹脂の固形エステル部分、(B)重合性単量体、(C)低収縮化剤からなる樹脂成分(A)+(B)+(C)の100重量部に対し、20〜100重量部であり、成形材料組成物に要求される強度物性や流動性により適正な配合量が決められる。
係る充填材としては、強度性能、外観等の諸特性を損なわない限り、材質、形状等、特に限定されるものではないが、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化アルミニウム、カオリン、クレー、タルク、アルミナ粉、珪砂、珪石粉、シリカパウダー、ガラスパウダー、シラスバルーン、ガラスバルーン、ガラスビーズ、マイカ、雲母粉末、寒水石、大理石粉、砕石などの無機充填材、合成繊維、天然繊維等を粉砕した有機充填材が挙げられる。
上記の無機充填材は、シランカップリング剤等の表面処理剤で表面処理されたものから未処理品まで使用することができる。これらの充填材の平均粒径としては、0.1〜100μmが好ましく、更に好ましくは1〜50μmの平均粒子径のものが成形品の外観平滑性が得られ取扱い性も良い。これらの充填材は単独で使用しても良いし2種以上併用して用いても良い。
充填材を使用する場合の配合量は、(A)不飽和ポリエステル樹脂の固形エステル部分、(B)重合性単量体、(C)低収縮化剤からなる樹脂成分(A)+(B)+(C)の100重量部に対し、0〜300重量部であり、好ましくは、150〜200重量部である。
係る添加剤としては、酸化チタン、カーボンブラック、弁柄等の無機顔料や各種有機顔料、染料などの着色剤、低収縮化剤の分離防止剤または相溶化剤、減粘剤あるいは粘度低減剤などがあり、その添加量としては、(A)不飽和ポリエステル樹脂の固形エステル部分、(B)重合性単量体、(C)低収縮化剤からなる樹脂成分(A)+(B)+(C)の100重量部に対し、0〜20重量部、例えば0.1〜10重量部である。
これらの添加剤は、必要に応じて単独または2種以上使用することができる。
還流冷却器を配した溶解槽に規定量の重合性単量体を流し込み、重合性単量体がジアリルフタレートの場合は溶解槽のジャケットに80〜90℃の温水を循環させ、重合性単量体がスチレンの場合は溶解槽のジャケットに50〜60℃の温水を循環させ、高速撹拌翼を150〜250rpmにて回転させ重合性単量体を撹拌しながら、重合禁止剤を分散・溶解させた後、固形エステル樹脂「8524」の規定量を徐々に投入し溶解させた。
これらの不飽和ポリエステル樹脂「7365」や「7360」は、既に重合性単量体に溶解されているため、重合性単量体としてのジアリルフタレートやスチレンに溶解することなく、そのまま使用した。
還流冷却器を配した溶解槽に規定量の重合性単量体を流し込み、重合性単量体がジアリルフタレートの場合は溶解槽のジャケットに80〜90℃の温水を循環させ、重合性単量体がスチレンの場合は溶解槽のジャケットに50〜60℃の温水を循環させ、高速撹拌翼を150〜250rpmにて回転させ重合性単量体を撹拌しながら、低収縮化剤の規定量を徐々に投入し溶解させた。
また、スチレン−酢酸ビニルモノマーのブロック共重合体(日油社製「モディパーS501」スチレン/酢酸ビニル=50/50の重量%比)も低収縮化剤として同様に用いた。
これらの低収縮化は、同様に、ジアリルフタレート(ダイソー製「ダイソーダップモノマー」登録商標)及びスチレン(キシダ化学社製)のそれぞれに低収縮化剤/重合性単量体が41.2/58.8重量%になるように溶解させた。
還流冷却器を配した溶解槽に規定量の重合性単量体を流し込み、重合性単量体がジアリルフタレートの場合は溶解槽のジャケットに80〜90℃の温水を循環させ、重合性単量体がスチレンの場合は溶解槽のジャケットに50〜60℃の温水を循環させ、高速撹拌翼を150〜250rpmにて回転させ重合性単量体を撹拌しながら、低収縮化剤の規定量を徐々に投入し溶解・膨潤・分散させた。
塊状成形材料の混練り方法としては、例えば、通水し冷却された槽と双腕型バンバリーブレードを有する加圧ニーダーに、増粘剤、離型剤、充填材及びその他添加剤などの粉体原料を投入し、加圧蓋を閉じ1〜2分間混合する。次いで、加圧蓋を開け樹脂成分などの液体成分を投入し、更に硬化剤を添加し、ブレードを異方向内回り回転させながらパテ状になるまで5〜10分間混練し、次いでチョップドストランドガラス繊維を1〜2分間かけて徐々に投入し規定量投入完了後、ガラス繊維の集束が解繊し均一に分散するまで加圧蓋を閉じ5〜10分間混練する。
混練完了後、加圧蓋を開け加圧ニーダーを転倒させ、ブレードを外回り、内回りと回転させながら混練りされた塊状成形材料を取り出し、ポリエチレンフィルムとポリエチレンテレフタレートフィルムまたはビニロンフィルムとのラミネートフィルムなどで包装する。
必要に応じて、取り出された塊状成形材料をコーン型2軸押出機にて、断面が円形または角形などの棒状に押出し、所望重量にてカットし前記フィルムにて包装してもよい。
シート状成形材料の作成方法としては、例えば、まず、重合性単量体に溶解した不飽和ポリエステル樹脂や低収縮化剤などの樹脂液体成分に、ガラス繊維などの強化材を除く硬化剤、増粘剤、離型剤、充填材及びその他添加剤を高粘度撹拌機にて均一に混合し、樹脂マトリックスを作成する。次いで、この樹脂マトリックスをキャリアーフィルム上に均一の厚さで塗付し、その樹脂マトリックス上にガラス繊維などの繊維強化材を散布し、もう一方のキャリアーフィルム上に同様に樹脂マトリックスを均一の厚さになるように塗付し先の繊維強化材を挟み込み、含浸装置のロールで加圧含浸・脱泡を行い繊維強化材に樹脂マトリックスを含浸させ、ロール状に巻き取るか、あるいは、専用コンテナへ折り畳んで梱包し、必要に応じて室温〜50℃の温度にて1〜7日間熟成を行う。
前記シート状成形材料作成方法に使用されるフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、あるいはこれらを用いた積層フィルムなどが挙げられる。これらのフィルムは単独で使用しても、2種以上併用して用いても良い。
圧縮成形、移送成形、射出成形、射出圧縮成形などの成形条件としては、得られる成形品の外観や物性などを考慮すれば、金型温度を好ましくは130〜170℃、より好ましくは140〜160℃に加熱し、成形圧力は好ましくは2〜50MPa、より好ましくは5〜30MPaに加圧し、加熱加圧時間を成形品厚さ2mm/分〜3mm/分の硬化時間で成形することが好ましい。これらの成形条件は、スチレン系の成形材料とほぼ同様の成形条件でよい。
また、本発明の低収縮性不飽和ポリエステル樹脂成形材料組成物からなる成形材料、特に塊状成形材料(BMC)は白物家電製品、例えば、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、掃除機、電子レンジなどや、ハイブリッドカー、電気自動車などや、産業用製品などのモーター封止用のBMCとして有用である。さらに、各種電気・電子製品の電機絶縁部品としても利用できる。
不飽和多塩基酸:飽和多塩基酸のモル比が≧50:≦50のテレフタル酸系固形エステル樹脂(日本ユピカ社製「8524」)10.5部を、ジアリルフタレート(ダイソー製「ダイソーダップモノマー」登録商標)8.59部またはスチレン(キシダ化学社製)8.59部に、固形エステル樹脂/重合性単量体が55/45重量%になるように溶解した。
以下、ジアリルフタレートに溶解したこの不飽和ポリエステル樹脂を「8524−D」、比較例として用いたスチレンに溶解したこの不飽和ポリエステル樹脂を「8524−S」と略記する。
固形エステル樹脂の溶解条件は、高速撹拌機と還流冷却器を配した溶解槽に規定量の重合性単量体を流し込み、重合性単量体がジアリルフタレートの場合は溶解槽のジャケットに85℃の温水を循環させ、重合性単量体がスチレンの場合は溶解槽のジャケットに55℃の温水を循環させ、撹拌翼を200rpmにて回転させ、それぞれの重合性単量体を撹拌しながら、重合禁止剤0.003部(片山化学工業社製「ヒドロキノン」試薬特級)を分散・溶解させた後、固形エステル樹脂「8524」の規定量を徐々に投入し溶解させた。
一方、不飽和ポリエステル樹脂(日本ユピカ社製「7365」)19.09部は、固形エステル/ジアリルフタレートが55/45重量%の不飽和ポリエステル樹脂であり、不飽和ポリエステル樹脂(日本ユピカ社製「7360」)19.09部も同様、固形エステル/スチレンが55/45重量%の不飽和ポリエステル樹脂であるため、これらの不飽和ポリエステル樹脂は、ジアリルフタレートまたはスチレンの重合性単量体に溶解することなく、そのまま使用した。
内容積5Lのオートクレーブ中の水2000gに、懸濁安定剤としてピロリン酸マグネシウムを7.2g、アルキルベンゼンスルホン酸塩(第一工業製薬社製ネオゲンSL−200)を0.47g入れ分散させた。これに、予め調製しておいたスチレン1200g、アクリル酸ブチル400g、重合開始剤として過酸化ベンゾイル(日油社製ナイパーBW、純分74.2%)12.9gを溶解させた混合液を入れた。次いで85℃に加熱して、170rpmで撹拌しながら、85℃で5時間重合させ、続いて未反応モノマー低減のため110℃で3時間反応させた。ここで得られた粒子を塩酸にて処理し、洗浄濾過した後、乾燥することで樹脂粒子(低収縮化剤)を得た。得られた樹脂粒子の重量平均分子量は110,000であり、ガラス転移温度は61℃であった。
更に、過酸化ベンゾイルを4.7g使用し、85℃での反応時間を12時間とすること以外は上記と同様にして樹脂粒子(低収縮化剤)を得た。得られた樹脂粒子の重量平均分子量は260,000であり、ガラス転移温度は60℃であった。
スチレン:アクリル酸ブチルの重量%比が75:25の、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体で、重平均分子量56,000(積水化成品工業社製、「CS−40」)、重平均分子量110,000(同社製開発品1)、重平均分子量190,000(同社製開発品2)、重平均分子量260,000(同社製開発品3)及び重平均分子量1,000,000(同社製「CS−20」)のそれぞれ4.5部をジアリルフタレート(ダイソー製「ダイソーダップモノマー」登録商標)6.41部またはスチレン(キシダ化学社製)6.41部に溶解し、低収縮化剤/重合性単量体が41.2/58.8重量%になるように溶解した。
JIS K 6901:1999(2003 確認)の5.8に記載の130℃高温硬化特性に準じて試験を行った。但し、硬化剤としての有機過酸化物は、それぞれの実施例、比較例に用いた有機過酸化物の種類とその使用量を樹脂成分に溶解した。
試験結果は、t1:ゲルタイム(試料温度が80℃〜140℃になるまでの時間)、t2:硬化時間(試料温度が80℃〜最高温度になるまでの時間)、T:最高発熱温度(最高温度)及び℃/秒:反応速度(温度曲線の変曲点における正接tanδ)で示した。
ジアリルフタレート系成形材料またはスチレン系成形材料の5gを、セタ密閉式引火点測定器の試料槽の中央部にセットし蓋を閉める。槽の温度を引火点の予想温度より少し低い温度まで上げ、1分間保持し、1分直後に蓋を開け着火し、引火の有無を確認した。
各試料において、引火点近辺の槽の温度を変化させ、それぞれの測定温度で繰り返し測定を3回行い、2回以上引火した温度の内、最も低い温度を示した温度を引火点(引火温度)とした。
BMC粘度測定機(日本ユピカ社製「形式:BMC−100T(タッチパネル式)」)を用いて測定した。ジアリルフタレート系塊状成形材料またはスチレン系塊状成形材料(BMC)50gを40℃の試料ポットに投入し、ピストンを下ろし、3分間保持する。その後、ピストンを一定速度(10mm/sec)で下ろし試料ポットの底部中央に設けられた直径4mm×L10mmのモノホールから塊状成形材料(BMC)を流出させる。この時の押出しピストンにかかる荷重を算出した。
成形機械:37トン移送成形機(北十字社製「トランスファーATA37型」)
測定金型:EMMIスパイラルフロー(ダイソー自社製作)
測定温度:150℃(金型温度)
注入圧力:490MPa(50kg/cm2)
試料量:15cc×比重(約30g前後)
加圧時間:180sec
成形材料が、細い渦巻き状の蚊取り線香の如きスパイラル状に硬化成形された部分の最長長さを測定し、その長さを流動性とし、その長さの変化を時系列的に測定した。
保存安定性は、成形材料を規定温度(50℃)に保存し、規定日数に達したところで、室温まで放冷し上記条件にて測定した。
[硬化特性の測定]
成形機械:37トン圧縮成形機(神藤金属社製「37トン圧縮プレス」)
測定金型:□300mmステンレス製鏡面板×2枚(ダイソー自社製作)
測定温度:150℃(金型加熱温度)
圧縮圧力:196MPa(ゲージ圧:20kg/cm2)
試料量:25g×2個
熱伝対:T型熱伝対(0〜400℃、レコーダーに結線)
加圧時間:最高発熱温度を示し、その温度が低下を示すまで
上記の機器、条件にて、ジアリルフタレート系成形材料またはスチレン系成形材料の25g×2個の間の中央部分に温度レコーダーに結線されたT型熱伝対を挟み込み、それを150℃に加熱された37トン圧縮プレスのステンレス製鏡面板の間の中央部分に置きゲージ圧を20kg/cm2で加圧する。ステンレス製鏡面板の4隅には厚さ4mmの樹脂板をセットし、成形材料がそれ以上加圧されないようにストッパーを設けてある。
レコーダーのチャートより、50℃〜接線交点(温度時間曲線の温度上昇傾斜と硬化反応開始後の最大傾斜の直線接線交点)をゲルタイム(秒)、50℃〜発熱温度の最大値を示す点までを硬化時間(秒)、発熱温度の最大値を最高発熱温度(℃)、温度曲線の変曲点における正接tanδを反応速度(℃/秒)とした。
(圧縮成形)
成形機械:
50及び70トン圧縮成形機(シマズマシナリー社製)、
60トン圧縮成形機(丸七社製「MS−0型」)
成形金型:JIS K 6911 各種試験片金型(ダイソー自社製作)
成形温度:150℃(金型温度)
成形圧力:490MPa(50kg/cm2)
試料量:(試験片ごとにその容積×各成形材料の比重×1.05)g×取数(キャビティ数)とした。
加圧時間:20sec/mm(15mmt)〜50sec/mm(3mmt)
成形品:
シャルピー衝撃(□15mm×90mml)×4本取り
引張り強さ(ダンベル形状)×1枚取り
熱変形温度(□13mm×127mml)×2本取り:熱変形温度,圧縮強さ切出し測定用
耐アーク円板(直径100mm×3.2mmt)×1枚取り:耐アーク性,耐トラッキング性,体積抵抗率の測定用
成形機械:37トン移送成形機(北十字社製「トランスファーATA37型」)
成形金型:JIS K 6911 試験片セット取り金型(ダイソー自社製作)
成形温度:150℃(金型温度)
注入圧力:686MPa(70kg/cm2)
試料量:35cc×各成形材料の比重(約60〜65g前後)
加圧時間:180sec
成形品:
曲げ強さ(10mmw×80mml×4mmt)×2本
吸水円板(直径50mm×3mmt)×1枚:煮沸吸水率,加熱後外観,誘電率,誘電正接測定用
絶縁破壊電圧(直径90mm×2mmt)×1枚
ヘッドスペース−ガスクロマトグラフ−質量分析法により、成形品中の残存スチレン量を定量した。
分析装置:島津製作所社製「HS−GC−MSシステム」
ヘッドスペース:パーキンエルマー社製「HS−40XL」
ガスクロマトグラフ:島津製作所社製「GC−17A」
質量分析装置:島津製作所社製「GCMS−QP5050A」
成形硬化した試験片(移送成形の曲げ強さ試験片)をカッターナイフで削り、バイアルに封印し100℃・60min.加温したものを測定試料とした。
前記プレス条件の圧縮成形により得られた耐アーク円板(直径100mm×3.2mmt)を用い、前記直径100mm×3.2mmtの円板を成形するための金型の内径寸法を常温にて45°ずらした4点を測定した平均値と、実際に圧縮成形された円板の外径を45°ずらした4点の寸法の平均値との差より下式により収縮率を求めた。
収縮率(%)={(金型の内径寸法−円板の外径寸法)/金型の内径寸法}×100
(光沢度)
測定機:光沢計(BYKガードナー社製「MYCRO−TRI−gloss」)
入射光角度:60°
60°の反射グロスの数値を読み取った。
測定機:表面粗さ計(東京精密社製「サーフコム570A」)
触針:先端ダイヤモンド1μmR 55°円錐
測定力:約0.2mN
測定範囲:最大±40μm
測定値:中心線平均粗さRa、最大高さRmax
JISK6911に準じて測定を行った。
高速撹拌機と還流冷却器を配し、ジャケットに85℃の温水を循環させた溶解槽にジアリルフタレート(ダイソー製「ダイソーダップモノマー」登録商標)6.41部またはジャケットに55℃の温水を循環させた溶解槽にスチレン(キシダ化学社製)6.41部を流し込み、撹拌翼を200rpmにて回転させ撹拌しながら、それぞれにスチレン−アクリル酸ブチル共重合体、重平均分子量56,000、ガラス転移温度60℃(積水化成品工業社製、「CS−40」)、重平均分子量110,000、ガラス転移温度61℃(積水化成品工業社製開発品1)、重平均分子量190,000、ガラス転移温度61℃(積水化成品工業社製開発品2)、重平均分子量260,000、ガラス転移温度60℃(積水化成品工業社製開発品3)及び重平均分子量1,000,000、ガラス転移温度61℃(積水化成品工業社製「CS−20」)のそれぞれ4.5部を徐々に投入し2.5時間で溶解させた。
◎:溶解性が早く容易で、完全に溶解する。
〇:完全に溶解し、溶液が透明または白色溶解状態である。
△:部分溶解、膨潤または未溶解で、ままこ状態の塊がある。
×:全く溶解も膨潤もしていない状態である。
表1に低収縮化剤の重合性単量体への溶解性評価結果を示す。
スチレン−アクリル酸ブチル共重合体(No.1〜10)は、その分子量に大きさに影響されず、また、「モディパーS501」(No.15,16)などは、ジアリルフタレートにもスチレンにも良く溶解するが、ポリスチレン「MS−200」(No.11,12)や「S−90」(No.13,14)はスチレンには溶解するが、ジアリルフタレートには膨潤または未溶解のものが、ままこ状態の塊で餅状に分離した。なお、ポリエチレン粉末の「フローセンUF20S」(No.17,18)は、当然、ジアリルフタレートにもスチレンにも溶解も膨潤もせず、分散しているのみで、放置すればモノマー成分と分離する状態であった。
結果、スチレン−アクリル酸ブチルの共重合体(重量%比が75:25)は、そのガラス転移温度の範囲内(40〜80℃)では、分子量の大きさに関わらず、ジアリルフタレートに良く溶解することが判った。
前記した低収縮化剤の同一の溶解条件と同一の溶解槽を用い、それぞれの低収縮化剤の溶液、一部未溶解液または分散液(表1のNo.1〜18)10.91部に、不飽和ポリエステル樹脂(日本ユピカ社製「7365」)19.09部を、各低収縮化剤をジアリルフタレートに溶解または混合したもの(表1のNo.が奇数)に加え、85℃のまま1時間、200rpmで撹拌し溶解させ、また、不飽和ポリエステル樹脂(日本ユピカ社製「7360」)19.09部を、各低収縮化剤をスチレンに溶解または混合したもの(表1のNo.が偶数)に加え、55℃のまま1時間、200rpmで撹拌し溶解させた。
次いで、それぞれの樹脂液に、硬化剤2種類として有機過酸化物t−ブチルパーオキシベンゾエート(日油社製「パーブチルZ」)0.45部と1,1ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5トリメチルシクロヘキサン(日油社製「パーヘキサTMH」)0.15部とを、上記同温度、同回転数で15分間撹拌し溶解させ樹脂液No.101〜118を得た。
なお、樹脂液No.119は、不飽和ポリエステル樹脂(日本ユピカ社製「7365」)19.09部のみに、有機過酸化物t−ブチルパーオキシベンゾエート(日油社製「パーブチルZ」)0.45部と1,1ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5トリメチルシクロヘキサン(日油社製「パーヘキサTMH」)0.15部を混合溶解した樹脂液であり、樹脂液No.120は、不飽和ポリエステル樹脂(日本ユピカ社製「7360」)19.09部のみに、同様の上記有機過酸化物を混合溶解した樹脂液を上記同条件で調製した。
溶解し終わった上記溶解槽のジャケットに、水道水を流し、これらの樹脂液を冷却した。
これら(一部割愛した)の樹脂液の高温硬化特性を、JIS K 6901:1999(2003 確認)の5.8に記載の130℃高温硬化特性に準じて試験を行い、以下の特性を求めた。
t1:ゲルタイム(試料温度が80℃〜140℃になるまでの時間)
t2:硬化時間(試料温度が80℃〜最高温度になるまでの時間)
T:最高発熱温度(最高点を示した温度)
℃/秒:反応速度(温度曲線の変曲点における正接tanδ)
表2に樹脂液の高温硬化特性の測定結果を示す。
ジアリルフタレート系の樹脂液(樹脂液No.が奇数)は、スチレン系の樹脂液(樹脂液No.が偶数)に比較して、ゲルタイムも硬化時間も長いが、最高発熱温度には大差がなく、反応速度はジアリルフタレート系の樹脂液のほうがスチレン系の樹脂液に比較して、早いか、ほぼ同等の結果を示した。
なお、低収縮化剤溶液を含まない樹脂液No.119とNo.120は、低収縮化剤溶液を含む樹脂液同様、ジアリルフタレート系の樹脂液No.119がスチレン系の樹脂液No.120に比較して、ゲルタイムも硬化時間も長いが、両者共に低収縮化剤溶液を含む樹脂液よりも最高発熱温度が高く、反応速度が非常に速くなった。これは、低収縮化剤溶液を含まないため、樹脂に対する硬化剤の比率が高くなったためと考えられる。
ジャケットと双腕バンバリーブレードを水冷した3Lの加圧ニーダー(森山製作所社製)に、充填材の水酸化アルミ(昭和電工社製「ハイジライトH−32」)1750g、金属架橋剤の酸化マグネシウム(協和化学工業社製「キョーワマグ150」)1.05g、離型剤のステアリン酸亜鉛(アデカ社製「SZ2000」)35gを入れ、加圧蓋を閉め、バンバリーブレードを異方向内回り25rpmにて、1分間混合した。
次いで、加圧蓋を開け、混合しながら上記粉体成分の中に、樹脂成分として表2に示す樹脂液No.101を85℃に加温し、その1071gを徐々に加え均一にパテ状になるまで4分間混練した。
混練終了後、加圧ニーダーの蓋を開け、ニーダー槽を転倒させ、バンバリーブレードを正転、逆転させながら混練物を取り出し、PETフィルムで包装し保管した。
表2に示す樹脂液No.103を樹脂成分として使用すること以外は実施例1と同様にして混練物を得た。この樹脂成分の低収縮化剤がスチレン−アクリル酸ブチル共重合体で重平均分子量110,000、ガラス転移温度61℃(積水化成品工業社製開発品1)をジアリルフタレートで溶解した表1のNo.3である以外は実施例1と同様の成分を含む。
表2に示す樹脂液No.105を樹脂成分として使用すること以外は実施例1と同様にして混練物を得た。この樹脂成分の低収縮化剤がスチレン−アクリル酸ブチル共重合体で重平均分子量190,000、ガラス転移温度61℃(積水化成品工業社製開発品2)をジアリルフタレートで溶解した表1のNo.5である以外は実施例1と同様の成分を含む。
表2に示す樹脂液No.107を樹脂成分として使用すること以外は実施例1と同様にして混練物を得た。この樹脂成分の低収縮化剤がスチレン−アクリル酸ブチル共重合体で重平均分子量260,000、ガラス転移温度60℃(積水化成品工業社製開発品3)をジアリルフタレートで溶解した表1のNo.7である以外は実施例1と同様の成分を含む。
表2に示す樹脂液No.115を樹脂成分として使用すること以外は実施例1と同様にして混練物を得た。この樹脂成分の低収縮化剤がスチレン−酢酸ビニル共重合体で重平均分子量213,000、ガラス転移温度30℃と100℃の2箇所に現れるもの(日油社製「モディパーS501」)をジアリルフタレートで溶解した表1のNo.15である以外は実施例1と同様の成分を含む。
樹脂液1071gには、不飽和ポリエステル樹脂が、日本ユピカ社製「8524」367.5gをジアリルフタレート(ダイソー製「ダイソーダップモノマー」登録商標)300.65gに溶解した略称「8524−D」668.15gと、低収縮化剤がスチレン−アクリル酸ブチル共重合体で重平均分子量110,000、ガラス転移温度61℃(積水化成品工業社製開発品1)をジアリルフタレートで溶解した表1のNo.3である以外は実施例1と同様の成分を含み、実施例1と同様にして混練物を得た。
表2に示す樹脂液No.102を55℃に加温し樹脂成分として使用すること以外は実施例1と同様にして混練物を得た。この樹脂成分の不飽和ポリエステル樹脂が日本ユピカ社製「7360」であり、低収縮化剤の溶剤にジアリルフタレートの代わりに、スチレン(キシダ化学社製)を用いた表1のNo.2である以外は実施例1と同様の成分を含む。
表2に示す樹脂液No.109を樹脂成分として使用すること以外は実施例1と同様にして混練物を得た。この樹脂成分の低収縮化剤がスチレン−アクリル酸ブチル共重合体で重平均分子量1,000,000、ガラス転移温度61℃(積水化成品工業社製「CS−20」)である以外は実施例1と同様の成分を含む。
表2に示す樹脂液No.111を樹脂成分として使用すること以外は実施例1と同様にして混練物を得た。この樹脂成分の低収縮化剤がポリスチレン(積水化成品工業社製、「MS−200」、重平均分子量340,000、ガラス転移温度105℃である以外は実施例1と同様の成分を含む。
表2に示す樹脂液No.113を樹脂成分として使用すること以外は実施例1と同様にして混練物を得た。この樹脂成分の低収縮化剤がポリスチレン(積水化成品工業社製、「S−90」、重平均分子量57,000、ガラス転移温度100℃)である以外は実施例1と同様の成分を含む。
表2に示す樹脂液No.117を樹脂成分として使用すること以外は実施例1と同様にして混練物を得た。この樹脂成分の低収縮化剤がポリエチレン粉末(住友精化社製「フローセンUF20S」)である以外は実施例1と同様の成分を含む。
ジャケットと双腕バンバリーブレードを水冷した3Lの加圧ニーダー(森山製作所社製)に、充填材の水酸化アルミ(昭和電工社製「ハイジライトH−32」)1750g、金属架橋剤の酸化マグネシウム(協和化学社製「キョーワマグ150」)1.05g、離型剤のステアリン酸亜鉛(アデカ社製「SZ2000」)35gを入れ、加圧蓋を閉め、バンバリーブレードを異方向内回り25rpmにて、1分間混合した。
次いで、加圧蓋を開け、混合しながら上記粉体成分の中に、樹脂成分として下記に示す樹脂液1071gを85℃に加温し、徐々に加え均一にパテ状になるまで4分間混練した。
混練終了後、加圧ニーダーの蓋を開け、ニーダー槽を転倒させ、バンバリーブレードを正転、逆転させながら混練物を取り出し、PETフィルムで包装し保管した。
樹脂液として、不飽和ポリエステル樹脂が、日本ユピカ社製「8524」367.5gをスチレン(キシダ化学社製)300.65gに溶解した略称「8524−S」668.15gと、低収縮化剤としてポリスチレン(積水化成品工業社製、「MS−200」、重平均分子量340,000、ガラス転移温度105℃)157.5gをスチレン(キシダ化学社製)224.35gに溶解した表1のNo.12を381.85gと、硬化剤として有機過酸化物t−ブチルパーオキシベンゾエート(日油社製「パーブチルZ」)15.75g及び1,1ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5トリメチルシクロヘキサン(日油社製「パーヘキサTMH」)5.25gとを含む。上記樹脂液を55℃の加温すること以外は、比較例6と同様にして混練物を得た。
樹脂成分として、硬化剤が有機過酸化物t−ブチルパーオキシベンゾエート(日油社製「パーブチルZ」)21gのみを含むこと以外は、比較例6と同様にして混練物を得た。
表3に、実施例1〜6及び比較例1〜8に使用した、樹脂液成分を一覧に詳述する。
重合性単量体、低収縮化剤、不飽和ポリエステル樹脂、硬化剤の詳細に関しては、下記の通りの略号にて表中に表記した。
重合性単量体の種類(DAP:ジアリルフタレート、St:スチレン)。
低収縮化剤
(St−BA:スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、
PS:ポリスチレン、
PS−PVAc:スチレン−酢酸ビニル共重合体、PE:ポリエチレン),
重平均分子量(MW)、ガラス転移温度(Tg)、各低収縮化剤の品番(品番)。
不飽和ポリエステル樹脂の種類(モル比:不飽和多塩基酸/飽和多塩基酸)・品番。
硬化剤の種類と有無(TBP:「パーブチルZ」、TMH:「パーヘキサTMH」)。
有り:〇、無し:×
成形材料の混練性の評価は以下の通りに行った。
◎:非常に良好な状態で混練され、加圧ニーダーへの付着が全く無い
〇:良好な状態で混練され、加圧ニーダーへの付着がほとんど無い
△:混練物の粘度が高く、パサつきがある。加圧ニーダーへの付着は無い
×:混練物の粘度が低く、ベタベタし、加圧ニーダーへの付着が多い
表4に成形材料の混練性、引火点、粘度、流動性、硬化特性の評価結果を示す。
表4の実施例と比較例における加圧ニ−ダー混練性は、手の感触と目視判断で行った。
本発明の低収縮性不飽和ポリエステル樹脂成形材料組成物の1種の形態である実施例1〜4及び6のジアリルフタレート系成形材料は、低収縮化剤にスチレン−アクリル酸ブチル共重合体の重平均分子量56,000〜260,000でガラス転移温度60〜61℃の「CS−40」他(積水化成品工業社製)を用いることにより優れた混練性を示した。
一方、比較例1及び7のスチレン系成形材料は、低収縮化剤にスチレン−アクリル酸ブチル共重合体の重平均分子量56,000、ガラス転移温度60℃の「CS−40」(積水化成品工業社製)及びポリスチレンの重平均分子量340,000、ガラス転移温度105℃の「MS200」(同社製)を用いたが、成形材料の混練性は非常に悪く、ベタベタし、加圧ニーダーへの付着が多いものであった。
ポリエチレン粉末の「フローセンUF20S」(住友精化社製)を用いた比較例5についても、同様に、成形材料の混練性は非常に悪く、ベタベタし、加圧ニーダーへの付着が多いものであった。
なお、比較例2は、低収縮化剤にスチレン−アクリル酸ブチル共重合体の重平均分子量1,000,000でガラス転移温度61℃の「CS−20」(積水化成品工業社製)を、比較例3、6、8は、ポリスチレンの重平均分子量340,000でガラス転移温度105℃の「MS200」(同社製)を用いたジアリルフタレート系成形材料であり、加圧ニーダーへの付着は無いがパサつきがあり、塊状成形材料(BMC)としてまとまりの悪い状態であった。
比較例の中で混練性が良好であった比較例4は、低収縮化剤にポリスチレンの重平均分子量57,000、ガラス転移温度100℃の「S−90」(積水化成品工業社製)を用いたジアリルフタレート系成形材料であり、低収縮化剤の前記の重平均分子量340,000の「MS200」(同社製)に比較し分子量が小さいため、成形材料にパサつきが生じないで、割合良好な混練状態が得られたものと考えられる。
これは、金型による加熱加圧成形加工時の金型内部への充填性、賦型性が向上し、スチレン系成形材料の特徴的な欠点となっている成形品内部や表面に発生する“ス”や“ボイド”の成形不良を解消できるものである。
スチレン系成形材料の比較例1は、保存1日で130cmの流動長さであったものが、保存7日で流動性が0cmとなり全く流動しないばかりか硬く硬化していた。また、スチレン系成形材料の他の比較例7は、不飽和ポリエステル樹脂に「7360」(日本ユピカ社製)よりも反応性が低い「8524−S」(日本ユピカ社製の固形エステルをスチレンで溶解)を用いたため、比較例1よりは長い安定性を示したものの、保存1日の流動性が96cm、保存7日で33cm、保存30日で15cmとなり、極端に流動性が低下し成形金型への充填性が不十分となった。
一方、本発明の低収縮性不飽和ポリエステル樹脂成形材料組成物の1種の形態であるジアリルフタレート系成形材料の実施例1及び3は、反応性の高い不飽和ポリエステル樹脂「7365」(日本ユピカ社製)を用いたにも関わらず保存30日後においても流動性が20cm以上を示し、流動性の安定性が高いことが判った。
しかし、同様にジアリルフタレート系成形材料の実施例5は、低収縮化剤にスチレンと酢酸ビニルの共重合体「S501」(日油社製)を使用したものであるが、流動性が割合小さく、保存1日で58cm、保存7日で47cmであったものが、保存30日で0cmとなった。
なお、反応性の高い不飽和ポリエステル樹脂「7365」を用いたジアリルフタレート系成形材料でも比較例4及び5は、低収縮化剤が従来の低分子量ポリスチレン「S−90」(積水化成品工業社製)、ポリエチレン粉末「UF20S」(住友精化社製)を用いた成形材料であるが、30日後の流動性がそれぞれ9cm、0cmとなり、ゲル化または硬化に至っており、成形加工のできないものとなった。
中でも、反応性の低い不飽和ポリエステル樹脂「8524−D」を使用し、硬化剤にパーブチルZ(TBP)のみを使用した比較例8の硬化時間は195秒で反応速度が0.4℃/秒と非常に硬化が遅く、同様の系で硬化剤に分解温度の低い硬化剤パーヘキサTMH(TMH)を複合させた比較例6についても、硬化時間は161秒で反応速度が0.4℃/秒と硬化が遅いものであった。
一方、スチレン系成形材料においては、比較例1や反応性の低い不飽和ポリエステル樹脂「8524−D」を使用した比較例7に関しても、硬化時間がそれぞれ56秒、71秒と割合に短く、反応速度もそれぞれ1.9℃/秒、1.3℃/秒と比較的早く、これらの中では硬化が早いと言えるものであった。
本発明の低収縮性不飽和ポリエステル樹脂成形材料組成物の1種の形態であるジアリルフタレート系成形材料の実施例1及び3は、硬化時間がそれぞれ105秒、86秒と割合短く、反応速度もそれぞれ0.8℃/秒、1.0℃/秒と前記の2者の中間に位置した。
いずれにしても、これらの成形材料の最高発熱温度が低い理由として、大量の無機充填材の水酸化アルミニウムや無機質繊維のガラス繊維を含むため、不飽和ポリエステル樹脂と反応性単量体とが硬化剤によって架橋時に発生する発熱反応熱が、これらの無機質充填材や無機質繊維に吸熱されてしまうからであろうと推定できる。
成形品の外観の評価は、成形品表面の手触りの感触と目視により以下の通りに行った。
◎:非常に良好な光沢と表面平滑性があり、点灯した蛍光灯を写した時くっきりと写る。
〇:良好な光沢と表面平滑性があり、点灯した蛍光灯を写した時ややくっきりと写る。
△:光沢と表面平滑性が多少劣り、点灯した蛍光灯を写した時ぼやける。
×:ザラツキまたはウネリがあり、光沢も表面平滑性もなく、点灯した蛍光灯を写しても外観が判明しない。
表5に成形品の残存スチレン量、外観、収縮率、表面特性(光沢度、表面粗さ)の評価・測定結果を示す。
成形品の残存スチレン量は、当然のことではあるが、スチレン系成形材料の比較例1及び比較例7は、それぞれ206mg/kg、498mg/kgと非常に多くのスチレンを放散することがわかる。このためスチレンの臭気が発生し、VOC(揮発性有機化合物)として、また、特定悪臭物質として問題となる。
これに反し、ジアリルフタレート系成形材料の残存スチレン量は、本発明の低収縮性不飽和ポリエステル樹脂成形材料組成物である実施例1〜6及び比較例2〜6と8において、1.0mg/kg未満のトレース程度から4.0mg/kg以下と非常に少ないものであった。
VOC(揮発性有機化合物)の発生量の規制値は法的には、まだ定められていないが、各自治体、各団体や各社の自主規制値として、目標値をおよそ10〜15mg/kg(ppm)以下と定めており、本発明の低収縮性不飽和ポリエステル樹脂成形材料組成物は、この自主規制値にも適合するものであった。
これらのジアリルフタレート系成形材料において、微量の残存スチレン量が検出された理由は、低収縮化剤に用いたスチレン−アクリル酸ブチル共重合体やポリスチレンに残存スチレンが0.2〜0.7wt%程度含まれているためであり、スチレン-酢酸ビニル共重合体も同様と推測できる。
低収縮化剤に重平均分子量が56,000〜260,000のスチレン−アクリル酸ブチル共重合体「CS−40」などを用いた実施例1〜4及びスチレン-酢酸ビニル共重合体「モディパーS501」を用いた実施例5のジアリルフタレート系成形材料の外観は、非常に良好な光沢と表面平滑性があり、点灯した蛍光灯を写した時、くっきりとその外形が写った。
一方、低収縮化剤に重平均分子量が56,000のスチレン−アクリル酸ブチル共重合体を用いたスチレン系成形材料である比較例1の外観は、非常に悪く手の感触でザラザラしており、光沢も表面平滑性も全くなく、点灯した蛍光灯を写しても外形が全く判明しない状態であった。
また、やや反応性の低い固形不飽和ポリエステル樹脂をジアリルフタレートで溶解した「8524−D」を使用した比較例6も、同様の「8524−D」を使用し、硬化剤にパーブチルZ(TBP)のみを使用した比較例8のジアリルフタレート系成形材料も、低収縮化剤に重平均分子量340,000のポリスチレン「MS200」を使用したが、ジアリルフタレートへの溶解性が悪く、ままこ状態になったことが影響したため、外観は非常に悪く表面にウネリがあり、光沢も表面平滑性もなく、点灯した蛍光灯を写しても外形が判明しない状態であった。
なお、低収縮化剤にポリスチレンの重平均分子量が340,000の「MS200」を用いた比較例3、同57,000の「S−90」を用いた比較例4及びポリエチレン粉末「フローセンUF20S」を用いた比較例5は、いずれもその外観は実施例1〜5に比較し劣るものであった。
低収縮化剤に重平均分子量が56,000〜260,000のスチレン−アクリル酸ブチル共重合体を用いたジアリルフタレート系成形材料である実施例1〜4の収縮率は、0.17〜0.19%と小さく、これまでにジアリルフタレート系成形材料では、なし得なかった小さな収縮率を得ることができた。
また、スチレン−酢酸ビニル系ブロック共重合体の「モディパーS501」を用いた実施例5の収縮率は0.15%と非常に小さな値が得られたが、やや反応性の低い固形不飽和ポリエステル樹脂をジアリルフタレートで溶解した「8524−D」を使用した実施例6は、低収縮化剤に重平均分子量が110,000スチレン−アクリル酸ブチル共重合体を用いたにもかかわらず、収縮率は0.25%とやや大きくなった。これは外観において「8524−D」を使用したことに由来する表面にうねりが見受けられたためと考えられる。
同様に、スチレン系成形材料である比較例7は、従来から一般的に低収縮化剤として使用されている重平均分子量340,000のポリスチレン「MS200」を使用したが、やや反応性の低い固形不飽和ポリエステル樹脂をスチレンで溶解した「8524−S」を使用したため、収縮率は0.3%と大きいものであった。
なお、ジアリルフタレート系成形材料において、低収縮化剤にポリスチレンの重平均分子量が340,000の「MS200」を用いた比較例3、同57,000の「S−90」を用いた比較例4及びポリエチレン粉末「フローセンUF20S」を用いた比較例5は、いずれもその収縮率は、それぞれ0.22%、0.25%、0.30%と大きく、実施例1〜4に比較し劣るものであった。
ジアリルフタレート系成形材料において、低収縮化剤にスチレン−アクリル酸ブチル共重合体の重平均分子量が56,000〜260,000のものを用いた実施例1〜4の光沢度は69〜73であり、同様の低収縮化剤で重平均分子量が1,000,000の比較例2の光沢度が70、低収縮化剤にポリスチレンの重平均分子量が340,000の「MS200」を用いた比較例3、同57,000の「S−90」を用いた比較例4の光沢度が、それぞれ69及び72とほぼ同等の良好な光沢度を示した。
一方、外観が劣っていた比較例1、6及び8の光沢度は、それぞれ48、54及び50と低い値になっており、外観の評価と相関性が認められた。
なお、ジアリルフタレート系成形材料で、スチレン−酢酸ビニル系ブロック共重合体の「モディパーS501」を用いた実施例5が72と良好な光沢度であったが、ポリエチレン粉末「フローセンUF20S」を用いた比較例5が60、スチレン系成形材料で低収縮化剤に重平均分子量340,000のポリスチレン「MS200」を使用し、やや反応性の低い固形不飽和ポリエステル樹脂をスチレンで溶解した「8524−S」を使用した比較例7が64と多少劣っていた。
中心線平均粗さRaに関しては、スチレン系成形材料である比較例1の0.7μmという大きい値を除けば、他のほとんどが非常に小さい値の0.1〜0.2μmであり良好であった。比較例1は外観判定でザラツキがあり×となり、光沢もなかったことからRaが大きな値となったと考えられる。
一方、最大高さRmaxは、実施例1〜4が、5.9〜6.5μmと小さい値で良好であったが、比較例1、比較例3、比較例6,7,及び8のRmaxの値は、11.4μm〜22.4μmと大きい値を示した。比較例1のRmaxが大きくなったのはRa同様、外観判定でザラツキがあり×となり光沢もなかったことが影響しており、比較例3のRmaxが大きくなったのはポリスチレン「MS200」のジアリルフタレートへの溶解性が悪いことが影響していると思われる。
また、実施例6、比較例6,7,及び8のRmaxが大きくなった理由は、やや反応性の低い不飽和ポリエステル樹脂「8524−D」、「8524−S」を使用したため、成形収縮率が大きくなり成形品の表面にうねりを生じたためと考えられる。
なお、スチレンを重合性単量体に用いた比較例1と比較例7は、特に最大高さRmaxの値がそれぞれ19.9と22.4と非常に大きい値であった。
表6に成形品物性(物理的性質、熱的物性)の測定結果を示す。
物理的性質のうち、煮沸吸水率において、ジアリルフタレート系成形材料の実施例1及び3は、それぞれ0.28%と0.29%であり、その値が割合に小さく良好であった。
一方、スチレン系成形材料の煮沸吸水率は、比較例1及び7がそれぞれ0.22%と0.26%の小さい値を示したが、実施例との差異は少なかった。
しかし、ジアリルフタレート系成形材料で、スチレン−酢酸ビニル系ブロック共重合体の「モディパーS501」を用いた実施例5が0.79%、ポリエチレン粉末「フローセンUF20S」を用いた比較例5が0.89%と非常に大きく、次いで、大きい値を示したのは、やや反応性の低い固形不飽和ポリエステル樹脂をジアリルフタレートで溶解した「8524−D」を使用し、硬化剤にパーブチルZ(TBP)のみを使用した比較例8の0.54%であった。
他の比較例3,4及び6の煮沸吸水率は、それぞれ0.34%、0.31%及び0.27%とほぼ良好な値を示した。
一方、中〜低反応性不飽和ポリエステル樹脂の「8524−D」、「8524−S」を使用した実施例6及び比較例6〜8のロックウェル硬度の値は、61〜73と小さく重合性単量体との架橋密度が劣る結果となっている。
それによると、190℃−2時間処理における重量減少率は、実施例1及び3が0.50%及び0.46%と小さく良好であったが、比較例3,4、5及び6〜8は0.50%〜0.69%と少し大きな値を示した。
しかし、ジアリルフタレート系成形材料で、スチレン−酢酸ビニル系ブロック共重合体の「モディパーS501」を用いた実施例5が0.89%と重量減少率が大きく、前記の煮沸吸水率と同様に悪い結果であった。
一方、210℃−2時間処理における重量減少率は、190℃−2時間処理の値よりは大きい値を示したが、190℃−2時間処理の重量減少率と同様の傾向を示し、その値は実施例1及び3の1.38%及び1.35%に対し、比較例3,4,5は1.38%〜1.80%と少し大きく、ジアリルフタレート系成形材料で、スチレン−酢酸ビニル系ブロック共重合体の「モディパーS501」を用いた実施例5は2.03%と最大値を示した。
このように、熱変形温度は、不飽和ポリエステル樹脂の反応性の高さに影響されていることが判った。
表7に成形品物性(強度物性)の測定結果を示す。
強度物性は、使用したガラス繊維の種類、長さ、使用量、分散程度によって、その値の大小が決まる。
実施例1〜6及び比較例1〜8の全ての処方は、ガラス繊維の種類、長さ、使用量は同一で、ニ−ダー混練手順も混練時間も同一であるが、樹脂液の粘度により混練物の粘度が変わるため、ガラス繊維の分散程度が異なり、強度物性の値に差異が生じたものと考えられる。
表8に成形品物性(電気特性)の測定結果を示す。
電気特性の内、絶縁破壊の強さは、短時間法、段階法共に実施例1、3が、短時間法で16.9MV/m、16.6MV/m、段階法で13.7MV/m、13.5MV/mの高い良好な値を示した。
一方、実施例6及び比較例1、3〜8は、短時間法で11.4MV/m〜14.8MV/m、段階法で10.9MV/m〜12.3MV/mと低い値を示した。
しかし、煮沸吸水率や加熱重量減少率(加熱後外観)において、その数値が最大で悪い結果であったジアリルフタレート系成形材料で、スチレン−酢酸ビニル系ブロック共重合体の「モディパーS501」を用いた実施例5は、短時間法で16.5MV/m、段階法で13.2MV/mと実施例1及び3とほぼ同等の値を示した。
しかし、更に煮沸後の体積抵抗率が大きく低下した比較例5は、ジアリルフタレート系成形材料で、低収縮化剤にポリエチレン粉末の「フローセンUF20S」を用いたもので、その値は、<2.5E+7Ω−cm(<2.5×107Ω−cm)となり、絶縁物とは言えない超絶縁測定機の測定下限値以下であった。
とりわけ、重合性単量体にジアリルフタレートを用いたため、スチレンの放散や蒸散がなく、VOC(揮発性有機化合物)対策として、また、悪臭防止法対策として有効に作用する。
また、これらの技術は、スチレンの放散がない不飽和ポリエステル樹脂成形材料及びその成形品のみならず、スチレンの放散がない不飽和ポリエステル樹脂として幅広く応用ができるものである。
更に、引火点が確実に大幅に向上するため、生産工場の防爆設備を不要とし、大幅な経済性を実現できるものである。
Claims (7)
- 不飽和ポリエステル樹脂、重合性単量体、低収縮化剤及び硬化剤を含んでなる不飽和ポリエステル樹脂成形材料組成物において、重合性単量体がジアリルフタレートであり、低収縮化剤が重量平均分子量50,000〜500,000のスチレン系共重合体からなる低収縮性不飽和ポリエステル樹脂成形材料組成物であって、
スチレン系共重合体は、スチレン系モノマーとアクリル酸系モノマーとの共重合体又はスチレン系モノマーと酢酸ビニルモノマーとの共重合体からなる低収縮性不飽和ポリエステル樹脂成形材料組成物。 - 不飽和ポリエステル樹脂の多塩基酸のモル比が不飽和多塩基酸:飽和多塩基酸=100:0〜50:50の範囲からなる請求項1に記載の低収縮性不飽和ポリエステル樹脂成形材料組成物。
- 低収縮化剤がスチレン系モノマー50〜80重量%とアクリル酸系モノマー50〜20重量%との共重合体又はスチレン系モノマー50〜80重量%と酢酸ビニルモノマー50〜20重量%との共重合体からなる請求項1又は2に記載の低収縮性不飽和ポリエステル樹脂成形材料組成物。
- 低収縮化剤がスチレンとアクリル酸ブチルとの共重合体からなる請求項1〜3のいずれかに記載の低収縮性不飽和ポリエステル樹脂成形材料組成物。
- 硬化剤は、1分間の半減期温度が160℃以上の有機過酸化物の中から選ばれる少なくとも1種以上と、1分間の半減期温度が130℃以上〜160℃未満の有機過酸化物の中から選ばれる少なくとも1種以上とからなる、2種以上の有機過酸化物を含有してなる請求項1〜4のいずれかに記載の低収縮性不飽和ポリエステル樹脂成形材料組成物。
- (A)不飽和ポリエステル樹脂の固形エステル部分、(B)重合性単量体、(C)低収縮化剤からなる樹脂成分{(A)+(B)+(C)}100重量部に対して、硬化剤0.5〜5重量部、増粘剤0.05〜1重量部、離型剤1〜5重量部、重合禁止剤0.005〜0.1重量部、強化材20〜100重量部、充填材0〜300重量部及びその他添加剤0〜20重量部を含有してなる請求項1〜5のいずれかに記載の低収縮性不飽和ポリエステル樹脂成形材料組成物。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の低収縮性不飽和ポリエステル樹脂成形材料組成物を成形してなる成形品。
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