JP5256644B2 - 難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物および成形品 - Google Patents

難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物および成形品 Download PDF

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Description

本発明は、難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(以下、単に、「芳香族ポリカーボネート樹脂組成物」ということがある)に関し、詳しくは、難燃性、耐衝撃性、流動性、熱安定性および外観に優れた、特に薄肉成形に好適な、難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物および成形品に関する。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、汎用エンジニアリングプラスチックとして透明性、耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性等に優れ、その優れた特性から、自動車分野、OA機器分野、電気・電子分野等の原材料として、工業的に広く利用されている。
一方、OA機器、家電製品等の用途を中心に、樹脂材料の難燃化の要望が強く、これらの要望に応えるために、芳香族ポリカーボネート樹脂に、ハロゲン系化合物、リン系化合物、シロキサン系化合物、ポリフルオロエチレン等を配合して難燃化する技術が多数提案されている。また、最近では、携帯電話の電池パックや記憶媒体カバー等に用いられる樹脂容器は、小型化、軽量化、高機能化等を目的として年々薄肉化されている。この結果、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を用いた薄肉成形品は、高温成形に耐えうる熱安定性と同時に、優れた難燃性、耐衝撃性、流動性および外観が求められている。
例えば、特許文献1には、ポリカーボネート樹脂に特定のリン酸エステル系化合物、ポリオルガノシロキサン成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分を有する複合ゴム系グラフト共重合体を配合することにより、薄い厚さに成形されても耐衝撃性や難燃性に優れた樹脂組成物が得られると記載されている。
また、特許文献2には、芳香族ポリカーボネート樹脂に特定のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を配合することにより、耐衝撃性と難燃性に優れた樹脂組成物が得られ、さらに高分子加工助剤を配合することができると記載されている。
さらに、特許文献3には、芳香族ポリカーボネート樹脂に、リン系難燃剤、ポリフルオロエチレン樹脂および特定の多層構造重合体を配合してなる樹脂組成物は、難燃性や熱安定性、耐衝撃性に優れ、外観改善効果があるため、大型成形品や肉薄成形品として有用であることが記載されている。
特許文献4には、薄肉での難燃性、剛性、および熱安定性に優れた樹脂組成物として、ポリカーボネート樹脂、タルク等の無機充填材、含ケイ素化合物、含フッ素ポリマーを含んでなる難燃性熱可塑性樹脂組成物が記載されている。
特許文献5には、耐衝撃性、成形性、流動性に優れ、バッテリーパックに適した材料として、ポリカーボネート樹脂、複合ゴム系グラフト共重合体、ハロゲン非含有リン酸エステル化合物およびポリテトラフルオロエチレン(被覆なし)からなる難燃性樹脂組成物が記載されている。
また、特許文献6には、薄肉流動性、耐熱性、低そり性に優れた樹脂組成物として、ポリカーボネート系樹脂に液晶性樹脂とリン酸エステルを配合してなる、その最大投影面の厚さが0.6mm以下である部分が100mm以上の携帯機器の電池パック筐体部材用樹脂組成物が記載されている。
さらに、特許文献7においては、熱可塑性樹脂に、ゴム質重合体、ポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体(被覆あり)を配合した樹脂組成物から得られる成形品は、衝撃強度が改良されることが記載されている。
また、特許文献8においては、芳香族ポリカーボネート樹脂と特定量の弗化物イオンを含有する含フッ素有機金属塩化合物からなる樹脂組成物は、優れたドリップ効果を有することが記載されている。
しかしながら、技術の進歩とともに、難燃性、流動性、耐衝撃性および外観について、より高いレベルのものが要求されるようになってきている。
ここで、特許文献1〜3では、それらの実施例における難燃性評価用試験片の肉厚は1/16インチ(1.6mm)、特許文献4の実施例では1.2mmまたは1.6mm、特許文献5および8の実施例では0.8mmのものが採用されているが、近年、より薄い成形品、具体的には厚み0.5mm以下の薄肉成形品が求められている。
従って、全体または部分的に0.5mm以下の平板部を有するような薄肉容器に成形した場合でも、良好な成形品外観と難燃性を両立させることができ、さらに耐衝撃性や流動性に優れ、高温成形にも耐えうる熱安定性を有し、総合的に良好な性能を兼ね備えた樹脂組成物の開発が望まれている。
特開平08−259791号公報 特開2003−238639号公報 特開2001−123056号公報 特開2003−82217号公報 特開平11−21441号公報 特開2002−348460号公報 特開2000−226523号公報 特開2005−112973号公報
しかしながら、本発明者が検討したところ、上記特許文献1〜4に記載のような樹脂組成物を用いた薄肉成形品では、全体または部分的に0.5mm以下の平板部を有するような薄肉容器に成形した場合には、難燃性や流動性が十分でないことがわかった。
また、特許文献5に記載の樹脂組成物で薄肉成形品を成形した場合、難燃性、耐衝撃性が不足するばかりか、成形品表面に白点異物が多数生じ、外観の劣る成形品しか得られないことがわかった。
さらに、特許文献6〜8に記載の樹脂組成物を用いた場合でも、厚み0.5mmにおける難燃性が不十分であり、本発明の目的である耐衝撃性、熱安定性、成形品外観の全てをバランスよく満足することができないことがわかった。
本発明の目的は、全体または部分的に0.5mm以下の平板部を有するような薄肉成形品であって、良好な成形品外観と難燃性を両立させることができ、さらに耐衝撃性や流動性に優れ、高温成形にも耐えうる熱安定性を有し、総合的に良好な性能を兼ね備えた薄肉成形用難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物および薄肉成形品を提供することにある。
本発明者らは、上述した課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、芳香族ポリカーボネート樹脂に、リン系難燃剤、ポリフルオロエチレン、特定のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体およびタルクを含有させることにより、難燃性、成形品外観、耐衝撃性、流動性に優れ、高温成形にも耐えうる熱安定性を兼ね備えた樹脂組成物および薄肉成形品が得られることを見出し、本発明を完成させた。
本発明の第1の要旨は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、(B)リン系難燃剤を3〜20重量部、(C)ポリフルオロエチレンを0.01〜1.5重量部、(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を1〜20重量部、(E)タルク0.1〜12重量部配合してなる難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であって、前記(C)ポリフルオロエチレンが、有機系重合体で被覆されたポリフルオロエチレンであり、前記(D)前記ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、(X)ポリオルガノシロキサン粒子40〜90重量部の存在下で、(Y)第1のビニル系単量体0.5〜10重量部を重合し、さらに、(Z)第2のビニル系単量体5〜50重量部を重合して得られるものであり、前記(Y)第1のビニル系単量体は、(y−1)多官能性単量体100〜50重量%および(y−2)その他の共重合可能な単量体0〜50重量%からなるビニル系単量体であり、かつ、前記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成形された0.5mm厚試験片のUL94規格における難燃性がV−0又はV−1である芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を、310〜360℃で射出成形して得られる成形品であって、前記成形品は、該成形品全体の面積の25%以上が肉厚0.5mm以下の平板部であることを特徴とする、成形品にある。
本発明の第2の要旨は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、(B)リン系難燃剤を3〜20重量部、(C)ポリフルオロエチレンを0.01〜1.5重量部、(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を1〜20重量部、(E)タルク0.1〜12重量部配合してなる難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であって、前記(C)ポリフルオロエチレンが、有機系重合体で被覆されたポリフルオロエチレンであり、前記(D)前記ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、(X)ポリオルガノシロキサン粒子40〜90重量部の存在下で、(Y)第1のビニル系単量体0.5〜10重量部を重合し、さらに、(Z)第2のビニル系単量体5〜50重量部を重合して得られるものであり、前記(Y)第1のビニル系単量体は、(y−1)多官能性単量体100〜50重量%および(y−2)その他の共重合可能な単量体0〜50重量%からなるビニル系単量体であり、かつ、前記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成形された0.5mm厚試験片のUL94規格における難燃性がV−0又はV−1である芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を、2軸スクリュー押出機を混練機として使用する溶融混練法で、バレル温度240〜320℃に設定して混練する工程、および、前記樹脂組成物を、温度310〜360℃に設定して射出成形する工程を含む、成形品の製造方法であって、前記成形品は、該成形品全体の面積の25%以上が肉厚0.5mm以下の平板部であることを特徴とする成形品の製造方法にある。
なお、本発明における薄肉成形品とは、例えば、電池パック(携帯電話の電池パック等)または小型補助記憶装置の外郭部を構成する容器に使用される成形品であり、全体または部分的に0.5mm以下の平板部を有する成形品をいう。
本発明で用いる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、全体または部分的に0.5mm以下の平板部を有する薄肉成形品に成形した場合であっても、良好な難燃性(具体的には、0.5mm厚試験片のUL94規格における難燃性がV−0またはV−1である)と外観を示す。また、流動性と熱安定性が良好で生産性に優れているため、得られる薄肉成形品は耐衝撃性にも優れた、総合的にバランスの取れた性能を有する。
すなわち、本発明により、携帯電話、携帯ステレオ、モバイルパソコン等の電池パックや、メモリーカード、SDカード等の小型補助記憶装置の外郭部を構成する容器として好適な薄肉成形品を提供することが可能となった。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。本明細書において、アルキル基等の「基」は、特に述べない限り、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。さらに、炭素数が限定されている基の場合、該炭素数は、置換基が有する炭素数を含めた数を意味している。
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂
本発明に使用される(A)芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲンまたは炭酸ジエステルと反応させることによって得られる熱可塑性重合体である。該(A)芳香族ポリカーボネート樹脂は、分岐していてもよいし、共重合体であってもよい。該(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のホスゲン法(界面重合法)や溶融法(エステル交換法)により製造できる。また、溶融法によって得られる芳香族ポリカーボネート樹脂を用いる場合、末端基のOH基量を調整して用いてもよい。
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となる芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわち、ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられ、好ましくはビスフェノールAである。また、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物を使用することもできる。
分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、上述した芳香族ジヒドロキシ化合物の一部を、分岐剤、例えば、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のポリヒドロキシ化合物や、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(すなわち、イサチンビスフェノール)、5−クロロイサチン、5,7−ジクロロイサチン、5−ブロムイサチン等の化合物で置換すればよい。これら置換する化合物の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、通常0.01〜10モル%であり、好ましくは0.1〜2モル%である。
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂としては、上述した中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂、または、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体が好ましい。また、シロキサン構造を有するポリマーまたはオリゴマーとの共重合体等の、ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体であってもよい。さらには、上述した芳香族ポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量として、16,000〜30,000が好ましく、18,000〜28,000がより好ましい。粘度平均分子量を30,000以下とすることにより、流動性が良好になる傾向にあり、16,000以上とすることにより、衝撃強度が良好になる傾向にある。
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量を調節するには、例えば、m−メチルフェノール、p−メチルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等の一価の芳香族ヒドロキシ化合物を用いることができる。
(B)リン系難燃剤
本発明においては、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂に(B)リン系難燃剤を配合する。本発明で用いる(B)リン系難燃剤は、分子中にリンを含む化合物であればよく、具体的には、環状フェノキシホスファゼン化合物、鎖状フェノキシホスファゼン化合物および架橋フェノキシホスファゼン化合物のようなホスファゼン化合物、下記の一般式(1)で表される化合物、および下記一般式(2)で表される化合物から選択されるものが好ましい。
一般式(1)
Figure 0005256644
(一般式(1)中、R、RおよびRは、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、h、iおよびjは、各々独立に0または1を示す。)
、RおよびRは、好ましくは、各々独立に、アルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基である。
上記一般式(1)で表される化合物は、公知の方法で、オキシ塩化リン等から製造することができる。一般式(1)で表されるリン系化合物の具体例としては、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸ジフェニル−2−エチルクレジル、リン酸トリ(イソプロピルフェニル)、メチルホスホン酸ジフェニルエステル、フェニルホスホン酸ジエチルエステル、リン酸ジフェニルクレジル、リン酸トリブチル等が挙げられる。
一般式(2)
Figure 0005256644
(一般式(2)中、R、R、RおよびRは、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、各々独立に0または1であり、tは、1〜5の整数であり、Xは、アリーレン基を示す。tが2以上のとき、t個の繰り返し単位は、各々同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
上記一般式(2)で表される化合物は、tが1〜5の縮合リン酸エステルであるが、tが異なる複数種類の縮合リン酸エステルの混合物の場合には、tはそれらの混合物の平均値として算出する。
Xは、好ましくはレゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールA等のジヒドロキシ化合物から誘導される2価の基である。
また、R、R、RおよびRは、好ましくは、各々独立に、フェノール、クレゾール、キシレノールから誘導されるものである。
上述した(B)リン系難燃剤のなかでも、本発明においては、作業性や熱安定性に優れ、成形時の発生ガス量も少ないという点から、一般式(2)で表される化合物がより好ましい。特に好ましくは、一般式(2)でXはレゾルシノールまたはビスフェノールAから誘導されるものであり、p、q、rおよびsは、各々1であり、R、R、RおよびRは、それぞれクレゾールまたはキシレノールから誘導されるものである。具体的にはクレジル・レゾルシンポリホスフェート、キシリル・レゾルシンポリホスフェートなどを挙げることができる。
(B)リン系難燃剤の配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、3〜20重量部であり、さらには4〜18重量部、特には5〜15重量部が好ましい。リン系難燃剤の配合量が20重量部を超えると、機械的物性が低下する場合があり、3重量部未満では難燃性や流動性が低下する場合がある。(B)リン系難燃剤は、2種類以上を併用してもよい。2種類以上用いる場合、その合計量が上記配合量となる。
(C)ポリフルオロエチレン
本発明で用いる(C)ポリフルオロエチレンは、例えば、フィブリル形成能を有するもので、重合体中に容易に分散し、且つ重合体同士を結合して繊維状材料を形成するのに役立つ。ポリフルオロエチレンを含有した樹脂組成物を溶融成形した薄肉成形品の外観を向上させるためには、有機系重合体で被覆された特定の被覆ポリフルオロエチレン(以下、「被覆ポリフルオロエチレン」と略記することがある)を含有させることが好ましい。本発明で好ましく採用される被覆ポリフルオロエチレンは、被覆ポリフルオロエチレン中のポリフルオロエチレンの含有比率が40〜95重量%の範囲内となるものであり、中でも43〜80重量%、さらには45〜70重量%、特には47〜60重量%となるものが好ましい。被覆ポリフルオロエチレン中のポリフルオロエチレンの含有比率を40重量%以上とすることにより、難燃性が向上する傾向にあり、95重量%以下とすることにより、白点異物をより抑止できる傾向にあり、好ましい。
また、有機系重合体により被覆されるポリフルオロエチレンとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましく、中でも、フィブリル形成能を有するものが好ましい。このようなPTFEは重合体中に容易に分散し、重合体同士を結合して繊維状材料を形成する傾向を示す。このような被覆ポリフルオロエチレンを配合することにより、良好な難燃性を維持しつつ、薄肉成形品表面の白点異物の発生をより抑制することができる。
被覆ポリフルオロエチレンは、公知の種々の方法により製造でき、例えば(1)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液と有機系重合体粒子水性分散液とを混合して、凝固またはスプレードライにより粉体化して製造する方法、(2)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液存在下で、有機系重合体を構成する単量体を重合した後、凝固またはスプレードライにより粉体化して製造する方法、(3)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液と有機系重合体粒子水性分散液とを混合した分散液中で、エチレン性不飽和結合を有する単量体を乳化重合した後、凝固またはスプレードライにより粉体化して製造する方法、等が挙げられる。
ポリフルオロエチレンを被覆する有機系重合体としては、特に制限されるものではないが、樹脂に配合する際の分散性の観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂との親和性が高いものが好ましい。
有機系重合体を生成するための単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、o−エチルスチレン、p−クロロスチレン、o−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、p−メトキシスチレン、o−メトキシスチレン、2,4−ジメチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、メタクリル酸トリデシル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸;N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸ビニル系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン系単量体;ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン等のジエン系単量体等を挙げることができる。これらの単量体は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
本発明で用いる有機系重合体は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂との親和性の観点から、芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、シアン化ビニル系単量体から選ばれる1種以上の単量体を含む有機系重合体が好ましく、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含む有機系重合体がより好ましい。また、本発明で用いる上記有機系重合体中の、芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、シアン化ビニル系単量体から選ばれる1種以上の単量体の含有量は10重量%以上であることが好ましい。
本発明において被覆ポリフルオロエチレンとしては、例えば三菱レイヨン(株)製のメタブレンA−3800、KA−5503や、PIC社製のPoly TS AD001等が使用できる。
本発明における(C)ポリフルオロエチレンの配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.01〜1.5重量部であり、0.05〜1.2重量部であることが好ましく、0.2〜1.0重量部であることがより好ましい。(C)ポリフルオロエチレンの配合量が0.01重量部未満の場合には、難燃性が低下する場合があり、1.5重量部を超えると成形品外観の低下が起こる場合がある。被覆ポリフルオロエチレンを配合する場合は、被覆ポリフルオロエチレン中のポリフルオロエチレンの配合量が上記記載の範囲内となるように配合する。
さらに、上述した(B)リン系難燃剤と(C)ポリフルオロエチレンの配合比率[(B)/(C)]は、薄肉部分の難燃性をより向上させバランスの良い性能を有する樹脂組成物を得るという点から、通常0.1〜1000であり、好ましくは1〜100、さらに好ましくは2〜60である。
(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体
本発明で用いる(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、例えば、特開2003−238639号公報に開示された製造方法によって製造可能である。
即ち、(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、(X)ポリオルガノシロキサン粒子40〜90重量部の存在下で、(Y)第1のビニル系単量体0.5〜10重量部を重合し、さらに、(Z)第2のビニル系単量体5〜50重量部を重合して得られるものである。
(X)ポリオルガノシロキサン粒子は、トルエン不溶分量(該(X)ポリオルガノシロキサン粒子0.5gをトルエン80mlに室温で24時間浸漬した場合のトルエン不溶分量)が95重量%以下、さらには50重量%以下、特には20重量%以下であるものが難燃性、耐衝撃性の点から好ましい。
(X)ポリオルガノシロキサン粒子の具体例としては、ポリジメチルシロキサン粒子、ポリメチルフェニルシロキサン粒子、ジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサン共重合体粒子などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(Y)第1のビニル系単量体は、(y−1)多官能性単量体、すなわち、分子内に重合性不飽和結合を2つ以上含む多官能単量体100〜50重量%および(y−2)その他の共重合可能な単量体0〜50重量%からなるビニル系単量体である。(Y)第1のビニル系単量体は、難燃化効果および耐衝撃性改良効果を向上させるために使用するものである。
(Y)第1のビニル系単量体は、(y−1)多官能性単量体を、好ましくは100〜80重量%、さらに好ましくは100〜90重量%含み、(y−2)その他の共重合可能な単量体を、好ましくは0〜20重量%、さらに好ましくは0〜10重量%含む。(y−1)多官能性単量体を50重量%以上の割合で含めることにより、また、(y−2)その他の共重合可能な単量体を50重量%以下の割合で含めることにより、最終的に得られる(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の耐衝撃性改良効果がより向上する傾向にあり好ましい。
(y−1)多官能性単量体は、分子内に重合性不飽和結合を2つ以上含む化合物であり、その具体例としては、メタクリル酸アリル、シアヌル酸トリアリル、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。これらの中では、経済性および効果の点で特にメタクリル酸アリルの使用が好ましい。
(y−2)その他の共重合可能な単量体の具体例としては、スチレンなどの芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸、マレイン酸などのカルボキシル基含有ビニル系単量体などがあげられる。これらは2種以上を併用してもよい。
(Z)第2のビニル系単量体は、(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を構成する成分であって、該(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を熱可塑性樹脂に配合して難燃性および耐衝撃性を改良する場合に、グラフト共重合体と熱可塑性樹脂との相溶性を確保して熱可塑性樹脂にグラフト共重合体を均一に分散させるために使用される成分でもある。
(Z)第2のビニル系単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、スチレン、アクリロニトリル等の、上記(Y)第2のビニル系単量体における(y−2)その他の共重合可能な単量体と同じものを使用することができ、2種以上併用してもよい。
(Z)第2のビニル系単量体は、該ビニル系単量体の重合体の溶解度パラメーターが9.15〜10.15[(cal/cm1/2]であることが好ましく、9.17〜10.10[(cal/cm1/2]であることがより好ましく、9.20〜10.05[(cal/cm1/2]であることがさらに好ましい。溶解度パラメーターを上記範囲とすることにより、難燃性がより向上する傾向にあり好ましい。
本発明に使用する(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、(X)ポリオルガノシロキサン粒子を40〜90重量部、好ましくは60〜80重量部、より好ましくは60〜75重量部の存在下で、(Y)第1のビニル系単量体を0.5〜10重量部、好ましくは1〜5重量部、より好ましくは2〜4重量部を重合し、さらに、(Z)第2のビニル系単量体を5〜50重量部、好ましくは15〜39重量部、より好ましくは21〜38重量部を重合して得られる。
(X)ポリオルガノシロキサン粒子の割合が少なすぎる場合および多すぎる場合は、いずれも難燃化効果が低くなる。
また、(Y)第1のビニル系単量体が少なすぎる場合、難燃化効果および耐衝撃性改良効果が低くなり、多すぎる場合、耐衝撃性改良効果が低くなる。
さらに、(Z)第2のビニル系単量体が少なすぎる場合および多すぎる場合は、いずれも難燃化効果が低くなる。
(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、公知のシード乳化重合が適用でき、例えば、(X)ポリオルガノシロキサン粒子のラテックス中で(Y)第1のビニル系単量体のラジカル重合を行い、さらに、(Z)第2のビニル系単量体のラジカル重合を行うことにより得られる。また、(Y)第1のビニル系単量体および(Z)第2のビニル系単量体は、いずれも1段階で重合させてもよく2段階以上で重合させてもよい。
上記方法によって得られた(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、ラテックスからポリマーを分離して使用してもよく、ラテックスのまま使用してもよい。ポリマーを分離する方法としては、通常の方法、例えば、ラテックスに塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどの金属塩を添加することによりラテックスを凝固、分離、水洗、脱水し、乾燥する方法が挙げられる。また、スプレー乾燥法も使用できる。
(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、1〜20重量部であり、好ましくは2〜17重量部であり、より好ましくは3〜15重量部、特に好ましくは4〜13重量部である。(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体が20重量部を超えると剛性が低下し、1重量部未満では難燃性が低下することがある。
(E)タルク
本発明においては、難燃性、機械的強度をより向上させることを主目的に(E)タルクを配合する。該タルクは、燃焼時の溶融樹脂ドリップ防止効果が大きく、タルクを配合することにより、難燃性をより向上させることができる。
タルクは、特に限定されないが、光透過式粒度分布測定器を用いる沈降法(浅田法)で測定した数平均粒子径で好ましくは1.0〜9.0μm、より好ましくは1.5〜8.0μm、さらに好ましくは2.0〜7.0μmのタルクである。数平均粒子径が1.0μm未満では難燃性が不足する場合があり、9.0μmを超えると成形品の外観が低下する場合がある。
(E)タルク中のFe成分およびAl成分の含有量は、それぞれFe、Alとして0.001〜0.4重量%であることが好ましく、0.001〜0.2重量%でがより好ましい。また、耐衝撃性の観点から、表面処理されていないタルクが、さらに好ましく用いられる。
(E)タルクの配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.1〜12重量部であり、好ましくは1〜12重量部、より好ましくは2〜8重量部である。(E)タルクの配合量が0.1重量部未満である場合は難燃性が不十分であり、12重量部を越えると成形品の機械的強度が低下し易くなる。
本発明において、樹脂組成物には、上記成分以外に、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、従来公知の任意の、抗酸化剤、熱安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤等の添加剤や、ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂、耐衝撃性改良剤、タルク以外の無機充填材等を含有していてもよい。
本発明に用いてもよい抗酸化剤としては、好ましくはヒンダードフェノール系抗酸化剤が挙げられる。具体例としては、ペンタエリスリト−ルテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)、1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等が挙げられる。上記のうちで、特にペンタエリスリト−ルテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。これら2つのフェノール系抗酸化剤は、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社よりイルガノックス1010およびイルガノックス1076の名称で市販されている。
抗酸化剤の配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜2重量部である。抗酸化剤の配合量を0.01重量部以上とすることにより、抗酸化剤としての効果がより発揮されやすい傾向にあり、2重量部を越えても抗酸化剤として更なる効果は得られず、金型汚染等を引き起こす場合があることから、2重量部以下が経済的である。抗酸化剤は複数種併用することもできる。
本発明に用いてもよい熱安定剤としては、亜リン酸エステル系安定剤が好ましく、具体的には、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(エチルフェニル)ホスファイト、トリス(ブチルフェニル)ホスファイトおよびトリス(ヒドロキシフェニル)ホスファイトなどが挙げられる。これらの安定剤のうち、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトが特に好ましい。
熱安定剤の配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜2重量部であり、より好ましくは0.02〜1重量部である。含有量を0.01重量部以上とすることにより、熱安定剤としての効果がより発揮されやすい傾向にあり、2重量部を超えて添加してもそれ以上の熱安定剤としての効果は得られず、金型汚染を引き起こす場合があることから、2重量部以下が経済的である。熱安定剤は、複数種併用することもできる。
本発明に用いてもよい離型剤としては、好ましくは、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル、ポリシロキサン系シリコーンオイルから選ばれる少なくとも1種のものが用いられる。これらの中で、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種がより好ましく用いられる。
脂肪族カルボン酸としては、飽和または不飽和の脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸またはトリカルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸は、脂環式カルボン酸も包含する。このうち好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6〜36のモノまたはジカルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和モノカルボン酸がさらに好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラトリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。
脂肪族カルボン酸エステルを構成する脂肪族カルボン酸成分としては、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、脂肪族カルボン酸エステルを構成するアルコール成分としては、飽和または不飽和の1価アルコール、飽和または不飽和の多価アルコール等を挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらのアルコールのうち、炭素数30以下の1価または多価の飽和アルコールが好ましく、さらに炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコールまたは多価アルコールが好ましい。ここで脂肪族アルコールは、脂環式アルコールも包含する。
これらのアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。これらの脂肪族カルボン酸エステルは、不純物として脂肪族カルボン酸および/またはアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。
脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリスチルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸オクチルドデシル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレートを挙げることができる。
離型剤の配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、好ましくは2重量部以下であり、より好ましくは1重量部以下である。2重量部以下とすることにより、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染等をより効果的に抑止できる傾向にある。該離型剤は、複数種併用することもできる。
本発明に使用可能な着色剤としては、熱可塑性樹脂成形品に一般的に用いられる、染料、無機顔料、有機顔料が挙げられる。
染料としては、アゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、インジゴ染料、ジフェニルメタン染料、アクリジン染料、シアニン染料、ニトロ染料、ニグロシン等が挙げられる。無機顔料としては、酸化チタン、べんがら、コバルトブルー等の酸化物顔料、アルミナホワイト等の水酸化物顔料、硫化亜鉛、カドミウムイエロー等の硫化物顔料、ホワイトカーボン、タルク等の珪酸塩顔料、カーボンブラック等が挙げられる。有機顔料としては、ニトロ顔料、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、縮合多環顔料等が挙げられる。これらの中でも、無機顔料は樹脂組成物の難燃性を向上させる場合があり、特に、カーボンブラックが、他の着色剤に比べ難燃性向上効果が高い。また、着色剤は、押出時のハンドリング性改良目的のために、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂とマスターバッチ化されたものも用いてもよい。
着色剤の配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し3重量部以下が好ましく、1重量部以下がより好ましい。また、酸化チタン等の無機顔料は、着色目的以外(例えば、遮光性付与)に使用される場合があり、その場合の配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、通常15重量部以下、好ましくは10重量部以下である。
本発明で用いる樹脂組成物の製造方法は、特に制限されるものではなく、例えば、(1)(A)芳香族ポリカーボネート樹脂、(B)リン系難燃剤、(C)ポリフルオロエチレン、(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体、(E)タルク、および必要により配合される安定剤や離型剤を一括して溶融混練する方法や、(2)(B)リン系難燃剤が液状である場合には、予め(B)リン系難燃剤以外の成分を溶融混練した後に、別途50〜120℃で加温しておいた液状の(B)リン系難燃剤を溶融状態の樹脂に添加して、溶融混練する方法が挙げられる。
各成分を混合し溶融混練する方法としては、従来公知の熱可塑性樹脂組成物に適用される方法を採用できる。各成分の混合には、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー等を使用することができる。溶融混練に際しては、短軸または二軸スクリュー押出機、コニーダーなどが使用できる。なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240〜320℃の範囲である。
このようにして得られた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、従来公知の任意の各種成形方法を用いて、成形品を得ることができるが、流動性に優れ、薄肉の成形品にした場合でも、白点異物の低減と良好な難燃性を両立できることから、射出成形法により、薄物の樹脂容器を成形する場合に好適である。より薄肉の成形品、例えば厚み0.5mm以下の薄肉成形品を射出成形法にて成形する場合は、射出成形の際の樹脂温度を、従来のポリカーボネート樹脂組成物の成形に適用される温度より高めの温度、好ましくは305〜360℃、より好ましくは310〜350℃、さらに好ましくは315〜340℃に設定することが好ましい。従来の樹脂組成物を用いた場合には、薄肉容器を成形するために、成形時の樹脂温度を高めると、薄肉容器の表面に白点異物が生じやすくなるという問題もあったが、従来の樹脂組成物に比べ熱安定性に優れる本発明の樹脂組成物を使用することで、上記のような比較的高い温度範囲であっても、良好な外観を有する薄肉容器を製造することが可能となる。
本発明において、薄肉成形品とは、全体または部分的に0.5mm以下の平板部を有する成形品であり、より好ましくは、1cm以上の0.5mm以下の平板部を有する成形品である。なお、「部分的」とは、成形品全体の面積の25%以上であることを意味する。また「平板部」とは、リブ、ボス等の凹凸や、窓、穴等を除く部分を指し、平面であっても湾曲していてもよい。
例えば、本発明の薄肉成形品とは、電池パック(例えば、携帯電話の電池パックに用いる箱や蓋)や小型補助記憶装置の外郭部を構成する容器(例えば、メモリーカード、SDカード等のカバーなど)等に使用される樹脂容器であり、0.6mm以下、好ましくは0.5mm以下となる平板部を全体または部分的に有する樹脂容器をいう。より好ましい薄肉成形品の形態としては、例えば、図1に示すような、容器本体(箱体)とこれを封止する蓋体とからなる樹脂容器であり、容器本体(箱体)は、周囲の立上り片によって凹没した平均肉厚が0.5mm以下の平板部を有する樹脂容器である。また、通常、電気・電子部品の使用態様等に基づき、上記平板部の面積は1〜100cm、立上り片の高さは0.5〜10mmであり、立上り片の肉厚は、容器本体の剛性を高め、収容物の収容効率を高める観点から、通常は、0.3〜1.2mmである。
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の例に限定されるものではない。
[原材料]
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂
(a)ポリ−4,4−イソプロピリデンジフェニルカーボネート:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)社製「ユーピロン(登録商標)H−2000」、粘度平均分子量20,000(以下、PCと略す)
(B)難燃剤
(b−1)縮合リン酸エステル:旭電化工業社製「アデカスタブ FP700」
Figure 0005256644
(式中 tは1.1である。)
(b−2)縮合リン酸エステル:大八化学工業社製「PX200」
Figure 0005256644
(式中 tは1.01である。)
(b−3)臭素化ポリカーボネートオリゴマー:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ユーピロン(登録商標)FR−53」
(C)ポリテトラフルオロエチレン
(c−1)被覆ポリテトラフルオロエチレン:三菱レイヨン社製「メタブレンA−3800」(被覆ポリテトラフルオロエチレン中のポリテトラフルオロエチレンの含有比率は、50重量%である。)
(c−2)ポリテトラフルオロエチレン:ダイキン工業社製「ポリフロンF−201L」
(D)グラフト共重合体
(d−1)(株)カネカ製「カネエースMR−01」
(d−2)ポリオルガノシロキサン粒子が40重量部未満のグラフト共重合体:三菱レイヨン(株)製「メタブレンS−2001」
(d−3)ポリブタジエンコア/ポリメチルメタクリレートシェル系共重合体(多層構造重合体):ローム・アンド・ハース社製「パラロイドEXL−2603」
(E)無機充填材
(e−1)タルク:林化成社製「ミクロンホワイト5000S」、数平均粒子径2.8μm、表面処理なし
(e−2)マイカ:コープケミカル社製「ミクロマイカMK−100」、平均粒径(D50)3〜5μm
(e−3)ミルドファイバー:日本電気硝子(株)製「ガラスパウダーEPG70M−99S」、平均繊維長70μm、繊維径9μm
(e−4)炭素繊維:三菱化学産資(株)製「ダイアリードK223GM」、繊維長6mm、繊維径11μm
(F)離型剤
(f)ペンタエリスリト−ルテトラステアレート:コグニス社製「VPG861」
(G)熱安定剤
(g)トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト:旭電化工業社製「アデカスタブ2112」
(H)着色剤
(h)カーボンブラック:三菱化学(株)製「三菱カーボンブラック#1000」
[実施例1〜および比較例1〜14
表1〜3に示した割合(重量比)となるよう原料を配合し、タンブラーにて20分間混合した後、2軸押出機(日本製鋼所社製、TEX30HSST、バレル12ブロック構成)のホッパーに投入した。バレル温度280℃、スクリュー回転数200rpm、押出速度15kg/時間の条件下で表1〜3に記載の各樹脂組成物を溶融混練し、樹脂組成物のペレットを作製した。なお、(B)難燃剤として液状の(b−1)FP700を使用した場合には、(b−1)FP700を予め80℃に加温し、2軸押出機のホッパー側から数えて3番目のブロックからギアポンプにて添加した。得られた樹脂組成物を80℃で5時間乾燥した後、以下の方法により射出成形を行い、得られた試験片を用いて各種評価を行った。結果を表1〜3に示した。
[成形品の物性評価方法]
(1)難燃性
上記記載の方法で得られた各樹脂組成物のペレットを、射出成形機(日本製鋼所社製、J50EP)にてシリンダー温度310℃、金型温度80℃の条件下で射出成形を行い、長さ127mm、幅12.7mm、肉厚0.5mmおよび0.8mmの試験片をそれぞれ得た。得られた試験片について、UL94規格に準拠して燃焼試験を行った。V−0が最も好ましく、V−1、V−2と順に劣り、NGはUL94規格の基準にあてはまらないものである。
(2)電池パックの落下試験
上記記載の方法で得られた各樹脂組成物のペレットを、射出成形機(ソディックプラステック社製、TR100EH)にて、シリンダー温度330℃、金型温度80℃の条件下で射出成形を行い、図1に示す電池パックの蓋および箱を成形した。図1中、四角で囲んだ数字は、それぞれの部位の厚さを示している。また、四角で囲んだ以外の数字は、成形品各部分の長さを示している。なお、単位は「mm」である。得られた箱に、素電池を組み込み超音波溶着し、蓋をして電池パックとした。得られた電池パックを、1.65mの高さからコンクリート面に落下を各6面について実施した。これを1サイクルとし、3サイクル繰り返して試験を行い、割れが生じない場合を○、割れが生じた場合を×とした。なお、流動性が悪く、金型内に完全に樹脂を充填できなかった場合は「充填不可」と記した。
(3)電池パックの外観
上記記載の方法で得られた各樹脂組成物ペレットを、射出成形機(ソディックプラステック社製、TR100EH)にて、シリンダー温度330℃、金型温度80℃の条件下で射出成形を行い、図1に示す電池パックの蓋を成形した。得られた1000個の蓋について、白点および蓋表面への無機充填材の浮きの有無について、目視観察した。白点に関しては、確認された個数の数平均値(/蓋1個)を表1〜3に記載した。白点が20個以下であれば、実成形品として問題ないレベルと判断できる。また、無機充填材の浮きに関しては、蓋表面への無機充填材の浮きが認められず、表面外観に優れている場合は「○」、無機充填材の浮きが認められ表面外観が悪い場合は「×」と記載した。無機充填材の浮きがある場合、実成形品として使用できない。
(4)金型汚染(発生ガスの評価)
上記記載の方法で得られた各樹脂組成物ペレットを、射出成形機(住友重機械工業社製、ミニマット7)にて、シリンダー温度300℃、金型温度70℃の条件下で、図2に示すような雫型の金型を用い成形片を連続1000ショット射出成形し、発生ガスによる1000ショット成形後の金型表面の汚れを観察した。付着物がないものを◎、付着物が若干認められるが通常の連続成形に問題ないと判断されるものを○、付着物が多く連続成形は困難と判断されるものを×と表記した。なお、図2の雫型金型とは、反ゲート側の尖点部分に発生ガスを溜まり易く設計した金型である。成形片の厚みは3mm、ゲート部は幅が1mm、厚みが1mmである。図2中、単位は「mm」である。
Figure 0005256644
Figure 0005256644
Figure 0005256644
表1〜3から、次のことが明らかとなった。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、330℃というポリカーボネート樹脂の成形温度としては比較的高い温度で成形しても、得られる薄肉成形品が難燃性、耐衝撃性、熱安定性、成形品外観の全てをバランス良く満足した(実施例1〜)。特に、高い温度で成形を行った場合、樹脂の劣化による成形品強度の低下や、シルバー、ポリフルオロエチレンの凝集による白点等の外観不良が発生する傾向にあるが、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を用いることにより、このような問題が生じなかった。
グラフト共重合を配合しない比較例6および8は、難燃性および電池パックの耐衝撃性が劣るものであった。
一方、本発明で規定するグラフト共重合体以外のグラフト共重合体を配合した場合は、実施例2と、比較例2〜5との比較から明らかなとおり、0.5mm厚の難燃性が本願の目的を達成できなかった。
本発明のグラフト共重合体は、ポリカーボネート樹脂組成物の難燃性を向上させる効果を有するものである。比較例6は、実施例2におけるリン系難燃剤とグラフト共重合体の合計配合量と同量のリン系難燃剤を配合した例であるが、合計難燃剤量が同じであっても、本発明のグラフト共重合体を配合しない場合は、難燃性および電池パックの耐衝撃性が本願の目的を達成できない。
また、比較例7は、実施例2におけるリン系難燃剤とグラフト共重合体の合計配合量と同量のグラフト共重合体を配合した例であるが、合計難燃剤量が同じであっても、本発明のリン系難燃剤を配合しない場合は、難燃性が大きく劣る。
本発明で用いるリン系難燃剤以外の難燃剤を配合した場合は、実施例2、と比較例12との比較から明らかなとおり、0.5mm厚の難燃性が本発明の目的を達成できなかった。また、流動性が低下し金型内に樹脂を完全に充填することができず、さらに、発生ガスが多く電池パックの連続成形が困難であった。
タルクを配合しない場合は、実施例2および比較例1、2、4、9〜11の比較から明らかな通り、0.5mm厚み試験片の難燃性が本願の目的を達成できなかった。
また、タルクにかえて、タルク以外の無機充填材を配合した場合は、実施例2と比較例9〜11の比較から明らかな通り、難燃性および電池パックの耐衝撃性が低下し、成形品表面には無機充填材の浮きが確認され外観の劣るものであった。
図1は、本願実施例で作製した電池パックの蓋および箱を示す。 図2は、本願実施例の(4)金型汚染(発生ガスの評価)で使用した、雫型金型の模式図である。
本発明で用いる難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、全体または部分的に0.5mm以下の平板部を有する薄肉成形品に成形した場合であっても、良好な難燃性と外観を示す。また、流動性と熱安定性が良好であり生産性に優れているため、得られる成形品は耐衝撃性にも優れた、総合的にバランスの取れた性能を有する。
本発明の難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、上記のような性能を有するため、携帯電話、携帯ステレオ、モバイルパソコン等の電池パックや、メモリーカード、SDカード等のカード型情報記録媒体等の小型補助記憶装置の外郭部を構成する容器として好適である。

Claims (14)

  1. (A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、(B)リン系難燃剤を3〜20重量部、(C)ポリフルオロエチレンを0.01〜1.5重量部、(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を1〜20重量部、(E)タルク0.1〜12重量部配合してなる難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であって、
    前記(C)ポリフルオロエチレンが、有機系重合体で被覆されたポリフルオロエチレンであり、
    前記(D)前記ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、(X)ポリオルガノシロキサン粒子40〜90重量部の存在下で、(Y)第1のビニル系単量体0.5〜10重量部を重合し、さらに、(Z)第2のビニル系単量体5〜50重量部を重合して得られるものであり、
    前記(Y)第1のビニル系単量体は、(y−1)多官能性単量体100〜50重量%および(y−2)その他の共重合可能な単量体0〜50重量%からなるビニル系単量体であり、
    かつ、前記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成形された0.5mm厚試験片のUL94規格における難燃性がV−0又はV−1である芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を、310〜360℃で射出成形して得られる成形品であって、
    前記成形品は、該成形品全体の面積の25%以上が肉厚0.5mm以下の平板部であることを特徴とする成形品。
  2. 前記有機系重合体で被覆されたポリフルオロエチレン中の、ポリフルオロエチレンの含有比率が40〜95重量%である、請求項に記載の成形品
  3. 前記(B)リン系難燃剤が、ホスファゼン化合物、下記一般式(1)で表される化合物、および、下記一般式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1または2に記載の成形品
    一般式(1)
    Figure 0005256644
    (一般式(1)中、R、RおよびRは、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、h、i、およびjは、各々独立に0または1を示す。)
    一般式(2)
    Figure 0005256644
    (一般式(2)中、R、R、RおよびRは、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、各々独立に0または1であり、tは1〜5の整数であり、xはアリーレン基を示す。tが2以上のとき、t個の繰り返し単位は、各々同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
  4. 前記(B)リン系難燃剤が下記一般式(2)で表されるリン系化合物である、請求項1〜のいずれか1項に記載の成形品
    一般式(2)
    Figure 0005256644
    (一般式(2)中、R、R、RおよびRは、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、各々独立に0または1であり、tは1〜5の整数であり、xはアリーレン基を示す。tが2以上のとき、t個の繰り返し単位は、各々同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
  5. 前記成形品が1cm 以上の肉厚0.5mm以下の平板部を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形品。
  6. 電池パックまたは小型補助記憶装置の外郭部を構成する容器である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の成形品。
  7. 前記成形品が、箱体とこれを封止する蓋体とからなる樹脂容器であり、前記箱体は、
    周囲の立上り片によって凹没した平均肉厚が0.5mm以下の平板部を有する樹脂容器で
    あり、前記平板部の面積は、1〜100cm 2 であり、立上り片の高さは0.5〜10m
    mであり、立上り片の肉厚は0.3〜1.2mmである樹脂容器である、請求項1〜6の
    いずれか1項に記載の成形品。
  8. (A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、(B)リン系難燃剤を3〜20重量部、(C)ポリフルオロエチレンを0.01〜1.5重量部、(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を1〜20重量部、(E)タルク0.1〜12重量部配合してなる難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であって、
    前記(C)ポリフルオロエチレンが、有機系重合体で被覆されたポリフルオロエチレンであり、
    前記(D)前記ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、(X)ポリオルガノシロキサン粒子40〜90重量部の存在下で、(Y)第1のビニル系単量体0.5〜10重量部を重合し、さらに、(Z)第2のビニル系単量体5〜50重量部を重合して得られるものであり、
    前記(Y)第1のビニル系単量体は、(y−1)多官能性単量体100〜50重量%および(y−2)その他の共重合可能な単量体0〜50重量%からなるビニル系単量体であり、
    かつ、前記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成形された0.5mm厚試験片のUL94規格における難燃性がV−0又はV−1である芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を、2軸スクリュー押出機を混練機として使用する溶融混練法で、バレル温度240〜320℃に設定して混練する工程、および、前記樹脂組成物を、温度310〜360℃に設定して射出成形する工程を含む、成形品の製造方法であって、前記成形品は、該成形品全体の面積の25%以上が肉厚0.5mm以下の平板部であることを特徴とする成形品の製造方法。
  9. 前記有機系重合体で被覆されたポリフルオロエチレン中の、ポリフルオロエチレンの含有比率が40〜95重量%である、請求項8に記載の成形品の製造方法。
  10. 前記(B)リン系難燃剤が、ホスファゼン化合物、下記一般式(1)で表される化合物、および、下記一般式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項8または9に記載の成形品の製造方法。
    一般式(1)
    Figure 0005256644
    (一般式(1)中、R 、R およびR は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、h、i、およびjは、各々独立に0または1を示す。)
    一般式(2)
    Figure 0005256644
    (一般式(2)中、R 、R 、R およびR は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、各々独立に0または1であり、tは1〜5の整数であり、xはアリーレン基を示す。tが2以上のとき、t個の繰り返し単位は、各々同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
  11. 前記(B)リン系難燃剤が下記一般式(2)で表されるリン系化合物である、請求項8〜10のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
    一般式(2)
    Figure 0005256644
    (一般式(2)中、R 、R 、R およびR は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、各々独立に0または1であり、tは1〜5の整数であり、xはアリーレン基を示す。tが2以上のとき、t個の繰り返し単位は、各々同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
  12. 前記成形品が1cm 以上の肉厚0.5mm以下の平板部を有する請求項8〜11のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
  13. 前記成形品が電池パックまたは小型補助記憶装置の外郭部を構成する容器である、請求項8〜12のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
  14. 前記成形品が、箱体とこれを封止する蓋体とからなる樹脂容器であり、前記箱体は、
    周囲の立上り片によって凹没した平均肉厚が0.5mm以下の平板部を有する樹脂容器で
    あり、前記平板部の面積は、1〜100cm 2 であり、立上り片の高さは0.5〜10m
    mであり、立上り片の肉厚は0.3〜1.2mmである樹脂容器である、請求項8〜13のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
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