JP5326231B2 - 新規ジャカリン誘導体 - Google Patents
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IgA腎症の発症機序については十分に解明されていないが、報告されている機序としては体内に進入した外来抗原が契機となり主に上気道、消化管系の粘膜下リンパ球や形質細胞で粘膜免疫に関与するIgAが産生され、メサンギウム細胞表面のIgA結合関連レセプターへIgAが選択的に会合し(非特許文献2)、それに伴う炎症の惹起が提案されている。病理学的には、IgA沈着後の糸球体傷害の主要なメカニズムとして、メサンギウム細胞の増殖およびそれに引き続く細胞外基質蛋白の糸球体内蓄積に起因する硬化性病変であると考えられており、この過程では血小板由来成長因子(PDGF)と形質転換成長因子(TGF−β)の関与も重要と考えられているが詳細は不明である。
IgA腎症患者の糸球体メサンギウム細胞に沈着しているIgAは、主にIgA1であることが知られている。このIgA1の由来が上気道、消化管系の粘膜下リンパ球あるいは形質細胞で産生されたものか、骨髄で産生されたものなのかに関しては未だ明確な結論がない。しかしながら体内で生産されるIgAのほとんどは粘膜組織のIgA型形質細胞で作られる実態から、IgA腎症患者のIgA1も粘膜下での産生の可能性が高いと考えられている。
すなわち、本発明はIgA1ヒンジ部のO結合型糖鎖を認識する熱変性処理されたジャカリンを含むことを特徴とし、更には、該熱変性処理されたジャカリンが、認識する単糖を含む糖鎖と混合し変性させることで得られる複数分子よりなる複合体であって、その分子量が20〜800KDaであることを特徴とする。また認識する糖鎖はシアル酸、ガラクトース、N―アセチルガラクトサミンが糖鎖末端に露出しているIgA1であり、単独種あるいは複数種を任意に認識可能であることを特徴とする。
S. Kabirら、Comparative Immunology, Microbiology and Infectious Diseases、16巻、153頁、1993年 S. Kabirら、Journal of Immunological Methods 212巻、193−211頁、1998年
次いで、被検液を反応させ不溶性支持体にIgA1を結合させた後、未反応物を洗浄する。その後、標識酵素複合体抗IgA1抗体を加え不溶性支持体に結合したIgA1に反応させる。標識酵素には通常ELISA法にて使用される、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファダーゼ、グルコースオキシダーゼまたはβガラクトシダーゼなどで良い。結合は通常30分〜48時間程度の反応時間で十分である。その後未反応物を洗浄する。
以上の例は、使用例の一部であって通常の酵素免疫法を利用した診断法に用いられている一般的な方法であり、この方法に限定されるものでもない。
ジャックフルーツの種子(100g)を果肉から分離し、種子を覆う皮の部分を除き、フードプロセッサー等で細かく粉砕する。脱イオン水を加えて撹拌しジャカリン粗精製溶液を得る。不溶部分を濾過により除き、更に遠心分離(3000rpm、10分)し、上清部分を回収した。更に孔サイズ0.22マイクロメートルのメンブレンフィルター(ミリポア社製)で滅菌濾過し、濾液を凍結乾燥した(10g)。乾燥粉末10gを脱イオン水に溶解し、その溶液を再生セルロース系透析膜からなるチューブにいれ(除去分子量10kDa:スペクトラポア社製)、脱イオン水に対して4℃で48時間以上透析を行い、その後凍結乾燥して精製ジャカリン3gを得た。(回収率30%)
上述のようにして作成した精製ジャカリン200mgとガラクトース0.18gを0.05M リン酸塩緩衝液(pH=7.5)20mlに溶解し、更にドデシル硫酸ナトリウムを0.2g加え混合した後、50℃で30分間加熱処理を行った。更に孔サイズ0.22マイクロメートルのメンブレンフィルター(ミリポア社製)で滅菌濾過し、その溶液を再生セルロース系透析膜からなるチューブにいれ(除去分子量10kDa:スペクトラポア社製)、脱イオン水に対して4℃で48時間以上透析を行い、その後凍結乾燥してIgA1ヒンジ部のO結合型糖鎖末端ガラクトース認識性のジャカリン及び/又はジャカリン誘導体を得た。回収率はほぼ100%であった。
次に、精製ジャカリン200mgとN−アセチルガラクトサミン0.22gを0.05Mリン酸塩緩衝液(pH=7.5)20mlに溶解し、更にドデシル硫酸ナトリウムを0.2g加え混合した後、50℃で30分間加熱処理を行った。更に孔サイズ0.22マイクロメートルのメンブレンフィルター(ミリポア社製)で滅菌濾過し、その溶液を再生セルロース系透析膜からなるチューブにいれ(除去分子量10kDa:スペクトラポア社製)、脱イオン水に対して4℃で48時間以上透析を行い、その後凍結乾燥してIgA1ヒンジ部のO結合型糖鎖末端N−アセチルガラクトサミン認識性のジャカリン及び/又はジャカリン誘導体を得た。回収率はほぼ100%であった。
次に、精製ジャカリン100mgを0.05Mリン酸塩緩衝液(pH=7.5)10mlに溶解し、ドデシル硫酸ナトリウムを0.1g加え混合した後、50℃で30分間加熱処理を行う。更に孔サイズ0.22マイクロメートルのメンブレンフィルター(ミリポア社製)で滅菌濾過し、その溶液を再生セルロース系透析膜からなるチューブにいれ(除去分子量10kDa:スペクトラポア社製)、脱イオン水に対して4℃で48時間以上透析を行い、その後凍結乾燥して熱変性ジャカリン及び/又はジャカリン誘導体を得た。回収率はほぼ100%であった。
次に、精製ジャカリン100mgを0.05Mリン酸塩緩衝液(pH=7.5)10mlに溶解し、ドデシル硫酸ナトリウムを0.1g加え混合した後、90℃で90分間加熱処理を行う。更に孔サイズ0.22マイクロメートルのメンブレンフィルター(ミリポア社製)で滅菌濾過し、その溶液を再生セルロース系透析膜からなるチューブにいれ(除去分子量10kDa:スペクトラポア社製)、脱イオン水に対して4℃で48時間以上透析を行い、その後凍結乾燥して熱変性ジャカリン及び/又はジャカリン誘導体を得た。回収率はほぼ100%であった。
上述の方法で作成したジャカリン誘導体の平均分子量はHPLCにより測定した。測定条件は、東ソー3000SWカラムを用い、0.1M塩化ナトリウムを含む0.1Mリン酸塩緩衝液(pH=7)を溶出液とし、カラム温度25℃で、試料体積20μl、試料濃度5mg/ml、流速0.1ml/分、検出は紫外線である280mmの吸収で行った。バイオラット社製の分子量マーカーを用いて溶出時間から相対分子量を算出した。得られたクロマトグラムから数平均分子量とその分布を算出した。結果を(表1)に示す。加熱変性する前の精製ジャカリンの分子量が15kDa程度であるのに対し、熱変性処理を行うことで数分子が複合体を形成した大きさの分子量に増加することがわかる。またその組成比率も概ね4種類の大きさの分布に分類できる。加熱時に同時に処理した糖鎖の種類にはあまり影響せずに、加熱の温度や時間に依存していることがわかる。
CNBr活性化セファロース4B(アマシャム・ファルマシア社製)1.67gを1mM塩酸水溶液で浸し活性化させる。このときゲル体積は5mlになる。そこに正常IgA1(CALBIOCHEM社製)500μgを0.1M塩化ナトリウムを含む炭酸塩緩衝液(pH=8.3)10mlに溶解した溶液を加え、ローテーター(アズワン社製)で2時間回転攪拌し反応させる。その後、0.2Mグリシン溶液に置換し更に2時間回転攪拌させ、未反応の活性化部分をブロックする。反応後のゲルは0.1MTris−HCl緩衝液(pH=7.5)および1M塩化ナトリウムを含む0.1MTris−HCl緩衝液にて洗浄する。その後0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH=5.0)に置換し一晩冷蔵庫で静置した。直径10mmのC−カラム(アマシャム・ファルマシア社製)に、0.05Mリン酸塩緩衝液(pH=7.5)で置換した上述のIgA1固定化ゲルを充填し、IgA1固定化カラムとした。
CNBr活性化セファロース4B(アマシャム・ファルマシア社製)3.34gを1mM塩酸水溶液で浸し活性化させる。このときゲル体積は10mlになる。そこに正常IgA1(CALBIOCHEM社製)1000μgを0.1M塩化ナトリウムを含む炭酸塩緩衝液(pH=8.3)20mlに溶解した溶液を加え、ローテーターで2時間回転攪拌し反応させる。その後、0.2Mグリシン溶液に置換し更に2時間回転攪拌させ、未反応の活性化部分をブロックする。反応後のゲルは0.1MTris−HCl緩衝液(pH=7.5)および1M塩化ナトリウムを含む0.1MTris−HCl緩衝液にて洗浄する。その後0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH=5.0)に置換し一晩冷蔵庫で静置した。2本の直径10mmのC−カラム(アマシャム・ファルマシア社製)に、0.05Mリン酸塩緩衝液(pH=7.5)で置換した上述のIgA1固定化ゲルを5mlずつ充填した。一方のカラムにはアシアロ型糖鎖を調整するために、ノイラミニダーゼ(300mU:生化学工業社製)を加え、もう一方のカラムにはアガラクト型糖鎖を調整するために、ノイラミニダーゼ(300mU:生化学工業社製)とβ―ガラクトシダーゼ(100mU:CALBIOCHEM社製)の混合液を添加し、この2本のカラムを4℃で一晩静置して反応させた。ノイラミニダーゼは正常糖鎖の末端構造であるシアル酸を分解する酵素で、β―ガラクトシダーゼは、ノイラミニダーゼにより切断後に新たに末端構造となるガラクトース残基を認識して切断する分解性酵素である。酵素反応終了後、各カラムに1M塩化ナトリウムを含む0.1MTris−HCl緩衝液を50ml流し、更に0.05Mリン酸塩緩衝液(pH=7.5)を50ml流すことでカラムを洗浄し、それぞれをアシアロ型糖鎖およびアガラクト型糖鎖を有したIgA1固定化カラムとした。
上述のようにして作製したカラムに対し、作製したジャカリン及び/又はジャカリン誘導体溶液を流し吸着させることで、各種糖鎖構造を有するIgA1に対する親和性を検討した。0.1MTris−HCl緩衝液(pH=7.5)を用い、各カラムに一定速度で送液可能なポンプ(東ソー社製)を接続し、上述のジャカリン誘導体を5mg/mlの濃度で500μl添加した。流速を0.1ml/minに設定し、検出は280nmの紫外線吸収測定装置(日立製作所社製)により行った。完全に非吸着成分が流出したのを確認後、溶出液として0.5Mガラクトースを含む0.1MTris−HCl緩衝液(pH=7.5)を用い、流速0.1ml/minで流し、カラムに吸着している成分を流出させた。以上の操作で得られたクロマトグラムの面積比より、カラムに吸着した成分と非吸着成分の組成比を計算した。得られた組成比より各試料の糖鎖認識能の基準として以下の式を用いて評価した。
ここで示した認識係数とは(1)の未処理ジャカリンが認識する能力を1と換算した場合の、ジャカリン誘導体の各種糖鎖型IgA1の認識能力の相対値を意味する。また(4)のジャカリン誘導体は熱処理をしただけの状態なのでブランクとして差し引いて換算した。結果を(表2)に示した。この結果はガラクトースやN−アセチルガラクトサミンと共に熱変性させることで、認識サイトをマスキング(保護作用)する効果を証明している。例えば正常IgA1は実施例1のジャカリンを1とした場合、(2)および(3)のジャカリン誘導体には認識されにくいが、糖鎖不全IgA1は逆に認識係数が高いため、認識されやすいことを示している。特にこうした効果はジャカリン誘導体の凝集性にも大きく関与していると思われる。即ち、この結果から、ある分画から更に認識能の高い分子の精製が、更に認識係数を上げる方法として効果的であることは明らかである。また以上の糖鎖認識能の差は、IgA1ヒンジ部のO結合型糖鎖検出法として利用可能である。
Claims (6)
- IgA1ヒンジ部のO結合型糖鎖を認識する熱変性処理されたジャカリンであって、前記熱変性処理されたジャカリンが、ジャカリンと、ドデシル硫酸ナトリウムに加え、ガラクトースと、N−アセチルガラクトサミンの何れか一方又は両方を水中で混合し、50℃〜90℃、30分〜90分で熱変性させることによって得られ、
前記熱変性処理されたジャカリンの平均分子量が20〜800kDaであることを特徴とする熱変性処理されたジャカリン。 - 前記O結合型糖鎖を構成する単糖に少なくとも、シアル酸、ガラクトース、N-アセチルガラクトサミンの何れかが含まれることを特徴とする請求項1に記載の熱変性処理されたジャカリン。
- 請求項1,2の何れか1項に記載の前記熱変性処理されたジャカリンを含むIgA1の糖鎖検出用腎症診断用器材。
- 請求項1、2の何れか1項に記載の前記熱変性処理されたジャカリンを含むIgA腎症改善用食品。
- 請求項1、2の何れか1項に記載の前記熱変性処理されたジャカリンを含むアレルギー症改善用薬剤。
- 請求項1、2の何れか1項に記載の前記熱変性処理されたジャカリンを含むアレルギー症改善用食品。
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