JP5262460B2 - 組成物の流動性の評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、組成物の流動性の評価方法に関する。
地震時に地盤から建物に伝播する揺れを低減する装置として免震装置が普及している。この免震装置10は、図1の側面図に示すように、下部構造体としてのコンクリート基礎3と上部構造体としての建物1との間に介装されて、当該建物1を水平方向に相対移動可能に支持するものであり、例えば、積層ゴム10等が使用される(特許文献1を参照)。
特開2005−248520号
このような免震装置10のコンクリート基礎3への設置工事は、例えば、次のような手順で行われる。先ず、コンクリート基礎3用の鉄筋を配置し、図2Aに示すように、その上方にベースプレート6を設置する。そして、コンクリートを打設することにより、図2Bに示すように、ベースプレート6の下方に間隔を隔ててコンクリート基礎3を構築する。次に、図2Cに示すように、ベースプレート6の下面とコンクリート基礎3の上面との間の隙間にグラウト材7を注入し、ベースプレート6をコンクリート基礎3に定着させる。最後に、ベースプレート6上に免震装置10を載置して、据え付けボルト8により免震装置10をベースプレート6に固定する。
なお、ここでベースプレート6を用いる理由は、免震装置10の下面をその略全面に亘ってベースプレート6の上面に面接触させて密着させることにより、上記据え付けボルト8だけでなく、前記密着による摩擦力によっても、免震装置10の水平力を基礎コンクリート3に伝達させるためである。
しかしながら、この設置工法では、前記隙間へのグラウト材7の注入作業のために、型枠の建て込み作業やエア抜きホースの敷設作業等が必要となって作業工数が増え、結果、工期の長期化及びコストアップを招く。
そこで、グラウト材7の注入作業を省略可能な設置工法として、例えば、次のような方法が考えられる。図3A乃至図7Eは、この設置工法の説明図である。図3A乃至図6Bには斜視図を示し、図7A乃至図7Eには縦断面図を示している。なお、図7A乃至図7Eでは、図の錯綜を防ぐべく一部の断面線及び一部の部材(例えば後述する袋ナット23やボルト穴11h,21h等)を省略して示している。
先ず、図3Aに示すように、コンクリート基礎3用の鉄筋4を配置し、その上方に所定厚みの環状プレート21を配置する。次に、コンクリートを打設することにより、図3B及び図7Aに示すように、コンクリート3の上面3sが環状プレート21の上面21sから1〜5mm程度低い位置に位置するように基礎コンクリート3を形成する。そうしたら、当該基礎コンクリート3の固化後に、図7B及び図7Cに示すように、基礎コンクリート3の上面3sにおける前記環状プレート21の内周縁21eよりも内方の位置に充填材31を山状に盛る。そして、図7Dに示すように、充填材31が未固化のうちに、免震装置10を前記環状プレート21上に載置する。
ここで、この載置過程では、図7Dに示すように、免震装置10の下面によって山状の充填材31を押し潰し、これにより、当該充填材31は基礎コンクリート3の上面3sの中央部から前後左右に放射状に途切れること無く連続して広がっていく。そして、最終的に、図7Eに示すように、免震装置10の下面と、基礎コンクリート3の上面3s及び環状プレート21の上面21sとの間に、充填材31がほぼ空隙無く行き渡って密実に充填され、これにより、免震装置10の下面は略全面に亘って密着される。その結果、当該密着に基づく摩擦力により、免震装置10の水平力を基礎コンクリート3へ伝達可能となる。
但し、上述から明らかなように、この設置工法の充填材31には、免震装置10の平坦な下面によって押し潰される際に、当該下面に沿って速やかに広がっていく性質が要求される。
しかしながら、一般に充填材31に供されるセメント系組成物等に関して、一対の平面で挟んで押し潰した際の流動性を評価する方法は無く、このため、上述の設置工法に適した充填材31をオフライン試験等で予め選定できず、不便を来す虞があった。
本発明は、かかる従来の課題に鑑みて成されたもので、一対の平面で組成物が挟圧される際の流動性の評価方法を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するために請求項1に示す組成物の流動性の評価方法は、
積層ゴムの下部フランジプレートの下面と、基礎コンクリートの上面及び環状プレートの上面との間に充填され、前記積層ゴムを設置する際に前記下部フランジプレートの下面によって山形状から押し潰される充填材の選定方法であって、
下記の(1)及び(2)の試験をクリアした充填材を選定することを特徴とする充填材の選定方法。
試験(1)
JIS R 5201(セメントの物理試験方法)に規定されたフローコーンの下端の口部を平面部材の上面に載置して塞いだ状態で、前記フローコーンの上端の口部から前記充填材を投入して充満させ、
該充満した状態で前記フローコーンを前記上面から上方に取り去ることにより、前記フローコーン内の前記充填材を前記下端の口部経由で前記上面に残存させ、
残存した前記充填材の前記上面における広がり領域が所定の大きさ以下であることを試験する。
試験(2)
前記試験(1)において前記上面に残存する前記充填材を、錘の載った他の平面部材の平坦面で押し潰して前記上面に前記充填材の広がり領域を形成し、
前記広がり領域が他の所定の大きさ以上であることを試験する。
請求項2に示す発明は、請求項1に記載の充填材の選定方法であって、前記他の平面部材は、前記充填材の広がり領域の大きさを透視可能な透明板であることを特徴とする。
上記請求項2に示す発明によれば、前記板材は透明板であるので、前記組成物上に載置した前記板材を外さずとも、板材越しに組成物の広がり領域を視認可能である。
請求項3に示す発明は、請求項1又は2に記載の充填材の選定方法であって、前記充填材は、セメント系充填材であることを特徴とする。
上記請求項3に示す発明によれば、一対の平面部材によってセメント系組成物を挟圧した際のセメント系組成物の流動性を評価可能となる。
また、以下で説明するような免震装置の設置工法の充填材としてセメント系組成物を用いる際に、好適なセメント系組成物を設置工事前に予め選定可能となる。つまり、免震装置の下面と基礎コンクリートの上面とによって押し潰される際に速やかに水平方向に広がるような流動性を有するセメント系組成物を、オフライン試験で選定可能となり、工期短縮を図れる。
本発明に係る組成物の評価方法によれば、一対の平面で組成物が挟圧される際の組成物の流動性の評価方法を提供することができる。
==本実施形態に係る流動性の評価方法により選定されたセメント系組成物の使用例==
本実施形態に係るセメント系組成物の流動性の評価方法の説明の前に、当該評価方法により選定されたセメント系組成物の使用例について説明する。このセメント系組成物は、免震装置10の設置工法において充填材31として使用される。
図1に示すように、免震装置10は、建物1と、地面Gに設けられた基礎コンクリート3(コンクリート体に相当)との間の上下方向隙間に介装されている。そして、建物1と基礎コンクリート3との水平方向の相対移動を許容しつつ建物1の重量を支持する。この免震装置10の具体例としては、積層ゴムや滑り支承等が挙げられるが、ここでは、積層ゴム10を例に説明する。
積層ゴム10は、円形鋼板と円形ゴム板とを上下に交互に積み重ねて接合一体化したものを本体10aとし、その上端面及び下端面には、それぞれ、建物1の下面及び基礎コンクリート3の上面への据え付け用として、円形の上部フランジプレート11及び下部フランジプレート11が固定されている。そして、この積層ゴム10は、次の6工程を経て基礎コンクリート3上に設置される。
(1)環状プレート21の設置工程(図3A)
(2)基礎コンクリート3の構築工程(図3B)
(3)基礎コンクリート3の上面3sへの充填材31の塗布工程(図4A及び図4B)
(4)充填材31の塗布領域への積層ゴム10の載置工程(図5)
(5)充填材31のはみ出し確認工程(図6A)
(6)据え付けボルト12の締め付け工程(図6B)
以下、各工程について詳しく説明する。
(1)環状プレート21の設置工程
先ず、図3Aに示すように、基礎コンクリート3用の鉄筋4を平面視略矩形状に配置し、鉄筋4の上方に環状プレート21を配置する。環状プレート21は、所定厚(例えば12mm厚)で外形形状が円形且つ内側に同芯の貫通孔21aが形成された鋼板である。そして、環状プレート21は、複数のレベル調整ボルト22によって下方から支持されており、レベル調整ボルト22の送りねじ機構により、環状プレート21の上面21sが水平になるように調整される。また、環状プレート21の上面21sには、周方向に沿って所定ピッチで積層ゴム10の据え付けボルト12用のボルト穴21hが貫通形成されているとともに、環状プレート21の下面には、前記ボルト穴21hに連通させて、最終的に積層ゴム10の据え付けボルト12が螺合すべき袋ナット23が固定されている。また、袋ナット23の下部には、基礎コンクリート3への定着用のアンカーボルト24が螺着されている。
なお、この例では、積層ゴム10の下部フランジプレート11(下部プレート部材に相当)の形状が円形のため、これに対応させて環状プレート21も円形にしているが、その形状は、積層ゴム10等の免震装置の下部をなす下部プレート部材の形状に応じて決定される。例えば、積層ゴム10の下部フランジプレート11が矩形形状や多角形形状の場合には、環状プレート21は矩形形状や多角形形状に形成される。
(2)基礎コンクリート3の構築工程
次に、鉄筋4の周囲側方を不図示の型枠で囲い、型枠の内側にコンクリートを打設して、図3Bに示すように基礎コンクリート3を構築する。このとき、図7Aに示すように、環状プレート21の内周縁21eより内側に位置するコンクリートの上面3sの高さが、環状プレート21の上面21sの高さよりも1〜5mmだけ低くなるように、コンクリートの上面3sを鏝等によって水平に均す。これにより、環状プレート21の下部は基礎コンクリート3に埋まった状態で、環状プレート21の上部のみが1〜5mmの範囲で基礎コンクリート3の上面3sから突出した状態になる。そして、基礎コンクリート3が固化するまで待機する。
なお、ここで用いるコンクリートとしては、高流動性コンクリートのような特殊なコンクリートである必要はなく、いわゆる普通コンクリート(つまり普通ポルトランドセメント及び粗骨材等からなるコンクリート)で構わない。
(3)基礎コンクリート3の上面3sへの充填材31の塗布工程
そうしたら、この後でなされる積層ゴム10の据え付けの事前準備として、図4Aに示すように、環状プレート21のボルト穴21hに呼び込みピン25を螺着しておく。また、この工程で塗布すべき充填材31の密着性を高め、ドライアウトを防止する目的で、図3Bに示す基礎コンクリート3の上面3sには散水養生を行い湿潤状態にしておく。
そうしたら、練り混ぜた充填材31を、図4A及び図7Bに示すように、基礎コンクリート3の上面3sにおける環状プレート21の内周縁21eよりも内側の領域に塗布し、充填材31の上面31sを定規や鏝等を用いて水平に均す。そして、その固化前に、図4B及び図7Cに示すように、当該充填材31の上面31sの平面中心部に更に同種の充填材31を山状に盛る。
この充填材31は、無収縮セメントであり、より詳しくは、チクソ性を有するとともに、挟圧下において高い流動性を示す無収縮セメントである。ここで、チクソ性(thixotropy:揺変性又はシキソトロピーとも言う)とは、静置状態では流動性をもたないが、かきまぜたり震盪(しんとう)させたりすると流動性をもつようになる性質のことである。よって、当該チクソ性に基づいて、上述の山状に盛られた充填材31の周囲への広がりは抑えられ、その盛り上がり形状は概ね維持される。なお、この設置工法に好適な充填材31の選定については、後述する。
ところで、望ましくは、図7Bに示すように、上述の水平に均した充填材31の上面31sの高さを、前記環状プレート21の内周縁21eで区画された内側の領域の全域に亘って、環状プレート21の上面21sの高さ以上にしておくと良い。そして、このようにしていれば、後述するように、積層ゴム10の下部フランジプレート11の下面によって充填材31を押し潰す際に(図7D)、当該充填材31をより空隙無く密実に充填できて、その結果、下部フランジプレート11の下面の密着度合いを高めることができる。
(4)充填材31の塗布領域への積層ゴム10の載置工程
次に、積層ゴム10の下部フランジプレート11の下面に剥離剤を塗布したら、図5に示すように、当該下部フランジプレート11のボルト穴11hを環状プレート21の呼び込みピン25に位置合わせしつつ積層ゴム10を下方に下ろすことにより、図6Aに示すように、前記ボルト穴11hに前記呼び込みピン25を通しながら積層ゴム10を環状プレート21上に載置する。
ここで、この載置の過程では、図7C及び図7Dに示すように、積層ゴム10の下部フランジプレート11の下面によって山状の充填材31が押し潰されるが、この時、既に固化した基礎コンクリート3の上面3sは、環状プレート21の上面21sの高さよりも低い位置に位置している。よって、固化した基礎コンクリート3の上面3sが、下部フランジプレート11に対して何等干渉することは無く、下部フランジプレート11の下面は、専ら充填材31のみを速やかに押し潰すことができる。
また、この充填材31は、上述したように、チクソ性と挟圧下における高い流動性とを有している。よって、押し潰される前までは低い流動性に基づき図7Cのように山形状を維持するが、図7Dに示すように押し潰され始めると高い流動性を発現して、積層ゴム10程度の重量によっても容易且つ速やかに基礎コンクリート3の上面3sの中央部から前後左右に放射状に途切れること無く連続して広がっていく。そして、最終的に、図7Eに示すように、積層ゴム10の下部フランジプレート11の下面と、基礎コンクリート3の上面3s及び環状プレート21の上面21sとの間に、ほぼ空隙無く行き渡って密実に充填され、これにより、積層ゴム10の下部フランジプレート11の下面は略全面に亘って密着される。つまり、積層ゴム10の下部フランジプレート11の下面の密着度合いを高めることができる。
なお、挟圧下での充填材31の流動性は、練り混ぜ終了時を起点とする所定時間の経過後には小さくなり、当該所定時間は、後述する充填材31の好適例(マスターフロー80又はシーカグラウトHP)の場合には、30分程度である。よって、充填材31の練り混ぜ終了から上述の積層ゴム10の載置までの作業については、30分以内に行うのが好ましい。
(5)充填材31のはみ出し確認工程
そうしたら、基礎コンクリート3の上面3s及び環状プレート21の上面21sと、下部フランジプレート11の下面とが重なる範囲の全域に亘って、充填材31が、密実に充填されているかを確認する。この確認は、図6A及び図7Eに示すように、環状プレート21の全周に亘って環状プレート21の外周縁21f又は下部フランジプレート11の外周縁11fよりも外方に充填材31がはみ出しているか否かを目視判定することにより行われる。なお、ここで、「環状プレート21の外周縁21f又は下部フランジプレート11の外周縁11f」としているのは、図示例では環状プレート21と下部フランジプレート11とを同径で示しているところ、同径ではない場合があり、その場合には、これらのうちの小径な方の外周縁11f(又は21f)からはみ出していれば良いからである。
そして、全周において一部でもはみ出していない部分が存在した場合には、積層ゴム10の下面(つまり、下部フランジプレート11の下面)の密着度合いが低いと判断して、再度、上記の(3)の工程たる「基礎コンクリート3の上面3sへの充填材31の塗布工程」からやり直すべく、積層ゴム10を吊り上げて基礎コンクリート3から取り外すとともに、基礎コンクリート3上の充填材31を除去する。一方、全周に亘ってはみ出していた場合には、積層ゴム10の下面の密着度合いが高いと判断して、次工程の「据え付けボルト12の締め付け工程」に移行する。
(6)据え付けボルト12の締め付け工程
最後に、環状プレート21のボルト穴21h及び下部フランジプレート11のボルト穴11hから呼び込みピン25を取り外し、その代わりに、図6Bに示すように、これらボルト穴21h,11hに据え付けボルト12を通して環状プレート11の下面の袋ナット23に螺合させて締め付け、はみ出した充填材31を拭き取り清掃する。そして、これにより、基礎コンクリート3への積層ゴム10の設置が終了する。
==本実施形態に係るセメント系組成物の流動性の評価方法==
上述の免震装置10の設置工法に好適な充填材31は、上述したように、チクソ性及び挟圧下での高い流動性を有するセメント系組成物である。そして、数あるセメント系組成物の候補材の中で、同工法に適用可能か否かの適否判定は、以下の流動性の評価方法によってなされる。この評価方法は、非加圧時の流動性試験と、挟圧時の流動性試験とを有している。そして、これら両試験をパスしたセメント系組成物が、上記工法の充填材31として使用される。
<<<非加圧時の流動性試験>>>
この非加圧時の流動性試験は、JIS R 5201のセメントの物理試験方法を利用している。すなわち、先ず、試験環境として室温を20℃にし、また、練り上がり温度が18〜25℃になるように試験対象の充填材31を練り混ぜる。
次に、図8Aに示すように、JIS R 5201に規定されたフローコーン41(上端の口部の内径70mm、下端の口部の内径100mm、高さ60mmのテーパー筒体)の下端の口部を、水平且つ平坦なテーブル上面51に載置して塞いだ状態で、フローコーン41の上端の口部から、上記の練り混ぜた充填材31を2層に詰める。各層は、図7Bに示すように、突き棒の先端がその層の約1/2の深さまで入るよう、全面にわたって各々15回突き、最後に不足部分を補い表面をならす。
次に、図7Cに示すように、直ちにフローコーン41をテーブル上面51から正しく上の方に取り去ることにより、前記フローコーン41内の前記充填材31を前記下端の口部経由でテーブル上面51に残存させる。
そして、テーブル上面51に残存する充填材31の水平方向の広がりが停止して広がり領域の大きさが安定したら、当該広がり領域の大きさに基づいて、充填材31の非加圧時の流動性を評価する。例えば、テーブル上面51における前記広がり領域の最大径と、この最大径となる方向と直交する方向の直径との相加平均値を求め、当該相加平均値を、試験対象の充填材31の非加圧時の流動性の評価値とする。
なお、上述の免震装置10の設置工法に適用可能な充填材31としては、その評価値が28cm以下であることが必要である。つまり、28cmの評価値に相当する流動性よりも、非加圧時の流動性が低いことが必要である。この理由は、静置状態で充填材31が崩れて広がり易いと、充填材31を山状に盛ることが難しくなり、その結果、積層ゴム10の載置の際に、中央から放射状に拡充せずに空気を巻き込み、隅々まで空隙なく充填できなくなるからである。
よって、得られた評価値を、上記28cmという閾値と比較し、当該閾値以下の場合に、非加圧時の流動性試験をクリアしたと判断される。
<<<挟圧時の流動性試験>>>
挟圧時の流動性試験は、上述の非加圧時の流動性試験の直後に連続して行われる。すなわち、上述の非加圧時の流動性試験に供してテーブル上面51に残存した充填材31を対象に、以下の手順で行われる。
先ず、図9A及び図9Bに示すように、テーブル上面51に残存する充填材31上に、50kgの錘63の乗った透明な板材61を載置する。この時、充填材31、板材61、及び錘63の三者の平面中心が互いに一致するようにする。板材61は、例えば、両面に平坦面を有した透明アクリル板であり、その平面サイズは500×500mm〜600×600mmで、厚みは10mmである。
そして、上記錘63による載荷後には、図9Bに示すように、充填材31が徐々に水平方向に広がるが、この広がりが停止して広がり領域の大きさが安定したら、図9Cに示すように、錘63のみを除去して、メジャー等により広がり領域の大きさを測定する。この時、透明な板材61を用いているので、板材61越しに上方から充填材31の広がり領域を視認することができる。
なお、広がり領域の大きさの測定は、上述の非加圧時の場合と同じである。すなわち、テーブル上面51における前記広がり領域の最大径と、この最大径となる方向と直交する方向の直径との相加平均値を求め、当該相加平均値を、試験対象の充填材31の挟圧時の流動性の評価値とする。
そして、上述の免震装置10の設置工法に適用可能な充填材31としては、その評価値が50cm以上であることが必要である。すなわち、得られた評価値を、前記50cmという閾値と比較し、当該閾値以上の場合に、挟圧時の流動性試験をクリアしたと判断される。
また、充填材31の性状保持性能を確認するために、練り上がり30分後にも充填材31を30秒間再攪拌した後、上述した非加圧時の流動性試験と挟圧時の流動性試験の両方を実施して適否を判定する。
<<<非加圧時及び挟圧時の流動性試験を満足する充填材31の具体例>>>
非加圧時の評価値が28cm以下で、挟圧時の評価値が50cm以上となる充填材31(無収縮セメント)の具体例としては、以下の2つが挙げられる。
(1)マスターフロー80(商品名:BASFポゾリス株式会社製)という結合材に対して、28〜30%の水結合材比(=水の重量/結合材の重量)で水を加えた後、10〜35℃の練り混ぜ温度の範囲で練り混ぜて生成される充填材。
(2)シーカグラウトHP(商品名:日本シーカ株式会社製)という結合材に対して、32%の水結合材比(=水の重量/結合材の重量)で水を加えた後、練り混ぜて生成される充填材。
==その他の実施の形態==
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で以下に示すような変形が可能である。
上述の実施形態では、組成物を挟んで押し潰す一対の平面部材として、テーブル上面51及び板材61を例示したが、組成物を挟んで押し潰し可能であれば、何等これに限るものではなく、組成物を押し潰すための平坦面を有した一対の板材であっても良い。
上述の実施形態では、充填材31に係るセメント系組成物の一例として無収縮セメントを例示したが、流動性を有し、後に固化するものであれば、何等これに限るものではなく、無収縮モルタル等や樹脂系充填材等でも良いし、または、単なるセメント(普通セメント)や単なるモルタルでも良いし、更には、これらセメントやモルタルに適宜な添加剤を加えた物でも良い。なお、ここで言うセメント系組成物とは、固化後にセメントが主成分(重量パーセントが最大のもの)となる物のことである。
上述の実施形態では、錘63の重さを50kgとしたが、組成物の用途に応じて、錘63の重さを変えて試験しても良いのは言うまでもない。
上述の実施形態では、非加圧時及び挟圧時の流動性試験の閾値として、それぞれ28cm及び50cmを例示したが、何等これに限るものではなく、セメント系組成物の用途に応じて、これらの値を適宜変更しても良い。
上述の実施形態では、免震装置10として積層ゴムを例示したが、何等これに限るものではなく、例えば、上下一対の滑り板を有する滑り支承や、上下一対の滑り板の間に鋼球を挟んでなる転がり支承を用いても良い。なお、この場合、免震装置の下部をなす下部プレート部材に相当する部材は、免震装置を構成する部材の中で基礎コンクリート3に最も近い部材たる下側の滑り板になるが、仮に、この下側の滑り板の下方に隣接して補強板が配置されるとともに、当該補強板が基礎コンクリート3に最も近い場合には、この補強板が、上述の下部プレート部材に相当することになる。
上述の実施形態では、免震装置10を建物1と基礎コンクリート3との間に介装したが、何等これに限るものではない。例えば、建物1が多層階からなる場合には、上部構造体としての上層階の床スラブと、下部構造体としての下層階の天井スラブとの間に免震装置10を介装しても良い。
上述の実施形態では、積層ゴム10の下部フランジプレート11の下面に剥離剤を塗布していたが、この剥離剤の塗布目的は、積層ゴム10の経年劣化等による将来の積層ゴム10の交換時に基礎コンクリート3から取り外し易くするためである。よって、積層ゴム10の取り外し易さを考慮しない、あるいは交換を想定しない場合には、剥離剤を塗布しなくても良い。
上述の実施形態では、(5)の工程たる「充填材31のはみ出し確認工程」において、全周において一部でもはみ出していない部分が存在した場合には、再度、上記の(3)の工程たる「基礎コンクリート3の上面3sへの充填材31の塗布工程」からやり直す、としたが、これに限るものではない。充填材31のはみ出していない部分が存在した場合でも、充填が不要な箇所であると判断された場合はやりなおす必要はない。
建物1に適用された免震装置10の概念図である。 図2A乃至図2Dは、従来の免震装置10の設置工法の説明図である。 図3A及び図3Bは、参考例の免震装置10の設置工法の説明図である。 図4A及び図4Bは、同設置工法の説明図である。 同設置工法の説明図である。 図6A及び図6Bは、同設置工法の説明図である。 図7A乃至図7Eは、同設置工法の説明図である。 図8A乃至図8Cは、本実施形態に係る非加圧時の流動性試験の説明図である。 図9A乃至図9Cは、本実施形態に係る挟圧時の流動性試験の説明図である。
符号の説明
1 建物、3 基礎コンクリート、3s 上面、4 鉄筋、6 ベースプレート、
7 グラウト材、8 据え付けボルト、10 積層ゴム、10a 本体、
11 フランジプレート、11f 外周縁、11h ボルト穴、
12 据え付けボルト、21 環状プレート、21a 貫通孔、
21e 内周縁、21f 外周縁、21h ボルト穴、21s 上面、
22 レベル調整ボルト、23 袋ナット、24 アンカーボルト、
25 呼び込みピン、31 充填材(組成物、セメント系組成物)、31s 上面、
41 フローコーン、51 テーブル上面(平面部材、上面)、
61 板材(平面部材)、63 錘、G 地面

Claims (3)

  1. 積層ゴムの下部フランジプレートの下面と、基礎コンクリートの上面及び環状プレートの上面との間に充填され、前記積層ゴムを設置する際に前記下部フランジプレートの下面によって山形状から押し潰される充填材の選定方法であって、
    下記の(1)及び(2)の試験をクリアした充填材を選定することを特徴とする充填材の選定方法。
    試験(1)
    JIS R 5201(セメントの物理試験方法)に規定されたフローコーンの下端の口部を平面部材の上面に載置して塞いだ状態で、前記フローコーンの上端の口部から前記充填材を投入して充満させ、
    該充満した状態で前記フローコーンを前記上面から上方に取り去ることにより、前記フローコーン内の前記充填材を前記下端の口部経由で前記上面に残存させ、
    残存した前記充填材の前記上面における広がり領域が所定の大きさ以下であることを試験する。
    試験(2)
    前記試験(1)において前記上面に残存する前記充填材を、錘の載った他の平面部材の平坦面で押し潰して前記上面に前記充填材の広がり領域を形成し、
    前記広がり領域が他の所定の大きさ以上であることを試験する。
  2. 請求項1に記載の充填材の選定方法であって、
    前記他の平面部材は、前記充填材の広がり領域の大きさを透視可能な透明板であることを特徴とする充填材の選定方法
  3. 請求項1又は2に記載の充填材の選定方法であって、
    前記充填材は、セメント系充填材であることを特徴とする充填材の選定方法
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