JP5252595B2 - チタンシリコンカーバイドの製造方法 - Google Patents
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チタンシリコンカーバイドの合成にはいろいろな方法が行われてきた。近年は、チタン(Ti)、ケイ素(SiC)、炭化チタン(TiC)粉末、あるいはチタン(Ti)、炭化ケイ素(SiC)、炭化チタン(TiC)粉末を原料粉末とし、グラファイトからなるダイスに原料粉末を充填し、パルス通電による加圧焼結法によって製造する方法が行われている。
これに対し、原料粉末を加圧して形成した圧粉体を常圧下で焼結させることができれば、取り扱いが容易で生産性を向上させることが可能である。しかしながら、チタンシリコンカーバイドの原料粉末を成形して得た圧粉体を単に、常圧下で加熱したのでは、反応熱や反応ガス等によって、焼結体が割れたり欠けたりして確実に焼結できないという問題や、焼結体の強度の問題で実用レベルに達しないという問題があった。
また、前記圧粉体を焼結させる工程においては、真空炉を用いて常圧焼結させる方法が有効に利用できる。
また、前記Ti粉末として粒径45μmのTi粉末を使用し、前記Ti繊維として換算直径20μmのTi繊維を使用することにより好適にチタンシリコンカーバイドの焼結体を得ることができる。
チタンシリコンカーバイドの焼結に用いる原料粉末として、Ti粉末(トーホーテック株式会社、純度99%、粒径45μm以下)と、SiC粉末(高純度化学株式会社、純度99%以上、粒径2〜3μm)と、C粉末(高純度化学株式会社、純度99.9%、粒径20μm)を用い、これに長さ10mmに切断したTi繊維(ベキニット株式会社、換算直径20μm)を加えてチタン繊維混合粉末とした。
各々の粉末は、配合比がチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)のモル比に一致するように、Ti:SiC:C=3:1:1となるように混合した。
SKD製容器に、容器体積に対して原料粉末を10%投入し、三軸方向加振型ボールミルを使用し、アルゴン雰囲気中で、300rpm、24時間の条件で混合操作を行った。
次いで、この混合操作を行った混合粉とTi繊維とを混合する。SUS製の2枚刃をもつ粉砕機に混合粉とTi繊維とを投入し、大気中で、20,000rpm、120秒の条件で切断混合し、チタン繊維混合粉末を調製した。
次に、上述した方法により調製したチタン繊維混合粉末と、混合粉末(チタン繊維を含まないもの)を用いて圧粉体を形成した。
圧粉体は、離型剤として内面にグラファイトを塗布したSKD金型にチタン繊維混合粉末、あるいは混合粉末を充填し、万能試験機(株式会社島津製作所、AG-IS 250kN)を用いて、加圧力500MPaの一軸荷重により、φ20×h40mm(円柱状)の圧粉体を作製した。チタン繊維を混合させたチタン混合粉末を用いたサンプルは、いずれも欠け等のない完全は円柱状に成形された。一方、チタン繊維を含まない混合粉末から形成した圧粉体は端面に欠けが見られ、チタン繊維を混合させることが圧粉体の成形性を向上させる上で有効であることが確かめられた。また、圧粉体の外観からもチタン繊維を混合させたサンプルは緻密で滑らから外面に仕上がることを確かめた。
上記方法により得られた圧粉体を焼結させる前に、乾燥炉を用いて、100℃、24時間の条件で圧粉体を乾燥させた。
次いで、乾燥させた圧粉体を小型高温真空炉(株式会社アクティブ、ACA-050)を用いて焼結させた。焼結条件は、真空度0.01Pa、焼結温度1500℃、焼結時間2時間、昇温速度6℃/min、降温速度20℃/minである。サンプルは加圧せず、真空炉内に収納して常圧による焼結である。
また、上記実験においては高温真空炉を用いて常圧焼結方法によってチタンシリコンカーバイドを得ている。常圧焼結方法によって焼結体を得る方法は、加圧用の金型が不要であり、生産性を向上させる上できわめて有効である。
上記方法によって得られた5種類の焼結体のサンプルについて、X線回折試験を行った。図2にX線回折パターンを示す。チタン繊維を含まないサンプルと、チタン繊維を含むサンプルともに、Ti3SiC2とTiCの鋭いピークが確認できる。TiCの含有率が低く、高純度のTi3SiC2が得られている。
焼結体中のTiCの含有量をより高精度に解析するため、RIR法によってTiC含有率の定量を行った。表1にその解析結果を示す。
図3は、5種類の焼結体について、見掛け密度(Apparent Dencity:g/cm3)、嵩密度(Bulk
Dencity:g/cm3)、開気孔率(Open prosity:%)を測定した結果を示す。図中の破線はチタンシリコンカーバイドの理論密度である。
この密度測定は、JIS規定:ファインセラミックスの焼結体密度、開気孔率の測定方法に準拠して行った。焼結体から切り出した10×10×5mmの試験片を使用し、飽水方法として真空法、媒液として純水を使用して測定を行った。
図3に示す測定結果は、焼結体サンプルの見掛け密度はチタンシリコンカーバイドの理論密度の95%であり、開気孔率が約45%で、焼結体は連続孔を有した多孔質な材料であることがわかる。見掛け密度、嵩密度、開気孔率とも、Ti繊維の置換量によって大きな変化はない。
図4は、ビッカース硬さを測定した結果をグラフに示したものである。横軸が、Ti粉末を置換したTi繊維の置換量(wt%)である。ビッカース試験は、JIS規定:ビッカース硬さ試験方法に準拠して行った。試験荷重は49.03Nである。
図4に示す試験結果は、Ti繊維の置換量が増加するとともにビッカース硬さが向上する傾向を示している。ただし、図4に示す測定値は、HIP法のよって作製されたチタンシリコンカーバイドのビッカース硬さ4GPaと比較すると大きく下回っている。本実験で得られた焼結体は多孔質のためである。
図5は、焼結体サンプルの熱膨張係数を測定した結果をグラフに示したものである。
10×5×5mmの試験片を使用し、圧縮荷重100mNとし、大気中において、昇温速度2℃/minとして、20℃から550℃まで昇温させ、膨張量を測定した。
図5に示す測定結果は、Ti繊維の置換量によって熱膨張係数が大きく変化しないことを示している。
図6は、焼結体のサンプルの断面のSEM像である。サンプルを長手方向に直交する面で切断し、断面を1μmのダイヤモンド懸濁液を用いて仕上げ研磨し、研磨面を見たものである。Ti繊維によって置換したサンプルでは幅20μm程度の帯状の空孔(細長く黒く見えている部分)が生じている。また、Ti繊維の置換量が増加するとともに帯状の空孔が増加していることが見られる。
本実験において使用したTi繊維の換算直径は20μmであるから、空孔はTi繊維が存在していた部位に相当するものと考えられる。
図8は、耐酸化試験を行った後の試験片の外観を示す写真、図9は、耐酸化試験を行った後の試験片の断面のSEM像である。
耐酸化試験は、焼結体から切り出した5×5×10mmの試験片を、大気雰囲気炉中で、1200℃、100時間加熱する方法によって行った。図8に示すように、耐酸化試験後の試験片は、Ti繊維の置換量が増加するにともなって、試験片の表面に析出する黒色の析出物の量が増加した。
耐酸化試験後の試験片についてX線回折試験を行ったところ、試験片の表面で、TiO2とSiO2の鋭いピークが観察され、Ti繊維量が増加するにしたがって、SiO2のピークの高さが低くなり、Ti繊維置換量が10wt%、20wt%、30wt%のサンプルについては、SiO2のピークがあらわれなかった。
図9の試験片の断面のSEM像に着目すると、試験片は、表面層と、混合組織からなる内部層との二層から成り立っていることがわかる。X線回折試験の結果を考慮すると、試験片は最表面層(図のAの部分)がTiO2、内部層(図のBの部分)がTiO2とSiO2の混合層からなっていると考えられる。最表面層の外側は樹脂部分。サンプルは表面および内部とも多孔質であるため、表面近傍部分は酸化している。また、図9から、5wt%の試験片の表面層(TiO2の層)が最も薄く、Ti繊維の置換量が多くなるとともに表面層の厚さが厚くなっていることがわかる。このことは、図8に示すサンプルの外観写真の様相と一致する。
B TiO2とSiO2の混合層
Claims (5)
- Ti成分と、Si成分と、C成分とを含む原料粉末を使用してチタンシリコンカーバイドを製造する方法において、
前記Ti成分としてTi粉末とTi繊維とを使用し、Ti粉末に対するTi繊維の置換量をTi粉末の5〜30wt%としてチタン繊維混合粉末を調製する工程と、
前記チタン繊維混合粉末を加圧してチタン繊維を含有する圧粉体を形成する工程と、
前記圧粉体を常圧下において加熱して焼結させる工程とを備え、
前記チタン繊維混合粉末を調製する工程においては、Ti成分と、Si成分と、C成分とがチタンシリコンカーバイドのTiとSiとCのモル比に一致するように、Ti繊維と各粉末の分量比を設定することを特徴とするチタンシリコンカーバイドの製造方法。 - 前記チタン繊維混合粉末を調製する工程においては、原料粉末としてTi粉末と、SiC粉末と、C粉末とを使用し、Ti成分と、Si成分と、C成分とがチタンシリコンカーバイドのTiとSiとCのモル比に一致するようにTi繊維と、Ti粉末、SiC粉末、C粉末の分量比を設定することを特徴とする請求項1記載のチタンシリコンカーバイドの製造方法。
- 前記チタン繊維混合粉末を加圧して圧粉体を形成する工程においては、一軸荷重により前記圧粉体を形成することを特徴とする請求項1または2記載のチタンシリコンカーバイドの製造方法。
- 前記圧粉体を焼結させる工程においては、真空炉を用いて常圧焼結させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のチタンシリコンカーバイドの製造方法。
- 前記Ti粉末として粒径45μmのTi粉末を使用し、前記Ti繊維として換算直径20μmのTi繊維を使用することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のチタンシリコンカーバイドの製造方法。
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