以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る駆動装置を備えた複写機の構成を示す断面図である。本実施の形態では、画像形成装置を複写機に適用した例を示しているが、画像形成装置としては複写機以外にファクシミリ装置、プリンタ装置、複写機能とファクシミリ機能等を備えた複合機等に適用することができる。また、画像読取装置としては、スキャナ装置、ファクシミリ装置、複写機能とファクシミリ機能等を備えた複合機等に適用することができる。
まず、構成について説明する。
図1に示すように、複写機21の本体21aの上面には、透光性部材からなるコンタクトガラス1(図2参照)が設けられており、このコンタクトガラス1に隣接する本体の上面にはコンタクトガラス1よりも小面積の透光性部材からなるスリットガラス(不図示)が設けられている。
また、本体21aの上部には自動原稿搬送装置としてのADF23が設けられており、このADF23は図示しないヒンジ機構を介してコンタクトガラス1を開放および閉塞するように開閉自在になっている。
一方、複写機21の本体21a内には、画像読取装置81が設けられており、この画像読取装置81によって読取られた画像情報は書込部82によって感光体ドラム83に照射されるようになっている。
画像読取装置81は、コンタクトガラス1またはスリットガラス上の原稿を照明する光源2と、原稿から反射された光をそれぞれ反射する第1ミラー3、第2ミラー4、第3ミラー5と、第3ミラー5から反射された光をCCD9に結像するレンズ8と、レンズ8によって結像された光を電気信号に変換するCCD9と、を備えている。
光源2および第1ミラー3は第1キャリッジ6に取り付けられているとともに、第2ミラー4および第3ミラー5は第2キャリッジ7に取り付けられている(図2参照)。第1キャリッジ6および第2キャリッジ7は、コンタクトガラス1およびスリットガラスの下方において、その両側部下方に配設されたガイドレール(不図示)に沿って図1中、左右に移動するようになっている。
そして、第1キャリッジ6および第2キャリッジ7は、コンタクトガラス1に載置された原稿を読取るときには、コンタクトガラス1の下方で図1中、左右方向に移動され、スリットガラスを通過する原稿を読取るときには、スリットガラスの下方で停止される。画像読取装置81は、原稿に表示された画像(文字(テキスト)、図形、写真等を含む)を読取ることができる。
書込部82は、画像読取装置81によって読取った画像情報に応じて光変調したレーザ光を照射し、帯電させた感光体ドラム83の表面をこのレーザ光で露光するようになっている。
感光体ドラム83の周囲には、感光体ドラム83と共に画像形成手段を構成する現像装置86、転写ベルト87、クリーニング装置88、図示しない帯電装置および除電装置が設けられている。帯電装置は暗中にプラス電荷のコロナ放電をグリッドにより制御して感光体ドラムの表面を一定電位に帯電させるようになっている。
書込部82はこの一定電位に帯電された感光体ドラム83上に画像情報を含んだレーザ光を照射して感光体ドラム83上のマイナス電荷を除去して静電潜像を形成する。
現像装置は感光体ドラム83上の電気除去された部分にマイナスに帯電されたトナーを付着させて可視像を形成する。転写ベルト87にはプラスのバイアスが印加されており、この転写ベルト87はマイナスに帯電された可視像を記録媒体としての転写紙(用紙)に転写して搬送するようになっている。
クリーニング装置88はクリーニングブレードを備えており、感光体ドラム83に残ったトナーを掻き落とすようになっている。除電装置はLEDを点灯させることにより感光体ドラム83の残留電荷を除去して次の転写紙に新たな画像を形成するための準備を行う。
このようにした画像が形成された転写紙は定着装置90に搬送され、定着装置90によりトナー画像が転写紙に定着される。
また、本体21a内にはそれぞれ異なるサイズの転写紙S1〜S5が収納された収納カセット91〜95が設けられており、この収納カセット91〜95に収納された転写紙は呼出しコロ91a〜95aによって給紙された後、搬送方向に回転する給紙ローラ91b〜95bに摺接し、分離方向に回転するリバースローラ91c〜95cによって分離された後、中継ローラ対96、97を介してレジストローラ対98に搬送され、レジストローラ対98によってタイミングを取られて感光体ドラム83と転写ベルト87の間の搬送路に搬送される。
図2は、本発明の一実施の形態に係る駆動装置の構成を示す断面図である。また、図3は、本発明の一実施の形態に係る駆動装置の構成を示す斜視図である。
図2、図3に示すように、駆動装置としての駆動機構100は、コンタクトガラス1上に載置された原稿10の画像を読取る場合、光源であるランプ2によって原稿10に光を照射し、その反射光は第1ミラー3から第2ミラー4そして第3ミラー5によって反射された後、レンズ8によって集光され、CCD9に結像するようになっている。そして、第1キャリッジ6が距離L進む間に、第2キャリッジ7は距離L/2進むことにより、レンズ8の光路長を一定に保ちながら原稿10の全体を走査するようになっている。なお、6′は移動後の第1キャリッジを示し、7′は移動後の第2キャリッジを示している。
また、第1キャリッジ6は、移動方向両側部にそれぞれ位置する駆動ワイヤ11にワイヤクランプ(不図示)によって取り付けられ、第2キャリッジ7は、同じく駆動ワイヤ11にワイヤクランプ(不図示)によって取り付けられ、その駆動ワイヤ11は、移動方向両側部にそれぞれ設けられたプーリ12に巻き付けられている。第1キャリッジ6および第2キャリッジ7の両側にそれぞれ位置する駆動ワイヤ11は、これら第1キャリッジ6および第2キャリッジ7の移動方向に直交するように位置する駆動軸140に間隔をおいて設けられた2つの駆動プーリ150に複数回巻き付けられている。
この駆動軸140の一端には、タイミングプーリ16が設けられている。駆動源としての正逆転可能なステッピングモータなどで構成されたモータ18の出力軸とこのタイミングプーリ16との間にはタイミングベルト17が掛渡され、駆動軸140はモータ18によって駆動されるようになっている。各駆動ワイヤ11の一端は装置本体(不図示)に、そして他端はスプリング19を介して同じく装置本体に固定されている。駆動ワイヤ11は固定プーリ20に掛渡されている。そして、駆動軸140とともに駆動プーリ150が回転すると、駆動プーリ150の回転に応じて駆動ワイヤ11が巻き取られ、駆動ワイヤ11に取り付けられた第1キャリッジ6および第2キャリッジ7が走査方向に駆動されるようになっている。
図4(a)、(b)、(c)は、本発明の一実施の形態に係る駆動装置の駆動プーリの構成をそれぞれ示す断面図、斜視図および平面図である。ここで、図4(a)は図4(c)のE−E断面を示している。
図4(a)、(c)に示すように、駆動装置としての駆動機構100において、駆動プーリ150は、駆動ワイヤ11を巻き付けるための円筒部152と、円筒部152の両端に形成されたフランジ部151、153と、円筒部152の中心部の軸線方向一方側に形成され駆動軸140が挿通するとともに駆動軸140に締結部材としての固定ネジ180により固定される曲面形状(本実施の形態では円筒状)のボス部154と、を有している。駆動プーリ150は、ガラス入りの合成樹脂(例えば、ポリカーボネート)により形成され、フランジ部151、153には、螺旋状のフランジ151a、151b、153a、153b(図5参照)が形成されている。
また、駆動プーリ150の両フランジ部151、153の間には、駆動ワイヤ11を通す穴が穿たれ、さらに駆動ワイヤ11と駆動プーリ150との位置決め用として、係止部材111が取り付けられた駆動ワイヤ11を係止する係止部150aが設けられている。
また、駆動プーリ150の軸方向両端のフランジ部151、153には、駆動ワイヤ11の巻き始め部として、駆動ワイヤ11の径よりも深い切欠き11aが設けられている。
駆動ワイヤ11は、係止部150aに係止されるとともに、切欠き11aからフランジ部151、153の内側に入って円筒部152に巻き付けられるようになっている。
このように、フランジ部151、153に切欠きを設けることにより、駆動プーリ150の円筒部152の外周面に駆動ワイヤ11を巻き付けたとき、駆動ワイヤ11に屈曲部分が形成されないので、駆動ワイヤ11が駆動ワイヤ同士が擦れて振動が発生することがない。また、駆動ワイヤ11がフランジ部151、153に乗り上げることがなくなり、駆動性能が向上する。
また、駆動プーリ150におけるフランジ部151、153の端面間の長さは、第1キャリッジ6および第2キャリッジ7を所定の位置まで移動させるのに必要な長さの駆動ワイヤ11を重なり合うことなく巻き付けることができるように設定されている。また、フランジ部151、153の端面間の長さは、フランジ部151、153の切欠き11aから円筒部152にかけて捨巻きする分(少なくとも1巻(360度)分)を巻き付けることができるように設定されている。この捨巻きは、駆動ワイヤ11が螺旋状に形成されたフランジ151a、151b、153a、153bを介して円筒部152に巻き付けられ、あるいは巻き取られるときの方向を揃えるために行われる。
また、図4(b)に示すように、駆動プーリ150のボス部154には、駆動プーリ150を駆動軸140に固定する固定ネジ180(図7参照)が挿通する長孔形状のネジ孔154aが設けられている。ここで、ネジ孔154aの長孔形状とは、駆動プーリの回動方向に沿って形成された形状のことであり、換言すると、長円または楕円形状の開口形状を有し、その長辺の方向がボス部154の回動方向と一致する形状のことである。
図5(a)、(b)は、本発明の実施の一形態としての駆動プーリ150の形状を示す側面図である。
図5(a)、(b)に示すように、駆動装置としての駆動機構100において、駆動プーリ150の両端にはフランジ部151、153が形成され、フランジ部151、153には螺旋状に突出したフランジ151a、151b、153a、153bが設けられている。
また、このフランジ151a、151b、153a、153bと2次加工された円筒部152との間には、溝状に凹んだ段差部151c、151d、153c、153dが設けられており、段差部151c、151d、153c、153dの径a3が、円筒部152の径Dより小さい構成となっている。この段差部151c、151d、153c、153dは、円筒部152に隣接し、所定の幅a1、a2で切欠き11aからフランジ部151、153を周回(1周)している。
段差部153c、153dの幅a1は、フランジ部153の端面のフランジ153a、153bの図中、上端から円筒部152の図中、下端までの長さ(軸方向の長さ)に相当し、ここでは、幅a1が、螺旋状のフランジ153a、153bのピッチP1より大きい構成となっている。
同様に、段差部151c、151dの幅a2は、フランジ部151の端面のフランジ151a、151bの図中、下端から円筒部152の図中、上端までの長さ(軸方向の長さ)に相当し、ここでは、幅a2が、螺旋状のフランジ151a、151bのピッチP2より大きい構成となっている。
また、螺旋状のフランジ153a、153bのピッチP1、および螺旋状のフランジ151a、151bのピッチP2は、駆動ワイヤ径Wより大きくなっている。このため、フランジ部151、153のそれぞれの切欠き11aから巻き始められた駆動ワイヤ11の2巻き目が1巻き目の上に乗り上げることがない。
また、段差部151c、151d、153c、153dの幅a1、a2は、駆動ワイヤ径Wより大きく形成されている。例えば、幅a1、a2を駆動ワイヤ径Wの1倍以上1.5倍未満としている。なお、本実施の形態では幅a1と幅a2とを同一としているが、これに限らず、前述の大小関係を有していれば、幅a1と幅a2とが異なっていてもよい。
このように、駆動ワイヤ11の1巻目は2次加工が施されていない溝状の段差部151c、153cに確実に捨巻きされて第1キャリッジ6、第2キャリッジ7の駆動に関与せず、2巻目は円筒部152に巻き付けられる。したがって、駆動ワイヤ11の未使用部分(捨巻き)は1巻で済み、第1キャリッジ6、第2キャリッジ7の駆動に関与する2巻目から高精度に2次加工された円筒部152に巻取られるため、第1キャリッジ6、第2キャリッジ7の走行を安定させながら駆動ワイヤ11が長大になるのを抑制することができる。
図6(a)、(b)は、本発明の実施の一形態としての駆動プーリ150に対する駆動ワイヤ11の巻き付け状態を示す説明図である。図6において、(a)は駆動開始時の巻き付け状態を示し、(b)は第1キャリッジ6および第2キャリッジ7が最大に移動したときの巻き付け状態を示している。
図6(a)、(b)に示すように、本実施の形態では、駆動装置としての駆動機構100において、駆動プーリ150の両端のフランジ部151、153に設けた切欠き11aから円筒部152の中心(軸方向中心)に向かって駆動ワイヤ11を巻き付けることにより、駆動プーリ150に巻かれている駆動ワイヤ11の長さが一定であるため、繰り出されている駆動ワイヤ11の長さも変わることがない。また、図6(a)に示す駆動開始時と、図6(b)に示す第1キャリッジ6、第2キャリッジ7が最大に移動したとき、とにおいて駆動ワイヤ11の巻き出しの位置が駆動プーリ150の一端面(図中、下端面)側から他の一端面(図中、上端面)側へと変化(移動)する。この際、駆動ワイヤ11の巻き出しの位置が上述した他の一端面に近づいても、フランジ部151、153を螺旋形状とし、1巻分を捨巻きしているために駆動ワイヤ11の巻き始め部分の擦れの衝撃が発生しない。また、第1キャリッジ6、第2キャリッジ7を駆動させる際に使用する駆動ワイヤ11の駆動プーリ150に対する巻き付け部分(駆動用部分)が、2次加工により高精度な加工が施された円筒部152に接して巻き取られるため、高精度な画像の位置関係を検出することができる。
具体的には、駆動プーリ150は、第1キャリッジ6の線速、駆動プーリ150の径にもよるが、例えば、線速235mm/sec、駆動プーリ径35mm、駆動ワイヤ径1mmの場合、駆動プーリ径が0.1mm違うと、画像長さが約0.4%変動する。そのため、駆動プーリ150には0.1mm以下の精度が要求される。よって、通常の射出成型だけでは精度を確保することが困難であるため、研磨加工等の2次加工により、駆動プーリ150の外径精度を向上している。
また、フランジ部151、153のフランジ151a、151b、153a、153bが螺旋状に形成されているため、フランジ部151、153のフランジ151a、151b、153a、153bの直近まで2次加工を施す場合、特殊な加工装置が必要となって量産性が著しく低下し、部品コストが高くなるという問題が生じ得るが、本実施の形態では、フランジ部151、153のフランジ151a、151b、153a、153bと円筒部152との間に、151a、151b、153a、153bよりも低い段差部151c、151d、153c、153dを有し、段差部151c、151d、153c、153dによってフランジ151a、151b、153a、153bと円筒部152とを区画するようにしたので、例えば、駆動プーリ150を樹脂成型(1次加工)によって形成した後、円筒部152に対して通常の旋盤による研磨加工等(2次加工)を行う場合、フランジ部151、153の螺旋形状に左右されず、円筒部152に対する2次加工を容易に行うことができる。よって、駆動プーリ150の外径精度を容易に向上させることができる。また、駆動プーリ150の2次加工により、第1キャリッジ6、第2キャリッジ7の駆動に使用される駆動ワイヤ11が巻かれている円筒部152の外径精度が高いために、高精度な画像の位置関係を検出することのできる複写機21を安価に提供することができる。
図7(a)、(b)は、本発明の一実施の形態に係る駆動装置の台座部材の構成をそれぞれ示す斜視図および正面図である。
図7(a)、(b)に示すように、駆動装置としての駆動機構100において、駆動プーリ150のボス部154と固定ネジ180との間には、合成樹脂により形成された台座部材170が介装されている。台座部材170の固定ネジ180の頭部の座面と接する側は平面形状に形成され、ボス部154と接する側はボス部154の外周部と面接触するよう凹形状の曲面が形成されている。具体的には、台座部材170のボス部154と接する側は、ボス部154の外周部の形状に一致した半円形状の曲面に形成されている。また、台座部材170には、固定ネジ180が挿通するネジ孔171が形成されている。
次に、このように構成された駆動装置としての駆動機構100の組付け手順を説明する。
まず、第1キャリッジ6および第2キャリッジ7の双方の両端部を2つの駆動ワイヤ11に図示しないワイヤクランプでそれぞれ固定した後、各駆動ワイヤ11を、その係止部材111をそれぞれ駆動プーリ150の係止部150aに係止した上で、駆動プーリ150の円筒部152に巻き付ける。
次いで、駆動軸140の両端にそれぞれ駆動プーリ150を装着する。次いで、2つの駆動プーリ150をそれぞれの固定ネジ180により駆動軸140に固定する。なお、この段階では、固定ネジ180は、駆動プーリ150が駆動軸140上で空転しない程度の締結力で仮絞めされる。
次いで、第1キャリッジ6および第2キャリッジ7を複数回往復させて、駆動プーリ150に対する駆動ワイヤ11の巻き出しおよび巻き付けを複数回行うエージング工程を実施する。このエージング行程によって、2組の駆動ワイヤ11と駆動プーリ150の各所において、駆動ワイヤ11の張力や駆動プーリ150への巻き付き具合の差を減少することができる。
次いで、エージングの後、一方の駆動プーリ150の固定ネジ180を緩めてから、第1キャリッジ6および第2キャリッジ7が所望の位置および姿勢となるように、固定ネジ180を緩めた方の駆動プーリ150を回動させて、固定ネジを再び仮締めする調整工程を実行する。
そして、エージング工程および調整工程を複数回実行して、第1キャリッジ6および第2キャリッジ7の位置および姿勢を完全に調整してから、双方の駆動プーリ150の固定ネジ180を本締めして組付けが完了する。
次に、台座部材170の作用について説明する。
駆動プーリ150のボス部154と固定ネジ180との間に台座部材170を介装する場合、ボス部154の上に台座部材170を乗せて、ボス部154の長孔形状のネジ孔154aと台座部材170のネジ孔171とを連通させてから、連通したネジ孔171、154aに固定ネジ180を差し込んで締結する。
固定ネジ180を締結すると、固定ネジ180の先端部が駆動軸140の図示しないネジ孔に螺合するとともに、固定ネジ180の座面とボス部154により台座部材170が加圧される。台座部材170の固定ネジ180の座面と接する側は平面形状に形成されているため、固定ネジ180の座面と台座部材170とは面接触し、また、台座部材170のボス部154と接する側はボス部154の外周部の形状に一致した半円形状の曲面に形成されているため、ボス部154と台座部材170とは面接触する。
このため、台座部材170は、固定ネジ180から受けた加重を、台座部材170自身が破損または変形することなく、ボス部154に伝えることができる。また、固定ネジ180からの加重がボス部154の一点に加わらないので、ボス部154が破損または変形することを防止することができる。
また、仮に、従来のように、台座部材170を介せずに固定ネジ180を締結した場合は、固定ネジ180の座面から受ける荷重によりボス部154の接触部が変形して平坦になってしまうので、上述の調整工程において固定ネジ180を再度仮締めまたは本締めしたときに、固定ネジ180の座面とボス部154の形状の不一致によって駆動プーリ150が意図せず回動してしまい、駆動プーリ150を調整後の位置に正確に固定できない恐れがある。
しかし、本実施の形態では、固定ネジ180の締結によりボス部154が変形することがないので、上述の調整工程において駆動プーリ150を調整後の位置に正確に固定することができる。
このように、台座部材170が駆動プーリ150のボス部154と固定ネジ180との間に介装されていることにより、駆動プーリ150を駆動軸140に固定するために固定ネジ180を絞めるときに、固定ネジ180の締結による負荷がボス部154の一点に集中することが防止され、固定ネジ180の締結による負荷をボス部154の外周部のより多くの面積で受けることができるので、駆動プーリのボス部にかかる負荷を軽減し、駆動プーリを駆動軸に固定ネジにより固定するときに駆動プーリが破損することを防止することができる。
図8(a)、(b)は、本発明の一実施の形態に係る駆動装置の台座部材の他の構成をそれぞれ示す斜視図および正面図である。また、図9(a)は、本発明の一実施の形態に係る駆動装置の駆動プーリの構成を示す正面図であり、(b)は、本発明の一実施の形態に係る駆動装置の台座部材の他の構成を示す正面図である。
図8(a)、(b)に示すように、台座部材170が、ボス部154に沿って台座部材170を回動可能に係止する係止部172を有する構成を有していると更に好適である。係止部172は、ボス部154を挟み込むC字形状に台座部材170と一体的に合成樹脂により成型されている。なお、係止部172は、台座部材170と一体的に形成する場合に限定されず、台座部材170とは別工程で作成した後に、台座部材170に接着、溶着等の手段により固定するようにしてもよい。
また、図9(a)、(b)に示すように、係止部172の内径bは、台座部材170がボス部154に対して着脱でき、かつ、台座部材170がボス部154に沿って回動できる程度に、ボス部154の外径aより小さい値に設定されている。換言すると、係止部172とボス部154は、軽い圧入気味に嵌り込むいわゆるスナップフィット構造を構成している。
このため、台座部材170は、ボス部154に対して容易に装着および離脱ができるとともに、装着時にはボス部154に沿って回動できるようになっている。
このように、台座部材170が係止部172を備え、ボス部154に沿って台座部材170が回動できるようにした場合、台座部材170をボス部154に装着した後は、台座部材170を把持する必要がなく、台座部材170をボス部154に沿って回動してその位置を変更することができるので、駆動軸140に対する駆動プーリ150の組付けを容易に行うことができる。
図10(a)、(b)は、本発明の一実施の形態に係る駆動装置の台座部材の他の構成をそれぞれ示す正面図である。
図10(a)、(b)に示すように、台座部材170が、台座部材170のネジ孔171がボス部154の長孔形状のネジ孔154a上に位置するよう台座部材170の回動範囲を規制する規制部材としての突起174、175、176を有していると更に好適である。
突起174は、台座部材170の駆動プーリ150側に対向する側に台座部材170と一体的に設けられており、駆動プーリ150の側面に放射状に複数設けられたリブ155の間に突出するよう配置されている。すなわち、図において、互いに隣り合う2つのリブ155を、リブ155aとリブ155bに区別すると、突起174は、リブ155aと、このリブ155aに隣接するリブ155bとの間に突出するよう配置されている。
この突起174は、台座部材170がボス部154に沿って回動する角度を、リブ155aとこのリブ155aに隣接するリブ155bとの間の角度θに制限している。また、この突起174は、台座部材170が角度θの範囲で回動しても、台座部材170のネジ孔171がボス部154の長孔形状のネジ孔154a上に常に位置するような位置に配置されている。
一方、突起175、176は、台座部材170のボス部154に接する側の面に、ボス部154の長孔形状のネジ孔154a内に突出するようにして台座部材170と一体的に設けられている。具体的には、突起175は、ネジ孔171のボス部154側の開口部の辺縁部の回動方向一方側に設けられ、突起176は、ネジ孔171のボス部154側の開口部の辺縁部の回動方向他方側に設けられている。
これらの突起175、176は、台座部材170のネジ孔171がボス部154の長孔形状のネジ孔154a上に常に位置するよう台座部材170の回動範囲を規制している。
なお、台座部材170の側面の突起174と、台座部材170のボス部154に接する側の面の突起175、176とは、双方を同時に設けなくてもよく、突起174または突起175、176の何れか一方を設けることにより、台座部材170のネジ孔171がボス部154の長孔形状のネジ孔154a上に常に位置するよう台座部材170の回動範囲を規制することができる。また、突起174、175、176は、必ずしも台座部材170に一体的に設ける必要はなく、台座部材170と別の材料により作成したり、台座部材170とは別工程で作成してから台座部材170に取り付けるようにしてもよい。
図11〜図13は、本発明の一実施の形態に係る駆動装置の締結構造を示す断面図である。
図11に示すように、固定ネジ180は、駆動軸140に形成されたネジ孔140aに挿入されて締結されるが、固定ネジ180とネジ孔140aの向きが必ずしも一致するとは限らないため、固定ネジ180をネジ孔140aに対して斜めに挿入した状態で締結しようとしてしまう場合もあり、この場合、固定ネジ180が曲がってしまったり、固定ネジ180に形成されたおねじ部180aやネジ孔140aに形成されためねじ部140c(ネジ溝)が破壊されてしまって、正常に締結することが出来なくなってしまうことがあり得る。
そこで、図12に示すように、ネジ孔140aの途中よりも奥側に固定ネジ180のおねじ部180と螺合するめねじ部140cを形成し、ネジ孔140aの入口から途中までは固定ネジ180のおねじ部180の外径と等しい径を有し固定ネジ180が挿通する挿通部140bを形成すると好適である。挿通部140bは、固定ネジ180がネジ孔140aのめねじ部140cに斜めに入らないようにガイドするガイド部材として機能する。ここで、例えば、2つの部材をボルト締結するときに一方の部材にめねじを形成し、他方の部材に"ばか穴"を形成することがあるが、挿通部140bの径は、このばか穴と同様に、めねじ部140cより10〜20%程度大きく設定してもよい。なお、挿通部140bの径が小さすぎると、わずかな加工精度の悪さで固定ネジ180が挿通部140bを通過しなくなる恐れがあり、また、挿通部140bの径が大きすぎると、固定ネジ180がネジ孔140aのめねじ部140cに斜めに入らないようにガイドする機能を果たさなくなってしまう恐れがある。また、挿通部140bの軸線方向の長さは、固定ネジ180が斜めに入らないようにガイドする機能を十分に果たすため、固定ネジ180のおねじ部180aの長さの1/3〜1/2程度に設定することが好ましい。
このように構成した場合、固定ネジ180を駆動軸140のネジ孔140aに取り付けるときに、ネジ孔140aの入口から途中まで形成した挿通部140bによって、固定ネジ180の軸芯がネジ孔140aの中心線と一致した状態で固定ネジ180のおねじ部180aとネジ孔140aのめねじ部140cが螺合するようにガイドされるため、固定ネジ180が曲がってしまったり、固定ネジ180に形成されたおねじ部180aやネジ孔140aに形成されためねじ部140cが破壊されてしまって、正常に締結することが出来なくなってしまうことを防止できる。
また、図13に示すように、駆動軸140を貫通するようにネジ孔140aを形成し、ネジ孔140aの軸線方向略中央部にめねじ部140cを形成するとともに、ネジ孔140aの両端の入口に挿通部140bをそれぞれ形成すると好適である。
このように構成した場合、ネジ孔140aの2つの入口のどちら側からも固定ネジ180を取り付けることができるので、駆動軸140が180度回転した状態でも、ネジ孔140aの他方の側の入口から固定ネジ180を取り付けることができ、組付け性を向上させることができる。
図14、図15は、本発明の一実施の形態に係る駆動装置の締結構造の他の例を示す断面図である。
図14に示すように、台座部材170が、ネジ孔171が形成されるとともに挿通部140bに挿嵌される挿嵌部170aを有すると好適である。ここで、挿嵌部170aは、内部にネジ孔171を有するボス形状に形成されており、その外周部が挿通部140b内に挿嵌されるようになっている。挿嵌部170aの外径は、挿嵌部170aが挿通部140bに嵌め込まれるよう、挿通部140bの径と略等しくなっている。また、挿嵌部170aを挿通部140bに嵌め込んだ状態で、挿嵌部170aの内部のネジ孔171の軸線方向が駆動軸140のネジ孔140aの軸線方向と一致するようになっている。挿通部140bの径は、固定ネジ180の径よりも十分に大きくすると、挿嵌部170aの肉厚を厚く設定することができるので好適である。図14に示す例では、台座部材170の内部のネジ孔171が、固定ネジ180が斜めに入らないようにガイドする機能を果たすため、図12、図13に示した場合よりも、挿通部140bの軸線方向の長さを短くして、めねじ部140cの長さを長くしてもよい。
このように構成した場合、固定ネジ180を駆動軸140のネジ孔140aに取り付けるときに、台座部材170の内部のネジ孔171によって、固定ネジ180の軸芯がネジ孔140aの中心線と一致した状態で固定ネジ180のおねじ部180aとネジ孔140aのめねじ部140cが螺合するようにガイドされるため、固定ネジ180が曲がってしまったり、固定ネジ180に形成されたおねじ部180aやネジ孔140aに形成されためねじ部140cが破壊されてしまって、正常に締結することが出来なくなってしまうことを防止できる。また、図12、図13に示した場合よりも、挿通部140bの軸線方向の長さを短くして、めねじ部140cの長さを長くすることができるので、固定ネジ180のおねじ部180aとネジ孔140aのめねじ部140cとの螺合範囲を大きくして締結を強固にすることができる。
また、図15に示すように、駆動軸140を貫通するようにネジ孔140aを形成し、ネジ孔140aの軸線方向略中央部にめねじ部140cを形成するとともに、ネジ孔140aの両端の入口に挿通部140bをそれぞれ形成し、台座部材170の挿嵌部170aが2つの挿通部140bの何れにも挿嵌できるように構成すると好適である。
このように構成した場合、ネジ孔140aの2つの入口のどちら側からも固定ネジ180を取り付けることができるので、駆動軸140が180度回転した状態でも、ネジ孔140aの他方の側の入口から固定ネジ180を取り付けることができ、組付け性を向上させることができる。
また、図14、図15に示す台座部材170の挿嵌部170aは、台座部材170の本体と一体または別体で合成樹脂により構成されることが好ましい。
この場合、金属により構成された駆動軸140のネジ孔140aの挿通部140bと合成樹脂により構成された挿嵌部170aとの嵌めあいが容易になるため係合がしやすく、組付けを容易に行うことができる。
なお、図12〜図15に示した駆動軸140のネジ孔140aは、例えば、タップ等により下穴にめねじ部140cを形成してから、入口にドリル加工により挿通部140bを形成することにより作成することができる。
以上のように、本実施の形態に係る駆動装置としての駆動機構100は、駆動プーリ150が、駆動ワイヤ11を巻き付けるための円筒部152と、円筒部152の両端に形成されたフランジ部151、153と、駆動軸140に固定ネジ180により固定される曲面形状のボス部154と、を備え、ボス部154は、固定ネジ180が挿通するとともに、固定ネジ180を緩めたときに駆動軸140に対するボス部154の回動方向の固定位置を調整できるよう駆動プーリ150の回動方向に沿って形成されたネジ孔154aを有し、固定ネジ180の座面が接触する平面が一端に形成されるとともに、ボス部154の外周部と面接触する凹形状の曲面が他端に形成され、固定ネジ180が挿通するネジ孔171を有する台座部材170を、固定ネジ180とボス部154との間に介装したことを特徴としている。
このため、固定ネジ180の座面が接触する平面が一端に形成されるとともに、ボス部154の外周部と面接触する凹形状の曲面が他端に形成され、固定ネジ180が挿通するネジ孔171を有する台座部材170を、固定ネジ180とボス部154との間に介装したので、駆動プーリ150を駆動軸140に固定するために固定ネジ180を絞めるときに、固定ネジ180の締結による負荷がボス部154の一点に集中することを防ぎ、固定ネジ180の締結による負荷をボス部154の外周部のより多くの面積で受けることができるので、駆動プーリのボス部にかかる負荷を軽減し、駆動プーリを駆動軸に固定ネジにより固定するときに駆動プーリが破損することを防止することができる。
また、本実施の形態に係る駆動装置としての駆動機構100は、台座部材170が、台座部材170をボス部154に沿って回動可能に係止する係止部172を有することを特徴としている。
このため、台座部材170をボス部154に装着した後は、台座部材170を把持する必要がなく、台座部材170をボス部154に沿って回動してその位置を変更することができるので、駆動軸140に対する駆動プーリ150の組付けを容易に行うことができる。
また、本実施の形態に係る駆動装置としての駆動機構100は、台座部材170が、ネジ孔171がネジ孔154a上に位置するよう台座部材170の回動範囲を規制する突起174、175、176を有することを特徴としている。
このため、台座部材170のネジ孔171がボス部154の長孔形状のネジ孔154a上に常に位置するよう台座部材170の回動範囲が規制されるので、駆動軸140に対する駆動プーリ150の組付けを容易に行うことができる。
また、本実施の形態に係る駆動装置としての駆動機構100は、台座部材170が、合成樹脂から構成されることを特徴としている。
このため、台座部材170が合成樹脂から構成されているので、係止部172および突起174、175、176を容易に成型することができ、また、台座部材170の形状の自由度を高めることができる。
また、本実施の形態に係る駆動装置としての駆動機構100は、係止部172が、ボス部154の外径より小さい内径を有するC字形状に形成されることを特徴としている。
このため、係止部172とボス部154が、軽い圧入気味に嵌り込むいわゆるスナップフィット構造を構成するので、台座部材170をボス部154に装着した後は、台座部材170を把持する必要がなく、台座部材170をボス部154に沿って回動してその位置を変更することができるので、駆動軸140に対する駆動プーリ150の組付けを容易に行うことができる。
また、本実施の形態に係る駆動装置としての駆動機構100は、駆動軸140には固定ネジ180が挿入されるネジ孔140aが形成され、ネジ孔140aの途中から奥に、固定ネジ180のおねじ部180aと螺合するめねじ部140cが形成されるとともに、ネジ孔140aの入口から途中に、固定ネジ180のおねじ部180aの外径と等しい径を有し、固定ネジ180のおねじ部180aが挿通する挿通部140bが形成されたことを特徴としている。
このため、固定ネジ180を駆動軸140のネジ孔140aに取り付けるときに、ネジ孔140aの入口から途中まで形成した挿通部140bによって、固定ネジ180の軸芯がネジ孔140aの中心線と一致した状態で固定ネジ180のおねじ部180aとネジ孔140aのめねじ部140cが螺合するようにガイドされるため、固定ネジ180が曲がってしまったり、固定ネジ180に形成されたおねじ部180aやネジ孔140aに形成されためねじ部140cが破壊されてしまって、正常に締結することが出来なくなってしまうことを防止できる。
また、本実施の形態に係る駆動装置としての駆動機構100は、ネジ孔140aが駆動軸140を貫通して形成され、ネジ孔140aの軸線方向略中央部にめねじ部140cが形成されるとともに、ネジ孔140aの両端の入口に挿通部140bがそれぞれ形成されたことを特徴としている。
このため、ネジ孔140aの2つの入口のどちら側からも固定ネジ180を取り付けることができるので、駆動軸140が180度回転した状態でも、ネジ孔140aの他方の側の入口から固定ネジ180を取り付けることができ、組付け性を向上させることができる。
また、本実施の形態に係る駆動装置としての駆動機構100は、挿通部140bが、固定ネジ180のおねじ部180aの外径より大きい径を有し、台座部材170が、ネジ孔171が形成されるとともに、挿通部140bに挿嵌される挿嵌部170aを有することを特徴としている。
このため、固定ネジ180を駆動軸140のネジ孔140aに取り付けるときに、台座部材170の内部のネジ孔171によって、固定ネジ180の軸芯がネジ孔140aの中心線と一致した状態で固定ネジ180のおねじ部180aとネジ孔140aのめねじ部140cが螺合するようにガイドされるため、固定ネジ180が曲がってしまったり、固定ネジ180に形成されたおねじ部180aやネジ孔140aに形成されためねじ部140cが破壊されてしまって、正常に締結することが出来なくなってしまうことを防止できる。また、図12、図13に示した場合よりも、挿通部140bの軸線方向の長さを短くして、めねじ部140cの長さを長くすることができるので、固定ネジ180のおねじ部180aとネジ孔140aのめねじ部140cとの螺合範囲を大きくして締結を強固にすることができる。
また、本実施の形態に係る画像読取装置81は、駆動装置としての駆動機構100を備えたことを特徴としている。
このため、駆動機構100を備えた画像読取装置81において、駆動プーリ150のボス部154にかかる負荷を軽減し、駆動プーリ150を駆動軸140に固定ネジ180により固定するときに駆動プーリ150が破損することを防止することができる。
また、本実施の形態に係る画像形成装置としての複写機21は、駆動装置としての駆動機構100を備えたことを特徴としている。
このため、駆動機構100を備えた複写機21において、駆動プーリ150のボス部154にかかる負荷を軽減し、駆動プーリ150を駆動軸140に固定ネジ180により固定するときに駆動プーリ150が破損することを防止することができる。