JP5261732B2 - シアル酸含有オリゴ糖の製造方法 - Google Patents
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Description
陰イオン交換クロマトグラフィーに吸着させてギ酸濃度勾配により溶出させる方法(特許文献1)、
擬似移動床式陽イオン交換クロマトグラフィーを制御し、脱塩水を用いて溶離させる方法(特許文献2)、
原料溶液中のラクトン体を予め開環処理して分離し、ラクトン化させて陰イオン交換クロマトグラフィーの非吸着画分を採取する方法(特許文献3)、
乳糖を晶析除去することによって製造品の純度を高める方法(特許文献4)、
活性炭クロマトグラフィーに吸着させてエタノール濃度勾配により溶出させる方法(特許文献5)
[1](1)乳または乳製品から、少なくとも一部の脂質およびタンパク質を除去して、ミルクオリゴ糖を含む画分を調製する工程、
(2)前記ミルクオリゴ糖を含む画分を、約3000〜約5000の範囲にカットオフする分子量を有する限外ろ過膜を用いる限外ろ過に供して、透過液を得る工程、および
(3)前記透過液を、ゲルろ過クロマトグラフィーに供して、透過液としてシアル酸含有オリゴ糖を含有する液を得る工程
を含むシアル酸含有オリゴ糖の製造方法。
[2]乳または乳製品が初乳である[1]に記載の製造方法。
[3](2)の工程の後に、
(A)(2)で得た透過液を濃縮および/または冷却に付し、生成した沈殿物を除去して粗シアル酸含有オリゴ糖画分を得る工程、
をさらに有し、(3)の工程において、(A)で得られた粗シアル酸含有オリゴ糖画分を(2)の透過液の代わりにゲルろ過クロマトグラフィーに供する[1]または[2]に記載の製造方法。
[4](2)または(A)の工程の後に、
(B)(2)で得た透過液または(A)で得た粗シアル酸含有オリゴ糖画分を、約500〜約1000にカットオフする分子量を有する限外ろ過膜を用いる限外ろ過に供して、不透過液を得る工程、および
(C)前記不透過液を濃縮および/または冷却に付し、生成した沈澱物を除去してシアル酸含有オリゴ糖を含む濃縮液を得る工程、
をさらに有し、(3)の工程において、(C)で得られたシアル酸含有オリゴ糖を含む濃縮液を(2)の透過液の代わりにゲルろ過クロマトグラフィーに供する
[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5](3)の工程におけるゲルろ過クロマトグラフィーは、球状タンパク質の分画範囲が100〜7000Da、または球状タンパク質を基準とした排除限界が1×104〜2×104Daである、ゲルろ過担体を適用する[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[6](3)の工程で得られるシアル酸含有オリゴ糖を含有する液の高速液体クロマトグラフィーで示される純度(固形分当たり)が70%以上である、[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7](3)の工程で得られるシアル酸含有オリゴ糖を含有する液のシアル酸/ヘキソースの重量比が0.6以上である、[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8](3)の工程で得られるシアル酸含有オリゴ糖を含有する液を凍結して凍結物を得るか、または凍結乾燥して乾燥品を得る、[1]〜[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9](3)の工程の後に、
(4)(3)の工程でゲルろ過クロマトグラフィーの透過液として得られるシアル酸含有オリゴ糖を含有する液を濃縮および/または冷却し、生成した沈澱物を除去して、精製度をさらに高めたシアル酸含有オリゴ糖を含有する液を得る、[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[10](4)の工程で得られる、精製度をさらに高めたシアル酸含有オリゴ糖を含有する液の高速液体クロマトグラフィーで示される純度(固形分当たり)が80%以上である、[9]に記載の製造方法。
[11](4)の工程で得られる、精製度をさらに高めたシアル酸含有オリゴ糖を含有する液のシアル酸/ヘキソースの重量比が0.7以上である、[9]に記載の製造方法。
[12](4)の工程で得られる、精製度をさらに高めたシアル酸含有オリゴ糖を含有する液を凍結して凍結物を得るか、または凍結乾燥して乾燥品を得る、[9]〜[11]のいずれかに記載の製造方法。
(1)乳または乳製品から、少なくとも一部の脂質およびタンパク質を除去して、ミルクオリゴ糖を含む画分を調製する工程、
(2)前記ミルクオリゴ糖を含む画分を、約3000〜約5000の範囲にカットオフする分子量を有する限外ろ過膜を用いる限外ろ過に供して、透過液を得る工程、および
(3)前記透過液を、ゲルろ過クロマトグラフィーに供して、透過液としてシアル酸含有オリゴ糖を含有する液を得る工程
工程(1)では、乳または乳製品から、少なくとも一部の脂質およびタンパク質を除去して、ミルクオリゴ糖を含む画分を調製する。工程(1)は、乳から脂質およびタンパク質を粗分離する工程である。工程(1)で使用する乳または乳製品は、初乳であることが、シアル酸含有オリゴ糖の含有率が高いとう観点から好ましい。
工程(2)は、工程(1)で得られたミルクオリゴ糖を含む画分を、約3000〜約5000の範囲にカットオフする分子量を有する限外ろ過膜を用いる限外ろ過に供して、限外ろ過の透過液を得る工程である。工程(2)は、ミルクオリゴ糖を含む画分に含まれる、シアル酸含有オリゴ糖より分子量の大きいタンパク質およびポリペプチドを除去する工程である。約3000〜約5000の範囲にカットオフする分子量を有する限外ろ過膜を用いることで、夾雑するタンパク質やペプチドを効率的に除去し、透過液にシアル酸含有オリゴ糖を含めることができる。限外ろ過膜のカットオフする分子量が、約5000を超えると、夾雑するタンパク質やペプチドの除去が不十分となり、最終的に目的とする高純度(例えば、80%以上)のシアル酸含有オリゴ糖を得ることは困難になる。また、カットオフする分子量が約3000未満の限外ろ過膜を用いると、ろ過すべき成分量が増大して、限外ろ過操作が困難になる傾向があり、さらに、カットオフする分子量が小さくなりすぎると、シアル酸含有オリゴ糖もカットオフされてしまう。このような観点から、上記範囲を採用する。但し、好ましくは、カットオフする分子量が約3000〜約4000の限外ろ過膜を用いることである。尚、本明細書において、カットオフする分子量の「約」は、当該分子量の約80%以上の標準物質が捕捉され、当該分子量の55〜90%の成分が実際に回収可能である限外ろ過膜を指す。
図1には、工程(1)においてウシ初乳をクロロホルム・メタノール抽出し、限外ろ過を施さずにゲルろ過クロマトグラフィーを行った結果(クロマトグラム)を示す。図2には、工程(1)においてウシ初乳をクロロホルム・メタノール抽出し、それを工程(2)で、分子量3000でカットオフする限外ろ過を施してゲルろ過クロマトグラフィーを行った結果(クロマトグラム)を示す。
工程(3)は、前記透過液を、ゲルろ過クロマトグラフィーに供して、透過液としてシアル酸含有オリゴ糖を含有する液を得る工程である。
但し、(2)の工程の後に、
(A)(2)で得た透過液を濃縮および/または冷却に付し、生成した沈殿物を除去して粗シアル酸含有オリゴ糖画分を得る工程、
をさらに有し、
(3)の工程において、(A)で得られた粗シアル酸含有オリゴ糖画分を(2)の透過液の代わりにゲルろ過クロマトグラフィーに供することが、原料に含まれるシアル酸含有オリゴ糖以外の夾雑物、特に、シアル酸含有オリゴ糖より高分子量の物質をより除去して、より精製度を挙げるという観点からは好ましい。
工程(A)は、(2)で得た透過液を濃縮および/または冷却に付し、生成した沈殿物を除去して粗シアル酸含有オリゴ糖画分を得る工程である。工程(A)は、(2)の透過液に含まれるシアル酸含有オリゴ糖以外の夾雑物をさらに除去するために行う工程である。工程(1)および(2)によって、原料に含まれるシアル酸含有オリゴ糖以外の夾雑物、特に、シアル酸含有オリゴ糖より高分子量の物質は相当量除去される。しかし、工程(1)および(2)を経た透過液には、依然として、シアル酸含有オリゴ糖以外の成分が90%以上含まれる。
(B)(2)で得た透過液または(A)で得た粗シアル酸含有オリゴ糖画分を、約500〜約1000にカットオフする分子量を有する限外ろ過膜を用いる限外ろ過に供して、不透過液を得る工程、および
(C)前記不透過液を濃縮および/または冷却に付し、生成した沈澱物を除去してシアル酸含有オリゴ糖を含む濃縮液を得る工程、
をさらに有し、(3)の工程において、(C)で得られた粗シアル酸含有オリゴ糖を含む濃縮液を(2)の透過液の代わりにゲルろ過クロマトグラフィーに供することもできる。
工程(B)は、(2)で得た透過液または工程(A)で得られたシアル酸含有オリゴ糖画分を、約500でカットオフする分子量を有する限外ろ過膜を用いる限外ろ過に供して、不透過液を得る工程である。工程(B)は、シアル酸含有オリゴ糖類を濃縮し、原料に由来する乳糖、ペプチド類、カロチノイド類、酸あるいは無機物などの低分子量成分の多くを透過除去する工程であり、上記工程(A)に追加して実施することが望ましい。しかしながら、最終製造品において、固形分換算で90%以上のシアル酸含有オリゴ糖純度を必要としない場合は、工程(B)および工程(C)を行わず、工程(A)から工程(3)のゲルろ過分画へ進むこともできる。
工程(C)は、工程(B)で得られる粗シアル酸含有オリゴ糖画分を濃縮および/または冷却に付し、生成した沈澱物を除去してシアル酸含有オリゴ糖を含む濃縮液を得る工程である。工程(4)で得られる粗シアル酸含有オリゴ糖画分には、依然としてペプチド類等の夾雑物が含まれており、工程(C)は、これらの夾雑物を除去することが目的の工程である。
工程(3)は、工程(2)で得られる透過液をゲルろ過クロマトグラフィーに供して、透過液としてシアル酸含有オリゴ糖を含有する液を得る工程である。あるいは、工程(2)で得られる透過液の代わりに、工程(A)で得られる粗シアル酸含有オリゴ糖画分または工程(C)で得られるシアル酸含有オリゴ糖を含む濃縮液をゲルろ過クロマトグラフィーに供して、透過液としてシアル酸含有オリゴ糖を含有する液を得る工程である。
(3)の工程の後に、
(4)(3)の工程でゲルろ過クロマトグラフィーの透過液として得られるシアル酸含有オリゴ糖を含有する液を濃縮および/または冷却し、生成した沈澱物を除去して、精製度をさらに高めたシアル酸含有オリゴ糖を得る工程を有することができる。工程(3)で得られるシアル酸含有オリゴ糖を含む画分には、依然としてペプチド類などの夾雑物が少量含まれており、工程(4)は、これらの夾雑物を除去することが目的である。
原料→工程(1)→工程(2)(限外ろ過5000)→工程(A)→工程(3)→工程(4)
ルート2
原料→工程(1)→工程(2)(限外ろ過3000)→工程(A)→工程(3)→工程(4)
ルート3
原料→工程(1)→工程(2)(限外ろ過3000)→工程(A)→工程(B)→工程(C)→工程(3)→工程(4)
(ホエーの調製)
乳牛(ホルスタイン種4頭)から分娩後1回目のウシ初乳を搾乳し、−40℃にて凍結保存した。解凍後、シアル酸含有オリゴ糖の製造原料として8Lを供試し、22℃で比重を測定(1.067)、脱イオン水を加えて初乳を1.5倍希釈し、全量を12Lとした。この初乳希釈液を40℃に加温し、クリームセパレータ(エレクレム社、F−3)に連続通液した。本分離条件では、11.3Lのホエーが回収された。
クリームセパレータで分離したホエーのうち、3L(初乳換算で2Lに相当)のホエーに終濃度70%となるようエタノールを7L加え、4℃で一晩撹拌後、5000×Gで20分間遠心分離し、黄緑色のエタノール抽出液8.5Lを採取した。このエタノール抽出液をロータリーエバポレーターで順次濃縮し、濃縮液をろ紙(東洋濾紙社、No.5C)で吸引ろ過、微粒子と浮遊物を除去したエタノール抽出画分600mLを得た。
エタノール抽出画分に計2回の限外ろ過を施し、粗シアル酸含有オリゴ糖画分を調製した。1段階目の処理には、分画分子量3000の限外ろ過膜(ミリポア社、Φ150mm)を装填した限外ろ過装置(東洋濾紙社、窒素加圧式)を用い、エタノール抽出画分500mLを処理した。試料を穏やかに撹拌しつつ、0.12MPaの窒素を加圧し、限外ろ過膜を透過した画分を採取した。およそ450mLの透過画分が得られたところで、限外ろ過膜上の不透過画分50mLを脱イオン水で10倍希釈、再び同条件で加圧して共液洗浄し、不透過画分に残存するシアル酸含有オリゴ糖類を透過回収した。得られた透過画分はロータリーエバポレーターで濃縮し、不溶化した夾雑物を汎用フィルター(ミリポア社、0.45μm)で吸引除去、シアル酸含有オリゴ糖を含む黄色の清澄液150mL(ヘキソース25.7g)を得た。続いて2段階目の処理として、分画分子量500の限外ろ過膜(ミリポア社、Φ150mm)を装填し、ヘキソース8g分となる46.7mLの上記透過液を分画した。およそ35mLの透過画分が得られたところで、限外ろ過膜上の不透過画分12mLを脱イオン水で全量750mLに希釈し、再び同条件で加圧して共液洗浄、不透過画分に残存する低分子夾雑物を透過除去した。濃縮液がおよそ20mLとなったところで限外ろ過を終了し、シアル酸含有オリゴ糖を含む不透過濃縮液を採取した。さらに脱イオン水を用いて装置内部を共液洗浄し、シアル酸含有オリゴ糖を含む残渣を回収した。得られた濃縮液は10000×Gで15分遠心分離し、得られた上澄みを汎用フィルターで吸引ろ過(ミリポア社、0.45μm)、淡黄色の粗シアル酸含有オリゴ糖画分を得た。分画分子量500の限外ろ過処理によって、2.8gのヘキソースを有する粗シアル酸含有オリゴ糖画分が得られた。
限外ろ過によって得られた粗シアル酸含有オリゴ糖画分を、トヨパールHW−40(東ソー社)、またはバイオゲルP−2(バイオラッド社)樹脂を使用した、ゲルろ過クロマトグラフィーに供した。Φ1.5×70cmのカラムにトヨパールHW−40Sを充填し、線流速14cm/h、0.75mL/チューブ、脱イオン水を溶出液とした分離条件で、粗シアル酸含有オリゴ糖画分2mL(ヘキソース140mg)を供試、ゲルろ過分画した実施例を図4に示す。同様に、Φ4×145cmのカラムにバイオゲルP−2Fを充填し、線流速8cm/h、12.5mL/チューブの分離条件で、粗シアル酸含有オリゴ糖画分27.5mL(ヘキソース1.9g)を供試、ゲルろ過分画した実施例を図5に示す。得られたシアル酸含有オリゴ糖画分は、ロータリーエバポレーターを用いて20倍に濃縮し、4℃で一晩冷却した。濃縮および冷却に伴って析出した夾雑物を汎用フィルター(ミリポア社、0.45μm)で除去、得られた清澄液を凍結乾燥し、シアル酸含有オリゴ糖標品とした。なお、Φ4×145cmのカラムに充填したゲルろ過樹脂を使用した場合は、1回のゲルろ過で最大2.5グラム以上のシアル酸含有オリゴ糖類が精製可能であり、小規模の調製からグラムオーダーの製造へスケールアップは容易であった。
上記シアル酸含有オリゴ糖標品の0.5mgを、TSKgel Amide−80カラム(東ソー社、4.6mm I.D.×25cm)を用いた高速液体クロマトグラフィーで分析した結果を図7に、薄層クロマトグラフィーで分析した結果を図5に示す。本実施例で得られたシアル酸含有オリゴ糖標品の純度は89.3〜92.5%であり、成分別では3’−シアリルラクトースが標品のおよそ66%を占め、6’−シアリルラクトサミンが約15%、ジシアリルラクトースが約12%、6’−シアリルラクトースが約7%を占めた。また、シアル酸/ヘキソースの重量比は0.97〜1.09の値を示し、夾雑するペプチド類としてシアル酸+ヘキソースの値に対し4.9〜6.7%の範囲で、BCA法の呈色物が認められた。一方、薄層クロマトグラフィーによる夾雑ペプチド類の検出では、ニンヒドリン陽性物質はほとんど認められなかった。なお、分画分子量500の限外ろ過を施さなかった場合は、シアル酸/ヘキソースの重量比は0.74以上、BCA法の呈色物は7.5〜10%の範囲であり、ニンヒドリン陽性物質が認められた。
粗シアル酸含有オリゴ糖画分27.5mL(ヘキソース1.9g相当)をゲルろ過法によって分画すると、シアル酸量+ヘキソース量として536mgのシアル酸含有オリゴ糖標品が精製され、初乳1Lあたり1.27gの収量であった。
(エタノール抽出画分の調製)
実施例1に記したホエーのうち、1.5L(初乳換算で1Lに相当)のホエーを供試し、実施例1と同様の方法でエタノール抽出画分340mLを得た。
分画分子量5000の限外ろ過膜(ミリポア社、Φ150mm)を装填した限外ろ過装置(東洋濾紙社、窒素加圧式)を用い、上記エタノール抽出画分340mLを処理した。試料を穏やかに撹拌しつつ、0.12MPaの窒素を加圧し、限外ろ過膜を透過した画分を採取した。およそ300mLの透過画分が得られたところで、限外ろ過膜上の不透過画分40mLを脱イオン水で10倍希釈、再び同条件で加圧して共液洗浄し、不透過画分に残存するシアル酸含有オリゴ糖類を透過回収した。得られた透過画分はロータリーエバポレーターで濃縮し、不溶化した夾雑物を汎用フィルター(ミリポア社、0.45μm)で吸引除去、シアル酸含有オリゴ糖を含む黄色の清澄液(ヘキソース14g)を得た。
分画分子量5000の限外ろ過によって得られた粗シアル酸含有オリゴ糖画分を、バイオゲルP−2(バイオラッド社)樹脂を使用した、ゲルろ過クロマトグラフィーに供した。Φ1.5×50cmのカラムにバイオゲルP−2Fを充填し、線流速9.4cm/h、0.75mL/チューブ、脱イオン水を溶出液とした分離条件で、粗シアル酸含有オリゴ糖画分2mL(ヘキソース260mg)を供試、ゲルろ過分画した実施例を図6に示す。得られたシアル酸含有オリゴ糖画分を約20倍に濃縮し、4℃で一晩冷却した。濃縮および冷却に伴って析出した夾雑物を汎用フィルター(ミリポア社、0.45μm)で除去、得られた清澄液を凍結乾燥し、シアル酸含有オリゴ糖標品とした。
上記シアル酸含有オリゴ糖標品の0.5mgを、薄層クロマトグラフィーで分析した結果を図8に示す。本実施例で得られたシアル酸含有オリゴ糖標品のシアル酸/ヘキソースの重量比は0.70であり、夾雑するペプチド類としてシアル酸+ヘキソースの値に対して、9.2%のBCA法呈色物が認められた。
(メタノール可溶画分の調製)
分娩直後に搾乳した山羊初乳1Lに、4Lのクロロホルム・メタノール混合液(2:1、v/v)を加え、スターラーを用いて20分撹拌した。この懸濁液を5000×Gで15分間遠心分離し、3層に分層した画分のうち最上層の、メタノール可溶層を採取した。この抽出液をロータリーエバポレーターで濃縮し、濃縮液をろ紙(東洋濾紙社、No.5C)で吸引ろ過、メタノール可溶画分100mLを得た。
分画分子量3000の限外ろ過膜(ミリポア社、Φ150mm)を装填した限外ろ過装置(東洋濾紙社、窒素加圧式)を用い、上記メタノール可溶画分100mLを処理した。試料を穏やかに撹拌しつつ、0.12MPaの窒素を加圧し、限外ろ過膜を透過した画分を採取した。およそ80mLの透過画分が得られたところで、限外ろ過膜上の不透過画分20mLを脱イオン水で20倍希釈、再び同条件で加圧して共液洗浄し、不透過画分に残存するシアル酸含有オリゴ糖を透過回収した。得られた透過画分はロータリーエバポレーターで濃縮し、不溶化した夾雑物を汎用フィルター(ミリポア社、0.45μm)で吸引除去、緑黄色の粗シアル酸含有オリゴ糖画分85mLを得た。
限外ろ過によって得られた粗シアル酸含有オリゴ糖画分を、Φ4×145cmのカラムに充填したバイオゲルP−2F(バイオラッド社)樹脂を使用した、ゲルろ過クロマトグラフィーに供した。線流速6cm/h、12mL/チューブ、脱イオン水を溶出液とした分離条件で、上記の粗シアル酸含有オリゴ糖画分85mLをゲルろ過分画後、得られたシアル酸含有オリゴ糖画分をロータリーエバポレーターで20倍に濃縮し、4℃で一晩冷却した。濃縮および冷却に伴い析出した夾雑物を、汎用フィルター(ミリポア社、0.45μm)を用いて除去、得られた清澄液を凍結乾燥し、シアル酸含有オリゴ糖標品を得た。
上記シアル酸含有オリゴ糖標品の0.5mgを、薄層クロマトグラフィーで分析した結果を図9に示す。山羊初乳を原料に用いた本実施例では、6’−シアリルラクトースがシアル酸含有オリゴ糖類の多くを占め、次いでジシアリルラクトース、3’−シアリルラクトース、6’−シアリルラクトサミンの順で構成されていた。また、シアル酸/ヘキソースの重量比は1.08の値を示し、シアル酸含有オリゴ糖標品に夾雑するペプチド類は、シアル酸+ヘキソースの値に対して25.8%のBCA法反応物が認められ、ニンヒドリン発色では陽性物質が認められた。
山羊初乳1Lを原料に用い、本実施例に示すクロロホルム・メタノール抽出、分画分子量3000の限外ろ過、およびゲルろ過分画によって、シアル酸量+ヘキソース量として367mgのシアル酸含有オリゴ糖標品が精製された。
6’−SL:6’−シアリルラクトース
6’−SLN:6’−シアリルラクトサミン
DSL:ジシアリルラクトース
Claims (12)
- (1)乳または乳製品から、アルコール抽出により少なくとも一部の脂質およびタンパク質を除去して、ミルクオリゴ糖を含む画分を調製する工程、
(2)前記ミルクオリゴ糖を含む画分を、約3000〜約5000の範囲にカットオフする分子量を有する限外ろ過膜を用いる限外ろ過に供して、透過液を得る工程、および
(3)前記透過液を、ゲルろ過クロマトグラフィーに供して、透過液としてシアル酸含有オリゴ糖を含有する液を得る工程
を含むシアル酸含有オリゴ糖の製造方法。 - 乳または乳製品が初乳である請求項1に記載の製造方法。
- (2)の工程の後に、
(A)(2)で得た透過液を濃縮および/または冷却に付し、生成した沈殿物を除去して粗シアル酸含有オリゴ糖画分を得る工程、
をさらに有し、(3)の工程において、(A)で得られた粗シアル酸含有オリゴ糖画分を(2)の透過液の代わりにゲルろ過クロマトグラフィーに供する請求項1または2に記載の製造方法。 - (2)または(A)の工程の後に、
(B)(2)で得た透過液または(A)で得た粗シアル酸含有オリゴ糖画分を、約500〜約1000にカットオフする分子量を有する限外ろ過膜を用いる限外ろ過に供して、不透過液を得る工程、および
(C)前記不透過液を濃縮および/または冷却に付し、生成した沈澱物を除去してシアル酸含有オリゴ糖を含む濃縮液を得る工程、
をさらに有し、(3)の工程において、(C)で得られたシアル酸含有オリゴ糖を含む濃縮液を(2)の透過液の代わりにゲルろ過クロマトグラフィーに供する
請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。 - (3)の工程におけるゲルろ過クロマトグラフィーは、球状タンパク質の分画範囲が100〜7000Da、または球状タンパク質を基準とした排除限界が1×104〜2×104Daである、ゲルろ過担体を適用する請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
- (3)の工程で得られるシアル酸含有オリゴ糖を含有する液の高速液体クロマトグラフィーで示される純度(固形分当たり)が70%以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
- (3)の工程で得られるシアル酸含有オリゴ糖を含有する液のシアル酸/ヘキソースの重量比が0.6以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
- (3)の工程で得られるシアル酸含有オリゴ糖を含有する液を凍結して凍結物を得るか、または凍結乾燥して乾燥品を得る、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
- (3)の工程の後に、
(4)(3)の工程でゲルろ過クロマトグラフィーの透過液として得られるシアル酸含有オリゴ糖を含有する液を濃縮および冷却し、生成した沈澱物を除去して、精製度をさらに高めたシアル酸含有オリゴ糖を含有する液を得る、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。 - (4)の工程で得られる、精製度をさらに高めたシアル酸含有オリゴ糖を含有する液の高速液体クロマトグラフィーで示される純度(固形分当たり)が80%以上である、請求項9に記載の製造方法。
- (4)の工程で得られる、精製度をさらに高めたシアル酸含有オリゴ糖を含有する液のシアル酸/ヘキソースの重量比が0.7以上である、請求項9に記載の製造方法。
- (4)の工程で得られる、精製度をさらに高めたシアル酸含有オリゴ糖を含有する液を凍結して凍結物を得るか、または凍結乾燥して乾燥品を得る、請求項9〜11のいずれかに記載の製造方法。
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