JP5261732B2 - シアル酸含有オリゴ糖の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、シアル酸含有オリゴ糖類を含む乳または乳製品から、純度の高いシアル酸含有オリゴ糖を、大量生産に向いた簡便な方法で、かつ高回収率で得ることができる、シアル酸含有オリゴ糖の製造方法に関する。
哺乳類のミルク由来オリゴ糖には、ノイラミン酸のN−アセチル誘導体をオリゴ糖鎖の非還元末端に有するシアル酸含有オリゴ糖が含まれる。シアル酸含有オリゴ糖はタンパク質と結合した糖タンパク質、セラミドと結合したガングリオシド、あるいは遊離型のシアル酸含有オリゴ糖分子の形態で乳中に存在する。これらシアル酸含有化合物のうち遊離型のシアル酸含有オリゴ糖は、とくに分娩後の初乳に高濃度で含まれる。しかし、シアル酸含有オリゴ糖が高濃度で含まれている初乳であっても、シアル酸含有オリゴ糖の含有率はウシ初乳において0.1%程度と推測されている。(非特許文献1)
シアル酸含有オリゴ糖のもつ機能性としては、細菌やウィルスなどの感染防御に関する機能、ビフィズス菌増殖因子として腸内細菌叢を改善する機能、および副作用の少ない抗炎症機能などが報告されている。そこで、安全性に優れた薬剤あるいは食品添加物として、機能性の探索と有効利用が期待されている。これら乳由来シアル酸含有オリゴ糖類には多数の分子種が報告されており、代表的なものとしてはシアリルラクトースやシアリルラクトサミンが挙げられる。ウシやヒツジといった家畜の種類、および分娩後の初乳と常乳では、シアル酸含有オリゴ糖の成分組成と含量は大きく変動する。
記シアル酸含有オリゴ糖がもつ機能性を利用する場合、シアル酸含有オリゴ糖単品(シアル酸含有オリゴ糖含有率ほぼ100%)、あるいは、シアル酸含有オリゴ糖含有率の高い組成物(例えば、シアル酸含有オリゴ糖含有率約80%以上)の高い純度を有するシアル酸含有オリゴ糖が、比較的安価で、大量に提供されることが望まれる。
乳または乳製品を原料としてシアル酸含有オリゴ糖を調製する従来法としては、以下の方法が挙げられる。
陰イオン交換クロマトグラフィーに吸着させてギ酸濃度勾配により溶出させる方法(特許文献1)、
擬似移動床式陽イオン交換クロマトグラフィーを制御し、脱塩水を用いて溶離させる方法(特許文献2)、
原料溶液中のラクトン体を予め開環処理して分離し、ラクトン化させて陰イオン交換クロマトグラフィーの非吸着画分を採取する方法(特許文献3)、
乳糖を晶析除去することによって製造品の純度を高める方法(特許文献4)、
活性炭クロマトグラフィーに吸着させてエタノール濃度勾配により溶出させる方法(特許文献5)
また、乳を、クロロホルム・メタノール混液を用いて脱脂・除タンパク後にメタノール層を採取し、ゲルろ過、陰イオン交換、ゲルろ過の順にカラムクロマトグラフィーを行うことで、シアル酸含有オリゴ糖を分取する方法(非特許文献2)が知られている。
また、シアル酸含有オリゴ糖を分取する方法ではなく、高純度のシアル酸含有オリゴ糖を製造する方法を開示するものではないが、ヤギ乳由来のスキムミルクに分子量50000でカットオフする限外ろ過を行い、得られた透過物を分子量1000でカットオフする限外ろ過で濃縮し、高pH条件下の陰イオン交換クロマトグラフィーを行って得られた分画にシアル酸含有オリゴ糖が含まれることを記載した文献がある(非特許文献3)。
日本特許第2802654号公報 日本特許第3368389号公報 日本特開2001−213894号公報 日本特開2001−240599号公報 日本特開2005−8584号公報 J. Dairy Sci.(2003) 86:1315-1320 Comp. Biochem. Physiol. A (2003) 135, 549-563. International Dairy Journal (2006) 16, 173-181.
シアル酸含有オリゴ糖を食品や医薬品、または飼料添加物として利用しようとする際には、予め細胞試験や動物実験によって製造品の機能性、効能、および安全性などを検討する。したがって、製造品の純度と生産量の確保が必要である。上記従来法に示されるように近年、乳または乳製品を原料としたシアル酸含有オリゴ糖抽出法の開発・改良、あるいは化学合成による製造といった、種々の試みが行われてきた。しかし、上記従来法は、これらの要件を充分に満たす方法とは云えなかった。これら従来法によるシアル酸含有オリゴ糖の調製技術は、製造品の純度、回収率、生産量、あるいは製造コストと価格面に難がある。乳または乳製品からシアル酸含有オリゴ糖を分離して、比較的高純度のシアル酸含有オリゴ糖を製造する場合、特にシアル酸含有オリゴ糖が高濃度に含まれる初乳を原料に使用する場合には、常乳に比べて豊富に含まれる免疫グロブリンなどのタンパク質、ペプチド類、およびビタミン類などの混入を防ぎ、製造品の純度を確保することが課題となる。しかし、従来法では製造品の純度を向上させるとシアル酸含有オリゴ糖の損失は避けられず、純度と収量の両立は困難であった。
このように、高い純度を有する遊離型のシアル酸含有オリゴ糖が得られることが望まれている。しかし、上記従来法の内、比較的高純度のシアル酸含有オリゴ糖を提供したことを記載しているのは、特許文献1のみである。
特許文献1に記載された実施例では、TBA法により示されたシアル酸含有オリゴ糖の純度は95.6%である。しかし、特許文献1には、上記純度のシアル酸含有オリゴ糖の回収率は明記されていない。特許文献1に記載の方法は、複雑な分離操作を必要とすることから、回収率は相当に低いものと推察される。
特許文献3に記載の方法では、ラクトン化したシアル酸含有オリゴ糖を77〜99%の純度で得られると、特許文献3には記載されている。しかし、特許文献3に記載の方法は、シアル酸含有オリゴ糖を環状のラクトン体とし、ついで生成物を薄層クロマトグラフィーで分離するものであり、構造上ラクトン体を形成しない6’−シアリルラクトースなどの純度および回収率についての記載はない。
また、特許文献4には、乳糖を晶析除去する方法が記載されている。この方法では、晶析後にゲルろ過された酸性オリゴ糖画分はシアル酸/ヘキソースの値が1.31である。シアル酸含有オリゴ糖から乳糖を除去するとシアル酸/ヘキソースの値は重量比1に近づくことが知られているので、上記1.31という数値は高く、糖タンパク質および糖ペプチドに結合したシアル酸の混入が疑われ、高純度のシアル酸含有オリゴ糖は得られていない。
さらに、特許文献5には、活性炭クロマトグラフィー法で得られた製造品のシアル酸/ヘキソースの重量比が0.5〜0.96であるとの記載があるが、シアル酸とヘキソース以外の夾雑物混入量は記載がない。
同様に、非特許文献1に記載の方法においては、シアル酸含有オリゴ糖が分取されているが、得られたシアル酸含有オリゴ糖の純度については記載がない。
非特許文献2は、分子量50,000限外ろ過による膜分離(透過液)と分子量1,000限外ろ過による膜分離(不透過液)の二段階の限外ろ過によって得られた分画に含まれるオリゴ糖の構成成分を分析した結果を示す。非特許文献2は、この分画にシアル酸含有オリゴ糖が含まれることは示しているが、該当分子量域に相当する多量の乳由来タンパク質とペプチド類の混入が示されている。しかし、非特許文献2は、この分画のシアル酸含有オリゴ糖の純度やシアル酸含有オリゴ糖を高純度で得るための方策については(その必要性も含めて)記載はしていない。
このように、乳または乳製品を原料として、比較的高い純度のシアル酸含有オリゴ糖を、高い回収率で製造する方法は、これまでには知られていない。
純度および回収率を両立できる方法がないことに加えて、従来の方法は、比較的高い純度のシアル酸含有オリゴ糖を、大量に製造するにも不向きな方法であった。
シアル酸含有オリゴ糖の陰性荷電を担うシアル酸は非常に低いpKaを示すが、この特性に基づき陰イオン交換クロマトグラフィーに吸着させ、シアル酸含有オリゴ糖を酸または塩溶液で溶出させた方法が特許文献1、特許文献3、非特許文献1および非特許文献2で示された分離法の基本原理である。乳由来のシアル酸含有オリゴ糖には、シアル酸のカルボキシル基が環状構造の一部を形成し、電荷を帯びないラクトン体となった3’−シアリルラクトースラクトンなどのラクトン体が存在する。これら従来法の陰イオン交換体による分離では、ラクトン構造をもつシアル酸含有オリゴ糖は陰イオン交換体に吸着せずに、電荷を持たない他の夾雑物と共に非吸着成分として溶出される。したがって、シアル酸含有オリゴ糖のラクトン体と非ラクトン体を選択的に抽出する方法としては有用であるが、これらを成分別に分取し、陰イオンクロマトグラフィーに使用した酸または塩を除去する作業を行うとなれば、複雑な製造工程となるのは避けられない。それ故に、シアル酸含有オリゴ糖を含む乳原料からの収量、および分離の安定性と再現性を確保するには、製造工程における損失を防ぐ高度な制御装置の開発、あるいは作業の経験値などが求められてくる。また、特許文献4の乳糖を晶析除去して純度を高める方法は、乳糖結晶化に伴うシアル酸含有オリゴ糖の損失によって、乳原料からの回収率に難があった。
これらの従来法とは異なり、擬似移動床式クロマトグラフィーに充填した陽イオン交換樹脂とシアル酸含有オリゴ糖の陰性荷電を反発させ、脱塩水を溶離液として、シアル酸含有オリゴ糖を分離装置の制御によって溶出させた方法が、特許文献2である。この方法では、シアル酸含有オリゴ糖のラクトン体と非ラクトン体は非吸着画分に溶出されるが、擬似移動床クロマトグラフィーの稼働に高度な制御装置が必要となる。また、クロマトグラフィー充填剤として活性炭を使用し、エタノール濃度勾配で溶出させた特許文献5の方法は、活性炭クロマトグラフィーの連続運転に課題が残されていた。
そこで本発明の目的は、乳または乳製品を原料として、比較的高純度の遊離型のシアル酸含有オリゴ糖を、大量生産に向いた簡便な方法で、かつ高い回収率で製造できる方法を提供することである。
本発明は以下のとおりである。
[1](1)乳または乳製品から、少なくとも一部の脂質およびタンパク質を除去して、ミルクオリゴ糖を含む画分を調製する工程、
(2)前記ミルクオリゴ糖を含む画分を、約3000〜約5000の範囲にカットオフする分子量を有する限外ろ過膜を用いる限外ろ過に供して、透過液を得る工程、および
(3)前記透過液を、ゲルろ過クロマトグラフィーに供して、透過液としてシアル酸含有オリゴ糖を含有する液を得る工程
を含むシアル酸含有オリゴ糖の製造方法。
[2]乳または乳製品が初乳である[1]に記載の製造方法。
[3](2)の工程の後に、
(A)(2)で得た透過液を濃縮および/または冷却に付し、生成した沈殿物を除去して粗シアル酸含有オリゴ糖画分を得る工程、
をさらに有し、(3)の工程において、(A)で得られた粗シアル酸含有オリゴ糖画分を(2)の透過液の代わりにゲルろ過クロマトグラフィーに供する[1]または[2]に記載の製造方法。
[4](2)または(A)の工程の後に、
(B)(2)で得た透過液または(A)で得た粗シアル酸含有オリゴ糖画分を、約500〜約1000にカットオフする分子量を有する限外ろ過膜を用いる限外ろ過に供して、不透過液を得る工程、および
(C)前記不透過液を濃縮および/または冷却に付し、生成した沈澱物を除去してシアル酸含有オリゴ糖を含む濃縮液を得る工程、
をさらに有し、(3)の工程において、(C)で得られたシアル酸含有オリゴ糖を含む濃縮液を(2)の透過液の代わりにゲルろ過クロマトグラフィーに供する
[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5](3)の工程におけるゲルろ過クロマトグラフィーは、球状タンパク質の分画範囲が100〜7000Da、または球状タンパク質を基準とした排除限界が1×104〜2×104Daである、ゲルろ過担体を適用する[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[6](3)の工程で得られるシアル酸含有オリゴ糖を含有する液の高速液体クロマトグラフィーで示される純度(固形分当たり)が70%以上である、[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7](3)の工程で得られるシアル酸含有オリゴ糖を含有する液のシアル酸/ヘキソースの重量比が0.6以上である、[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8](3)の工程で得られるシアル酸含有オリゴ糖を含有する液を凍結して凍結物を得るか、または凍結乾燥して乾燥品を得る、[1]〜[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9](3)の工程の後に、
(4)(3)の工程でゲルろ過クロマトグラフィーの透過液として得られるシアル酸含有オリゴ糖を含有する液を濃縮および/または冷却し、生成した沈澱物を除去して、精製度をさらに高めたシアル酸含有オリゴ糖を含有する液を得る、[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[10](4)の工程で得られる、精製度をさらに高めたシアル酸含有オリゴ糖を含有する液の高速液体クロマトグラフィーで示される純度(固形分当たり)が80%以上である、[9]に記載の製造方法。
[11](4)の工程で得られる、精製度をさらに高めたシアル酸含有オリゴ糖を含有する液のシアル酸/ヘキソースの重量比が0.7以上である、[9]に記載の製造方法。
[12](4)の工程で得られる、精製度をさらに高めたシアル酸含有オリゴ糖を含有する液を凍結して凍結物を得るか、または凍結乾燥して乾燥品を得る、[9]〜[11]のいずれかに記載の製造方法。
本発明によるシアル酸含有オリゴ糖の製造方法は、乳または乳製品由来の遊離型のシアル酸含有オリゴ糖類を比較的高純度、かつ比較的高い回収率で製造することができる。さらに本発明の方法では、水を溶媒として使用し、限外ろ過およびゲルろ過といった汎用装置を使用するため、本発明の方法は、大量生産に向いた方法である。それ故、本発明は、安価で良質なシアル酸含有オリゴ糖の提供を可能とし、新規の薬品、食品添加物、飼料添加物、あるいは誘導体合成に寄与する技術である。
本発明のシアル酸含有オリゴ糖の製造方法は、少なくとも以下の(1)〜(3)の工程を含む。
(1)乳または乳製品から、少なくとも一部の脂質およびタンパク質を除去して、ミルクオリゴ糖を含む画分を調製する工程、
(2)前記ミルクオリゴ糖を含む画分を、約3000〜約5000の範囲にカットオフする分子量を有する限外ろ過膜を用いる限外ろ過に供して、透過液を得る工程、および
(3)前記透過液を、ゲルろ過クロマトグラフィーに供して、透過液としてシアル酸含有オリゴ糖を含有する液を得る工程
工程(1)
工程(1)では、乳または乳製品から、少なくとも一部の脂質およびタンパク質を除去して、ミルクオリゴ糖を含む画分を調製する。工程(1)は、乳から脂質およびタンパク質を粗分離する工程である。工程(1)で使用する乳または乳製品は、初乳であることが、シアル酸含有オリゴ糖の含有率が高いとう観点から好ましい。
初乳とは、一般に、哺乳動物の分娩直後からおよそ一週間後までの黄色い乳を指すが、シアル酸含有オリゴ糖は分娩後一回目の初乳に最も豊富に含まれることから、本発明においては、初乳のうちでも、とりわけ24〜28時間に産生される濃厚乳の使用が好ましい。但し、初乳以外の常乳または乳製品、例えば、常乳でも、シアル酸含有オリゴ糖を含有するものである限り、使用することができる。乳または乳製品は、ウシから得られるものが用いられるが、ヤギ等の乳または乳製品であっても使用できる。
工程(1)は、例えば、以下のように実施することができる。
ウシ初乳を高速遠心分離機あるいはクリームセパレータなどで処理し、クリーム層とスキムミルク層に分層させた後、シアル酸含有オリゴ糖が移行するスキムミルク層を分取する。遠心分離機を使用する際は、例えば、2℃〜10℃の冷条件下、3000〜10000×G程度の加速度で初乳を処理することが望ましい。また、クリームセパレータを用いて初乳を大量処理する際は、初乳の適度な希釈と加温により、濃厚な脂肪分を効率的に除去できる。例えば、初乳を蒸留水などで1.5倍ほどに希釈し、37℃〜42℃に加温した条件で初乳を連続的に処理、クリームとケセイン(カゼインが主成分の糊質)が除かれたホエーを分離する。得られたホエーは適宜冷却し、以後のエタノール抽出に供する。
上記工程で得られたスキムミルクまたはホエーに、例えば、終濃度60〜75%容量となるようにエタノールを添加し、例えば、2℃〜10℃の低温条件下で3時間以上撹拌する。この懸濁液を2℃〜10℃の冷条件下、例えば、3000〜10000×G程度の加速度で遠心分離し白色沈殿を除去、黄緑色の上清を得る。この際に、ろ紙などを用いて上清に浮遊する夾雑物を除去することが好ましいが、大量処理の場合はそのまま次の濃縮作業を行っても構わない。
一方、初乳からスキムミルクあるいはホエーを調製せずに、初乳に4倍量のクロロホルム・メタノール混合液(2:1、v/v)を加え、20分以上撹拌後に4000〜10000×G程度の加速度で遠心分離を行い、緑黄色のメタノール可溶層を採取することで、脱脂・除タンパクを行ってもよい。この直接的抽出法は簡便であるが、有機溶媒を使用する方法であるため、製造品の用途制限と作業の安全性確保に留意すべきである。
上記方法における遠心分離の最小加速度は、いずれも明瞭な上澄みが得られ、かつ沈殿が崩れない条件に設定すればよい。たとえば、最小加速度を15000×Gの加速度とすれば、より短時間の分離も可能である。そういった意味で最小加速度には明確な上限はない。しかし、揮発性溶媒を使用するという観点から、安全性を考慮すると、10000×Gを上限とすることが好ましい。
以上の初期抽出で得られたスキムミルクまたはホエーのエタノール抽出物、あるいはクロロホルム・メタノール抽出によるメタノール可溶層を、ロータリーエバポレーターや遠心濃縮機を用いて適宜濃縮する。およそ10倍程度まで濃縮された溶液中では、シアル酸含有オリゴ糖は初乳に由来する水分に溶解した状態となるが、濃縮作業の進行に伴って、タンパク質やペプチド類など夾雑物の一部は不溶性となる。この不溶化成分は濃縮液の遠心分離、またはビフネルロートを用いたろ紙や吸引式フィルターなどで除去する。これにより、乳または乳製品に含まれる大部分の脂質およびタンパク質を除去して、ミルクオリゴ糖を含む画分を調製することができる。
一般的に、分娩後搾乳1回目のウシ初乳に含まれる全固形分は約21〜25%であり、そのうちタンパク量は約13〜17%を占める。工程(1)に示すクリームセパレータを用いたホエーの分離においては、約半分のタンパク質はケセイン(カゼイン糊化物)として分離され、総タンパク量は初乳原料の約53%前後に低減する。このホエーに含まれるタンパク質は、上記エタノール沈殿および濃縮・ろ過に伴う不溶化沈殿により大部分が除去され、工程(1)で得られるミルクオリゴ糖画分の総タンパク量は、初乳原料の約0.27%となる。また、クロロホルム・メタノール抽出法を用いた際のメタノール層に占める総タンパク量は、初乳原料の約0.2%となる。
分離作業に伴うタンパク質含量の低下は、希釈や濃縮といった分離工程を伴うため試料容量に占める重量%では説明が難しい。しかし、初乳原料に含まれるタンパク質を100%として換算した場合は、クリームセパレータによる分離で約半量に減り、さらにエタノール抽出と濃縮沈殿によって、0.25%程度の含量となる。また、クロロホルム・メタノール抽出法による初乳の抽出工程を経た場合は、ミルクオリゴ糖画分の総タンパク量は、初乳原料に対して0.2%程度となる。ただし、クロロホルム・メタノール抽出を選択した際は、メタノール層を分取する際にどこまでぎりぎり取るか(タンパク質の多少の混入増加を承知でも、用途によってオリゴ糖の収量を優先する場合がある)によって、タンパク質の最終混入量は幅が大きくなる。総脂質については、水溶性のものが最大で約0.06%であることから、エタノール抽出法とクロロホルム・メタノール抽出法のいずれも、エバポレーター濃縮により水に置換し、不溶性物質を取り除く工程(1)を経ると、ミルクオリゴ糖画分にほとんど混入は生じない。
工程(2)
工程(2)は、工程(1)で得られたミルクオリゴ糖を含む画分を、約3000〜約5000の範囲にカットオフする分子量を有する限外ろ過膜を用いる限外ろ過に供して、限外ろ過の透過液を得る工程である。工程(2)は、ミルクオリゴ糖を含む画分に含まれる、シアル酸含有オリゴ糖より分子量の大きいタンパク質およびポリペプチドを除去する工程である。約3000〜約5000の範囲にカットオフする分子量を有する限外ろ過膜を用いることで、夾雑するタンパク質やペプチドを効率的に除去し、透過液にシアル酸含有オリゴ糖を含めることができる。限外ろ過膜のカットオフする分子量が、約5000を超えると、夾雑するタンパク質やペプチドの除去が不十分となり、最終的に目的とする高純度(例えば、80%以上)のシアル酸含有オリゴ糖を得ることは困難になる。また、カットオフする分子量が約3000未満の限外ろ過膜を用いると、ろ過すべき成分量が増大して、限外ろ過操作が困難になる傾向があり、さらに、カットオフする分子量が小さくなりすぎると、シアル酸含有オリゴ糖もカットオフされてしまう。このような観点から、上記範囲を採用する。但し、好ましくは、カットオフする分子量が約3000〜約4000の限外ろ過膜を用いることである。尚、本明細書において、カットオフする分子量の「約」は、当該分子量の約80%以上の標準物質が捕捉され、当該分子量の55〜90%の成分が実際に回収可能である限外ろ過膜を指す。
一般に、市販の限外ろ過膜(製品)に示されたカットオフ分子量は、当該分子量のさまざまな形状のタンパク質が、どれくらい保持されどれくらい微細孔を通り抜けるのか、細かく調べた結果ではない。限外ろ過のカットオフ分子量は、分子のサイズ(分子量)で示すのが一般的であるが、実際には、例えば目的分子が球状であるか鎖状であるかなど、分子の形状(立体構造)によっても、保持されるか透過されるかは大きく影響される。このようにカットオフ分子量はあくまで目安であり、上記のカットオフ分子量は、実施例に示したミリポア社の限外ろ過膜の製品案内を基準として算出したものである。
工程(2)では、具体的には、工程(1)で得られたミルクオリゴ糖を含む画分、例えば、ろ過によって清澄化された濃縮液を、分子量約5000〜約3000でカットオフする限外ろ過に供する。濃縮試料に夾雑するタンパク質とポリペプチドの混入を最小限に抑えるためには、カットオフする分子量は小さい方が好ましく、最も好ましくはカットオフする分子量が約3000の限外ろ過膜を使用することである。また、高分子成分による限外ろ過膜の微細孔の目詰まりを防止し、限外ろ過の処理を促進するために、濃縮される膜上の画分を適宜撹拌することが好ましい。さらに、この濃縮画分を蒸留水などで数回希釈するか、リザーバーを用いて循環透析を行うことで、シアル酸含有オリゴ糖の回収率を向上することもできる。限外ろ過装置は遠心式または加圧式のどちらを用いることもできる。また、大量の試料を処理する際は、窒素加圧式の撹拌可能な大型装置を使用することもできる。
本工程(2)によるタンパク質・ペプチド類の除去効果は、初乳原料に占める総タンパク量に対して約0.04%の低減にすぎない。しかしながら、限外ろ過を行わずに無処理とした場合は、工程(3)に示すゲルろ過精製において、この0.04%のタンパク質はシアル酸含有オリゴ糖画分のピークと共に溶出され、製造品の純度は大きく低下する。したがって、工程(2)における分画分子量約5000〜約3000の限外ろ過は本発明に必須の工程であり、好ましくは、分画分子量約3000〜4000の限外ろ過膜を使用することである。
工程(2)による約5000〜約3000の限外ろ過は、本発明による純度向上の鍵となる工程である。本発明で得られるウシ初乳由来シアル酸含有オリゴ糖類は、分子量およそ950のDSLが10%、およそ650程度のその他の分子種が90%を占める。しかしながら、これらのシアル酸含有オリゴ糖に対して、同程度以上の大きさの高分子夾雑物が5000〜3000カットオフの試料にどれくらい含まれるか、既存の定量法で正確に定量する手段はない。しかしながら、ゲルろ過におけるシアル酸含有オリゴ糖画分には、上記シアル酸含有オリゴ糖と同程度以上の大きさを持つ夾雑物が、シアル酸含有オリゴ糖と共に溶出されてくる。これはシアル酸含有オリゴ糖と乳糖の分離を主目的とした際の、ゲルの特性によるものである。
この点を図1および2に示す溶出曲線に基づいてさらに説明する。
図1には、工程(1)においてウシ初乳をクロロホルム・メタノール抽出し、限外ろ過を施さずにゲルろ過クロマトグラフィーを行った結果(クロマトグラム)を示す。図2には、工程(1)においてウシ初乳をクロロホルム・メタノール抽出し、それを工程(2)で、分子量3000でカットオフする限外ろ過を施してゲルろ過クロマトグラフィーを行った結果(クロマトグラム)を示す。
図1の溶出プロファイルでは、シアル酸含有オリゴ糖が溶出される画分に、BCA反応物として示されるタンパク質・ペプチド類が混入している様子が示されている。一方、限外ろ過を施した図2の溶出プロファイルでは、シアル酸含有オリゴ糖が溶出される画分に重複するBCA反応物(タンパク質・ペプチド類)のピークは、溶出時間が早い分子量が大きいものほど、大幅にカットオフされることが示されている。この結果は、限外ろ過の導入により、BCA反応物(タンパク質・ペプチド類)をシアル酸含有オリゴ糖から分離することができることを示す。
後述する実施例1および2において示す、図4〜6に示したBCA法反応物の溶出曲線は、ペプチド性の夾雑物溶出を反映したものである。図6に示す5000でカットオフした場合のBCA溶出曲線は、3000でカットオフした図4および図5のBCA溶出曲線に比べて、シアル酸含有オリゴ糖画分(分画番号10〜30)において、山が大きいことが分かる。ゲルろ過では最初に出てくる山ほど、成分の分子量が大きく、実際には分子量の小さい複数の物質が相互作用しつつ、見かけ上の巨大分子となって溶出される。これら限外ろ過によるタンパク質除去効果は最終製造物の純度に反映され、分子量5000のカットオフでタンパク性混入物は約14〜9%、分子量3000のカットオフでは約10〜7%の範囲となる。
尚、シアル酸含有オリゴ糖標品に含まれるシアル酸、ヘキソース、および標品中に夾雑するペプチド類の検出と定量は、それぞれ適切な標準物質を用い、常法に従って呈色反応を行えばよい。たとえば、シアル酸の検出定量は過ヨウ素酸レゾルシノール塩酸法、ヘキソースの検出定量はフェノール硫酸法、ペプチド類の検出定量はBCA法などが挙げられる。しかしながら、夾雑するペプチド類の比色定量は、低分子を検出しにくい方法や還元物質に影響されやすい方法など、定量法の特性を充分に考慮して方法と標準物質を選定すべきである。また、これらの検出定量と併せてシアル酸含有オリゴ糖標品の波長スキャンを行い、紫外吸収曲線と最大吸収波長を調べることが望ましい。ウシ初乳由来シアル酸含有オリゴ糖標品では、紫外領域の最大吸収は210nm近傍である。
工程(3)
工程(3)は、前記透過液を、ゲルろ過クロマトグラフィーに供して、透過液としてシアル酸含有オリゴ糖を含有する液を得る工程である。
但し、(2)の工程の後に、
(A)(2)で得た透過液を濃縮および/または冷却に付し、生成した沈殿物を除去して粗シアル酸含有オリゴ糖画分を得る工程、
をさらに有し、
(3)の工程において、(A)で得られた粗シアル酸含有オリゴ糖画分を(2)の透過液の代わりにゲルろ過クロマトグラフィーに供することが、原料に含まれるシアル酸含有オリゴ糖以外の夾雑物、特に、シアル酸含有オリゴ糖より高分子量の物質をより除去して、より精製度を挙げるという観点からは好ましい。
工程(A)
工程(A)は、(2)で得た透過液を濃縮および/または冷却に付し、生成した沈殿物を除去して粗シアル酸含有オリゴ糖画分を得る工程である。工程(A)は、(2)の透過液に含まれるシアル酸含有オリゴ糖以外の夾雑物をさらに除去するために行う工程である。工程(1)および(2)によって、原料に含まれるシアル酸含有オリゴ糖以外の夾雑物、特に、シアル酸含有オリゴ糖より高分子量の物質は相当量除去される。しかし、工程(1)および(2)を経た透過液には、依然として、シアル酸含有オリゴ糖以外の成分が90%以上含まれる。
工程(A)を経た段階におけるシアル酸含有オリゴ糖の含有量は、シアル酸やヘキソースの定量による成分含量推定や、HPLCのピーク面積による推定が事実上不可能なため、ゲルろ過後に得られたシアル酸含有オリゴ糖の収量から逆算して推定する。この推定によって求まる、工程(A)を経た段階におけるシアル酸含有オリゴ糖画分は、約3〜9%のシアル酸含有オリゴ糖を含む。シアル酸含有オリゴ糖以外の9割以上は夾雑物が占め、夾雑物の大部分は乳糖であり、約5%強がBCA反応性のペプチド類である。さらに、ミネラルやカロチノイドなども含まれることもある。
工程(A)では、具体的には、分子量約5000〜約3000でカットオフされた透過液を、ロータリーエバポレーターなどを用い、例えば、原料として用いた初乳の5〜30%容量、好ましくは5〜15%容量となるまで濃縮する。濃縮操作に伴い、夾雑物の一部は不溶性となり析出する。夾雑物をできるだけ除去するには、濃縮液を1〜2日ほど氷冷下で静置して冷却するとよい。濃縮および/または冷却後に遠心分離または汎用フィルターを用いて不溶化成分を除去、得られた黄色の清澄液を粗シアル酸含有オリゴ糖画分とする。
(2)または(A)の工程の後に、
(B)(2)で得た透過液または(A)で得た粗シアル酸含有オリゴ糖画分を、約500〜約1000にカットオフする分子量を有する限外ろ過膜を用いる限外ろ過に供して、不透過液を得る工程、および
(C)前記不透過液を濃縮および/または冷却に付し、生成した沈澱物を除去してシアル酸含有オリゴ糖を含む濃縮液を得る工程、
をさらに有し、(3)の工程において、(C)で得られた粗シアル酸含有オリゴ糖を含む濃縮液を(2)の透過液の代わりにゲルろ過クロマトグラフィーに供することもできる。
工程(B)
工程(B)は、(2)で得た透過液または工程(A)で得られたシアル酸含有オリゴ糖画分を、約500でカットオフする分子量を有する限外ろ過膜を用いる限外ろ過に供して、不透過液を得る工程である。工程(B)は、シアル酸含有オリゴ糖類を濃縮し、原料に由来する乳糖、ペプチド類、カロチノイド類、酸あるいは無機物などの低分子量成分の多くを透過除去する工程であり、上記工程(A)に追加して実施することが望ましい。しかしながら、最終製造品において、固形分換算で90%以上のシアル酸含有オリゴ糖純度を必要としない場合は、工程(B)および工程(C)を行わず、工程(A)から工程(3)のゲルろ過分画へ進むこともできる。
工程(B)においては、二段階目となる限外ろ過膜のカットオフする分子量が約1000を超えると、シアル酸含有オリゴ糖の一部も限外ろ過膜を透過してしまい、シアル酸含有オリゴ糖の回収率が低下する傾向がある。また、カットオフする分子量が約500未満の限外ろ過膜を用いると、上記低分子量成分の除去が不十分になり、最終的に目的とする高純度(例えば、80%以上)のシアル酸含有オリゴ糖を得ることは困難になる。このような観点から、上記範囲を採用するが、好ましくは、カットオフする分子量が約500〜約800の限外ろ過膜を用いることである。
また、夾雑物の透過と同時に、工程(B)において濃縮された粗シアル酸含有オリゴ糖画分には、不溶化して膜を透過できなくなった夾雑物が析出する。この不溶化夾雑物による作業効率の悪化を防ぐために、濃縮された膜上の画分を適宜撹拌することが好ましい。さらに、この濃縮画分を、蒸留水などを用いて希釈するか循環透析を行うと、シアル酸含有オリゴ糖の回収率は向上することから好ましい。なお、これらの操作によっていったん不溶化した夾雑物が、再び可溶化することはない。限外ろ過装置は遠心式または加圧式のどちらを用いることもできる。また、大量の試料を処理する際は、窒素加圧式の撹拌可能な大型装置を使用することもできる。
分子量500〜1000のカットオフを工程(B)として追加することで、分子量500〜1000以下の夾雑物を透過除去すると同時に、分子量3000(〜5000)〜500(〜1000)の夾雑物を濃縮効果によって不溶化析出させて、シアル酸含有オリゴ糖画分に重なって溶出されてくる夾雑物を除去することができる。この効果としては実施例に示すように、3000(〜5000)と500〜1000の二段階限外ろ過の組み合わせによって、最終製造品におけるタンパク性夾雑物の混入量は約5〜7%となり、HPLC純度検定のノイズで示される、タンパク成分以外の定量困難な成分も明らかに減少する。
上述の純度向上に加えて、分子量500〜1000で夾雑物をカットオフする効果としては、一回のゲルろ過に供する試料添加量が2.5倍以上に増やせること(およそ7割の乳糖が透過除去されるため、試料の粘性が大幅に低下する)、およびゲルろ過の処理時間を大幅に短縮できることが挙げられる(低分子夾雑物が溶出しきるまで待つことなく、乳糖溶出後ただちに次の試料を添加して連続分画することが可能である)。
工程(C)
工程(C)は、工程(B)で得られる粗シアル酸含有オリゴ糖画分を濃縮および/または冷却に付し、生成した沈澱物を除去してシアル酸含有オリゴ糖を含む濃縮液を得る工程である。工程(4)で得られる粗シアル酸含有オリゴ糖画分には、依然としてペプチド類等の夾雑物が含まれており、工程(C)は、これらの夾雑物を除去することが目的の工程である。
具体的には、工程(B)により分離された粗シアル酸含有オリゴ糖画分を、原料として使用した初乳の、例えば、0.1〜5%容量、好ましくは1〜3%容量となるよう、ロータリーエバポレーターなどで濃縮する。濃縮に伴い、シアル酸含有オリゴ糖画分には不溶化成分が生じるが、この夾雑物をできるだけ析出させるには、濃縮物を2℃〜10℃に冷却して静置するとよい。濃縮および/または冷却して生成した夾雑物を遠心分離または汎用フィルターを用いて除去し、工程(3)のゲルろ過クロマトグラフィーに供する試料とする。
すなわち、工程(2)が本発明の必須作業であるのに対し、工程(A)、工程(B)および工程(C)は追加して行うことが望ましい作業であり、最終製造品の純度を向上させ、かつ工程(3)における作業の連続性を向上させるための工程である。たとえば、シアル酸含有オリゴ糖を実験動物用の飼料添加物あるいは合成原料などのように最終製造品において80%以上の純度がとくに必要ない場合には、工程(A)、工程(B)および工程(C)は省略することができる。逆に、医薬品素材開発などを目的とした、感受性の高い細胞アッセイに使用するなど、より高い純度、より均質なロット供給が必要なオーダーでは、工程(A)、工程(B)および工程(C)を施し、そのうえで、工程(3)のゲルろ過に供することが好ましい。
工程(3)
工程(3)は、工程(2)で得られる透過液をゲルろ過クロマトグラフィーに供して、透過液としてシアル酸含有オリゴ糖を含有する液を得る工程である。あるいは、工程(2)で得られる透過液の代わりに、工程(A)で得られる粗シアル酸含有オリゴ糖画分または工程(C)で得られるシアル酸含有オリゴ糖を含む濃縮液をゲルろ過クロマトグラフィーに供して、透過液としてシアル酸含有オリゴ糖を含有する液を得る工程である。
工程(2)で得たシアル酸含有オリゴ糖を含む濃縮液のシアル酸含有オリゴ糖の純度は、固形分換算で約5〜10%である。工程(3)では、これらの純度をさらに約70〜85%まで引き上げることが目的である。
工程(A)で得たシアル酸含有オリゴ糖を含む濃縮液のシアル酸含有オリゴ糖の純度は、固形分換算で約7〜14%である。工程(3)では、これらの純度をさらに約80〜90%まで引き上げることが目的である。
工程(C)で得たシアル酸含有オリゴ糖を含む濃縮液のシアル酸含有オリゴ糖の純度は、固形分換算で約20〜30%である。工程(3)では、これらの純度をさらに約90〜95%まで引き上げることが目的である。
工程(3)のゲルろ過クロマトグラフィーは、例えば、以下のように実施することができる。ゲルろ過担体としては、製品仕様に示される球状タンパク質の分画範囲が100〜7000Daの範囲、または球状タンパク質を指標とした排除限界が1×104〜2×104Daと示される、ゲルろ過樹脂を用い、このゲルろ過樹脂を充填したカラムを使用する。ゲルろ過樹脂の具体例としては、トヨパールHW−40(東ソー、排除限界1×104Da)、バイオゲルP−2(バイオラッド、分画範囲100〜1800Da)、セファデックスG−10(GEヘルスケア、分画範囲700Da以下)、セファデックスG−15(GEヘルスケア、分画範囲1500Da以下)、セファデックスG−25(GEヘルスケア、分画範囲1000〜5000Da)、スーパーデックスペプチド(GEヘルスケア、分画範囲100〜7000Da、排除限界1×104Da)などを挙げることができる。カラムへの最大試料添加量は、例えば、樹脂容積の5%内とすることが好ましい。溶出液は、例えば、脱イオン水を使用することができる。但し、脱イオン水に限定されない。
工程(4)
(3)の工程の後に、
(4)(3)の工程でゲルろ過クロマトグラフィーの透過液として得られるシアル酸含有オリゴ糖を含有する液を濃縮および/または冷却し、生成した沈澱物を除去して、精製度をさらに高めたシアル酸含有オリゴ糖を得る工程を有することができる。工程(3)で得られるシアル酸含有オリゴ糖を含む画分には、依然としてペプチド類などの夾雑物が少量含まれており、工程(4)は、これらの夾雑物を除去することが目的である。
工程(4)では、具体的には、工程(3)において得られるシアル酸含有オリゴ糖を含有する液をエバポレーターなどで、例えば、約20倍に濃縮し、濃縮液を2℃〜10℃に冷却して数時間静置する。工程(3)で得られたシアル酸含有オリゴ糖画分に夾雑する総ペプチド量を100とすると、工程(4)の実施に伴い、約16〜24%のペプチド類が沈殿する。濃縮および/または冷却により生成した沈殿を遠心分離または汎用フィルターなどで除去し、遊離型シアル酸含有オリゴ糖を主成分とする濃縮液を得る。本濃縮液は、必要に応じて凍結保存または凍結乾燥することができる。
以上の工程(1)〜(4)、および工程(A)〜(C)を経ることで、得られる画分等のシアル酸/タンパク・ペプチドの重量比およびシアル酸/ヘキソースの重量比の変化の一例を図3に示す。図3には、具体的には、以下の3つのルートの過程の画分等のシアル酸/タンパク・ペプチドの重量比およびシアル酸/ヘキソースの重量比の変化を示す。図3に示すシアル酸/タンパク・ペプチドの重量比およびシアル酸/ヘキソースの重量比の変化は、一例であって、原料や処理条件等が変われば、変化するものであることを理解すべきである。
ルート1
原料→工程(1)→工程(2)(限外ろ過5000)→工程(A)→工程(3)→工程(4)
ルート2
原料→工程(1)→工程(2)(限外ろ過3000)→工程(A)→工程(3)→工程(4)
ルート3
原料→工程(1)→工程(2)(限外ろ過3000)→工程(A)→工程(B)→工程(C)→工程(3)→工程(4)
本発明による遊離型シアル酸含有オリゴ糖の製造において、分娩後1回目の搾乳で得られたウシ初乳を原料とし、工程(1)において、クリームセパレータ分離およびエタノール抽出を行い、その後の処理を図3に示すように行った場合の、シアル酸含有オリゴ糖の工程ルート別精製度を図3に示す。遊離型シアル酸含有オリゴ糖の精製度を表す指標として、シアル酸/タンパク・ペプチドの重量比とシアル酸/ヘキソースの重量比の二種類の数値を挙げる。シアル酸/タンパク・ペプチドの重量比は、数値が高いほど、シアル酸含有オリゴ糖を含む抽出液に混在するタンパク質・ペプチド類が少ないことを表している。また、括弧内に示すシアル酸/ヘキソースの重量比は、数値が1に近づくほど、シアル酸含有オリゴ糖を含む抽出液に混在する乳糖が少ないことを表している。
ウシ初乳から一部の脂質とタンパク質を除去する工程(1)では、クリームセパレータによる乳成分の機械的な分離と、エタノール抽出による化学的な分離が実施される。クリームセパレータ分離では、シアル酸含有オリゴ糖が脂質分子に結合しているガングリオシド、タンパク質分子に結合しているカゼインの一部がホエーから粗分離されるため、遊離型シアル酸含有オリゴ糖の精製度を示す二つの数値に、大きな変化はない。しかし、得られたホエーをエタノールで抽出すると、ホエータンパク質は大幅に除去され、シアル酸/タンパク・ペプチドの重量比は著しく増加する。一方、シアル酸/ヘキソースの重量比はエタノール抽出によって1から遠のくが、これはシアル酸がタンパク質に結合した免疫グロブリンなどが大幅に除去されるのに対し、多量に含まれる乳糖は濃縮される理由による。すなわち、遊離型シアル酸含有オリゴ糖の精製度としては、見かけ上の変化に過ぎない。
工程(1)によって粗分離されたミルクオリゴ糖を含む画分は、工程(2)の約3000〜5000の範囲でカットオフする限外ろ過によって、該当分子量を目安にカットオフされる。さらに、シアル酸含有オリゴ糖を含む限外ろ過の透過液を濃縮・冷却する工程(A)によって、不溶性となった夾雑成分は除去される。以上の工程を経ると、シアル酸/タンパク・ペプチドの重量比は約1.5倍以上に増加するが、シアル酸/ヘキソースの重量比は、ヘキソースの大部分を占める乳糖が依然除去されずに濃縮されるため、工程1の結果と同様に精製度は見かけ上、1から遠のく値となる。
工程(2)の限外ろ過においては、初乳に含まれる遊離型シアル酸含有オリゴ糖の分子量が約1000〜650であることから、分画分子量約3000〜4000の限外ろ過膜を使用することが望ましい。図3に示す限外ろ過5000と限外ろ過3000の精製度を比較すると、シアル酸/タンパク・ペプチド重量比およびシアル酸/ヘキソース重量比のいずれも、限外ろ過3000の実施が好ましい値を示している。なおかつ、工程(2)における限外ろ過のカットオフサイズは、工程(3)のゲルろ過クロマトグラフィーおよび工程(4)の濃縮冷却を経た、最終的な製造品の精製度に直結する(ルート1と2の対比)。図3に示す数値からは、より小さなカットオフサイズを工程(2)において採用すると、製造品の精製度は向上することが示されている。しかしながら、例えば工程(2)において分画分子量3000未満の限外ろ過膜を使用すると、透過孔の著しい目詰まりが生じ、処理時間の著しい延滞と試料回収の困難を招く結果となり、好ましくない。
本発明において、シアル酸含有オリゴ糖の精製度をいっそう向上させる手段は、二段階目の限外ろ過を実施する工程(B)、および得られた濃縮液から不溶性となった成分を除去する工程(C)である。工程(B)の実施により、シアル酸含有オリゴ糖を含む液に混在する分子量約500以下のペプチド類、乳糖、色素群、および無機物などの低分子物成分は大幅に透過除去される。また、工程(B)および工程(C)の実施により、シアル酸含有オリゴ糖を含む濃縮液に混在する成分の一部は、脱水効果により不溶化が促進される。図3に示すように、分画分子量3000の限外ろ過で得られた透過液を工程(A)に付した後に、工程(B)および(C)を実施すると、シアル酸/タンパク・ペプチド重量比およびシアル酸/ヘキソース重量比はいずれも大きく向上し、工程(3)のゲルろ過クロマトグラフィーにおいて、遊離型シアル酸含有オリゴ糖の画分と同時に溶出されるペプチド類が低減されることから、最終的な製造品の精製度はいっそう向上する(ルート3)。なおかつ、工程(B)および(C)の実施は、シアル酸含有オリゴ糖を含む溶液の粘性低下と極低分子夾雑物の除去をもたらすことから、工程(3)のゲルろ過クロマトグラフィーにおける最大供試量の増加につながり、シアル酸含有オリゴ糖溶出後の洗浄時間も大幅に短縮するという利点がある。
二段階目の限外ろ過工程である、工程(B)および工程(C)を省いた場合(工程(A)は経る)に工程(3)または(4)で得られるシアル酸含有オリゴ糖標品を高速液体クロマトグラフィーに供して示される純度は、ウシ初乳において固形分あたり約80〜90%であり、得られるシアル酸含有オリゴ糖のシアル酸/ヘキソースの重量比は、約0.7〜0.9の範囲である。
一方、工程(A)、工程(B)および工程(C)を実施し、全6または7工程を経た、工程(3)または(4)で得られるシアル酸含有オリゴ糖標品の高速液体クロマトグラフィーで示される純度は、ウシ初乳において固形分あたり約89〜95%であり、得られるシアル酸含有オリゴ糖のシアル酸/ヘキソースの重量比は、0.9〜1.1の範囲である。
工程(3)または(4)において得られるシアル酸含有オリゴ糖を含有する液に含まれるシアル酸含有オリゴ糖の高速液体クロマトグラフィーで示される純度(固形分当たり)は、それ以前に経る工程によって変わるが、約80〜95%の範囲である。さらに、工程(3)または(4)において得られるシアル酸含有オリゴ糖のシアル酸/ヘキソースの重量比は、約0.7〜1.1の範囲である。尚、実施例にも示すが、シアル酸含有オリゴ糖の純度は、シアル酸含有オリゴ糖類が溶けている水を除いた固形分を、アセトニトリル−水の溶媒に可溶化して、HPLCで検定することができる。
(3)の工程で得られるシアル酸含有オリゴ糖を含有する液を凍結して凍結物を得るか、または凍結乾燥して乾燥品を得ることができる。また、(4)の工程で得られる、精製度をさらに高めたシアル酸含有オリゴ糖を含有する液を凍結して凍結物を得るか、または凍結乾燥して乾燥品を得ることもできる。
工程(3)および(4)で得られたシアル酸含有オリゴ糖は、水に溶けた状態である。この状態のまま凍結保存して利用することは可能である。しかし、溶媒の置換、分子種別の精製、または添加剤として利用する場合には、必要に応じて常法による凍結乾燥を適用することもできる。凍結乾燥品はデシケータなどに入れ、乾燥状態を保つことが好ましい。
本発明の方法で得られるシアル酸含有オリゴ糖に含まれる分子種の組成は、原料に含まれたシアル酸含有オリゴ糖の成分組成が、ほぼ変わることなく製造標品に反映される。「シアル酸含有オリゴ糖」とは、工程(3)を経て凍結乾燥した、本発明における最終製造品の固形物を指す。工程(B)の二段階目のカットオフが分子量500の場合は、分子種に関係なく大部分のシアル酸含有オリゴ糖類は保持されるので、初乳原料におけるシアル酸含有オリゴ糖類の成分組成が、そのまま最終製造品の分子種別組成に反映される。しかしながら、工程(B)における二段階目の限外ろ過において分子量1000のカットオフを行った際は、DSL(分子量約950)の多くが保持されるが、主成分である3’−SLを含むその他のシアル酸含有オリゴ糖類(いずれも分子量約650)は、透過除去されやすくなることから、原料中の成分組成が反映されない可能性が高くなる。
本発明において遊離のシアル酸含有オリゴ糖とは、具体的には、例えば、3’−シアリルラクトース、6’−シアリルラクトサミン、ジシアリルラクトース、および6’−シアリルラクトース等である。シアル酸含有オリゴ糖の組成は、常法に従い、薄層クロマトグラフィーまたは高速液体クロマトグラフィーを使用して分析することができる。ウシ初乳を製造原料とした際は、3’−シアリルラクトースがシアル酸含有オリゴ糖類の6割以上を占め、次いで6’−シアリルラクトサミン、ジシアリルラクトース、6’−シアリルラクトースの順となる。
本発明の方法は、吸着クロマトグラフィーを使用しない製法であるため、製造工程におけるシアル酸含有オリゴ糖の損失を最小限に抑えることが可能である。たとえば、限外ろ過の際に共液洗浄などの回収作業を行うと、ウシ初乳1リットルあたり約1.1〜1.4グラムの高収量で高純度のシアル酸含有オリゴ糖類を得ることができる。なお、以上に示したウシ初乳のほか、本発明では山羊乳や人乳などを製造原料に用いることができるが、いずれもシアル酸含有オリゴ糖が豊富に含まれる初乳を原料とすることが望ましい。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下の実施例においては、シアル酸は過ヨウ素酸レゾルシノール塩酸法、ヘキソースはフェノール硫酸法、タンパク質・ペプチド類はBCA法で定量した。
[実施例1]
(ホエーの調製)
乳牛(ホルスタイン種4頭)から分娩後1回目のウシ初乳を搾乳し、−40℃にて凍結保存した。解凍後、シアル酸含有オリゴ糖の製造原料として8Lを供試し、22℃で比重を測定(1.067)、脱イオン水を加えて初乳を1.5倍希釈し、全量を12Lとした。この初乳希釈液を40℃に加温し、クリームセパレータ(エレクレム社、F−3)に連続通液した。本分離条件では、11.3Lのホエーが回収された。
(エタノール抽出画分の調製)
クリームセパレータで分離したホエーのうち、3L(初乳換算で2Lに相当)のホエーに終濃度70%となるようエタノールを7L加え、4℃で一晩撹拌後、5000×Gで20分間遠心分離し、黄緑色のエタノール抽出液8.5Lを採取した。このエタノール抽出液をロータリーエバポレーターで順次濃縮し、濃縮液をろ紙(東洋濾紙社、No.5C)で吸引ろ過、微粒子と浮遊物を除去したエタノール抽出画分600mLを得た。
(粗シアル酸含有オリゴ糖画分の調製)
エタノール抽出画分に計2回の限外ろ過を施し、粗シアル酸含有オリゴ糖画分を調製した。1段階目の処理には、分画分子量3000の限外ろ過膜(ミリポア社、Φ150mm)を装填した限外ろ過装置(東洋濾紙社、窒素加圧式)を用い、エタノール抽出画分500mLを処理した。試料を穏やかに撹拌しつつ、0.12MPaの窒素を加圧し、限外ろ過膜を透過した画分を採取した。およそ450mLの透過画分が得られたところで、限外ろ過膜上の不透過画分50mLを脱イオン水で10倍希釈、再び同条件で加圧して共液洗浄し、不透過画分に残存するシアル酸含有オリゴ糖類を透過回収した。得られた透過画分はロータリーエバポレーターで濃縮し、不溶化した夾雑物を汎用フィルター(ミリポア社、0.45μm)で吸引除去、シアル酸含有オリゴ糖を含む黄色の清澄液150mL(ヘキソース25.7g)を得た。続いて2段階目の処理として、分画分子量500の限外ろ過膜(ミリポア社、Φ150mm)を装填し、ヘキソース8g分となる46.7mLの上記透過液を分画した。およそ35mLの透過画分が得られたところで、限外ろ過膜上の不透過画分12mLを脱イオン水で全量750mLに希釈し、再び同条件で加圧して共液洗浄、不透過画分に残存する低分子夾雑物を透過除去した。濃縮液がおよそ20mLとなったところで限外ろ過を終了し、シアル酸含有オリゴ糖を含む不透過濃縮液を採取した。さらに脱イオン水を用いて装置内部を共液洗浄し、シアル酸含有オリゴ糖を含む残渣を回収した。得られた濃縮液は10000×Gで15分遠心分離し、得られた上澄みを汎用フィルターで吸引ろ過(ミリポア社、0.45μm)、淡黄色の粗シアル酸含有オリゴ糖画分を得た。分画分子量500の限外ろ過処理によって、2.8gのヘキソースを有する粗シアル酸含有オリゴ糖画分が得られた。
(シアル酸含有オリゴ糖標品の調製)
限外ろ過によって得られた粗シアル酸含有オリゴ糖画分を、トヨパールHW−40(東ソー社)、またはバイオゲルP−2(バイオラッド社)樹脂を使用した、ゲルろ過クロマトグラフィーに供した。Φ1.5×70cmのカラムにトヨパールHW−40Sを充填し、線流速14cm/h、0.75mL/チューブ、脱イオン水を溶出液とした分離条件で、粗シアル酸含有オリゴ糖画分2mL(ヘキソース140mg)を供試、ゲルろ過分画した実施例を図4に示す。同様に、Φ4×145cmのカラムにバイオゲルP−2Fを充填し、線流速8cm/h、12.5mL/チューブの分離条件で、粗シアル酸含有オリゴ糖画分27.5mL(ヘキソース1.9g)を供試、ゲルろ過分画した実施例を図5に示す。得られたシアル酸含有オリゴ糖画分は、ロータリーエバポレーターを用いて20倍に濃縮し、4℃で一晩冷却した。濃縮および冷却に伴って析出した夾雑物を汎用フィルター(ミリポア社、0.45μm)で除去、得られた清澄液を凍結乾燥し、シアル酸含有オリゴ糖標品とした。なお、Φ4×145cmのカラムに充填したゲルろ過樹脂を使用した場合は、1回のゲルろ過で最大2.5グラム以上のシアル酸含有オリゴ糖類が精製可能であり、小規模の調製からグラムオーダーの製造へスケールアップは容易であった。
(シアル酸含有オリゴ糖標品の純度と組成)
上記シアル酸含有オリゴ糖標品の0.5mgを、TSKgel Amide−80カラム(東ソー社、4.6mm I.D.×25cm)を用いた高速液体クロマトグラフィーで分析した結果を図7に、薄層クロマトグラフィーで分析した結果を図5に示す。本実施例で得られたシアル酸含有オリゴ糖標品の純度は89.3〜92.5%であり、成分別では3’−シアリルラクトースが標品のおよそ66%を占め、6’−シアリルラクトサミンが約15%、ジシアリルラクトースが約12%、6’−シアリルラクトースが約7%を占めた。また、シアル酸/ヘキソースの重量比は0.97〜1.09の値を示し、夾雑するペプチド類としてシアル酸+ヘキソースの値に対し4.9〜6.7%の範囲で、BCA法の呈色物が認められた。一方、薄層クロマトグラフィーによる夾雑ペプチド類の検出では、ニンヒドリン陽性物質はほとんど認められなかった。なお、分画分子量500の限外ろ過を施さなかった場合は、シアル酸/ヘキソースの重量比は0.74以上、BCA法の呈色物は7.5〜10%の範囲であり、ニンヒドリン陽性物質が認められた。
(シアル酸含有オリゴ糖標品の収量)
粗シアル酸含有オリゴ糖画分27.5mL(ヘキソース1.9g相当)をゲルろ過法によって分画すると、シアル酸量+ヘキソース量として536mgのシアル酸含有オリゴ糖標品が精製され、初乳1Lあたり1.27gの収量であった。
[実施例2]
(エタノール抽出画分の調製)
実施例1に記したホエーのうち、1.5L(初乳換算で1Lに相当)のホエーを供試し、実施例1と同様の方法でエタノール抽出画分340mLを得た。
(粗シアル酸含有オリゴ糖画分の調製)
分画分子量5000の限外ろ過膜(ミリポア社、Φ150mm)を装填した限外ろ過装置(東洋濾紙社、窒素加圧式)を用い、上記エタノール抽出画分340mLを処理した。試料を穏やかに撹拌しつつ、0.12MPaの窒素を加圧し、限外ろ過膜を透過した画分を採取した。およそ300mLの透過画分が得られたところで、限外ろ過膜上の不透過画分40mLを脱イオン水で10倍希釈、再び同条件で加圧して共液洗浄し、不透過画分に残存するシアル酸含有オリゴ糖類を透過回収した。得られた透過画分はロータリーエバポレーターで濃縮し、不溶化した夾雑物を汎用フィルター(ミリポア社、0.45μm)で吸引除去、シアル酸含有オリゴ糖を含む黄色の清澄液(ヘキソース14g)を得た。
(シアル酸含有オリゴ糖標品の調製)
分画分子量5000の限外ろ過によって得られた粗シアル酸含有オリゴ糖画分を、バイオゲルP−2(バイオラッド社)樹脂を使用した、ゲルろ過クロマトグラフィーに供した。Φ1.5×50cmのカラムにバイオゲルP−2Fを充填し、線流速9.4cm/h、0.75mL/チューブ、脱イオン水を溶出液とした分離条件で、粗シアル酸含有オリゴ糖画分2mL(ヘキソース260mg)を供試、ゲルろ過分画した実施例を図6に示す。得られたシアル酸含有オリゴ糖画分を約20倍に濃縮し、4℃で一晩冷却した。濃縮および冷却に伴って析出した夾雑物を汎用フィルター(ミリポア社、0.45μm)で除去、得られた清澄液を凍結乾燥し、シアル酸含有オリゴ糖標品とした。
(シアル酸含有オリゴ糖標品の純度と組成)
上記シアル酸含有オリゴ糖標品の0.5mgを、薄層クロマトグラフィーで分析した結果を図8に示す。本実施例で得られたシアル酸含有オリゴ糖標品のシアル酸/ヘキソースの重量比は0.70であり、夾雑するペプチド類としてシアル酸+ヘキソースの値に対して、9.2%のBCA法呈色物が認められた。
[実施例3]
(メタノール可溶画分の調製)
分娩直後に搾乳した山羊初乳1Lに、4Lのクロロホルム・メタノール混合液(2:1、v/v)を加え、スターラーを用いて20分撹拌した。この懸濁液を5000×Gで15分間遠心分離し、3層に分層した画分のうち最上層の、メタノール可溶層を採取した。この抽出液をロータリーエバポレーターで濃縮し、濃縮液をろ紙(東洋濾紙社、No.5C)で吸引ろ過、メタノール可溶画分100mLを得た。
(粗シアル酸含有オリゴ糖画分の調製)
分画分子量3000の限外ろ過膜(ミリポア社、Φ150mm)を装填した限外ろ過装置(東洋濾紙社、窒素加圧式)を用い、上記メタノール可溶画分100mLを処理した。試料を穏やかに撹拌しつつ、0.12MPaの窒素を加圧し、限外ろ過膜を透過した画分を採取した。およそ80mLの透過画分が得られたところで、限外ろ過膜上の不透過画分20mLを脱イオン水で20倍希釈、再び同条件で加圧して共液洗浄し、不透過画分に残存するシアル酸含有オリゴ糖を透過回収した。得られた透過画分はロータリーエバポレーターで濃縮し、不溶化した夾雑物を汎用フィルター(ミリポア社、0.45μm)で吸引除去、緑黄色の粗シアル酸含有オリゴ糖画分85mLを得た。
(シアル酸含有オリゴ糖標品の調製)
限外ろ過によって得られた粗シアル酸含有オリゴ糖画分を、Φ4×145cmのカラムに充填したバイオゲルP−2F(バイオラッド社)樹脂を使用した、ゲルろ過クロマトグラフィーに供した。線流速6cm/h、12mL/チューブ、脱イオン水を溶出液とした分離条件で、上記の粗シアル酸含有オリゴ糖画分85mLをゲルろ過分画後、得られたシアル酸含有オリゴ糖画分をロータリーエバポレーターで20倍に濃縮し、4℃で一晩冷却した。濃縮および冷却に伴い析出した夾雑物を、汎用フィルター(ミリポア社、0.45μm)を用いて除去、得られた清澄液を凍結乾燥し、シアル酸含有オリゴ糖標品を得た。
(シアル酸含有オリゴ糖標品の純度と組成)
上記シアル酸含有オリゴ糖標品の0.5mgを、薄層クロマトグラフィーで分析した結果を図9に示す。山羊初乳を原料に用いた本実施例では、6’−シアリルラクトースがシアル酸含有オリゴ糖類の多くを占め、次いでジシアリルラクトース、3’−シアリルラクトース、6’−シアリルラクトサミンの順で構成されていた。また、シアル酸/ヘキソースの重量比は1.08の値を示し、シアル酸含有オリゴ糖標品に夾雑するペプチド類は、シアル酸+ヘキソースの値に対して25.8%のBCA法反応物が認められ、ニンヒドリン発色では陽性物質が認められた。
(シアル酸含有オリゴ糖標品の収量)
山羊初乳1Lを原料に用い、本実施例に示すクロロホルム・メタノール抽出、分画分子量3000の限外ろ過、およびゲルろ過分画によって、シアル酸量+ヘキソース量として367mgのシアル酸含有オリゴ糖標品が精製された。
本発明によるシアル酸含有オリゴ糖の製造方法は、限外ろ過およびゲルろ過といった汎用装置を使用し、純水を溶媒とする簡易な分離精製法ながら、乳または乳製品由来のシアル酸含有オリゴ糖類を高純度、高回収率、および高い再現性で、選択的に抽出することができる。それ故、安価で良質なシアル酸含有オリゴ糖の提供を可能とし、新規の薬品、食品添加物、飼料添加物、あるいは誘導体合成に寄与する技術である。
工程(1)においてウシ初乳をクロロホルム・メタノール抽出し、限外ろ過を施さずにゲルろ過クロマトグラフィーを行った結果(クロマトグラム)を示す。 工程(1)においてウシ初乳をクロロホルム・メタノール抽出し、それを工程(2)で、分子量3000でカットオフする限外ろ過を施してゲルろ過クロマトグラフィーを行った結果(クロマトグラム)を示す。 分娩後1回目の搾乳で得られたウシ初乳を原料とし、クリームセパレータ分離およびエタノール抽出を行った際の、シアル酸含有オリゴ糖の工程別精製度を示す。 小規模ゲルろ過クロマトグラフィーにおける、ウシ初乳由来シアル酸含有オリゴ糖の溶出を示す。 中規模ゲルろ過クロマトグラフィーにおける、ウシ初乳由来シアル酸含有オリゴ糖の溶出を示す。 分子量5000でカットオフした際の、ウシ初乳由来シアル酸含有オリゴ糖の溶出を示す。 高速液体クロマトグラフィーによる、ウシ初乳由来シアル酸含有オリゴ糖標品の成分分析を示す。 薄層クロマトグラフィーによる、ウシ初乳由来シアル酸含有オリゴ糖類の成分組成を示す。 薄層クロマトグラフィーによる、山羊初乳由来シアル酸含有オリゴ糖類の成分組成を示す。
符号の説明
3’−SL:3’−シアリルラクトース
6’−SL:6’−シアリルラクトース
6’−SLN:6’−シアリルラクトサミン
DSL:ジシアリルラクトース

Claims (12)

  1. (1)乳または乳製品から、アルコール抽出により少なくとも一部の脂質およびタンパク質を除去して、ミルクオリゴ糖を含む画分を調製する工程、
    (2)前記ミルクオリゴ糖を含む画分を、約3000〜約5000の範囲にカットオフする分子量を有する限外ろ過膜を用いる限外ろ過に供して、透過液を得る工程、および
    (3)前記透過液を、ゲルろ過クロマトグラフィーに供して、透過液としてシアル酸含有オリゴ糖を含有する液を得る工程
    を含むシアル酸含有オリゴ糖の製造方法。
  2. 乳または乳製品が初乳である請求項1に記載の製造方法。
  3. (2)の工程の後に、
    (A)(2)で得た透過液を濃縮および/または冷却に付し、生成した沈殿物を除去して粗シアル酸含有オリゴ糖画分を得る工程、
    をさらに有し、(3)の工程において、(A)で得られた粗シアル酸含有オリゴ糖画分を(2)の透過液の代わりにゲルろ過クロマトグラフィーに供する請求項1または2に記載の製造方法。
  4. (2)または(A)の工程の後に、
    (B)(2)で得た透過液または(A)で得た粗シアル酸含有オリゴ糖画分を、約500〜約1000にカットオフする分子量を有する限外ろ過膜を用いる限外ろ過に供して、不透過液を得る工程、および
    (C)前記不透過液を濃縮および/または冷却に付し、生成した沈澱物を除去してシアル酸含有オリゴ糖を含む濃縮液を得る工程、
    をさらに有し、(3)の工程において、(C)で得られたシアル酸含有オリゴ糖を含む濃縮液を(2)の透過液の代わりにゲルろ過クロマトグラフィーに供する
    請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. (3)の工程におけるゲルろ過クロマトグラフィーは、球状タンパク質の分画範囲が100〜7000Da、または球状タンパク質を基準とした排除限界が1×104〜2×104Daである、ゲルろ過担体を適用する請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  6. (3)の工程で得られるシアル酸含有オリゴ糖を含有する液の高速液体クロマトグラフィーで示される純度(固形分当たり)が70%以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7. (3)の工程で得られるシアル酸含有オリゴ糖を含有する液のシアル酸/ヘキソースの重量比が0.6以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
  8. (3)の工程で得られるシアル酸含有オリゴ糖を含有する液を凍結して凍結物を得るか、または凍結乾燥して乾燥品を得る、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
  9. (3)の工程の後に、
    (4)(3)の工程でゲルろ過クロマトグラフィーの透過液として得られるシアル酸含有オリゴ糖を含有する液を濃縮および冷却し、生成した沈澱物を除去して、精製度をさらに高めたシアル酸含有オリゴ糖を含有する液を得る、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  10. (4)の工程で得られる、精製度をさらに高めたシアル酸含有オリゴ糖を含有する液の高速液体クロマトグラフィーで示される純度(固形分当たり)が80%以上である、請求項9に記載の製造方法。
  11. (4)の工程で得られる、精製度をさらに高めたシアル酸含有オリゴ糖を含有する液のシアル酸/ヘキソースの重量比が0.7以上である、請求項9に記載の製造方法。
  12. (4)の工程で得られる、精製度をさらに高めたシアル酸含有オリゴ糖を含有する液を凍結して凍結物を得るか、または凍結乾燥して乾燥品を得る、請求項9〜11のいずれかに記載の製造方法。
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