本発明の一実施の形態について図面を用いて説明する。
(実施形態1)
実施形態1として、本発明のMOCVD装置について説明する。
本発明のMOCVD装置は、図1に示すように、シャワーヘッド106と、基板107を保持するサセプター108と、サセプター108を支持するサセプター支持筒109とが内部に配置された成膜室105を備えている。サセプター支持筒109の内部には、基板107を加熱するためのヒーター110が配置されている。成膜室105には、排気口151が設けられ、圧力調整弁111を介して排気ポンプ112が接続されている。
シャワーヘッド106は、噴出面11の形状を図2(a)に、断面図を図3に示したように、基板107に対して対向する噴出面11を有し、噴出面11には、多数の噴出口202、203が配列して設けられている。このシャワーヘッド106は、2種類の材料ガス(第1のガス、第2のガス)を別々の噴出口202、203から噴出する構成である。第1の材料ガスの噴出口202および第2の材料ガスの噴出口203は、図2(a)のように、所定の間隔(ピッチ)aでそれぞれ列200、201をなすように配置され、噴出口202の列200と噴出口203の列201は、隣接する列が一定の間隔bとなるように交互に配置されている。本実施形態では、列200と列201の間隔bを、列200、201内の噴出口202、203の間隔aよりも大きく設定するものである。すなわち、b>aに設定する。シャワーヘッド106の噴出面11とサセプター108(基板107)との間隔cは列間隔bよりも広く、好ましくは列間隔bの1.5倍以上に設定する。これにより、噴出された材料ガスが基板107に吹き付けられて折り返された後、列200、201の間を列200、201と平行に流れるように制御する。材料ガスの流れについては、後で詳しく説明する。
ここでいう噴出口の列とは、噴出口が所定の方向に直線に沿って並んでいればよく、列の向きはどのような方向であってもよい。例えば、複数の噴出口が、その略中心同士を結ぶ直線を仮定できるように並んでいる場合、その並びを列と認識することができる。シャワーヘッド上において並進対称性をもって噴出口が並んでいる場合には複数の方向に「噴出口の列」が仮定できるが、いずれかの方向の列の間隔bが、列内の噴出口の間隔aよりも大きく設定されていれば、上述した噴出口の列間隔の条件b>aを満たしている。
噴出口の列の決め方の一例としては、任意の噴出口を選んだときにその中心から一番近い距離にある他の噴出口の中心までを直線で結び、その直線を延長した方向に列が並んでいるとして、列の方向を決定することができる。また、一番近い距離にある他の噴出口が複数あるために列の方向が複数仮定できる場合、列内の噴出口の平均間隔が一番短いものを選択して列の方向を決定することができる。なお、噴出口が並進対称性を持たずに並んでいる場合も同様にして列の方向を決定することができる。
また、ある一つの噴出口から最近接する噴出口が2以下の数で配置され、その噴出口を結ぶ方向に配置された噴出口の並びを噴出口列と定義することも可能である。噴出口列が、噴出口列内の噴出口間隔aより広い間隔bで平行に並べられていれば、上述した噴出口の列間隔の条件b>aを満たしている。
シャワーヘッド106の内部には、図3のようにすべての噴出口202に接続された第1材料ガス空間125と、すべての噴出口203に接続された第2材料ガス空間126が設けられている。第1材料ガス空間125には接続ポート121が備えられており、第1材料ガスのキャリアライン101が図1のように接続されている。第2材料ガス空間126には接続ポート122が備えられており、第2材料ガスのキャリアライン102が接続されている。
また、シャワーヘッド106の内部には、噴出口202、203を取り囲むように冷却水流路90が設けられている。冷却水流路90には、入水口123と出水口124が供えられ、それぞれ図1では図示していない冷却水供給ラインと冷却水排出ラインが接続されている。
第1材料ガスのキャリアライン101には、図1のように流量調節器100a、100cをそれぞれ介してキャリアガス供給源211と第1材料ガス供給源12がそれぞれ接続されている。第2材料ガスのキャリアライン102には、流量調節器100bを介してキャリアガス供給源211が、圧力調節器104を介して第2材料容器103がそれぞれ接続されている。第2材料容器103には、液体の第2材料が充填されており、これをバブリングするためのバブリングガス供給管91が挿入され、この管91には流量調節器100dを介してバブリングガス供給源13が接続されている。
つぎに、サセプター支持筒109の下部の構造について図4(a)、(b)を用いて説明する。図4(a)はサセプター支持筒109の上面図であり、図4(b)はサセプター支持筒109および下部構造の断面図である。サセプター支持筒109は、躍動台222に搭載されている。躍動台222は、成膜室105の底部に直線受け軸221を介して取り付けられている。
成膜室105の底部の外側にはモーター223が配置され、その回転軸224が成膜室の内側に突出している。躍動台222の端部には回転運動を往復運動に変換する運動変換機220が配置されている。運動変換機220は、モーター223の回転軸224に直結した偏芯回転板225と躍動台222に取付けた往復運動変換板226を含んで構成され、モーター223の回転運動を矢印401の方向の1軸直線往復運動に変換する。直線往復運動の方向は、シャワーヘッド106の噴出口の列200、201と直交する方向に設定する。
直線往復運動の幅Lは、シャワーヘッドの列間距離bとした場合、L=b(1+2n)(但し、n=0,1,2,3,・・・のうちの所定の値)に設定する。躍動台222の可動範囲は、Lと同等以上に設定する。直線運動の幅Lと列間距離bとの関係については後で詳しく説明する。また、直線往復運動の速さは所定の速さに設定し、結晶成長中は継続的に往復運動させる。
サセプター支持筒109の上にサセプター108が配置され、その上に基板107が搭載される。
例えば、第1材料ガスとしてVI族系材料である酸素ガスを、第2材料ガスとしてII族系材料であるジメチル亜鉛(DMZn)を用い、キャリアガスおよびバブリングガスとして窒素を用いる場合、これらのガスは以下のように供給される。すなわち、キャリアガス供給源211として窒素ガス供給源を、第1材料ガス供給源12として酸素ガス供給源を、バブリングガス供給源13として窒素ガス供給源をそれぞれ用いる。第2材料容器103にDMZnを充填する。これによりキャリアライン101とキャリアライン102に、キャリアガスとしての窒素ガスを流量調節器100a、100bで調節して流す。キャリアガスは、その後段より合流する第1材料および第2材料ガスを成膜室105のシャワーヘッド106へ運ぶ。
第1材料ガス供給源12から供給される酸素ガスは、流量調節器100cで流量を調節され、キャリアライン101を流れる。バブリングガスである窒素ガスは、流量調節器100dで流量を調節され、DMZnを充填した材料容器103へ管91により供給され、DMZnをバブリングする。これにより発生したDMZn蒸気は、窒素ガスとともに圧力調整器104を通りキャリアライン102へ流される。
第1材料ガスである酸素ガスおよび第2材料ガスであるDMZn蒸気は、シャワーヘッド106の接続ポート121、122からそれぞれ第1材料ガス空間125および第2材料ガス空間126に供給され、それぞれ別々の噴出口202、203より噴出される。これにより、シャワーヘッド106の対向面に置かれた基板107に、2種類の材料ガスが吹付けられる。
基板107は、ヒーター110で加熱されており、第1および第2の材料ガスは熱分解反応を生じる。これにより基板上にZnO結晶が成長する。成膜室105の圧力は、圧力調整弁111で調整される。素子設計に合わせて材料ガスの種類を変更することにより、多様な層を積層できる。結晶成長中は、サセプター支持筒109を幅Lで直線往復運動させる。
本実施形態のシャワーヘッド106の作用について説明する。MOCVD装置の成膜性能を左右するのは基板107上面に如何なる状態で材料ガスを流すかによる。本実施形態のシャワーヘッド106は、ヘッド全面に列200、201状に噴出口202、203を設け、基板107全体にそれぞれに噴出口より材料ガスを均一に吹付ける。このため、相互に反応性のある2種類のガスを別々の噴出口202,203より噴出し、基板107直前から基板上で混合することができる。
このとき、本実施形態1のシャワーヘッド106は、ガスの流れを従来の放射状の流れとは全く異なる流れとする。すなわち、図5に示したように列状に配置された噴出口202、203より噴出した材料ガスは、サセプター108(基板107)に略垂直に当たることにより、折り返されてヘッド106の噴出面11の方向に向かう。このとき、図2(a)に示したように、噴出口202、203の列200、201の間隔bを、列内のピッチaよりも広く設定しているため、列200、201の間隔bのシャワーヘッド106寄りの空間に、サセプター108(基板107)で折り返された材料ガスが流れる排気空間501が形成される。排気空間501は、隣接する列200,201の間にそれぞれ形成され、列200,201に平行な空間であり、サセプター108(基板107)で折り返された材料ガスはこの排気空間501を列に平行に流れ、サセプター108(基板107)の端部から排気される。よって、本実施形態のシャワーヘッド106は、排気空間501が基板107の表面から離れた位置に形成され、基板107の全ての面には、常にフレッシュな材料ガスが供給できる。
このとき、列間隔bを列内ピッチaの2倍以上にすることが望ましい。また、シャワーヘッド106の噴出面11とサセプター108(基板107)との間隔cは列間隔bよりも広く、好ましくは列間隔bの1.5倍以上に設定する。列間隔bをピッチaの2倍以上にすることで、排気空間501の排気方向が定まり、噴出面11とサセプター108(基板107)との間隔を、列間隔bの1.5倍以上にすることで、排気空間501を基板107から離れたシャワーヘッド106寄りの位置に形成できるためである。
具体的には、列間隔bは、5mm以上10mm以下であることが好ましい。その理由は、2種類の材料ガスを別々に供給する場合、噴出口202,203が離れていることで、2種類のガスが噴出口近傍(直後)で混ざることを防止でき、さらに排気効率を妨げない排気空間501を形成しやすいと考えられることから、列の間隔bは5mm以上が好ましいためである。また、一般的な半導体発光素子の製造に用いられる基板サイズは2インチ〜4インチであるので、列間隔bが広くなり過ぎると基板面内の膜厚分布も大きくなり、基板107の往復運動で補償するのが困難になる。また2種類の材料ガスが基板107直前で混合するのが困難になる。よって、bは10mm程度以下であることが望ましい。
また、噴出面11と基板107との間隔cは、具体的には8mm以上20mm以下であることが好ましい。その理由は、シャワーヘッド106と基板107の間隔cは、狭すぎると材料ガスの排気抵抗が大きくなることを考慮し、8mm以上に設定することが望ましい。また、一方、間隔cが広すぎると2種類の材料ガスが混ざり過ぎて反応不活性物質を形成しやすくなるため、間隔cは、20mm以下であることが望ましい。
このように噴出口202、203を列状に配置したシャワーヘッド106を用いた場合、サセプター108(基板107)をシャワーヘッド106に対して停止させた状態で成膜を行うと、図6(a)に示したように噴出口202、203の列の位置に対応した縞状の膜厚分布となる。例えば、第1材料ガスとしてVI族材料ガスを用い、第2材料ガスとしてII族材料ガスを用いた場合、II族材料ガス噴出口直下の膜厚は厚く、VI族材料ガス噴出口直下の膜厚は薄く縞状になる。最も厚い部分と最も薄い部分の幅は、列の間隔bに一致する。また、横断方向の膜厚分布は、sin(cos)波状となる、縞と平行方向の膜厚は略同じになる。
本実施形態ではサセプター支持筒109を上述した図4の往復運動機構により、幅L=b(1+2n)(n=0,1,2、・・・の所定の値)で往復運動させる。これにより、基板107は、図6(a)の示した膜厚分布の膜厚の最も厚い部分から薄い部分までの幅と等しい距離を往復運動することになるため、図6(b)のように膜厚分布が消滅し、基板面内で均一な膜厚での成膜が可能となる。この往復運動は、例えば、変位量がsinカーブまたはcosカーブを描くように設定する。
往復運動機構(図4)の往復運動の幅Lは、偏芯回転板225が1周したときに偏芯軸が移動する距離で決まる。よって、往復運動の幅Lを例えば7mmに設定する場合、偏芯回転板225の中心から、7mmの半分である3.5mmだけずれた位置に偏芯軸を付ければよい。
一方、噴出口202,203の形状は、排気空間501を形成する観点から、列方向の噴出ガスがカーテン状になることが好ましい。このため、図7(a)に示したように、単純なストレート噴出口のほか、図7(b)に示す様に列方向に長手方向が一致する補助溝212を設け、その底部に噴出口202,203を配置することも可能である。補助溝212の形状は、矩形や側面を傾斜させた形状の他、かまぼこ型にすることも可能である。補助溝212を設けることにより、噴出ガスは溝212の長手方向に誘導され、カーテン状になりやすいため、図7(c)のように溝212内の噴出口202,203のピッチaを大きくし、噴出口数を減らすこともできる。
なお、補助溝212は、溝の幅が噴出口の径の3倍以下であることが好ましい。溝の深さは、噴出口の径の2.5倍以上であることが好ましい。溝の側面は、なす角30°以下であることが好ましい。側面のなす角が30°以内ならば十分な排気空間501が形成され易いためである。側面のなす角が30°を越えると排気空間が狭められる。
なお、本実施形態では、2種類のガスを別々の噴出口202、203から噴出する構成としたが、2種類の反応ガスが低温では反応しない場合には、シャワーヘッド106の内部で混合してから噴出することも可能である。この場合も、噴出口の配置を本実施形態の列状の配置とすることにより、排気空間501を形成することができ、基板107を直線往復運動する一様な膜厚分布で成膜することができる。例えば、AsH3、PH3、NH3などの材料ガスと、トリメチルガリウム(TMGa)蒸気のガスを用いる場合、低温(約300℃以下)では反応しないので、シャワーヘッド106内で混合してから、全噴出口202,203より噴出することにより、GaAs、GaP、GaNを成膜することが可能である。なお、2種類のガスを混合して成膜する場合、シャワーの噴出口202,203からは同じ混合ガスが噴出されるため、成長縞の間隔が1/2になるので往復運動の幅Lも1/2にできる。
本実施形態で用いた往復運動機構は、往復運動の幅Lがシャワーヘッドの噴出口の行間隔で決まるので、サセプター108や基板107のサイズに左右されず、往復運動の幅が決まる。このため、大型なMOCVD装置であっても同一な機構で簡便に構成できる。また、従来の自公転式MOCVD装置と比較すると、サセプターに複雑な回転機構を必要としないのでサセプターの均熱性、昇温・降温特性に影響を与えず有利な構造である。したがって、この装置によって成膜できる結晶は、膜厚、組成、不純物添加濃度等にムラが少なく、半導体発光素子とした場合は発光波長、発光出力、I−V特性にバラツキが少なく、製造歩留まりの著しい向上が期待できる。また、昇降温時のサセプター温度分布が少ないことにより、結晶の熱歪、結晶欠陥、積層膜間の歪みを抑制して発光出力や寿命を向上させる効果が期待できる。
本実施形態のシャワーヘッド106の構造では、基板107の列方向に沿った両端部2方向に使用済材料ガスは排出される。そこで、成膜室に設ける排気口151(図1)を、材料ガスが排出される方向(列方向)の延長線上の2カ所に設ける構成にすることが可能である。これにより排気効率を向上させることができる。
実施形態1では、基板107を往復運動させる構成について説明したが、基板107に対してシャワーヘッド106を往復運動させる構成にすることも可能である。これについては後述の実施形態4で説明する。
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2のMOCVD装置について説明する。実施形態2では、シャワーヘッド106の噴出口配置を実施形態1とは異なる配置とした。また、基板往復運動機構についても実施形態1とは異なる構成とした。他の構成について実施形態1と同様であるので、変更点のみを以下に説明する。
実施形態2のシャワーヘッド106は、図2(b)に示したように材料ガスの噴出口202,203の配列において、列間隔bと列内間隔(ピッチ)aとを等しくし、隣接する列の噴出口202、203の位置を所定量(例えばピッチaの半分(1/2a))づつずらした。すなわち、実施形態2では、隣接する列の噴出口202,203は、別々の行204,205に並ぶ。この構成では、列間隔bとピッチaは等しいが、行間隔dは、列間隔bの1/2となる。例えば、列間隔bが5mm〜10mmの場合、好ましい行間dは、2.5mm〜5mmである。
実施形態2において、シャワーヘッド106とサセプター108との間隔cは、実施形態1と同様に列間隔bの1.5倍以上に設定することが望ましい。
実施形態2のシャワーヘッド106では、列内の噴出口のピッチaは列間隔bと等しいが、隣接する列の噴出口の位置を所定量づつずらしているため、噴出したガスがサセプター108で折り返された後、行方向に広がるのを隣接する列の噴出口の噴出ガスが邪魔をする。これにより噴出ガスは隣接する列を超えて広がることはできず、実施形態1同様に、図5(a)のようにシャワーヘッド106寄りの位置に排気空間501が形成される。排気空間501は、列方向に沿って連続しており、ガスは排気空間501を列方向に平行に流れ、サセプター108の端部から排気される。よって、基板107で折り返された材料ガスは基板107面から離れた位置の排気空間501を通って排気されるため、基板107の全ての面には常にフレッシュな材料ガスが供給できる。
つぎに、実施形態2の往復運動機構を図8(a)、(b)を用いて説明する。この往復運動機構は2軸直線往復運動機構であり、基板107をシャワーヘッド106の列の長手方向に平行な方向301およびそれに直交する方向300の2方向にそれぞれ往復運動させるものである。2軸直線往復運動機構は、第1実施形態の図4の往復運動機構を運動方向を直交させて2段重ねた構成である。すなわち、図8(a),(b)のように成膜室105の底部には直線受け軸221を介して躍動台222が配置されている。直線受け軸221の軸方向は、列の長手方向に直交する方向300に設定されている。躍動台222の端部には、回転運動を往復運動に変換する運動変換機220が配置されている。運動変換機220は、モーター223と、その回転軸224に直結した偏芯回転板225と、躍動台222に取り付けた往復運動変換板226を含んで構成され、モーター223の回転運動を方向300の1軸直線運動に変換し、躍動台222を方向300に往復運動させる。
躍動台222の上には、直線受け軸321が固定され、直線受け軸321上に躍動台322が搭載されている。直線受け軸321の軸方向は、列の長手方向に平行な方向301であり、直線受け軸221の軸方向とは直交している。躍動台322の端部には、回転運動を往復運動に変換する運動変換機320が配置されている。運動変換機320の構造は、運動変換機220と同様の構成であり、モーター323と、その回転軸324に直結した偏芯回転板325と、躍動台322に取り付けた往復運動変換板326を含んで構成されている。これにより、躍動台322を躍動台222の運動方向300と直交する方向301に往復運動させる。
運動変換機220による列の長手方向に直交する方向300についての往復運動の幅L’は、シャワーヘッド106の列間距離bにより、
L’=b(1+2n)
(但し、n=0,1,2,3,・・・のうちの所定の値)
を満たすように設定する。よって、躍動台222の可動範囲は、L’と同等以上に設定する。なお、2軸直線往復運動は、結晶成長中は継続させる。
一方、運動変換機320による列の長手方向301についての往復運動の幅L’’は、噴出口の行間隔d(図2(b)参照)により、
L’’=d(1+2n)
(但し、n=0,1,2,3,・・・のうちの所定の値)
を満たすように設定する。なお、行間隔dは、列内間隔(ピッチ)aにより、d=a・(1/2)と定義される値である。
実施形態2の2軸直線往復運動機構では、基板107はシャワーヘッド106の噴出口の列の長手方向と平行な方向301に移動しながら、同時に直交する方向300にも移動する。方向300、301のそれぞれについての往復運動の速度および運動幅の設定により、基板107の運動軌跡は、円、楕円または8の字様を描く。実施形態2の2軸直線往復運動機構は図8(a)、(b)のように簡便な機構で実現可能である。
なお、実施形態2では、シャワーヘッド106の構成を隣接する列の噴出口202、203の位置を所定量ずつずらすとともに、基板107を2軸直線往復運動にする構成について説明したが、これらは同時に適用しなくても構わない。すなわち、実施形態1のシャワーヘッドの構成と、実施形態2の基板の2軸直線往復運動の構成とを備えるMOCVD装置とすることができる。
実施形態2では、基板107を2軸直線往復運動させる構成について説明したが、基板に対してシャワーヘッド106を2軸直線往復運動させる構成にすることも可能である。
(実施形態3)
つぎに、本発明の実施形態3のMOCVD装置について説明する。実施形態3では、シャワーヘッド106の噴出口配置を実施形態1、2とは異なる配置とした。変更点のみを以下に説明する。
本発明において重要な要素は、図5(a)のように排気空間501が形成されることであるので、噴出されるガスの種類ごとに列を形成する必要はない。そこで、実施形態3では、図2(c)に示すようにシャワーヘッドの噴出口の同一の列内に、異なる種類のガスの噴出口を配置する。
図2(c)のシャワーヘッドでは、一つの列251内に第1のガスの噴出口202と、第2のガスの噴出口203とが交互に配置されている。列251と隣接する列252との間隔はbであり、bは、列内の噴出口のピッチa(=行間隔)よりも広く設定されている。例えば、bはaの2倍に設定する。この場合、列間隔bが5mm〜10mmのとき、好ましいピッチa(=行間隔)は2.5mm〜5mmの範囲である。
本実施形態3の構成は、実施形態1と同様に、各列間に排気空間501が列方向に沿って形成される。よって、基板107で折り返された材料ガスは基板107面から離れた位置の排気空間501を通って排気されるため、基板107の全ての面には、常にフレッシュな材料ガスが供給できる。
列間隔bとピッチaとの関係は、実施形態1と同様に設定する。また、図2(b)の実施形態2と同様にピッチaと列間隔bとを等しくし、隣接する噴出口位置を相互にずらすことにより、行間隔dを列間隔bよりも狭めた構成にすることも可能である。
実施形態3において、シャワーヘッド106に対して基板107を停止させた状態で成膜を行った場合、不均一な膜厚分布となると考えられる。よって、本実施の形態においても、実施形態2の2軸直線往復運動機構を採用する。噴出口の配置を図2(c)の配置とし、実施形態2の2軸直線往復運動機構(図8(a),(b))を採用した場合、2軸それぞれの往復運動の幅L’、L’’は、以下のように定める。まず、運動変換機220による列の長手方向に直交する方向300についての往復運動の幅L’は、シャワーヘッド106の列間距離bにより、
L’=b(1+2n)(但し、n=0,1,2,3,・・・のうちの所定の値)
を満たすように設定する。一方、運動変換機320による列の長手方向301についての往復運動の幅L’’は、噴出口の行間隔dが列内間隔(ピッチ)aと等しい(d=a)であることから
L’’=a(1+2n)(但し、n=0,1,2,3,・・・のうちの所定の値)
を満たすように設定する。
(実施形態4)
本発明の実施形態4のMOCVD装置について説明する。実施形態4では、シャワーヘッド106の噴出面の形状を実施形態1〜3とは異ならせ、矩形とする。また、基板107を往復運動させるのではなく、シャワーヘッド106を基板104に対して1軸もしくは2軸で直線往復運動させる構成である。
本実施形態のMOCVD装置の全体構成を図9に、シャワーヘッド106の構造を図10(a)、(b)に示す。図9から明らかなように装置の概要は、実施形態1の図1の装置と同様であるが、サセプター筒109の下には往復運動機構は配置されていない。
シャワーヘッド106は、噴出面11の正面図を図10(a)に示したように噴出面11の形状が四角形(矩形)である。シャワーヘッド106の噴出口202、203の列200,201と行の定義、列間隔bと噴出口202、203の列内間隔(ピッチ)aとの関係、噴出口202、203の形状については、実施形態1、2および3のいずれかと同様にする。図10(a)では一例として噴出孔202、203の配置を実施形態1と同様にしている。
なお、シャワーヘッド106の断面構造は、図10(b)に示したように実施形態1の装置と同様である。シャワーヘッド106と基板107との間隔の設定についても、実施形態1,2および3と同様にする。
本実施形態4は、実施形態1,2および3と同様に、シャワーヘッド106の噴出口202、203の列間隔bを列内間隔(ピッチ)aよりも広く設定しているため、図11(a),(b)に示したようにシャワーヘッド106から噴出され、基板107に到達した後の材料ガス(排気ガス)は列と列との間の空間(排気空間)501を通って流れ、排気される。よって、図11(c)、(d)に示した比較例のように排気ガスの流れが他の噴出口から噴出される材料ガスが基板107に到達するのを妨げないため、常にフレッシュな材料ガスを基板107に供給することができる。
さらに、本実施形態4ではシャワーヘッド106の噴出面11の形状を矩形としたことにより、排気空間501を流れ排気される排気ガスの流路長が、図11(b)から明らかなようにシャワーヘッド106の面内で同じ距離になり、しかも、その各排気空間501(流路)の両脇に位置する噴出口の数も等しいため、流量、流速も等しくなる。その結果、基板107に到達する材料ガスの流れも噴出面11の面内で均一化(スムースな流れ)するため、面内における膜厚の均一化を図ることができる。
基板面内で均一な膜厚を得るためには、シャワーヘッド106のサイズと基板107の幅の関係は以下が好ましい。
シャワーヘッドサイズ ≧ 基板幅+往復運動の幅L
ただし、シャワーヘッドサイズとは、噴出面11の噴出口202、203が設けられている領域の列に直交する方向の幅であり、往復運動の幅Lとは、往復運動機構により噴出口の列に直交する方向にシャワーヘッド106を往復運動させる幅である。
なお、実施形態4のシャワーヘッド106の矩形の噴出面1内における排気ガスの流れは、図12(a)に示すように実施形態1のシャワーヘッド106の排気ガスの流れ(図12(b))と比較してもより均一化されている。図12(b)に示すように実施形態1のシャワーヘッド106の排気空間501は、噴出面11の排気空間501の流路長が、外側にいくほど短くなるため、流れが外側に曲がる傾向になる(ただし、図12(b)では説明を容易にするために曲がりを強調している)。実施形態4のシャワーヘッド106は、流路長が一定のため、実施形態1のシャワーヘッド106と比較しても、流れをより一層に一様にすることができる。
つぎに、シャワーヘッド106を基板107に対して1軸もしくは2軸で直線往復運動させるための機構部について説明する。
まず、1軸直線往復運動させるための機構部について図13(a)〜(c)を用いて説明する。
本実施形態4では、サセプター支持筒109の往復運動機構を配置しておらず、図13(a)、(b)、(c)のようにシャワーヘッド106の上部に往復運動機構として躍動台22や往復運動変換器220を配置している。これにより、シャワーヘッド106を基板107に対して1軸直線往復運動させる。
シャワーヘッド106の往復運動機構の構造は、図4(a),(b)のサセプター支持筒109の往復運動機構と殆ど同じ構造を用いた。すなわち、図13(a)のようにシャワーヘッド106の上部に躍動台222が取り付けられ、躍動台222は、直線受け軸221を介して矢印401方向(図13(b))に可動に成膜室105の上面に取り付けられている。
成膜室105の上面外側にはモーター223が配置され、その回転軸224が成膜室の内側に挿入されている。躍動台222には回転運動を往復運動に変換する運動変換機220が配置されている。運動変換機220は、図13(c)のようにモーター223の回転軸224に直結した偏芯回転板225と、躍動台222に取付けた往復運動変換板226を含み、モーター223の回転運動を矢印401の方向の1軸直線往復運動に変換する。直線往復運動の方向は、シャワーヘッド106の噴出口の列200、201と直交する方向に設定する。
また、シャワーヘッド106の材料ガスの接続ポート121、122、および、入出水口123、124は、それぞれフレキシブル配管521、522、523、524を介して、第1および第2材料ガスのキャリアライン101、102、および、冷却水供給排出ライン533,534に接続されている。
これにより、シャワーヘッド106を可動にした場合であっても、材料ガスおよび冷却水の供給が可能である。シャワーヘッド106の可動範囲は、数mm程度であるため、フレキシブル配管521〜524を使用することにより安価で簡便に可動性を確保しながら材料ガス及び冷却水を供給できる。
なお、フレキシブル配管521〜524は、気密性、耐久性の観点から金属製であることが好ましい。テフロン(登録商標)等の樹脂系フレキシブル配管を用いることも可能である。
つぎに、シャワーヘッド106を2軸直線往復運動させる場合のその構成について説明する。
2軸直線往復運動させる場合には、図14(a)〜(c)に示すように、図13(a)〜(c)の往復運動機構を運動方向を直交させて2段重ねた機構部を用いる。すなわち、図14(a)〜(c)のように成膜室105の上部には直線受け軸221を介して躍動台222が配置されている。直線受け軸221の軸方向は、列の長手方向に直交する方向401に設定されている。躍動台222の端部には、回転運動を往復運動に変換する運動変換機220が配置されている。運動変換機220は、モーター223の回転運動を方向401の1軸直線運動に変換し、躍動台222を方向300に往復運動させる。
躍動台222の下には、直線受け軸321が固定され、直線受け軸321の下に躍動台322が配置されている。躍動台322は、シャワーヘッド106に取り付けられている。直線受け軸321の軸方向は、列の長手方向に平行な方向301であり、直線受け軸221の軸方向とは直交している。躍動台322の端部には、回転運動を往復運動に変換する運動変換機320が配置されている。運動変換機320の構造は、運動変換機220と同様の構成であり、モーター323と、その回転軸324に直結した偏芯回転板325と、躍動台322に取り付けた往復運動変換板326を含んで構成されている。これにより、躍動台322を躍動台222の運動方向300と直交する方向301に往復運動させる。
シャワーヘッド106を1軸直線運動させるか、2軸直線運動させるかは、シャワーヘッド106の噴出口の配置に応じて、第1〜第3の実施の形態で説明したように選択する。また、1軸または2軸直線往復運動させる幅についても第1〜第3の実施形態で説明した通りである。
シャワーヘッド106を基板107に対して1軸もしくは2軸直線往復運動させることにより、列状に噴出口が配置されたシャワーヘッド106を用いて厚さが一様な膜を成膜することができる。
本実施形態4では、基板4側を固定とし、シャワーヘッド106を移動させているが、第1〜第3の実施形態のようにシャワーヘッド106を固定とし、基板107側を移動させる場合と比較して以下のような利点がある。
基板107が往復運動する場合、図15(a)に示すように、基板107を加熱するヒーター110の幅を、基板107の幅に基板107の往復運動の幅Lを加えたサイズにする必要があるが、実施形態4では基板107は移動しないため、図15(b)のように基板107の幅と同等な幅のヒーター110でよく、ヒーター110をコンパクトにできるという利点がある。
ヒーター110のサイズがコンパクトになる分、ヒーター110およびサセプター支持筒109の熱容量を低減することができ、昇温・降温のレスポンス性能を向上させることができるという効果も得られる。
また、基板107とヒーター110との位置関係も変化がないため、成膜条件の再現性を向上させることができる。
基板107が往復運動しないため、基板107が往復運動にともなって浮き上がったり、揺れる等の問題も発生しないため、高速での往復運動が可能になる。すなわち、一般に基板107は、そりや破損を防止するため、押さえ冶具等で抑えたりせず、図16(a)のようにサセプター108の溝108aの中に置くだけの構造とすることが望ましいとされる。溝108aのサイズは、基板107の熱膨張等を考慮し、サセプター108には基板サイズよりやや大きめに設計されている。往復運動機構によりサセプター108を往復運動させると、慣性力により往復運動の移動方向とは逆の方向に基板107が移動し、溝108aの中で基板107が揺れる。
基板107の揺れは高速で往復運動を行うほど激しくなるため、実施形態1〜3の構成では、基板107が溝108aの中で浮き上がりを生じない程度の往復運動の速度に設定することが望ましい。
また、基板107を往復運動させた場合、溝108aの角部が、図16(b)のように丸まっていると、往復運動時に基板107が丸まった角部に沿って側面に乗り上げて浮き上がってしまうため、溝108aの底面と側面の間の角は精度よく角度90°に加工されていることが望ましい。しかし、溝108aの角を精度よく90°に加工するのは費用がかかる。また、精度よく90°に加工されていても、基板107が溝108a内で揺れると、図16(c)のように堆積物の剥がれ落ちたもの等が基板107の下に入り込みやすく、基板107の浮きが発生することもある。これに対し、実施形態4では、基板107側を往復運動させず、シャワーヘッド106側を往復する運動させる構成にしたことにより、基板107が浮き上がったり、揺れる恐れがなく、基板107に対してシャワーヘッド106を高速で可動させることができる。
基板107がシャワーヘッド106に対して相対的に往復運動する速度は、基板上に形成される膜の構造に影響する。たとえば、基板107上のある狭い領域に着目すると、この領域が第1材料(VI族系)ガスと第2材料(II族系)ガスの噴出口の下を往復運動する場合、成膜速度に比して往復運動速度が遅ければ、図17(a)に示す様に第1材料(VI族系)ガス噴出口の下を通過する際にVI族リッチの膜が、第2材料(II族系)ガス噴出口の下を通過する際に、II族リッチの膜が成膜され、一様な膜を成膜することができない。これに対して、基板107がシャワーヘッド106に対して相対的に高速で往復運動する場合、基板107上にどちらか一方の材料がリッチな膜が形成されることがなく、図17(b)のように一様な膜を形成することができる。本実施形態4では、シャワーヘッド106を基板107に対して高速で往復運動させることが可能であり、成膜速度が速い場合であっても組成が一様な膜を形成することができる。
実際に本実施形態4の往復運動機構によりシャワーヘッド106を、所定の成膜速度で、10〜60往復/分で往復運動させる実験を行ったところ30往復/分以上の往復速度にすることにより組成が一様な膜を形成することができることが確認された。また、往復運動機構の耐久性確認のため、150往復/分で往復させたが問題は生じなかった。
また、シャワーヘッド106を往復運動させる本実施形態の構成では、シャワーヘッド106を往復運動させる機構部が熱源であるヒーター110から遠くに位置するため、構成部品の耐熱性等を考慮する必要が無く、安価な部品での構成が可能であるという利点もある。
なお、本実施形態4の装置において、成膜室105の排気口151を図18(a)に示す様に、シャワーヘッド106の排気空間501の延長方向302に設けることが好まししい。より好ましくは、シャワーヘッド106の列方向の両側に排気口151を配置する。これにより、シャワーヘッド106の列間の排気空間501を流れ、シャワーヘッド106の周囲に流れる排気ガスの排気効率を向上させることができ、不活性な排気ガスの成膜への影響を低減することができる。
排気口151の大きさは、図18(b)のようにシャワーヘッド106の噴出面11の噴出口202,203が設けられている領域の幅と同等である場合には、排気ガスを直線的に排気口151に取り込み効率良く排気することができるため望ましい。より具体的には、排気口151の大きさは、噴出面11の噴出口202,203が設けられている領域の幅(噴出面11の噴出口202、203の列のうち両脇に位置する列の距離)にシャワーヘッド106の往復運動の幅Lを加えた幅に設定することが望ましい。
ただし、往復運動の幅Lは実施形態1〜3と同様であり、列の間隔bに対して、
L=b(1+2n)(但し、n=0,1,2・・・のうちの所定の値)
である。
本実施形態4の図10(a)、(b)に示したシャワーヘッド106は、噴出口202、203の列と列との間に図11(a),(b)示すように排気空間501が形成されるが、図19(a)、(b)のように最も外側に位置する列の外側は、噴出された材料ガスが自由に外に流れ出るため排気空間501は形成されず、基板到達後の排気ガスの流れが一様ではない。すなわち、最も外側に位置する列の外側の材料ガスは、他の列間の材料ガスの流れと異なり、ガス供給および排気の流れが乱れているため、成膜した膜厚にむらが生じる場合がある。そのため、成膜に使用する基板のサイズは、
基板サイズ≦シャワーヘッドの両サイドの一つ内側の噴出口の幅
に設定することが望ましい。そのため、基板107よりもやや大きなシャワーヘッド106が必要となる。そこで、図19(c)、(d)のようにシャワーヘッド106の両サイドに突起状のガード204を設け、材料ガスの流れを他の列間と同様の流れに整えることが可能である。
サイドガード204は、主平面が噴出面11に垂直な板状の突起であり、シャワーヘッド106の両端部の材料ガスの噴出口の列のガスフローが外側に流れ出るのを妨げる。これにより、材料ガスの流れはサイドガード204と列との間を列方向に平行に流れ、他の列間と同様の流れに整えられるため、成膜に用いることができる。よって、噴出面11の利用可能領域(面積)が広がり、シャワーヘッド106をコンパクトにすることが可能となる。
なお、サイドガード204の高さは、シャワーヘッド106を往復運動させた場合に、基板107およびサセプター108と接触しない高さに設定する。すなわち、サイドガード204の先端と基板107またはサセプター108との間に所定の隙間が生じるようにする。この隙間は、実用上の機械加工精度や材質の熱膨張を加味し、0.5mm以上であることが好ましい。隙間が大きすぎると排気ガスの流れを整える効果が低減するので3.0mm未満が好ましい。または、隙間は、シャワーヘッド106と基板107またはサセプター108との間隔の2割以下であることが好ましい。
本実施形態4では、シャワーヘッド106の噴出面11の形状を矩形にしたが、図20のように噴出口202、203が配置される領域の形状が矩形であればよく、シャワーヘッド106の外形は他の形状、例えば円形にする場合も本発明には含まれる。
なお、2軸往復運動機構を図8の装置では基板側に、図14の装置では、シャワーヘッド106側に設ける構成であったが、基板107のサセプター支持筒109およびシャワーヘッド部106に、軸方向が直交する1軸往復運動機構をそれぞれ設ける構成にすることも可能である。
(実施形態5)
実施形態5では、本発明の半導体発光素子の製造方法について説明する。
半導体発光素子の構造は、図21に示したように、基板20上に、緩衝層21、n型酸化物半導体層22、量子井戸構造を含む発光層23、p型酸化物半導体層24を積層した構成である。p型酸化物半導体層24の上には、p側電極(透光性電極)27が配置され、その上にp側電極パッド28が配置されている。基板20の下面には、n側電極25とn側電極接続部材26が積層されている。
基板20としては酸化亜鉛またはサファイア等を用いることができる。緩衝層21は酸化亜鉛の結晶再構成層である。n型酸化物半導体層22およびp型酸化物半導体層24は、n型およびp型の不純物をそれぞれ添加した酸化亜鉛を結晶成長させた層である。発光層23の量子井戸構造は、酸化亜鉛化合物(例えばMgZnO等)を結晶成長させた層である。
緩衝層21、n型酸化物半導体層22、量子井戸構造を含む発光層23、p型酸化物半導体層24は、MOCVD装置を用いて成膜する。
成膜は、以下のように行う。MOCVD装置のシャワーヘッドの構造は、VI族系材料ガスとII族系材料ガスを別々の噴出口から供給する方式を取り、その噴出面は内部より冷却水で冷却するタイプとする。このとき、材料ガスの噴出口の並びを列間隔bを粗に、行間隔aを密にした構造とする。また、例えば、実施形態1〜4のいずれかに示したシャワーヘッド106の構造とする。これにより、噴出された材料ガスは、基板に吹き付けられて折り返された後、図5(a)に示したように列と列との間の基板面から離れた排気空間501を列と平行に流れるように制御する。
一方、基板107は、シャワーヘッド106に対して相対的に往復運動させる。往復運動の方向は、少なくとも噴出口の列と直交する方向であり、往復幅Lは、L=b(1+2n)(ただし、n=0,1,2・・・)に設定する。同時に噴出口の列と平行な方向にも往復運動させ、偏芯運動としてもよい。往復運動機構としては、実施形態1〜4のいずれかに示した機構を用いることができる。基板を所定温度まで加熱し、VI族系材料ガスとII族系材料ガスを上記シャワーヘッドから噴出する。
このように、列間隔を粗に行間隔を密にしたシャワーヘッドから材料ガスを噴出しながら、基板を少なくとも行方向に所定幅で往復運動することにより、膜厚の均一な、緩衝層21、n型酸化物半導体層22、量子井戸構造を含む発光層23、p型酸化物半導体層24を形成することができる。
p側電極(透光性電極)27、p側電極パッド28、n側電極25およびn側電極接続部材26の成膜工程、および、素子の分割工程は、公知の方法により行う。
本実施の形態の製造方法により製造した半導体発光素子は、n型酸化物半導体層22、量子井戸構造を含む発光層23、p型酸化物半導体層24の膜厚が均一であるため、発光効率を向上させることができる。
上述してきた技術は、半導体発光素子、半導体レーザ、電子半導体素子の製造に適用することができる。
上述した各実施形態では、一つのシャワーヘッド106において、噴出口の列の間隔bが一定である場合について説明してきたが、本発明はこれに限られるものではない。図22(a)に示したように、噴出口の列の間隔が、間隔b1と間隔b2とが交互になるように配列することも可能である。この場合、間隔b1およびb2のうちの少なくとも一方(例えばb1)が、列内の噴出口のピッチa(=行間隔)と等しくても構わない。いずれかの列間隔がピッチよりも広ければ、広い列間隔b2に形成される排気空間を通ってガスが速やかに排気できるため、常にフレッシュなガスを供給でき、一様な膜を成膜できる。また、図22(b)には、間隔b3と間隔b4とが交互になるように噴出口を配列した例を示す。この例では、間隔b3と間隔b4がいずれもピッチaより大きい例である。図22(b)の例では、間隔b3および間隔b4のいずれにも排気空間が形成される。
また、図23(a)には、列間隔が間隔b4、間隔b4、間隔b5の順に繰り返すように噴出口を配列した例をしめす。この例では、間隔b4は列内ピッチaと等しい(b4=a)が、広い間隔b5に形成される排気空間によってガスを速やかに排気できるため一様な膜を成膜することができる。図23(b)に示した例では、列間隔が間隔b6、間隔b6、間隔b7の順に繰り返すように噴出口を配置したものである。b6およびb7のいずれも列内ピッチaより大きいため、図23(b)の例では、間隔b6および間隔b7のいずれにも排気空間が形成される。
図24には、シャワーヘッド106の中心から離れるほど列間隔を狭く設定した例を示す。すなわち、列間隔は、シャワーヘッド106の中心に最も近い列間隔b8から外側に順に列間隔b9、b10、b11が設定されており、これらはb8>b9>b10>b11の関係にある。外周側ほど列間隔を狭くしたのは、シャワーヘッド106が円形のため外周に近い列ほど排気ガスの流れる距離が短くなり排気抵抗が小さくなるためである。よって、外周に近い列ほど列間隔が狭くても速やかにガスを排気でき、フレッシュなガスを供給できる。
図25(a)に示した噴出口の配置は、図2(b)と同様に隣接する列の噴出口を行方向についてずらして配置した例であるが、ずれ量をピッチaの1/2ではない値(例えば1/3)にした例である。よって、図25(a)の配置の場合、行間隔は間隔d1(=1/3・a)と間隔d2(=2/3・a)とが交互になる。この例においても、行間隔d1およびd2よりも列間隔bが大きければ、列間隔に沿って排気空間が形成され、ガスを速やかに排気できるため、フレッシュなガスを供給することができる。
図25(b)に示した噴出口は2方向に配列され、第1の方向1が第2の方向2に対して直交しておらず、第1の方向1に直交する方向3に対して角度θを成すように配列したものである。この場合、第1の方向1を列方向とみると、それと直交する行方向3についての噴出口の間隔dは、ピッチaが列間隔bに等しい(b=a)場合d=a・tanθで表わされ、aよりも狭く(d<a)となる。このため、隣り合う列の噴出口から噴出されたガスは、隣接する列を超えて広がるのを相互に妨げ合い、ガスは列間隔に沿って流れて排気される。この構成の場合も、ガスを速やかに列間隔に沿って排気できるため、フレッシュなガスを供給することができる。
本発明の実施例について以下説明する。
(実施例1)
実施例1として、実施形態1の構成のMOCVD装置を用いて成膜を行った。
シャワーヘッド106の噴出口202,203の配置は、ピッチ(行間隔)aを4mm、列間隔bを7mmとした。噴出口の断面形状は、φ0.5mmの単純ストレート形状とした(図7(a))。シャワーヘッド106の噴出面11と基板107面との距離を15mmに設定した。
基板107として直径2インチ、厚み430μmのサファイア基板を用い、サセプター108に載せ、基板往復運動機構により10往復/分のスピードで行方向に往復運動させた。往復幅は7mmとした。
VI族系キャリアガスおよびII族系キャリアガスとして窒素を、流量調節器100aと100bでそれぞれ2000sccmに調節し、キャリアライン101、102を介してシャワーヘッド106に供給した。成膜室の圧力は、圧力調整弁111で10kPaに調整した。
第1の材料ガスとして、VI族系材料ガスである酸素ガスを流量調整器100cを通して20sccmに調整してVI族系キャリアライン101に流した。VI族系キャリアラインの流量は2000sccmを保つように1980sccmに減少した。
ヒーター110により基板107の温度を800℃まで昇温し、5分間サファイア基板を熱処理した。
まず、基板107上に緩衝層を以下のようにして形成した。基板107の温度を400℃まで下げて維持した。材料容器103に満たしたDMZnに窒素ガスを供給してバブリングした。DMZn蒸気が、0.5μmol/minの取り出し流量となる様に流量調節器100dと圧力調整器104で調整した。これを第2の材料ガスとしてII族系キャリアライン102に供給した。
これにより、サファイア基板107のa面に対して、第1の材料ガスである酸素ガスを噴出口202から噴出し、第2の材料ガスであるDMZn蒸気を噴出口203から噴出し、30分成膜することにより、厚さ20nmの緩衝層を形成した。
基板107の温度を900℃にして10分間緩衝層をアニールした。これにより、酸化亜鉛結晶を熱再構成した緩衝層を形成した。
つぎに緩衝層の上に酸化亜鉛(ZnO)の単結晶膜を成長させた。すなわち、基板107の温度を600℃にし、上述のDMZn蒸気を20μmol/min、酸素ガスを400sccmの流量に設定し、それぞれ噴出口203、202から60分間噴出させた。これにより、厚さ1μmの酸化亜鉛(ZnO)単結晶膜を成長させた。
成長させた酸化亜鉛単結晶膜の膜厚分布を測定したところ、膜厚分布は、基板面内分布で±4%未満と良好な結果であった。
また、本実施例では、シャワーヘッド106の噴出面11と基板107面との距離を10mm〜20mmまで変更して結晶成長したが、膜厚分布の均一性は維持されることが確認出来た。
(実施例2)
実施例2として、実施形態2のMOCVD装置を用いて成膜を行った。
シャワーヘッド106の噴出口202,203の配置は、図2(b)の配置とし、ピッチaを5mm、列間隔bを5mm、行間隔cを2.5mmとした。噴出口の断面形状は、φ0.5mmの単純ストレート形状とした(図7(a))。シャワーヘッド106の噴出面11と基板107面との距離を15mmに設定した。
基板107として直径2インチ、厚み430μmのサファイア基板を用い、サセプター108に載せ、偏芯往復運動機構により10往復/分のスピードで行方向に往復運動させた。行方向の往復幅は5mm、列方向の往復幅は2.5mmとした。
ガスの供給条件は、実施例1と同様にした。これにより、厚さ1μmの酸化亜鉛(ZnO)単結晶膜を成長させた。
成長させた酸化亜鉛単結晶膜の膜厚分布を測定したところ、膜厚分布は、基板面内分布で±2%未満と良好な結果であった。
(検証)
実施例1、2において、基板107を停止させて成膜を行った。これにより、シャワーヘッド106の機能と基板往復運動の作用を確認した。成長条件は、実施例1、2と同様にしたが、基板温度は400℃〜450℃と低温に設定した。低温成長させることにより、酸素欠損が多い酸化亜鉛膜が成膜され、色の濃淡により、膜厚分布を観察することができるためである。
その結果、酸化亜鉛膜は、II族系材料ガスの噴出口203の直下の膜厚は厚く、VI族系材料ガスの噴出口202の直下の膜厚は薄く、噴出口202,203の列に沿った縞状の膜が形成された。縞の位置は、ガスの噴出口202、203の位置と対応していた。膜厚分布を測定したところ、波状であった。縞の長手方向については、膜厚分布はほとんどなかった。
次に、基板107を実施例1,2のように往復運動させた場合、膜厚分布は消滅し、基板107の面内で均一となった。
(比較例)
比較例として、図5(d)のように噴出口を配置したシャワーヘッド130を用いて成膜を行った。すなわち、行間隔と列間隔とを等しく3mmとし、行においても列においても噴出口202と噴出口203が交互に並ぶようにした。他の構成および成膜条件は、実施形態1と同様にした。ただし、基板107は往復運動させず、停止させた。
比較例のシャワーヘッド130から噴出されたガスは、図5(c)、(d)および図27(a)に示したように、基板107の表面へ向かい、中央から外周に向かって放射状に流れた。このとき、図26のようにシャワーヘッド中心部の噴出口から噴出された材料ガスが、基板107表面を放射状に流れ、それよりも外側の位置の噴出口より噴出された材料ガスは、順次、シャワーヘッド130寄りの空間を流れた。このため、中心部の噴出口からのガスが、外側の噴出口からのガスの基板到達を妨害していた。
形成された膜厚の分布を測定したところ、図27(b)のように、中心部が厚く周辺部が薄かった。