JP5254538B2 - ケイ化ニオブを基材とした高融点金属金属間化合物複合材及びその関連する物品 - Google Patents

ケイ化ニオブを基材とした高融点金属金属間化合物複合材及びその関連する物品 Download PDF

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Description

本発明は、ニオブとケイ素とを含む耐熱組成物の分野全般に位置付けることができる。
タービン及びその他のタイプの高性能装置は、非常に厳しい環境内で作動するように設計される。典型的なガスタービンエンジンにおいては、空気は、圧縮機内で加圧され、燃焼器内で燃料と混合されかつ点火されて、高温の燃焼ガスを発生する。このガスは、タービンノズル及びロータブレードを含む1つ又はそれ以上の段を有する高圧タービン(HPT)を通って下流方向に流れる。ガスは次に、典型的にはそれぞれのタービンノズル及びロータブレードを備えた複数段を含む低圧タービン(LPT)に流れる。
ガスタービンエンジン内で使用することになる特定の金属の選択は、その大部分はエンジン構成部品の予測温度露出と共に、その他の規定要件、すなわち強度、耐クリープ性、耐酸化性、耐環境性、重量要件などに応じて決まる。ニッケル基超合金は、金属の温度が約1150℃もの高温になるのが一般的であるようなタービンの「高温」セクションのためにしばしば選択される材料である。ニッケル合金よりも軽量であるチタン合金は、温度がより低い、例えば約600℃よりも低いようなタービンエンジンの圧縮機セクションにおいて使用されることが多い。
ニッケル基超合金は、今なお多くのタービン構成部品の標準的な材料であるが、一層高い温度性能を備えた材料に対する要望が多くの文献に記載されてきた。これらの材料の実例には、高融点金属金属間化合物複合材(RMIC)がある。これらの複合材の多くは、ニオブ(Nb)とケイ素(Si)とを基材としており、例えば米国特許第5,932,033号(Jackson及びBewlay)、第5,942,055号(Jackson及びBewlay)及び第6,419,765号(Jackson、Bewlay及びZhao)に記載されている。これらの材料は通常、多相微細構造を有し、また多数の非常に望ましい特性を有する。例えば、それらは、多くのニッケル合金と比べて、高温強度、低温靱性及び比較的低い密度を組合せていることが多い。さらに、RMICは、しばしば最大約1700℃までの融点を有する。これらの理由により、そのような材料は、温度がニッケル基超合金の現在の稼働限界を超えるような用途における使用のために非常に有望である。
上述のガスタービンエンジンは、その各々が作動中に異なる環境に曝される多数の構成部品を含む。従って各構成部品は、強度、耐クリープ性、耐酸化性、靱性、耐破壊性、耐疲労性、耐磨耗性などに関する異なる要件を有することが多い。多くのRMIC材料は、しばしばこれらの特性の1つ又は2つにおいて優れているが、それらは、その他の特性に対する規格を常に満たしているとは限らない。
一例を挙げると、これらの複合材は一般的に、幾つかの有益な機械的及び化学的特性を有するが、それらは、その耐酸化性を強度、靱性及び耐クリープ性と十分にバランスさせることはできない。具体的実例を挙げると、RMICベースの翼形部材料の成分は、耐酸化性を増大させるように調整することができるが、しばしば強度及び耐クリープ性が犠牲にされる。別の実例を挙げると、幾つかの有望なRMIC複合材は、例えば約1000℃以上のような高温において良好な強度、低い密度及び高い剛性を示す。しかしながら、それらの同一材料は、例えば低圧タービンセクションとしばしば関係のある温度条件のような一層低い温度(約600℃〜1000℃)において、不十分な耐損傷性及び非常に低い破壊靭性しか示すことができない。
米国特許第6,676,381号公報 米国特許第6,521,356号公報 米国特許第6,497,968号公報 米国特許第6,447,623号公報 米国特許第6,428,910号公報 米国特許第6,419,765号公報 米国特許第6,409,848号公報 米国特許第6,059,015号公報 米国特許第5,942,055号公報 米国特許第5,932,033号公報 米国特許第5,833,773号公報 米国特許第5,741,376号公報 米国特許第5,721,061号公報 米国特許第4,980,244号公報 米国特許第4,213,497号公報 米国特許出願第10/263,527号公開公報 米国特許出願第11/029,666号公開公報 米国特許出願第10/932,128号公開公報
以上の説明を考慮すると、選択した温度基準の用途における改善した特性バランスを示す付加的なケイ化ニオブ合金は当技術分野において歓迎されることになることが、明らかであろう。一般的に、それらの材料は、良好な低温靭性と良好な高温強度及び耐クリープ性とを示すべきである。例えば約600℃〜1000℃のような中間作動温度において良好な性能をもたらす材料もまた、大きな興味があるものと言える。さらに、これらの材料は、タービン構成部品に普通使用されるニッケル基超合金の多くよりも軽量であるべきである。
本発明の1つの実施形態は、耐熱組成物に関し、本耐熱組成物は、ニオブと、ケイ素と、チタンと、レニウム及びルテニウムから成る群から選択された素とを含む。全原子パーセントに基づいて、本組成物内のケイ素の量は少なくとも約9原子%であり、また存在するチタンの量は約26原子%よりも少ない。
別の実施形態は、金属Nb基相と少なくとも1つの金属ケイ化物相とを含む微細構造を特徴とする耐熱組成物に関する。本組成物は、
約9原子%〜約25原子%のケイ素、
約5原子%〜約25原子%のチタン、
約1原子%〜約30原子%のレニウム、
約1原子%〜約25原子%のクロム、
約1原子%〜約20原子%のアルミニウム、
最大約20原子%までのハフニウム、
最大約30原子%までのルテニウム、
最大約30原子%までの、タングステン、タンタル及びモリブデンから選択された少なくとも1つの金属、並びに
残部のニオブ、を含む。
さらに別の実施形態は、タービンエンジン構成部品に関し、本タービンエンジン構成部品は、ニオブと、ケイ素と、レニウム又はルテニウムの少なくとも1つとの合金を含む材料で形成される。全原子パーセントに基づいて、この合金中に存在するケイ素の量は少なくとも約9原子%であり、またチタンの量は約26原子%よりも少ない。
本発明の様々な特徴に関する更なる詳細は、本明細書の以下の部分において明らかになる。
本発明のケイ化ニオブ材料は、「ニオブケイ化物ベース組成物」又は「Nb基合金」と呼ばれることもある。それらは典型的には、上で参考文献として挙げた特許の幾つかに記載されているように、金属Nb基相と金属ケイ化物相とを含む微細構造を特徴とする。(これらの材料は、代わりにケイ化ニオブ「複合材」とも呼ばれる。)
ケイ素は、少なくとも約9原子%の量で存在する。幾つかの特殊な実施形態では、ケイ素は、約12原子%よりも多い量で存在するが、幾つかの非常に特殊な実施形態では、ケイ素は、約16原子%よりも多い量で存在する。これらの比較的高いレベル(つまり、約9原子%よりも多い)のケイ素は、複合材料の強度及び耐酸化性の両方を高めることができる。
最大レベルに関しては、複合材中のケイ素の量は通常、約25原子%よりも少ないか又はそれに等しい。幾つかの特殊な実施形態では、ケイ素は、約9原子%〜約19原子%の範囲内で複合材中に存在する。幾つかの特に好ましい実施形態では、ケイ素は、約9原子%〜約14原子%の範囲内で存在する。ケイ素の選択量は、多様な因子に応じて決まり、特定の最終用途の性能要件が最も重要である。
上に述べたように、ケイ化ニオブ材料はまた、チタンを含む。チタンの存在は、金属相の固有延性を改善する。しかしながら、本発明の場合には、チタンのレベルは、全原子パーセントに基づいて、約26原子%よりも低くすべきである。幾つかの特殊な実施形態では、チタンのレベルは、約23原子%よりも高くない。チタンの低いレベルは、靱性(延性)特性に加えて、その複合材の高温強度及び比較的高い融点を維持するために重要なものとなる可能性がある。チタンの低いレベルはまた、その後の鋳造工程時における望ましくないチタンの偏析、つまり凝固時における溶融液内での偏析を防止することができる。通常、チタンのより低いレベルは、少なくとも約5原子%である。幾つかの特殊な実施形態では、存在するチタンの量は、少なくとも約10原子%である。幾つかの特に好ましい実施形態では、チタンは、約15原子%〜約25原子%の範囲内のレベルで存在する。
ケイ化ニオブ材料はさらに、レニウム及びルテニウムから成る群から選択された少なくとも1つの元素を含む。ニウム及びルテニウムは、ケイ化ニオブ材料を著しく強化すると同時に、さらに許容可能な延性をもたらすそれらの能力の故に、特に重要である。各元素の量(存在する場合に)は通常、約1原子%〜約30原子%の範囲内にあり、より多くの場合には約1原子%〜約15原子%の範囲内にある。これら元素の各々の最も適正な具体的レベルは、上に述べた因子に応じて決まることになる。
レニウムは、幾つかの実施形態において特に好ましい耐熱(高融点)元素である。一例を挙げると、レニウムの存在は、複合材内のニオブ相の引張強度及びクリープ強度を大きく向上させることができる。上に述べたより広い範囲内において、レニウムの好ましい範囲は、多くの場合約1原子%〜約15原子%である。特に好ましい範囲は、約1原子%〜約12原子%である。
ケイ化ニオブ組成物はさらに、少なくとも1つの付加的白金族金属を含むことができる。レニウム及びルテニウムに加えて、この類は、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)及びパラジウム(Pd)を含む。これらの白金族金属は、強度(例えば、引張強度)、耐酸化性、成形性、延性、靱性、耐疲労性及び耐クリープ性のような様々な特性を高めるために使用することができる。
付加的白金族金属のレベルは、例えばそれらが上に述べた特性と関係する時、最終用途要件に応じて、大きく変えることができる。一般的に、各金属は通常、約1原子%〜約30原子%の範囲内で存在する。幾つかの好ましい実施形態では、その範囲は、約1原子%〜約15原子%である。
幾つかの実施形態では、ケイ化ニオブ組成物はさらに、ハフニウム、クロム及びアルミニウムから成る群から選択された少なくとも1つの元素を含む。これら元素の各々の選択及び選択量は、様々な因子に応じて決まる。それらの因子は、主として特定の最終用途の性能要件に関係している。
ハフニウムは、Nb基金属相の固溶体強化剤として働くことができる。ハフニウムはまた、金属相の内部酸化を減少させると共にクリープ性能を向上させることができる。それが存在する場合、ハフニウムのレベルは通常、組成物の全原子パーセントに基づいて約1原子%〜約20原子%の範囲内にある。幾つかの好ましい実施形態では、ハフニウムは、約2原子%〜約15原子%の範囲内のレベルで存在する。幾つかの特に好ましい実施形態では、ハフニウムのレベルは、約2原子%〜約10原子%である。
クロムは通常、耐酸化性を向上させるために存在する。これらのケイ化ニオブ組成物の場合、クロムの存在は、米国特許第5,942,055号(Jackson他)に記載されているように、ケイ素改質クロム基ラーベス型相の形成を促進することができ、この米国特許は、参考文献として本明細書に組み入れる。ラーベス相の存在により、耐酸化性に関して望ましい特性とすることができる。
それが存在する場合、クロムのレベルは通常、組成物の全原子パーセントに基づいて約1原子%〜約25原子%の範囲内にある。幾つかの好ましい実施形態では、クロムは、約2原子%〜約15原子%の範囲内のレベルで存在する。さらに、幾つかの特に好ましい実施形態では、クロムは、約2原子%〜約10原子%の範囲内のレベルで存在する。
上に述べたように、ケイ化ニオブ組成物中には、アルミニウムが存在することができる。アルミニウムもまた、耐酸化性を向上させることができる。それが存在する場合、アルミニウムのレベルは通常、組成物の全原子パーセントに基づいて約1原子%〜約20原子%の範囲内にある。幾つかの好ましい実施形態では、アルミニウムは、約2原子%〜約15原子%の範囲内のレベルで存在する。幾つかの特に好ましい実施形態では、アルミニウムは、約2原子%〜約10原子%の範囲内のレベルで存在する。
ケイ化ニオブ組成物はまた、タングステン(W)、タンタル(Ta)及びモリブデン(Mo)から成る群から選択された少なくとも1つの元素を含むことができる。これらの元素は、多くの場合、金属相の引張強度と、金属相及び金属間化合物相の両方のクリープ強度とを増大させるのに役立つ。しかしながら、それらの存在はまた、特にタンタル及びタングステンの場合に、より高密度の合金製品を生じさせることができる。さらに、一定のレベルにおいて、これらの合金は、耐酸化性に悪影響を及ぼす可能性がある。従って、これら元素の各々の適正量は、様々な最終用途要件に応じて決まることになる。
典型的には、タングステン、タンタル及びモリブデンは、組成物の全原子パーセントに基づいて約30原子%よりも低いレベルで個々に存在する。好ましい実施形態では、それら(つまり、それらの1つ又はそれ以上)は、約1原子%〜約20原子%の範囲内のレベルで存在する。幾つかの特に好ましい実施形態では、それらは、約1原子%〜約10原子%の範囲内のレベルで存在する。1つの族として、それらの全レベルは通常、約30原子%よりも低く、またより多くの場合には約20原子%よりも低い。
幾つかの実施形態では、この耐熱組成物はさらに、少なくとも1つの希土類元素、つまりランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウムを含む。(本開示の目的では、イットリウムはまた、希土類の一部であると考えられる。)希土類元素はさらに、耐酸化性(例えば、内部耐酸化性)及び親成分に対する酸化物スケールの付着を改善することができる。それらはまた、延性も向上させることができる。
希土類元素は通常、比較的低レベル、例えば組成物の全原子パーセントに基づいて約10原子%よりも低いレベルで使用される。好ましい実施形態では、それが含まれている場合には、各希土類元素は、約0.1原子%〜約5原子%の範囲内のレベルで存在する。幾つかの実施形態の好ましい希土類元素は、イットリウム、テルビウム、ジスプロシウム及びエルビウムである。
多数のその他の元素もまた、耐熱組成物中に含むことができる。それらの実施例には、ホウ素(B)、炭素(C)、ゲルマニウム(Ge)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、錫(Sn)、窒素(N)、鉄(Fe)又はインジウム(In)が含まれる。これらの元素は通常、組成物の全原子パーセントに基づいて約0.1原子%〜約15原子%の範囲内のレベルで使用される(個々に)のが普通であるが、ジルコニウムのレベルは、約25原子%もの高さにすることができる。これらの元素の存在は、1つ又はそれ以上の特性を高める。例えば、ホウ素のような格子間侵入型元素は、耐酸化性を向上させることができる。さらに炭素は、引張強度及び耐クリープ性を向上させることができる。窒素の添加は、係属中の特許出願第10/932,128号(RD−27,311−1)に記載されているように、合金中のNbSi相を安定化させるのに役立つことができる。(この特許出願は、Bernard Bewlay他により2004年9月1日に出願されたものであり、参考文献として本明細書に組み入れる。)これらの元素の幾つかはまた、この耐熱製品中の1つ又はそれ以上の相の安定温度範囲を上昇させることができる。
組成物中の全原子パーセントに基づいたこれらの元素の非限定的な例示的範囲は、次の通りである。
B:最大約9原子%まで、
C:最大約9原子%まで
Ge:最大約12原子%まで、
Zr:最大約25原子%まで、
V:最大約7原子%まで、
Sn:最大約6原子%まで、
N:最大約10原子%まで、
Fe:最大約12原子%まで、
In:最大約6原子%まで。
さらに、例えば商業的供給される合金中には、或いは処理法によって、不純物レベルの微量のその他の元素が不可避的に存在することは、当業者には明らかである。それら不純物レベルの添加物もまた、それらが本明細書に記載した組成物の特性を損わない限り、本発明の一部分と考えることができる。
以下に示す表は、本発明の技術的範囲内に属し、かつ幾つかの実施形態において好ましいものであるより具体的な組成物の幾つかをリストアップしている。全ての量は、原子%としてのものでありかつ組成物全体の100原子%に基づくものである。(複数の元素が、例えば「Re、Ru」及び「W、Ta、Mo」のように、所定の組成物の単一行内にリストアップされている場合には、その組成物中には1つ又はそれ以上の元素が存在することができることと理解されたい。)さらに、これらの組成物は、その他の元素も含むことができる。
表1
(I)
Si−約9%〜約25%
Ti−約10%〜約25%
Re、Ru−約1%〜約30%(合計)
Hf−約1%〜約10%
Cr−約1%〜約25%
Al−約1%〜約20%
Sn−約0.1%〜約6%
PGM**−約1%〜約10%(PGMの合計)
W、Ta、Mo−約2%〜約10%(W、Ta、Moの合計)
Nb−残部(バランス)
(II)
Si−約9%〜約18%
Ti−約10%〜約25%
Re、Ru−約1%〜約30%(合計)
Hf−約1%〜約10%
Cr−約1%〜約25%
Al−約1%〜約20%
Sn−約0.1%〜約6%
PGM**−約1%〜約10%(PGMの合計)
W、Ta、Mo−約2%〜約10%(W、Ta、Moの合計)
Nb−残部
(III)
Si−約9%〜約14%
Ti−約10%〜約25%
Re−約1%〜約15%
Hf−約1%〜約10%
Cr−約2%〜約15%
Al−約2%〜約15%
Sn−約0.1%〜約6%
PGM(a)−約1%〜約12%
W、Ta、Mo−約2%〜約10%(W、Ta、Moの合計)
Nb−残部
(IV)
Si−約9%〜約18%
Ti−約15%〜約25%
Re−約1%〜約15%
Hf−約1%〜約10%
Cr−約2%〜約10%
Al−約2%〜約10%
Zr−約2%〜約15%
Fe−約0.1%〜約5%
Sn−約0.1%〜約6%
C−約0.1%〜約5%
Nb−残部
(V)
Si−約9%〜約14%
Ti−約15%〜約25%
Re−約1%〜約12%
Hf−約1%〜約10%
Cr−約2%〜約10%
Al−約2%〜約10%
Zr−約2%〜約15%
Fe−約0.1%〜約5%
Sn−約0.1%〜約6%
C−約0.1%〜約5%
Nb−残部
*全ての量は、原子パーセントによるものである。
**PGM=Re及びRuを除く白金族金属。
(a)組成物IIIのPGM=Reを除いた白金族金属。

本発明のケイ化ニオブ合金は、多相微細構造を特徴とすることもある。一般的に、微細構造は、金属ニオブ基相と化学式MSi又はMSiの少なくとも1つの金属ケイ化物相とを含み、ここでMは、Nb、Hf、Ti、Mo、Ta、W、白金族金属及びそれらの組合せから成る群から選択された少なくとも1つの元素である。非常に多くの場合、金属ケイ化物相は、NbSi相又はNbSi相、或いはこれら2つの相の組合せを含む。本明細書に記載した合金の幾つかは、その他の相も含む。例えば、それら合金はさらに、ケイ素で改質されたクロム基ラーベス型相をさらに含むことができる。前述したように、そのような相は、耐酸化性を増進させる。
耐熱組成物で作られた合金中の相及び元素成分の選択は、特定の最終用途での使用に重要な特性のバランスを達成することを目標とする。主要な特性は、前述した通りであって、例えば強度(破壊強度及び破断強度)、靱性、密度、耐酸化性及び耐クリープ性である。米国特許第5,833,773号に記載されているように、上述した元素の全ては、合金の異なる相間で様々な程度に区分化される。この実施例では、レニウム及びルテニウム(特にレニウム)は、それらが存在している場合には、ケイ化物相にではなく、主として複合材の金属相、つまりニオブ固溶体に区分化される傾向があることが判明した。このような区分化は、ベータ相を強化し、また複合材のクリープ性能を向上させる。
当業者は一般的に、本発明の耐熱組成物及び合金を調製する方法に精通している。調製方法の非限定的な実施例は、以下の特許、すなわち米国特許第6,419,765号(Jackson他)、第5,833,773号(Bewlay他)及び第5,741,376号(Subramanian他)の実施例に記載されており、これらの米国特許は全て参考文献として本明細書に組み入れる。多くの場合、元素の形態をした合金成分は、アーク溶解、電子ビーム溶解、プラズマ溶解及び誘導スカル溶解のような適当な方法により、るつぼ内で溶解することによって混合される。しかしながら、合金組成物を調製するのに、その他の方法(又は、複数の方法の組合せ)も使用することができる。例えば、粉砕/摩滅又は微粒化(例えば、ガス微粒化)のような粉末冶金法を使用することができ、さらに物理蒸着(PVD)又は化学蒸着(CVD)のような蒸着法を使用することもできる。
この合金製品は、様々な方法によって所望の物品に加工及び成形することができる。例えば、溶融させた合金製品は、適当な装置内で鋳造することができる。鋳造のためのモールド組立体は、当技術分野においてよく知られている。その一例が、米国特許第6,676,381号(Subramanian他)に記載されており、この特許は、参考文献として本明細書に組み入れる。しかしながら、多くの他の鋳造法も使用することができる。さらに当業者は、あらゆる特定の鋳造法に関する様々な作業の詳細に精通している。幾つかの好ましい実施形態では、溶融金属は、方向性凝固(DS)法によって凝固される。DS法は、当技術分野においてよく知られており、また例えば米国特許第6,059,015号及び第4,213,497号(Sawyer)に記載されており、これら特許は、参考文献として本明細書に組み入れる。
様々なその他の方法(単独又は組合せの)もまた、合金製品を加工処理するために使用することができる。非限定的な実施例には、押出し(例えば、熱間押出し)、鍛造、熱間等静圧圧縮成形及び圧延が含まれる。当業者は、これらの合金の適当な加工熱処理に関する詳細に精通している。
本発明のケイ化ニオブ組成物は、様々な構成部品に成形することができる。それらの多くは、例えば地上設置式タービン、船舶用タービン及び航空用タービンのようなタービンにおいて使用することができるが、タービン以外の使用も可能である。これらの構成部品は、選択した作動温度での強度、延性及び耐クリープ性が増強されることにより大きな利点を得ることができる。さらにケイ化ニオブ材料の使用により、伝統的なニッケル基超合金と比べて、遥かに高い温度性能が得られる。従って、本発明の別の実施形態は、タービン構成部品を対象とする。構成部品の非限定的な具体的実施例には、バケット、ノズル、ブレード、ロータ、ベーン、ステータ、シュラウド、燃焼器及びブリスクが含まれる。
タービンエンジン部品及びその他のタイプの構成部品は、1つ又はそれ以上の保護皮膜で覆われることが多い。これらの皮膜は、当技術分野において公知であり、また多くの参考文献に記載されている。それらの非限定的な実例としては、米国特許第4,980,244号(Jackson)、第5,721,061号(Jackson他)、第6,497,968号(Zhao他)及び第6,521,356号(Zhao他)があり、これらの特許全ては、参考文献として本明細書に組み入れる。これら皮膜の多くは、下にある構成部品の耐酸化性を向上させる耐環境性皮膜である。(耐磨耗性のようなその他の目的を達成するために、その他のタイプの皮膜を施工することもできる。)
多くの場合、ケイ化ニオブ基体のための有用な耐酸化性皮膜は、米国特許第6,521,356号に記載されているように、ケイ素、チタン、クロム及びニオブを含む。幾つかのこのタイプの組成物は、約43〜約67原子%のケイ素、約2〜約25原子%のチタン、約1〜約25原子%のクロム及び残部のニオブを含む。多くのその他の成分も、組成物中に組み入れることができる。その非限定的な実施例には、ホウ素、錫、鉄、ゲルマニウム、ハフニウム、タンタル、アルミニウム、タングステン及びモリブデンが含まれる。
別の実施例としては、クロム、ルテニウム及びアルミニウムを基材とした皮膜もまた、ケイ化ニオブ構成部品を効果的に保護するために使用することができる。このタイプの実施例は、参考文献として挙げたJackson特許、すなわち米国特許第4,980,244号に見出すことができる。これらの皮膜の多くは、約32原子%〜約62原子%のクロム、約19原子%〜約34原子%のルテニウム及び約19原子%〜約34原子%のアルミニウムを含む。これらの皮膜はまた、イットリウム、鉄、ニッケル及びコバルトのような1つ又はそれ以上の元素を含むことができる。
耐酸化性を増進させるその他の皮膜は、ケイ素−鉄−クロム合金を基材としたものである。それらの具体的実施例は、米国特許第5,721,061号(Jackson他)に記載されている。例えば、幾つかの実施形態は、(重量パーセントで)約26%〜約32%の鉄、約24%〜約30%のクロム及び残部のケイ素を含む材料を考えている。幾つかの場合では、これらのタイプの皮膜は、基体を覆って施工した後に熱処理される(例えば、約1250℃〜約1400℃で)。Jackson他によって記載されているように、熱処理は、外層と、該外層と基体材料との間の相互作用層とを含む皮膜を生じる。相互作用層は、1つ又はそれ以上の金属ケイ化物相を含み、これらの相が皮膜全体の保護能力をさらに高める。
保護皮膜の厚さは、多くの因子に応じて大きく変えることができる。幾つかの特殊な実施形態では、皮膜は、約10ミクロン〜約400ミクロンの厚さを有する。さらにこの皮膜は、様々な方法によって施工することができる。その非限定的な実施例には、プラズマ蒸着法(例えば、鉄プラズマ蒸着法)、真空プラズマ溶射法、高速酸素フレーム(HVOF)法、PVD法及びCVD法が含まれる。材料はまた、皮膜成分を含む適当なスラリー中に構成部品を浸漬し、その後1つ又はそれ以上の熱処理を行うことによって、施工することもできる。さらに、これらの堆積法の様々な組合せも使用することができる。
上記の材料の多くは、ケイ化ニオブ構成部品に対する主要な保護皮膜として機能することができる。しかしながら、多くの場合、これらの皮膜は、ケイ化ニオブ基体と上にあるセラミック皮膜との間で使用される。(従って、これらの皮膜はまた、ボンディング層として機能することができる。)セラミック保護皮膜の1つの実施例は、例えばジルコニア、安定化ジルコニア(例えば、イットリア安定化の)、ジルコン、ムライト及びそれらの組合せのような材料並びに同様な特性を有するその他の耐熱材料で形成された皮膜のような断熱皮膜(TBC)である。これらの皮膜は、当技術分野においてよく知られており、また例えば前に参考文献として挙げたZhao他の特許、すなわち米国特許第6,521,356号に記載されている。
セラミック皮膜は、前に列記した方法の多くによって施工することができ、下にあるケイ化ニオブ構成部品に対して高い付着性を有する。セラミック皮膜の厚さは、多くの因子に応じて大きく変えることができる。通常、セラミック皮膜は、約10ミクロン〜約600ミクロンの範囲内の厚さを有する。
本発明の好ましい実施形態に関して説明してきたが、本発明の技術思想から逸脱せずに、当業者は別の実施形態を思い付くことができる。従って、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定されることになることを理解されたい。上に述べた特許、記事及び論文の全ては、参考文献として本明細書に組み入れている。

Claims (7)

  1. 9原子%〜25原子%のケイ素と、5原子%〜25原子%のチタンと、1原子%〜30原子%のレニウムと、1原子%〜25原子%のクロムと、1原子%〜20原子%のアルミニウムと、20原子%以下のハフニウムと、30原子%以下のルテニウムと、30原子%以下の、タングステン、タンタル及びモリブデンから選択される少なくとも1種の金属とを含み、残部のニオブ及び不可避不純物からなる耐熱組成物であって、金属Nb基相と、化学式M 3 Si又はM 5 Si 3 (式中、Mは、Nb、Hf、Ti、Mo、Ta、W、白金族金属及びそれらの組合せから成る群から選択される少なくとも1種の元素である。)の少なくとも1つの金属ケイ化物相とを含む微細構造を特徴とする、耐熱組成物
  2. レニウム及びルテニウム以外の少なくとも1種の白金族金属をさらに含む、請求項1記載の耐熱組成物。
  3. 少なくとも1の希土類金属をさらに含む、請求項1又は請求項2記載の耐熱組成物。
  4. ホウ素、炭素、ゲルマニウム、ジルコニウム、バナジウム、錫、窒素、鉄及びインジウムから成る群から選択された少なくとも1の元素をさらに含む、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の耐熱組成物。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の耐熱組成物を含む材料で形成されタービンエンジン構成部品。
  6. 少なくとも1つの保護皮膜によって少なくとも部分的に覆われた、請求項記載のタービンエンジン構成部品。
  7. 前記保護皮膜が、それ自体が断熱皮膜によって覆われた耐酸化性皮膜である、請求項記載のタービンエンジン構成部品。
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