JP5262111B2 - 中空糸膜モジュール - Google Patents

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Description

本発明は中空糸膜モジュールに関する。さらに詳しくは、ろ過水の生成時や中空糸膜の洗浄時において水出口での圧力上昇を防止し、長期間安定してろ過運転を継続できる中空糸膜モジュールに関する。
およそ数百本〜数万本の中空糸膜が束ねられた中空糸膜束を筒状ケース内に収納し、該中空糸膜束の両端部を樹脂で接着固定した外圧式中空糸膜モジュールでは、原水を供給するための水供給口と排出するための排水口とを、筒状ケースの両端部近傍でかつ筒状ケースの軸方向に関して上記接着固定部よりも内側のケース側面に設けていることが多い。このようにケース側面に水供給口と排水口とを設けた場合には、その水供給口や排水口を設けた箇所の筒状ケース内側に整流筒(多数の孔が設けられた筒状体)を設け、その整流筒の外周を囲むように環状流路を形成させた装置構造とし、水の流れのデッドスペースをなくすよう工夫されている(特許文献1、2参照)。
この中空糸膜モジュール内に水供給口から原水を供給すると、原水はその水供給口近傍の環状流路から整流筒の孔を経て中空糸膜束の外側域に入り、ここで中空糸膜面を透過してその内部に浸入し、そのろ過水が中空糸膜の内部を通り開口した端部から取り出される。ここで、原水処理をクロスフロー式で行う場合には、中空糸膜面を透過しなかった残りの原水が、排水口近傍の整流筒の孔を通過し、環状流路を経て排水口から排出される。
このような中空糸膜モジュールにおいて、ろ過運転を開始する前には、水供給口から原水を供給し、クロスフロー式での原水処理の場合と同様に、排水口から原水が流出するようにする。このように原水を供給して排出することにより、当初モジュール内に入っていた気体等は排水口から流出し、モジュール内のろ過域内を原水で充満させることができる。
しかしながら、中空糸膜モジュール内に原水が充満したからといって、直ぐにろ過運転を開始すると、原水供給ライン途中の配管内等に残存していた空気が原水に随伴されて時間の経過と共に中空糸膜モジュール内に浸入し、その空気が中空糸膜面の孔に詰まり有効ろ過膜面積の減少を生じさせる。したがって、原水がろ過域内に充満した後も、直ぐにろ過運転を開始せずにしばらくの間原水を継続して供給し排水口から流出させるようにし、モジュール内に侵入した空気を排出することが行われ、その後にろ過運転が開始される。
さらに、一定時間のろ過工程が終了した後には、ろ過水または高圧空気をろ過水出口側から供給し原水側へと流す逆流洗浄や、高圧空気を混入させた原水または高圧空気のみを水供給口側から供給し、モジュール内に蓄積した懸濁物質を排出させるエアスクラビングが行われる。これら洗浄を行う時にも、洗浄廃水や廃気を排水口から流出させる。
上記のような場合において、ろ過域内に流入した水や空気がモジュール外に排出される時には、整流筒に設けられた孔(整流孔という)を経て整流筒周囲の環状流路へ流出され、最後に、側面に設けられた排水口からモジュール外へ流れ出る。整流筒の孔を通過して流れ出た水や空気は全て排水口の近傍に集中するので、その排水口近傍における圧力損失が増大する。その結果、ろ過運転に必要な駆動力や洗浄時の供給圧力を上昇させる必要が生じ、ろ過開始までの時間の損失や運転エネルギーの損失のほか、原水の損失も生じる。
また、これらの問題は、水供給口を、筒状ケースの端部近傍でかつ筒状ケースの軸方向に関して接着固定部よりも内側のケース側面位置に設けている場合に限らず、水供給口を筒状ケースの端部に設け、接着固定部に原水が通る貫通孔を設けている場合でも、排出口を、筒状ケースの端部近傍でかつ筒状ケースの軸方向に関して接着固定部よりも内側のケース側面位置に設けている場合には、同様に起こる。
これらの問題を解決するための手段としては、例えば、特許文献1に記載のように整流筒に設けた整流孔の開孔面積が排出口から遠ざかるほど大きくなるように円周上で変化させることや、また、特許文献2に記載のように排水口近傍で整流筒外側の環状流路の幅が最大になるように整流筒を配置することなどが提案されている。
前述した排水口付近での流量増加による圧力損失の増大の問題は、上記した改良手段によりかなり軽減することができる。
ところが、整流筒内では、排出されようとする水や空気の流れによって中空糸膜が押され、整流筒内壁の整流孔付近に中空糸膜が押さえつけられるという現象が生じていて、押さえつけられた中空糸膜束により整流孔が閉塞され易いという問題が生じていた。この中空糸膜による整流孔閉塞の問題は、整流孔の径が小さい場合や、モジュール内に多数の中空糸膜を充填した高充填率の場合に特に生じ易いものであった。そこで、ろ過運転時における運転駆動力や洗浄時における供給圧力を十分に低減させるために、整流孔の閉塞による圧力損失を低減させることが要求されていた。
以上は外圧式中空糸膜モジュールの場合に関する説明であるが、原水供給口を筒状ケースの下端部や上端部に設け、原水を中空糸膜の内側に導入してろ過を中空糸膜の内側から外側に向けて行い、ろ過水を、筒状ケースの端部近傍でかつ筒状ケースの軸方向に関して接着固定部よりも内側のケース側面にもうけたろ過水排出口から排出させる内圧式中空糸膜の場合においても、排出しようとする水や空気の流れによって中空糸膜が押され、整流筒内壁の整流孔付近に押さえつけられて整流孔が閉塞されて圧力損失が生じるという問題は同様に生じる。
このような排出時における整流孔の閉塞の問題は、前述したような従来技術では解決することが困難である。
実開昭62−190605号公報(特許請求の範囲) 特開2004−50023号公報([0016]〜[0017]段落)
本発明の目的は、上述した従来技術の問題を解決し、圧力損失やろ過運転駆動力を十分に低減させることができる中空糸膜モジュールを提供しようとするものである。
上記目的を達成するための本発明の中空糸膜モジュールは以下の特徴を有する。
(1) 多数本の中空糸膜からなる中空糸膜束が、側面に水出入開口部を配した筒状ケース内に配置され、かつ、中空糸膜束の端部が筒状ケースの側面の水出入開口部の位置よりも筒状ケース軸方向に外側で接着固定されてなる中空糸膜モジュールにおいて、整流孔を設けた整流筒が、筒状ケースの側面の水出入開口部の内方で中空糸膜束の外周を囲むように配設され、かつ、整流筒の内側の面に、整流孔間を連通する溝が設けられていることを特徴とする中空糸膜モジュール。
(2) 多数本の中空糸膜からなる中空糸膜束が、側面に水出入開口部を配した筒状ケース内に配置され、かつ、中空糸膜束の端部が筒状ケースの側面の水出入開口部の位置よりも筒状ケース軸方向に外側で接着固定されてなる中空糸膜モジュールにおいて、整流孔を設けた整流筒が、筒状ケースの側面の水出入開口部の内方で中空糸膜束の外周を囲むように配設され、かつ、整流筒の内側の面に畝状突起が設けられていることを特徴とする中空糸膜モジュール。
(3) 整流筒の内側面に設けられた溝の長手方向又は畝状突起の長手方向が、中空糸膜の長手方向に対し交差する方向であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の中空糸膜モジュール。
本発明によれば、モジュール内の水や空気が排出される時に排出口となる側面の開口部の近傍における排出水・空気の集中を緩和することができるとともに、整流筒に設けた整流孔が中空糸膜で閉塞されることを防止することができる。この結果、排出時の圧力損失を低減させ、ろ過運転時の駆動力や洗浄時の供給圧力を十分に低減させることができる。
本発明を適用する中空糸膜モジュールの一例を示す概略縦断面図である。 図1の中空糸膜モジュールにおけるY−Y矢視を示す概略横断面図である。 図1の中空糸膜モジュールにおけるX−X矢視を示す概略横断面図である。 本発明の中空糸膜モジュールにおいて用いる整流筒の一例を示す概略斜視図である。 本発明において用いる整流筒の内壁面における整流孔と連通溝との位置関係の一例を示す内壁面概略図である。 整流筒内壁面における整流孔と連通溝との位置関係の他の一例を示す内壁面概略図である。 整流筒内壁面における整流孔と連通溝との位置関係の他の一例を示す内壁面概略図である。 整流筒内壁面における整流孔と連通溝との位置関係の他の一例を示す内壁面概略図である。 整流筒の壁面の連通溝の断面形状の一例を示す概略断面図である。 整流筒内壁面の連通溝の断面形状の他の一例を示す概略断面図である。 整流筒内壁面の連通溝の断面形状の他の一例を示す概略断面図である。 本発明の中空糸膜モジュールにおいて用いる整流筒の他の一例を示す概略斜視図である。 本発明において用いる整流筒の内壁面における整流孔と畝状突起との位置関係の一例を示す内壁面概略図である。 整流筒内壁面における整流孔と畝状突起との位置関係の他の一例を示す内壁面概略図である。 整流筒内壁面における整流孔と畝状突起との位置関係の他の一例を示す内壁面概略図である。 整流筒内壁面における整流孔と畝状突起との位置関係の他の一例を示す内壁面概略図である。 整流筒内壁面における整流孔と畝状突起との位置関係の他の一例を示す内壁面概略図である。 整流筒内壁面の畝状突起の断面形状の一例を示す概略断面図である。 整流筒内壁面の畝状突起の断面形状の他の一例を示す概略断面図である。 整流筒内壁面の畝状突起の断面形状の他の一例を示す概略断面図である。 本発明の中空糸膜モジュールにおいて用いる整流筒の他の一例を示す概略斜視図である。
符号の説明
1: 筒状ケース、 2: 中空糸膜束、 3: ケース本体、 4a、4b: ソケット、 5a、5b: キャップ、 6a、6b: 整流筒、 7a、7b: 環状流路、 8a、8b: 整流孔、 9: 排水口(水排出用開口部)、 10: 水供給口(水供給用開口部)、 11: ろ過水出口、 12: 底部通水口、 13a、13b: 接着固定部、 13′: 接着固定部中の樹脂、 14: 貫通孔、 15: 中空糸膜、 16: 連通溝、 17: 畝状突起、 61: 整流筒の内壁面、 62: 整流筒の外壁面
本発明の一実施形態を、上水のろ過装置として適用される中空糸膜モジュールを例にとって、図を参照しながら以下に説明する。図1は、本発明が適用できる中空糸膜モジュールの一実施態様を示す概略断面図である。
筒状ケース1は、筒状のケース本体3の両端部にそれぞれソケット4a,4bを装着して構成されている。一方のソケット4aの側面には原水排出用の排水口9が設けられ、また他方のソケット4bの側面には原水供給用の水供給口10が設けられている。この筒状ケース1内には、両端を切断して一定長に揃えた中空糸膜束2が挿入されていて、その両端部には樹脂により接着固定された接着固定部13a、13bが形成されている。図1においては、中空糸膜束2を構成する中空糸膜を単純な1本の線で図示したが、実際には、ここに図示した線の数よりもはるかに多い多数本の中空糸膜が束ねられて中空糸膜束2が構成されている。
中空糸膜束2を構成する中空糸膜の樹脂素材は特に限定されず、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、セルロース、酢酸セルロース、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレンなどや、これらの複合樹脂素材を例示することができる。なかでも、ポリフッ化ビニリデンは、耐薬品性に優れているため、中空糸膜を定期的に薬品洗浄することにより中空糸膜のろ過機能を回復させることができ、中空糸膜モジュールを長寿命化できるので、中空糸膜の素材として好ましい。
また、中空糸膜の外径は0.3〜3mmの範囲であることが好ましい。中空糸膜の外径が小さすぎると、中空糸膜モジュールの製作時に中空糸膜を取り扱う際や、中空糸膜モジュールを用いてろ過する際や、中空糸膜モジュールを洗浄する際などに中空糸膜が折れて損傷しろ過性能が悪化する問題などが生じ易い。逆に、中空糸膜の外径が大きすぎると、同じサイズの筒状ケース内に挿入できる中空糸膜の本数が減ってろ過面積が減少する問題などがある。さらに、中空糸膜の膜厚は0.1〜1mmの範囲であることが好ましい。これは、膜厚が小さすぎると、モジュール内で中空糸膜にかかる圧力で膜が折れる問題などがあり、逆に、膜厚が大きすぎると圧損が増加するし、膜製造原料が多く必要になる問題がある。
次に、図1におけるY−Y矢視断面を図2に示す。図2は、ソケット4a及び中空糸膜束2の接着固定部13aの、ろ過水出口11に面した端面を表す断面図である。
中空糸膜束2の両端部の接着固定のうち、ろ過水出口11に面したソケット4aの側の接着固定部13aでは、図2に示すように、個々の中空糸膜15同士の間が樹脂13′で封止されているが、中空糸膜15の端部では膜内部に封止樹脂13を浸入させずに開口状態にしてある。他方、原水供給口のあるソケット4bの側の中空糸膜束2の端部(接着固定部13b)では、中空糸膜の端部の膜内部に封止樹脂を浸入させて封止している。この接着固定部13bでは、個々の中空糸膜同士の間にも樹脂を浸入させて接着固定させているが、この膜同士の間部分に樹脂を侵入させる際に分散ピン(図示なし)等を介在させ、樹脂が固化した後に分散ピンを抜き取り、貫通孔14を形成させている。
筒状ケース1の両端部にそれぞれ設けたソケット4a,4bの外端部側には、それぞれキャップ5a,5bが取り付けられている。ソケット4a側のキャップ5aにはろ過水出口11が設けられている。ソケット4b側のキャップ5bには底部通水口12が設けられている。
さらに筒状ケース1の両端部に相当するソケット4a,4bの内部には、筒状ケース1の軸方向に関して接着固定部13a、13bよりも内側であって、側面に設けられた水出入開口部(排水口9、水供給口10)の位置に、それぞれ整流筒6a,6bが設けられていて、その外周を囲むように環状流路7a,7bが形成されている。この環状流路7a,7bは、それぞれ、ソケット4a,4bの内側に形成されていて、排水口9、水供給口10に通じている。また、整流筒6a,6bには、原水の流れを分散させて排出させるために、多数の整流孔8a、8bが設けられている。この整流孔8a、8bは、整流筒のほぼ全面にわたって所定間隔で均一に配置されているのでもよいが、図3、図4、図12、図21に示すように、側面の水出入開口部(排水口9、水供給口10)の近傍部分には整流孔を設けず、他の部分に所定間隔で均一に整流孔を配置することが好ましい。
次に、図1におけるX−X矢視断面を図3に示し、整流筒6aを模式的に描いた斜視図を図4、図12、図21に示す。この整流筒6aにおいて、排水口9に対面する部分には整流孔8aを設けてないので、この部分では水が通過できない閉塞された状態になっている。
ここで、ケース本体3、ソケット4a、4b、キャップ5a、5bおよび整流筒6a,6bの材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂や、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、4フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・4フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ポリ3フッ化塩化エチレン(PCTFE)、エチレン・3フッ化塩化エチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素系樹脂、そして、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩素系樹脂、さらに、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、ポリフェニルエーテル樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合系樹脂(ABS)、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂(AS)、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂などの樹脂が、単独または混合して用いられる。また、樹脂以外では、アルミニウム、ステンレス鋼などの金属を使用することができる。さらに、樹脂と金属の複合体や、ガラス繊維強化樹脂、炭素繊維強化樹脂などの複合材料を使用してもよい。また、ケース本体3、ソケット4a、4b、キャップ5a、5bおよび整流筒6a,6bは同一の材質でもよいし、また、それぞれ異なる材質でもよい。
次に、上記した装置構成からなる中空糸膜モジュールで、外圧式によって原水のろ過処理を行う場合を、以下に説明する。
原水は、モジュールの下部に位置する水供給口10又は底部通水口12から供給される。下部側面の水供給口10から原水を供給すると、原水は、環状流路7bから整流筒6bの整流孔8bを通過して中空糸膜束2の外側域に入り、次いで中空糸膜の膜壁を透過して膜内部に浸入する。膜内部に侵入したろ過水は、中空糸膜の上端の開口端面からキャップ5a内に集められ、ろ過水出口11から取り出される。また、モジュール底部の底部通水口12から原水を供給した場合は、接着固定部13bに設けた貫通孔14を通過して中空糸膜束2の外側域に入り、前記同様に、中空糸膜の膜壁でろ過され、中空糸膜内部、キャップ5a内部を通過し、ろ過水出口11から取り出される。
そして、全量ろ過式で原水をろ過処理する場合には排水口9が閉であるので、原水が排水口9から排出されることはないが、クロスフロー式で原水をろ過処理する場合には、中空糸膜を透過しなかった残りの原水が、下流側の整流筒6aを通過し、環状流路7aを経て排水口9から排出される。また、このような中空糸膜モジュールでは、ろ過運転開始する前に、水供給口10または底部通水口12から原水を供給し、クロスフロー式で原水をろ過処理する時と同じように排水口9から原水を流出させることを行って、モジュール内のろ過域内に原水を充満させる。
ここで、整流筒の内面に溝も畝状突起も設けていない従来の中空糸膜モジュール装置を用いた場合、中空糸膜束2の外側域の原水が、整流筒6aの内側から整流孔8aを通過し、環状流路7aを経て排水口9から排出されるとき、単位時間あたりの排水量が多すぎると、整流筒6aの近傍内側に位置する中空糸膜が排水の流れに押され、整流孔8a付近に押さえつけられて整流孔8aの閉塞が生じ易い。
また、一定時間のろ過工程の終了後に中空糸膜を洗浄する際には、ろ過水または高圧空気をろ過水出口11からモジュール内に供給して中空糸膜を内側から外側へと流して膜面洗浄する逆流洗浄や、高圧空気を混入させた原水または高圧空気のみを水供給口12から供給し、モジュール内に蓄積した懸濁物質を排出させるエアスクラビングが行われる、この逆流洗浄とエアスクラビングとが同時に行われることもある。これら洗浄時にも、洗浄廃水や廃気が排水口9から流出されるので、上記した場合と同様に、中空糸膜が整流孔8a付近に押さえつけられて整流孔8aの閉塞が生じ易い。
ところが、本発明の中空糸膜モジュールでは、整流筒6aの内壁に、整流孔8a間を連通する溝16が設けられている。及び/又は、整流孔8a間に畝状突起17が設けられている。そして、この連通溝16や畝状突起17により整流孔の閉塞の問題を解消することができる。この連通溝16の形状や畝状突起17の形状について、以下に詳述する。
本発明の中空糸膜モジュールにおいて用いる整流筒6aの一実施態様を、図4(斜視図)、図12(斜視図)、図21(斜視図)に例示する。図4では、内側の面(内壁面61)に整流孔8aどうしを連通する溝16が設けられている。図12、図21では、内側の面(内壁面61)に畝状突起17が設けられている。
図4の整流筒の内側の面の一部分(符号Vの部分)を内側から見た部分拡大図を図5に示す。図5に示すように、整流筒6aの内側面においては、整流孔8a間を連通して延びる溝16が設けられている。このように整流孔8a間が溝で連通されていることにより、中空糸膜が排出される水や空気の流れに押されて、整流孔8a付近に押さえつけられても、連通溝16を通じて、排出する水や空気が他の整流孔8aへと流れて行って集められて排出されるため、圧力損失を抑制でき、運転動力の増大を抑えることができる。
図5の場合では、多数の整流孔8aが千鳥状に配置されているが、整流孔の配置は特に限定されるものではなく、図6に示すように、多数の整流孔8aが格子状に配置されていてもよい。また、すべての整流孔8aが連通溝16と連通している必要はないが、連通溝16は整流孔8aに連通していることが必要である。連通溝16と整流孔8aとの連通は、図4〜図8に示すように、連通溝16が整流孔8aを横切って長手方向に延びることによって連通することが好ましいが、連通溝16が整流孔の孔周のいずれかの位置で連通していれば、図示した以外の連通であってもよい。例えば、整流孔8aの配列方向の孔中心線と連通溝の溝幅中心線とが上下にずれていて、整流孔の上部のみで溝と連通している場合(図示なし)や、整流孔の下部のみで溝と連通している場合(図示なし)が挙げられる。
整流筒の内側の面に設けられた連通溝16は、その長手方向が中空糸膜の長手方向に対し交差する方向となるように設けられる。本発明において、中空糸膜の長手方向は、筒状ケース内に中空糸膜束が挿入され所定位置に設置されたときの中空糸膜束の長手方向を意味する。
中空糸膜の長手方向に対する連通溝16の長手方向の交差角度αは、図5や図6の場合のように略直角(略90度)とすることが、隣接する整流孔8aに達する距離を短くできるので好ましいが、図7や図8の場合の連通溝16のように、30度以上90度未満で中空糸膜の長手方向と交差するような斜め方向に延びていてもよい。
この連通溝16は、図示した連続的に延びる溝である他に、本発明の所望の効果を発揮できれば断続的に延びている溝でもよい。また、溝は図のように直線状に延びていればよいが、曲線状や折れ線状に延びていてもよい。曲線状や折れ線状に延びる場合は、殆どの部分において中空糸膜の長手方向に対し30度以上で交差していればよい。
また、図5〜7の場合のように、整流筒の内側の面に複数本の連通溝16が設けられていて、その複数本の連通溝の長手方向が互いに略平行であることが、溝本数を少なくできるので好ましいが、図8の場合のように、複数本の連通溝16の長手方向が互いに交差するように配置していてもよい。連通溝の長手方向が互いに交差する場合、それら溝の長手方向は、中空糸膜の長手方向に対して線対称でよい(図8の場合)が、線対称でなくてもよい。ただし、中空糸膜の長手方向に対する連通溝16の長手方向の交差角度αが小さ過ぎると、両方向が平行に近くなり、中空糸膜が連通溝内に落ち込みやすくなるので、中空糸膜の長手方向に対する交差角度αは30度以上とすることが好ましい。なお、その上限値は、直角で交差する場合の90度である。
連通溝16の幅は、図5〜8に示す場合のように、整流孔8aの孔直径と略等しくすることが、溝内での流動抵抗を小さくできるので特に好ましいが、整流孔の孔直径の50〜125%程度の溝幅とすればよい。
連通溝16の断面形状を例示するために、図5におけるZ−Z矢視断面図を、図9〜図11に示す。図9〜図11において、整流孔8aは、整流筒の内壁面61から外壁面62へと通ずる柱状の孔であり、この整流孔8aに連通して溝16が設けられている。連通溝16の断面形状としては、図9のように矩形、図10のようにV字形、図11のようにV字形が複数繋がった溝形状が例示される。その他、半円状、台形状等の溝形状でも問題はなく、水が流れることができればどのような溝形状でもよい。また、溝断面形状の角部分がゆるやかになるように加工されていてもよい。また、図11のように、1本の溝16の中に複数の溝形状が形成されている場合は、溝形状と溝形状との間は鋭利な形状にせず、図11のように先端を台形状に削ったり、その他円形状に削ったりする方が、中空糸膜の傷付きが防止されるので好ましい。
連通溝16の深さは、深いほど溝内での水流動抵抗が小さくなるので好ましいが、あまり深くし過ぎると整流筒6a自体の強度が弱くなるため、整流筒6aの厚さの1/2以下の深さであることが好ましい。また、溝内での水の流れを確保するためには、溝の深さは、整流筒6aの厚さの10%以上であることが好ましい。
さらに、本発明の中空糸膜モジュールにおいて用いる整流筒6aは、前記した連通溝16の代わりに、あるいは、連通溝16の他に、整流筒6aの内側の面(内壁面61)に畝状突起17が設けられているのでもよい。この畝状突起を設ける場合について図12〜図21に沿って以下に詳述する。なお、図12(整流筒の斜視図)は、連通溝16の代わりに、整流孔と整流孔との間を横方向に延びる畝状突起17が設けられていること以外は図4に示す整流筒と基本的に同一である。また、図21(整流筒の斜視図)は、畝状突起の位置や長さが異なる以外は、図12に示す整流筒と基本的に同一である。この畝状突起17は、突起部が畝のように連続して延びているものであるが、本発明の所望の効果を発揮できれば、図21のように断続的に延びている畝状でもよい。また、畝は図のように直線状に延びていればよいが、曲線状や折れ線状に延びていてもよい。なお、曲線状や折れ線状に延びる場合は、殆どの部分において中空糸膜の長手方向に対し30度以上で交差していればよい
畝状突起17を設けた整流筒6aの内側の面の一部分(図12の符号VIの部分)を内側から見た部分拡大図を、図13に示す。図13の場合では、整流筒6aの内側面の整流孔8a位置を横方向に結ぶ線と線との間の位置に、横方向に連続して延びる畝状突起17が設けられている。このような畝状突起17が設けられていることにより、中空糸膜が排出される水や空気の流れに押され、整流孔8a付近に押さえつけられても、畝状突起17に支えられて整流孔8a内への落込みや密着が防止される。この結果、整流孔8aへの水の流路が確保され、圧力損失を抑制でき、運転動力の増大を抑えることができる。
また、畝状突起17は、図14に示すように、整流孔8a位置を横方向に結ぶ線上の、整流孔8以外の部分に設けられていてもよい。この場合は、畝状突起17が整流孔8aで分割されつつ横方向に延びているが、整流孔8aの孔全周が畝状突起17で囲まれないような幅とする。
多数の整流孔8aが千鳥状あるいは格子状に配置されている場合、図13や図15に示すように、畝状突起17を、整流孔8a位置を横方向に結ぶ線と線との間の位置に、横方向に連続して延びる線上に設けることが好ましい。この場合、図13や図15の場合のように、整流孔8aの上端、下端が、それぞれ畝状突起17の下端、上端と接するような畝状突起の幅としてもよいし、また、図16の場合のように接しない畝状突起の幅としてもよい。また、畝状突起17は整流筒6aの周方向(横方向)に複数に分割されて断続的に延びる線状でもよい。
整流筒の内側の面に設けられた畝状突起17は、その長手方向が中空糸膜の長手方向に対し交差する方向となるように設けられる。中空糸膜の長手方向に対する畝状突起17の交差角度αは、図13〜図15の場合のように略直角(略90度)とすることが好ましいが、図16や図17の場合のように、30度以上90度未満で中空糸膜の長手方向と交差するような斜め方向に延びていてもよい。
また、図13〜図16の場合のように、整流筒の内側の面に複数本の畝状突起が設けられていて、その複数本の畝状突起の長手方向が互いに略平行であることが、畝状突起の本数を少なくできるので好ましいが、図17の場合のように、複数本の畝状突起の長手方向が互いに交差するように配置していてもよい。その畝状突起の長手方向が互いに交差する場合、それら畝状突起の長手方向は、中空糸膜の長手方向に対して線対称でよい(図17)が、線対称でなくてもよい。ただし、中空糸膜の長手方向に対する畝状突起の長手方向の交差角度αが小さ過ぎると、両方向が平行に近くなり、中空糸膜が畝状突起17同士の間の凹み部分に落ち込みやすくなるので、中空糸膜の長手方向に対する交差角度αは30度以上とすることが好ましい。なお、その上限値は、直角で交差する場合の90度である。
畝状突起17における突起断面形状が図18や図19の場合のように台形や矩形である場合、その突起上面の幅は、細いほど整流孔8aへの流路が確保され、圧力損失や運転動力の増大を抑えることができるので好ましいが、あまり細くし過ぎると、中空糸膜が傷つきやすくなるため、幅1mm以上であることが好ましい。
畝状突起17の突起断面形状を例示するために、図15におけるA−A矢視断面図を図18〜図20に示す。図18〜図20において、整流孔8aは、整流筒の内壁面61から外壁面62へと通ずる柱状の孔であり、この整流孔8a同士の間に畝状突起17が設けられている。畝状突起17の断面形状としては、図18のように台形、図19のように矩形、図20のように半円形が例示され、どのような形状でもよい。また、中空糸膜の傷つき防止のために、突起の外形には、角がないか、或いは、角部分がゆるやかになるように加工されていることが好ましい。その他、整流孔8a同士の間に複数本の突起17が設けられていてもよい。
畝状突起17の高さは、高いほど整流孔8aへの水流路が確保され易く、圧力損失や運転動力の増大を抑えることができるので好ましいが、あまり高くし過ぎると中空糸膜が大きく屈曲して傷つきやすくなり、また、突起17の強度が弱くなり易いので好ましくない。一般的に、突起の高さは、1〜10mmの範囲であることが好ましい。
複数本の畝状突起が略平行に配置されている場合、畝状突起同士の間隔は、整流孔の孔直径の50〜125%であることが好ましい。
上記した実施形態では、整流筒の内壁面61に、整流孔間を連通する溝16を設けた場合、および、整流筒の内壁面61に、畝状突起17を設けた場合に分けて詳述したが、もちろん、連通溝16と畝状突起17との両方が整流筒の内壁面に設けられていてもよい(図示なし)。
また上記した実施形態では、整流孔8a、8bの孔形状を円形の柱状としたが、その孔形状は任意に採用でき、三角形、四角形、六角形などの多角形、楕円形、扇型、星形などの断面の柱状でもかまわない。整流孔の孔径を、中空糸膜の長手方向と平行な方向で測定した孔径であって最長の孔径であると表した場合、整流孔の孔径は1〜10mmの範囲であることが好ましい。孔径が小さすぎると、圧損が大きくなりすぎるし、また、必要な排出量を確保するために孔の数を多くする必要があり孔加工が難しくなるなどの問題がある。逆に孔径が大きすぎると、中空糸膜が整流孔から環状流路側へと押し出されるように流されて屈曲し、中空糸膜の損傷が生じ易いという問題がある。
整流筒内における中空糸膜の充填率は、25〜70%程度とすればよい。この充填率は、整流筒内の最小内径部の横断面において、整流筒の内面積に対する中空糸膜占有面積の割合をパーセント表示したものである。ここで、中空糸膜占有面積は、中空糸膜内の中空が充実であると仮定した場合の中空糸膜の横断面外形で囲まれる面積を、全ての中空糸膜についての総和とした値である。この充填率を高くするほどろ過膜面積を多くすることができる。また、本発明を適用すると、充填率を高くしても、排水時における中空糸膜による整流孔の閉塞を防止することができる。
また、上記した実施形態では、筒状ケース上部側面の排水口9の内側近傍に設けた整流筒6aについて説明したが、筒状ケース下部側面に設けられた水供給口10が、逆流洗浄時や排水時において水や空気の排出口として使用される場合には、前記した上部側面の排水口9から水や空気を排出する時の整流筒6aの場合と同様に、排出される水で中空糸膜が押しつけられて整流孔が閉塞される現象が生じる。従って、下部側面の水供給口10側の内側近傍に設けた整流筒6bにも、その内壁面に、上記したと同様の連通溝や畝状突起を設けることが好ましい。下部側の整流筒6bの内壁面に連通溝や畝状突起が設けられていると、膜洗浄時などに水供給口10からモジュール内の水を排出させる時において、中空糸膜による整流孔の閉塞を防止し、圧損や運転動力の増大を回避することができる。
また、上記した実施形態では、多数本の中空糸膜をストレート状のままで束ねて両端部を樹脂で接着固定した中空糸膜束を筒状ケース内に挿入して配置する態様について説明したが、多数本の中空糸膜を束ねた後、U字状に曲げた上で、端部を樹脂で接着固定した中空糸膜束を筒状ケース内に挿入して固定する中空糸膜モジュールに本発明を適用してもよい。さらに、中空糸膜束を構成部材としてカートリッジ化した中空糸膜カートリッジを、モジュールのハウジング内に挿入して固定するタイプ、いわゆるカートリッジ型の中空糸膜モジュールに適用してもよい。
なお、図1に示す中空糸膜モジュールを内圧式によってろ過処理する場合には、水は、前記した外圧式の場合とは逆方向に流れる。即ち、符号11の開口部が原水供給口となり、符号9や符号10の開口部がろ過水出口となる。この際、符号12の開口部は閉塞される。
<実施例1>
溝付き整流筒を用いて、図1に示す構造の中空糸膜モジュール(ろ過膜面積72m)を作製した。この際、内径0.9mm、外径1.5mmの中空糸膜を用い、膜本数9,000本の中空糸膜束を筒状ケース内に配置した。
また、溝付き整流筒の形状は、厚さ3mmの樹脂板からなる筒状体(高さ150mm、最小内径180mm)の板面に、直径5mmの円形の整流孔8aが350個、図5に示すような千鳥状に設けられた孔開き筒状体であって、内壁面に連通溝が設けられたものである。ここで、整流孔8aのピッチは、中空糸膜の長手方向と平行な方向には10mm、垂直な方向には15mmとした。内壁面の連通溝は、図5に示すように、整流孔8aを横切って横方向に延びる溝であり、中空糸膜の長手方向に対する交差角度を直角とした。また、連通溝の深さは1mm、溝の幅は5mm、断面形状は図9に示すように矩形とした。このような形状の溝付き整流筒をポリ塩化ビニル樹脂の射出成形により作製した。
この溝付き整流筒を排水口9側の整流筒16aとして取り付けた。さらに、水供給口10側の整流筒16bにも、同じ構造の溝付き整流筒を取り付けた。ここで、整流筒内における中空糸膜の充填率は62.5%であった。
この中空糸膜モジュールを用いてろ過運転試験を行った。まず、原水として琵琶湖湖水をポンプで水供給口10から供給し30分間の全量ろ過を行った。次に、ろ過水出口11からろ過水300L/minを供給して逆流洗浄を行い、排水口9から逆流洗浄水を流出させた。この逆流洗浄を行うとき、ろ過水出口11にろ過水を供給するために必要な圧力は20kPaであった。
上記と同じ中空糸膜モジュールを用いて別のろ過運転試験を行った。まず、原水として琵琶湖湖水をポンプで供給口10から供給し30分間全量ろ過を行った。次に、ろ過水出口11からろ過水300L/minを供給して逆流洗浄を行うと同時に底部通水口12から高圧空気200L/minを供給してエアスクラビングを行い、排水口9から逆流洗浄水と空気とを流出させた。この洗浄を行うとき、ろ過水出口11にろ過水を供給するために必要な圧力は40kPaであった。
<実施例2>
実施例1において用いた整流筒において、溝の断面形状を、図10に示すように深さ1mm、幅5mmのV字型となるように変更した。この溝付け整流筒を実施例1の場合と同様に取り付けて中空糸膜モジュールを作製した。
この中空糸膜モジュールを用いて、実施例1と同じ条件でろ過運転試験を実施した。その結果、逆流洗浄を実施したときのろ過水出口11における圧力は15kPaであった。また、逆流洗浄とエアスクラビングを同時に実施したときのろ過水出口11における圧力は30kPaであった。
<実施例3>
実施例1において用いた整流筒において、溝の断面形状を、図11に示すように、深さ1mm、幅1.7mmのV字型が1つの溝に対し3本形成され、V字とV字の間の山が0.3mm削られた台形状となるような形状(V繋ぎ形という)に変更した。この溝付け整流筒を実施例1の場合と同様に取り付けて中空糸膜モジュールを作製した。
この中空糸膜モジュールを用いて、実施例1と同じ条件でろ過運転試験を実施した。その結果、逆流洗浄を実施したときのろ過水出口11における圧力は10kPaであった。また、逆流洗浄とエアスクラビングを同時に実施したときのろ過水出口11における圧力は20kPaであった。
<実施例4>
実施例1において用いた整流筒において、溝16の長手方向を、図7に示すように斜め方向となるように変更した。このときの中空糸膜の長手方向に対する溝16の交差角度は37度であった。この溝付け整流筒を実施例1の場合と同様に中空糸膜モジュールに取り付けて、中空糸膜モジュールを作製した。
この中空糸膜モジュールを用いて、実施例1と同じ条件でろ過運転試験を実施した。その結果、逆流洗浄を実施したときのろ過水出口11における圧力は25kPaであった。また、逆流洗浄とエアスクラビングを同時に実施したときのろ過水出口11における圧力は50kPaであった。
<実施例5>
整流筒として、畝状突起付き整流筒を用いた以外は、実施例1の場合と同じ構造の中空糸膜モジュールを作製した。
畝状突起付き整流筒の形状は、厚さ3mmの樹脂板からなる筒状体(高さ150mm、最小内径180mm)の板面に、直径5mmの円形の整流孔8aが350個、図13に示すような千鳥状に設けられた孔開き筒状体であって、内壁面に畝状突起が設けられたものである。ここで、整流孔8aのピッチは、中空糸膜の長手方向と平行な方向には10mm、垂直な方向には15mmとした。内壁面には、図13に示すように、中空糸膜の長手方向に対する交差角度が直角となる方向に連続して延びる畝状突起17を設けた。この畝状突起の高さは2mm、突起の幅は2mm、断面形状は図18に示すように上底が1mmの台形とした。このような形状の畝状突起付き整流筒をポリ塩化ビニル樹脂の射出成形により作製した。
この畝状突起付け整流筒を実施例1の場合と同様に、排水口9側の整流筒16aとして取り付け、さらに水供給口10側の整流筒16bとして取り付けて中空糸膜モジュール(整流筒内における中空糸膜の充填率が62.5%である)を作製した。
この中空糸膜モジュールを用いて、実施例1と同じ条件でろ過運転試験を実施した。その結果、逆流洗浄を実施したときのろ過水出口11における圧力は10kPaであった。また、逆流洗浄とエアスクラビングを同時に実施したときのろ過水出口11における圧力は20kPaであった。
<実施例6>
実施例5において用いた畝状突起付き整流筒において、畝状突起の断面形状を、図19に示すように高さ2mm、幅2mmの矩形となるように変更した。この畝状突起付け整流筒を実施例1の場合と同様に取り付けて中空糸膜モジュールを作製した。
この中空糸膜モジュールを用いて、実施例1と同じ条件でろ過運転試験を実施した。その結果、逆流洗浄を実施したときのろ過水出口11における圧力は15kPaであった。また、逆流洗浄とエアスクラビングを同時に実施したときのろ過水出口11における圧力は30kPaであった。
<実施例7>
実施例5において用いた畝状突起付き整流筒において、畝状突起の断面形状を、図20に示すように高さ1mm、幅2mmの半円状となるように変更した。この畝状突起付け整流筒を実施例1の場合と同様に取り付けて中空糸膜モジュールを作製した。
この中空糸膜モジュールを用いて、実施例1と同じ条件でろ過運転試験を実施した。その結果、逆流洗浄を実施したときのろ過水出口11における圧力は20kPaであった。また、逆流洗浄とエアスクラビングを同時に実施したときのろ過水出口11における圧力は40kPaであった。
<実施例8>
実施例5において用いた畝状突起付き整流筒において、畝状突起17の長手方向を、図16に示すように斜め方向となるように変更した。このときの中空糸膜の長手方向に対する畝状突起17の交差角度は37度であった。この畝状突起付け整流筒を実施例1の場合と同様に取り付けて中空糸膜モジュールを作製した。
この中空糸膜モジュールを用いて、実施例1と同じ条件でろ過運転試験を実施した。その結果、逆流洗浄を実施したときのろ過水出口11における圧力は15kPaであった。また、逆流洗浄とエアスクラビングを同時に実施したときのろ過水出口11における圧力は30kPaであった。
<比較例>
整流筒として、整流筒の内壁面に溝も畝状突起も設けなかった以外は前記実施例と同じ形状の整流筒を作製した。この整流筒を実施例1の場合と同様に取り付けて中空糸膜モジュールを作製した。
この中空糸膜モジュールを用いて、実施例1と同じ条件でろ過運転試験を実施した。その結果、逆流洗浄を実施したときのろ過水出口11における圧力は150kPaまで上昇し、ポンプにも高負荷がかかった。また、逆流洗浄とエアスクラビングを同時に実施したときのろ過水出口11における圧力は200kPaまで上昇し、ポンプにも高負荷がかかった。
Figure 0005262111
本発明の中空糸膜モジュールは、河川水や湖水等の淡水をろ過して上水を製造する上水用途に好適に用いられる。その他に、下水をろ過処理する下水用途や、産業用水を製造する産業用水用途などにも適用することができる。また、その他における水ろ過や液体ろ過にも適用することができる。

Claims (12)

  1. 多数本の中空糸膜からなる中空糸膜束が、水出入開口部を側面に配した筒状ケース内に配置され、かつ、中空糸膜束の端部が筒状ケースの側面の水出入開口部の位置よりも筒状ケース軸方向に外側で接着固定されてなる中空糸膜モジュールにおいて、整流孔を設けた整流筒が、筒状ケースの側面の水出入開口部の内方で中空糸膜束の外周を囲むように配設され、かつ、整流筒の内側の面に、整流孔間を連通する溝が設けられていることを特徴とする中空糸膜モジュール。
  2. 多数本の中空糸膜からなる中空糸膜束が、水出入開口部を側面に配した筒状ケース内に配置され、かつ、中空糸膜束の端部が筒状ケースの側面の水出入開口部の位置よりも筒状ケース軸方向に外側で接着固定されてなる中空糸膜モジュールにおいて、整流孔を設けた整流筒が、筒状ケースの側面の水出入開口部の内方で中空糸膜束の外周を囲むように配設され、かつ、整流筒の内側の面に畝状突起が設けられていることを特徴とする中空糸膜モジュール。
  3. 整流筒の内側の面に設けられた溝の長手方向又は畝状突起の長手方向が、中空糸膜の長手方向に対し交差する方向であることを特徴とする請求項1又は2に記載の中空糸膜モジュール。
  4. 整流筒の内側の面に、中空糸膜の長手方向に対し交差する溝とともに、中空糸膜の長手方向に対し交差する畝状突起が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の中空糸膜モジュール。
  5. 整流筒の内側の面に溝及び/又は畝状突起が複数本設けられ、かつ、溝及び/又は畝状突起が互いに平行な長手方向をもつことを特徴とする請求項1又は2に記載の中空糸膜モジュール。
  6. 整流筒の内側の面に溝及び/又は畝状突起が複数本設けられ、かつ、溝及び/又は畝状突起の少なくとも一部が、整流筒の内側の面において互いに交差していることを特徴とする請求項1又は2に記載の中空糸膜モジュール。
  7. 整流筒の内側の面に設けられた溝の長手方向と中空糸膜の長手方向との交差角度、及び/又は、整流筒の内側の面に設けられた畝状突起の長手方向と中空糸膜の長手方向との交差角度が、それぞれ30度以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の中空糸膜モジュール。
  8. 整流筒の内側の面に設けられた溝の幅が、整流孔の孔直径の50〜125%であり、溝の深さが整流筒面の厚さの10〜50%であることを特徴とする請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
  9. 整流筒の内側の面に設けられた畝状突起は、畝状突起同士の間隔が整流孔の孔直径の50〜125%であり、畝状突起の高さが1〜10mmであることを特徴とする請求項2に記載の中空糸膜モジュール。
  10. 整流筒に設けられた整流孔の孔直径が1〜10mmであり、かつ、中空糸膜の充填率が25〜70%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の中空糸膜モジュール。
  11. 筒状ケースの側面に水出入開口部として水排出用開口部が配設され、かつ、水排出開口部の内方で中空糸膜束の外周を囲むように整流筒が配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の中空糸膜モジュール。
  12. 筒状ケースの側面に水出入開口部として水排出用開口部と水供給用開口部とが配設され、かつ、水排出用開口部の内方で中空糸膜束の外周を囲むように整流筒が配設されるとともに、水供給用開口部の内方で中空糸膜束の外周を囲むように整流筒が配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の中空糸膜モジュール。
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