JP5258411B2 - 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 - Google Patents

電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 Download PDF

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Description

本発明は電子写真感光体、該電子写真感光体を有する電子写真用プロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
電子写真感光体には、セレン、酸化亜鉛、硫化カドミウムなどの無機光導電性化合物を主成分とする無機感光体が広く用いられてきた。近年では、有機系光導電性物質を樹脂等で結着した電荷輸送層及び電荷発生層の2つの機能分離させた層を有する積層型有機系電子写真感光体に関して様々な提案がなされている。
電子写真用感光体材料としては、正孔を輸送する正孔輸送材料、電荷を発生する電荷発生材料、それらを成形し機械/電気的強度等を付与する結着樹脂、その他各種特性を付与する各種添加剤等が知られている。
その中で正孔輸送材料は、電子写真特性を大きく左右する材料であるため、分子構造と特性との相関関係調査や特性向上のために、様々な検討がなされている。
非特許文献1、非特許文献2及び非特許文献3では、正孔輸送特性を向上させるには、正孔輸送に関与する基が隣接分子と接触する確率を高めることが必要であるとしている。そのため、非特許文献1、非特許文献2及び非特許文献3では、正孔輸送に関与する基は、その数が多いこと、分子の外側にある事、共役鎖を有する事、等の条件を満たした分子設計が必要な旨が記載されている。
例えば、長鎖アルキル基は正孔輸送に関与する基でもなく、共役鎖でもないため、上記方針の何れにも反し、長鎖アルキル基を有する分子構造は、隣接する分子間の軌道の重なりを妨げる構造であるといえる。正孔輸送材料に長鎖アルキル基を導入する事は、従来の一般的な正孔輸送特性向上のための設計指針に反する点で、従来の技術とは異なるといえる。
特許文献1及び特許文献2では、長鎖アルキル基を有する正孔輸送材料が検討されているが、その目的は紙粉付着防止や湿式現像剤に対する耐溶剤性等、表面性の改質であり、電子写真特性自体を向上させる事を目的とした検討では無かった。
材料として用いられる具体的な化合物の種類としては、ヒドラゾン系化合物、トリアリールアミン系化合物、スチリル系化合物やブタジエン系化合物等が用いられる。その中でヒドラゾン系化合物は比較的簡便に製造出来るため、製造コストが安く、よく用いられる。しかし、ヒドラゾン系化合物は光の曝露による電位の変化即ち光メモリーの問題がある。
特開2005−242192号公報 特開平05−331238号公報 高橋隆一,艸林成和,横山正明:電子写真学会誌,Vol25,No.3,16(1986). 田中聡明,山口康浩,横山正明:電子写真学会誌,Vol29,No.4,366(1990). 伊丹明彦:第49回日本画像学会技術講習会予稿集,96(2000).
今日の電子写真技術の発展は著しく、電子写真感光体に求められる特性に対しても非常に高度な技術が要求されている。例えば、プロセススピードは年々速くなり、高感度化及び耐久安定性等が求められている。特に、近年ではカラー化に代表されるように高画質化が叫ばれ、文字中心の画像だったものが、ハーフトーン画像やベタ画像が多くなっており、それらの画像品質は年々高まる一方である。また、その品質が、環境や耐久条件等に関わらず維持される事も求められている。
しかしながら、高感度化された電子写真感光体においては、外部からのもれ光等により明部と暗部の帯電性が異なる、いわゆる光メモリーが発生し、これが画像上に濃度むらを生じる原因になり得ることから、対策が望まれている。
その他にも、電子写真感光体において、黒画像の再現のために強く光が照射された部分が、次にハーフトーン画像を再現する場合、他のハーフトーン部と比較して画像濃度が変化する現象、いわゆるゴーストが発生することがある。このゴーストに対する許容範囲も今日は格段に厳しくなってきている。このゴーストの中でも、画像濃度が濃くなる場合を特にポジゴーストと称し、このポジゴーストが問題になる場合が多い。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、光メモリー及びゴーストを低減できる良好な特性の電子写真感光体、電子写真用プロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することを目的とする。
本発明に従って、支持体、該支持体上に設けられた電荷発生材料を含有する電荷発生層及び該電荷発生層上に設けられた正孔輸送材料を含有する正孔輸送層を備える電子写真感光体において、前記正孔輸送層に下記構造(1)を有する正孔輸送材料及び結着樹脂を含有する電子写真感光体が提供される。
Figure 0005258411
上記式(1)中、R〜R10のうち少なくとも1つは炭素数6〜10のアルキル基を示す。炭素数6〜10のアルキル基でないものは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基を示す。また、それぞれが互いに結合して芳香環を成していてもよい。R11は置換基を有してもよい芳香族基である。R11が有してよい置換基は、メチル基、エチル基、ハロゲン基、ジアルキルアミノ基(アルキル基の炭素数は2以下)、ベンジルアルキルアミノ基(アルキル基の炭素数は2以下)、ジベンジルアミノ基、アルキルアリールアミノ基(アルキル基の炭素数は2以下)、ジアリールアミノ基である。
また、本発明に従って、上記電子写真感光体を具備するプロセスカートリッジ及び電子写真装置が提供される。
本発明によれば、光メモリー及びゴーストを低減できる良好な特性の電子写真感光体、電子写真用プロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することができる。
以下、本発明の電子写真用感光体について詳細に説明する。
本発明に用いられる支持体は導電性であって、アルミニウム、ニッケル、銅、金、鉄等の金属、若しくは合金が用いられる。又は、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ガラス等の絶縁性支持体上にアルミニウム、銀、金等の金属、若しくは酸化インジウム、酸化スズ等の導電材料の薄膜を形成したものでもよい。これらの支持体表面は電気的特性改善あるいは半導体レーザー等コヒーレント光照射時に問題となる干渉縞等の防止のため、陽極酸化等の電気化学的な処理や、湿式ホーニング、ブラスト、切削等の処理が行われていてもよい。
本発明では上記の導電性支持体上に感光層を形成する。この感光層は単層構成と積層構成のものが知られている。積層構成のものは、少なくとも電荷発生層と正孔輸送層とから成る。
電荷発生層は顔料分散状態の電荷発生材料及び結着樹脂等その他の成分とを含有している。
電荷発生材料としては、以下の公知の物質が挙げられる。
(1)モノアゾ顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料等のアゾ系顔料
(2)ペリレン酸無水物及びペリレン酸イミド等のペリレン系顔料
(3)アントラキノン誘導体、アントアントロン誘導体、ジベンズピレンキノン誘導体、ピラントロン誘導体、ビオラントロン誘導体及びイソビオラントロン該導体等のアントラキノン系又は多環キノン系顔料
(4)インジゴ誘導体及びチオインジゴ誘導体等のインジゴイド系顔料
(5)金属フタロシアニン及び無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料
(6)ビスベンズイミダゾール誘導体等のペリノン系顔料
上記の物質中、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料が好ましい。更に、その中でもオキシチタニウムフタロシアニン顔料、クロロガリウムフタロシアニン顔料、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が好ましい。
オキシチタニウムフタロシアニン結晶としては、CuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)が、9.0°、14.2°、23.9°、27.1°に強いピークを有するオキシチタニウムフタロシアニン顔料が好ましい。また、ブラッグ角度(2θ±0.2°)が9.5°、9.7°、11.7°、15.0°、23.5°、24.1°、27.3°に強いピークを有するオキシチタニウムフタロシアニン顔料も同様に好ましい。
クロロガリウムフタロシアニン結晶としては、CuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)が7.4、16.6、25.5、28.2°に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶が好ましい。また、ブラッグ角度(2θ±0.2°)が6.8、17.3、23.6、26.9°に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶も同様に好ましい。更に、ブラッグ角度(2θ±0.2°)が8.7、9.2、17.6、24.0、27.4、28.8°に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶も好ましい。
ヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶としては、CuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)が7.3°、24.9°、28.1°に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶が好ましい。また、ブラッグ角度(2θ±0.2°)が7.5、9.9、12.5、16.3、18.6、25.1、28.3°に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶も同様に好ましい。
また、本発明において、フタロシアニン結晶の結晶形のCuKα特性X線回折におけるブラッグ角は、以下の条件で測定した。
測定装置:(株)マック・サイエンス製全自動X線回折装置(商品名:MXP18)
X線管球:Cu、
管電圧:50kV、
管電流:300mA、
スキャン方法:2θ/θスキャン、スキャン速度:2deg./min、
サンプリング間隔:0.020deg、
スタート角度(2θ):5deg、ストップ角度(2θ):40deg、
ダイバージェンススリット:0.5deg、
スキャッタリングスリット:0.5deg、
レシービングスリット:0.3deg、
湾曲モノクロメーター使用
結着樹脂としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン等のビニル化合物の重合体が考えられる。又は上記の共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、セルロース樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂なども挙げられる。しかしながら、これらに限定される訳ではない。この中でもポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアセタールが好ましく、中でもポリビニルアセタールがより好ましい。
正孔輸送層は、分子分散状態の正孔輸送材料と結着樹脂とを含有しており、成膜性を有する結着樹脂と下記のような正孔輸送材料を溶解した溶液を塗布し、乾燥することによって形成される。
本発明で用いられる正孔輸送材料は以下の式(1)で示される構造を有する。
Figure 0005258411
〜R10のうち少なくとも1つは炭素数6〜10のアルキル基である。炭素数6〜10のアルキル基でないものは、それぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基である。また、それぞれ互いに結合して芳香環を成していてもよい。R11は置換基を有してもよい芳香族基である。R11が有してよい置換基は、メチル基、エチル基、ハロゲン基、無置換またはメチル基を有するジアルキルアミノ基(アルキル基の炭素数は2以下)である。ベンジルアルキルアミノ基(アルキル基の炭素数は2以下)、ジベンジルアミノ基、アルキルアリールアミノ基(アルキル基の炭素数は2以下)、ジアリールアミノ基もR11が有してよい置換基である。
本発明で用いられる正孔輸送材料は、炭素数6〜10のアルキル基を有しているため、これらの置換基を有していない従来の正孔輸送材料に比べて、若干ではあるが、感度の点で劣る。しかしながら、正孔輸送層中の正孔輸剤と樹脂バインダーとの比率を調整して、正孔輸送材料の比率を、従来のものより、5〜10%程度多めに使用することで、炭素数6〜10のアルキル基を有していないものと同等の感度が得られる。
本発明の正孔輸送材料を用いる事で、光メモリー及びゴーストを低減できる理由は明らかではない。だが、正孔輸送材料の置換基により生じる特性の差である事から、正孔輸送材料同士若しくは正孔輸送材料と結着樹脂との相互作用により生じる、構造的に何らかの正孔トラップに成り得る状態を抑制している事が考えられる。
この化合物は以下の様に合成される。
Figure 0005258411
ジアリールアミンは、例えばウルマン反応やパラジウムを用いたカップリング反応により合成する。パラジウムを用いたカップリング反応の場合は、アリールブロマイドとアリールアミンとを原料に、塩基性条件下、パラジウム触媒(例えばテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム等)を用いて任意のジアリールアミンを合成する。炭素数6〜10のアルキル基はアリールブロマイド側に導入されていても良いし、アリールアミン側に導入されていても良い。
このジアリールアミンを亜硝酸ナトリウムで酸化し、ニトロソ体を合成する。それを還元剤(例えば水素化リチウムアルミニウムや亜鉛)で還元することにより、ジアリールヒドラジンを得る。
このヒドラジン化合物と、ホルミル体とを、酸性条件下で加熱縮合して目的のヒドラゾン化合物を得る。ホルミル体は、例えばオキシ塩化リンとジメチルホルムアミドを用いたVilsmeier反応で合成する事が出来る。
これらの反応に必要な物質は、一般に入手可能であり、例えばシグマアルドリッチジャパン(株)や東京化成工業(株)から試薬として購入する事が出来る。
上記正孔輸送材料の好適例を表1に示すが、それらに限定されるものではない。
Figure 0005258411
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正孔輸送層の結着樹脂としては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸エステル、ポリアリレート、ポリサルホン、ポリスチレン、ポリオレフィン樹脂等が挙げられるがこれらに限定される訳ではない。
感光層と導電性支持体の間には下引層を形成する。
この下引層の結着材としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、メチルセルロース、ポリアミド、ポリアミド酸が挙げられる。また、ポリウレタン、ポリイミド、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂でもよい。更には、チタンやジルコニウムなどの各種金属キレート化合物、各種金属アルコキシド等も下引層の結着材として挙げられる。しかしながら、これらに限定される訳ではない。
また、下引層には導電性粒子を含有していても良い。導電性粒子としては、例えば金、銀、アルミ等各種金属粒子、ITO(Indium Tin Oxide)粒子、酸化錫粒子、導電性酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化錫等の導電性被覆層を設けた硫酸バリウム粒子、酸化チタン粒子が挙げられる。
これらの感光体作成用塗工液を塗布する方法は、例えば浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、カーテンコーティング法およびスピンコーティング法などが知られているが、効率性/生産性の点からは浸漬コーティング法が好ましい。
図1に本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成を示す。
図1において、1はドラム状の本発明の電子写真感光体であり、回転軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体1は、回転過程において、帯電手段3によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段(不図示)からの露光光4を受ける。こうして電子写真感光体1の周面に静電潜像が順次形成されていく。
形成された静電潜像は、次いで現像手段5によりトナー現像され、現像されたトナー現像像は、不図示の給紙部から電子写真感光体1と転写手段6との間に電子写真感光体1の回転と同期取り出されて給紙された転写材7に、転写手段6により順次転写されていく。
像転写を受けた転写材7は、電子写真感光体面から分離されて像定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより複写物(コピー)として装置外へプリントアウトされる。
像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段9によって残余のトナーの除去を受けて清浄面化され、さらに前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。
帯電手段3は、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器でもよく、ローラ形状、ブレード形状、ブラシ形状など公知の形態が使用される接触型帯電器を用いてもよい。
本発明においては、上述の電子写真感光体1、帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段9などの構成要素のうち、複数のものをプロセスカートリッジとして一体に構成してもよい。更に、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。
例えば、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段9の少なくとも1つを電子写真感光体1と共に一体に支持してカートリッジ化して、装置本体のレールなどの案内手段12を用いて装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ11とすることができる。
また、電子写真装置が複写機やプリンターである場合には、原稿からの反射光、透過光又はセンサーで原稿を読取り、信号化する。露光光4は、この信号にしたがって行われるレーザービームの走査、LEDアレイの駆動および液晶シャッターアレイの駆動などにより照射される光である。
本発明の電子写真感光体は、複写機、レーザープリンター、LEDプリンター、液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適応し得る。更に、電子写真技術を応用したディスプレー、記録、軽印刷、製版およびファクシミリなどの装置にも幅広く適用し得るものである。
以下、実施例にしたがって、本発明を詳細に説明する。
<本発明の正孔輸送材料の合成例>
4-Hexylaniline(東京化成工業(株)製)8.9質量部と1-Bromo-4-hexylbenzene (東京化成工業(株)製)12.0質量部とTHF(tetrahydrofuran)300質量部を用意。これらが入った、窒素フローした三口フラスコ中に、t-BuONa10%水溶液50質量部を滴下。
その後、(1,1’-Bis(diphenylphosphino)ferrocene)dichloropalladium(II)(シグマアルドリッチジャパン(株)社製)1質量部を加えて5時間還流。
その後、有機層をクロロホルムで抽出し、減圧濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製しアミン体8.0質量部を得た。
このアミン体を、酢酸300ml中10%亜硝酸ナトリウム水溶液50質量部を加え、氷冷下で3時間撹拌。その後、冷水を加え炭酸水素ナトリウムで中和後、クロロホルムで抽出し、減圧濃縮し、ニトロソ体を得た。
このニトロソ体を粗体のまま酢酸中で亜鉛粉を反応させた。クロロホルムで抽出後減圧濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、ヒドラジン化合物5.4質量部を得た。
得られたヒドラジン化合物をエタノール100質量部に溶解し、4-(Di-p-tolylamino)benzaldehyde(東京化成工業(株)製)6.1質量部をエタノール50質量部に溶解した溶液を滴下。4時間還流を行った。クロロホルムで抽出後減圧濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、ヒドラゾン化合物8.2質量部を得た。
ヒドラゾン化合物の質量分析を行い、(MALDI−TOF MS:商品名:ultraflex、ブルカー・ダルトニクス(株)製)(加速電圧:20kV、モード:Reflector、分子量標準品:フラーレンC60)で、分子量を測定した。その結果、ピークトップ値として551が得られ、表1中の化合物H1と同一である事を確認した。
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
(実施例1)
酸化スズで形成された被覆層を有する硫酸バリウム粒子(被覆率:50質量%、粉体比抵抗:700Ω・cm)120部、レゾール型フェノール樹脂(商品名:ブライオーフェンJ−325、大日本インキ化学工業(株)製、固形分70%)70部を用意。これに2−メトキシ−1−プロパノール100部を加え、ボールミル装置で20時間分散。これにより、導電層用塗布液を調製した(塗布液中の硫酸バリウム粒子の平均粒径は0.23μm)。
この導電層用塗布液を、外径30mm、長さ260.5mmの長さ260.5mm、直径30mmのアルミニウムシリンダー(JIS−A3003、アルミニウム合金)支持体上に浸漬塗布。これを30分間140℃で乾燥させることによって、膜厚が16μmの導電層を形成した。
次に、N−メトキシメチル化ナイロン(商品名:トレジンEF−30T、ナガセケムテックス(株)製)4.5部及び共重合ナイロン樹脂(商品名:アミランCM8000、東レ(株)製)1.5部を用意。これを、メタノール65部/n−ブタノール30部の混合溶媒に溶解して中間層用塗布液を調整。この中間層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、これを10分間100℃で乾燥させることによって、膜厚が0.65μmの中間層を形成した。
次に、結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン10部、ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)5部及びシクロヘキサノン250部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で1時間分散。更に、酢酸エチル250部を加えて電荷発生層用塗布液を調製した。なお、上記結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニンは、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°、28.3°に強いピークを有する。
この電荷発生層用塗布液を、中間層上に浸漬塗布し、これを10分間100℃で乾燥させることによって、膜厚が0.15μmの電荷発生層を形成した。
次に、合成例で合成したヒドラゾン化合物H1、10部、及び下記式(4)で示される構造を有する平均分子量Mw=100,000のポリアリレート樹脂10部を用意。これを、ジメトキシメタン30部/クロロベンゼン70部の混合溶媒に溶解して、正孔輸送層用塗布液を調製した。なお、上記平均分子量は、東ソー(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー「HLC−8120」で測定し、ポリスチレン換算で計算した。
Figure 0005258411
この正孔輸送層用塗布液を、電荷発生層上に浸漬塗布し、これを30分間120℃で乾燥させることによって、膜厚が18μmの正孔輸送層を形成した。
このようにして、正孔輸送層が表面層である電子写真感光体を作製した。
作製した電子写真感光体を、20℃、50%RHの環境下にて、レーザービームプリンター(商品名:LBP−2510、キヤノン(株)製、帯電条件可変、レーザー露光量可変で作動するように改造)に装着して、5000枚通紙耐久後の画像の評価を行った。詳細は以下のとおりである。
レーザービームプリンターのシアン色用のプロセスカートリッジに作製した電子写真感光体を装着して、シアンのプロセスカートリッジのステーションに装着し、画像を出力した。ドラム表面電位は、初期暗部電位が−600V、明部電位が−200Vになるように設定した。表面電位の測定は、カートリッジを改造し、現像位置に電位プローブ(商品名:model6000B-8、トレック・ジャパン(株)製)を装着し、ドラム中央部の電位を表面電位計(商品名:model344、トレック・ジャパン(株)製)を使用して測定した。なお、後述する光メモリーの測定時の電位の測定も、明部電位の設定を行わない以外は同様に行った。
通紙耐久は、各色の印字率1%の文字画像をA4サイズの普通紙でフルカラープリント操作を行い、5000枚の画像を出力する事によりテストした。
そして、5000枚終了時に、1枚目にベタ黒画像をとり、ゴースト画像(図2に示すように、画像の先頭部にベタで四角の黒画像を出した後、図3に示す1ドット桂馬パターンのハーフトーン画像を作成)を連続5枚出力した。
ゴースト画像の評価は、分光濃度計(商品名:X−Rite508、エックスライト(株)製)を用いて評価した。具体的には、以下のように行った。
前述の5枚のゴースト画像すべてにおいて、1ドット桂馬パターン画像濃度と、ゴースト部の画像濃度との差を、1枚の画像当り10点測定し、それらの平均値を求め、マクベス濃度差とした。この値が小さいほど、ゴーストの抑制効果が良好であることを意味する。結果を表3に示す。
光メモリーの評価は以下の様に行った。
1cm×5cmの穴をあけた黒色フィルムを用意し、その穴が電子写真感光体端部より130mmの位置にくるように貼り付け、1cm×5cmの穴以外の部分を遮光した。
次に、電子写真感光体表面において1500Luxの露光量になるように白色蛍光ランプ(商品名:パラライトFPL-27EX−N、日立ライティング(株)製)の位置を調節し、その1500Luxの白色光を電子写真感光体に5分間照射した。
その後、黒色フィルムを取り除き、3分後に遮光部(Vd(遮光部))と非遮光部(Vd(非遮光部))の暗部電位の差(Vd(非遮光部)−Vd(遮光部)=光メモリー)を測定し、その値を光メモリーの値とした。結果を表3に示す。
露光量の測定は照度計(商品名:SPI−71、東京光学機械(株)社製)を使用した。
(実施例2〜16)
表3に示した正孔輸送材料を使用した以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作成し評価を行った。結果を表3に示す。なお、正孔輸送材料は何れも合成例と同様な合成法で合成した。
(実施例17)
正孔輸送層用の結着樹脂として、ポリカーボネート樹脂(商品名:ユーピロンZ400、三菱瓦斯化学(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作成し評価を行った。結果を表3に示す。
(実施例18)
正孔輸送層用の結着樹脂として、ポリ環状オレフィン樹脂(商品名:TOPAS−5013、チコナ社製)を用い、ジメトキシメタンの代わりにテトラヒドロフランを用いた以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作成し評価を行った。結果を表3に示す。
なお、ポリ環状オレフィン(商品名:TOPAS−5013、チコナ社製、Tg:130℃)は、下記一般式(5)で示される繰り返し構造単位(R21:水素原子、R22:水素原子)及び下記構造式(6)で示される繰り返し構造単位を有する共重合体である。
Figure 0005258411
Figure 0005258411
なお、他のポリ環状オレフィンを用いる場合、上記式(5)中、R21及びR22は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、又は、置換基を有してもよいカルボニル基を示す。R21及びR22は互いに結合して環を形成してもよい。
(比較例1)
正孔輸送材料として表2に記載の比較化合物1を用いた以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作成し評価を行った。結果を表3に示す。
(比較例2)
正孔輸送材料として表2に記載の比較化合物2を用いた以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作成し評価を行った。結果を表3に示す。
(比較例3)
正孔輸送材料として表2に記載の比較化合物3を用いた以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作成し評価を行った。結果を表3に示す。
(比較例4)
正孔輸送材料として表2に記載の比較化合物4を用いた以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作成し評価を行った。結果を表3に示す。
Figure 0005258411
Figure 0005258411
本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。 本発明の電子写真感光体の評価に用いる画像の概略図である。 本発明の電子写真感光体 の評価に用いるハーフトーン画像のパターンを示す図である。
符号の説明
1 電子写真感光体
2 回転軸
3 帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 転写材
8 像定着手段
9 クリーニング手段
10 前露光光
11 プロセスカートリッジ
12 案内手段

Claims (6)

  1. 支持体、該支持体上に設けられた電荷発生材料を含有する電荷発生層及び該電荷発生層上に設けられた正孔輸送材料を含有する正孔輸送層を備える電子写真感光体において、前記正孔輸送層は下記構造(1)を有する正孔輸送材料及び結着樹脂を含有する電子写真感光体。
    Figure 0005258411

    (上記式(1)中、R〜R10のうち少なくとも1つは炭素数6〜10のアルキル基を示す。炭素数6〜10のアルキル基でないものは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基を示す。また、それぞれが互いに結合して芳香環を成していてもよい。R11は置換基を有してもよい芳香族基である。R11が有してよい置換基は、メチル基、エチル基、ハロゲン基、ジアルキルアミノ基(アルキル基の炭素数は2以下)、ベンジルアルキルアミノ基(アルキル基の炭素数は2以下)、ジベンジルアミノ基、アルキルアリールアミノ基(アルキル基の炭素数は2以下)、ジアリールアミノ基である。)
  2. 前記結着樹脂はポリオレフィン樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 前記ポリオレフィン樹脂は、下記一般式(2)で示される繰り返し構造単位及び下記一般式(3)で示される繰り返し構造単位を有する共重合体であることを特徴とする請求項2に記載の電子写真感光体。
    Figure 0005258411

    (上記式(2)中、R21及びR22は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、又は、置換基を有してもよいカルボニル基を示す。R21及びR22は互いに結合して環を形成してもよい。)
    Figure 0005258411
  4. 前記結着樹脂はポリアリレート樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段、静電潜像の形成された電子写真感光体をトナーで現像する現像手段、電子写真感光体上のトナー像を転写材上に転写する転写手段及び転写工程後の電子写真感光体上に残余するトナーを回収するクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを共に一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジ。
  6. 請求項1乃至4のいずれかに記載の電子写真感光体、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段、該電子写真感光体の露光手段、静電潜像の形成された電子写真感光体をトナーで現像する現像手段及び電子写真感光体上のトナー像を転写材上に転写する転写手段を備えることを特徴とする電子写真装置。
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