JP5259748B2 - 木材の耐性強化処理方法と該方法により製造された耐性強化木材 - Google Patents

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Description

本発明は、木材の種々の耐性を強化するところの木材の耐性強化処理方法と該方法により製造された耐性強化木材に関する。
木材は、柱や塀、家屋の構成材料といった広い意味での建築材料として使用される他、工作性、加工容易性の理由により工芸用材料として使用されたりすることが多い。
こうした木材の使用に際しては、その耐性が高いほど経済価値も高くなるし、使用対象によっては、安全性なども問題となる。
このような一般的な木材の耐性強化を図った提案としては、次の従来技術を挙げることができる。
特開2004−244431号公報 特開2010−260310号公報
上述した特許文献1の従来技術は、白蟻等の害虫駆除、防カビ、防腐の目的で、粉末状の炭と、消石灰又は漆喰と、ポリビニルアルコールと、水とを有する防蟻塗装剤を調整し、建築用ボードに塗布するものである。
しかし、このような防蟻塗装剤は、その原材料が複数必要で、プロセスも複雑であって、且つ、塗装故にボードの表面にのみ効果を発揮するものでしかない。尤も、白蟻のようにボードの表面を移動する場合には効果はあると考えられるが、塗装膜の内側に対する効果を期待できない。
上述した特許文献2の従来技術は、木製板の難燃化を図るために、銅箔と、接着剤層及びシート状基材と、石灰含有組成物からなる化粧層とからなる積層構造を備える方法が提案されている。
しかし、かかる難燃化のための方法は、三つの素材の積層を形成しなければならず、複雑な構成となっており、且つ、銅箔層の下方の木材には何等の作用を持たせるものではなく、銅箔の剥離、亀裂によっては、内部の木材の影響を避けることはできない。
本発明は、かかる問題点に鑑み、極めて簡単な製造プロセスによって、低コストでもって、木材の耐性、即ち、防腐性、耐熱性(難燃化)を高め、カビ防止の効果を得るようにすることを目的とする。
本発明にかかる請求項1に記載の木材の耐性強化処理方法は、上記目的を達成するために、
木材の耐性強化処理方法であって、
木材の表面を、400℃から1000℃で完全炭化させる炭化工程、
次いで、当該木材の炭化部分を削ぎ落とし研磨する成形工程、
次いで、当該木材を、150℃から200℃で加熱処理する加熱工程、
その後、直ちに当該木材を消石灰溶液に、15時間乃至30時間浸漬することによって炭化部分及び未炭化部分まで消石灰を浸透、残留させるようにする浸漬工程、及び
その後、当該木材を、残留水分が20%以下になるように乾燥させる乾燥工程、
とから成り、
前記消石灰溶液は、容積計量の石灰粉180cc〜200ccを、一旦沸騰させた15℃乃至30℃の水800cc〜900cc溶解させたものである、
ことを特徴とする。
本発明にかかる請求項2に記載の木材の耐性強化処理方法は、上記目的を達成するために、木材の耐性強化処理方法であって、
木材の表面を、400℃から1000℃で完全炭化させる炭化工程、
次いで、当該木材を、150℃から200℃で加熱する加熱工程、
その後、直ちに当該木材を消石灰溶液に、15時間乃至30時間浸漬することによって炭化部分及び未炭化部分まで消石灰を浸透、残留させるようにする浸漬工程、
当該木材を、残留水分が20%以下になるように乾燥させる乾燥工程、及び
その乾燥後に前記炭化部分を削ぎ落とし研磨する成形工程、
から成り、
前記消石灰溶液は、容積計量の石灰粉180cc〜200ccを、一旦沸騰させた15℃乃至30℃の水800cc〜900ccで溶解させたものである、
ことを特徴とする。
本発明にかかる請求項3に記載の耐性強化木材は、上記目的を達成するために、請求項1又は請求項2の何れか一項に記載の木材の耐性強化処理方法によって製造された、木材の炭化部分及び未炭化部分まで消石灰が浸透、残留されてなる、ことを特徴とする。
本発明が対象とする木材は、一般の建築材、工芸材として用いられる、広葉樹或いは針葉樹であって、例えば、檜、杉、松、楓、楡等の全ての木材が対象となる。
本発明に言う完全炭化部分とは、炭化が完了している部分を言い、未炭化部分とは、炭化が完全になされていない部分及び木質部分を言う。
尚、上記炭化部分の削ぎ落としとは、炭化部分を全て削ぎ落すことを意味しない。
本発明の、木材の耐性強化処理方法及びその耐性強化木材によれば、木材の表面を、400℃から1000℃で完全炭化させる炭化工程と、150℃から200℃で加熱する加熱工程と、容積計量の石灰粉180cc〜200ccを、一旦沸騰させた15℃乃至30℃の水800cc〜900ccで溶解させた消石灰溶液に、15時間乃至30時間浸漬することによって炭化部分及び未炭化部分まで消石灰を浸透、残留させるようにする浸漬工程と、残留水分が20%以下になるようにする乾燥工程を経ることによって、消石灰と炭化部分が結合し、恰も消石灰の皮膜で覆われたかのような状態を得ることができて、防腐性、耐熱性(難燃化)を高め、カビ防止の効果のある木材を低コストで提供できるに至ったものである。これにより、建築材の一部として、工芸材としての耐性が高まるものである。
本発明にかかるその他の効果は、以下の実施例の記載から明らかとなろう。
本発明の実施に際しては、前記消石灰溶液は、容積計量の消石灰粉180cc〜200ccを水800cc〜900ccの割合で溶解させたものであることが好ましい。
このような比率の消石灰溶液は、表面が炭化した木材に対して内部まで浸透させるに十分の希釈性があり、炭化部分のみならず、未炭化部分、即ち、下層の茶色く変色した部分、更には、内部の木質部分に対して比較的短時間でも浸透させることが出来る。
また、希釈度が高いことで、乾燥に際して水分の蒸発を促進でき、乾燥を良好に行うことができる。
更に、前記木材の炭化部分の削ぎ落としは、未炭化部分の下層の茶色に変色した部分、即ち、未炭化部分まで進行させることができる。
木材としての用途にもよるが、このように強度を持たない炭化部分を削ぎ落としたとしても、消石灰分の浸透残留によって、下層においても防腐性、耐熱性(難燃化)、カビ防止の効果を発揮できる。
また、このような削ぎ落とし後の表面は、研磨を行うと、消石灰の浸透によるものと推測されるが、表面に艶が生まれ、見た目にも綺麗である。
本発明にかかる木材の耐性強化処理方法について、以下詳述する。
第1の工程として、木材、ここでは、杉木材を用い、その表面を、炭化部分が形成されるまで炭化させる。
これには、電気炉を用い、窒素ガスを注入して、約1000℃で行う。広葉樹の木材であれば、400℃乃至700℃が適切である。尚、窒素ガスを注入しないで、酸素侵入を遮断する炉の構造とし、燃焼を阻止して炭化させる方法を採ってもよい。
上述の方法として、大型の木材であれば、其れに見合った加熱炉を用いるようにする。
木材の表面炭化は、その木材の使用目的によって、その深度を調節する。強度を要求される建材としては、後に炭化部分を削ることになるので、その強度を発揮できる余裕を持たせた寸法の木材の表面を炭化させることになる。また、工芸材或いは装飾材として用いる場合等、その炭化部分の全てを削ぎ落とすこともあるが、これに見合った寸法の木材を準備することになる。
次いで、当該木材を加熱する。この加熱は、150℃から200℃程度で行う。この加熱は、次工程の消石灰溶液への浸漬に際して、浸透性を高めるために行う。
この後、直ちに、当該木材を消石灰溶液に浸漬する。この消石灰溶液は、消石灰(Ca(OH)2)を、ここでは、200cc(カップ計量)を準備し、これを800ccの水に溶解する。この水は、一旦沸騰させて塩素を抜いておき、生暖かい温度の(略15℃乃至30℃程度)のものが準備される。
前記消石灰粉の濃度は、180cc〜200ccに対して、水800cc〜900ccで溶解するのが、木材への浸透性を配慮すると好適である。この状態は、粘りがなく、散り散りでもなく、粒子が均一に水中に在り、揺らすと粒子が埃のように舞い上がる状態のものである。
そして、消石灰溶液への浸漬は、ここでは、20時間とした。尤も、15時間乃至30時間の範囲であれば、炭化部分、内部の未炭化部分、木質部分への十分な浸透状態が得られることが実験によって検証されている。尚、消石灰溶液は、必要に応じて攪拌する。
次いで、当該木材を乾燥させる。この乾燥は、ここでは、初期においては、温風を当てることで所定の乾燥を行い、しかる後に自然乾燥させることとした。尤も、場合によっては、温風、乾燥空気による強制乾燥を継続させることで、時間短縮を図るようにしてもよいが、自然乾燥の方が木材にとって好ましいことは判明している。乾燥程度としては、残留水分が20%以下になるようにする。
乾燥後の木材は、その炭化部分の一部が削ぎ落とされる。これには、研磨作用が同時に得られるバフ研磨盤を用いる。しかし、木材の使用目的(工芸品等)によっては、ヤスリ、ノミによって手作業で落とすこともある。
当然ながら、寸法については、削り代を考慮した当初の木材が準備されているので、必要寸法まで加工することになる。
この炭化部分の削ぎ落しは、下層の茶色に変色した部分まで進行させることもある。
例えば、木目を生かすべく、この木材を床の間の要部や、欄間等に用いる場合、建築材として、目に付き易い場所に用いる場合には、炭化部分が残ると見た目も悪く、炭化部分が消石灰で固定化させているとしても、接触されることが好ましくない。
このようにして処理した木材は、少なくとも木材の炭化部分とその炭化部分直下層の木材部分とに亘って石灰が浸透残留されてなるため、防腐性、耐熱性(難燃化)、カビ防止の効果を発揮できるところから、所要の寸法加工等を施して、家屋の各所の建材として、或いは、工芸用材として非常に有用であり、また、表面の削ぎ落としによって、逆に、表面に艶が生まれるということもあって、種々の利用目的に使用できる。
上述した方法は、炭化処理木材の消石灰溶液への浸漬を、炭化部分の削ぎ落とし工程、研磨工程に先行して行っているが、これらの工程を先行させ、後に、消石灰溶液への浸漬を行うようにすることができる。
このようにしても、不完全炭化状態部分乃至木質部分への消石灰溶液が浸透、残留しているので、防腐性、耐熱性(難燃化)、カビ防止の効果を発揮できる。
このような順序の工程を実施する場合にも、上記加熱工程(150℃から200℃程度)は、消石灰溶液への浸漬工程の前に実施し、消石灰溶液の吸収乃至浸透を良くするようにする。
本発明にかかる木材の耐性強化処理方法と該方法により製造された耐性強化木材は、炭化後に消石灰溶液に浸漬させるという極めて簡単な製造プロセスによって、木材の耐性、即ち、防腐性、耐熱性(難燃化)を高め、カビ防止の効果を得られるところから、その低コスト故に、各種の用途に用いることができ、応用可能とその適用範囲は広い。

Claims (3)

  1. 木材の耐性強化処理方法であって、
    木材の表面を、400℃から1000℃で完全炭化させる炭化工程、
    次いで、当該木材の炭化部分を削ぎ落とし研磨する成形工程、
    次いで、当該木材を、150℃から200℃で加熱処理する加熱工程、
    その後、直ちに当該木材を消石灰溶液に、15時間乃至30時間浸漬することによって炭化部分及び未炭化部分まで消石灰を浸透、残留させるようにする浸漬工程、及び
    その後、当該木材を、残留水分が20%以下になるように乾燥させる乾燥工程、
    とから成り、
    前記消石灰溶液は、容積計量の石灰粉180cc〜200ccを、一旦沸騰させた15℃乃至30℃の水800cc〜900cc溶解させたものである、
    ることを特徴とする木材の耐性強化処理方法。
  2. 木材の耐性強化処理方法であって、
    木材の表面を、400℃から1000℃で完全炭化させる炭化工程、
    次いで、当該木材を、150℃から200℃で加熱する加熱工程、
    その後、直ちに当該木材を消石灰溶液に、15時間乃至30時間浸漬することによって炭化部分及び未炭化部分まで消石灰を浸透、残留させるようにする浸漬工程、
    当該木材を、残留水分が20%以下になるように乾燥させる乾燥工程、及び
    その乾燥後に前記炭化部分を削ぎ落とし研磨する成形工程、
    から成り、
    前記消石灰溶液は、容積計量の石灰粉180cc〜200ccを、一旦沸騰させた15℃乃至30℃の水800cc〜900ccで溶解させたものである、
    ることを特徴とする木材の耐性強化処理方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の木材の耐性強化処理方法によって製造された、木材の炭化部分及び未炭化部分まで消石灰が浸透、残留されてなる耐性強化木材。
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