しかしながら、上記従来の中央放射方式の縦型の気相成長装置では、使用ガス流量が多く、ガス流速も非常に大きくなり、III族材料ガスとV族材料ガスとの混合が十分に行われることなく基板101面上に到達し、不均一なガスの組成比状態で成膜が行われ、基板101面内の組成及び膜厚の均一性が悪い。これにより、半導体レーザの特性が均一にならず、歩留まりが悪いという問題点を有している。
なお、材料ガスの均一性を改善するための技術として、例えば、特許文献2〜5が開示されているが、いずれも基板の上方で材料ガスの混合を行うものである。したがって、材料ガスの混合が十分とはいえない。また、特許文献6は、基板の手前で材料ガスの混合を行っているが、2種の材料ガスが並行流となっているので、特許文献1と同様に混合が十分とはいえない。また、横型の気相成長装置と縦型の気相成長装置とでは、ガスの流れが異なり、両者に対して同じ考え方を適用することはできない。例えば、横型の気相成長装置ではガスは平行流であるが、縦型の気相成長装置では偏平中空円柱の中心から外周に向かってガスが放射され層流にはなっていないためである。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、基板面内の組成及び膜厚の均一性を向上し得る気相成長装置、及び半導体素子の製造方法を提供することにある。
本発明の気相成長装置は、上記課題を解決するために、扁平中空円柱状に形成された反応室に設けられた円形の基板保持台における円周部に配置された複数の基板に向けて該反応室の中央部からガスを導入して外周方向に向けて上記基板表面に平行に供給することにより、加熱された該基板に膜を成長させる気相成長装置において、上記反応室の中央部から導入され、かつ反応室の高さ方向に各層のガス経路を形成する複数種類のガスにおける各ガス経路の間を仕切る複数のガイド板を備えていると共に、少なくとも1つの上記ガス経路におけるガイド板は閉塞されており、かつ該閉塞されたガイド板には隣接する底面側のガス経路へ該ガスを基板の手前にて混入させる複数の開口が形成されていることを特徴としている。
上記の発明によれば、気相成長装置は、反応室の中央部から導入され、かつ反応室の高さ方向に各層のガス経路を形成する複数種類のガスにおける各ガス経路の間を仕切る複数のガイド板を備えている。また、少なくとも1つの上記ガス経路におけるガイド板は閉塞されており、かつ該閉塞されたガイド板には隣接する底面側のガス経路へ該ガスを基板の手前にて混入させる複数の開口が形成されている。
したがって、少なくとも1つのガス経路を流れるガスは、ガイド板の開口を通して隣接する底面側のガス経路へ混入する。このとき、ガス経路におけるガイド板は閉塞されているので、複数の開口を通して勢いよく底面側のガス経路へ混入される。この結果、混合が充分に行われる。
そして、このガスの混入は基板の手前にて行われる。このため、基板の上での混入であれば、基板の加熱により、ガスが互いに反応するということが起こり得るが、本発明では、そのようなことがなく、混合状態を維持して基板の表面に平行に供給される。この結果、均一なガスの組成比状態で成膜が行われる。
したがって、基板面内の組成及び膜厚の均一性を向上し得る気相成長装置を提供することができる。
また、本発明の気相成長装置では、前記円形の基板保持台の中央部には、基板保持台の円周部に配置された複数の基板表面よりも低い底面を有する凹部が形成されていると共に、前記複数の開口が形成されたガイド板は、上記凹部内に配設されていることが好ましい。
これにより、複数の開口が形成されたガイド板は、凹部内に配設されているので、ガイド板の開口を通して隣接する底面側のガス経路へのガスの混入は、凹部内で行われる。この結果、ガスの混入は、基板表面よりも下側で行われることになり、その混入されたガスは、凹部内から表面へ移動して基板表面に平行に供給される。したがって、ガスの混入から基板表面までの距離が長くなり、かつ下から上へのガス移動という複雑な搬送経路となるので、混合がより充分に行われる。また、凹部での混入においては、加熱された基板からの熱輻射も受け難いものとなる。
また、本発明の気相成長装置では、前記隣接する底面側のガス経路へガスを混入させるガス経路における両側のガイド板の先端には、該両側のガイド板を閉塞するガイド板閉塞壁が該ガイド板に垂直に設けられていることが好ましい。
これにより、少なくとも1つの上記ガス経路におけるガイド板を閉塞させる構造として、両側のガイド板の先端に形成され、かつ該ガイド板に垂直に設けられているガイド板閉塞壁にて構成するので、閉塞させるための構造が簡単である。
また、本発明の気相成長装置では、前記ガス経路を閉塞させるガイド板閉塞壁には、複数の開口が形成されていることが好ましい。
これにより、ガイド板の隣接する底面側のガス経路への複数の開口に加えて、少なくとも1つの上記ガス経路におけるガイド板における立設されたガイド板閉塞壁の開口からガスを混入させることにより、より複雑なガス拡散が得られ、下向き開口のみでは得られない、下流域での基板の成膜に効果がある。
また、本発明の気相成長装置では、前記隣接する底面側のガス経路へガスを混入させるガス経路における両側のガイド板における一方の底面側のガイド板は、ガス経路の層間隔が狭まるように、他方のガイド板に向けて傾斜部を有して上記ガス経路を閉塞していると共に、前記複数の開口は、上記傾斜部に形成されていることが好ましい。
これにより、ガイド板の傾斜部における開口からの隣接する底面側のガス経路への混入は、斜め下側に向かって行われる。したがって、分散混合がバランスよく行われ、下流域での基板の成膜に効果がある。
また、本発明の気相成長装置では、前記隣接する底面側のガス経路へガスを混入させる複数の開口が形成されたガイド板は、凹部の底面側から数えて最初のガイド板であることが好ましい。
これにより、ガイド板の開口からの隣接する底面側のガス経路へのガスの混入は、凹部の一番深いところで行われることになる。したがって、ガスの混入から基板表面までの距離が長くなり、かつ凹部の一番下から上へのガス移動という複雑な搬送経路となるので、混合がより充分に行われる。また、凹部の最下位置での混入においては、加熱された基板からの熱輻射も最も受け難いものとなる。
また、本発明の気相成長装置では、前記底面側のガイド板に設けられた複数の開口は、該ガイド板における1つの円周上又は複数の円周上に等間隔に設けられた複数の孔であることが好ましい。
これにより、円形の基板保持台における円周部に配置された複数の基板に向けて、ガイド板における1つの円周上又は複数の円周上に等間隔に設けられた複数の孔から外周方向に向けて放射状かつ均一に上記基板表面に平行に供給することができる。
また、本発明の気相成長装置では、前記底面側のガイド板に設けられた複数の開口は、1つの円周上又は複数の円周上に設けられたスリットであることが好ましい。
これにより、複数の孔に限らず、スリットであっても、円形の基板保持台における円周部に配置された複数の基板に向けて、ガイド板における1つの円周上又は複数の円周上に等間隔に設けられた複数のスリットから外周方向に向けて放射状かつ均一に上記基板表面に平行に供給することができる。
また、本発明の気相成長装置では、前記閉塞されたガイド板における少なくとも1つのガス経路には、III族の材料ガスが供給される一方、上記少なくとも1つのガス経路に隣接する底面側のガス経路には、V族の材料ガスが供給されることが好ましい。
従来、中央放射方式の縦型の気相成長装置においては、使用ガス流量が多く、ガス流速も非常に大きくなり、特に、III族材料ガスとV族材料ガスとの混合が十分に行われることなく基板面上に到達し、不均一なガスの組成比状態で成膜が行われ、基板面内の組成及び膜厚の均一性が悪く、これにより、例えば半導体の特性が均一にならず、歩留まりが悪いという問題点を有していた。
しかし、本発明においては、III族の材料ガスとV族の材料ガスとを使用する例えば半導体の成膜において、III族の材料ガスとV族の材料ガスとを基板の手前で積極的に混合させることによって、III族の材料ガスとV族の材料ガスとの均一拡散を行った後に、基板表面に供給する。
したがって、III族の材料ガスとV族の材料ガスとを均一分散させ、基板に成膜される組成比・膜厚が均一となり、例えば半導体の特性が均一となり、再現性及び歩留まりが悪いという問題点を解消できる。
また、本発明の気相成長装置では、前記閉塞されたガイド板における少なくとも1つのガス経路には、材料ガスとしてのトリメチルアルミニウム、又はトリメチルアルミニウムとトリメチルガリウムとの混合ガスが供給されていることが好ましい。
すなわち、III族の材料ガスであるトリメチルアルミニウム、又はトリメチルアルミニウムとトリメチルガリウムとの混合ガスを用いる場合には、特に、基板面内の組成及び膜厚の不均一性が発生し易い。
しかじ、本発明では、これらの材料ガスを用いる場合においても、基板面内の組成及び膜厚の均一性を向上し得る気相成長装置を提供することができる。
また、本発明の気相成長装置では、前記反応室の中央部に設けられた凹部には、導入される複数種類のガスを冷却する冷却手段が設けられていることが好ましい。
これにより、反応室の中央部に設けられた凹部において、冷却手段にて、基板からの輻射熱により温度が上昇するのを抑制することができる。
また、本発明の気相成長装置では、前記反応室の中央部に設けられた凹部と前記加熱された基板との間には断熱部材が設けられていることが好ましい。
これにより、反応室の中央部に設けられた凹部において、断熱部材にて、基板からの熱伝導により温度が上昇するのを抑制することができる。
また、本発明の半導体素子の製造方法は、上記課題を解決するために、上記記載の気相成長装置を用いて半導体素子を製造することを特徴としている。
これにより、基板面内の組成及び膜厚の均一性を向上し得る半導体素子の製造方法を提供することができる。
本発明の気相成長装置は、以上のように、反応室の中央部から導入され、かつ反応室の高さ方向に各層のガス経路を形成する複数種類のガスにおける各ガス経路の間を仕切る複数のガイド板を備えていると共に、少なくとも1つの上記ガス経路におけるガイド板は閉塞されており、かつ該閉塞されたガイド板には隣接する底面側のガス経路へ該ガスを基板の手前にて混入させる複数の開口が形成されているものである。
また、本発明の半導体素子の製造方法は、以上のように、上記記載の気相成長装置を用いて半導体素子を製造する方法である。
それゆえ、基板面内の組成及び膜厚の均一性を向上し得る気相成長装置、及び半導体素子の製造方法を提供するという効果を奏する。
本発明の一実施形態について図1ないし図14に基づいて説明すれば、以下の通りである。
本実施の形態の気相成長装置は、MOCVD(Metalorganic Chemical Vapor Deposition)にて例えば半導体に結晶成長させるために用いられるものであり、その基本構成について、図1〜図4に基づいて説明する。図1は上記気相成長装置の構成を示す概略断面図、図2(a)(b)は基板面の平面図、図3は上記気相成長装置の構成を示す一部拡大断面図、及び図4はガイド板の底面図である。
本実施の形態の気相成長装置10は、図1に示すように、縦型の気相成長装置であり、円盤状の基板保持台としてのサセプタ20と円盤状の隔壁11とを互いに水平方向に所定間隔で対向配置することにより、サセプタ20と円盤状の隔壁11との間に偏平中空円柱状の反応室2を形成したものである。
上記隔壁11の中央部には、ガス導入管12を接続したガス導入部3が設けられ、反応室2の外周にはガス排出部4が設けられている。また、隔壁11の外周はサセプタ20の周囲を囲むように屈曲しており、サセプタ20と隔壁外周壁11aとの間に下方に向かう排気通路が形成されている。したがって、図1において白抜き矢印で示すように、材料ガスは反応室2の中心から周囲へ向かって放射状に流される。このため、基板1上に形成される半導体薄膜の成長面は上向きとなっている。
上記サセプタ20の中央部分には、冷却手段としての冷却部21を配設するための円形の凹部として形成された冷却部カバー22が設けられている。上記冷却部21は、円形の冷却部カバー22の表面を200℃以下に保持するようになっている。200℃以下という温度は、材料ガスが分解しない温度として設定されている。したがって、上記冷却部カバー22は、反応室2内の円周部に配置された複数の後述する基板1の表面よりも低い底面を有する本発明の凹部として機能している。
サセプタ20には、図2(a)に示すように、基板1を保持する基板保持部である基板ホルダ23が同一円周上に複数個、等間隔で配置されている。サセプタ20は、鉛直線を回転軸として上記冷却部21と一体に、又は別体に回転するように形成されていると共に、基板ホルダ23は、サセプタ20に装着された状態で回転するように形成されている。
すなわち、円盤状のサセプタ20は、図2(a)において矢印で示すように、図示しない駆動装置により鉛直線を回転軸として回転可能である。また、筒状の各基板ホルダ23は、サセプタ20に対して周方向に沿って等間隔で形成された複数の取付穴のそれぞれに回転自在に保持されており、それぞれの外周に形成された図示しない歯が、反応室2内に固定形成された図示しない歯部と噛み合っている。これらのことにより、サセプタ20の回転に伴って、基板ホルダ23がその軸心廻りに回転し、その結果、基板ホルダ23及びその内部に設置された基板1はサセプタ20の軸心周りを自転しつつ公転する。なお、図2(b)に示すように、基板ホルダ23上には基板1が複数枚配設されていてもよい。
また、基板ホルダ23の下方には、図1に示すように、基板1を加熱するための加熱手段として、反射板であるリフレクター24に収納された複数のヒータ25がリング状に配設されている。
さらに、サセプタ20の上面は、図1に示すように、基板ホルダ23を装着する部分の内外周において内周部カバー26b及び外周部カバー26aで覆われており、基板ホルダ23の上面は、基板1を保持するための中央開口を設けた保持部カバー27で覆われている。さらに、冷却部21の上面も、前述した冷却部カバー22によって覆われている。なお、外周部カバー26aの下方には自転させるためのギヤがあるため、公転時において外周部カバー26aは固定されて動かない。これに対して、内周部カバー26bは下方の部材が公転によって動く。したがって、内周部カバー26b及び外周部カバー26aの2つは一体でなく分割されている。
これらの外周部カバー26a、内周部カバー26b、保持部カバー27及び冷却部カバー22は、石英ガラス、アルミナ、サファイア、窒化ホウ素、酸化ケイ素、炭素等で形成され、着脱が容易に行えるように設けられている。なお、外周部カバー26a、内周部カバー26b、保持部カバー27及び冷却部カバー22は、主としてサセプタ20等を保護し、上面に反応生成物が付着したときの清掃作業を容易にするために設けられるものであって、省略することも可能である。
次に、上記ガス導入管12は、小径管12a、中径管12b及び大径管12cを同心上に配置した三重管構造を有している。そして、小径管12aの内部に第1ガス導入経路3aが形成され、小径管12aと中径管12bとの間に第2ガス導入経路3bが形成され、中径管12bと大径管12cとの間に第3ガス導入経路3cが形成されている。
上記大径管12cは、ガス導入管12の最外周に位置しており、外部に露出していると共に、先端が隔壁11に接続した状態となっている。また、この大径管12cを除く小径管12a及び中径管12bにおける反応室2内の各先端部には、各第1ガス導入経路3a、第2ガス導入経路3b及び第3ガス導入経路3cを通ってそれぞれ導入されるガスを反応室2の外周方向に向けて均等にガイドするための外周が平面形状円形にてなるガイド板13a・13bがそれぞれ設けられている。
すなわち、ガイド板13a・13bは、反応室2の中央部から導入され、かつ反応室2の高さ方向に各層の第1ガス導入経路3a、第2ガス導入経路3b及び第3ガス導入経路3cを形成する複数種類のガスにおける各ガス経路の間を仕切る複数のガイド板となっている。
上記第2ガス導入経路3bにおける底面側のガイド板13aの外周部には、図3に示すように、同一円周上に複数の開口としての拡散孔14が設けられていると共に、ガイド板13aとガイド板13bとは、外周部端部でガイド板閉塞壁13cにて連結されている。
上記拡散孔14は、図4に示すように、ガイド板13aにおける1つの円周上又は複数の同心円周上に等間隔に配置された複数の円形の孔となっている。ただし、孔の形状及び配置はこの例に限定されるものではない。例えば、孔の形状は、円のみならず、三、四、五…角形等の多角形や楕円でもよい。また、図5に示すように、ガイド板13aにおける1つの円周上又は複数の同心円周上に等間隔に設けられた複数のスリット14aであってもよい。すなわち、III族系材料ガスがV族系材料ガスと十分に混合できる開口の形状及び配置であればよい。
なお、上記の説明では、ガイド板13a・13bを塞ぐガイド板閉塞壁13cは、完全にガイド板13a・13bを各先端部で塞ぐものとして形成されているが、必ずしもこれに限らない。例えば、図6〜図8に示すように、上記ガイド板13aとガイド板13bとの間を閉塞するガイド板閉塞壁13cにも複数の開口としての拡散孔15又はスリットを設けることが可能である。これにより、ガスの混合状態がさらに改善されるものとなる。
また、ガイド板13a・13bの閉塞部は、上記ガイド板13a・13bを各先端部で塞ぐための、ガイド板13aから垂直に立ち上がる上記ガイド板閉塞壁13cに限らない。例えば、図9及び図10に示すように、両側のガイド板13a・13bにおける一方の底面側のガイド板13aが、ガス経路の層間隔が狭まるように、他方のガイド板13bに向けて傾斜部13a1を有してガス経路を閉塞してもよい。この場合には、ガイド板13aの傾斜部13a1に拡散孔14が形成されることになる。なお、底面側のガイド板13aのみが傾斜部13a1を有しているのではなく、底面側のガイド板13aとは反対側のガイド板13bのみがガス経路の層間隔が狭まるように傾斜部を有していても良い。また、底面側のガイド板13aに傾斜部13a1が形成されていると共に、ガイド板13bにも傾斜部が形成されていてもよい。
次に、上記構成の気相成長装置10における第1ガス導入経路3a、第2ガス導入経路3b、及び第3ガス導入経路3cに流れるガスについて、図1に基づいて説明する。
図1に示すように、三重管構造のガス導入管12における最も外側の大径管12cと中径管12bとの間の第3ガス導入経路3cは、直角に屈曲されて隔壁11とガイド板13bとの間に連通している。このため、第3ガス導入経路3cのガスは、ガス導入部3を出た後、基板1の上方においてこの基板1の表面に平行に供給される。
この結果、第3ガス導入経路3cは、基板1に到達する前に、基板1等からの熱輻射や対流伝熱によって温度上昇し易い隔壁11の直下を通る。このため、第3ガス導入経路3cには、キャリーガスが供給される。
一方、三重管構造のガス導入管12における最も内側の小径管12a内の第1ガス導入経路3aは、直角に屈曲されてガイド板13aと冷却部カバー22との間に連通している。このため、第1ガス導入経路3aのガスは、第1ガス導入経路3aを出た後、凹部の底面から基板1の表面と同一面にまで上昇し、以降、基板1の表面に平行に供給される。このように、第1ガス導入経路3aは高温過熱される基板1の隣接部分を通過するので、この第1ガス導入経路3aには、熱分解し難いV族ガスのアンモニアが供給される。
この結果、第2ガス導入経路3bには、上記V族ガスと混合させるためのIII族系材料ガスが供給されるようになっている。
また、ガス導入部3に対向させて冷却部21を設けておくことにより、ガス導入管12及びガイド板13a・13bを冷却することができるので、ガイド板13a・13b等の温度上昇をより確実に防止できる。さらに、サセプタ20と冷却部カバー22との間に、断熱部材28を設けておくことが好ましい。これにより、ガイド板13a・13b等の温度上昇をさらにより確実に防止できる。
冷却部21は、要求される冷却能力に応じて任意の構造で形成することができるが、少なくともその外周縁が各基板1から等距離となるように、円形とすることが望ましい。上記冷却部21としては、例えば、内部を空洞とした円柱状容器に、適宜、冷却媒体を流通させる構造を採用することができ、ガイド板13a・13bの周縁を冷却するためのリング状に形成することもできる。
このような冷却部21で使用する冷却媒体は、要求される冷却能力に応じて、適宜、気体や液体を使用可能であり、冷却媒体の温度も任意に設定することができ、必要に応じてガイド板13a・13bの上面部分に対応する隔壁11を冷却するようにしてもよい。
次に、上述した気相成長装置10の化合物半導体の製造時における各ガスの導入方法等について、例えば図6に基づいて説明する。
まず、図6に示すように、反応室2内の基板ホルダ23のそれぞれに基板1を設置し、反応室2内を、ガス排出部4を通して所定の真空度に排気する。次いで、サセプタ20を回転させることにより、基板ホルダ23及び基板1を自転・公転運動させながら、基板ホルダ23内の基板1をヒータ25によって均一に加熱する。
次いで、冷却部21を作動させて冷却状態とし、基板1が所定温度(例えば750℃)まで昇温した後、その状態で、ガス導入管12の小径管12a、中径管12b及び大径管12cを通して各第1ガス導入経路3a、第2ガス導入経路3b及び、第3ガス導入経路3cに所定のガスを供給する。
上記第1ガス導入経路3aには、V族系材料ガス、例えば、水素又は窒素、アンモニア(NH3)と水素との混合ガス、アンモニア(NH3)と窒素との混合ガス、アンモニア(NH3)と水素と窒素との混合ガスを供給する。
また、第2ガス導入経路3bには、III族系材料ガス、例えば、有機金属化合物と水素との混合ガス、有機金属化合物と窒素との混合ガス、又は有機金属化合物と窒素と水素との混合ガスを供給する。上記原料ガスであるIII族系原料としては、具体的には、メチル基と結合したトリメチルガリウム(以下、「TMG」と称す)、トリメチルインジウム(以下、「TMI」と称す)、又はトリメチルアルミニウム(以下、「TMA」と称す)等のアルキル化合物を用いることができる。なお、III族系原料は通常、液体状態で反応室2外に設置されており、キャリアガスと呼ばれる水素ガスや窒素ガスを該液体中に通しバブリング状態にすることにより、これらのキャリアガスと共に配管を介して反応室2まで供給される。
さらに、第3ガス導入経路3cには、サブフローガス、例えば、アンモニアと窒素との混合ガス、アンモニアと水素との混合ガス、アンモニアと窒素と水素との混合ガスをそれぞれ供給する。上記V族系材料ガス、III族系材料ガス及びサブフローガスの供給により、反応室2内を所定のガス圧に維持する。
ところで、気相成長装置10によって、成膜される例えば発光素子の構造は、一般に、バンドギャップ制御のため、組成や構成元素が異なる多層膜構造を有しているが、各層の層厚のばらつきや組成のばらつきにより、光学特性がばらつき、場合によっては特性を大きく劣化させてしまう恐れがある。したがって、MOCVDによる結晶成長の場合、原料ガスの流し方や、基板の温度均一性が非常に重要な因子となる。
例えば、発光素子を形成する多層膜の構成の中には、アルミニウム−ガリウム−窒素からなる層(以下、「AlGaN層」と称す)があり、主に発光素子のクラッド層として用いられる層がある。これは、TMAとNH3との反応で得られる窒化アルミニウム(以下、「AlN」と称す)と、TMGとNH3との反応で得られる窒化ガリウム(以下、「GaN」と称す)の固溶体で形成された混晶層である。
したがって、この層を結晶成長させる際には、反応室にTMGとTMAとNH3とを原料ガスとして導入することになる。形成されたAlXGa1-X混晶のx値は混晶比と呼ばれ、素子特性上重要な因子であり、混晶形成時のAlとGaとの濃度比の制御、又は均一性が非常に重要となる。
上記TMG及びTMAは同じIII族原料ではあるが、それぞれ拡散速度や反応性が異なるため、同様に反応室2に導入した場合であってもその反応様態は異なることが一般に知られている。TMAは、TMGに比較して反応性が高く、温度が高い場合には、NH3と混合された時点で、空間ですぐに中間反応が始まり中間生成物を形成する。この中間生成物は、その後、熱分解が進行しAlNを形成し、基板1上で結晶を形成する場合もあるが、気流の状態や加熱状態により基板以外の反応室2の壁面に形成されたり、又はそのまま排気されたりする場合もある。
したがって、導入されたTMAの反応室2内でのガスの流れ方向の熱分解の進行具合は、装置形状やそのときの環境に非常に影響を受け易く、制御できていない場合には基板1上での形成度合の不均一を招き、混晶比のばらつきを発生させる原因となる。
一方、V族原料に用いられるNH3については熱分解し難い性質であることが一般に知られている。すなわち、NH3ガスの分解が不十分な状態で基板1に到達した場合、反応に寄与する割合、すなわち材料使用効率が低いという課題がある。
本実施の形態では、上記小径管12aから出たV族系材料ガスは、水平方向に設けられた冷却部カバー22に衝突した後にガイド板13aに沿うように基板ホルダ23側へ流れ、その一方で中径管12bから出たIII族系材料ガスは、水平方向に設けられたガイド板13aに衝突した後にガイド板13aに沿うように基板ホルダ23側へ流れ、拡散孔14・15から勢い良く噴出する。これにより、V族系材料ガスとIII族系材料ガスとが強制的に混合される。
この強制的な混合により、各成分比(特に成膜に重要なAl成分比等)が均一化された状態で基板1面へ混合ガスが供給される。
そして、これらの均一化された材料ガスが、基板ホルダ23に保持されてヒータ25で加熱されている基板1上に供給され、基板1の表面は、気相成長により膜厚や混晶比のばらつきなく薄膜される。基板1以外の領域ではこのような成膜条件は整わないので、基板ホルダ23及びそれに対向する隔壁11の内面には薄膜は形成されない。基板1上を通過したガスは、反応室2外周のガス排出部4に向かって流れ、排気通路を通って装置下方に排出される。
この結果、本実施の形態の気相成長装置10では、反応室2へのガス導入部3において、III族系材料ガスをガイド板13aに設けた拡散孔14及びガイド板閉塞壁13cの拡散孔15等から導入し、V族材料ガスと十分に混合させることにより、基板1面上での材料の成分比を均一にでき、基板1面上に成膜する組成・膜厚の均一性に優れ、しかも再現性にも優れる気相成長を得ることができる。これにより、光学特性のばらつきを低減し、歩留まりが向上した半導体レーザ素子又は発光(LED)素子等の半導体素子を提供することができる。
次に、上述した気相成長装置10を用いた具体的な例えば半導体レーザ素子の製造方法について、図11に基づいて説明する。図11は、GaN系の半導体レーザ素子50を複式的に図解した断面図である。なお、半導体素子は、必ずしも半導体レーザ素子に限らず、LED素子等の半導体素子でもよい。
上記半導体レーザ素子50の作製に際しては、図11に示すように、まず、厚さ400μmのn型GaN基板51を、MOCVD(有機金属気相堆積)装置である上記気相成長装置10内に搬入する。次に、キャリアガス(H2)を流しながらTMG(トリメチルガリウム)、NH3、及びSiH4を導入し、n型GaN基板51に約1125℃の基板温度の下でSiドープn型GaN下部コンタクト層52を厚さ4μmに成長させる。続いて、TMA(トリメチルアルミニウム)を所定流量で導入し、同じ基板温度の下で厚さ0.95μmのn型Al0.1Ga0.9N下部クラッド層53を形成する。この後、TMAの供給を停止し、同じ基板温度の下でSiドーブn型GaN下部ガイド層54を厚さ0.1μmに成長させる。
その後、TMG及びSiH4の供給を停止し、キャリアガスをH2からN2に代えて基板温度を約725℃まで下げた後に、TMI(トリメチルインジウム)及びTMGを導入し、InVGa1−VN(0≦V≦1)障壁層を成長させる。続いて、TMIの供給を所定量にまで増加させ、InWGa1−WN(0≦W≦1)井戸層を成長させる。InGaN障壁層とInGaN井戸層との形成を繰り返して交互積層構造(障壁層/井戸層/・・・井戸層/障壁層)からなる多重量子井戸を含む活性層55を形成する。InGaNの混晶からなる障壁層と井戸層との組成比及び厚さは、発光波長が370〜430nmの範囲内になるように設計され、井戸層の数は例えば3層とすることができる。
活性層55の形成後、TMI及びTMGの供給を停止して、活性層55よりも下のGaN系半導体層52〜54の成長温度よりも低い約1050℃まで基板温度を高める。ここで、キャリアガスをN2からH2に代えて、TMG、TMA、及びp型ドーピング剤のビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)を導入し、例えば厚さ18nmのMgドープp型Al0.2Ga0.8N蒸発防止層56を形成する。
次に、TMAの供給を停止し、TMGの供給量を調整して、同じ基板温度で例えば厚さ0.1μmのMgドープp型GaN上部ガイド層57を形成する。続いて、TMAを所定流量で導入してTMGの流量を調整し、同じ基板温度で例えば厚さ0.5μmのp型Al0.1Ga0.9N上部クラッド層58を形成する。そして、TMAの供給を停止してTMGの供給量を調整し、同じ基板温度で例えば厚さ0.1μmのMgドープp型GaN上部コンタクト層59を形成し、これによってエビタキシャル結晶成長を終了する。結晶成長終了後、TMG及びCp2Mgの供給を停止して基板温度を下げ、室温にてウェハを気相成長装置10から取り出す。
得られたエビタキシャルウェハは、複数のレーザ素子チップに加工される。まず、p型用電極部分の形成に際して、幅2μmのストライプ状のレジストをMgドープp型GaN上部コンタクト層59上に形成し、反応性イオンエッチング(RIE)によってリッジストライプ部60を形成する。そして、電流狭窄のためのSi02誘電体膜61を蒸着によって形成する。次いで、レジストを剥離してMgドープp型GaN上部コンタクト層59を露出させ、Pd/Mo/Auの順序で蒸着してp型用電極62を形成する。
その後、n型GaN基板51の第二主面を研磨等で削ることにより、ウェハ厚さを140μmにし、ウェハを分割し易いようにする。そして、n型GaN基板51の第二生面上にTi/A1の順序で蒸着してn型用電極63を形成する。n型用電極まで形成されたウェハは、劈開してバー状に分割され、劈開面からなる共振器端面が形成される。このとき、共振器長は、例えば500μmに設定される。その後、各バーをリッジストライプと平行にダイシングして分割し、複数のレーザ素子チップを得る。
以上のプロセスにより、図11に示すGaN系の半導体レーザ素子50が得られる。
上記構成の気相成長装置10による気相成長の効果について、図12(a)(b)及び図13に基づいて説明する。図12(a)(b)は、基板1面上(上流側マイナス、下流側プラス表記)のAlGaN膜成長時のAlN及びGaNの成長レートの分布を示す。なお、図12(a)において太線実線は本実施の形態のAlN成長速度を示し、太線破線は本実施の形態のGaN成長速度を示す。また、図12(a)において、細線実線は従来のAlN成長速度を示し、細線破線は従来のGaN成長速度を示す。また、図13は、基板面上(上流側マイナス、下流側プラス表記)におけるAlGaN膜成長時のAlの成分比の分布を示す。
さらに、図12(a)(b)及び図13に示す従来結果は、図15に示す従来装置による構成の場合の結果である一方、本実施の形態の結果は、図6に示す気相成長装置10の場合の結果である。また、図12(a)(b)及び図13の結果は、基板1が自転していない場合のシミュレーション結果である。
本実施の形態の気相成長装置10では、図6に示すように、III族系ガスを拡散孔14・15から供給させる。このため、図12(a)(b)から分かるように、V族系ガスとIII族系ガスとを十分混合させることができ、組成比ばらつきのない混合ガスを安定して基板1上に供給できるので、基板1上での成長レートも均一化される。
したがって、基板1面内での膜厚ばらつきが良好になる。また、基板1面上での成長レートに従来例のような傾きがないため、仮に基板位置がわずかにずれたとしても成長レートが変化することが無く、再現性に優れている。
また、図13に示すように、図12(a)(b)に示すAlN及びGaNの成長レートの分布と同様に、従来結果に比べて、基板1上でのAl組成比の分布が均一化される。したがって、基板1内の組成比ばらつきが良好になる。
なお、本実施の形態では、材料ガスを種類別に2分割して反応室2に導入するものとして説明したが、必ずしも2分割に限らず、例えば3分割して導入することができる。例えば、気相成長装置10aでは、図14に示すように、第1ガス導入経路3a内に円筒管12dを追加し、この円筒管12dと小径管12aとの間に第4ガス導入経路3dを形成する。第4ガス導入経路3dには、第2ガス導入経路3bに供給するIII族系材料ガスの一部を分割して流す。この構成により、III族材料ガスの使用効率を上げられるシミュレーション結果が得られている。
また、本実施の形態では、基板1を自転させると共に公転させる構造として説明したが、必ずしもこれに限らず、例えば、自転のみ又は公転のみであってもよく、基板1を回転させないものにも適用できる。加えて、各部の構造や形状は、基板の大きさやガス流量等の各種条件に応じて設計することができ、本実施の形態に示した構造、形状に限定されるものではない。
このように、本実施の形態の気相成長装置10では、反応室2の中央部から導入され、かつ反応室2の高さ方向に各層のガス経路を形成する複数種類のガスにおける各第1ガス導入経路3a、第2ガス導入経路3b、及び第3ガス導入経路3c等のガス経路の間を仕切る複数のガイド板13a・13bを備えている。また、少なくとも1つの第2ガス導入経路3bにおけるガイド板13a・13bは閉塞されており、かつ該閉塞されたガイド板13aには隣接する底面側の第1ガス導入経路3aへ該ガスを基板1の手前にて混入させる複数の拡散孔14又はスリット14aが形成されている。
したがって、少なくとも1つの第2ガス導入経路3bを流れるガスは、ガイド板13aの拡散孔14又はスリット14aを通して隣接する底面側の第1ガス導入経路3aへ混入する。このとき、第2ガス導入経路3bにおけるガイド板13a・13bは閉塞されているので、複数の拡散孔14又はスリット14aを通して勢いよく底面側の第1ガス導入経路3aへ混入される。この結果、混合が充分に行われる。
そして、このガスの混入は基板1の手前にて行われる。このため、基板1の上での混入であれば、基板1の加熱により、ガスが互いに反応するということが起こり得るが、本実施の形態では、そのようなことがなく、混合状態を維持して基板1の表面に平行に供給される。この結果、均一なガスの組成比状態で成膜が行われる。
したがって、基板1面内の組成及び膜厚の均一性を向上し得る気相成長装置10を提供することができる。
この結果、半導体素子の特性の面内での均一性に優れ、再現性にも優れる気相成長装置10を提供することができる。
また、本実施の形態の気相成長装置10では、複数の拡散孔14又はスリット14aが形成されたガイド板13a・13bは、凹部からなる冷却部カバー22内に配設されているので、ガイド板13aの拡散孔14又はスリット14aを通して隣接する底面側の第1ガス導入経路3aへのガスの混入は、凹部内で行われる。この結果、ガスの混入は、基板1表面よりも下側で行われることになり、その混入されたガスは、凹部内から表面へ移動して基板1表面に平行に供給される。したがって、ガスの混入から基板1表面までの距離が長くなり、かつ下から上へのガス移動という複雑な搬送経路となるので、混合がより充分に行われる。また、凹部での混入においては、加熱された基板1からの熱輻射も受け難いものとなる。
また、本実施の形態の気相成長装置10では、少なくとも1つの第2ガス導入経路3bにおけるガイド板13a・13bを閉塞させる構造として、両側のガイド板13a・13bの先端に形成され、かつ該ガイド板13a・13bに垂直に設けられているガイド板閉塞壁13cにて構成するので、閉塞させるための構造が簡単である。
また、本実施の形態の気相成長装置10では、ガイド板13aの隣接する底面側の第1ガス導入経路3aへの複数の拡散孔14又はスリット14aに加えて、ガイド板閉塞壁13cの拡散孔15からガスを混入させることにより、より複雑なガス拡散が得られ、下向き開口のみでは得られない、下流域での基板1の成膜に効果がある。
また、本実施の形態の気相成長装置10では、隣接する底面側の第1ガス導入経路3aへガスを混入させる第2ガス導入経路3bにおける底面側のガイド板13aは、第2ガス導入経路3bの層間隔が狭まるように、他方のガイド板13bに向けて傾斜部13a1を有して第2ガス導入経路3bを閉塞していると共に、複数の拡散孔14又はスリット14aは、傾斜部13a1に形成されているとすることができる。
これにより、ガイド板13aの傾斜部13a1における拡散孔14又はスリット14aからの隣接する底面側の第1ガス導入経路3aへの混入は、斜め下側に向かって行うことが可能である。この結果、分散混合がバランスよく行われ、下流域での基板の成膜に効果がある。
また、本実施の形態の気相成長装置10では、隣接する底面側のガス経路へガスを混入させる複数の拡散孔14又はスリット14aが形成されたガイド板13aは、凹部の底面側から数えて最初のガイド板となっている。
したがって、ガイド板13aの拡散孔14又はスリット14aからの隣接する底面側の第1ガス導入経路3aへのガスの混入は、凹部の一番深いところで行われることになる。したがって、ガスの混入から基板1表面までの距離が長くなり、かつ凹部の一番下から上へのガス移動という複雑な搬送経路となるので、混合がより充分に行われる。また、凹部の最下位置での混入においては、加熱された基板1からの熱輻射も最も受け難いものとなる。
また、本実施の形態の気相成長装置10では、円形のサセプタ20における円周部に配置された複数の基板1に向けて、ガイド板13aにおける1つの円周上又は複数の円周上に等間隔に設けられた複数の拡散孔14又はスリット14aから外周方向に向けて放射状かつ均一に基板1表面に平行に供給することができる。
また、本実施の形態の気相成長装置10では、複数の拡散孔14に限らず、スリット14aであっても、円形のサセプタ20における円周部に配置された複数の基板1に向けて、ガイド板13aにおける1つの円周上又は複数の円周上に等間隔に設けられた複数のスリット14aから外周方向に向けて放射状かつ均一に基板1表面に平行に供給することができる。
また、本実施の形態の気相成長装置10では、第2ガス導入経路3bには、III族の材料ガスが供給される一方、隣接する底面側の第1ガス導入経路3aには、V族の材料ガスが供給される。
したがって、III族の材料ガスとV族の材料ガスとを均一分散させ、基板1に成膜される組成比・膜厚が均一となり、例えば半導体の特性が均一となり、再現性及び歩留まりが悪いという問題点を解消できる。
また、本実施の形態の気相成長装置10では、第2ガス導入経路3bには、材料ガスとしてのトリメチルアルミニウム、又はトリメチルアルミニウムとトリメチルガリウムとの混合ガスが供給されていることが好ましい。
すなわち、III族の材料ガスであるトリメチルアルミニウム、又はトリメチルアルミニウムとトリメチルガリウムとの混合ガスを用いる場合には、特に、基板1面内の組成及び膜厚の不均一性が発生し易い。
しかじ、本実施の形態では、これらの材料ガスを用いる場合においても、基板1面内の組成及び膜厚の均一性を向上し得る気相成長装置10を提供することができる。
また、本実施の形態の気相成長装置10では、反応室2の中央部に設けられた凹部において、冷却部21にて、基板1からの輻射熱により温度が上昇するのを抑制することができる。
また、本実施の形態の気相成長装置10では、反応室2の中央部に設けられた凹部において、断熱部材28にて、基板1からの熱伝導により温度が上昇するのを抑制することができる。
また、本実施の形態の半導体素子の製造方法は、気相成長装置10を用いて半導体素子を製造する。これにより、基板1面内の組成及び膜厚の均一性を向上し得る半導体素子の製造方法を提供することができる。