以下、本発明の好適な実施の形態について図を参照しつつ説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明に係る第1の実施形態であるインクジェットプリンタ1(記録装置)の全体的な構成を示す正面図である。本実施形態のインクジェットプリンタ1は、外部機器等から受信した画像データに応じた画像を印刷用紙Pに形成する印刷動作を実行する。インクジェットプリンタ1は、インクを吐出するインクジェットヘッド2(記録ヘッド)と、インクジェットヘッド2の下方へと印刷用紙Pを搬送する用紙搬送部3とを有している。そして、用紙搬送部3が搬送した印刷用紙Pに向かってインクジェットヘッド2からインクを吐出させることにより、印刷用紙P上に画像を形成する。また、インクジェットプリンタ1は、インクジェットヘッド2にインクの吐出特性を維持及び回復するためのメンテナンス処理を施すメンテナンス動作を実行するメンテナンスユニット6を有している。
インクジェットプリンタ1は、制御部5を有している。制御部5は、インクジェットプリンタ1の各部の動作を制御する。図2は、制御部5の構成を示すブロック図である。制御部5は、プロセッサ回路や記憶回路(ROM、RAM等)などのハードウェアと、そのハードウェアを印刷制御部51などの各機能部として機能させるプログラムデータなどのソフトウェアとから構築されている。制御部5は、印刷動作を制御する印刷制御部51と、インクジェットヘッド2のメンテナンス動作を制御するメンテナンス制御部52とを有している。印刷制御部51は、インクジェットヘッド2と用紙搬送部3とに後述の印刷動作を実行させる。メンテナンス制御部52は、メンテナンスユニット6に後述のメンテナンス動作を実行させる。
次に、インクジェットプリンタ1の各部についてより詳細に説明する。まず、用紙搬送部3について説明する。図1に示すように、用紙搬送部3は、ニップローラ31、搬送ローラ32、33、及び、搬送ベルト34を有している。ニップローラ31は、搬送ローラ32の上方(副走査方向に関して上流側)において回転自在に支持されている。なお、本明細書において、副走査方向とは印刷用紙の搬送方向と同じ方向(図1中、右方)であり、主走査方向とは副走査方向に直交する方向であって水平面に沿った方向(図3中、左方)である。ニップローラ31は、図示しない付勢手段によって搬送ベルト34の上面へと下方に付勢されている。なお、付勢の方向は、ニップローラ31の回転軸から搬送ローラ32の回転軸に向かう方向である。
搬送ローラ32及び33は、互いに水平に離隔した位置に設置されている。搬送ベルト34は、搬送ローラ32及び33の周囲に巻き掛けられた無端のベルトである。搬送ベルト34は、搬送ローラ32と搬送ローラ33との間を水平に延びている。そして、搬送ローラ32から搬送ローラ33まで延びた2つの部分のうち、上方に位置する部分の上面に印刷用紙Pが載置されるようになっている。搬送ベルト34において用紙Pが載置される表面には、弱粘着性のシリコン樹脂層が形成されている。これによって、用紙Pが表面に粘着されやすくなっている。
搬送ローラ32の回転軸には、図示しない駆動モータの動力が伝達される。一方、搬送ローラ33は従動ローラであって、その回転軸は図示しない軸部材によって回転自在に支持されている。搬送ローラ32が回転すると、搬送ローラ32及び33の周囲に巻きかけられた搬送ベルト34が図1のA方向に走行する。
印刷用紙Pは図示しない給紙部から用紙搬送部3へと送られてくる。送られてきた印刷用紙Pの一端がニップローラ31に達すると、印刷用紙Pは、ニップローラ31と搬送ベルト34とに挟まれる。搬送ベルト34が走行すると、印刷用紙Pは、ニップローラ31と搬送ベルト34との間に挟まれつつ移動する。これによって、印刷用紙Pは搬送ベルト34の上面に密着されつつ載置される。印刷用紙Pは、ニップローラ31を通過すると、搬送ベルト34の上面に粘着されつつ搬送ベルト34と共に搬送される。
次に、インクジェットヘッド2について説明する。図1、図2に示すように、インクジェットプリンタ1は、搬送ベルト34の上方に設置された4つのインクジェットヘッド2を有している。インクジェットヘッド2は、主走査方向に長尺な矩形の概略形状を有している。4つのインクジェットヘッド2はヘッド支持部4に支持されており、副走査方向に関して所定の間隔で配列されている。
インクジェットヘッド2の下面の吐出面2aは水平に沿っており、インクを吐出するノズルの開口(吐出口)が形成されている。4つのインクジェットヘッド2は、いずれも吐出面2aが同じ高さになるように配置されている。インクジェットヘッド2の内部には、各ノズルに連通したインク流路が形成されている。本実施形態では、吐出面において、複数のノズル開口が主走査方向に関して印刷の解像度に対応した間隔で、マトリクス状に2次元配列されている。
4つのインクジェットヘッド2は、4色のインクに対応している。各インクジェットヘッド2には、図示しないインクタンクから互いに色の異なるインクが供給される。インクジェットヘッド2に供給されたインクは、インクジェットヘッド2の内部に形成された各インク流路へと分配され、対応するノズルの開口からそれぞれ吐出されることになる。
また、インクジェットプリンタ1には図示しないヘッド移動機構が設けられている。このヘッド移動機構は、図1の左右方向(副走査方向に沿った方向)に関してヘッド支持部4を移動させる。これによって、ヘッド支持部4及び4つのインクジェットヘッド2は、用紙搬送部3の上方に位置した状態(図1の実線で示された状態)と、メンテナンスユニット6の上方に位置した状態(図1の二点鎖線で示された状態)を取ることができる。
以下、インクジェットプリンタ1において用紙P上に画像を形成する印刷動作について説明する。印刷制御部51は、以下の動作を行うようにインクジェットヘッド2及び用紙搬送部3を制御する。まず、ヘッド支持部4及びインクジェットヘッド2は、図1の実線で示された状態を取る。つまり、この位置が印刷位置となる。このとき、吐出面は、用紙Pが載置される搬送ベルト34の載置面と所定の間隙を介して対向する。本実施形態では、間隙の幅は0.5mmである。次に、用紙搬送部3は駆動モータを駆動して、用紙Pをインクジェットヘッド2と対向する対向位置へと搬送する。そして、用紙搬送部3が用紙Pを搬送するのに同期して、各インクジェットヘッド2が用紙P上に所望の画像が形成されるようにインクを吐出する。インクジェットヘッド2から吐出されたインクは用紙P上の所定の位置に着弾し、用紙上にドットを形成する。これによって、用紙P上に所望の画像が形成される。
次に、メンテナンスユニット6について図1及び図3を参照しつつ説明する。図3は、インクジェットヘッド2が図1の二点鎖線で示された状態にあるときのメンテナンスユニット6の右側面図である。メンテナンスユニット6は、メンテナンス動作によって吐出面2aを清浄に保ち、開口からのインクの吐出特性を回復、維持する。
図1及び図3に示すように、メンテナンスユニット6は、ワイパユニット100、ワイパユニット100を駆動するワイパユニット駆動機構130(並進駆動手段)及びワイパユニット100の移動方向をガイドするガイド板141及び142を有している。なお、図3においては、図を見やすくするため、ガイド板142の図示を省略すると共に、ワイパユニット100内の構成を実線で示している。
まず、ワイパユニット駆動機構130について説明する。ワイパユニット駆動機構130は、搬送ローラ131及び132と、搬送ベルト133と、固定部材134とを有している。
このうち、2つの搬送ローラ131、132は副走査方向と平行に延びて配置されている。搬送ベルト133は搬送ローラ131及び132に巻き掛けられた無端状のベルトである。固定部材134の下端は搬送ベルト133に固定されており、上端はワイパユニット100の下部に嵌合されている。搬送ローラ131の軸心131aには、図示しない駆動モータの駆動軸が連結されている。これによって、搬送ローラ131は、駆動モータから駆動力を伝達されて回転駆動されるように構成されている。一方、搬送ローラ132は従動ローラであり、搬送ローラ132の軸心131aは回転自在に支持されている。駆動モータは、搬送ローラ131を順方向及びその逆方向のいずれの方向にも回転駆動できる。したがって、搬送ローラ131及び132に巻き掛けられた搬送ベルト133は、図3のB方向及びC方向のいずれの方向にも走行することができる。
次に、ガイド板141及び142について説明する。ガイド板141及び142は、図1に示すように、副走査方向に関してワイパユニット100を互いの間に挟む位置に設置されている。なお、ガイド板142は、図1においてガイド板141に対して左右対称な形状を有するように同様に構成されているため、以下においては主にガイド板141の構成について説明する。
ガイド板141は、図3に示すように、主走査方向に長尺な矩形の形状を有する平板部材である。ガイド板141には、ガイド溝143が形成されている。ガイド溝143は、ガイド板141の一端近傍から他端近傍まで延びている。ガイド溝143は、互いに高さが異なる直線状の領域143b及び143cを有している。領域143b及び143cは主走査方向に沿っている。領域143b及び143cの間には段差部143aが配置されている。段差部143aは、領域143bから斜め上方に向かって領域143cと接続している。
次に、ワイパユニット100について説明する。ワイパユニット100は、インクジェットヘッド2の吐出面2aを払拭する。吐出面2aは、インクを吐出するノズルが開口した領域2bを含んでいる。ノズルから吐出されたインクが領域2bに残留すると、インクの吐出特性に影響を与えたり、下方へと滴下したインクが用紙Pを汚染したりするおそれがある。このため、ワイパユニット100は、吐出面2aを払拭してインクを除去する。
ワイパユニット100は、上方に開口した直方体の箱型形状を有するフレーム101を有している。フレーム101の副走査方向に関する両側面には、それぞれガイド突起102及び103が固定されている。ガイド突起102は、図3においてフレーム101の左端近傍に配置されており、ガイド突起103はフレーム101の右端近傍に配置されている。ガイド突起102及び103は互いに同じ高さに配置されている。
図3にはフレーム101のガイド板141側の側面に固定されたガイド突起102及び103が破線で示されている。また、図示されていないが、フレーム101のガイド板142側の側面にも、ガイド板142側と対応する位置にガイド突起102及び103が固定されている。つまり、一方の側面のガイド突起102及び103は、ガイド板141に形成されたガイド溝143に嵌め込まれており、他方の側面のガイド突起102及び103は、ガイド板142側のガイド溝に嵌め込まれている。ガイド突起102及び103がガイド溝143に沿って移動することにより、ワイパユニット100全体の主走査方向に沿った往復移動及びこれと直交する鉛直方向に関する上下移動が可能となっている。
フレーム101の下部(下面)には固定部材134が嵌合可能な孔が形成されている。固定部材134が搬送ベルト133に連動して主走査方向に平行に移動すると、フレーム101はこれに従動して主走査方向に平行に移動する。また、固定部材134の上部は、段差部143aの前後でフレーム101が上下方向に自由にスライド移動できる。これによって、ガイド溝143に沿ってワイパユニット100が段差部143aを通過する際に、ワイパユニット100は段差部143aを円滑に通過することができる。なお、ワイパユニット100は、段差部143aを通過する際に、水平方向に対して斜めに傾くような姿勢を取るが、これに対応して、フレーム101の底面に形成された孔は、ワイパユニット100が斜めに傾くのを妨げないような形状とサイズを有している。
以上の構成により、ワイパユニット駆動機構130において搬送ベルト133が走行すると、搬送ベルト133に固定された固定部材134が移動する。そして、固定部材134が移動すると、これに従動してフレーム101が移動する。このとき、ワイパユニット100は、ガイド溝143に沿って以下のように移動することができる。まず、ガイド溝143の領域143cにおいては、ワイパユニット100は、インクジェットヘッド2の下方の位置を主走査方向に沿って水平に移動する。そして、段差部143aに差し掛かると、斜めに傾きつつ下方へと移動しながら、領域143bへと向かう。さらに領域143bにおいては、再び主走査方向に沿いつつ水平に移動する。
フレーム101内には、複数のワイパブレードが固定された回転体113が配置されている。回転体113は、副走査方向に軸方向が沿った円筒形の概略形状を有している。回転体113の回転軸113aは、その両端がフレーム101の内表面に、図3中のD方向に回転可能に支持されている。
回転体113の外周面には複数のワイパブレードが固定されている。これらのワイパブレードは、図4に示すように、1枚の主ブレード111(第1のワイパブレード)と5枚の副ブレード112(第2のワイパブレード)とからなる。いずれのブレードも平板形状を有しており、回転体113の外周面から回転体113の径方向(回転体113の外周面の法線方向)に延びるように配置されている。また、いずれのブレードも回転体113の軸方向に長く、副走査方向にインクジェットヘッド2を跨ぐ大きさの長方形の概略形状を有している(図1参照)。
本実施形態において、副ブレード112は、回転体113の周方向に関して半周分の範囲(図3において回転体113の下半分の範囲)に等間隔に配列されている。主ブレード111は、図4に示すように、回転体113の周方向に関して、副ブレード112が配列された範囲とは別の半周分の範囲(図3において回転体113の上半分の範囲)の中心付近に配置されている。また、本実施形態においては、主ブレード111及び副ブレード112は、共に同じ材質の弾性材料から構成されており同じ厚みを有しており、副走査方向に関して同じ長さを有している。
なお、副ブレード112が複数設けられていなくてもよいし、5枚以上の枚数であってもよい。また、副ブレード112同士が等間隔に配置されていなくてもよいし、主ブレード111と副ブレード112との間隔が本実施形態より狭くてもよい。
副ブレード112は、回転体113の径方向に関していずれも同じ長さを有し、主ブレード111は、回転体113の径方向に関して副ブレード112より長く構成されている。図3のように主ブレード111が回転体113の外周面から鉛直上方に向かって延びた状態にあるときには、主ブレード111において回転体113から離隔した方の先端面が最も上方に配置される。このときの主ブレード111の先端面は、図4(a)に示すようにインクジェットヘッド2の吐出面2aより高い位置に配置されている。また、図4(b)は、回転体113が図3の位置から回転して、副ブレード112において回転体113から離隔した方の先端面が最も上方に位置したときを示している。このときの副ブレード112の先端面も、図4(b)に示すようにインクジェットヘッド2の吐出面2aより高い位置に配置されている。
回転体113の径方向に関する長さが副ブレード112より主ブレード111において長いため、図4に示すように、L1>L2となっている。なお、L1は、主ブレード111の先端面から吐出面2aまでの距離(第1の仮想部分長)であり、L2は、副ブレード112の先端面から吐出面2aまでの距離(第2の仮想部分長)である。
フレーム101内には、回転体113を回転駆動する駆動モータ123(回転駆動手段)が設けられている。回転体113には、ギア122を介して駆動モータ123の駆動軸から駆動力が伝達される。駆動モータ123からの駆動力が回転体113に伝達されると、回転体113はD方向に回動する。なお、ギア122は、回転体113に負荷が掛かり、回転体113がD方向とは逆方向に回転しようとしても、駆動モータ123の駆動軸や回転体113との咬み合いがロックすることにより、回転体113が自由に回転しないように構成されている。
メンテナンスユニット6は、主ブレード111及び副ブレード112に以下のように吐出面2aを払拭させる。まず、主ブレード111に吐出面2aを払拭させる際には、主ブレード111を図4(a)の状態にし、回転体113を停止させた状態で、ワイパユニット駆動機構130にワイパユニット100を移動させる。ここで、上記の通り、駆動モータ123が作動していなくても、ギア122が回転体113を回転させないように保持するので、主ブレード111は図4(a)の状態を保ったまま水平に移動する。主ブレード111の先端面は吐出面2aより上方に配置されているため、主ブレード111が吐出面2aに当接すると、図4(a)の破線に示すように撓んだ状態になる。そして、主ブレード111は、この状態を保ちつつ吐出面2aに沿って移動することにより、吐出面2aを払拭する。
一方、副ブレード112に吐出面2aを払拭させる際には、ワイパユニット駆動機構130にワイパユニット100を移動させつつ、駆動モータ123に回転体113を回転させる。これによって、副ブレード112は、図4(b)に示すように移動方向1に沿って移動しながら移動方向2に沿って移動しつつ、吐出面2aに当接する。副ブレード112の先端面は吐出面2aより上方に配置されているため、副ブレード112が吐出面2aに当接すると、図4(b)の破線に示すように撓んだ状態になる。そして、副ブレード112は、さらに移動方向1及び移動方向2に沿って移動することにより、吐出面2aを払拭し、その後吐出面2aから離隔する。
ところで、本明細書においては、主ブレード111や副ブレード112などのブレードが吐出面2aと当接して撓んだ状態にある場合に、ブレードが吐出面2aに当接せず撓んでいないと仮定したときにブレードの先端面が配置されるべき位置から、吐出面2aまでの最短距離を、「仮想部分長」と呼称する。仮想部分長は、前述のL1及びL2に相当し、ブレードの先端面がどれくらい吐出面2aから飛び出すように設定されているかを示している。したがって、仮想部分長は、各ブレードの撓みの程度を表している。仮想部分長が大きいほど、そのブレードが吐出面2aに当接して撓んだ際の撓みの程度が大きいことになる。
図4(a)のように主ブレード111が鉛直上方に延びているときは、主ブレード111の固定位置113eと吐出面2aとの距離が最短になるときである。また、図4(b)のように副ブレード112が鉛直上方に延びているときは、副ブレード112の固定位置113fと吐出面2aとの距離が最短になるときである。各ブレードの固定位置と吐出面2aとの距離が最短となると、各ブレードの先端面が最も上方に位置することになる。この状態は、仮想部分長が最大且つ撓みもほぼ最大になる状態である。つまり、仮想部分長が最大になるときは、各ブレードの固定位置と吐出面2aとの距離が最短になるため、各ブレードの撓みがほぼ最大となる。また、各ブレードの撓みが最大となるときは、各ブレードが吐出面2aから印加される圧力が最大となるときである。したがって、仮想部分長が最大になるときは、各ブレードが吐出面2aから印加される圧力がほぼ最大となるときである。
そして、本明細書においては、各ブレードが吐出面2aを払拭する際の仮想部分長の最大値を「ラップ長」と呼称する。図4(a)に示すように主ブレード111のラップ長はL1である。主ブレード111のラップ長は、主ブレード111が吐出面2aを払拭する際に、ノズルが形成された領域2bに付着した大量のインクをかき取ることができるように、十分大きく設定されている。ラップ長が小さいと、主ブレード111が吐出面2aから印加される圧力、つまり、主ブレード111が吐出面2aに印加する圧力が小さくなる。これは、主ブレード111を吐出面2aに押し付ける力が弱いことに相当する。この場合、主ブレード111が大量のインクをかき寄せることができなくなるからである。
一方、図4(b)に示すように、副ブレード112のラップ長はL2である。副ブレード112のラップ長L2は、上記の通り、主ブレード111のラップ長L1より小さくなっている。これによって、副ブレード112において仮想部分長が最大のとき、つまり、最も撓んだ状態の撓みの程度が、主ブレード111において仮想部分長が最大のとき、つまり、最も撓んだ状態の撓みの程度より小さくなるように設定されている。副ブレード112の仮想部分長がこのように設定されているのには理由があるが、これについては後述する。
フレーム101内において回転体113の下方には、インク吸収部材151(吸収部材)が設けられている。インク吸収部材151は、回転体113が回転する際に、主ブレード111及び副ブレード112の先端部がインク吸収部材151の上部に当接するように配置されている。インク吸収部材151は、インクを吸収しやすい多孔性の材質から構成されており、主ブレード111や副ブレード112がインク吸収部材151に当接すると、これらのブレードに付着したインクがインク吸収部材151に吸収される。
以下、メンテナンスユニット6が実行するメンテナンス動作について、図5〜図7を参照しつつより詳細に説明する。印刷制御部51は、以下の動作を行うようにメンテナンスユニット6を制御する。なお、図5〜図7においては、図を見やすくするため、ワイパユニット駆動機構130の図示を一部省略している。
まず、図3に示す状態から、回転体113の位置を保持しつつ、図5(a)に示すように、ワイパユニット駆動機構130がワイパユニット100を主走査方向へと移動させる。ワイパユニット100は、ガイド溝143に沿って図中左方へと水平に移動する。主ブレード111は、吐出面2aに当接すると、図5(a)に示すように撓んだ状態になる。
次に、ワイパユニット駆動機構130が、ワイパユニット100をさらに移動させ図5(b)の位置まで到達させる。そして、ワイパユニット駆動機構130は、ワイパユニット100を図5(b)の位置で停止させる。この間に、主ブレード111の先端面の近傍が吐出面2aに当接しつつノズルが形成された領域2bを通過する。これによって、領域2bに付着した余剰のインクや異物が主ブレード111によってかき寄せられ、領域2bが払拭されて清浄な状態になる。図5(b)には、かき寄せられたインクIが示されている。主ブレード111は、副走査方向に関して4つのインクジェットヘッド2を跨ぐ幅を有しているので(図1参照)、4つのインクジェットヘッド2の吐出面2aを同時に払拭する。なお、このように主ブレード111に領域2bを払拭させるステップが、本発明の吐出口払拭ステップに対応する。
次に、ワイパユニット100が図5(b)の位置に停止された状態で、駆動モータ123が回転体113をD方向に図5(c)に示す位置まで回転させる。図5(c)の矢印p1は、吐出面2aにおいて、駆動モータ123が回転体113を回転させ始める直前の主ブレード111の当接位置を示している。また、矢印p2は、主ブレード111が吐出面2aから離隔する直前の位置を示している。主ブレード111の先端面は、回転体113の回転によってp1からp2まで移動する。主ブレード111の先端面がp1からp2に向かって移動すると、吐出面2aから回転体113と主ブレード111との固定位置までの距離が長くなっていく。このため、主ブレード111の先端面がp1からp2に向かうにつれて、主ブレード111の撓みが小さくなるとともに、主ブレード111と吐出面2aとの間で互いに作用する圧力が小さくなる。したがって、位置p1は、主ブレード111の撓みが小さくなり始めると共に、主ブレード111が吐出面2aに印加する圧力が減少し始める位置でもある。なお、このように主ブレード111をp2において吐出面2aから離隔させるステップが、本発明のブレード離隔ステップに対応する。
ここで、駆動モータ123は、主ブレード111の当接部が吐出面2a上のp1からp2までの領域をゆっくりと移動するように回転体113を回転させることが好ましい。一方、主ブレード111の当接部がp1からp2までの領域を素早く通過する場合には、主ブレード111の撓みが急激に小さくなるため、かき寄せられたインクIが主ブレード111の急激な変形によって周囲に飛び散るおそれがある。これに対して、回転体113をゆっくり回転させる場合には、主ブレード111が吐出面2aへと印加する圧力をゆっくりと減少させつつ変形するので、かき寄せられたインクIが周囲に飛び散るのを抑制することができる。
このように、本実施形態においては、インクIが飛び散らないように主ブレード111を離隔位置p2まで移動させることができる。しかし、インクIが飛び散らない反面、インクIが吐出面2aのp1とp2との間の領域に残りやすい。そこで、本実施形態では、吐出面2aに残留したインクIを、副ブレード112が以下のように払拭する。
まず、ワイパユニット駆動機構130が、ワイパユニット100を主走査方向に平行移動させ、所定位置に配置させる。この所定位置は、図6(a)に示すように、吐出面2aにおいてノズル形成領域2bとp1との間の位置から副ブレード112が当接し始めるような位置である。ここで、ワイパユニット駆動機構130は、図5(c)の状態からワイパユニット100を主走査方向の順方向に向かって移動させてもよいし、逆方向に移動させてもよい。なお、図5(c)の状態で回転体113を回転させると、副ブレード112がちょうど領域2bとp1との間の位置から当接し始めるのであれば、図5(c)の状態から移動させなくてもよい。このように、領域2bから離れた位置から副ブレード112を当接させ始めることで、副ブレード112の通過によって領域2bに形成されたノズルの開口を汚染することが回避される。
そして、駆動モータ123が回転体113を駆動し、回転体113をD方向に回動させて副ブレード112をp1と領域2bとの間の位置から当接させ始める。このとき、最初に吐出面2aに当接するのは、D方向とは逆方向に向かって主ブレード111の次に配置された副ブレード112である。
次に、ワイパユニット駆動機構130がワイパユニット100を主走査方向に移動させつつ、駆動モータ123が回転体113を駆動し、D方向に回動させる。これによって、5枚の副ブレード112を次々と吐出面2aに当接させつつ、ワイパユニット100全体を主走査方向に沿って移動させる。副ブレード112が吐出面2aに当接する際は、図6(b)に示すように撓んだ状態になる。図6(b)は、2枚目の副ブレード112が吐出面2aに当接した状態を示している。各副ブレード112は、吐出面2aにおいてp1からp2までのいずれかの領域に当接しつつ、撓んだ状態で吐出面2aを払拭する。これによって、吐出面2aにおいてp1からp2までの領域に残留したインクIが除去されていく。なお、各副ブレード112は、副走査方向に4つのインクジェットヘッド2を跨ぐ幅を有しているので(図1参照)、4つのインクジェットヘッド2の吐出面2aを同時に払拭する。このように、副ブレード112に位置p2を通過させて吐出面2aを払拭させるステップが、本発明の離隔位置払拭ステップに対応する。
さらに、ワイパユニット100が主走査方向に移動しつつ回転体113が回転し続けると、図6(c)に示すように、5枚目の副ブレード112が吐出面2aに当接する。本実施形態においては、この5枚目の副ブレード112が吐出面2aに当接しつつp2の位置を通過するようにワイパユニット100の移動と回転体113の回転が調整されている。これによって、p1からp2までの領域が、5枚の副ブレード112によって確実に払拭される。そして、図6(d)に示すように、副ブレード112が吐出面2aから離隔すると、吐出面2aの払拭が完了する。
次に、ワイパユニット駆動機構130は、ワイパユニット100をガイド溝143に沿ってさらに移動させ、図7に示すように、インクジェットヘッド2より左方の位置まで到達させる。そして、駆動モータ123が回転体113を駆動し、主ブレード111と各副ブレード112とがインク吸収部材151に当接するように回転体113を回動させる。これにより、主ブレード111や各副ブレード112に付着したインクがインク吸収部材151によって除去される。このように、主ブレード111及び副ブレード112に付着したインクを除去するブレードクリーニングを実行することにより、次に吐出面2aを払拭する際に、清浄な状態の主ブレード111や副ブレード112を使用することができる。ここで、ブレードクリーニングは、ワイパユニット100をガイド溝143に沿ってインクジェットヘッド2の下方の位置から図7の左方へと退避させ、さらに、下方へと移動させた後に実行されている。このため、回転体113を回転させた際に主ブレード111や副ブレード112がインクジェットヘッド2に当たることが確実に回避される。
以上説明したように、第1の実施形態によると、回転体113を回転させつつワイパユニット100を移動させることで、5枚の副ブレード112を吐出面2aに当接させる。したがって、p1からp2までの広い領域を5枚の副ブレード112に順に払拭させることができる。副ブレード112は、吐出面2aに当接して撓みつつ、吐出面2aに付着したインクIを払拭する。
そして、副ブレード112のラップ長L2は、上記の通り、主ブレード111のラップ長L1より小さく設定されている。つまり、副ブレード112の仮想部分長の最大値が主ブレード111の仮想部分長の最大値より小さく設定されている。これによって、副ブレード112において仮想部分長が最大の状態、つまり、最も撓んだ状態の撓みの程度が、主ブレード111において仮想部分長が最大の状態、つまり、最も撓んだ状態の撓みの程度より小さくなるように設定されている。
一方、仮に、副ブレード112のラップ長L2が、主ブレード111のラップ長L1と同じ大きさか、それより大きいときには、主ブレード111と同程度に大きく撓み、撓みが戻るときにも大きく変形することとなる。この場合、副ブレード112が吐出面2aから離隔する際に、吐出面2aに付着したインクIを周囲に飛び散らせてしまうおそれがある。
これに対して、本実施形態のように、副ブレード112のラップ長L2が主ブレード111のラップ長L1より小さいと、副ブレード112が吐出面2aに当接して撓み、吐出面2aから離隔する際に、主ブレード111の変形の程度と比較して、副ブレード112が大きく変形するのが回避される。これによって、副ブレード112が吐出面2aを払拭する際、吐出面2aに付着したインクIが飛び散りにくくなる。
ところで、仮想部分長の大きさはブレードの撓みの程度を表している。一方、撓みの程度は、ブレードが吐出面2aから受ける圧力の大きさに依存する。つまり、仮想部分長が大きいことは、ブレードが吐出面2aから受ける圧力が大きいことに相当する。また、仮想部分長が小さいことは、ブレードが吐出面2aから受ける圧力が小さいことに相当する。
したがって、本実施形態のように、副ブレード112の仮想部分長の最大値が主ブレード111の仮想部分長の最大値より小さいことは、吐出面2aから副ブレード112が受ける圧力の最大値が、吐出面2aから主ブレード111が受ける圧力の最大値より小さいことに相当する。
つまり、本実施形態は、(1)副ブレード112の仮想部分長の最大値、つまりラップ長L2が、主ブレード111の仮想部分長の最大値、つまりラップ長L1より小さいことにより、(2)吐出面2aから副ブレード112が受ける圧力の最大値が、吐出面2aから主ブレード111が受ける圧力の最大値より小さくなっている。これによって、(3)副ブレード112が吐出面2aに当接して撓み、吐出面2aから離隔する際に、主ブレード111の変形の程度と比較して、副ブレード112が大きく変形するのが回避される。したがって、(4)副ブレード112が吐出面2aを払拭する際、吐出面2aに付着したインクIが飛び散りにくくなっていることになる。なお、各ブレードが吐出面2aから受ける圧力の大きさは、各ブレードが吐出面2aに印加する圧力の大きさと同じである。
また、本実施形態は、図5(a)及び図5(b)に示すように、主ブレード111が最も撓んだ状態を保ちつつ領域2bを払拭するように構成されている。つまり、本発明の仮想部分長が最大となる状態を保持しつつ、主ブレード111が領域2bを払拭する。これによって、主ブレード111を強い圧力で吐出面2aに当接させつつ移動させる。したがって、ノズルが開口した領域2bに大量のインクが付着している場合でも、主ブレード111が吐出面2aから離隔しにくく、吐出面2aに当接した状態を確実に保ちつつ、領域2bに付着したインクを安定にp1の位置までかき寄せることができる。
また、本実施形態では、円筒形の概略形状を有する回転体113の外周面に、回転体113の径方向に沿って主ブレード111及び副ブレード112を配置している。そして、回転体113を吐出面2aに対して水平移動させたり回転させたりすることで、主ブレード111や副ブレード112に吐出面2aを払拭させている。ここで、回転体113を水平移動させたり回転させたりする際には、回転体113と吐出面2aとの距離が変化しない。したがって、主ブレード111及び副ブレード112において回転体113の径方向に関する長さを異なったものとすることで、両者のラップ長を異なったものとすることができる。このように、本実施形態では、簡易な構成で主ブレード111と副ブレード112のラップ長を異なったものとすることができる。
なお、本実施形態においては、ワイパユニット駆動機構130がワイパユニット100を移動させることと、駆動モータ123が回転体113を回転させることで、主ブレード111及び副ブレード112の両方を吐出面2aに対して移動させる。つまり、本実施形態においては、ワイパユニット駆動機構130と駆動モータ123とで本発明の第1及び第2のブレード駆動手段が構築されている。
以下、第1の実施形態に関するメンテナンス動作の変形例について説明する。この変形例のメンテナンス動作においては、主ブレード111を吐出面2aから離隔させるまでの、図5(c)に示す状態までの工程は上記と同様である。
一方、本変形例では、図5(c)において主ブレード111を吐出面2aから離隔させると、ワイパユニット駆動機構130は、図8に示すように、回転体113の回転軸113aが主走査方向に関してちょうど主ブレード111の離隔位置p2に位置するようにワイパユニット100を移動させ、その位置に停止させる(並進駆動ステップ)。そして、駆動モータ123は、回転体113を駆動し、回転体113をD方向に回転させる(回転駆動ステップ)。これによって、5枚の副ブレード112のそれぞれに、p1とp2との間の位置から吐出面2aに当接させ、p2の位置を通過させる。このように、副ブレード112が当接し始めるのは、主ブレード111の離隔位置p2と領域2bとの間であれば、p1とp2の間からであってもよい。
この変形例によると、ワイパユニット100を移動させつつ回転体113を回転させる場合と異なり、ワイパユニット100の移動と回転体113の回転を同期させる必要がない。したがって、メンテナンス動作の制御が簡易になる。また、5枚の副ブレード112の全てに主ブレード111の離隔位置p2を払拭させるため、この位置に付着したインクを確実に払拭することができる。
[第2の実施形態]
以下、本発明の別の実施形態である第2の実施形態について説明する。第2の実施形態において第1の実施形態と異なるのはメンテナンスユニットの構成であり、以下においてはメンテナンスユニットについて説明する。図9(a)は、第2の実施形態に係るメンテナンスユニット206の側面図である。図9(b)は、図9(a)のワイパユニット201及び202周辺の拡大図である。
メンテナンスユニット206は、ワイパユニット201及び202と、ワイパユニット201及び202の移動方向をガイドするガイド板241とを有している。ガイド板241にはガイド溝243〜246が形成されている。これら4本のガイド溝は上下方向に配列されている。このうち、ガイド溝243及び244は、いずれも主走査方向に直線状に延びている。
ガイド溝245は、その両端を含む領域R1及びR3において、上下方向に所定の位置で、主走査方向に直線状に延びている。ガイド溝245において領域R1の部分と領域R3の部分とは、上下方向に同じ位置に配置されている。領域R1と領域R3との間の領域R2において、ガイド溝245は、領域R1及びR3より下方の位置で、主走査方向に直線状に延びている。領域R2の両端部には、領域R1及びR3にそれぞれ連結する段差部が形成されている。ガイド溝246は、ガイド溝245と同じ大きさで同じ形状を有しており、ガイド溝245より下方に配置されている。
ワイパユニット201の側面には上下方向に並んだ2つのガイド突起221が形成されている。ガイド突起221は、ガイド溝243及び244に嵌め込まれており、これらのガイド溝に沿って主走査方向に両方向に移動できる。これにより、ワイパユニット201全体が、ガイド溝243及び244に沿って水平に移動する。
一方、ワイパユニット202の側面にも上下方向に並んだ2つのガイド突起222が形成されている。ガイド突起222は、ガイド溝245及び246に嵌め込まれており、これらのガイド溝に沿って両方向に移動できる。これにより、ワイパユニット202全体が、ガイド溝245及び246に沿って移動する。
また、メンテナンスユニット206には、ワイパユニット201及び202をそれぞれ独立に駆動する図示しない駆動機構が設けられている。この駆動機構は、ワイパユニット201をガイド溝243及び244に沿って移動させると共に、ワイパユニット202をガイド溝245及び246に沿って移動させる。なお、この駆動機構は、第1の実施形態のワイパユニット駆動機構130と同様に、2つのローラとこれらのローラの周囲に巻き掛けられた搬送ベルトとで構成されていてもよい。
ワイパユニット201及び202には、同じ厚みの平板形状を有する主ブレード211及び副ブレード212が鉛直方向に沿うように立設されている。主ブレード211及び副ブレード212は、いずれも副走査方向に関して4つのインクジェットヘッド2を跨ぐ幅を有しており、主ブレード211及び副ブレード212は共に同じ幅を有している。また、主ブレード211及び副ブレード212は同一の材質の弾性材料から構成されている。主ブレード211の先端面及び副ブレード212の先端面は、領域R3に配置された状態で、図9(b)に示すように吐出面2aより上方に配置されている。また、主ブレード211の先端面は、副ブレード212の先端面より上方に配置されている。
主ブレード211は、ガイド溝243及び244に沿って水平に移動するので、後述のとおり、図9(a)に示す高さを保ちつつ水平に移動して吐出面2aに当接する。したがって、主ブレード211のラップ長は、図9(b)に示すL3となる。また、副ブレード212は、ガイド溝245及び246に沿って移動し、後述の通り、領域R1において吐出面2aに当接する。領域R1におけるガイド溝245及び246の高さは、領域R3におけるガイド溝245及び246の高さと同じである。したがって、副ブレード212のラップ長は、図9(b)に示すL4となる。副ブレード212のラップ長L4は、主ブレード211のラップ長L3より小さい。
以下、メンテナンスユニット206によるメンテナンス動作について説明する。まず、上記の駆動機構は、ワイパユニット201を主走査方向に移動させる。これによって、ワイパユニット201は、図9(a)の位置から、図10(a)の位置201a及び位置201bを経て位置201cまで、水平に移動する。この間に、主ブレード211が吐出面2aに当接すると、図10(a)に示すように主ブレード211が撓む。そして、主ブレード211が撓んだ状態を保持しつつ、ノズルが形成された領域2bを通過し、吐出面2aから図中左端において離隔する。これによって、領域2bに付着したインクが払拭される。
一方、領域2bに付着したインクが多いと、主ブレード211がかき寄せるインクが大量になる。したがって、吐出面2aから離隔する直前の図10(a)の破線で囲まれた領域には、主ブレード211が落としきれなかったインクが残留するおそれがある。
そこで、メンテナンスユニット206は、以下のように副ブレード212に吐出面2aを払拭させる。上記の駆動機構は、ワイパユニット202を主走査方向に沿って移動させる。これによって、ワイパユニット202は、図9(a)の位置から、図10(b)の位置202a〜202cを経て、位置202dまで移動する。
この間に、ワイパユニット202は、領域R3から領域R2を経て領域R1まで移動する。ワイパユニット202は、領域R3においては主走査方向に沿って水平に移動し、領域R2の図中右端に差し掛かると、ガイド溝245及び246の段差部に沿ってF方向に移動する。ワイパユニット202は、領域R2の中間部においては、吐出面2aの下方を、副ブレード212の先端面が吐出面2aに当接しないように主走査方向に水平に移動する。
さらに、ワイパユニット202は、領域R2の図中左端に差し掛かると、ガイド溝245及び246の段差部に沿ってG方向に移動する。このとき、副ブレード212の先端面が吐出面2aにおいて、領域2bより図中左方に当接する。そして、ワイパユニット202は、領域R1において、主走査方向に沿って水平に移動する。領域R1においては、副ブレード212が吐出面2aに当接しつつ撓んだ状態を保持する。これによって、吐出面2aにおいて、領域2bから図中左端までの領域が副ブレード212によって払拭される。したがって、主ブレード211が図中の左端において吐出面2aから離隔した際にインクが残留しても、その離隔位置を副ブレード212が払拭するので、残留したインクを除去することができる。
以上のように、ワイパユニット202は、領域R2において、吐出面2aの領域2bを下方に迂回するように移動し、領域2bを通過した後に吐出面2aに当接する。したがって、主ブレード211によって払拭された領域2bを副ブレード212が汚染するのが回避される。
また、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、副ブレード212のラップ長L4が主ブレード211のラップ長L3より小さくなるように構成されている。したがって、副ブレード212が吐出面2aに当接して撓みが最大となった状態の撓みの程度が、主ブレード211が吐出面2aに当接して撓んだ状態の撓みの程度より小さい。これによって、副ブレード212が吐出面2aに付着したインクを払拭する際に、インクが周囲に飛び散りにくい。
[第3の実施形態]
以下、本発明のさらに別の実施形態である第3の実施形態について説明する。第3の実施形態において第1の実施形態と異なるのはワイパユニットの構成であり、以下においては主にワイパユニットについて説明する。図11(a)は、第3の実施形態に係るワイパユニット300の側面図である。
ワイパユニット300は、フレーム301を有している。なお、フレーム301には、第1の実施形態の固定部材134と同様の固定部材334が接続されている。固定部材334は、図示しない駆動機構によって主走査方向に駆動される。この駆動機構には、第1の実施形態のワイパユニット駆動機構130が用いられてもよい。
フレーム301内には、搬送ローラ322及び323と、これらの搬送ローラの周囲に巻き掛けられた無端状の搬送ベルト323が設けられている。搬送ローラ322は図示しない駆動モータによって駆動され、搬送ローラ322が駆動されると、搬送ベルト323が搬送ローラ322及び323の周囲を走行する。これによって、搬送ベルト323は矢印Hが示す方向に走行する。なお、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、駆動モータが作動していないときなどに搬送ローラ321や搬送ローラ322に負荷が掛かっても、搬送ローラ321や搬送ローラ322が自由に回転しないように構成されている。
搬送ベルト323の外周面には、1枚の主ブレード311及び3枚の副ブレード312が、外周面に対して直交するように固定されている。図11(a)のように主ブレード311が主走査方向に関して搬送ベルト323の中央付近の上方に配置されているとき、3枚の副ブレード312は、搬送ベルト323の下方に配置されている。3枚の副ブレード312は、搬送ベルト323の走行方向に沿って等間隔に配列されている。
主ブレード311及び副ブレード312は、互いに同じ厚さの平板部材であり、副走査方向に4つのインクジェットヘッド2を跨ぐ、同じ幅を有している。また、主ブレード311及び副ブレード312は、同一の材質の弾性材料から構成されている。
主ブレード311は、後述のとおり、図11(a)に示す高さを保ちつつ水平に移動して吐出面2aに当接する。したがって、主ブレード311のラップ長は、図11(a)に示すL5となる。また、副ブレード212は、後述の通り、搬送ベルト323に従動して搬送ベルト323の上方に回りこむことで、吐出面2aに当接する。図11(b)は、図11(a)の状態から搬送ベルト323が走行し、全ての副ブレード312が搬送ベルト323の上方に回りこんだ状態を示している。したがって、副ブレード312のラップ長は、図11(b)に示すL6となる。副ブレード312のラップ長L6は、主ブレード311のラップ長L5より小さい。
以下、第3の実施形態によるメンテナンス動作について説明する。まず、図12(a)に示すように、搬送ベルト323を停止させた状態で、主ブレード311を吐出面2aに当接させつつ、ワイパユニット300が主走査方向に移動する。これによって、領域2bが払拭される。
次に、ワイパユニット300は、図12(b)に示す位置に到達すると、主走査方向への移動を停止する。そして、ワイパユニット300は搬送ベルト323をH方向に走行させる。なお、図12(b)に示す位置は、搬送ベルト323を走行させると、主ブレード311の撓みが、領域2bの左方の位置p3からちょうど緩み始めるような位置である。
搬送ベルト323が走行すると、主ブレード311は、搬送ベルト323に従動して図12の矢印付き破線の方向に移動する。そして、位置p3に到達すると、搬送ベルト323の走行に伴い、搬送ローラ321の周囲を回転し始める。これによって、主ブレード311の撓みが徐々に小さくなり、主ブレード311の当接部が位置p4に到達すると、主ブレード311が吐出面2aから離隔する。つまり、位置p3は、主ブレード311の撓みが緩み始める位置であり、主ブレード311が吐出面2aに印加する圧力が減少し始める位置でもある。また、位置p4は、主ブレード311が吐出面2aから離隔する離隔位置である。
次に、ワイパユニット300は、さらに図中左方へと図12(c)の位置まで移動し、この位置で停止する。そして、ワイパユニット300は、搬送ベルト323をH方向に走行させ始める。なお、図12(c)の位置は、搬送ベルト323を走行させると、副ブレード312が位置p3と領域2bとの間の位置p5から吐出面2aに当接し始めるような位置である。
搬送ベルト323が走行すると、副ブレード312は、搬送ベルト323に従動し、位置p5から吐出面2aに当接し始める。そして、搬送ベルト323が走行するにつれて撓みを増し、吐出面2aに沿って水平に移動する。位置p3及びp4を通過すると、副ブレード312は、吐出面2aの図中左端において吐出面2aから離隔する。3枚の副ブレードは、上記のように次々と移動し、位置p5から吐出面2aの左端までの領域を払拭する。
主ブレード311がかき寄せたインクがp3とp4との間に残留しても、以上のようにこの領域を含むように副ブレード212が吐出面2aを払拭するので、残留したインクを除去することができる。また、第3の実施形態においても、副ブレード312は領域2bに当接することがないので、副ブレード312によって領域2bが汚染されるのが回避される。さらに、副ブレード312のラップ長L6が主ブレード311のラップ長L5より小さくなるように構成されている。したがって、副ブレード312が吐出面2aに付着したインクを払拭する際にインクが飛び散りにくい。
また、第1の実施形態と同様に、主ブレード311の撓みが位置p3から位置p4に至るまで徐々に緩くなるので、主ブレード311が急激に変形するのを抑制することができる。したがって、主ブレード311が吐出面2aから離隔する際にインクが飛び散りにくい。
なお、第3の実施形態においては搬送ベルト323が、本発明の回転体に対応する。
<その他の変形例>
以上は、本発明の好適な実施形態についての説明であるが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲の限りにおいて様々な変更が可能なものである。
例えば、上述の実施形態においては、主ブレード111や副ブレード112などのブレードを吐出面2aに対して移動させることにより、吐出面2aを払拭させている。しかし、各ブレードに対してインクジェットヘッド2の方を移動させることにより吐出面2aを払拭させてもよい。
また、上述のいずれの実施形態においても、主ブレードと副ブレードの材質や厚み、副走査方向に関する幅が互いに同じである。しかし、これらの構成が互いに異なっていてもよい。この場合でも、吐出面2aに当接して撓んだ状態で、副ブレードが吐出面2aに印加する圧力が、主ブレードが吐出面2aに印加する圧力と同程度であると、副ブレードが撓んだ状態から元に戻る際に大きく変形したり、急激に変形したりするのが回避される。したがって、吐出面2aに付着したインクが周囲に飛び散るのを抑制することができる。
また、上述の第1の実施形態において、主ブレード111及び副ブレード112が回転体113の径方向に沿うように回転体113に固定されている。しかし、これらのブレードが回転体113の径方向に対して斜めに傾くように回転体113に固定されていてもよい。上述の第2の実施形態において、主ブレード211及び副ブレード212は、鉛直方向に沿うように立設されている。しかし、これらのブレードが、所定の取り付け角を設けつつ斜めに立設されていてもよい。上述の第3の実施形態において、主ブレード311及び副ブレード312が搬送ベルト323の外周面に直交する方向に沿うように搬送ベルト323に固定されている。しかし、これらのブレードが搬送ベルト323の外周面に対して斜めに傾くように搬送ベルト323に固定されていてもよい。これらの場合でも、吐出面2aに当接して撓んだ状態で、副ブレードが吐出面2aに印加する圧力が、主ブレードが吐出面2aに印加する圧力と同程度であると、副ブレードが撓んだ状態から元に戻る際に大きく変形したり、急激に変形したりするのが回避される。
さらに、いずれの実施形態においても、主ブレード及び副ブレードには、副走査方向に関するインクジェットヘッド2の配列ピッチに合わせて、上下方向にブレードの先端からブレードの基端に向かうスリットが形成されていてもよい。かかるスリットを、互いに隣り合う2つのインクジェットヘッド2の間に対向して形成することで、払拭されたインク同士が混ざり合うことがなくなり、常に混色のない清浄な払拭動作が可能になる。