以下、図面を参照して、本発明に係る走行制御装置の実施の形態を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施の形態では、本発明に係る走行制御装置を、シリーズ・パラレル式のハイブリッド車両に搭載される走行制御装置に適用する。本実施の形態では、運転者が燃費重視の自動運転を選択しており、省燃費となる速度制御(加減速制御)で自動運転走行を行っている場合に適用する。本実施の形態に係る走行制御装置では、自動運転の速度制御の燃費速度パターンを生成し、その燃費速度パターンで走行できるようにエンジンとモータを制御する。本実施の形態には、燃費速度パターンの生成(補正)方法の異なる4つの実施の形態がある。なお、本実施の形態では、自動運転制御のうちハイブリッド制御に関連する速度制御についてのみ説明する。
図1及び図2を参照して、第1の実施の形態に係る走行制御装置1について説明する。図1は、本実施の形態に係る走行制御装置の構成図である。図2は、第1の実施の形態に係る燃費速度パターン生成の説明図であり、(a)が燃費速度パターン(速度目標の時間変化)を示すグラフであり、(b)がエンジン始動停止フラグの時間変化を示すグラフである。
走行制御装置1は、自動運転制御において燃費速度パターンを生成するとともに燃費速度パターンにおける各時間での速度目標を達成するためのトルク目標をハイブリッド制御側に出力し、ハイブリッド制御においてそのトルク目標(出力目標)になるようにエンジンとモータを制御する。特に、走行制御装置1は、燃費速度パターンでのフリーラン(エンジン及びモータを停止して走行抵抗のみで減速する走行)でエンジンを確実に停止させるために、自動運転制御においてエンジン始動停止フラグを生成するとともにトルク目標に加えてエンジン始動停止フラグをハイブリッド制御側に出力し、エンジン始動停止フラグで停止要求が設定されている場合にはハイブリッド制御によりエンジンを停止させる。
走行制御装置1は、モータ10、ジェネレータ11、エンジン12、動力分割機構13、インバータ14、バッテリ15、エンジン制御ECU[Electronic Control Unit]16、ハイブリッド制御ECU21及び自動運転制御ECU31などを備えている。なお、第1の実施の形態では、エンジン制御ECU16及びハイブリッド制御ECU21が特許請求の範囲に記載するエンジン制御手段に相当し、自動運転制御ECU31が特許請求の範囲に記載するエンジン停止手段及び停止要求信号設定手段に相当する。
モータ10は、交流モータであり、ハイブリッド車両の駆動源の一つである。モータ10は、インバータ14からの交流電力によって駆動し、そのモータ出力がディファレンシャルギア(図示せず)などを介して車輪(図示せず)に伝達される。また、モータ10は、ジェネレータとしての機能を有している。モータ10は、ディファレンシャルギアなどを介して伝達される車輪の回転エネルギを電気エネルギに変換して回生発電し、その発電電力がインバータ14を介してバッテリ15に充電される。
ジェネレータ11は、エンジン12の出力によって発電する交流ジェネレータである。ジェネレータ11は、動力分割機構13を介して伝達されたエンジン12の回転エネルギを電気エネルギに変換して発電し、その発電電力がインバータ14を介してバッテリ15に充電されるかあるいはモータ10に供給される。
エンジン12は、ハイブリッド車両の駆動源の一つであり、スロットルアクチュエータ(図示せず)、電子制御式燃料噴射装置(図示せず)などを備えている。エンジン12は、エンジン制御ECU16からの各種指令に応じてスロットルアクチュエータや電子制御式燃料噴射装置などが作動し、エンジン出力が動力分割機構13に伝達される。また、エンジン12は、エンジン制御ECU16によって停止/始動される。
動力分割機構13は、エンジン12の出力を車輪側とジェネレータ11側に分割する機構を有している。動力分割機構13は、ハイブリッド制御ECU21からの配分比目標に応じてエンジン出力を分割し、その分割された一方の出力(0の場合もある)がディファレンシャルギアなどを介して車輪に伝達され、分割された他方の出力(0の場合もある)がジェネレータ11に伝達される。
インバータ14は、モータ10の駆動と回生発電及びジェネレータの発電を制御するインバータである。インバータ14は、ハイブリッド制御ECU21からのモータ駆動トルク目標に応じて、バッテリ15に充電されている電力を直流から交流に変換し、その交流電力をモータ10に供給する。また、インバータ14は、ハイブリッド制御ECU21からのモータ回生トルク目標に応じて、モータ10の回生発電による電力を交流から直流に変換し、その直流電力をバッテリ15に充電する。さらに、インバータ14は、ジェネレータ11の発電による電力を交流から直流に変換し、その直流電力をバッテリ15に充電又はモータ10に供給する。ちなみに、モータ駆動トルク目標が0かつモータ回生トルク目標が0の場合、インバータ14は、モータ10を停止させる(駆動も回生を行わない状態)。
エンジン制御ECU16は、CPU[CentralProcessing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[RandomAccess Memory]等からなる電子制御ユニットであり、エンジン制御を行う。特に、自動運転の場合、エンジン制御ECU16では、演算周期毎に、ハイブリッド制御ECU21からエンジントルク目標を入力すると、そのエンジントルク目標を達成するためのスロットルアクチュエータや電子制御式燃料噴射装置などに対する各種指令をエンジン12に出力する。また、エンジン制御ECU16では、ハイブリッド制御ECU21からエンジン停止指令を入力すると、エンジン12を停止させる。また、エンジン制御ECU16では、ハイブリッド制御ECU21からエンジン始動指令を入力すると、エンジン12を始動させる。
ハイブリッド制御ECU21は、CPU、ROM、RAM等からなる電子制御ユニットであり、ハイブリッド制御を行う。ハイブリッド制御では、加速や減速の様々な状況に応じて、最適なエネルギ効率を考慮してエンジン12及びモータ10の最適なトルク目標及び動力分割機構13の最適な配分比目標を求める。例えば、わずかなトルクによる加速を行う場合、エンジンを始動させて加速するより、モータのみで加速するほうがエネルギ効率が良くなるので、エンジン12の停止状態を継続させつつ、モータ10に対するトルク目標を設定する。
特に、自動運転の場合、ハイブリッド制御ECU21では、演算周期毎に、自動運転制御ECU31からトルク目標(ハイブリッド車両トータルの出力目標)とエンジン始動停止フラグを入力する。
エンジン始動停止フラグで始動要求(フラグ値=1)の場合、ハイブリッド制御ECU21では、トルク目標を達成するための最適なエンジントルク目標、モータ駆動トルク目標又はモータ回生トルク目標、配分比目標を演算し、エンジントルク目標をエンジン制御ECU16に出力し、モータ駆動トルク目標又はモータ回生トルク目標をインバータ14に出力し、配分比目標を動力分割機構13に出力する。特に、エンジン12が停止中にエンジン始動停止フラグで始動要求の場合(再始動の場合)、ハイブリッド制御ECU21では、エンジン始動指令をエンジン制御ECU16に出力する。
エンジン始動停止フラグで停止要求(フラグ値=0)の場合(フリーランの場合)、ハイブリッド制御ECU21では、エンジントルク目標として0、モータ駆動トルク目標及びモータ回生トルク目標として0、配分比目標としてデフォルト値を設定し、エンジン停止指令をエンジン制御ECU16に出力し、モータ駆動トルク目標及びモータ回生トルク目標をインバータ14に出力し、配分比目標を動力分割機構13に出力する。
なお、第1の実施の形態では、自動運転制御ECU31で設定されるエンジン始動停止フラグに応じてエンジン12の始動/停止を行うので、ハイブリッド制御ECU21では、ヒステリシスを持つエンジン始動閾値とエンジン停止閾値によるエンジン12の始動と停止の判定を行ってもよいし、行わなくてもよい。このヒステリシスを持つエンジン始動閾値とエンジン停止閾値による判定について第2の実施の形態で説明する。
自動運転制御ECU31は、CPU、ROM、RAM等からなる電子制御ユニットであり、自動運転制御を行う。ここでは、自動運転制御ECU31における自動運転制御のうち速度制御についてのみ説明する。この速度制御を行うために、自動運転制御ECU31には燃費速度パターン生成部、エンジン始動停止フラグ生成部、トルク目標出力部が構成される。
燃費速度パターン生成部の処理について説明する。自動運転制御ECU31では、走行前に運転者が目的地及び燃費モードを設定すると、目的地までの走行軌跡を探索し、目的地までの区間あるいは目的地に至るまでの各地点(例えば、信号機の有る交差点の停止線、一時停止線、合流地点、有料道路の料金所、道路の制限速度が変わる地点、カーブ路などで減速する地点)まで各区間の燃費速度パターンを生成する。燃費速度パターンは、ハイブリッド車両で燃費を重視して走行するための速度目標の時間変化を示すものである。燃費速度パターンの生成方法としては、例えば、最適効率加速とフリーランの組み合わせで行う。フリーランを実施した場合、エンジン12が停止されるので、アイドル状態での燃料消費も無く、燃費が向上する。図2(a)には、燃費速度パターンVPの一例を示しており、前半の加速の速度目標の時間変化を示す速度パターンVPaと後半のフリーランの速度目標の時間変化を示す速度パターンVPbからなる。一般に加速量が多いほど燃費が悪化するので、加速量をできるだけ抑え、フリーランを長く行う。
また、自動運転制御ECU31では、走行中、演算周期毎に、自車両周辺の他車両や障害物の状況及び前方の信号機のサイクル情報などを考慮して、各区間の燃費速度パターンを生成する。走行中、前方の他車両や信号機の赤信号などで停止や減速する必要が生じるので、その都度、燃費速度パターンを生成する。なお、燃費速度パターンについては、目的地までの全ての区間のパターンを生成してもよいが、少なくとも次の地点までの区間のパターンを生成すればよい。
エンジン始動停止フラグ生成部の処理について説明する。自動運転制御ECU31では、燃費速度パターンを生成すると、燃費速度パターンに基づいてエンジン始動停止フラグを生成する。この生成方法としては、燃費速度パターンで加速の速度目標の場合にはフラグに1(始動要求)を設定し、フリーランの速度目標の場合にはフラグに0(停止要求)を設定する。これによって、燃費速度パターンにエンジン始動停止フラグが紐付けられたことになる。図2(b)には、図2(a)の燃費速度パターンVPに応じたエンジン始動停止フラグの時間変化(エンジン始動停止フラグパターン)FPを示している。
トルク目標出力部の処理について説明する。自動運転制御ECU31では、演算周期毎に、次の地点までの区間のエンジン始動停止フラグ付燃費速度パターンから、次回の速度目標及びフラグの値を抽出する。そして、自動運転制御ECU31では、その抽出した速度目標を達成するためのトルク目標(ハイブリッド車両トータル(エンジン+モータ)でのトルク目標)を演算する。この演算方法としては、例えば、トルク目標=速度目標の微分値+走行抵抗(空気抵抗、ころがり抵抗など)で演算する。そして、自動運転制御ECU31では、その演算したトルク目標と抽出したエンジン始動停止フラグ値をハイブリッド制御ECU21に出力する。
図1及び図2を参照して、ハイブリッド車両が燃費モードで自動運転の場合の走行制御装置1における動作について説明する。特に、自動運転制御ECU31における速度制御に関する処理については図3のフローチャートに沿って説明する。図3は、第1の実施の形態に係る自動運転制御ECUにおける速度制御の流れを示すフローチャートである。
走行開始前に運転者が目的地及び燃費モードを設定すると、自動運転制御ECU31では、目的地までの走行経路を探索するとともに、各区間の燃費速度パターンを生成する(S10)。走行開始後、自動運転制御ECU31では、演算周期毎に、自車両周辺の他車両や障害物の状況及び前方の信号機のサイクル情報などに応じて、各区間の燃費速度パターンを生成する(S10)。燃費速度パターンを生成すると、自動運転制御ECU31では、燃費速度パターンの加速区間ではフラグ値を1、フリーラン区間ではフラグ値を0としたエンジン始動停止フラグを生成する(S11)。
自動運転制御ECU31では、エンジン始動停止フラグ付燃費速度パターンから次回の速度目標及びフラグ値を抽出し、その速度目標からトルク目標を演算する(S12)。そして、自動運転制御ECU31では、その演算したトルク目標と抽出したエンジン始動停止フラグ値をハイブリッド制御ECU21に出力する(S13)。
トルク目標とエンジン始動停止フラグ値を入力すると、エンジン始動停止フラグ値が1の場合(加速区間)、ハイブリッド制御ECU21では、トルク目標を達成するための最適なエンジントルク目標、モータ駆動トルク目標、配分比目標を演算し、エンジントルク目標をエンジン制御ECU16に出力し、モータ駆動トルク目標をインバータ14に出力し、配分比目標を動力分割機構13に出力する。このエンジントルク目標を入力すると、エンジン制御ECU16では、そのエンジントルク目標を達成するための各種指令をエンジン12に出力する。この各種指令を入力すると、エンジン12では、その各種指令に応じて駆動する。また、この配分比目標を入力すると、動力分割機構13では、配分比目標に応じてエンジン12の出力を分割する。その分割された一方のエンジン出力はディファレンシャルギアなどを介して車輪に伝達され、分割された他方のエンジン出力はジェネレータ11に伝達される。また、このモータ駆動トルクを入力すると、インバータ14では、モータ駆動トルク目標に応じて、バッテリ15に充電されている電力を直流から交流に変換し、その交流電力をモータ10に供給する。モータ10では、インバータ14からの交流電力によって駆動する。そのモータ出力は、ディファレンシャルギアなどを介して車輪に伝達される。特に、エンジン12が停止中にエンジン始動停止フラグ値が1の場合(再始動の場合)、ハイブリッド制御ECU21では、エンジン始動指令をエンジン制御ECU16に出力する。このエンジン始動指令を入力すると、エンジン制御ECU16では、エンジン12を始動させる。
エンジン始動停止フラグ値が0の場合(フリーラン区間)、ハイブリッド制御ECU21では、モータ駆動トルク目標として0、モータ回生トルク目標として0、配分比目標としてデフォルト値を設定し、エンジン停止指令をエンジン制御ECU16に出力し、0のモータ駆動トルク目標及びモータ回生トルク目標をインバータ14に出力し、配分比目標を動力分割機構13に出力する。このエンジン停止指令を入力すると、エンジン制御ECU16では、エンジン12を停止させる(既に停止中の場合には停止状態を継続させる)。また、0のモータ駆動トルク目標及びモータ回生トルク目標を入力すると、インバータ14では、モータ10を停止させる。
この走行制御装置1によれば、燃費速度パターンのフリーランを実施するときにはエンジン12を確実に停止することにより、フリーランを確実に実施することができる。その結果、エンジンのアイドル状態での燃費悪化を防止でき、最も省燃費走行が可能である。特に、走行制御装置1では、燃費速度パターンの加速区間とフリーラン区間に応じたエンジン始動停止フラグを導入することにより、エンジン始動停止フラグに基づいてフリーラン区間ではエンジン12を確実に停止できる。
図1及び図4を参照して、第2の実施の形態に係る走行制御装置2について説明する。図4は、第2の実施の形態に係る燃費速度パターン補正の説明図であり、(a)が補正前と補正後の燃費速度パターン(速度目標の時間変化)を示すグラフであり、(b)が補正前と補正後のトルク目標の時間変化を示すグラフである。
走行制御装置2は、第1の実施の形態に係る走行制御装置1と比較すると、エンジン始動停止フラグを導入することなく燃費速度パターンでのフリーランでエンジンを確実に停止させるために、自動運転制御において燃費速度パターンの加速からフリーランに移行する前に通常のフリーランの速度パターンよりも強く減速する速度パターンに補正する。ちなみに、第1の実施の形態で用いたエンジンの始動と停止を一律の条件で行うエンジン始動停止フラグを導入することが困難な場合がある。
走行制御装置2は、モータ10、ジェネレータ11、エンジン12、動力分割機構13、インバータ14、バッテリ15、エンジン制御ECU16、ハイブリッド制御ECU22及び自動運転制御ECU32などを備えている。ここでは、第1の実施の形態に係る走行制御装置1のハイブリッド制御ECU21及び自動運転制御ECU31と処理が異なるハイブリッド制御ECU22及び自動運転制御ECU32についてのみ説明する。なお、第2の実施の形態では、エンジン制御ECU16及びハイブリッド制御ECU22が特許請求の範囲に記載するエンジン制御手段に相当し、自動運転制御ECU32が特許請求の範囲に記載するエンジン停止手段及び目標値調整手段に相当する。
ハイブリッド制御ECU22は、CPU、ROM、RAM等からなる電子制御ユニットであり、ハイブリッド制御を行う。走行制御装置2ではエンジン始動停止フラグを導入していないので、自動運転の場合、ハイブリッド制御ECU22では、演算周期毎に、自動運転制御ECU32からトルク目標のみ入力する。そして、ハイブリッド制御ECU22では、トルク目標を達成するための最適なエンジントルク目標、モータ駆動トルク目標又はモータ回生トルク目標、配分比目標を演算し、エンジントルク目標をエンジン制御ECU16に出力し、モータ駆動トルク目標又はモータ回生トルク目標をインバータ14に出力し、配分比目標を動力分割機構13に出力する。
特に、エンジン12が作動中の場合、ハイブリッド制御ECU22では、エンジントルク目標がエンジン停止閾値に達したか否か(下回ったか否か)を判定する。エンジントルク目標がエンジン停止閾値に達したと判定した場合、ハイブリッド制御ECU22では、エンジン12を停止させるために、エンジン停止指令をエンジン制御ECU16に出力する。一方、エンジン12が停止中の場合、ハイブリッド制御ECU22では、エンジントルク目標がエンジン始動閾値に達したか否か(上回ったか否か)を判定する。エンジントルク目標がエンジン始動閾値に達したと判定した場合、ハイブリッド制御ECU22では、エンジン12を始動させるために、エンジン始動指令をエンジン制御ECU16に出力する。エンジン始動閾値及びエンジン停止閾値は、ハイブリッド車両の設計要件から決定される。エンジン始動閾値とエンジン停止閾値とはヒステリシスを持っており、エンジン始動閾値が所定のプラス値であり、エンジン停止閾値が所定のマイナス値である。この各閾値は、車両の速度に応じて設定されたマップなどを用いて設定され、速度に応じた可変値である。なお、フリーランのトルク目標の場合、モータ10を停止させるためにモータ駆動トルク目標及びモータ回生トルク目標には0が設定されるので、自動運転制御ECU32から入力したトルク目標がエンジントルク目標となり、このエンジントルク目標(=トルク目標)でエンジン停止閾値との判定を行うことになる。
自動運転制御ECU32は、CPU、ROM、RAM等からなる電子制御ユニットであり、自動運転制御を行う。ここでは、自動運転制御ECU32における自動運転制御のうち速度制御についてのみ説明する。この速度制御を行うために、自動運転制御ECU32には燃費速度パターン生成部、燃費速度パターン補正部、トルク目標出力部が構成される。燃費速度パターン生成部は、第1の実施の形態に係る自動運転制御ECU31の燃費速度パターン生成部と同様の処理なので、説明を省略する。ちなみに、図4(a)には、燃費速度パターン生成部で生成した燃費速度パターンVPの一例を示しており、前半が加速区間の速度パターンVPaであり、後半がフリーラン区間の速度パターンVPbである。
燃費速度パターン補正部の処理について説明する。自動運転制御ECU32では、燃費速度パターン生成部で基準となる燃費速度パターンを生成すると、燃費速度パターンから各時間での速度目標を抽出する。そして、自動運転制御ECU32では、各時間の速度目標からトルク目標を演算する。この演算方法としては、例えば、トルク目標=速度目標の微分値+走行抵抗で演算する。図4(b)には、基準となる燃費速度パターンVPの各時間での速度目標からトルク目標を演算し、その各時間のトルク目標をグラフ化したトルク目標の時間変化(トルクパターン)TPを示している。このトルクパターンTPでは、燃費速度パターンVPの加速区間VPaではプラス値のトルク目標からなる台形状のトルクパターンTPaとなり、フリーラン区間VPbでは常にトルク目標が0のトルクパターンTPbとなる。
このように、フリーランにおいてトルク目標が常に0の場合、エンジントルク目標がマイナス側にヒステリシスを持つエンジン停止閾値SPSに達することはないので、エンジン12を停止できない。そこで、エンジントルク目標(すなわち、トルク目標)がエンジン停止閾値SPSに確実に達するように、通常の基準となるフリーランの速度パターンVPbよりも急減速させた速度パターンに補正する。
そこで、自動運転制御ECU32では、加速区間のトルク目標(プラス値)からフリーランのトルク目標(=0)に移行する時点から、一時的に急減速するために、各時間のトルク目標を補正する。この補正方法としては、トルク目標がエンジン停止閾値SPSを下回るまでトルク目標を減少させ、エンジン停止閾値SPSを下回ってからは0になるまでトルク目標を増加させる。トルク目標を減少させる場合、例えば、各時間のトルク目標=時間的に前回のトルク目標−Tmaxで演算する。トルク目標を増加させる場合、例えば、各時間のトルク目標=時間的に前回のトルク目標+Tmaxで演算する。Tmaxは、ハイブリッド車両で追従できるトルクの最大変化値であり、ハイブリッド車両の性能によって決まる。Tmaxは、トルクを減少させるときの値と増加させるときの値で異なる値の場合もあれば同じ値の場合もある。図4(b)に示す例の場合、補正後のトルクパターンは、トルク目標が0からエンジン停止閾値SPSまで線形に減少しかつエンジン停止閾値SPSから0まで線形に増加する逆三角形状のトルクパターンTP2bを含むトルクパターンTP2となっている。ちなみに、この逆三角形状のトルクパターンTP2b以外のトルク目標の変化は、基準となるトルクパターンTPと同じ変化である。
そして、自動運転制御ECU32では、加速区間のトルク目標(プラス値)からフリーランのトルク目標(=0)に移行する時点から、補正した各時間でのトルク目標から速度目標を演算し、減速部分の燃費速度パターンを補正する。この演算方法としては、例えば、各時間での速度目標=時間的に前回の速度目標+補正トルク目標の演算周期での積分値−走行抵抗で演算する。図4(a)に示す例の場合、減算補正燃費速度パターンは、加速が終了した時点から基準のフリーランの速度パターンVPbよりも急減速するための速度パターンVP2bを含む速度パターンVP2となっている。
トルク目標出力部の処理について説明する。自動運転制御ECU32では、演算周期毎に、次の地点までの区間の減速補正の燃費速度パターンから、次回の速度目標を抽出する。そして、自動運転制御ECU32では、その抽出した速度目標からトルク目標を演算する。さらに、自動運転制御ECU32では、その演算したトルク目標をハイブリッド制御ECU22に出力する。なお、このハイブリッド制御ECU22に出力するトルク目標は、減速補正燃費速度パターンにおける各時間の速度目標から演算するのでなく、補正後のトルク目標をそのまま用いてもよい。
図1及び図4を参照して、ハイブリッド車両が燃費モードで自動運転の場合の走行制御装置2における動作について説明する。特に、自動運転制御ECU32における速度制御に関する処理については図5のフローチャートに沿って説明する。図5は、第2の実施の形態に係る自動運転制御ECUにおける速度制御の流れを示すフローチャートである。
自動運転制御ECU32では、第1の実施の形態に係る自動運転制御ECU31と同様の処理により燃費速度パターンを生成する(S20)。
燃費速度パターンを生成すると、自動運転制御ECU32では、燃費速度パターンの各時間での速度目標からトルク目標を演算する(S21)。自動運転制御ECU32では、加速(プラス値)からフリーラン(0)に移行する時点からの各時間のトルク目標を、エンジン停止閾値を超えるように補正する(S22)。そして、自動運転制御ECU32では、各時間での補正トルク目標から補正速度目標を演算し、減速補正燃費速度パターンを生成する(S23)。
自動運転制御ECU32では、減速補正燃費速度パターンから次回の速度目標を抽出し、その速度目標からトルク目標を演算する(S24)。そして、自動運転制御ECU32では、その演算したトルク目標をハイブリッド制御ECU22に出力する(S25)。
トルク目標を入力すると、ハイブリッド制御ECU22では、トルク目標を達成するための最適なエンジントルク目標、モータ駆動トルク目標、配分比を演算する。特に、減速補正燃費速度パターンが加速から急減速に移行すると、モータ10を停止させるためにモータ駆動トルク目標及びモータ回生トルク目標には0が設定され、エンジントルク目標=トルク目標(マイナス値)となる。
エンジン12が作動中の場合、ハイブリッド制御ECU22では、エンジントルク目標がエンジン停止閾値を下回ったか否かを判定する。エンジントルク目標がエンジン停止閾値を下回ったと判定するまで(フリーランの前)、ハイブリッド制御ECU22では、トルク目標に応じて最適に設定したエンジントルク目標をエンジン制御ECU16に出力し、モータ駆動トルク目標をインバータ14に出力し、配分比目標を動力分割機構13に出力する。この区間の場合、このエンジントルク目標、モータ駆動トルク目標、配分比目標に基づいて、エンジン制御ECU16、エンジン12、インバータ14、モータ10、動力分割機構13では、第1の実施の形態におけるエンジン始動停止フラグ値が1のときと同様の動作をする。
エンジントルク目標がエンジン停止閾値を下回ったと判定した時点から以降(フリーラン区間)、ハイブリッド制御ECU22では、エンジン停止指令をエンジン制御ECU16に出力し、モータ駆動トルク目標(=0)及びモータ回生トルク目標(=0)をインバータ14に出力し、配分比目標(=デフォルト値)を動力分割機構13に出力する。このエンジン停止指令を入力すると、エンジン制御ECU16では、エンジン12を停止させる(既に停止中の場合には停止状態を継続させる)。また、0のモータ駆動トルク目標及びモータ回生トルク目標を入力すると、インバータ14では、モータ10を停止させる。
この走行制御装置2によれば、燃費速度パターンのフリーランを実施するときにはエンジン12を確実に停止することにより、フリーランを確実に実施することができる。特に、走行制御装置2では、エンジントルク目標がエンジン停止閾値を超えるように通常より急減速を加えた燃費速度パターンに補正することにより、エンジン始動停止フラグを導入することなく、この減速補正燃費速度パターンに基づいてフリーラン区間ではエンジン12を確実に停止できる。
図1及び図6、図7を参照して、第3の実施の形態に係る走行制御装置3について説明する。図6は、第3の実施の形態に係る燃費速度パターン補正の説明図であり、(a)が補正前と補正後の燃費速度パターン(速度目標の時間変化)を示すグラフであり、(b)が補正前と補正後のトルク目標の時間変化を示すグラフである。図7は、第3の実施の形態に係る補正過程のトルク目標の時間変化を示すグラフである。
走行制御装置3は、第2の実施の形態に係る走行制御装置2と比較すると、指定された到達距離(位置)に指定された速度で到達するために、自動運転制御において第2の実施の形態で加えた強い減速の後に一時的な加速を加えた速度パターンに補正する。ちなみに、一時停止線で停止する場合など、その一時停止線までの到達距離を厳守する必要がある。しかし、第2の実施の形態のように燃費速度パターンを通常のフリーランよりも強い減速を加えて補正した場合、その減速補正燃費速度パターンに従って走行して速度が0になった時点(停止時点)での走行距離は、補正前の燃費速度パターンに従って走行して速度が0になった時点での走行距離よりも短くなる。
走行制御装置3は、モータ10、ジェネレータ11、エンジン12、動力分割機構13、インバータ14、バッテリ15、エンジン制御ECU16、ハイブリッド制御ECU22及び自動運転制御ECU33などを備えている。ここでは、第2の実施の形態に係る走行制御装置2の自動運転制御ECU32と処理が異なる自動運転制御ECU33についてのみ説明する。なお、第3の実施の形態では、エンジン制御ECU16及びハイブリッド制御ECU22が特許請求の範囲に記載するエンジン制御手段に相当し、自動運転制御ECU33が特許請求の範囲に記載するエンジン停止手段、目標値調整手段及び到達目標設定手段に相当する。
自動運転制御ECU33は、CPU、ROM、RAM等からなる電子制御ユニットであり、自動運転制御を行う。ここでは、自動運転制御ECU33における自動運転制御のうち速度制御についてのみ説明する。この速度制御を行うために、自動運転制御ECU33には燃費速度パターン生成部、燃費速度パターン補正部、トルク目標出力部が構成される。トルク目標出力部は、第2の実施の形態に係る自動運転制御ECU32のトルク目標出力部と同様の処理なので、説明を省略する。
燃費速度パターン生成部の処理について説明する。自動運転制御ECU33では、第1の実施の形態に係る自動運転制御ECU31と同様の処理により、目的地までの走行軌跡を探索するとともに、目的地に至るまでの各地点までの各区間での燃費速度パターンを生成する。この際、自動運転制御ECU33では、目的地に至るまでの各地点で到達距離(位置)を厳守する必要がある区間については、距離変更不可要求を設定するとともに、その地点までの指定到達距離とその地点での指定走行速度(停止の場合には0km/h)を設定する。この指定走行速度は、各区間の燃費速度パターンの終了時点の速度に相当する。ちなみに、図6(a)には、燃費速度パターン生成部で生成した燃費速度パターンVPの一例を示しており、前半が加速区間VPaであり、後半がフリーラン区間VPbである。
燃費速度パターン補正部の処理について説明する。自動運転制御ECU33では、燃費速度パターン生成部で基準となる燃費速度パターンを生成すると、第2の実施の形態に係る自動運転制御ECU32と同様の処理により、燃費速度パターンから各時間での速度目標を抽出し、各時間の速度目標からトルク目標を演算する。図6(b)には、基準となる燃費速度パターンVPの各時間での速度目標からトルク目標を演算し、それをグラフ化したトルク目標の時間変化TPを示している。
そして、自動運転制御ECU33では、加速区間のトルク目標(プラス値)からフリーランのトルク目標(=0)に移行する時点から、一時的に急減速とその後に一時的に加速するために、各時間のトルク目標を補正する。この補正方法としては、トルク目標がエンジン停止閾値SPSを下回るまでトルク目標を減少させ、エンジン停止閾値SPSを下回ってからはエンジンを始動しない閾値NSS(エンジン始動閾値の直前の値)までトルク目標を増加させ、エンジンを始動しない閾値NSSから0までトルク閾値を減少させる。トルク目標を減少させる場合や増加させる場合、例えば、第2の実施の形態で例に挙げた演算方法で演算する。図7に示す例の場合、補正後のトルクパターン(トルク目標の時間変化)は、トルク目標が0からエンジン停止閾値SPSまで線形に減少しかつエンジン停止閾値SPSから0まで線形に増加する逆三角形状のトルクパターンTP3bとトルク目標が0からエンジンが始動しない閾値NSSまで線形に増加しかつエンジンが始動しない閾値NSSから0まで線形に減少する三角形状のトルクパターンTP3cを含むトルクパターンとなっている。
さらに、自動運転制御ECU33では、加速補正したトルク目標をエンジンを始動しない閾値NSSで維持するための加速維持時間TA3を決定する。加速維持時間TA3は、減速補正燃費速度パターンに従って走行した場合に最終的に到達する走行距離が指定走行距離になるように、トルク目標をエンジンを始動しない閾値NSSで保持して加速を維持する時間である。
この加速維持時間TA3の決定方法としては、演算周期毎に、新たな加速維持時間TA3を演算すると、その加速維持時間TA3を急減速後の加速区間に加えた暫定のトルクパターンの各時間での補正トルク目標から補正速度目標を演算し、暫定の減速補正燃費速度パターンを生成する。補正トルク目標から補正速度目標を演算する場合、例えば、第2の実施の形態で例に挙げた演算方法で演算する。次に、暫定の減速補正燃費速度パターンの終了時点まで各時間での補正速度目標から補正後走行距離を演算する。この演算方法としては、例えば、各時間での補正速度目標の演算周期での積分値を積算することによって補正後走行距離を演算する。
そして、この補正後走行距離が指定走行距離に等しいか否かを判定する。この際、補正後走行距離は減速補正燃費速度パターンの終了時点での距離なので、補正後走行距離のときの速度は指定走行速度となっている。したがって、指定走行速度についての判定は行わなくてもよい。補正後走行距離が指定走行距離より長い場合には加速維持を短くするために加速維持時間TA3=時間的に前回の加速維持時間TA3−T’で加速維持時間TA3を演算し、補正後走行距離が指定走行距離より短い場合には加速維持を長くするために加速維持時間TA3=時間的に前回の加速維持時間TA3+T’で加速維持時間TA3を演算する。T’は、演算周期である。加速維持時間TA3の初期値は、0である。
以上の処理を、演算周期毎に、補正後走行距離が指定走行距離に等しくなるまで行い、補正後走行距離が指定走行距離に等しくなったときの加速維持時間TA3を最終的な加速維持時間TA3とする。そして、この加速維持時間TA3を加えた暫定のトルクパターンが最終的な補正トルクパターンであり、この加速維持時間TA3を加えた暫定のトルクパターンから演算された暫定の減算補正燃費速度パターンが最終的な減算補正燃費速度パターンである。図6(b)に示す例の場合、補正後の最終的なトルクパターンTP3は、トルク目標が0からエンジン停止閾値SPSまで線形に減少しかつエンジン停止閾値SPSから0まで線形に増加する逆三角形状のトルクパターンTP3bと、トルク目標が0からエンジンが始動しない閾値NSSまで線形に増加しかつトルク目標が加速維持時間TA3だけエンジンが始動しない閾値NSSで維持しかつエンジンが始動しない閾値NSSから0まで線形に減少する台形状のトルクパターンTP3dを含むトルクパターンとなっている。また、図6(a)に示す例の場合、減算補正燃費速度パターンは、加速が終了した時点から基準のフリーランの速度パターンVPbよりも急減速するための速度パターンVP3bと急減速後に加速するための速度パターンVP3cを含む速度パターンVP3となっている。
図1及び図6、図7を参照して、ハイブリッド車両が燃費モードで自動運転の場合の走行制御装置3における動作について説明する。特に、自動運転制御ECU33における速度制御に関する処理については図8のフローチャートに沿って説明する。図8は、第3の実施の形態に係る自動運転制御ECUにおける速度制御の流れを示すフローチャートである。
自動運転制御ECU33では、第1の実施の形態に係る自動運転制御ECU31と同様の処理により燃費速度パターンを生成する(S30)。また、自動運転制御ECU33では、燃費速度パターンに対して、距離変更不可要求、指定走行距離、指定走行速度を設定する(S31)。
燃費速度パターンを生成すると、自動運転制御ECU33では、燃費速度パターンの各時間での速度目標からトルク目標を演算する(S32)。自動運転制御ECU33では、加速(プラス値)からフリーラン(0)に移行する時点からの各時間のトルク目標を、エンジン停止閾値を超えるように補正し、エンジン停止閾値を超えた後にはエンジンを始動しない閾値まで補正する(S33)。
自動運転制御ECU33では、トルク目標がエンジンを始動しない閾値での加速を維持する加速維持時間を演算する(S34)。そして、自動運転制御ECU33では、その加速維持時間を加えた暫定のトルクパターンの各時間での補正トルク目標から補正速度目標を演算し、暫定の減速補正燃費速度パターンを生成する(S35)。さらに、自動運転制御ECU33では、この暫定の減速補正燃費速度パターンの各時間での補正速度目標から補正後走行距離を演算する(S36)。そして、自動運転制御ECU33では、指定走行距離と補正後走行距離とが等しいか否かを判定する(S37)。S37にて指定走行距離と補正後走行距離とが等しくないと判定した場合、自動運転制御ECU33では、S34の処理に戻って、演算周期分短くしたあるいは長くした加速維持時間を再演算する。
S37にて指定走行距離と補正後走行距離とが等しいと判定した場合、自動運転制御ECU33では、そのときの暫定の減速補正燃費速度パターンを最終的な減速補正燃費速度パターンとし、その減速補正燃費速度パターンから次回の速度目標を抽出し、その速度目標からトルク目標を演算する(S38)。そして、自動運転制御ECU33では、その演算したトルク目標をハイブリッド制御ECU22に出力する(S39)。
トルク目標を入力すると、ハイブリッド制御ECU22では、トルク目標を達成するための最適なエンジントルク目標、モータ駆動トルク目標、配分比を演算する。特に、加速から急減速に移行すると、モータ10を停止させるためにモータ駆動トルク目標及びモータ回生トルク目標には0が設定され、エンジントルク目標=トルク目標(マイナス値)となる。さらに、その急減速後の加速では(エンジン12が停止後)、エネルギ効率の良いモータ10のみで加速するので、エンジントルク目標が0に設定され、モータ駆動トルク=トルク目標(プラス値)となる。
エンジン12が作動中の場合、ハイブリッド制御ECU22では、エンジントルク目標がエンジン停止閾値を下回ったか否かを判定する。エンジントルク目標がエンジン停止閾値を下回ったと判定するまで(フリーランの前)、ハイブリッド制御ECU22では、最適に設定したエンジントルク目標をエンジン制御ECU16に出力し、モータ駆動トルク目標をインバータ14に出力し、配分比目標を動力分割機構13に出力する。この区間の場合、このエンジントルク目標、モータ駆動トルク目標、配分比目標に基づいて、エンジン制御ECU16、エンジン12、インバータ14、モータ10、動力分割機構13は、第1の実施の形態におけるエンジン始動停止フラグ値が1のときと同様の動作をする。
エンジントルク目標がエンジン停止閾値を下回ったと判定したときには(フリーランに移行時)、ハイブリッド制御ECU22では、エンジン停止指令をエンジン制御ECU16に出力し、モータ駆動トルク目標(=0)及びモータ回生トルク目標(=0)をインバータ14に出力し、配分比目標(=デフォルト値)を動力分割機構13に出力する。このエンジン停止指令を入力すると、エンジン制御ECU16では、エンジン12を停止させる(停止中の場合には停止状態を継続させる)。また、0のモータ駆動トルク目標及びモータ回生トルク目標を入力すると、インバータ14では、モータ10を停止させる。
エンジン停止後の加速のときには、ハイブリッド制御ECU22では、エンジン停止指令をエンジン制御ECU16に出力し、モータ駆動トルク目標(プラス値)をインバータ14に出力し、配分比目標を動力分割機構13に出力する。このエンジン停止指令を入力すると、エンジン制御ECU16では、エンジン12の停止状態を継続させる。また、モータ駆動トルク目標を入力すると、インバータ14では、モータ駆動トルク目標に応じて、バッテリ15に充電されている電力を直流から交流に変換し、その交流電力をモータ10に供給する。モータ10では、インバータ14からの交流電力によって駆動する。そのモータ出力は、ディファレンシャルギアなどを介して車輪に伝達される。これによって、車両は、一時的に加速する。
エンジン停止後の加速終了後、ハイブリッド制御ECU22では、エンジン停止指令をエンジン制御ECU16に出力し、モータ駆動トルク目標(=0)及びモータ回生トルク目標(=0)をインバータ14に出力し、配分比目標(=デフォルト値)を動力分割機構13に出力する。このエンジン停止指令を入力すると、エンジン制御ECU16では、エンジン12の停止状態を継続させる。また、0のモータ駆動トルク目標及びモータ回生トルク目標を入力すると、インバータ14では、モータ10を停止させる。
この走行制御装置3によれば、第2の実施の形態に係る走行制御装置2と同様の効果を有する上に、以下の効果も有している。走行制御装置3では、エンジントルク目標がエンジン停止閾値を超えるように通常より急な減速を加えた後に加速を加えた燃費速度パターンに補正することにより、エンジン12を確実に停止するために通常より急な減速を行っても、所望の地点に所望の速度で到達できる。
図1及び図9、図10を参照して、第4の実施の形態に係る走行制御装置4について説明する。図9は、第4の実施の形態に係る燃費速度パターン補正の説明図であり、(a)が補正前と補正後の燃費速度パターン(速度目標の時間変化)を示すグラフであり、(b)が補正前と補正後のトルク目標の時間変化を示すグラフである。図10は、第4の実施の形態に係る補正過程のトルク目標の時間変化を示すグラフである。
走行制御装置4は、第2の実施の形態に係る走行制御装置2と比較すると、指定された到達距離(位置)かつ指定された時間に指定された速度で到達するために、自動運転制御において第2の実施の形態で加えた強い減速の前に加速を加えた(加速状態を延長する)速度パターンに補正する。この第4の実施の形態で説明する方法の場合、距離が合っていれば時間も合うので、少なくとも距離についての処理を行えばよい。ちなみに、赤信号で停止する場合など、その交差点の停止線までの到達距離を厳守しかつ赤信号になる信号サイクルに応じて到達時間も厳守する必要がある。しかし、第2の実施の形態のように燃費速度パターンを通常のフリーランよりも強い減速を加えて補正した場合、その減速補正燃費速度パターンに従って走行して速度が0になった時点(停止時点)での走行距離は、補正前の燃費速度パターンに従って走行して速度が0になった時点での走行距離よりも短くなり、速度が0になる時間も速くなる。
走行制御装置4は、モータ10、ジェネレータ11、エンジン12、動力分割機構13、インバータ14、バッテリ15、エンジン制御ECU16、ハイブリッド制御ECU22及び自動運転制御ECU34などを備えている。ここでは、第2の実施の形態に係る走行制御装置2の自動運転制御ECU32と処理が異なる自動運転制御ECU34についてのみ説明する。なお、第4の実施の形態では、エンジン制御ECU16及びハイブリッド制御ECU22が特許請求の範囲に記載するエンジン制御手段に相当し、自動運転制御ECU34が特許請求の範囲に記載するエンジン停止手段、目標値調整手段及び到達目標設定手段に相当する。
自動運転制御ECU34は、CPU、ROM、RAM等からなる電子制御ユニットであり、自動運転制御を行う。ここでは、自動運転制御ECU34における自動運転制御のうち速度制御についてのみ説明する。この速度制御を行うために、自動運転制御ECU34には燃費速度パターン生成部、燃費速度パターン補正部、トルク目標出力部が構成される。トルク目標出力部は、第2の実施の形態に係る自動運転制御ECU32のトルク目標出力部と同様の処理なので、説明を省略する。
燃費速度パターン生成部の処理について説明する。自動運転制御ECU34では、第1の実施の形態に係る自動運転制御ECU31と同様の処理により、目的地までの走行軌跡を探索するとともに、目的地に至るまでの各地点までの各区間での燃費速度パターンを生成する。この際、自動運転制御ECU34では、目的地に至るまでの各地点で到達距離と到達時間を厳守する必要がある区間については、距離時間変更不可要求を設定するとともに、その地点までの指定到達距離、その地点への指定走行時間とその地点での指定走行速度(停止の場合には0km/h)を設定する。ちなみに、図9(a)には、燃費速度パターン生成部で生成した燃費速度パターンVPの一例を示しており、前半が加速区間VPaであり、後半がフリーラン区間VPbである。
燃費速度パターン補正部の処理について説明する。自動運転制御ECU34では、燃費速度パターン生成部で基準となる燃費速度パターンを生成すると、第2の実施の形態に係る自動運転制御ECU32と同様の処理により、燃費速度パターンから各時間での速度目標を抽出し、各時間の速度目標からトルク目標を演算する。図9(b)には、基準となる燃費速度パターンVPの各時間での速度目標からトルク目標を演算し、それをグラフ化したトルク目標の時間変化TPを示している。
そして、自動運転制御ECU34では、加速区間のトルク目標(プラス値)からフリーランのトルク目標(=0)に移行する時点から、一時的に急減速するために、各時間のトルク目標を補正する。この補正方法としては、第2の実施の形態と同様の方法である。図10に示す例の場合、補正後のトルクパターンは、トルク目標が0からエンジン停止閾値SPSまで線形に減少しかつエンジン停止閾値SPSから0まで線形に増加する逆三角形状のトルクパターンTP4bを含むトルクパターンとなっている。
さらに、自動運転制御ECU34では、トルク目標を急減速前の加速状態で維持するための加速維持時間TA4を決定する。加速維持時間TA4は、減速補正燃費速度パターンに従って走行した場合に最終的に到達する走行距離が指定走行距離になりかつ到達する時間が指定走行時間になるように、トルク目標をフリーラン前の加速時の最大トルクで保持して加速を維持する時間である。
この加速維持時間TA4の決定方法としては、演算周期毎に、新たな加速維持時間TA4を演算すると、その加速維持時間TA4をフリーラン前の加速区間に加えた暫定のトルクパターンの各時間での補正トルク目標から補正速度目標を演算し、暫定の減速補正燃費速度パターンを生成する。補正トルク目標から補正速度目標を演算する場合、例えば、第2の実施の形態で例に挙げた演算方法で演算する。次に、暫定の減速補正燃費速度パターンの終了時点まで各時間での補正速度目標から補正後走行距離を演算する。この演算方法としては、例えば、第3の実施の形態で例に挙げた演算方法で演算する。また、必要な場合には、暫定の減速補正燃費速度パターンの終了時点まで各時間での補正速度目標から補正後走行時間を演算する。
そして、この補正後走行距離が指定走行距離に等しいか否かを判定する。必要な場合な場合には、補正後走行時間が指定走行時間に等しいか否かも判定する。補正後走行距離が指定走行距離より長い場合(補正後走行時間が指定走行時間より長い場合)には加速維持を短くするために加速維持時間TA4=時間的に前回の加速維持時間TA4−T’で加速維持時間TA4を演算し、補正後走行距離が指定走行距離より短い場合(補正後走行時間が指定走行時間より短い場合)には加速維持を長くするために加速維持時間TA4=時間的に前回の加速維持時間TA4+T’で加速維持時間TA4を演算する。加速維持時間TA4の初期値は、0である。
以上の処理を、演算周期毎に、補正後走行距離が指定走行距離に等しく(補正後走行時間が指定走行時間に等しく)なるまで行い、補正後走行距離が指定走行距離に等しく(補正後走行時間が指定走行時間に等しく)なったときの加速維持時間TA4を最終的な加速維持時間TA4とする。そして、この加速維持時間TA4を加えた暫定のトルクパターンが最終的な補正トルクパターンであり、この加速維持時間TA4を加えた暫定のトルクパターンから演算された暫定の減算補正燃費速度パターンが最終的な減算補正燃費速度パターンである。図9(b)に示す例の場合、補正後の最終的なトルクパターンTP4は、燃費速度パターンVPの加速区間VPaに対応する基準となる台形状のトルクパターンTPaの加速の最大トルクを維持する時間が加速維持時間TA4分長くなったトルクパターンTP4cとトルク目標が0からエンジン停止閾値SPSまで線形に減少しかつエンジン停止閾値SPSから0まで線形に増加する逆三角形状のトルクパターンTP4dを含むトルクパターンとなっている。また、図9(a)に示す例の場合、減算補正燃費速度パターンは、フリーラン前の通常の加速の速度パターンVPaを更に継続するための加速の速度パターンVP4bと基準のフリーランの速度パターンVPbよりも急減速するための速度パターンVP4cを含む速度パターンVP4となっている。この例からも判るように、急減速の前に加速状態を通常よりも継続することにより、急減速後に減算補正燃費速度パターンVP4は補正前の燃費速度パターンVPに一致し、停止するときの(速度が0km/hになるとき)の時間が一致している。
図1及び図9、図10を参照して、ハイブリッド車両が燃費モードで自動運転の場合の走行制御装置4における動作について説明する。特に、自動運転制御ECU34における速度制御に関する処理については図11のフローチャートに沿って説明する。図11は、第4の実施の形態に係る自動運転制御ECUにおける速度制御の流れを示すフローチャートである。
自動運転制御ECU34では、第1の実施の形態に係る自動運転制御ECU31と同様の処理により燃費速度パターンを生成する(S40)。また、自動運転制御ECU34では、燃費速度パターンに対して、距離時間変更不可要求、指定走行距離、指定走行時間、指定走行速度を設定する(S41)。
燃費速度パターンを生成すると、自動運転制御ECU34では、燃費速度パターンの各時間での速度目標からトルク目標を演算する(S42)。自動運転制御ECU34は、加速(プラス値)からフリーラン(0)に移行する時点からの各時間のトルク目標を、エンジン停止閾値を超えるように補正する(S43)。
自動運転制御ECU34では、フリーラン前の加速を維持する加速維持時間を演算する(S44)。そして、自動運転制御ECU34では、加速維持時間を加えた暫定のトルクパターンの各時間での補正トルク目標から補正速度目標を演算し、暫定の減速補正燃費速度パターンを生成する(S45)。さらに、自動運転制御ECU34では、この暫定の減速補正燃費速度パターンの各時間での補正速度目標から補正後走行距離と補正後走行時間を演算する(S46)。そして、自動運転制御ECU34では、指定走行距離と補正後走行距離とが等しいか否かかつ指定走行時間と補正後走行時間とが等しいか否かを判定する(S47)。この判定では、指定走行距離と補正後走行距離とが等しい否かを判定すればよい。S47にて指定走行距離と補正後走行距離とが等しくない(指定走行時間と補正後走行時間とが等しくない)と判定した場合、自動運転制御ECU34では、S44の処理に戻って、演算周期分短くしたあるいは長くした加速維持時間を演算する。
S47にて指定走行距離と補正後走行距離とが等しいかつ指定走行時間と補正後走行時間とが等しいと判定した場合、自動運転制御ECU34では、そのときの暫定の減速補正燃費速度パターンを最終的な減速補正燃費速度パターンとし、その減速補正燃費速度パターンから次回の速度目標を抽出し、その速度目標からトルク目標を演算する(S48)。そして、自動運転制御ECU34では、その演算したトルク目標をハイブリッド制御ECU22に出力する(S49)。
これ以降の動作については、第2の実施の形態と同様の動作である。但し、フリーラン前の加速では、通常の最適効率の加速よりも加速状態を維持した加速となり、その加速維持のトルク目標を達成するための最適なエンジントルク目標、モータ駆動トルク目標、配分比が演算される。したがって、第2の実施の形態よりも、フリーラン前(急減速前)に通常よりも加速状態が長くなる。
この走行制御装置4によれば、第2の実施の形態に係る走行制御装置2と同様の効果を有する上に、以下の効果も有している。走行制御装置4では、エンジントルク目標がエンジン停止閾値を超えるように通常より急な減速を加えた前に加速を加えた燃費速度パターンに補正することにより、エンジン12を確実に停止するために通常より急な減速を行っても、所望の地点かつ所望の時間に所望の速度で到達できる。
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
例えば、本実施の形態では動力源としてエンジンとモータを備えるハイブリッド車両に適用したが、動力源として少なくともエンジンを備える車両なら適用可能である。また、ハイブリッド車両の方式としてもシリーズ・パラレル方式以外のハイブリッド車両にも適用可能である。
また、本実施の形態では自動運転を行う場合に適用したが、クルーズ制御などの速度制御を行っている場合などにも適用可能である。
また、本実施の形態では出力としてトルクを用いたが、パワー(トルク×速度)などの他のパラメータとしてもよい。
また、第2の実施の形態ではエンジン出力目標値をエンジン停止閾値に達するまで減速させる一つの方法を示したが、他の方法で行ってもよい。また、第3の実施の形態では急減速後にエンジン出力目標値がエンジン始動閾値を下回る範囲で加速させる一つの方法を示したが、他の方法で行ってもよい。また、第4の実施の形態ではフリーラン前の加速を延長する一つの方法を示したが、他の方法で行ってもよい。
また、第3及び第4の実施の形態では到達目標地点を指定走行距離とし、目標地点を走行距離で判定する構成としたが、絶対的な位置や車両からの相対的な位置で判定する構成としてもよい。