JP5262641B2 - タンデム揺動溶接方法 - Google Patents
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Description
しかし、従来技術1は、先行電極ワイヤ及び後行電極ワイヤの前後方向の極間距離が大きい2プールタンデム溶接方法が前提条件となっている。
しかし、従来技術2は、先行トーチ及び後行トーチを共に揺動させないストレートのトーチ運棒法となっているが、揺動させるものもある(例えば、特許文献3参照)。
この方法では、開先幅が広い場合(15〜25mm)の場合、溶接方向の揺動軌跡間隔である揺動ピッチが荒くなり、揺動端部で溶接欠陥が発生しやすいという問題がある。
また、揺動ピッチを小さくするために揺動速度を速くすると、アークの安定性が低下し、欠陥が発生しやすくなる。
さらに、2プールタンデム溶接であるため、図7に示すように溶込み底部が不連続になったり、ビード表面形状が不連続になるなどの問題がある。
また、1プールタンデム溶接で揺動を行う溶接法では、揺動幅は、基本的に1電極の場合と同じである。1電極溶接における揺動幅は、一般的に、揺動端でアークの一部が開先側壁に振れるように開先幅に応じて設定する。
従って、1プールタンデム溶接で同様の揺動を行った場合には、上記の溶鋼溜まりの挙動が揺動端で不安定になりやすく、アークの安定性が低下するという問題があった。
[アーク安定性の改善効果]
従来技術では、先行電極と後行電極の両方が同時に、左右の各開先端部に到達するため、溶鋼溜まりの挙動が不安定になりやすく、溶接の安定性に問題があった。
一方、本発明では、左右極間距離を設けているため、図8に示すような配置では、開先の左端部は先行電極だけが、右端部は後行電極だけが到達するため、溶鋼溜まりの挙動が不安定になりにくい。
[揺動幅を小さくできる効果]
従来技術では、先行電極・後行電極とも左右の開先端部まで揺動を行っている。従って、開先幅が増加すれば、揺動幅も基本的に同じだけ増加する必要がある。
揺動速度が一定の場合、開先幅が増加すると揺動ピッチが荒くなるため、欠陥が発生しやすいという問題があった。また、揺動ピッチを減少させるために、揺動速度を速くすると、アークが不安定になるという問題があり、開先幅が所定値以上になると、1層2パスの振り分け施工に切り替える必要があった。
一方、本発明では、少なくとも左右極間距離の分だけは揺動幅を小さくすることができる。従って、開先幅の増加量に対する揺動幅および揺動ピッチの増加率が減少する。そのため、1層1パス施工が可能な開先幅の上限値を大幅(2倍以上)に増加することができる。
すなわち、先行電極の揺動範囲と後行電極の揺動範囲とがラップしないようにすることにより、揺動ピッチをさらに小さくでき、揺動端部での溶接欠陥を抑制することができる。振り幅間隔はゼロやマイナスでも構わないが、正の値にした方が有効であることを確認した。
本発明のタンデム揺動溶接方法は、溶込みの大きいCO2100%のガスを使用するCO2ガスシールド溶接にて施工されることが多い。しかし、CO2ガスシールド溶接ではグロビュール移行となるためスパッタが多くなって好ましくない。そこで、少なくとも先行トーチの溶接ワイヤに、好ましくは、先行、後行の両電極ともに、希土類元素を添加したソリッドワイヤを正極性(溶接ワイヤをマイナス極)で使用すると、CO2ガスシールド溶接でもスプレー移行となり、スパッタが少なくなる。また、CO2シールドガスの解離熱のため、溶込みが大きくなる。ここで、希土類元素とは周期表の第3族に属する元素をいう。希土類元素としては特にCe、Laを添加したものが好ましい。
図1〜図3において、1は先行トーチ、2は後行トーチ、3は先行電極(L極)、4は後行電極(T極)、5は溶融池、6は溶着ビード、7は開先である。
また、Gは開先幅(または前層ビード幅)、Wは揺動幅、DSは先行トーチ1と後行トーチ2間の振り幅間隔、DFRは溶接方向(前後方向)の極間距離、DRLは開先幅方向(左右方向)の左右極間距離、DLは先行トーチ1の左側揺動端と開先7の一方の左側側壁との距離(接近幅)、DTは後行トーチ2の右側揺動端と開先7の他方の右側側壁との距離(接近幅)、Hbは溶着ビード高さ(厚さ)をあらわす。
(1)左右極間距離のパス別設定
従来技術では、左右方向の極間距離はゼロであるが、本発明では、開先幅または前層のビード幅に応じて設定する。
(2)トーチ運棒方法(ウィービング領域)
従来技術では、先行トーチおよび後行トーチが開先幅全域をウィービングする。そのため、揺動幅は、開先幅とほぼ同じである(揺動幅W=開先幅G−接近幅DL−接近幅DT)。接近幅は約1mmなので、揺動幅Wは(開先幅G−約2mm)となる。
本発明では、先行トーチ1と後行トーチ2で分担してウィービングを行う。従って、ウィービング幅および揺動ピッチを小さくできるという利点がある。その結果、溶接能率が向上し、かつ揺動端部での溶接欠陥が発生しないという効果がある。
ここで、本発明における揺動幅Wおよび左右極間距離DRLは、次式で表される。
W={G−(DL+DS+DT)}/2 ・・・(1)
DRL=W+DS ・・・(2)
開先Aは、裏当金付の片面レ型開先で、開先角度は35゜、ルートギャップRGが3〜8mm程度が一般的である。開先Bは、ギャップなしの片面レ型開先で、開先角度は45〜60°と開先Aよりも大きくすることが一般的である。後述する実施例は、開先Aの場合である。
図5において、前層ビード幅が16mm以下の場合は、振り幅間隔(DS)をY=0.375Xの関係で直線的に変化させ、前層ビード幅が16mm超の場合は、振り幅間隔(DS)をY=6mmと一定にする。
また、図6に示すように、前層ビード幅が16mm以下の場合は、揺動幅(W)をY=0.25Xの関係で直線的に変化させ、前層ビード幅が16mm超の場合は、揺動幅(W)をY=0.5X−4の関係で直線的に変化させる。
このように、前層ビード幅の変動に応じて、揺動幅および振り幅間隔を制御することにより、揺動ピッチを小さくでき、揺動端部での溶接欠陥を抑制することが可能となる。
従来技術の場合は、次のような問題がある。
(1)溶込み底部の不連続
2プールタンデム溶接の場合は、シングルトーチによる1層2パスと同じであるため、図7(a)のビード断面形状のように、溶込みラインが双子山状となり、1層1パスよりも欠陥が発生しやすいものとなる。
(2)ビード表面形状の不連続
僅かなトーチ位置(揺動範囲)の変動により、溶着ビード高さが左右で異なり、ビード表面形状が不均一になりやすい。
溶接速度は、記号G、Hから定まる溶着断面積とE、Fから定まるワイヤ送給速度から、一義的に定められる。
前層ビード幅は、初層は設定されたルートギャップRGであり、2層目以降の前層ビード幅はHの累積ビード高さから定まる。
振り幅間隔(DS)の定義は図3に示すとおりである。実験により求めた適正値とする。
接近幅(DL、DT)の定義は図3に示すとおりである。実施例では、1.0mm一定としているが、開先形状に応じてパスおよび先行/後行で調整する。
揺動速度は、実施例では25mm/sec一定としているが、同様に開先形状やパスに応じて調整する場合がある。
揺動幅(W)は、前層ビード幅、振り幅間隔、揺動接近幅により、一義的に定まる。
左右極間距離は、振り幅間隔および揺動幅により一義的に定まる(両者の合計)。
2 後行トーチ
3 先行電極
4 後行電極
5 溶融池
6 溶着ビード
7 開先
10 自動溶接装置
11 溶接台車
12 昇降軸
13 昇降体
14 揺動スライダ
15 左右極間調整軸
Claims (2)
- 消耗電極式アーク溶接による厚板の多層盛溶接において、
先行電極と後行電極による溶融池が1プールとなるように、電極間の溶接方向の前後極間距離及び開先幅方向の左右極間距離を保持し、
前記先行電極と前記後行電極を、同じ位相かつ同じ振幅で、開先幅方向に揺動させるとともに、開先幅または前層ビード幅に応じて、揺動幅と前記左右極間距離を制御し、
その際に、溶接の全層を通して、前記先行電極の揺動範囲と前記後行電極の揺動範囲とがラップしないように、前記揺動幅を制御して多層盛溶接を行うことを特徴とするタンデム揺動溶接方法。 - 少なくとも先行トーチの溶接ワイヤとして、希土類元素添加のソリッドワイヤを正極性で使用することを特徴とする請求項1記載のタンデム揺動溶接方法。
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