ところで、近年、光学素子を備えたモジュール(レンズを備えたカメラモジュール等)の製造方法においては、いわゆるウエハレベルレンズプロセスが注目されている。
ウエハレベルレンズプロセスは、樹脂からなる1枚の板に多数個の光学素子が一体的に成形されてなる光学素子アレイに対して、他の部材を実装した後、1個のモジュール毎に個片化して、モジュールを製造する製造方法である。このウエハレベルレンズプロセスでは、多数個のモジュールを一括して製造することが可能となるため、モジュールの製造時間の大幅な短縮が期待できる。
ここで、上述した従来技術に係る各偏芯測定装置ではいずれも、測定用の光を、光学素子の特定領域に集光させる構成であるため、基本的に、1台の装置を用いた1回の測定につき、1個の光学素子に対してしか、測定を実施することができない。
従って、上述した従来技術に係る各偏芯測定装置のいずれかを用いて、上記光学素子アレイを構成する各光学素子の偏芯の量を測定する場合には、以下の(A)または(B)の要領で、測定を実施することとなる。
(A)上記光学素子アレイを構成する各光学素子を個片化して、1個の光学素子毎に測定を行う。
(B)上記光学素子アレイを構成する光学素子の個数と同数台の偏芯測定装置、またはそれに相当する装置を用意し、光学素子アレイを構成する各光学素子を個片化することなく、全光学素子を一括して測定する。
(A)の要領で測定を実施した場合は、光学素子アレイに他の部材を実装する前の段階で、各光学素子を個片化することになるため、上述したウエハレベルレンズプロセスにより多数個のモジュールを一括して製造することが困難になるという問題が発生する。また、この場合は、各光学素子を1個ずつ順次測定することになるため、測定時間が長くなってしまうという問題が発生する。
(B)の要領で測定を実施した場合は、光学素子アレイに多数個の光学素子が成形されていればいる程に、偏芯の量を測定するための装置構成が、複雑かつ大規模になってしまうという問題が発生する。
上記の各問題は、特許文献1に開示されているレンズの偏芯測定装置、特許文献2に開示されている偏芯量の測定方法を実施する装置、さらには、従来における偏芯測定装置(上記反射偏芯測定を実施する装置および上記透過偏芯測定を実施する装置)のいずれの装置においても発生し得る問題であると言える。
また、上述した従来技術に係る各偏芯測定装置ではいずれも、測定対象となる光学素子が1個である場合においても、それぞれ以下の問題が発生する。
特許文献1に開示されているレンズの偏芯測定装置は、測定対象のレンズにおける少なくとも一方の面が非球面である必要があり、両面が球面であるレンズの偏芯測定に適用することができないという問題が発生する。
特許文献2に開示されている偏芯量の測定方法を実施する装置では、基準点の3次元位置の測定と、レンズの表裏両面の形状と、を測定する必要があるため、偏芯測定が煩雑であるという問題が発生する。
従来における偏芯測定装置(上記反射偏芯測定を実施する装置および上記透過偏芯測定を実施する装置)では、光軸付近が平坦である光学素子の偏芯の量を測定する場合に、形成される光スポットが鮮明でないため、測定が困難になる虞があるという問題が発生する。
特許文献3はそもそも、成形されたレンズに対して、装置による偏芯の量の測定を実施するものでない。
本発明は、上記の問題に鑑みて為された発明であり、その目的は、光学素子アレイを構成する各光学素子を個片化する必要なく、全光学素子を一括して測定することが可能であると共に、簡単かつ小規模な装置構成で実現可能である、偏芯測定装置および偏芯測定方法を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、両面が球面であるレンズの偏芯測定に適用可能であり、偏芯測定の煩雑さを低減し、さらに、光軸付近が平坦である光学素子の偏芯の量を測定する場合に、測定が困難になる虞を低減することが可能である、偏芯測定装置および偏芯測定方法を提供することにある。
さらに、本発明のさらに別の目的は、本発明の、偏芯測定装置および偏芯測定方法により、偏芯の量が測定しやすい、光学素子、光学素子アレイ、および光学素子ユニットを提供することにある。
本発明の偏芯測定装置は、上記の問題を解決するために、1枚のレンズである光学素子に入射された光が、該光学素子を透過した透過光を用いて、該光学素子の偏芯の量を測定可能な偏芯測定装置であって、物体側テレセントリック光学系または両側テレセントリック光学系である素子結像光学系を備え、上記素子結像光学系は、入射された上記透過光により、上記光学素子の両面をそれぞれ結像させるものであり、上記光学素子の両面をそれぞれ結像させた、第1および第2透過像の、光量の分布を示すコントラストに基づいて、該光学素子の偏芯の量を測定可能なものであり、1台の上記偏芯測定装置を用いた1回の測定において、複数個の上記光学素子に対して、上記第1および第2透過像のコントラストに基づき各光学素子の偏芯の量を測定する偏芯測定と、上記第1および第2透過像のうちの一方のコントラストに基づき上記複数個の光学素子の各中心間の離間距離を測定するピッチ測定とを実施することを特徴としている。なお、ここで光学素子の両面は、対となる面のいずれもが球面または非球面である。
物体側テレセントリック光学系とは、入射瞳が無限遠にあるとみなすことが可能な光学系である。物体側テレセントリック光学系では、被写体(測定対象となる光学素子)のどこからでも光軸に平行な光束が取り込まれるため、被写体までの距離が変化しても像の形状が変化しないという特性を有する。
両側テレセントリック光学系とは、入射瞳および射出瞳が無限遠にあるとみなすことが可能な光学系である。両側テレセントリック光学系では、上述した物体側テレセントリック光学系の特性に加え、出射する光が光軸に平行となるため、像面が光軸方向に対してわずかに移動しても、主光線が像面を横切る位置がほとんど変化せず、像がフォーカスずれをおこしても、形状の変化がおこらないという特性を有する。また、両側テレセントリック光学系では、像面が光軸に対して、わずかに傾斜しても、形状の変化がおこらないという特性を有する。
本願における「透過像のコントラスト」とは、透過像の明暗のみならず、透過像の形状、透過像の位置、および透過像のサイズ等を含む、透過像の形成に伴い変化する、光量の分布全般を意味する。
上記の構成によれば、本偏芯測定装置は、透過光を素子結像光学系に入射させ、該素子結像光学系がこの透過光を出射することにより、測定対象となる光学素子の結像を行う。透過光には、光学素子における一方の面から出射されたと認められる光線と、同光学素子における他方の面から出射されたと認められる光線と、のそれぞれ異なる光線が存在する。このため、上記光学素子の結像においては、該光学素子の両面がそれぞれ結像された、第1および第2透過像が現れる。第1および第2透過像は、透過光が、物体側テレセントリック光学系または両側テレセントリック光学系である素子結像光学系を通じて形成された像であるため、それぞれが、光学素子における対応する一方の面および他方の面を、上面から見た形状に概ね等しい形状となる。加えて、素子結像光学系の光軸に垂直な方向に関する、第1および第2透過像の相互の位置関係は、同方向に関する、光学素子における対応する一方の面と他方の面との相互の位置関係と概ね等しくなる。従って、第1および第2透過像のコントラストから、光学素子における対応する一方の面と他方の面との、形状および相互の位置関係を知ることが可能となり、これらに基づいて、光学素子の両面間の位置ずれを知ることができるため、同様に、光学素子の偏芯の量を知ることができる。
上記の構成によれば、本偏芯測定装置は、測定用の光を、光学素子の特定領域に集光させる必要なく、該光学素子の偏芯の量を測定することが可能なものであるため、1台の装置を用いた1回の測定につき、複数個の光学素子に対して、測定を実施することができる。従って、光学素子アレイに他の部材を実装する前の段階で、各光学素子を個片化する必要がなく、全光学素子を一括して測定することが可能である。
また、上記の構成によれば、本偏芯測定装置は、全光学素子を一括して測定したい場合に、光学素子アレイに成形されている光学素子の個数に関係なく、必須となる装置構成が、素子結像光学系だけと変わらない。従って、特に、光学素子アレイに多数個の光学素子が成形されている場合に、上述した従来技術に係る各偏芯測定装置との比較上、簡単かつ小規模な装置構成で実現可能となる。
また、上記の構成によれば、本偏芯測定装置は、光学素子の両面を結像させた第1および第2透過像のコントラストから、該光学素子の偏芯の量を測定することが可能となる単純な原理であるため、少なくとも一方の面が非球面であるレンズに限らず、両面が球面であるレンズに対しても、なんら問題なく適用可能である。
また、上記の構成によれば、本偏芯測定装置では、測定作業についても、第1および第2透過像のコントラストから、光学素子の偏芯の量を測定するだけで十分となり、測定作業が簡易となるため、偏芯測定の煩雑さを低減することができる。
また、上記の構成によれば、本偏芯測定装置は、光学素子の両面を結像させた第1および第2透過像のコントラストから、該光学素子の偏芯の量を測定することが可能なものであるが、第1および第2透過像は、対応する光学素子における一方の面または他方の面が平坦でない限り、測定が可能な程度に鮮明となるため、光軸付近が平坦である光学素子の偏芯の量を測定する場合であっても、測定が困難になる虞を低減することが可能である。
また、本発明の偏芯測定装置は、上記第1および第2透過像のコントラストに基づいて、上記光学素子の偏芯の量を測定する偏芯測定部を備えることを特徴としている。
上記の構成によれば、本偏芯測定装置は、光学素子の偏芯の量を測定することができる。
また、本発明の偏芯測定装置は、上記偏芯測定部は、上記第1および第2透過像の各中心間の離間距離を、上記光学素子の偏芯の量とする中心位置偏芯測定部を備えることを特徴としている。
上記の構成によれば、本偏芯測定装置は、第1および第2透過像の各中心間の離間距離を光学素子の偏芯の量とすることで、該偏芯の量を測定することができる。
また、本発明の偏芯測定装置は、上記第1および第2透過像のうち、少なくとも一方は、円形である円形透過像であり、上記偏芯測定部は、上記光学素子の偏芯が発生していない場合における上記円形透過像の直径に対して、実際に結像された上記円形透過像の直径が縮小している寸法から、上記光学素子の偏芯の量を測定する直径縮小偏芯測定部を備えることを特徴としている。
上記の構成によれば、本偏芯測定装置は、光学素子の偏芯の有無および量に応じて変化する、円形透過像の直径が縮小した寸法から、光学素子の偏芯の量を測定することで、該偏芯の量を測定することができる。
また、本発明の偏芯測定装置は、上記第1および第2透過像は、それぞれ複数個存在しており、2個の上記第1透過像の各中心間の離間距離を測定する第1像間距離測定部と、2個の上記第2透過像の各中心間の離間距離を測定する第2像間距離測定部と、のうち、少なくとも一方を備えていることを特徴としている。
複数個の光学素子の各々に関して、第1および第2透過像を形成した場合には、それぞれ該光学素子の個数と同数である、複数個の第1および第2透過像が形成される。
上記の構成によれば、2個の第1透過像の各中心間の離間距離を測定することにより、2個の第1透過像に各々対応する、2個の光学素子のピッチを測定することができる。このことは、第1透過像の各中心間の離間距離を測定する場合のみならず、第2透過像の各中心間の離間距離を測定する場合も同様である。
また、本発明の偏芯測定装置は、上記第1および第2透過像は、それぞれ複数個存在しており、上記中心位置偏芯測定部は、各第1および第2透過像の中心間の離間距離のうち、少なくとも1つを、上記光学素子の偏芯の量とすることを特徴としている。
上記の構成によれば、複数個の光学素子同士の間での偏芯の量を測定することが可能になる。こうした構成は、複数個の光学素子を重ね合わせた構成(組みレンズ)において、各光学素子同士の間での偏芯の量を測定するときに、都合がよい。
また、本発明の偏芯測定装置は、少なくとも1個の上記第1透過像、および、少なくとも1個の上記第2透過像の両方を、画像として表示部に表示させるための撮像素子を備えることを特徴としている。
上記の構成によれば、第1および第2透過像を画像として表示することができる。第1および第2透過像を画像として表示することで、該画像に対する画像処理により、上述した偏芯の各種測定を、簡単に、かつ、各々複数個の第1および第2透過像に対して一括して実施することができる。
本発明の偏芯測定方法は、上記の問題を解決するために、偏芯測定装置により、1枚のレンズである光学素子に入射させた光が、該光学素子を透過した透過光を用いて、該光学素子の偏芯の量を測定する偏芯測定方法であって、物体側テレセントリック光学系または両側テレセントリック光学系である、上記偏芯測定装置を構成する素子結像光学系に、上記透過光を入射させて、該素子結像光学系により、上記光学素子の両面をそれぞれ結像させる工程と、上記光学素子の両面をそれぞれ結像させた、第1および第2透過像の、光量の分布を示すコントラストに基づいて、該光学素子の偏芯の量を測定する工程と、を含み、1台の上記偏芯測定装置を用いた1回の測定において、複数個の上記光学素子に対して、上記第1および第2透過像のコントラストに基づき各光学素子の偏芯の量を測定する偏芯測定と、上記第1および第2透過像のうちの一方のコントラストに基づき上記複数個の光学素子の各中心間の離間距離を測定するピッチ測定とを実施することを特徴としている。なお、ここで光学素子の両面は、対となる面のいずれもが球面または非球面である。
上記の方法によれば、本偏芯測定方法は、本偏芯測定装置と同様に、光学素子アレイを構成する各光学素子を個片化する必要なく、全光学素子を一括して測定することが可能であると共に、簡単かつ小規模な装置構成で測定することができる。また、本偏芯測定方法は、本偏芯測定装置と同様に、両面が球面であるレンズの偏芯測定に適用可能であり、偏芯測定の煩雑さを低減し、さらに、光軸付近が平坦である光学素子の偏芯の量を測定する場合に、測定が困難になる虞を低減することが可能である。
また、本発明の偏芯測定方法は、複数個の上記光学素子が一体的に成形された光学素子アレイを用いて、上記光学素子アレイを構成する各光学素子に対する、両面をそれぞれ結像させる上記工程と、偏芯の量を測定する上記工程と、を行うことを特徴としている。
上記の構成によれば、本偏芯測定方法は、光学素子アレイを構成する各光学素子の偏芯の量を測定することができる。なお、本偏芯測定方法では、素子結像光学系が、被写体から光を取り込むことが可能である該被写体の位置の範囲内にある、全ての光学素子に対して、並行して測定を行うことが可能である。
また、本発明の偏芯測定方法は、2個の上記光学素子アレイを重ね合わせる工程と、2個の光学素子アレイを重ね合わせる上記工程により、重なり合った2個の上記光学素子に対する、両面をそれぞれ結像させる上記工程と、偏芯の量を測定する上記工程と、測定された各偏芯の量に基づいて、重なり合った2個の上記光学素子の、各光軸同士を一直線とさせるように、各光学素子アレイの相対的な位置関係を調整する工程と、を含むことを特徴としている。
上記の方法によれば、偏芯の量の測定結果に基づいて、2個の光学素子間での調芯(2個の光学素子の各光軸を一直線とさせること)ができる。
また、本発明の偏芯測定方法は、予め、少なくとも1個の上記光学素子に対して、該光学素子の片面の外周部分または両面の各外周部分に、入射された光を散乱させる突出部を設ける工程を含むことを特徴としている。
上記の方法によれば、入射された光を散乱させる突出部を結像した像は、他の像部分と比較して暗くなるため、第1および第2透過像の輪郭をより認識しやすくすることができ、該第1および第2透過像のコントラストに基づいた、光学素子の偏芯の量の測定が行いやすくなる。元の光学素子の形状で、第1および第2透過像のコントラストが不鮮明である場合、上記の方法は、レンズ(光学素子)の表裏面のどちらの面でも適用可能である。
また、本発明の偏芯測定方法は、上記光学素子を2個用いて、一方の上記光学素子に対して、該光学素子の片面の外周部分または両面の各外周部分に、入射された光を散乱させる突出部を設ける工程と、一方および他方の各光学素子を、上記突出部を他方の上記光学素子に当接させるように貼り合わせる工程と、を行うことを特徴としている。
上記の方法によれば、一方の光学素子の突出部の高さに応じて、上記の当接部分以外において、各光学素子の間隔を適宜調整することができる。
本発明の光学素子は、上記の問題を解決するために、本発明の偏芯測定装置により、入射された光が透過した透過光が用いられて、偏芯の量が測定される光学素子であって、片面における有効口径の外周部分、または、両面における各有効口径の外周部分に、上記入射された光を散乱させる突出部を設けたことを特徴としている。
上記の構成によれば、透過光を用いて、本光学素子における少なくとも一方の有効口径の部分を結像させた場合に、入射された光を散乱させる突出部を結像した像は、他の像部分と比較して暗くなるため、有効口径の部分を結像させた像の輪郭をより認識しやすくすることができ、該有効口径の部分を結像させた像のコントラストに基づいた、光学素子の偏芯の量の測定が行いやすくなる。有効口径とは、光学系またはその部材のマウント内の所定の面上で、光線束の範囲を規制する開口である。
従って、本光学素子は、第1および第2透過像のコントラストに基づいて、光学素子の偏芯の量を測定可能である、本発明の、偏芯測定装置および偏芯測定方法により、偏芯の量が測定しやすいものである。
本発明の光学素子アレイは、複数個の光学素子が一体的に成形された光学素子アレイであって、複数個の上記光学素子のうち少なくとも1個は、上述した本光学素子であることを特徴としている。本光学素子アレイに備えられた本光学素子は、上記の同様の効果を奏する。
本発明の光学素子ユニットは、上記の光学素子である第1光学素子と、第2光学素子と、を備え、上記第1光学素子の突出部は、上記第2光学素子に当接していることを特徴としている。
上記の構成によれば、第1光学素子の突出部の高さに応じて、第2光学素子との当接部分以外において、第1および第2光学素子の間隔を適宜調整することができる。
以上のとおり、本発明の偏芯測定装置は、1枚のレンズである光学素子に入射された光が、該光学素子を透過した透過光を用いて、該光学素子の偏芯の量を測定可能な偏芯測定装置であって、物体側テレセントリック光学系または両側テレセントリック光学系である素子結像光学系を備え、上記素子結像光学系は、入射された上記透過光により、上記光学素子の、対となる面のいずれもが球面または非球面である両面をそれぞれ結像させるものであり、上記光学素子の、球面または非球面である上記対となる面のそれぞれを結像させた、第1および第2透過像の、光量の分布を示すコントラストに基づいて、該光学素子の偏芯の量を測定可能なものであり、1台の上記偏芯測定装置を用いた1回の測定において、複数個の上記光学素子に対して、上記第1および第2透過像のコントラストに基づき各光学素子の偏芯の量を測定する偏芯測定と、上記第1および第2透過像のうちの一方のコントラストに基づき上記複数個の光学素子の各中心間の離間距離を測定するピッチ測定とを実施する。
本発明の偏芯測定方法は、偏芯測定装置により、1枚のレンズである光学素子に入射させた光が、該光学素子を透過した透過光を用いて、該光学素子の偏芯の量を測定する偏芯測定方法であって、物体側テレセントリック光学系または両側テレセントリック光学系である、上記偏芯測定装置を構成する素子結像光学系に、上記透過光を入射させて、該素子結像光学系により、上記光学素子の、対となる面のいずれもが球面または非球面である両面をそれぞれ結像させる工程と、上記光学素子の、球面または非球面である上記対となる面のそれぞれを結像させた、第1および第2透過像の、光量の分布を示すコントラストに基づいて、該光学素子の偏芯の量を測定する工程と、を含み、1台の上記偏芯測定装置を用いた1回の測定において、複数個の上記光学素子に対して、上記第1および第2透過像のコントラストに基づき各光学素子の偏芯の量を測定する偏芯測定と、上記第1および第2透過像のうちの一方のコントラストに基づき上記複数個の光学素子の各中心間の離間距離を測定するピッチ測定とを実施する。
従って、本偏芯測定装置および本偏芯測定方法は、光学素子アレイを構成する各光学素子を個片化する必要なく、全光学素子を一括して測定することが可能であると共に、簡単かつ小規模な装置構成で測定することができるという効果を奏する。
また、本偏芯測定装置および本偏芯測定方法は、両面が球面であるレンズの偏芯測定に適用可能であり、偏芯測定の煩雑さを低減し、さらに、光軸付近が平坦である光学素子の偏芯の量を測定する場合に、測定が困難になる虞を低減することが可能であるという効果を奏する。
本発明の光学素子は、本発明の偏芯測定装置により、入射された光が透過した透過光が用いられて、偏芯の量が測定される光学素子であって、片面における有効口径の外周部分、または、両面における各有効口径の外周部分に、上記入射された光を散乱させる突出部を設けた。
従って、本光学素子は、本偏芯測定装置および本偏芯測定方法により、偏芯の量が測定しやすいという効果を奏する。本発明の光学素子アレイおよび光学素子ユニットに備えられた本光学素子は、上記の同様の効果を奏する。
〔発明の背景〕
まずは、従来一般的な技術に係る、光学素子を備えたモジュール(カメラモジュール)136の製造方法の概要を、図7(a)〜(d)を参照して説明する。
第1レンズ(光学素子)L1および第2レンズ(光学素子)L2は、主に熱可塑性樹脂131を用いた射出成形により作製される。熱可塑性樹脂131を用いた射出成形では、加熱により軟化した熱可塑性樹脂131を、所定の射出圧(およそ、10〜3000kgf/c)を加えながら金型132に押込んで、熱可塑性樹脂131を金型132に充填して成形を行う(図7(a)参照)。
成形後、熱可塑性樹脂131を金型132から取り出し、1枚のレンズ(光学素子)毎に切断する。ここでは、金型132から取り出された熱可塑性樹脂131を、第1レンズL1と第2レンズL2とに切断する例を示している(図7(b)参照)。
第1レンズL1および第2レンズL2を、レンズバレル(筐枠)133に嵌め込んで(または、圧入して)組み立てる(図7(c)参照)。
図7(c)に示すモジュール136の中間生成物を、鏡筒134に嵌め込んで組み立てる。さらにその後、鏡筒134の、モジュール136における像面(図示しない)側の端部に、センサ135を搭載する。こうして、モジュール136は完成する(図7(d)参照)。
射出成形レンズである第1レンズL1および第2レンズL2に使用される、熱可塑性樹脂131の加重たわみ温度は、摂氏130度程度である。このため、熱可塑性樹脂131は、表面実装で主に適用される技術であるリフローを実施するときの熱履歴(最大温度が摂氏260度程度)に対する耐性が不十分であるため、リフロー時に発生する熱に耐えられない。
よって、モジュール136を基板に実装するときには、センサ135部分のみをリフローにより先に実装する。その後、第1レンズL1および第2レンズL2部分を樹脂で接着する方法か、または、第1レンズL1および第2レンズL2の搭載部分を局所的に加熱するという実装方法が採用されている。
一方、近年、携帯機器等向けカメラモジュールの分野では、ウエハレベルレンズプロセス実施時に適用されるウエハレベルレンズに代表される、アレイ状のレンズ(光学素子アレイ)が開発されている。アレイ状のレンズは、複数個のレンズが一体的に成形されたものであり、より具体的に、樹脂からなる1枚の板に多数個のレンズが一体的に成形されてなるものである。
本発明の背景に係る、光学素子を備えたモジュール(カメラモジュール)148の製造方法を、図8(a)〜(e)を参照して説明する。
近年では、第1レンズL1および/または第2レンズL2の材料として、熱硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂を使用した、いわゆる耐熱カメラモジュールの開発が進められている。ここで説明するモジュール148は、この耐熱カメラモジュールであり、第1レンズL1および第2レンズL2の材料として、熱可塑性樹脂131(図7(a)参照)のかわりに、熱硬化性樹脂(熱硬化性の樹脂)141を用いている。
第1レンズL1および/または第2レンズL2の材料として、熱硬化性樹脂141を使用する理由は、多数個のモジュール148を一括して製造することにより、各モジュール148の製造コストの低減を図るためである。また、第1レンズL1および第2レンズL2の材料として、熱硬化性樹脂141を使用する理由は、モジュール148に対して、リフローの実施を可能とするためである。
モジュール148を製造する技術は、多々提案されている。中でも代表的な技術は、上述した射出成形、および、ウエハレベルレンズプロセスである。特に、最近では、モジュールの製造時間およびその他の総合的知見において、より有利とされている、ウエハレベルレンズ(リフローアブルレンズ)プロセスが注目されている。
ウエハレベルレンズプロセスを実施するにあたっては、熱に起因して、第1レンズL1および第2レンズL2に塑性変形が発生してしまうことを抑制する必要がある。この必要性から、第1レンズL1および第2レンズL2としては、熱が加えられても変形しにくい、耐熱性に非常に優れた熱硬化性樹脂材料または紫外線硬化性樹脂材料を用いたウエハレベルレンズが注目されている。具体的には、摂氏260〜280度の熱が10秒以上与えられても、塑性変形しない程度の耐熱性を有している、熱硬化性樹脂材料または紫外線硬化性樹脂材料を用いたウエハレベルレンズが注目されている。ウエハレベルレンズプロセスでは、アレイ状の金型142および143により、アレイ状のレンズ(光学素子アレイ)144および145をそれぞれ一括成形した後、これらを貼り合わせ、さらに、アレイ状のセンサ147を搭載した後、個別に切断してモジュール148を製造する。
ここからは、ウエハレベルレンズプロセスの詳細について説明する。
ウエハレベルレンズプロセスでは、まず、多数の凹部が形成されたアレイ状の金型142と、該凹部の各々に対応する多数の凸部が形成されたアレイ状の金型143と、により、熱硬化性樹脂141を挟み込み、熱硬化性樹脂141を硬化させ、互いに対応する凹部および凸部の組み合わせ毎にレンズが成形された、アレイ状のレンズを作製する(図8(a)参照)。
図8(a)に示す工程で作製するアレイ状のレンズは、多数個の第1レンズL1が成形されたアレイ状のレンズ144、および、多数個の第2レンズL2が成形されたアレイ状のレンズ145である。そして、アレイ状のレンズ144と、アレイ状のレンズ145と、を、各第1レンズL1および各第2レンズL2に関して、第1レンズL1を通過する光軸La(第1レンズの光軸)と、対応する第2レンズL2を通過する光軸La(第2レンズの光軸)とが、同一直線上に位置するように、貼り合わせる(図8(b)参照)。具体的に、アレイ状のレンズ144および145の位置合わせを行う調芯方法は、光軸La同士を揃える以外にも、撮像しながら調整を行う等、色々な手法が挙げられ、また、位置合わせは、ウエハのピッチ仕上がり精度にも影響される。
アレイ状のレンズ145の、モジュール148における像面(図示しない)側の端部に、各光軸Laと、対応する各センサ146の中心146cとが、同一直線上に位置するように、多数個のセンサ146が搭載されたアレイ状のセンサ147を搭載する(図8(c)参照)。
図8(c)に示す工程により、アレイ状となっている多数個のモジュール148を、1個のモジュール148毎に切断して(図8(d)参照)、モジュール148は完成する(図8(e)参照)。
図8(a)〜(e)に示す、ウエハレベルレンズプロセスにより、多数個のモジュール148を一括して製造することで、モジュール148の製造コストは、低減することができる。さらに、完成したモジュール148を、図示しない基板に実装するときに、リフローにより発生する熱(最大温度が摂氏260度程度)に起因して塑性変形してしまうことを避けるため、第1レンズL1および第2レンズL2は、摂氏260〜280度の熱に対して10秒以上の耐性を有している、熱硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂を用いるのが、より好ましい。第1レンズL1および第2レンズL2に、耐熱性を有している、熱硬化性の樹脂または紫外線硬化性の樹脂を用いることで、モジュール148に対しては、リフローを施すことが可能となる。ウエハレベルレンズプロセスに、さらに、耐熱性を有している樹脂材料を適用することにより、リフローに対応可能な、光学素子を備えたモジュールを安価に製造することが可能である。
ところで、開発および生産管理の自由度を向上させるという観点から、アレイ状のレンズでは、アレイ状で、すなわちアレイ状のレンズを構成する各レンズを個片化することなく、各レンズの偏芯の量を測定するのが好ましい。ウエハレベルレンズ等の、アレイ状のレンズについては、1度に大量のレンズを作製し、同一樹脂に一体的に成形されている各レンズの全てを測定する必要性を生じることが考えられるため、大量かつ高速に、偏芯の量を測定することが可能な、偏芯測定装置が望まれる。
本発明の主たる目的は、上記アレイ状のレンズ(光学素子アレイ)を構成する各レンズ(光学素子)を個片化する必要なく、全レンズを一括して測定することが可能であると共に、簡単かつ小規模な装置構成で実現可能である、偏芯測定装置および偏芯測定方法を提供することと、これらの偏芯測定装置および偏芯測定方法により、偏芯の量が測定しやすい、アレイ状のレンズを提供することと、であると解釈することができる。
〔実施の形態〕
図1に示す偏芯測定装置1は、アレイ状のレンズ(光学素子アレイ)4を構成する各レンズ(光学素子)40の偏芯の量を測定する装置である。
偏芯測定装置1は、光源2、素子結像光学系5、イメージセンサ(撮像素子)6、表示部7、および、偏芯測定部80を備えた構成である。
素子結像光学系5は、入射側レンズ50、開口絞り51、および、出射側レンズ52を備えている。
偏芯測定部80は、中心位置偏芯測定部81、直径縮小偏芯測定部82、第1像間距離測定部83、および、第2像間距離測定部84を備えている。
光源2は、アレイ状のレンズ4に、光3を照射する光源である。光3は、レーザー光、および、白色光等が適用可能である。従って、光源2としては、周知の、レーザー発振装置または白色光を出射する装置が適用可能である。また、光源2は、偏芯測定装置1に備えられているのが必須でなく、偏芯測定装置1と別に存在している構成であってもよい。光3がレーザー光である場合は、偏芯測定装置1における分解能の向上が可能となる。
光源2から出射された光3は、アレイ状のレンズ4における、素子結像光学系5から遠いほうの面全体に照射される。アレイ状のレンズ4における、素子結像光学系5から遠いほうの面には、各レンズ40の球面である第2面42が成形されている。
その後、光3は、アレイ状のレンズ4を透過して、本発明に係る透過光として出射される。該透過光は、アレイ状のレンズ4における、素子結像光学系5から近いほうの面全体から出射されることとなるが、この面には、各レンズ40の球面である第1面41が成形されている。
つまり、上記透過光は、アレイ状のレンズ4を構成する各レンズ40に入射された光3が、各レンズ40を透過したものであると解釈することができる。より具体的に、上記透過光は、光3が、アレイ状のレンズ4における、各レンズ40の第2面42側から、アレイ状のレンズ4に入射され、各レンズ40を含むアレイ状のレンズ4全体を透過して、アレイ状のレンズ4における、各レンズ40の第1面41側から出射されたものであると解釈することができる。
上記透過光は、素子結像光学系5の入射側レンズ50に入射される。入射側レンズ50は、一般的な凸レンズ(集束レンズ)であるので、入射された透過光を、後(イメージセンサ6)側の焦点にて集束させる。
入射側レンズ50により集束された光は、開口絞り51に入射される。開口絞り51は、入射された光の、素子結像光学系5の光軸方向における光線束の直径を制限して出射する。
ここで、開口絞り51は、入射側レンズ50における上記後側の焦点に配置されている。そして、これにより、素子結像光学系5では、アレイ状のレンズ4のどこからでも、光軸に平行な光束となる上記透過光が取り込まれることになる。この場合、アレイ状のレンズ4を構成する各レンズ40から、素子結像光学系5(具体的には、入射側レンズ50)までの距離が変化しても、対応する各レンズ40から形成される像(後述する、第1透過像91および第2透過像92)の形状が変化しない。
開口絞り51を通過した光は、出射側レンズ52に入射される。出射側レンズ52は、一般的な凸レンズ(集束レンズ)である。
ここで、開口絞り51はさらに、出射側レンズ52における前(光源2)側の焦点に配置されている。この場合、開口絞り51を通過した光は、素子結像光学系5の光軸に平行な光束として出射側レンズ52から出射されるように、出射側レンズ52に入射される。換言すれば、出射側レンズ52は、開口絞り51を通過した光が入射されると、この光を集束することで、素子結像光学系5の光軸に平行な光束となる光を出射する。
なお、本実施の形態において、素子結像光学系5は、入射側レンズ50における後側の焦点と、出射側レンズ52における前側の焦点と、の位置が等しく、かつ、これらの互いに等しい各焦点の位置に、開口絞り51が配置された構成である。該構成の場合、素子結像光学系5は、両側テレセントリック光学系である。
イメージセンサ6が、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補型金属酸化膜半導体)で構成されている場合、素子結像光学系5は、両側テレセントリック光学系であるのが好ましい。なぜなら、CCDまたはCMOSで構成されたイメージセンサ6の各画素にマイクロレンズ(図示しない)が装着されている場合、イメージセンサ6では、光束が斜入射すると受光効率が低下するが、この斜入射を抑制するために、素子結像光学系5から出射する光を、光軸に平行とさせるのが有効であるためである。
但し、本発明の最低限の機能を達成するには、素子結像光学系5が、物体側テレセントリック光学系であっても問題ない。該物体側テレセントリック光学系を実現するには、図1に示す素子結像光学系5の構成から、出射側レンズ52を省略した構成とすればよい。イメージセンサ6の入射角度に対する仕様を満足できれば、素子結像光学系5は、両側テレセントリック光学系であっても、物体側テレセントリック光学系であっても構わないが、少なくとも物体側においてテレセントリック特性を有している必要がある。つまり、素子結像光学系5は、物体側テレセントリック光学系であり、かつ、物体像をイメージセンサ6に結像させるような光学系であることが、最低限必要な構成要素となる。また、素子結像光学系5の各レンズは、大口径レンズを使用し、観察視野範囲はできるだけ広いほうが好ましい。
上記「大口径」で規定される口径の具体的な値は、素子結像光学系5を構成する各レンズの構成変更に依存するので、数値で述べるのは困難である。例えば、1個のレンズ40を測定する場合、素子結像光学系5により観察可能な視野範囲は、φ10mm程度必要である。複数個のレンズ40を測定する場合、素子結像光学系5により観察可能な視野範囲は、φ20〜100mm程度であるのが好ましい。観察可能な視野範囲は、大きければ大きい程、多数個のレンズ40を一括して測定できるため好ましい。また、素子結像光学系5において、観察可能な視野範囲を広くするために、大口径化が求められるのは入射側レンズ50である。場合によって、入射側レンズ50は、複数のレンズによって構成される。以上のことから、上記「大口径」で規定される口径の具体例は、換言すれば、素子結像光学系5を構成する各レンズにより、φ20〜100mm程度の、観察可能な視野範囲を実現することができる程度の口径である。
光源2から照射された光3は、光線に略垂直である、アレイ状のレンズ4における、平坦部分(すなわち、各レンズ40の第2面42を除く第2面42側の面)に入射されると、ある程度の反射を除いて、アレイ状のレンズ4の面の影響を受けずに直進し、素子結像光学系5の像面(図示しない)において、明るい像として観察される。一方、光線に垂直な面に対して傾きを有している、アレイ状のレンズ4における、各レンズ40の第1面41および第2面42は、照射された光3を屈折および散乱させるため、素子結像光学系5の像面において、上記明るい像と比較して、暗い像として観察される。
また、同一のレンズ40の第1面41と第2面42とでは、照射された光3が、それぞれ異なる屈折および散乱を呈する。このため、厳密に述べると、上記透過光では、各レンズ40に関して、アレイ状のレンズ4における、レンズ40の第1面41から出射されたと認められる光線と、アレイ状のレンズ4における、同レンズ40の第2面42から出射されたと認められる光線と、の、それぞれ異なる光線が存在する。このため、素子結像光学系5が、入射された上記透過光により、レンズ40の結像を行う場合、同レンズ40から形成される像としては、第1面41が結像された第1透過像91(図2参照)と、第2面42が結像された第2透過像92(図2参照)と、が現れる。
第1透過像91および第2透過像92は、上記透過光が、両側テレセントリック光学系である素子結像光学系5を通じて形成された像であるため、それぞれが、対応する第1面41および第2面42を、上面から見た形状に概ね等しい形状となる。加えて、素子結像光学系5の光軸に垂直な方向に関する、第1透過像91および第2透過像92の相互の位置関係は、同方向に関する、対応する第1面41と第2面42との相互の位置関係と概ね等しくなる。さらに、各第1透過像91および各第2透過像92、さらには、上記平坦部分を透過した透過光により形成される明るい像は互いに、素子結像光学系5の像面において、アレイ状のレンズ4における、対応する各レンズ40の第1面41および第2面42の各傾斜に応じて変化する、コントラスト差が発生する。
ここで、本願において「像のコントラスト」とは、像の明暗のみならず、像の形状、像の位置、および像のサイズ等を含む、像形成に伴い変化する、光量の分布を全般に意味しているものとする。
出射側レンズ52から出射された光は、イメージセンサ6に入射される。イメージセンサ6は、CCDまたはCMOS等の固体撮像素子により構成された撮像素子であり、入射された光を電気信号に変換して、該電気信号を表示部7および偏芯測定部80に供給する。
ここで、イメージセンサ6は、素子結像光学系5の像面に該当する位置に配置されている。従って、イメージセンサ6には、各レンズ40に関する、第1透過像91および第2透過像92、さらには、上記平坦部分を透過した透過光により形成される明るい像を示す、アレイ状のレンズ4からの全ての上記透過光が入射されることとなる。
表示部7は、イメージセンサ6から供給された上記電気信号に基づいて、イメージセンサ6に入射された光により形成された、各レンズ40に関する、第1透過像91および第2透過像92を、画像として表示する。なお、表示部7としては、液晶表示装置、プラズマディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube:ブラウン管)、および、有機EL(ElectroLuminescence:電界発光)表示装置等の、公知の種々の表示装置を用いることができる。
偏芯測定部80は例えば、動作が開始される旨を示す図示しないCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)からの所定の入力信号、または、該電気信号の入力をトリガとして、該電気信号から、各レンズ40の偏芯の量を測定するものである。偏芯測定部80は、各レンズ40の偏芯の量を測定した結果を、図1に示すとおり表示部7に表示させてもよいし、他にも、メモリ等の図示しない記憶媒体(記録媒体)に格納してもよい。
図2は、レンズ40の偏芯が発生していない場合の、中心位置偏芯測定部81による偏芯測定の要領を説明する図である。図3は、レンズ40の偏芯が発生している場合の、中心位置偏芯測定部81による偏芯測定の要領を説明する図である。
同一のレンズ40の両面をそれぞれ結像した、第1透過像91および第2透過像92は、対応する第1面41および第2面42を上面から見た形状とそれぞれ概ね等しく、かつ、第1透過像91と第2透過像92との相対的な位置関係は、レンズ40の偏芯が発生していない場合の(以下、「理想的な」と称する)光軸に垂直な方向に関する、対応する第1面41と第2面42との相対的な位置関係と概ね等しい(図2および図3参照)。
中心位置偏芯測定部81は、イメージセンサ6(図1参照)から供給された電気信号から、第1透過像91および第2透過像92の各形状、さらには、第1透過像91と第2透過像92との相対的な位置関係を示す情報を得る。
中心位置偏芯測定部81は、得られた、第1透過像91の形状を示す上記情報から、第1透過像91の中心93を算出すると共に、第2透過像92の形状を示す上記情報から、第2透過像92の中心94を算出する。
なお、各中心93および94を算出する手法としては、例えば最小二乗法により、第1透過像91の形状を示す上記情報に基づいて中心93を算出すると共に、第2透過像92の形状を示す上記情報に基づいて中心94を算出する手法が考えられる。これは、球面である、第1面41および第2面42を上面から見た形状はいずれも、明らかに円形となるため、第1透過像91および第2透過像92の各形状も同様に、明らかに円形となる(円形透過像である)ことから、適用可能な手法である。
最小二乗法により、第1透過像91の形状を示す上記情報に基づいて中心93を算出するにはまず、第1透過像91の内側に、円の中心93xyを設定し、これを仮想的な中心点とする。次に、中心93xyを原点座標として、第1透過像91を中心93xyから均等に、すなわち、例えば角度aと角度bと・・・が互いに等しくなるように、第1透過像91を分割する。このとき、分割を行う各線と、第1透過像91の円周との交点(点1、点2、・・・)の1つである点iの座標(xi、yi)はそれぞれ、下記数式(3)および(4)となる。そして、このとき、第1透過像91の中心座標(α、β)、および、第1透過像91の半径Rは、以下の数式(5)〜(7)により求めることができる。第2透過像92の形状を示す上記情報に基づいて中心94を算出する場合も、同様の要領で算出すればよい(図9参照)。
なお、最小二乗法により、円(第1透過像91および第2透過像92)の中心を算出する技術自体は、従来よく知られた周知慣用技術で十分に実現可能なものであるため、容易である。
以上の要領でそれぞれ求められた、中心93はレンズ40の第1面41の中心を、中心94はレンズ40の第2面42の中心を、それぞれ対応する第1透過像91および第2透過像92上で示している。
その後、中心位置偏芯測定部81は、それぞれ算出した中心93および94から、中心93と中心94との離間距離(第1および第2透過像の各中心間の離間距離)を求める。
ここで、図2では、中心93と中心94との位置が互いに一致している。この場合、理想的な光軸に垂直な方向に関しては、レンズ40の第1面41の中心と、レンズ40の第2面42の中心とが、互いに同じ位置となる。従って、レンズ40の第1面41の中心を通っている光軸41aと、レンズ40の第2面42の中心を通っている光軸42aとは、互いに一致し、この場合、レンズ40の偏芯が発生していないとすることができる。
一方、図3では、中心93と中心94との位置が互いに異なっており、これらの離間距離はdである。この場合、理想的な光軸に垂直な方向に関しては、レンズ40の第1面41の中心と、レンズ40の第2面42の中心とが、互いに距離dだけ離れている。従って、レンズ40の第1面41の中心を通っている光軸41aと、レンズ40の第2面42の中心を通っている光軸42aとは、理想的な光軸に垂直な方向に関して互いに距離dだけ離間して存在し、この場合、量がdであるレンズ40の偏芯が発生しているとすることができる。
素子結像光学系5は、上述した両側テレセントリック光学系の特性より、レンズ40における両面のそれぞれから、光軸に平行な光束が取り込まれる。このため、レンズ40における両面の各中心が、理想的な光軸の方向に一直線となっている場合、これらの各中心を、それぞれ対応する第1透過像91および第2透過像92上で示している、第1透過像91の中心93と第2透過像92の中心94とは、互いに同じ位置となる。一方、レンズ40における両面の各中心が、理想的な光軸の方向に一直線となっておらず、該光軸に垂直な方向に関して位置ずれを呈している場合、該位置ずれに対応して、第1透過像91の中心93と第2透過像92の中心94とは、互いに離間される。従って、この離間距離を、レンズ40における両面の各中心における位置ずれの量とみなすことで、中心位置偏芯測定部81は、レンズ40の偏芯(いわゆる、平行偏芯)の量を測定することができる。
図4は、直径縮小偏芯測定部82による偏芯測定の要領を説明する図である。
なお、以下の、直径縮小偏芯測定部82に係る詳細な説明では、レンズ40の偏芯測定の要領の一例として、直径縮小偏芯測定部82が、第1透過像91の形状を示す情報に基づいて、レンズ40の第1面41での偏芯の量θを測定する場合についてのみ説明を行っている。但し、直径縮小偏芯測定部82は、第2透過像92の形状を示す情報に基づいて、レンズ40の第2面42での偏芯の量を測定する場合、さらには、これらの両方を測定する場合であっても、基本的な偏芯測定の原理(要領)が同様であり、当業者であれば、以下の詳細な説明から、レンズ40の第1面41および/または第2面42の偏芯の量を測定することは、容易に実施可能であろう。
直径縮小偏芯測定部82は、イメージセンサ6(図1参照)から供給された電気信号から、第1透過像91の形状を示す情報を得る。
直径縮小偏芯測定部82は、得られた、第1透過像91の形状を示す上記情報から、第1透過像91の直径aを算出する。
なお、直径aを算出する手法としては、例えば上述した最小二乗法により算出する手法が考えられる。これは、第1透過像91の形状が円形となる(円形透過像である)ことから、適用可能な手法である。
最小二乗法により、第1透過像91の形状を示す上記情報に基づいて直径aを算出する手法は、最小二乗法により、中心93を算出する手法の説明時に、既に述べた(すなわち、上記数式(5)の解×2)ので、ここでは詳細な説明を省略する(図9参照)。
なお、最小二乗法により、円(第1透過像91)の直径を算出する技術自体は、従来よく知られた周知慣用技術で十分に実現可能なものであるため、容易である。
以上の要領で求められた、直径aは、レンズ40の第1面41の直径を、第1透過像91上で示している。
ここで、図4に示す、レンズ40(図1参照)の第1面41では、直径縮小偏芯測定部82により求められた、第1透過像91の直径が、上述したとおりaである。直径がaである場合、第1面41では、偏芯が発生していないとすることができる。
一方、図4に示す、レンズ40(図1参照)の第1面41tは、第1面41に対して、角度θだけ上方に傾いた偏芯(いわゆる、傾き偏芯)が発生している場合を示している。また、図4では、第1面41の結像と同じ要領で、第1面41tを結像させた第1透過像を、第1透過像91tとして示している。直径縮小偏芯測定部82により求められた、第1透過像91tの直径は、上記のaよりも短いbとなっている。
そして、直径縮小偏芯測定部82は、上記の直径aおよび直径bを用いて、下記数式(2)により、偏芯が発生している角度θを求めることで、第1面41tにおいて、量がθであるレンズ40の偏芯が発生しているとし、結果、偏芯の量θを測定することができる。
θ=arccos(b/a) ・・・(2)
なお、直径縮小偏芯測定部82は、図4に示す、レンズ40(図1参照)の第1面41が、角度θだけ下方に傾いた偏芯であっても同様に、上記数式(2)により角度(偏芯の量)θを測定することができる。
また、第1面41tが円形でなく楕円形である場合は、上記直径bのかわりに、該楕円形の短軸を用いればよい。
図5は、第1像間距離測定部83による、各レンズ40間ピッチ測定の要領を説明する図である。
レンズ401〜403は、3個の各レンズ40を示している。但し、第1像間距離測定部83による、各レンズ40間ピッチ測定の要領が適用可能な、レンズ40の個数は、2個以上であれば、特に限定されない。
各レンズ401〜403には、各々対応する、第1面411〜413(第1面41)および第2面421〜423(第2面42)が設けられている。
第1透過像911〜913(第1透過像91)は、各々対応する、第1面411〜413が、素子結像光学系5(図1参照)により結像されたものである。第2透過像921〜923(第2透過像92)は、各々対応する、第2面421〜423が、素子結像光学系5(図1参照)により結像されたものである。
第1像間距離測定部83は、イメージセンサ6(図1参照)から供給された電気信号から、各第1透過像911〜913の中心931〜933を算出する。
なお、第1像間距離測定部83が、各中心931〜933を算出するまでの処理は、中心位置偏芯測定部81が、中心93を算出するまでの処理(図2および図3参照)を、各レンズ401〜403に対して実施するだけで十分である。
そして、第1像間距離測定部83は、算出した各中心931〜933における、2個の中心間の離間距離から、対応する2個の各レンズ401〜403のいずれかのピッチを測定する。
例えば、第1像間距離測定部83は、中心931と中心932との離間距離を、レンズ401および402間ピッチとし、中心931と中心933との離間距離を、レンズ401および403間ピッチとする。
さらに、第1像間距離測定部83のかわりに、第2像間距離測定部84により、各レンズ40間ピッチ測定を実施してもよい。
第2像間距離測定部84により、各レンズ40間ピッチ測定を実施する場合、第2像間距離測定部84はまず、イメージセンサ6(図1参照)から供給された電気信号から、各第2透過像921〜923の中心941〜943を算出する。
なお、第2像間距離測定部84が、各中心941〜943を算出するまでの処理は、中心位置偏芯測定部81が、中心94を算出するまでの処理(図2および図3参照)を、各レンズ401〜403に対して実施するだけで十分である。
そして、図示していないが、第2像間距離測定部84は、算出した各中心941〜943における、2個の中心間の離間距離から、対応する2個の各レンズ401〜403のいずれかのピッチを測定する。
例えば、第2像間距離測定部84は、中心941と中心942との離間距離を、レンズ401および402間ピッチとし、中心941と中心943との離間距離を、レンズ401および403間ピッチとする。
なお、第1像間距離測定部83および第2像間距離測定部84は、その一方だけが備えられている構成であっても、各レンズ40間ピッチ測定が実施可能であるため、問題ない。
各第1面411〜413が別々に結像された、各第1透過像911〜913の位置は、素子結像光学系5の光軸に垂直な方向に関する各第1面411〜413の位置関係が反映されることとなる。このことから、該方向に分散させるように各レンズ401〜403を配置すれば、各中心931〜933を算出するまでの処理については、単純に中心93を算出するまでの処理を、各レンズ401〜403に対して実施するだけで、なんら問題なく実施できる。また、たとえ各レンズ401〜403が、該方向において重なり合うように設けられたとしても、重なり合うことに伴うコントラストの変化により、各第1透過像911〜913をある程度明確に判別できれば、上記処理の実施にあたって、さほど大きな支障をきたさない。
同様に、各第2面421〜423が別々に結像された、各第2透過像921〜923の位置は、素子結像光学系5の光軸に垂直な方向に関する各第2面421〜423の位置関係が反映されることとなる。このことから、該方向に分散させるように各レンズ401〜403を配置すれば、各中心941〜943を算出するまでの処理については、単純に中心94を算出するまでの処理を、各レンズ401〜403に対して実施するだけで、なんら問題なく実施できる。また、たとえ各レンズ401〜403が、該方向において重なり合うように設けられたとしても、重なり合うことに伴うコントラストの変化により、各第2透過像921〜923をある程度明確に判別できれば、上記処理の実施にあたって、さほど大きな支障をきたさない。
さらに図5では、中心位置偏芯測定部81(図2および図3参照)をさらに組み合わせて、各レンズ401〜403の偏芯の量を測定している。なお、中心位置偏芯測定部81により、各レンズ401〜403の偏芯の量を測定するためには、量がdであるレンズ40の偏芯を測定した、上述した一連の要領(図2および図3参照)を、各レンズ401〜403に対して実施するだけで十分である。
さらには、図示はしていないが、直径縮小偏芯測定部82により、各レンズ401〜403の偏芯の量を測定するためには、量がθであるレンズ40の第1面41の偏芯を測定した、上述した一連の要領(図4参照)を、各レンズ401〜403の第1面411〜413(第2面421〜423であってもよい)に対して実施するだけで十分である。
このように、中心位置偏芯測定部81、直径縮小偏芯測定部82、第1像間距離測定部83、および、第2像間距離測定部84は、任意に組み合わせることが可能である。さらに、中心位置偏芯測定部81および直径縮小偏芯測定部82は、複数個のレンズ40の各々に対して、偏芯の量を測定することが可能である。さらに、第1像間距離測定部83および第2像間距離測定部84は、複数個のレンズ40の各々に対して、任意の2個のレンズ40間のピッチを測定することが可能である。
なお、レンズ40の偏芯の量が非常に大きい場合には、偏芯測定部80による測定を実施するまでもなく、例えば、素子結像光学系5の像面に置かれたスクリーン(図示しない)に投影された、第1透過像91および第2透過像92をユーザが目視して、第1透過像91および第2透過像92のコントラストから、レンズ40の偏芯の量を概算する測定手法も考えられる。これにより、測定としては、粗い測定を実施することも可能である。この場合、偏芯測定部80は省略可能である。
偏芯測定装置1は、測定用の光3を、レンズ40の特定領域に集光させる必要なく、該レンズ40の偏芯の量を測定することが可能なものであるため、1台の装置を用いた1回の測定につき、複数個のレンズ40に対して、測定を実施することができる。従って、アレイ状のレンズ4に、例えば、図8(c)に示すアレイ状のセンサ147等の部材を実装する前の段階で、アレイ状のレンズ4を構成する各レンズ40を個片化する必要がなく、各レンズ40の全てを一括して測定することが可能である。
なお、各レンズ40の偏芯の量を一括して測定したい場合には、上述した中心位置偏芯測定部81および直径縮小偏芯測定部82での各種測定要領を、1個のレンズ40から形成された第1透過像91および第2透過像92毎に対して、一括して実施すればよい。各レンズ40から形成された第1透過像91および第2透過像92を、1個のレンズ40から形成されたもの毎に区別できれば、その各々に対して上述した中心位置偏芯測定部81および直径縮小偏芯測定部82での各種測定要領を同時に実施するだけで、各レンズ40の偏芯の量を一括して測定することは、単純かつ簡単に実現可能である。特に、アレイ状のレンズ4を構成する各レンズ40の全てから形成された、第1透過像91および第2透過像92を一括して、イメージセンサ6を用いて撮像し、撮像した各第1透過像91および第2透過像92に対する画像処理により、中心位置偏芯測定部81および直径縮小偏芯測定部82が各種測定要領を実施することで、偏芯の量の測定を、各レンズ40に対して一括して実施することができる。
偏芯測定装置1は、各レンズ40の全てを一括して測定したい場合に、その個数に関係なく、最低限必須となる装置構成が、素子結像光学系5だけと変わらない。従って、特に、アレイ状のレンズ4に多数個のレンズ40が成形されている場合に、上述した従来技術に係る各偏芯測定装置との比較上、簡単かつ小規模な装置構成で実現可能となる。
偏芯測定装置1は、第1透過像91および第2透過像92のコントラストから、レンズ40の偏芯の量を測定することが可能となる単純な原理であるため、少なくとも一方の面が非球面であるレンズに限らず、両面が球面であるレンズに対しても、なんら問題なく適用可能である。
また、偏芯測定装置1では、測定作業についても、第1透過像91および第2透過像92のコントラストから、レンズ40の偏芯の量を測定するだけで十分となり、測定作業が簡易となるため、偏芯測定の煩雑さを低減することができる。
また、第1透過像91および第2透過像92は、対応するレンズ40における第1面41または第2面42が平坦でない限り、測定が可能な程度に鮮明となるため、光軸付近が平坦であるレンズ40の偏芯の量を測定する場合であっても、測定が困難になる虞を低減することが可能である。
なお、偏芯測定装置1による、偏芯測定の精度は、素子結像光学系5を備える観察系の分解能に応じて、高精度化させることが可能である。素子結像光学系5において、第1透過像91および第2透過像92の分解能を向上させる手法については、詳細を省略するが、分解能としては、検出系により第1透過像91および第2透過像92の各寸法の測定を行った場合に、絶対精度が1μm以下であるのが好ましい。この場合、第1透過像91および第2透過像92の各寸法精度は、絶対精度に近い値で測定することが可能である。この結果、円形である、第1透過像91および第2透過像92の各中心間の相対距離から、偏芯およびレンズ間ピッチを測定した結果も同様に、絶対精度と同程度の精度で測定が可能となる。さらに、球面、または非球面の形状が成型プロセス能力により、回転非対称になっていたり、設計値に対する誤差を有していたりする場合においても、観察像として用いる部分の転写性さえ良好に出来ていれば測定が可能である。一方、従来技術では、面形状が対象で形状誤差量が小さいことが必須となる。
図6は、レンズ40の変形例であるレンズ40´の構成と、レンズ40´から形成される第1透過像91および第2透過像92のコントラストと、の関係を示す図である。
図6に示すレンズ40´は、レンズ40の構成に対して、光3が入射される面と反対側の面における有効口径の外周部分、すなわち、第1面41の外周部分に、突出部が設けられている点が異なる。この外周部分とは、いわゆるレンズのコバである。該突出部は、他にも、第2面42の外周部分(コバ)に設けられていてもよいし、第1面41および第2面42の両外周部分(コバ)に設けられていてもよい。
上記突出部は、第1面41および/または第2面42の周囲において、鉛直上方に突出した突出領域45、および、突出領域45の周囲において突出領域45に対する段差を形成している段差領域46を有している。図6では、上記突出部が第1面41側に設けられているため、突出領域45が第1面41の周囲において、鉛直上方に突出している。
測定対象となるレンズの形状によっては、第1および第2透過像を区別することが簡単でない場合もある。
転写によりレンズを形成するプロセスに対しては、例えば、コバに上記突出部を設け、この突出部を結像させた像を、さらに用いることで、測定が行いやすくなる。
すなわち、上記突出部の突出領域45は、入射された光3(図1参照)を、ほとんど散乱させることなく直進させる。これにより、突出領域45を結像した像部分は、他の像(第1透過像91および第2透過像92)部分と比較して明るくなる(図6の符号95参照)。
一方、上記突出部の段差領域46は、入射された光3(図1参照)を散乱させる。これにより、段差領域46を結像した像部分は、他の像部分と比較して暗くなる(図6の符号96参照)。
この結果、明るい領域95および暗い領域96により、第1透過像91および第2透過像92では、その輪郭を認識しやすくなるため、第1透過像91および第2透過像92のコントラストに基づいた、レンズ40´の偏芯の量の測定が行いやすくなる。
なお、図6に示すとおり、第1面41側に上記突出部を設ける場合、レンズ40´における、光3が入射される面における有効口径の外周部分、すなわち、第2面42の外周部分においては、中心を求める面の環中心を求める面の反対面の形状による光線を、曲げたり散乱したりする影響を少なくするため、平面であることが好ましい。
レンズ40´は、アレイ状のレンズ4(図1参照)を構成する、各レンズ40のうちの1個であってもよい。
図10は、2個のレンズ40pおよび40qを貼り合わせてなるレンズ40rの偏芯が発生していない場合の、中心位置偏芯測定部81による偏芯測定の要領を説明する図である。図11は、レンズ40rの偏芯が発生している場合の、中心位置偏芯測定部81による偏芯測定の要領を説明する図である。
図10および図11に示すレンズ40rにおける、2個のレンズ40pおよび40qの貼り合わせは必須でなく、レンズ40pおよび40qは互いに、レンズ40rの理想的な光軸に概ね沿った方向に重なり合っていればよい。
レンズ40pは、第1面41pと第2面42pとを、それぞれ有している。レンズ40qは、第1面41qと第2面42qとを、それぞれ有している。
中心位置偏芯測定部81は、図2および図3で説明したのと同様の要領で、レンズ40pとレンズ40qとの間で発生する偏芯の量ddを測定することができる。
第1面41p、第2面42p、第1面41q、および第2面42qを、素子結像光学系5が結像させた像は、それぞれ、第1透過像91p、第2透過像92p、第1透過像91q、および第2透過像92qとなる。
中心位置偏芯測定部81は、例えば上述した最小二乗法により、第1透過像91p、第2透過像92p、第1透過像91q、および第2透過像92qの各中心である、中心93p、中心94p、中心93q、および中心94qを、それぞれ算出する。
そして、中心位置偏芯測定部81は、それぞれ算出した中心93p、中心94p、中心93q、および中心94qから、考えられる全ての、中心同士の離間距離を求める。
中心93p、中心94p、中心93q、および中心94qの全てが同じ位置となる場合は、レンズ40p間、レンズ40q間、さらには、レンズ40pとレンズ40qとの間の全てにおいて、偏芯は発生していない(図10参照)。
中心93pおよび94pと、中心93qおよび94qと、が互いに距離dd離間されている場合、レンズ40pとレンズ40qとの間においては、量がddであるレンズ40rの偏芯が発生している(図11参照)。
光軸41pa、光軸42pa、光軸41qa、および光軸42qaは、それぞれ、第1面41pの中心を通っている光軸、第2面42pの中心を通っている光軸、第1面41qの中心を通っている光軸、第2面42qの中心を通っている光軸に対応している。
図10の場合、光軸41pa、光軸42pa、光軸41qa、および光軸42qaは、互いに一致し、この場合、中心位置偏芯測定部81は、レンズ40rの偏芯が発生していないとすることができる。
一方、図11の場合、光軸41paおよび42paと、光軸41qaおよび42qaとは、レンズ40rの理想的な光軸に垂直な方向に関して互いに距離ddだけ離間して存在し、この場合、中心位置偏芯測定部81は、量がddであるレンズ40rの偏芯、具体的には、レンズ40pとレンズ40qとの間の偏芯が発生しているとすることができる。
なお、レンズ40p間およびレンズ40q間での各偏芯の量dは、図2および図3に示すのと同様の要領(偏芯の量dを求める要領)で実施すればよい(図15および図16参照)。すなわち、図15および図16の符号「40p、41p、42p」「91p、92p、93p、94p」「41pa、42pa」はそれぞれ、図2および図3の符号「40、41、42」「91、92、93、94」「41a、42a」に対応しているものとして解釈すればよい。ここでは、便宜上、レンズ40p間での偏芯の量dを測定する場合のみを示しているが、レンズ40q間での偏芯の量dを測定する場合においても、同様である。
中心位置偏芯測定部81は、レンズ40p間およびレンズ40q間での各偏芯の量に加え、図11に示す、レンズ40pとレンズ40qとの間の偏芯の量ddを測定することで、レンズ40rの偏芯の量を測定することができる。
図10および図11に係る偏芯測定の要領は、樹脂からなる1枚の板に複数個のレンズ40pが一体的に成形されたアレイ状のレンズ4p、および、樹脂からなる1枚の板に複数個のレンズ40qが一体的に成形されたアレイ状のレンズ4qに対しても、同様に適用可能である(図12参照)。
さらに、図10および図11に係る偏芯測定の実施と、レンズ40pおよび40qの相対的な位置関係の調整と、を、同時にまたは交互に実施することで、レンズ40rの調芯(2個のレンズの各光軸を一直線とさせること)が可能である。この調芯は、1個のレンズ40rに対しても、複数個のレンズ40rに対しても、同様に実施可能である。
さらに、上記調芯は、レンズ40pおよび40qの相対的な位置関係の調整のかわりに、図12に示すアレイ状のレンズ4pおよび4qの相対的な位置関係の調整を実施することでも、実施可能である。
図13(a)〜(c)には、上記調芯の要領の概略を示している。具体的に、図13(a)〜(c)には、図12に示すアレイ状のレンズ4pおよび4qの相対的な位置関係の調整を実施する場合を示している。
まず、アレイ状のレンズ4pと、アレイ状のレンズ4qと、を、貼りあわせることなく単に重ね合わせ、この状態で、各レンズ40pと対応する各レンズ40qとの間での偏芯の量ddを、図10および図11で示す要領により測定する(図13(a)参照)。
図13(a)に係る偏芯測定後、アレイ状のレンズ4pまたは4qを、レンズ40r(図10参照)の理想的な光軸に対して垂直となり、かつ、互いに垂直である、X方向およびY方向に、必要に応じて移動させ、調芯を図る(図13(b)参照)。
また、図13(a)に係る偏芯測定後、アレイ状のレンズ4pまたは4qを、レンズ40rの理想的な光軸に対して垂直となる方向に、必要に応じて回転(角度γ参照)させ、調芯を図る(図13(c)参照)。
なお、図13(b)および(c)に係る各調芯を実施する順序は、特に限定されず、どちらの調芯を先に実施してもよい。また、図13(b)および(c)に係る調芯後毎には、必要に応じて適宜、図13(a)に係る偏芯測定を再度実施するのが好ましい。さらに、図13(a)に係る偏芯測定を継続的に実施しながら、図13(b)および(c)に係る各調芯を実施してもよい。
レンズ40r(図10等参照)に、突出領域45および段差領域46を有している上記突出部(図6参照)を設けた場合には、さらに、該突出部の高さに応じて、レンズ40pとレンズ40qとの間隔を調整することが可能である(図14参照)。
図14に示すレンズ40r´は、レンズ40rの変形例である。レンズ40r´において、レンズ40pおよび40qにはそれぞれ、偏芯測定時において素子結像光学系5に近い側(図14の断面図下側)となる面における、有効口径の外周部分に、上記突出部(突出領域45および段差領域46)が設けられており、これらのレンズをそれぞれ、レンズ40p´および40q´(第1および第2光学素子)と称している。
ここで、レンズ40p´とレンズ40q´とは、レンズ40p´の上記突出部がレンズ40q´に当接するように貼り合せている。そして、これにより、該当接していない部分において、レンズ40p´とレンズ40q´とは、一定間隔、離間されることとなる。レンズ40p´の上記突出部の高さに応じて、該一定間隔は変更することができる。従って、レンズ40p´の上記突出部により、レンズ40p´とレンズ40q´との間隔を調整することができる。
偏芯測定装置1では、被写体までの距離が変化しても像の形状が変化しないという特性を有する素子結像光学系5により、測定対象となるレンズの各面を結像させて、像(第1および第2透過像)をそれぞれ形成し、これらの各像のコントラストに基づいて、該レンズの偏芯測定等を行う。このため、偏芯測定装置1では、測定対象となるレンズの各面のうち、どの面が素子結像光学系5に近い側(または、光源2に近い側)となっているかに関わらず、以上で説明したのと同様の各要領で、該レンズの偏芯測定等が可能である。本実施の形態では、便宜上、第1面が素子結像光学系5に近い側の面である場合と、第2面が素子結像光学系5に近い側の面である場合と、の両方を、具体的な実施例に応じて適宜考慮しているが、たとえ、これらの面が光源2に近い側の面であったとしても、得られる像のコントラストはほとんど変化しないため、測定になんら支障を与えるものではない。
なお、本発明に係る光学素子としては、レンズ以外にも、偏芯の概念が存在する、全ての透明光学素子が挙げられる。また、光学素子としてのレンズには、撮像レンズ、集光用レンズ、照明用レンズ等が存在する。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。