以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の燃焼室の排気ガス後処理装置を備えた内燃機関Eの第1実施形態を示す。本発明が対象とする内燃機関は往復動機関であるが、この実施形態の内燃機関Eは、4サイクルのガソリン機関である。100はシリンダブロックであって、このシリンダブロック100には横断面がほぼ円形のシリンダ110が貫通して設けられ、このシリンダ110には、横断面がシリンダ110に対応したほぼ円形の形状をしたピストン200が往復自在に嵌っている。このシリンダブロック100の反クランクケース側には、ガスケット700を介してシリンダヘッド300が組み付けられている。シリンダヘッド300には、一端がシリンダヘッド300における上記シリンダ110に面する壁に開口し且つ他端がシリンダヘッド300の外壁に開口して吸気通路の一部を構成する吸気ポート310と、一端がシリンダヘッド300における上記シリンダ110に面する壁に開口し且つ他端がシリンダヘッド300の外壁に開口して排気通路の一部を構成する排気ポート320が設けられている。シリンダヘッド300には、吸気ポート310からシリンダヘッド300の外壁まで貫通するガイド孔330が設けられ、このガイド孔330に吸気バルブ510の棒形のバルブステム511が往復自在に嵌まっており、カムなどを有する動弁機構(図示省略)によりバルブステム511の先端に設けられた傘形のバルブヘッド512によって吸気ポート310の燃焼室側の開口311を所定タイミングでもって開閉するように構成している。また、シリンダヘッド300には、排気ポート320からシリンダヘッド300の外壁まで貫通するガイド孔340が設けられ、このガイド孔340に排気バルブ520の棒形のバルブステム521が往復自在に嵌まっており、カムなどを有する動弁機構(図示省略)によりバルブステム521の先端に設けられた傘形のバルブヘッド522によって排気ポート320の燃焼室側の開口321を所定タイミングでもって開閉するように構成している。910は一端がピストン200に連結され、他端が出力軸であるクランクシャフト920に連結されたコネクティングロッドである。そして、これらシリンダブロック100、ピストン200、ガスケット700、シリンダヘッド300、吸気バルブ510、及び排気バルブ520により燃焼室を構成している。600は、電極が燃焼室400に露出するようにシリンダヘッド300に設けられた点火プラグであって、ピストン200が上死点付近にあるときに電極で放電するように構成されている。よって、ピストン200が上死点と下死点との間を2往復する間に、燃焼室400において混合気の吸入、圧縮、爆発、及び排気ガスの排気の4つの行程を行うようにしている。しかし、この実施形態によって本発明が対象とする内燃機関が限定解釈されることはない。本発明は2サイクルの内燃機関、ディーゼル機関も対象にしている。対象とするガソリン機関には、燃焼室に吸入した空気に燃焼室で燃料を噴射して混合気を形成する直噴式ガソリン機関も含まれる。また対象とするディーゼル機関には、燃焼室に燃料を噴射する直噴式ディーゼル機関も、副室に燃料を噴射するようにした副室式ディーゼル機関も含まれる。また、この実施形態の内燃機関Eは4気筒であるが、これによって本発明が対象とする内燃機関の気筒数が限定解釈されることはない。また、この実施形態の内燃機関は2本の吸気バルブ510と2本の排気バルブ520を設けているが、これによって本発明が対象とする内燃機関の吸気バルブ又は排気バルブの本数が限定解釈されることはない。
図1及び図2に示すように、シリンダブロック100には、上記燃焼室400に露出する電極811を有する放電装置810が設けられている。シリンダブロック100のシリンダ110を構成する壁には、この壁をシリンダ側から外壁まで貫通する孔が設けられ、この孔に管状の第1支持体120が設けられている。この第1支持体120はセラミックスで形成されている。このように第1支持体120を誘電体により形成してもよいが、絶縁体により形成してもよい。この第1支持体120は、一端の端面が上記シリンダ110を構成する壁と面一になってシリンダ110に露出しており、他端がシリンダブロック100の外壁にまで至っている。そして、第1支持体120には放電装置810が設けられている。放電装置810は銅線により形成されているが、電気伝導体により形成されておればよい。ここでは一対の放電装置810が第1支持体120に埋まっており、第1支持体120のなかを通っている。各放電装置810の一端の端面が上記シリンダ110を構成する壁と面一になってシリンダ110に露出して電極811を構成しており、他端がシリンダブロック100の外壁から外部へ引き出されている。一対の放電装置810のうち一方の放電装置810のシリンダブロック外壁から出た端部を放電用の電圧を発生させる放電用電圧発生装置950に接続し、他方の放電装置810のシリンダブロック外壁から出た端部を接地しておく。ここでは放電用電圧発生装置950は12Vの直流電源であるが、例えば圧電素子又はその他の装置であってもよい。放電用電圧発生装置950により一対の放電装置810の間に電圧を印加すると、一対の電極811の間で放電するようになっている。変形例として、第1支持体に埋まって第1支持体のなかを通る放電線路を一本とし、これに放電用電圧発生装置を接続し、この放電用電圧発生装置により放電線路と接地部材であるシリンダブロックとの間に電圧を印加してもよい。そうすると、放電線路の電極とシリンダブロックとの間で放電が行われることになる。図2に示すように、この実施形態では放電装置810を4つ設け、これらを4つの電極811がシリンダ110の周方向にほぼ等間隔で位置するように配置している。しかし、本発明の排気ガス後処理装置は放電装置が1つであっても2つ以上の複数であってもよく、この実施形態によって放電装置の数及び配置は限定解釈されない。この実施形態では放電装置810の電極以外の部分と電極811とを同じ材料により一体的に設けたが、放電線路の電極以外の部分と電極とを別に形成して接続してもよく、放電線路の電極以外の部分と電極とを別異の材料により形成してもよい。放電装置として点火プラグを用いてもよい。放電装置は、放電により規模の大小を問わずプラズマを形成できるものであればよい。
図1及び図3に示すように、シリンダブロック100には、アンテナ820が燃焼室400へ電磁波を放射できるように設けられている。シリンダブロック100のシリンダ110を構成する壁には、シリンダ110の半径が拡大する方向に凹み且つシリンダ110の周方向に延びる溝が設けられ、この溝に、周方向に周回する環状形の第2支持体130が設けられている。この第2支持体130はセラミックスで形成されている。このように第2支持体130を誘電体により形成してもよいが、絶縁体により形成してもよい。この第2支持体130は、内周面が上記シリンダ110を構成する壁と面一になってシリンダ110に露出している。そして、第2支持体130にはアンテナ820が設けられている。このアンテナ820は金属により形成されている。このアンテナは電気伝導体、誘電体、絶縁体などのいずれで形成してもよいが、アンテナと接地部材との間に電磁波を供給したときにアンテナから燃焼室へ電磁波が良好に放射されなければならない。このアンテナ820は棒形に形成されてシリンダ110を構成する壁に沿ってほぼ円弧形に湾曲している。例えば、このアンテナ820の長さを電磁波の4分の1波長に設定すると、アンテナ820に定在波が生じるので、アンテナ820の先端付近で電磁波の電界強度が大になる。また、例えば、このアンテナ820の長さを電磁波の4分の1波長の倍数に設定すると、アンテナ820に定在波が生じるため、アンテナ820の複数箇所で定在波の腹が生じて電磁波の電界強度が大になる。ここではアンテナ820は第2支持体130に埋まっており、アンテナ820の内周面が上記シリンダ110を構成する壁と面一になってシリンダ110に露出している。図1に示すように、アンテナ820の断面は全長にわたってほぼ中実の矩形に形成され、全長にわたって断面の周上の一辺でシリンダ110に露出している。しかし、本発明の排気ガス後処理装置のアンテナは、断面形が中実の矩形に限定されないし、第2支持体のなかに完全に埋まっていてもよい。さらに、上記アンテナ820に電磁波を供給したときにアンテナ820に生じる電磁波の電界強度が大になる部位の近傍に上記電極811が位置づけられている。ここではアンテナ820の先端と電極811とがシリンダ110を構成する壁に沿って所定間隔をあけて接近するように配置されている。よって、アンテナ820と上記した接地したシリンダブロック100との間に電磁波を供給すると、アンテナ820から燃焼室400へ電磁波を放射するようになっている。この実施形態の場合、上記アンテナ820は棒形のモノポールアンテナであり、そのなかでも屈曲したものであるが、本発明の排気ガス後処理装置のアンテナは、これに限定されない。したがって、本発明の排気ガス後処理装置のアンテナは、例えば、ダイポールアンテナ、八木・宇田アンテナ、単線給電アンテナ、ループアンテナ、位相差給電アンテナ、接地アンテナ、非接地型垂直アンテナ、ビームアンテナ、水平偏波全方向性アンテナ、コーナーアンテナ、くし形アンテナ、若しくはその他の線形アンテナ、マイクロストリップアンテナ、板形逆Fアンテナ、若しくはその他の平面アンテナ、スロットアンテナ、パラボラアンテナ、ホーンアンテナ、ホーンリフレクタアンテナ、カセグレンアンテナ、若しくはその他の立体アンテナ、ビバレージアンテナ、若しくはその他の進行波アンテナ、スター型EHアンテナ、ブリッジ型EHアンテナ、若しくはその他のEHアンテナ、バーアンテナ、微小ループアンテナ、若しくはその他の磁界アンテナ、又は誘電体アンテナであってもよい。
シリンダブロック100には、電磁波伝送路830が設けられている。この電磁波伝送路830は、一端が上記アンテナ820に接続し、他端が誘電体に覆われてシリンダブロック100における燃焼室400から離れた部位まで延びている。シリンダブロック100のシリンダ110を構成する壁には、この壁を上記第2支持体130の外周側から外壁まで貫通する孔が設けられ、この孔に管状の第3支持体140が設けられている。この第3支持体140はセラミックスで形成されている。このように第3支持体140を誘電体により形成してもよいが、絶縁体により形成してもよい。この第3支持体140は、一端が第2支持体130におけるシリンダ110から遠い側に接続しており、他端がシリンダブロック100の外壁にまで至っている。そして、第3支持体140には電磁波伝送路830が設けられている。この電磁波伝送路830は銅線により形成されている。電磁波伝送路830は電気伝導体、誘電体、絶縁体などのいずれで形成してもよいが、接地部材との間に電磁波を供給したときにアンテナ820へ電磁波が良好に伝送されなければならない。電磁波伝送路の変形例の一つとして、電気伝導体又は誘電体により形成された導波管よりなる電磁波伝送路がある。ここでは電磁波伝送路830が第3支持体140に埋まっており、第3支持体140のなかを通っている。電磁波伝送路830の一端が上記アンテナ820に接続しており、他端がシリンダブロック100の外壁から外部へ引き出されている。よって、電磁波伝送路830と接地部材であるシリンダブロック100との間に電磁波を供給すると、電磁波をアンテナ820に導くようになっている。
内燃機関E又はその周辺には、上記電磁波伝送路830に電磁波を供給する電磁波発生装置840が設けられている。この電磁波発生装置840は電磁波を発生するが、この実施形態の電磁波発生装置840は、2.45GHz帯のマイクロ波を発生するマグネトロンである。しかし、これによって本発明の排気ガス後処理装置の電磁波発生装置の構成は限定解釈されない。
そして、この排気ガス後処理装置は、爆発行程により排気ガスが生じてから燃焼室400に排気ガスが残留している間に、放電装置810の電極811で放電させ、電磁波発生装置840から電磁波伝送路830を介して供給した電磁波をアンテナ820から放射するように構成している。さらに、この実施形態の排気ガス後処理装置は、爆発行程により排気ガスが生じてから、吸気バルブ510が吸気ポート310を開き又は排気バルブ520が排気ポート320を開くまでの間に、放電装置810の電極811で放電させ、電磁波発生装置840から電磁波伝送路830を介して供給した電磁波をアンテナ820から放射するように構成している(図4を参照)。シリンダブロック100は接地されており、放電用電圧発生装置950及び電磁波発生装置840の接地端子は接地されている。そして、放電用電圧発生装置950及び電磁波発生装置840の作動は制御装置880により制御される。制御装置880はCPU、メモリ、記憶装置などを備えており、入力信号を演算処理して制御用信号を出力する。この制御装置880にはクランクシャフト920のクランク角を検出するクランク角検出装置890の信号線が接続され、このクランク角検出装置890から制御装置880へクランクシャフト920のクランク角の検出信号が送られてくる。よって、制御装置880はクランク角検出装置890からの信号を受け、放電装置810及び電磁波発生装置840の作動を制御する。しかし、これによって本発明の排気ガス後処理装置の制御装置の制御方法及び信号入出力の構成は限定解釈されない。
変形例として、上記実施形態の制御装置880の設定を変えて、爆発行程により排気ガスが生じてから、吸気バルブ510が吸気ポート310を開き又は排気バルブ520が排気ポート320を開くまでの間だけ終わらず、さらに排気バルブ520が開き始めたあとまで放電装置810の電極811で放電させ、電磁波発生装置840から電磁波伝送路830を介して供給した電磁波をアンテナ820から放射するように構成した燃焼室の排気ガス後処理装置がある(図5を参照)。
従って、内燃機関Eの作動時に上記放電装置810の電極811で放電させ、電磁波発生装置840から電磁波伝送路830を介して供給した電磁波をアンテナ820から放射すると、電極811の近傍に放電によりプラズマが形成され、このプラズマはアンテナ820から一定時間供給された電磁波、つまり電磁波パルスからエネルギの供給を受けたプラズマにより大量に生成されたOHラジカル及びオゾンにより排気ガスの成分の酸化反応などが促進される。すなわち、電極近傍の電子が加速され、上記プラズマの領域外へ飛び出す。この飛び出した電子は、上記プラズマの周辺領域にある空気、燃料及び空気の混合気などのガスに衝突する。この衝突により周辺領域のガスが電離しプラズマになる。新たにプラズマになった領域内にも電子が存在する。この電子もまた電磁波パルスにより加速され、周辺のガスと衝突する。このようなプラズマ内の電子の加速、電子とガスとの衝突の連鎖により、周辺領域では雪崩式にガスが電離し、浮遊電子が生じる。この現象が放電プラズマの周辺領域に順次波及し、周辺領域がプラズマ化される。以上の動作により、プラズマの体積が増大する。この後、電磁波パルスの放射が終了すると、その時点でプラズマの存在する領域では、電離より再結合が優位になる。その結果、電子密度が低下する。それに伴いプラズマの体積は減少に転じる。そして、電子の再結合が完了すると、プラズマが消滅する。この間に大量に形成されたプラズマにより混合気中の水分などから大量に生成されたOHラジカル、オゾンにより排気ガスの成分の酸化反応などが促進される。
その場合、爆発行程により排気ガスが生じてから燃焼室400に排気ガスが残留している間に燃焼室400を反応器として酸化反応などを行うので、排気ガスが高い温度にあることから、この面からも酸化反応が促進され、プラズマによるOHラジカル及びオゾンの大量生成から引き起こされる酸化反応などと相俟って排気ガス浄化の効率が高められる。その場合、空燃比をリッチに設定したり、燃焼室下流側での後燃えを過大に行わせるなどの処理を必ずしも要しないので、そのような処理を行わないときには内燃機関Eの燃費が悪くなることがない。
また、爆発行程により排気ガスが生じてから吸気バルブ510が吸気ポート310を開き又は排気バルブ520が排気ポート320を開くまでの間は電磁波の燃焼室400から外への散逸が阻止され、さらに吸気バルブ510が吸気ポート310を開き又は排気バルブ520が排気ポート320を開いてからは電磁波の燃焼室400から吸気ポート310又は排気ポート320への散逸が吸気バルブ510又は排気バルブ520のバルブフェイスにより或る程度阻止されるので、燃焼室400という閉鎖空間又はそれに準じた空間が反応器となって排気ガスの成分の酸化反応が安定的に行われる。
本発明の燃焼室の排気ガス後処理装置は、爆発行程により排気ガスが生じてから燃焼室に排気ガスが残留している間に、放電装置の電極で放電させ、電磁波発生装置から電磁波伝送路を介して供給した電磁波をアンテナから放射するように構成しておればよい。図5に示して説明した制御方法は、その一例である。そのような種々の実施形態のなかで、第1実施形態の燃焼室の排気ガス後処理装置は、図4を用いて説明したように、爆発行程により排気ガスが生じてから、吸気バルブ510が吸気ポート310を開き又は排気バルブ520が排気ポート320を開くまでの間に、放電装置810の電極811で放電させ、電磁波発生装置840から電磁波伝送路830を介して供給した電磁波をアンテナ820から放射するように構成した。このようにすれば、吸気バルブ510及び排気バルブ520によって電磁波の燃焼室400から外への散逸が阻止されるので、燃焼室400という閉鎖空間が反応器となって排気ガスの成分の酸化反応などがさらに安定的に行われる。
本発明の燃焼室の排気ガス後処理装置は、爆発行程により排気ガスが生じてから燃焼室に排気ガスが残留している間に、放電装置の電極で放電させ、電磁波発生装置から電磁波伝送路を介して供給した電磁波をアンテナから放射するように構成しておればよく、放電装置又は電磁波発生装置の制御方法及び信号入出力の構成を限定しない。そのような種々の実施形態のなかで、第1実施形態の燃焼室の排気ガス後処理装置は、クランクシャフト920のクランク角を検出するクランク角検出装置890と、このクランク角検出装置890からの信号を受け、放電装置810及び電磁波発生装置840の作動を制御する制御装置880とを備えている。このようにすれば、クランク角に応じて電極811の放電及びアンテナ820からの電磁波の放射が制御される。
本発明の燃焼室の排気ガス後処理装置は、アンテナと電極との位置関係を限定しない。そのような種々の実施形態のなかで、第1実施形態の燃焼室の排気ガス後処理装置は、上記アンテナ820に電磁波を供給したときにアンテナ820に生じる電磁波の電界強度が大になる部位の近傍に電極811を位置づけた。このようにすれば、アンテナ820の上記部位から放射される電磁波の電界強度が周囲の電磁波の電界強度よりも強くなるので、電極811での放電により形成されたプラズマに、近傍の上記部位からの電磁波パルスによりエネルギが集中的に供給されてOHラジカル、オゾンが効率よく大量に生成され、電極811を中心にした領域の排気ガスの成分の酸化反応などが一層促進される。また、アンテナ820の複数箇所に電磁波の電界強度が大になる部位ができるときは、各部位に対応して電極811を位置づければ、燃焼室400の複数の領域で排気ガスの成分の酸化反応などが一層促進される。
次に、本発明の燃焼室の排気ガス後処理装置の他の実施形態を説明する。第1実施形態の排気ガス後処理装置では上記燃焼室400を構成する部材のうちシリンダブロック100に放電装置810、アンテナ820、及び電磁波伝送路830を設けた。これに対し、第2実施形態の排気ガス後処理装置では上記燃焼室400を構成する部材のうちガスケット700に放電装置760、アンテナ770、及び電磁波伝送路780を設けた。
以下、第2実施形態の燃焼室の排気ガス後処理装置を説明する。図6は、上記ガスケット700が装着された内燃機関Eの実施形態を示す。本発明が対象とする内燃機関は往復動機関であるが、この実施形態の内燃機関Eは、4サイクルのガソリン機関である。100はシリンダブロックであって、このシリンダブロック100には横断面がほぼ円形のシリンダ110が貫通して設けられ、このシリンダ110には、横断面がシリンダ110に対応したほぼ円形の形状をしたピストン200が往復自在に嵌っている。このシリンダブロック100の反クランクケース側には、シリンダヘッド300が組み付けられており、このシリンダヘッド300と、ピストン200と、シリンダ110とにより、燃焼室400を形成している。910は一端がピストン200に連結され、他端が出力軸であるクランクシャフト920に連結されたコネクティングロッドである。シリンダヘッド300には、一端が上記燃焼室400に接続し且つ他端がシリンダヘッド300の外壁に開口して吸気通路の一部を構成する吸気ポート310と、一端が上記燃焼室400に接続し且つ他端がシリンダヘッド300の外壁に開口して排気通路の一部を構成する排気ポート320が設けられている。シリンダヘッド300には、吸気ポート310からシリンダヘッド300の外壁まで貫通するガイド孔330が設けられ、このガイド孔330に吸気バルブ510のバルブステム511が往復自在に嵌まっており、カムなどを有する動弁機構(図示省略)によりバルブステム511の先端に設けられたバルブヘッド512によって吸気ポート310の燃焼室側の開口311を所定タイミングでもって開閉するように構成している。また、シリンダヘッド300には、排気ポート320からシリンダヘッド300の外壁まで貫通するガイド孔340が設けられ、このガイド孔340に排気バルブ520のバルブステム521が往復自在に嵌まっており、カムなどを有する動弁機構(図示省略)によりバルブステム521の先端に設けられたバルブヘッド522によって排気ポート320の燃焼室側の開口321を所定タイミングでもって開閉するように構成している。600は、電極が燃焼室400に露出するようにシリンダヘッド300に設けられた点火プラグであって、ピストン200が上死点付近にあるときに電極で放電するように構成されている。よって、ピストン200が上死点と下死点との間を2往復する間に、燃焼室400において混合気の吸入、圧縮、爆発、及び排気ガスの排気の4つの行程を行うようにしている。しかし、この実施形態によって本発明が対象とする内燃機関が限定解釈されることはない。本発明は2サイクルの内燃機関、ディーゼル機関も対象にしている。対象とするガソリン機関には、燃焼室に吸入した空気に燃焼室で燃料を噴射して混合気を形成する直噴式ガソリン機関も含まれる。また対象とするディーゼル機関には、燃焼室に燃料を噴射する直噴式ディーゼル機関も、副室に燃料を噴射するようにした副室式ディーゼル機関も含まれる。また、この実施形態の内燃機関Eは4気筒であるが、これによって本発明が対象とする内燃機関の気筒数が限定解釈されることはない。また、この実施形態の内燃機関は2本の吸気バルブ510と2本の排気バルブ520を設けているが、これによって本発明が対象とする内燃機関の吸気バルブ又は排気バルブの本数が限定解釈されることはない。
そして、このシリンダブロック100とシリンダヘッド300との間には、図7に示すようなガスケット700が装着されている。上記ガスケット700は、ほぼ一定厚さの薄い板形をしている。このガスケット700には、シリンダ110に対応して開口710が設けられている。このガスケット700には、さらにウォータージャケット、ボルト孔などに対応して孔が開いているが、これらによって本発明が対象とするガスケットの形状が限定解釈されることはない。
図8及び図9に示すように、上記ガスケット700の厚さ方向の中間層730には放電装置としての放電線路760が設けられている。厚さ方向の中間層730とは、厚さ方向の中間部に形成されている層である。この中間層730はセラミックスで形成されている。中間層は、他にも合成ゴム、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、メタ系アラミド繊維シートなどの合成樹脂、耐熱紙などを用いることができる。このように中間層を誘電体により形成してもよいが、絶縁体により形成してもよい。上記放電線路760は銅線により形成されているが、電気伝導体により形成されておればよい。放電線路760は、ガスケット700における外周縁720と開口710との間に埋まっている。そして、放電線路760の外側の端部である外端は、ガスケット700の外周縁720から露出して第1接続部761を形成している。また、放電線路760の内側の端部である内端は、ガスケット700の外周縁から開口710の中心に向かって露出して電極762になっている。上記中間層730に対して厚さ方向の両側にある表面層740が電気伝導体で形成されており、ガスケット700をシリンダブロック100とシリンダヘッド300との間に装着すると、一方の表面層740がシリンダブロック100の端面に接触し、他方の表面層740がシリンダヘッド300の端面に接触するようにしている。この表面層740は金属により形成されているが他の素材であってもよい。この実施形態では、厚さ方向の両側にある表面層740を電気伝導体で形成したが、本発明は、中間層に対して厚さ方向の少なくとも一方側にある表面層を電気伝導体で形成したガスケットの実施形態を含んでいる。よって、シリンダブロック100、シリンダヘッド300又は表面層740を接地し、第1接続部761と接地部材であるシリンダブロック100、シリンダヘッド300又は表面層740との間の電圧を印加すると、第1接続部761と接地部材との間で放電するようになっている。この実施形態では放電線路760の電極以外の部分と電極762とを同じ材料により一体的に設けたが、放電線路の電極以外の部分と電極とを別に形成して接続してもよく、放電線路の電極以外の部分と電極とを別異の材料により形成してもよい。
図8及び図10に示すように、ガスケット700にはアンテナ770が設けられている。このアンテナ770は金属により形成されている。このアンテナは電気伝導体、誘電体、絶縁体などのいずれで形成してもよいが、アンテナと接地部材との間に電磁波を供給したときにアンテナから燃焼室へ電磁波が良好に放射されなければならない。上記アンテナ770は、開口710の内周縁における厚さ方向の中間層730に設けられ、燃焼室400へ電磁波を放射するようになっている。このアンテナ770は、棒形に形成され、その基端が厚さ方向の中間層730に設けられている。そして、このアンテナ770は、上記基端から先端に至る部分がほぼ円弧形に湾曲しており、開口710の内周縁に沿って開口710の周方向に延びている。例えば、この円弧形の部分の長さを電磁波の4分の1波長に設定すると、アンテナ770に定在波が生じるので、アンテナ770の先端付近で電磁波の電界強度が大になる。また、例えば、この円弧形の部分の長さを電磁波の4分の1波長の倍数に設定すると、アンテナ770に定在波が生じるため、アンテナ770の複数箇所で定在波の腹が生じて電磁波の電界強度が大になる。ここではアンテナ770は全長にわたって中間層730のなかにほぼ埋まっている。図10に示すように、アンテナ770の断面は全長にわたってほぼ中実の円形に形成され、全長にわたって断面の周上の一点で中間層730のおける開口710の内周縁を形成する面に内側から接するように配置している。よって、アンテナ770は断面上ではこの部分において開口710の内周縁において燃焼室400に露出することになる。しかし、本発明のガスケットのアンテナは、断面形が中実の円形に限定されないし、中間層のなかに完全に埋まっていてもよい。さらに、上記アンテナ770に電磁波を供給したときにアンテナ770に生じる電磁波の電界強度が大になる部位の近傍に上記電極762が位置づけられている。ここではアンテナ770の先端と電極762とが開口710の内周縁に沿って所定間隔をあけて接近するように配置され、ストリップライン線路を形成している。よって、第1接続部761と上記した接地部材との間に電磁波を供給すると、アンテナ770から燃焼室400へ電磁波を放射するようになっている。なお、接地部材がストリップライン線路の接地側を兼ねてもよい。この実施形態の場合、上記アンテナ770は棒形のモノポールアンテナであり、そのなかでも屈曲したものであるが、本発明のガスケットのアンテナは、これに限定されない。したがって、本発明のガスケットのアンテナは、例えば、ダイポールアンテナ、八木・宇田アンテナ、単線給電アンテナ、ループアンテナ、位相差給電アンテナ、接地アンテナ、非接地型垂直アンテナ、ビームアンテナ、コーナーアンテナ、くし形アンテナ、若しくはその他の線形アンテナ、マイクロストリップアンテナ、板形逆Fアンテナ、若しくはその他の平面アンテナ、スロットアンテナ、ホーンアンテナ、若しくはその他の立体アンテナ、ビバレージアンテナ、若しくはその他の進行波アンテナ、スター型EHアンテナ、ブリッジ型EHアンテナ、若しくはその他のEHアンテナ、バーアンテナ、微小ループアンテナ、若しくはその他の磁界アンテナ、又は誘電体アンテナであってもよい。
図8及び図10に示すように、上記ガスケット700の厚さ方向の中間層730には電磁波伝送路780が設けられている。この電磁波伝送路780は銅線により形成されている。電磁波伝送路780は電気伝導体、誘電体、絶縁体などのいずれで形成してもよいが、接地部材との間に電磁波を供給したときにアンテナへ電磁波が良好に伝送されなければならない。電磁波伝送路の変形例の一つとして、電気伝導体又は誘電体により形成された導波管よりなる電磁波伝送路がある。上記電磁波伝送路780は、ガスケット700における外周縁720と開口710との間に埋まっている。そして、電磁波伝送路780の外側の端部である外端は、ガスケット700の外周縁720から露出して第2接続部781を形成している。また、電磁波伝送路780の内側の端部である内端は、中間層730のなかで上記アンテナに接続されている。よって、第2接続部781と上記した接地部材との間に電磁波を供給すると、電磁波をアンテナ770に導くようになっている。
そして、このガスケット700は、上記放電線路760、アンテナ770及び電磁波伝送路780と、ガスケット700の厚さ方向の両端面との間を電気的に絶縁するように構成している。シリンダブロック100、シリンダヘッド300又は表面層740は接地されており、第1接続部761には放電用電圧発生装置950の陽極が接続され、第2接続部781には電磁波発生装置840の陽極が接続されている。これら放電用電圧発生装置950及び電磁波発生装置840の接地端子は接地されている。そして、放電用電圧発生装置950及び電磁波発生装置840の作動は制御装置880により制御される。制御装置880はCPU、メモリ、記憶装置などを備えており、入力信号を演算処理して制御用信号を出力する。この制御装置880にはクランクシャフト920のクランク角を検出するクランク角検出装置890の信号線が接続され、このクランク角検出装置890から制御装置880へクランクシャフト920のクランク角の検出信号が送られてくる。よって、制御装置880はクランク角検出装置890からの信号を受け、放電装置810及び電磁波発生装置840の作動を制御する。この実施形態の放電用電圧発生装置950は12Vの直流電源であるが、例えば圧電素子又はその他の装置であってもよい。電磁波発生装置840は電磁波を発生するが、この実施形態の電磁波発生装置840は、2.45GHz帯のマイクロ波を発生するマグネトロンである。しかし、これによって本発明のガスケットの制御装置の制御方法及び信号入出力の構成は限定解釈されない。
従って、上記ガスケット700を、その開口710がシリンダ110に対応するようにシリンダブロック100とシリンダヘッド300との間に装着し、シリンダ110にピストン200を往復自在に嵌め、通常に作動する内燃機関Eとしての4サイクルのガソリン機関を組む。放電線路760の第1接続部761と接地部材との間に電圧を印加できるようにしておく。電磁波伝送路780の第2接続部781と接地部材との間に電磁波を一定時間供給できるようにしておく。そして、内燃機関Eの作動時における爆発行程により排気ガスが生じてから燃焼室に排気ガスが残留している間に、放電線路760の第1接続部761と接地部材への電圧印加と、電磁波伝送路の第2接続部781と接地部材への電磁波の供給とを行う。そうすると、電極762の近傍に放電によりプラズマが形成され、このプラズマはアンテナ770から一定時間供給された電磁波、つまり電磁波パルスからエネルギの供給を受け、プラズマによるOHラジカル及びオゾンの大量生成から排気ガスの成分の酸化反応などが促進される。すなわち、電極762の近傍の電子が加速され、上記プラズマの領域外へ飛び出す。この飛び出した電子は、上記プラズマの周辺領域にある空気、燃料及び空気の混合気などのガスに衝突する。この衝突により周辺領域のガスが電離しプラズマになる。新たにプラズマになった領域内にも電子が存在する。この電子もまた電磁波パルスにより加速され、周辺のガスと衝突する。このようなプラズマ内の電子の加速、電子とガスとの衝突の連鎖により、周辺領域では雪崩式にガスが電離し、浮遊電子が生じる。この現象が放電プラズマの周辺領域に順次波及し、周辺領域がプラズマ化される。以上の動作により、プラズマの体積が増大する。この後、電磁波パルスの放射が終了すると、その時点でプラズマの存在する領域では、電離より再結合が優位になる。その結果、電子密度が低下する。それに伴いプラズマの体積は減少に転じる。そして、電子の再結合が完了すると、プラズマが消滅する。この間に大量に形成されたプラズマにより混合気中の水分などから大量に生成されたOHラジカル、オゾンにより排気ガスの成分の酸化反応などが促進される。
その場合、爆発行程により排気ガスが生じてから燃焼室400に排気ガスが残留している間に燃焼室400を反応器として酸化反応などを行うので、排気ガスが高い温度にあることから、この面からも酸化反応が促進され、プラズマによるOHラジカル及びオゾンの大量生成から引き起こされる酸化反応などと相俟って排気ガス浄化の効率が高められる。その場合、空燃比をリッチに設定したり、燃焼室下流側での後燃えを過大に行わせるなどの処理を必ずしも要しないので、そのような処理を行わないときには内燃機関Eの燃費が悪くなることがない。
また、爆発行程により排気ガスが生じてから吸気バルブ510が吸気ポート310を開き又は排気バルブ520が排気ポート320を開くまでの間は電磁波の燃焼室400から外への散逸が阻止され、さらに吸気バルブ510が吸気ポート310を開き又は排気バルブ520が排気ポート320を開いてからは電磁波の燃焼室400から吸気ポート310又は排気ポート320への散逸が吸気バルブ510又は排気バルブ520のバルブフェイスにより或る程度阻止されるので、燃焼室400という閉鎖空間又はそれに準じた空間が反応器となって排気ガスの成分の酸化反応が安定的に行われる。
本発明の燃焼室の排気ガス後処理装置は、爆発行程により排気ガスが生じてから燃焼室に排気ガスが残留している間に、放電装置の電極で放電させ、電磁波発生装置から電磁波伝送路を介して供給した電磁波をアンテナから放射するように構成しておればよい。図5に示して説明した制御方法は、その一例である。そのような種々の実施形態のなかで、第2実施形態の燃焼室の排気ガス後処理装置は、図4を用いて説明したように、爆発行程により排気ガスが生じてから、吸気バルブ510が吸気ポート310を開き又は排気バルブ520が排気ポート320を開くまでの間に、放電装置760の電極762で放電させ、電磁波発生装置840から電磁波伝送路830を介して供給した電磁波をアンテナ770から放射するように構成した。このようにすれば、吸気バルブ510及び排気バルブ520によって電磁波の燃焼室400から外への散逸が阻止されるので、燃焼室400という閉鎖空間が反応器となって排気ガスの成分の酸化反応などがさらに安定的に行われる。
本発明の燃焼室の排気ガス後処理装置は、爆発行程により排気ガスが生じてから燃焼室に排気ガスが残留している間に、放電装置の電極で放電させ、電磁波発生装置から電磁波伝送路を介して供給した電磁波をアンテナから放射するように構成しておればよく、放電装置又は電磁波発生装置の制御方法及び信号入出力の構成を限定しない。そのような種々の実施形態のなかで、第2実施形態の燃焼室の排気ガス後処理装置は、クランクシャフト920のクランク角を検出するクランク角検出装置890と、このクランク角検出装置890からの信号を受け、放電装置760及び電磁波発生装置840の作動を制御する制御装置880とを備えている。このようにすれば、クランク角に応じて電極762の放電及びアンテナ770からの電磁波の放射が制御される。
本発明の燃焼室の排気ガス後処理装置は、アンテナと電極との位置関係を限定しない。そのような種々の実施形態のなかで、第1実施形態の燃焼室の排気ガス後処理装置は、上記アンテナ770に電磁波を供給したときにアンテナ770に生じる電磁波の電界強度が大になる部位の近傍に電極762を位置づけた。このようにすれば、アンテナ770の上記部位から放射される電磁波の電界強度が周囲の電磁波の電界強度よりも強くなるので、電極762での放電により形成されたプラズマに、近傍の上記部位からの電磁波パルスによりエネルギが集中的に供給されてOHラジカル、オゾンが効率よく大量に生成され、電極762を中心にした領域の排気ガスの成分の酸化反応などが一層促進される。また、アンテナ770の複数箇所に電磁波の電界強度が大になる部位ができるときは、各部位に対応して電極762を位置づければ、燃焼室400の複数の領域で排気ガスの成分の酸化反応などが一層促進される。
また、既存の内燃機関に較べると主要な構造部材であるシリンダブロック100、シリンダヘッド300などをそのまま利用し、これらに放電線路760への電圧の印加、電磁波伝送路780への電磁波の供給さえ段取りすればよい。そのため、当該内燃機関Eの設計工数の最小化及び既存の内燃機関との部品の共通化が実現される。
本発明の内燃機関のガスケットは、中間層に対して厚さ方向の両側にある表面層の材質を限定しない。したがって、表面層は誘電体又は絶縁体であってもよい。そのような種々の実施形態のなかで、実施形態のガスケット700は、上記中間層730を誘電体により形成し、上記中間層730に対して厚さ方向の両側にある表面層740を電気伝導体で形成した。このようにすれば、表面層740が放電線路760の電極762と対になる接地電極として機能し、電極762と表面層740との間で放電が行われる。また、表面層740が電磁波伝送路780と対になる接地導体として機能し、電磁波伝送路780と表面層740との間で電磁波が伝送される。中間層を絶縁体により形成し、中間層に対して厚さ方向の両側にある表面層を電気伝導体で形成したときも同様の作用及び固化が得られる。また、上記中間層を誘電体又は絶縁体により形成し、この中間層に対して厚さ方向の少なくとも一方側にある表面層が電気伝導体で形成されているときも同様の作用及び効果が得られる。また、表面層740を金属で形成したのでガスケット700の剛性が向上する。
本発明の内燃機関のガスケットは、アンテナの構造、形状を限定しない。そのような種々の実施形態のなかで、実施形態のガスケット700は、上記アンテナ770を棒形に形成し、その基端を厚さ方向の中間層730に設け、この基端から出て先端に至る部分を開口710の内周縁に沿って開口710の周方向に延ばした。このようにすれば、アンテナ770から放射された電磁波の電界強度が燃焼室400の外縁付近で他の領域よりも強くなるので、OHラジカル、オゾンが燃焼室400の外縁付近で他の領域よりも多く分布する。そのため、燃焼室400の外縁付近の酸化反応などが他の領域の酸化反応などよりも促進される。また、燃焼室400の外縁付近で発生するスキッシュ流、タンブル、又はスワールを利用してOHラジカル又はオゾンと混合気などとの混合が促進される。
本発明の内燃機関のガスケットは、アンテナと電極との位置関係を限定しない。そのような種々の実施形態のなかで、実施形態のガスケット700は、上記アンテナ770に電磁波を供給したときにアンテナ770に生じる電磁波の電界強度が大になる部位の近傍に電極762を位置づけた。このようにすれば、アンテナ770の上記部位から放射される電磁波の電界強度が周囲の電磁波の電界強度よりも強くなるので、電極762での放電により形成されたプラズマに、近傍の上記部位から電磁波パルスによるエネルギが集中的に供給されてOHラジカル、オゾンが効率よく大量に生成され、電極762を中心にした領域の酸化反応などが一層促進される。また、アンテナ770の複数箇所に電磁波の電界強度が大になる部位ができるときは、各部位に対応して電極762を位置づければ、燃焼室400の複数の領域で酸化反応などが一層促進される。
次に、本発明のガスケットの変形例を説明する。これらの他の変形例のガスケットの説明では、第2実施形態のガスケット700と同一の機能を発揮する部材、部分には第2実施形態のガスケット700で用いた符号と同一の符号を付して、その説明を省略する。そして、これらの他の変形例のガスケットにおいて、第2実施形態のガスケット700と構成の異なる点を説明する。したがって、記載のない構成は第2実施形態のガスケット700の構成と同一である。
図11は第1変形例のガスケット700を示す。第2実施形態ののガスケット700では、アンテナ770が全長にわたって中間層730のなかにほぼ埋まっていた。これに対し、第1変形例のガスケット700では、アンテナ770の基端は厚さ方向の中間層730に設けられているが、この基端から延びて先端に至る部分が中間層730から外へ出ている。すなわち、アンテナ770の基端から延びる部分は、基端から開口710の中心に向かって延びてからほぼL字方に曲がり、その先はほぼ円弧形に湾曲しており、開口710の内周縁に沿って開口710の周方向に延びている。第2実施形態のガスケット700のアンテナ770は全長にわたって中間層730のなかにほぼ埋まっているので、アンテナ770が燃焼室400から受ける熱負荷およびアンテナ770が受ける機械的振動による疲労が軽減される。これに対し、第1変形例のガスケット700のアンテナ770は、燃焼室400に露出するので、アンテナ770から放射される電磁波の電界強度が大になる。その他の作用及び効果は第2実施形態のガスケット700の場合と同様である。
図12は第2変形例のガスケット700を示す。このガスケット700は、第1変形例のガスケット700に類似しているが、それよりもアンテナ770の長さが長くなっている。すなわち、アンテナ770の基端から延びる部分は、基端から開口710の中心に向かって延びてからほぼL字方に曲がり、その先はほぼ円弧形に湾曲しており、開口710の内周縁に沿って開口710の周方向に開口710のほぼ1周にわたって延びている。このようにすれば、アンテナ770の長さが稼げるので、アンテナ770から放射される電磁波の電界強度が大になる。その他の作用及び効果は第1実施形態のガスケット700の場合と同様である。このようにアンテナ770が長くなると、アンテナ770に定在波が生じるため、同じ周波数の電磁波であれば、それよりも短いアンテナを備えたガスケットよりもアンテナの複数の箇所で電磁波の電界強度が大になる部位ができる。図13に示した第3変形例のガスケット700では、第1変形例のガスケット700では一つしかなかった電極762を開口710の内周縁に沿ってほぼ等間隔でもって複数設けた。各電極762はアンテナ770に生じる電磁波の電界強度が大になる部位の近傍に位置づけている。このようにすれば、アンテナ770の上記各部位から放射される電磁波の電界強度が周囲の電磁波の電界強度よりも強くなるので、各電極762での放電により形成されたプラズマに、対応する近傍の上記部位から電磁波パルスによるエネルギが集中的に供給されてOHラジカル、オゾンが効率よく大量に生成され、電極762を中心にした領域の酸化反応などが一層促進される。したがって、燃焼室400の複数の領域で酸化反応などが一層促進される。
図14は第4変形例のガスケット700を示す。第2実施形態のガスケット700では放電線路760も電磁波伝送路780も銅線により形成した。これに対し、第4変形例のガスケット700では、上記中間層730にシールドケーブルSを設け、このシールドケーブルSの内部電線の芯線により電磁波伝送路を構成している。ここで、シールドケーブルSは、銅線などの電気伝導体よりなる芯線と、この芯線を覆う絶縁体よりなる内部被覆とを有する内部電線と、この内部電線を覆う電気伝導体よりなる外部導体と、この外部導体を覆う絶縁体よりなる外部被覆とを備えている。このようにすれば、シールドケーブルSを用いて比較的簡単にガスケット700を製造することができる。その他の作用及び効果は第2実施形態のガスケット700の場合と同様である。同様にして上記中間層にシールドケーブルを設け、このシールドケーブルの内部電線の芯線により放電線路を構成してもよい。
図15は第5変形例のガスケット700を示す。第2実施形態のガスケット700ではガスケット700の厚さ方向の中間層730に放電線路760を設け、この放電線路760の第1接続部761に放電用電圧発生装置950の陽極を接続し、接地部材であるシリンダブロック100、シリンダヘッド300又は表面層740を接地し、第1接続部761と上記接地部材との間の電圧して、第1接続部761と接地部材との間で放電するようにした。これに対し、第5変形例のガスケット700では、ガスケット700の厚さ方向の中間層730に、放電線路760を一対設けている。各放電線路760の外側の端部である外端は、ガスケット700の外周縁720から露出してそれぞれ第1接続部761を形成している。また、各放電線路760の内側の端部である内端は、ガスケット700の外周縁から開口710の中心に向かって露出してそれぞれ電極762になっている。これらの放電線路760の電極は近接して配置されている。このようにすれば、放電線路760の第1接続部同士の間に電圧を印加すると、電極間で放電が行われる。これらの放電線路760の電極762を近接して配置したときには、低い印加電圧で放電を行うことができる。そうすれば、OHラジカル及びオゾンの発生が促進され、この発生したOHラジカル及びオゾンの持続時間が長くなり、消費電力が低減され、しかも放電の行われる領域の温度上昇が抑制されることから内燃機関における窒素酸化物の発生量が低減する。その他の作用及び効果は第2実施形態のガスケット700の場合と同様である。
次に、第3実施形態の排気ガス後処理装置を説明する。第3実施形態の排気ガス後処理装置では上記燃焼室400を構成する部材のうちシリンダヘッド300に放電装置810を設け、排気バルブ520にアンテナ820を設け、シリンダヘッド300に電磁波伝送路830を設けた。
以下、第3実施形態の燃焼室の排気ガス後処理装置を説明する。図16は、内燃機関Eの実施形態を示す。本発明が対象とする内燃機関は往復動機関であるが、この実施形態の内燃機関Eは、4サイクルのガソリン機関である。100はシリンダブロックであって、このシリンダブロック100には横断面がほぼ円形のシリンダ110が貫通して設けられ、このシリンダ110には、横断面がシリンダ110に対応したほぼ円形の形状をしたピストン200が往復自在に嵌っている。このシリンダブロック100の反クランクケース側には、シリンダヘッド300が組み付けられており、このシリンダヘッド300と、ピストン200と、シリンダ110とにより、燃焼室400を形成している。910は一端がピストン200に連結され、他端が出力軸であるクランクシャフト920に連結されたコネクティングロッドである。シリンダヘッド300には、一端が上記燃焼室400に接続し且つ他端がシリンダヘッド300の外壁に開口して吸気通路の一部を構成する吸気ポート310と、一端が上記燃焼室400に接続し且つ他端がシリンダヘッド300の外壁に開口して排気通路の一部を構成する排気ポート320が設けられている。シリンダヘッド300には、吸気ポート310からシリンダヘッド300の外壁まで貫通するガイド孔330が設けられ、このガイド孔330に吸気バルブ510の棒形のバルブステム511が往復自在に嵌まっており、カムなどを有する動弁機構(図示省略)によりバルブステム511の先端に設けられた傘形のバルブヘッド512によって吸気ポート310の燃焼室側の開口311を所定タイミングでもって開閉するように構成している。また、シリンダヘッド300には、排気ポート320からシリンダヘッド300の外壁まで貫通するガイド孔340が設けられ、このガイド孔340に排気バルブ520の棒形のバルブステム521が往復自在に嵌まっており、カムなどを有する動弁機構(図示省略)によりバルブステム521の先端に設けられた傘形のバルブヘッド522によって排気ポート320の燃焼室側の開口321を所定タイミングでもって開閉するように構成している。810は一対の電極812、813が燃焼室400に露出するようにシリンダヘッド300に設けられた点火プラグであって、ピストン200が上死点付近にあるときに電極で放電するように構成されている。よって、ピストン200が上死点と下死点との間を2往復する間に、燃焼室400において混合気の吸入、圧縮、爆発、及び排気ガスの排気の4つの行程を行うようにしている。しかし、この実施形態によって本発明が対象とする内燃機関が限定解釈されることはない。本発明は2サイクルの内燃機関、ディーゼル機関も対象にしている。対象とするガソリン機関には、燃焼室に吸入した空気に燃焼室で燃料を噴射して混合気を形成する直噴式ガソリン機関も含まれる。また対象とするディーゼル機関には、燃焼室に燃料を噴射する直噴式ディーゼル機関も、副室に燃料を噴射するようにした副室式ディーゼル機関も含まれる。また、この実施形態の内燃機関Eは4気筒であるが、これによって本発明が対象とする内燃機関の気筒数が限定解釈されることはない。また、この実施形態の内燃機関は2本の吸気バルブ510と2本の排気バルブ520を設けているが、これによって本発明が対象とする内燃機関の吸気バルブ又は排気バルブの本数が限定解釈されることはない。700は、シリンダブロック100とシリンダヘッド300との間に装着されたガスケットである。
上記点火プラグ810は、本発明の排気ガス後処理装置の放電装置810としても機能する。この放電装置810は、上記シリンダヘッド300に設けられている。この放電装置810は、燃焼室400を構成する壁に取り付けられており、燃焼室400の外側に配置された接続部811と、上記接続部811に電気的に接続された第1の電極812と、シリンダヘッド300に接触して接地された第2の電極813とを備えており、この第1の電極812と第2の電極813とが所定の隙間をあけて対向し、いずれも上記燃焼室400に露出している。放電装置810は、放電用の電圧を発生させる放電用電圧発生装置950に接続されている。ここでは放電用電圧発生装置950は12Vの直流電源及び点火コイルである。このシリンダヘッド300を接地し、接続部811を放電用電圧発生装置950に接続し、シリンダへッド300と接続部811との間に電圧を印加すると、第1の電極812と第2の電極813との間で放電するようになっている。このように一対の電極を設けずに、放電装置の電極と燃焼室を構成する壁、又はその他の接地部材との間で放電させるようにしてもよい。内燃機関が例えばディーゼルエンジンであるときは、本来、点火プラグを備えていないので、燃焼室に露出する電極を有して上記シリンダヘッドに設けられた放電装置を新たに設けることになる。その場合、放電装置としてここで説明したような点火プラグを設け、これを放電用電圧発生装置に接続してもよい。しかし、放電装置は、放電により規模の大小を問わずプラズマを形成できるものであればよいので、点火プラグでなくてもよく、例えば圧電素子又はその他の装置であってもよい。
図17ないし図19に示すように、上記排気バルブ520のバルブヘッド522のバルブフェイス522bには、アンテナ820が設けられている。バルブフェイス522bは、バルブヘッド522の面のうち排気ポート320に面する背面とは反対側にある面であり、バルブヘッド522によって排気ポート320の燃焼室側の開口321を閉じたときに燃焼室400に面することになる面である。このアンテナ820は金属により形成されている。このアンテナは電気伝導体、誘電体、絶縁体などのいずれで形成してもよいが、アンテナと接地部材との間に電磁波を供給したときにアンテナから燃焼室400へ電磁波が良好に放射されなければならない。このアンテナ820は棒形に形成されて湾曲しており、バルブヘッド522のバルブフェイス522bにおいて中心を取り囲むようにほぼC字形に形成されており、燃焼室400へ電磁波を放射するようになっている。すなわち、アンテナ820は、バルブヘッド522をバルブステム521が延びる方向に沿ってみたときに、バルブフェイス522bを取り囲むようにほぼC字形に、つまり一部が欠落した環状形に形成されている。バルブステム521におけるガイド孔340に嵌る部位の内部は誘電体で形成されて基本部521aを形成し、この基本部521aの外周側におけるガイド孔340に嵌る部位が金属で形成されて外周部521bとなっている。この外周部521bを金属で形成したのは耐摩擦性及び耐熱性の向上のためであるが、他の材料で形成してもよい。また、バルブステム521においてガイド孔340に嵌る部位以外の部分まで誘電体で形成してもよい。さらに、バルブヘッド522において上記バルブステム521の基本部521aに連続する部位は誘電体により形成されて基本部522aとなっている。そして、バルブヘッド522の燃焼室側になるバルブフェイス522bは金属で形成されている。バルブフェイス522bを金属で形成したのは耐熱性の向上のためであるが、他の材料で形成してもよい。アンテナ820は、バルブヘッド522の基本部522aの背面に設けられている。ここでは上記誘電体としてセラミックスを用いているが、他の誘電体又は絶縁体で形成してもよい。また、例えば、このアンテナ820の長さを電磁波の4分の1波長に設定すると、アンテナ820に定在波が生じるので、アンテナ820の先端付近で電磁波の電界強度が大になる。さらに、例えば、アンテナ820の長さを電磁波の4分の1波長の倍数に設定すると、アンテナ820に定在波が生じるため、アンテナ820の複数箇所で定在波の腹が生じて電磁波の電界強度が大になる。アンテナ820はバルブヘッド522のなかに埋まっていてもよい。さらに、上記アンテナ820に電磁波を供給したときにバルブヘッド522のバルブフェイス522bの周囲に生じる電磁波の電界強度が大になる部位の近傍に上記第1の電極812と第2の電極813とが位置づけられている。ここではアンテナ820の先端が第1の電極812と第2の電極813とに接近するように配置されている。よって、アンテナ820と接地部材であるシリンダヘッド300との間に電磁波を供給すると、アンテナ820から燃焼室400へ電磁波を放射するようになっている。そして、このアンテナ820の一端が次に説明する電磁波伝送路830に接続している。この実施形態の場合、上記アンテナ820は棒形のモノポールアンテナであり、そのなかでも湾曲したものであるが、本発明の排気ガス後処理装置のアンテナは、これに限定されない。したがって、本発明の排気ガス後処理装置のアンテナは、例えば、ダイポールアンテナ、八木・宇田アンテナ、単線給電アンテナ、ループアンテナ、位相差給電アンテナ、接地アンテナ、非接地型垂直アンテナ、ビームアンテナ、水平偏波全方向性アンテナ、コーナーアンテナ、くし形アンテナ、若しくはその他の線形アンテナ、マイクロストリップアンテナ、板形逆Fアンテナ、若しくはその他の平面アンテナ、スロットアンテナ、パラボラアンテナ、ホーンアンテナ、ホーンリフレクタアンテナ、カセグレンアンテナ、若しくはその他の立体アンテナ、ビバレージアンテナ、若しくはその他の進行波アンテナ、スター型EHアンテナ、ブリッジ型EHアンテナ、若しくはその他のEHアンテナ、バーアンテナ、微小ループアンテナ、若しくはその他の磁界アンテナ、又は誘電体アンテナであってもよい。
図18に示すように、上記排気バルブ520のバルブステム521には電磁波伝送路830が設けられている。この電磁波伝送路830は銅線により形成されている。電磁波伝送路830は電気伝導体、誘電体、絶縁体などのいずれで形成してもよいが、接地部材との間に電磁波を供給したときにアンテナ820へ電磁波が良好に伝送されなければならない。電磁波伝送路の変形例の一つとして、電気伝導体又は誘電体により形成された導波管よりなる電磁波伝送路がある。バルブステム521におけるガイド孔340に嵌る部位には受電部521cが設けられている。この受電部521cは電気伝導体、誘電体、絶縁体などのいずれで形成してもよい。ここでは受電部521cはバルブステム521の外周部に設けているが、内部に設けてもよい。ただし、受電部521cの形状及び材質は、後述のとおり給電部材860との結合方式により選ばれる。この受電部はバルブステムにおけるガイド孔に嵌る部位よりも上記バルブヘッドから遠い部位に設けてもよい。この電磁波伝送路830は、一端が上記アンテナ820に接続し、他端が絶縁体又は誘電体に覆われてバルブステム521におけるガイド孔340に嵌る部位にある受電部521cまで延びて当該受電部521cに接続している。ここでは電磁波伝送路830はバルブステム521の基本部521aのなかを延びているので、電磁波伝送路830の他端は誘電体に覆われて受電部521cまで延びていることになる。しかし、基本部が絶縁体により形成されたときは、電磁波伝送路の他端は絶縁体に覆われて受電部まで延びていることになる。よって、受電部521cとシリンダヘッド300などの接地部材との間に電磁波を供給すると、電磁波をアンテナ820に導くようになっている。
内燃機関E又はその周辺には、上記受電部521cに電磁波を供給する電磁波発生装置840が設けられている。この電磁波発生装置840は電磁波を発生するが、この実施形態の電磁波発生装置840は、2.45GHz帯のマイクロ波を発生するマグネトロンである。しかし、これによって本発明の排気ガス後処理装置の電磁波発生装置の構成は限定解釈されない。
図17及び図18に示すように、上記受電部521cは上記排気バルブ520における上記バルブステム521の外面に露出している。シリンダヘッド300には誘電部材850と給電部材860とが設けられている。誘電部材850はセラミックにより形成され、少なくとも上記排気バルブ520における上記バルブヘッド522が排気ポート320の燃焼室側の開口を閉じたときに上記受電部521cに近接する。誘電部材は誘電体により形成されておればよい。また、給電部材860は金属により形成され、上記誘電部材850に対して上記排気バルブ520におけるバルブステム521と反対側から近接する。給電部材860は電気伝導体より形成されておればよい。誘電部材850を介した給電部材860と受電部521cとの間での電磁波のやり取りは、電界結合式(容量式)、磁界結合式(誘導式)のいずれの方式であってもよい。給電部材860と受電部521と形状及び材質は、その方式に応じて選択すればよい。例えば電界結合式を用いるならば、給電部材860と受電部521cとには、対向する板状の電気伝導体を選択すればよい。または給電部材860と受電部521cとにそれぞれ、電磁波発生装置840の発生する電磁波に対し所定の利得を有する電界アンテナを選択すればよい。磁界結合式を用いるならば、給電部材860と受電部521cとには、コイル状の電気伝導体を選択すればよい。または給電部材860と受電部521cとにそれぞれ、電磁波発生装置840の発生する電磁波に対し所定の利得を有する磁界アンテナを選択すればよい。そして、この給電部材860に上記電磁波発生装置840の出力信号が入れられていて、電磁波発生装置840から電磁波を供給するようになっている。
図17に示すように、上記シリンダヘッド300には排気ポート320からシリンダヘッド300の外壁まで貫通するバルブガイド装着孔350が設けられ、このバルブガイド装着孔350にセラミックスよりなる筒形のバルブガイド360が嵌まり、このバルブガイド360の孔によってガイド孔340が構成されている。バルブガイドは誘電体であればよい。そして、このバルブガイド360における、少なくとも上記排気バルブ520におけるバルブヘッド522が排気ポート320の燃焼室側の開口を閉じたときに上記受電部521cに近接する部位が誘電部材850になっている。
そして、この排気ガス後処理装置は、爆発行程により排気ガスが生じてから燃焼室400に排気ガスが残留している間に、放電装置810の第1の電極812と第2の電極813とで放電させ、電磁波発生装置840から電磁波伝送路830を介して供給した電磁波をアンテナ820から放射するように構成している。シリンダブロック100、又はシリンダヘッド300は接地されており、放電用電圧発生装置950及び電磁波発生装置840の接地端子は接地されている。そして、放電用電圧発生装置950及び電磁波発生装置840の作動は制御装置880により制御される。制御装置880はCPU、メモリ、記憶装置などを備えており、入力信号を演算処理して制御用信号を出力する。この制御装置880にはクランクシャフト920のクランク角を検出するクランク角検出装置890の信号線が接続され、このクランク角検出装置890から制御装置880へクランクシャフト920のクランク角の検出信号が送られてくる。よって、制御装置880はクランク角検出装置890からの信号を受け、放電装置810及び電磁波発生装置840の作動を制御する。しかし、これによって本発明の排気ガス後処理装置の制御方法及び信号入出力の構成は限定解釈されない。
従って、内燃機関Eの作動時に上記放電装置810の電極811で放電させ、電磁波発生装置840から電磁波伝送路830を介して供給した電磁波をアンテナ820から放射すると、電極811の近傍に放電によりプラズマが形成され、このプラズマはアンテナ820から一定時間供給された電磁波、つまり電磁波パルスからエネルギの供給を受けたプラズマにより大量に生成されたOHラジカル及びオゾンにより排気ガスの成分の酸化反応などが促進される。すなわち、電極近傍の電子が加速され、上記プラズマの領域外へ飛び出す。この飛び出した電子は、上記プラズマの周辺領域にある空気、燃料及び空気の混合気などのガスに衝突する。この衝突により周辺領域のガスが電離しプラズマになる。新たにプラズマになった領域内にも電子が存在する。この電子もまた電磁波パルスにより加速され、周辺のガスと衝突する。このようなプラズマ内の電子の加速、電子とガスとの衝突の連鎖により、周辺領域では雪崩式にガスが電離し、浮遊電子が生じる。この現象が放電プラズマの周辺領域に順次波及し、周辺領域がプラズマ化される。以上の動作により、プラズマの体積が増大する。この後、電磁波パルスの放射が終了すると、その時点でプラズマの存在する領域では、電離より再結合が優位になる。その結果、電子密度が低下する。それに伴いプラズマの体積は減少に転じる。そして、電子の再結合が完了すると、プラズマが消滅する。この間に大量に形成されたプラズマにより混合気中の水分などから大量に生成されたOHラジカル、オゾンにより排気ガスの成分の酸化反応などが促進される。
その場合、爆発行程により排気ガスが生じてから燃焼室400に排気ガスが残留している間に燃焼室400を反応器として酸化反応などを行うので、排気ガスが高い温度にあることから、この面からも酸化反応が促進され、プラズマによるOHラジカル及びオゾンの大量生成から引き起こされる酸化反応などと相俟って排気ガス浄化の効率が高められる。その場合、空燃比をリッチに設定したり、燃焼室下流側での後燃えを過大に行わせるなどの処理を必ずしも要しないので、そのような処理を行わないときには内燃機関Eの燃費が悪くなることがない。
また、爆発行程により排気ガスが生じてから吸気バルブ510が吸気ポート310を開き又は排気バルブ520が排気ポート320を開くまでの間は電磁波の燃焼室400から外への散逸が阻止され、さらに吸気バルブ510が吸気ポート310を開き又は排気バルブ520が排気ポート320を開いてからは電磁波の燃焼室400から吸気ポート310又は排気ポート320への散逸が吸気バルブ510又は排気バルブ520のバルブフェイスにより或る程度阻止されるので、燃焼室400という閉鎖空間又はそれに準じた空間が反応器となって排気ガスの成分の酸化反応が安定的に行われる。
本発明の燃焼室の排気ガス後処理装置は、爆発行程により排気ガスが生じてから燃焼室に排気ガスが残留している間に、放電装置の電極で放電させ、電磁波発生装置から電磁波伝送路を介して供給した電磁波をアンテナから放射するように構成しておればよい。図5に示して説明した制御方法は、その一例である。そのような種々の実施形態のなかで、第3実施形態の燃焼室の排気ガス後処理装置は、図4を用いて説明したように、爆発行程により排気ガスが生じてから、吸気バルブ510が吸気ポート310を開き又は排気バルブ520が排気ポート320を開くまでの間に、放電装置810の電極811で放電させ、電磁波発生装置840から電磁波伝送路830を介して供給した電磁波をアンテナ820から放射するように構成した。このようにすれば、吸気バルブ510及び排気バルブ520によって電磁波の燃焼室400から外への散逸が阻止されるので、燃焼室400という閉鎖空間が反応器となって排気ガスの成分の酸化反応などがさらに安定的に行われる。
本発明の燃焼室の排気ガス後処理装置は、爆発行程により排気ガスが生じてから燃焼室に排気ガスが残留している間に、放電装置の電極で放電させ、電磁波発生装置から電磁波伝送路を介して供給した電磁波をアンテナから放射するように構成しておればよく、放電装置又は電磁波発生装置の制御方法及び信号入出力の構成を限定しない。そのような種々の実施形態のなかで、第3実施形態の燃焼室の排気ガス後処理装置は、クランクシャフト920のクランク角を検出するクランク角検出装置890と、このクランク角検出装置890からの信号を受け、放電装置810及び電磁波発生装置840の作動を制御する制御装置880とを備えている。このようにすれば、クランク角に応じて電極811の放電及びアンテナ820からの電磁波の放射が制御される。
本発明の燃焼室の排気ガス後処理装置は、アンテナと電極との位置関係を限定しない。そのような種々の実施形態のなかで、第3実施形態の燃焼室の排気ガス後処理装置は、上記アンテナ820に電磁波を供給したときにアンテナ820に生じる電磁波の電界強度が大になる部位の近傍に電極811を位置づけた。このようにすれば、アンテナ820の上記部位から放射される電磁波の電界強度が周囲の電磁波の電界強度よりも強くなるので、電極811での放電により形成されたプラズマに、近傍の上記部位からの電磁波パルスによりエネルギが集中的に供給されてOHラジカル、オゾンが効率よく大量に生成され、電極811を中心にした領域の排気ガスの成分の酸化反応などが一層促進される。また、アンテナ820の複数箇所に電磁波の電界強度が大になる部位ができるときは、各部位に対応して電極811を位置づければ、燃焼室400の複数の領域で排気ガスの成分の酸化反応などが一層促進される。
また、既存の内燃機関に較べると主要な構造部材であるシリンダブロック100などをそのまま利用し、これらに排気バルブ520及びその周辺構造の改造を行い、この実施形態のようにもともと点火プラグ811が必須である内燃機関Eは別としてそうでない内燃機関にはシリンダヘッドに放電装置を設ければよい。そのため、当該内燃機関Eの設計工数の最小化及び既存の内燃機関との多くの部品の共通化が実現される。
本発明の排気ガス後処理装置は、アンテナの形状又は構造を限定しない。そのような種々の実施形態のなかで、第3実施形態の排気ガス後処理装置は、上記アンテナ820を、排気バルブ520のバルブフェイス522bにおいて中心を取り囲むようにほぼC字形に形成し、このアンテナ820の一端を電磁波伝送路830に接続した。このようにすれば、アンテナ820をバルブフェイス522bににコンパクトに設けられる。
本発明の排気ガス後処理装置は、電磁波発生装置から電磁波伝送路へ電磁波を伝送するための構造を限定しない。そのような種々の実施形態のなかで、第3実施形態の排気ガス後処理装置は、上記受電部521cが上記排気バルブ520のバルブステム521の外面に露出しており、上記シリンダヘッド300に設けられ、少なくとも上記排気バルブ520のバルブヘッド522が排気ポート320の燃焼室側の開口を閉じたときに上記受電部521cに近接する誘電体よりなる誘電部材850と、上記シリンダヘッド300に設けられ、この誘電部材850に対して上記バルブステム521と反対側から近接する電気伝導体よりなる給電部材860を備え、この給電部材860に電磁波発生装置840から電磁波を供給するように構成した。このようにすれば、電磁波発生装置840からの電磁波が、給電部材860、誘電部材850、及び受電部521cを介して非接触でもって電磁波伝送路830へ伝送される。
本発明の排気ガス後処理装置は、ガイド孔付近の構造を限定しない。そのような種々の実施形態のなかで、第3実施形態の排気ガス後処理装置は、上記シリンダヘッド300に排気ポート320からシリンダヘッド300の外壁まで貫通するバルブガイド装着孔350を設け、このバルブガイド装着孔350に誘電体よりなる筒形のバルブガイド360を嵌め、このバルブガイド360の孔によってガイド孔340を構成し、このバルブガイド360における、少なくとも上記バルブヘッド522が排気ポート320の燃焼室側の開口を閉じたときに上記受電部521cに近接する部位を誘電部材とした。このようにすれば、公知のバルブガイド装着構造を利用することで、電磁波発生装置840からの電磁波が非接触でもって電磁波伝送路830へ伝送される。
本発明の排気ガス後処理装置は、アンテナと電極との位置関係を限定しない。そのような種々の実施形態のなかで、第3実施形態の排気ガス後処理装置は、上記アンテナ820に電磁波を供給したときにバルブヘッド522のバルブフェイス522bの周囲に生じる電磁波の電界強度が大になる部位の近傍に第1の電極812及び第2の電極813を位置づけた。このようにすれば、第1の電極812及び第2の電極813で放電により形成されたプラズマに、近くにあるアンテナ820からの電磁波パルスが放射されるので、上記プラズマにエネルギが集中的に供給されてOHラジカル及びオゾンが効率よく大量に生成される。そのため、酸化反応などが一層促進される。
次に、本発明のバルブを用いた排気ガス後処理装置の変形例を説明する。この変形例の排気ガス後処理装置は、排気バルブ520の構成のみが第3実施形態の排気ガス後処理装置と異なっている。第3実施形態の排気ガス後処理装置の排気バルブ520では、バルブステム521におけるガイド孔340に嵌る部位の内部を基本部521aとして誘電体又は絶縁体で形成し、この基本部521aの外周側におけるガイド孔340に嵌る部位を外周部521bとして金属で形成した。これに対し、図20に示すように、変形例の排気ガス後処理装置の排気バルブ520では、基本部521aも外周部521bも一体的に構成し、これを誘電体又は絶縁体で形成した。このようにすれば、バルブステム521の直径が同じであれば誘電体又は絶縁体が閉める容積が大きくなる。そのため、第3実施形態と変形例とで電磁波伝送路830のインピーダンスを同レベルに設定する場合、変形例の電磁波伝送路830の断面積を大きく設定することができるので、電磁波伝送路830の伝送効率が上がる。その他の作用及び効果は第3実施形態の排気ガス後処理装置の場合と同様である。
以上で説明した実施形態では、排気バルブを用いて排気ガス後処理装置を構成した。すなわち、これらの排気ガス後処理装置は、排気バルブ520のバルブヘッド522のバルブフェイス522bにアンテナ820を設け、排気バルブ520のバルブステム521に電磁波伝送路830を設け、排気バルブ520のバルブステム521に設けた受電部521cに電磁波を供給する電磁波発生装置840を設け、上記排気バルブ520のバルブヘッド522が上記排気ポート320の燃焼室側の開口321を閉じた圧縮行程に放電装置810の電極で放電させ、電磁波発生装置840から電磁波伝送路830を介して供給した電磁波をアンテナ820から放射するように構成した。しかし、本発明は、吸気バルブを用いて排気ガス後処理装置を構成した実施形態を含んでいる。すなわち、吸気バルブを用いた排気ガス後処理装置は、吸気バルブのバルブヘッドのバルブフェイスにアンテナを設け、吸気バルブのバルブステムに電磁波伝送路を設け、吸気バルブのバルブステムに設けた受電部に電磁波を供給する電磁波発生装置を設け、上記吸気バルブのバルブヘッドが上記吸気ポートの燃焼室側の開口を閉じた圧縮行程に放電装置の電極で放電させ、電磁波発生装置から電磁波伝送路を介して供給した電磁波をアンテナから放射するように構成する。この場合、吸気バルブ、アンテナ、電磁波伝送路、受電部、電磁波発生装置、放電装置、その電極などの構成は排気バルブを用いた排気ガス後処理装置における排気バルブなどと同様に構成する。そして、吸気バルブを用いた排気ガス後処理装置により得られる作用及び効果は上述した各実施形態により得られる作用及び効果と同様である。そして、上記アンテナを、バルブフェイスにおいて中心を取り囲むようにほぼC字形に形成し、このアンテナの一端を電磁波伝送路に接続したときに得られる作用及び効果は上述した各実施形態により得られる作用及び効果と同様である。また、上記受電部が上記バルブステム外面に露出しており、上記シリンダヘッドに設けられ、少なくとも上記バルブヘッドが吸気ポートの燃焼室側の開口を閉じたときに上記受電部に近接する誘電体よりなる誘電部材と、上記シリンダヘッドに設けられ、この誘電部材に対して上記バルブステムと反対側から近接する電気伝導体よりなる給電部材を備え、この給電部材に電磁波発生装置から電磁波を供給するように構成したときに得られる作用及び効果は上述した各実施形態により得られる作用及び効果と同様である。さらに、上記シリンダヘッドに吸気ポートからシリンダヘッド外壁まで貫通するバルブガイド装着孔が設けられ、このバルブガイド装着孔に誘電体よりなる筒形のバルブガイドが嵌まり、このバルブガイドの孔によってガイド孔が構成されており、このバルブガイドにおける、少なくとも上記バルブヘッドが吸気ポートの燃焼室側の開口を閉じたときに上記受電部に近接する部位が誘電部材になっているときに得られる作用及び効果は上述した各実施形態により得られる作用及び効果と同様である。また、上記アンテナに電磁波を供給したときにアンテナに生じる電磁波の電界強度が大となった部位の近傍に電極が位置づけられているときに得られる作用及び効果は上述した各実施形態により得られる作用及び効果と同様である。
次に、第4実施形態の排気ガス後処理装置を説明する。第4実施形態の排気ガス後処理装置では上記燃焼室400を構成する部材のうちシリンダヘッド300に放電装置810、アンテナ820、及び電磁波伝送路830を設けた。
以下、第4実施形態の燃焼室の排気ガス後処理装置を説明する。図21及び図22は、内燃機関Eの実施形態を示す。本発明が対象とする内燃機関は往復動機関であるが、この実施形態の内燃機関Eは、4サイクルのガソリン機関である。100はシリンダブロックであって、このシリンダブロック100には横断面がほぼ円形のシリンダ110が貫通して設けられ、このシリンダ110には、横断面がシリンダ110に対応したほぼ円形の形状をしたピストン200が往復自在に嵌っている。このシリンダブロック100の反クランクケース側には、シリンダヘッド300が組み付けられており、このシリンダヘッド300と、ピストン200と、シリンダ110とにより、燃焼室400を形成している。910は一端がピストン200に連結され、他端が出力軸であるクランクシャフト920に連結されたコネクティングロッドである。シリンダヘッド300には、一端が上記燃焼室400に接続し且つ他端がシリンダヘッド300の外壁に開口して吸気通路の一部を構成する吸気ポート310と、一端が上記燃焼室400に接続し且つ他端がシリンダヘッド300の外壁に開口して排気通路の一部を構成する排気ポート320が設けられている。シリンダヘッド300には、吸気ポート310からシリンダヘッド300の外壁まで貫通するガイド孔330が設けられ、このガイド孔330に吸気バルブ510の棒形のバルブステム511が往復自在に嵌まっており、カムなどを有する動弁機構(図示省略)によりバルブステム511の先端に設けられた傘形のバルブヘッド512によって吸気ポート310の燃焼室側の開口311を所定タイミングでもって開閉するように構成している。また、シリンダヘッド300には、排気ポート320からシリンダヘッド300の外壁まで貫通するガイド孔340が設けられ、このガイド孔340に排気バルブ520の棒形のバルブステム521が往復自在に嵌まっており、カムなどを有する動弁機構(図示省略)によりバルブステム521の先端に設けられた傘形のバルブヘッド522によって排気ポート320の燃焼室側の開口321を所定タイミングでもって開閉するように構成している。810は一対の電極812、813が燃焼室400に露出するようにシリンダヘッド300に設けられた点火プラグであって、ピストン200が上死点付近にあるときに電極で放電するように構成されている。よって、ピストン200が上死点と下死点との間を2往復する間に、燃焼室400において混合気の吸入、圧縮、爆発、及び排気ガスの排気の4つの行程を行うようにしている。しかし、この実施形態によって本発明が対象とする内燃機関が限定解釈されることはない。本発明は2サイクルの内燃機関、ディーゼル機関も対象にしている。対象とするガソリン機関には、燃焼室に吸入した空気に燃焼室で燃料を噴射して混合気を形成する直噴式ガソリン機関も含まれる。また対象とするディーゼル機関には、燃焼室に燃料を噴射する直噴式ディーゼル機関も、副室に燃料を噴射するようにした副室式ディーゼル機関も含まれる。また、この実施形態の内燃機関Eは4気筒であるが、これによって本発明が対象とする内燃機関の気筒数が限定解釈されることはない。また、この実施形態の内燃機関は2本の吸気バルブ510と2本の排気バルブ520を設けているが、これによって本発明が対象とする内燃機関の吸気バルブ又は排気バルブの本数が限定解釈されることはない。700は、シリンダブロック100とシリンダヘッド300との間に装着されたガスケットである。
上記点火プラグ810は、本発明の排気ガス後処理装置の放電装置810としても機能する。この放電装置810は、シリンダヘッド300における燃焼室400を構成する壁に取り付けられており、燃焼室400の外側に配置された接続部811と、上記接続部811に電気的に接続された第1の電極812と、シリンダヘッド300に接触して接地された第2の電極813とを備えており、この第1の電極812と第2の電極813とが所定の隙間をあけて対向し、いずれも上記燃焼室400に露出している。放電装置810は、放電用の電圧を発生させる放電用電圧発生装置950に接続されている。ここでは放電用電圧発生装置950は12Vの直流電源及び点火コイルである。このシリンダヘッド300を接地し、接続部811を放電用電圧発生装置950に接続し、シリンダへッド300と接続部811との間に電圧を印加すると、第1の電極812と第2の電極813との間で放電するようになっている。このように一対の電極を設けずに、放電装置の電極と燃焼室を構成する壁、又はその他の接地部材との間で放電させるようにしてもよい。内燃機関が例えばディーゼルエンジンであるときは、本来、点火プラグを備えていないので、燃焼室に露出する電極を有して上記シリンダヘッドに設けられた放電装置を新たに設けることになる。その場合、放電装置としてここで説明したような点火プラグを設け、これを放電用電圧発生装置に接続してもよい。しかし、放電装置は、放電により規模の大小を問わずプラズマを形成できるものであればよいので、点火プラグでなくてもよく、例えば圧電素子又はその他の装置であってもよい。
シリンダヘッド300には、アンテナ820が燃焼室400へ電磁波を放射できるように設けられている。シリンダヘッド300の燃焼室400を構成する壁には、この壁を燃焼室側から外壁まで貫通する孔が設けられ、この孔の燃焼室側の開口付近に内側支持体370が設けられ、それよりも外側に内側支持体370と連続するように管状の外側支持体380が設けられている。これらの内側支持体370及び外側支持体380はセラミックスで形成されている。このように内側支持体370及び外側支持体380を誘電体により形成してもよいが、絶縁体により形成してもよい。そして、内側支持体370のなかにアンテナ820が設けられている。このアンテナ820は金属により形成されている。このアンテナは電気伝導体、誘電体、絶縁体などのいずれで形成してもよいが、アンテナと接地部材との間に電磁波を供給したときにアンテナから燃焼室へ電磁波が良好に放射されなければならない。このアンテナ820は棒形に形成されて上記孔の燃焼室側の開口付近に配置されており、上記シリンダヘッド300から燃焼室400へ突出して設けられている。上記内側支持体370は、上記アンテナ820を覆うように上記シリンダヘッド300の燃焼室400を構成する壁から燃焼室側へ膨出して設けられた膨出部371を有している。この膨出部371は絶縁体又は誘電体で形成すればよいが、ここでは内側支持体370の一部をなすのでセラミックスで形成されている。膨出部を内側支持体と別異の材質で形成してもよい。例えば、このアンテナ820の長さを電磁波の4分の1波長に設定すると、アンテナ820に定在波が生じるので、アンテナ820の先端付近で電磁波の電界強度が大になる。また、例えば、このアンテナ820の長さを電磁波の4分の1波長の倍数に設定すると、アンテナ820に定在波が生じるため、アンテナ820の複数箇所で定在波の腹が生じて電磁波の電界強度が大になる。ここではアンテナ820は内側支持体370に埋まっている。アンテナ820の断面は全長にわたってほぼ中実の円形に形成されているが、本発明の排気ガス後処理装置のアンテナは、断面形が中実の矩形に限定されない。さらに、上記アンテナ820に電磁波を供給したときにアンテナ820に生じる電磁波の電界強度が大になる部位の近傍に上記第1の電極812及び第2の電極813が位置づけられている。ここではアンテナ820の先端と第1の電極812及び第2の電極813とがシリンダヘッド300における燃焼室400を構成する壁に沿って所定間隔をあけて接近するように配置されている。よって、アンテナ820と上記した接地したシリンダヘッド300との間に電磁波を供給すると、アンテナ820から燃焼室400へ電磁波を放射するようになっている。この実施形態の場合、上記アンテナ820は棒形のモノポールアンテナであり、そのなかでも屈曲したものであるが、本発明の排気ガス後処理装置のアンテナは、これに限定されない。したがって、本発明の排気ガス後処理装置のアンテナは、例えば、ダイポールアンテナ、八木・宇田アンテナ、単線給電アンテナ、ループアンテナ、位相差給電アンテナ、接地アンテナ、非接地型垂直アンテナ、ビームアンテナ、水平偏波全方向性アンテナ、コーナーアンテナ、くし形アンテナ、若しくはその他の線形アンテナ、マイクロストリップアンテナ、板形逆Fアンテナ、若しくはその他の平面アンテナ、スロットアンテナ、パラボラアンテナ、ホーンアンテナ、ホーンリフレクタアンテナ、カセグレンアンテナ、若しくはその他の立体アンテナ、ビバレージアンテナ、若しくはその他の進行波アンテナ、スター型EHアンテナ、ブリッジ型EHアンテナ、若しくはその他のEHアンテナ、バーアンテナ、微小ループアンテナ、若しくはその他の磁界アンテナ、又は誘電体アンテナであってもよい。
上記シリンダヘッド300には、電磁波伝送路830が設けられている。電磁波伝送路830は一端が上記アンテナ820に接続し、他端が誘電体に覆われてシリンダヘッド300の外壁まで貫通して延びている。電磁波伝送路830は上記外側支持体380なかに設けられている。この電磁波伝送路830は銅線により形成されている。電磁波伝送路830は電気伝導体、誘電体、絶縁体などのいずれで形成してもよいが、接地部材との間に電磁波を供給したときにアンテナ820へ電磁波が良好に伝送されなければならない。電磁波伝送路の変形例の一つとして、電気伝導体又は誘電体により形成された導波管よりなる電磁波伝送路がある。ここでは電磁波伝送路830が外側支持体380に埋まっており、外側支持体380のなかを通っている。電磁波伝送路830の一端が上記アンテナ820に接続しており、他端がシリンダヘッド300の外壁から外部へ引き出されている。よって、電磁波伝送路830と接地部材であるシリンダヘッド300との間に電磁波を供給すると、電磁波をアンテナ820に導くようになっている。
内燃機関E又はその周辺には、上記電磁波伝送路830に電磁波を供給する電磁波発生装置840が設けられている。この電磁波発生装置840は電磁波を発生するが、この実施形態の電磁波発生装置840は、2.45GHz帯のマイクロ波を発生するマグネトロンである。しかし、これによって本発明の排気ガス後処理装置の電磁波発生装置の構成は限定解釈されない。
図21に示すように、上記アンテナ820は、孔の延びる方向に沿ってシリンダヘッド300の外壁側から燃焼室400へ向かって延びてからL字形に曲がり、先端がシリンダヘッド300の燃焼室400を構成する壁に沿って上記放電装置810の第1の電極812及び第2の電極813に指向している。また、図22に示すように、ピストン200が往復する方向からみたときに、上記第1の電極812及び第2の電極813は燃焼室400の中心付近に配置されている。そして、上記アンテナ820は、上記第1の電極812及び第2の電極813からシリンダ壁に対応する部位に向かう途中に設けられている。さらに、この実施形態では排気バルブ520が複数設けられている。ここでは排気バルブ520が2つ設けられている。そして、上記第1の電極812及び第2の電極813並びにアンテナ820が、この第1の電極812及び第2の電極813とアンテナ820とを結ぶ仮想的な線が、シリンダヘッド300において二つの吸気ポート310及び二つの排気ポート320のうち隣接する二つの排気ポート320の間を通るように配置されている。
そして、この排気ガス後処理装置は、爆発行程により排気ガスが生じてから燃焼室に排気ガスが残留している間に、放電装置810の第1の電極812と第2の電極813との間で放電させ、電磁波発生装置840から電磁波伝送路830を介して供給した電磁波をアンテナ820から放射するように構成している。シリンダヘッド300は接地されており、放電用電圧発生装置950及び電磁波発生装置840の接地端子は接地されている。そして、放電用電圧発生装置950及び電磁波発生装置840の作動は制御装置880により制御される。制御装置880はCPU、メモリ、記憶装置などを備えており、入力信号を演算処理して制御用信号を出力する。この制御装置880にはクランクシャフト920のクランク角を検出するクランク角検出装置890の信号線が接続され、このクランク角検出装置890から制御装置880へクランクシャフト920のクランク角の検出信号が送られてくる。よって、制御装置880はクランク角検出装置890からの信号を受け、放電装置810及び電磁波発生装置840の作動を制御する。しかし、これによって本発明の排気ガス後処理装置の制御方法及び信号入出力の構成は限定解釈されない。
従って、内燃機関Eの作動時に上記放電装置810の電極811で放電させ、電磁波発生装置840から電磁波伝送路830を介して供給した電磁波をアンテナ820から放射すると、電極811の近傍に放電によりプラズマが形成され、このプラズマはアンテナ820から一定時間供給された電磁波、つまり電磁波パルスからエネルギの供給を受けたプラズマにより大量に生成されたOHラジカル及びオゾンにより排気ガスの成分の酸化反応などが促進される。すなわち、電極近傍の電子が加速され、上記プラズマの領域外へ飛び出す。この飛び出した電子は、上記プラズマの周辺領域にある空気、燃料及び空気の混合気などのガスに衝突する。この衝突により周辺領域のガスが電離しプラズマになる。新たにプラズマになった領域内にも電子が存在する。この電子もまた電磁波パルスにより加速され、周辺のガスと衝突する。このようなプラズマ内の電子の加速、電子とガスとの衝突の連鎖により、周辺領域では雪崩式にガスが電離し、浮遊電子が生じる。この現象が放電プラズマの周辺領域に順次波及し、周辺領域がプラズマ化される。以上の動作により、プラズマの体積が増大する。この後、電磁波パルスの放射が終了すると、その時点でプラズマの存在する領域では、電離より再結合が優位になる。その結果、電子密度が低下する。それに伴いプラズマの体積は減少に転じる。そして、電子の再結合が完了すると、プラズマが消滅する。この間に大量に形成されたプラズマにより混合気中の水分などから大量に生成されたOHラジカル、オゾンにより排気ガスの成分の酸化反応などが促進される。
その場合、爆発行程により排気ガスが生じてから燃焼室400に排気ガスが残留している間に燃焼室400を反応器として酸化反応などを行うので、排気ガスが高い温度にあることから、この面からも酸化反応が促進され、プラズマによるOHラジカル及びオゾンの大量生成から引き起こされる酸化反応などと相俟って排気ガス浄化の効率が高められる。その場合、空燃比をリッチに設定したり、燃焼室下流側での後燃えを過大に行わせるなどの処理を必ずしも要しないので、そのような処理を行わないときには内燃機関Eの燃費が悪くなることがない。
また、爆発行程により排気ガスが生じてから吸気バルブ510が吸気ポート310を開き又は排気バルブ520が排気ポート320を開くまでの間は電磁波の燃焼室400から外への散逸が阻止され、さらに吸気バルブ510が吸気ポート310を開き又は排気バルブ520が排気ポート320を開いてからは電磁波の燃焼室400から吸気ポート310又は排気ポート320への散逸が吸気バルブ510又は排気バルブ520のバルブフェイスにより或る程度阻止されるので、燃焼室400という閉鎖空間又はそれに準じた空間が反応器となって排気ガスの成分の酸化反応が安定的に行われる。
本発明の燃焼室の排気ガス後処理装置は、爆発行程により排気ガスが生じてから燃焼室に排気ガスが残留している間に、放電装置の電極で放電させ、電磁波発生装置から電磁波伝送路を介して供給した電磁波をアンテナから放射するように構成しておればよい。図5に示して説明した制御方法は、その一例である。そのような種々の実施形態のなかで、第1実施形態の燃焼室の排気ガス後処理装置は、図4を用いて説明したように、爆発行程により排気ガスが生じてから、吸気バルブ510が吸気ポート310を開き又は排気バルブ520が排気ポート320を開くまでの間に、放電装置810の電極811で放電させ、電磁波発生装置840から電磁波伝送路830を介して供給した電磁波をアンテナ820から放射するように構成した。このようにすれば、吸気バルブ510及び排気バルブ520によって電磁波の燃焼室400から外への散逸が阻止されるので、燃焼室400という閉鎖空間が反応器となって排気ガスの成分の酸化反応などがさらに安定的に行われる。
本発明の燃焼室の排気ガス後処理装置は、爆発行程により排気ガスが生じてから燃焼室に排気ガスが残留している間に、放電装置の電極で放電させ、電磁波発生装置から電磁波伝送路を介して供給した電磁波をアンテナから放射するように構成しておればよく、放電装置又は電磁波発生装置の制御方法及び信号入出力の構成を限定しない。そのような種々の実施形態のなかで、第1実施形態の燃焼室の排気ガス後処理装置は、クランクシャフト920のクランク角を検出するクランク角検出装置890と、このクランク角検出装置890からの信号を受け、放電装置810及び電磁波発生装置840の作動を制御する制御装置880とを備えている。このようにすれば、クランク角に応じて電極811の放電及びアンテナ820からの電磁波の放射が制御される。
本発明の燃焼室の排気ガス後処理装置は、アンテナと電極との位置関係を限定しない。そのような種々の実施形態のなかで、第1実施形態の燃焼室の排気ガス後処理装置は、上記アンテナ820に電磁波を供給したときにアンテナ820に生じる電磁波の電界強度が大になる部位の近傍に電極811を位置づけた。このようにすれば、アンテナ820の上記部位から放射される電磁波の電界強度が周囲の電磁波の電界強度よりも強くなるので、電極811での放電により形成されたプラズマに、近傍の上記部位からの電磁波パルスによりエネルギが集中的に供給されてOHラジカル、オゾンが効率よく大量に生成され、電極811を中心にした領域の排気ガスの成分の酸化反応などが一層促進される。また、アンテナ820の複数箇所に電磁波の電界強度が大になる部位ができるときは、各部位に対応して電極811を位置づければ、燃焼室400の複数の領域で排気ガスの成分の酸化反応などが一層促進される。
また、既存の内燃機関に較べると主要な構造部材であるシリンダブロック100などをそのまま利用し、これらにシリンダヘッド300の改造を行い、この実施形態のようにもともと点火プラグ810が必須である内燃機関Eは別としてそうでない内燃機関にはシリンダヘッドに放電装置を設ければよい。そのため、当該内燃機関の設計工数の最小化及び既存の内燃機関との多くの部品の共通化が実現される。また、膨出部371によりアンテナ820が燃焼室400から受ける熱負荷およびアンテナ820が受ける機械的振動による疲労が軽減される。
本発明の排気ガス後処理装置は、アンテナはシリンダヘッドから燃焼室へ突出して設けられておればよく、アンテナの先端の向きを限定しない。そのような種々の実施形態のなかで、第1実施形態の排気ガス後処理装置は、上記アンテナ820の先端が上記放電装置810の第1の電極812及び第2の電極813に指向して設けられている。このようにすれば、第1の電極812とび第2の電極813との間で放電により形成されたプラズマにアンテナ820からの電磁波パルスが集中的に放射されるので、上記プラズマにエネルギが集中的に供給されてOHラジカル及びオゾンが効率よく大量に生成される。そのため、酸化反応などが一層促進される。
本発明の排気ガス後処理装置は、上記シリンダヘッドに設けられた放電装置に電極が、燃焼室に露出するように設けられておればよく、電極の位置を限定しない。また、上記アンテナはシリンダヘッドから燃焼室へ突出して設けられておればよく、アンテナの位置を限定しない。そのような種々の実施形態のなかで、第1実施形態の排気ガス後処理装置は、ピストン往復方向からみて、上記第1の電極812及び第2の電極813を燃焼室400の中心付近に配置し、上記アンテナ820を、上記第1の電極812及び第2の電極813からシリンダ壁に対応する部位に向かう途中に設けた。このようにすれば、第1の電極812及び第2の電極813の近傍に放電により形成されたプラズマはアンテナ820から放射された電磁波パルスからエネルギの供給を受けて体積が増大するが、このアンテナ820が上記第1の電極812及び第2の電極813からシリンダ壁に対応する部位に向かう途中に設けられているので、大量のプラズマが上記第1の電極812及び第2の電極813からシリンダ壁に対応する部位まで分布し、このプラズマによって大量生成されたOHラジカル及びオゾンにより、燃焼火炎が上記第1の電極812及び第2の電極813からシリンダ壁へと向かうことになる。
本発明の排気ガス後処理装置は、電極とアンテナとの相対位置を限定しない。そのような種々の実施形態のなかで、第1実施形態の排気ガス後処理装置は、上記第1の電極812及び第2の電極813並びにアンテナ820を、この第1の電極812及び第2の電極813とアンテナ820とを結ぶ仮想的な線が、シリンダヘッド300において二つの吸気ポート310及び二つの排気ポート320のうち隣接する二つの排気ポート320の間を通るように配置した。このようにすれば、排気ポート320の間の面を有効に利用してアンテナ820が配置される。
本発明の排気ガス後処理装置は、アンテナと電極との位置関係を限定しない。そのような種々の実施形態のなかで、第1実施形態の排気ガス後処理装置は、上記アンテナ820に電磁波を供給したときにアンテナ820に生じる電磁波の電界強度が大になる部位の近傍に第1の電極812及び第2の電極813を位置づけた。このようにすれば、第1の電極812及び第2の電極813で放電により形成されたプラズマに、近くにあるアンテナ820からの電磁波パルスが放射されるので、上記プラズマにエネルギが集中的に供給されてOHラジカル及びオゾンが効率よく大量に生成される。そのため、酸化反応などが一層促進される。
次に、本発明の排気ガス後処理装置の変形例を説明する。この変形例の排気ガス後処理装置は、アンテナ820の数及び配置のみが第4実施形態の排気ガス後処理装置と異なっている。第4実施形態の排気ガス後処理装置では、設けたアンテナ820が一つであった。これに対し、図23に示した変形例の排気ガス後処理装置では、これと同じアンテナ820を複数設けている。ピストン200が往復する方向からみて、上記第1の電極812及び第2の電極813が燃焼室400の中心付近に配置されている。また、ピストン200が往復する方向からみて、複数の上記アンテナ820が、上記第1の電極812及び第2の電極813からシリンダ壁に対応する部位に向かって並ぶように設けられている。ここではピストン200が往復する方向からみて中心から放射状に延びる4方向に沿ってそれぞれ3つのアンテナ820が並んでいる。隣り合う各方向はほぼ90度の角度をなしている。また、上記第1の電極812及び第2の電極813並びにアンテナ820が、この第1の電極812及び第2の電極813とアンテナ820とを結ぶ仮想的な線が、シリンダヘッド300において二つの吸気ポート310及び二つの排気ポート320のうち隣接する二つのポートの間を通るように配置されている。
本発明の排気ガス後処理装置の変形例は、ピストン往復方向からみて、上記第1の電極812及び第2の電極813を燃焼室400の中心付近に配置し、複数の上記アンテナ820を、上記第1の電極812及び第2の電極813からシリンダ壁に対応する部位に向かって並ぶように設けた。このようにすれば、第1の電極812及び第2の電極813の近傍に放電により形成されたプラズマはアンテナ820から放射された電磁波パルスからエネルギの供給を受けて体積が増大するが、このアンテナ820が上記第1の電極812及び第2の電極813からシリンダ壁に対応する部位まで並ぶので、大量のプラズマが上記第1の電極812及び第2の電極813からシリンダ壁に対応する部位まで分布し、このプラズマによって大量生成されたOHラジカル及びオゾンにより、燃焼火炎が上記電極からシリンダ壁へと向かうことになる。
本発明の排気ガス後処理装置の変形例は、上記第1の電極812及び第2の電極813並びにアンテナ820を、この第1の電極812及び第2の電極813とアンテナ820とを結ぶ仮想的な線が、シリンダヘッド300において二つの吸気ポート310及び二つの排気ポート320のうち隣接する二つのポートの間を通るように配置した。このようにすれば、ポート間の面を有効に利用してアンテナ820を配置することができる。その他の作用及び効果は第4実施形態の排気ガス後処理装置の場合と同様である。
本発明の燃焼室の排気ガス後処理装置では、一対の電極、又は電極及びこれと対をなす接地部材は、誘電体により被覆されていてもよい。この場合、電極間又は電極と設置部材の間に印加された電圧によって、誘電体バリア放電が行われる。誘電体バリア放電では、電極又は接地部材を覆う誘電体表面に電荷が蓄積され放電が制限されるため、放電はごく短時間に且つごく小規模に行われる。放電が短期間で終了するため周辺部の熱化が起こらない。すなわち電極間での放電によるガスの温度上昇が低減する。ガスの温度上昇の低減は、内燃機関でのNOXの発生量低減に資する。
電磁波伝送路を設ける部材は、アンテナを設ける部材に応じて変わり、シリンダブロック又はシリンダヘッドなどになる。
本発明は、以上の実施形態の特徴を組み合わせた実施形態を含んでいる。また、以上の実施形態は本発明の燃焼室の排気ガス後処理装置のいくつかの例を示したに過ぎない。したがって、これらの実施形態の記載によって本発明の燃焼室の排気ガス後処理装置が限定解釈されることはない。