JP5249453B1 - 容器詰トマト含有飲料及びその製造方法、並びに容器詰トマト含有飲料の食感及び呈味改善方法 - Google Patents

容器詰トマト含有飲料及びその製造方法、並びに容器詰トマト含有飲料の食感及び呈味改善方法 Download PDF

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Abstract

【課題】低粘度でさらっとした食感を有しながらも、酸味が抑制され、完熟したような甘みが十分感じられる、呈味が良好で飲み易い容器詰トマト含有飲料及び容器詰トマト含有飲料の酸味抑制方法並びに容器詰トマト含有飲料の食感及び呈味改善方法を提供する。
【解決手段】粒子を含有する容器詰トマト含有飲料であって、該粒子の累積50%粒子径が300μm以下であり、且つ累積90%粒子径が500μm以下であり、カルシウム濃度が55〜340mg/Lであることを特徴とする容器詰トマト含有飲料、カルシウム含有量を55〜340mg/Lに調整する工程と、容器詰トマト含有飲料に含まれる粒子の累積50%粒子径を300μm以下、且つ累積90%粒子径を500μm以下となるように調整する工程を含むことを特徴とする容器詰トマト含有飲料の製造方法、及び容器詰トマト含有飲料の食感及び呈味改善方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、トマト果汁、果肉等のトマト由来物を含有する容器詰トマト含有飲料及びその製造方法、並びに容器詰トマト含有飲料の食感及び呈味改善方法に関する。
近年、我が国においては、高齢化社会の急激な進行等に伴い、食を通じた健康確保への関心が高まっている。また、高齢者層のみならず、中高年から若年者層にあっても、健康志向の強まりから、食事における栄養バランスの確保等のため、野菜飲料への需要は今後も増大するものと考えられる。
各種野菜の中でもトマトは特に幅広い年齢層に親しまれており、生食の他、飲料、調味料、その他加工品に亘り、多種多様な形態の製品に利用されている。また、最近の研究においては、トマトに含有されるリコピン等のポリフェノールの生理活性機能にも着目されており、これらの有効成分を手軽に摂取したいという要望は確実に高まってきている。
容器詰トマト含有飲料は、生食や加工品と比較して、一般的にトマトに含有されている有効成分を多量に、且つ手軽に摂取できるという特徴を有しており、トマト果実由来物100%のものの他、トマト以外の野菜汁及び/又は果汁を混合したもの、甘味料やフレーバーを添加したもの等、多種の形態の製品が既に上市されているが、トマトの有効成分をより多く一度に摂取するためには、少なくともトマトを主成分とした飲料であることが望ましい。
JAS規格で指定されたトマトジュース(トマトを破砕して搾汁し或いは裏ごしし、皮や種子等を除去したもの(以下「トマト搾汁」ともいう。)又はこれに食塩を加えたもの、及び、濃縮トマトを希釈して搾汁の状態に戻したもの又はこれに食塩を加えたもの)は、トマト本来の風味が再現されていることから、年齢層や性別を問わず、広く愛飲されているが、トマトには独特の風味があることから、個人の嗜好にも左右されやすく、果実飲料等と比較して、個人の好き嫌いが明確に分かれることも否めない。従って、より多くの消費者にトマト含有飲料を受け入れてもらうためには、広い嗜好要望を勘案し、風味、食感等の観点から、最適な製品展開を行う必要がある。
一部の消費者においてトマト含有飲料が忌避される主な要因として、トマトの有するドロつきのある高い粘度とざらつきのある食感、及び酸味と青臭み等の風味の問題が挙げられるが、上述のとおり個人の嗜好にはばらつきがあり、これらを一律で軽減もしくは強化することで解決できる問題ではない。
例えば、トマト含有飲料の酸味は、多くの消費者がトマト含有飲料を摂取したがらない理由の1つであり、種々の改良がなされてきた。例えば、酸味を低減させるために、特許文献1ではエリスリトールを添加しているが、エリスリトールの添加は酸味のみならずトマト本来の味からもかけ離れるものである。
一方で、トマト含有飲料のドロドロとした食感が苦手な消費者も多く存在する。これに対しては、予め粘度を調整した原料トマトジュースに、植物組織崩壊酵素を添加した上で、剪断処理する技術が存在するが(特許文献2)、植物組織崩壊酵素の添加や長時間の剪断処理が必要であり、処理が煩雑であるうえ、トマト含有飲料を低粘度化させると、酸味が際立つ一方で、甘味を感じにくくなり、甘味料等の添加を行わずに甘味が強いトマト含有飲料を提供することは困難であった。
以上の観点から、酸味が低減され、完熟した甘味及び味の厚みを強く感じることができ、且つ食感が滑らかで、さらっとしてより飲みやすい容器詰トマト含有飲料が望まれていた。
特開平9−117262号公報 特開2009−011287号公報
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、低粘度でさらっとした食感を有しながらも、酸味が抑制され、完熟したような甘み及び厚みが十分感じられる、呈味が良好で飲み易い容器詰トマト含有飲料及び容器詰トマト含有飲料の酸味抑制方法並びに容器詰トマト含有飲料の食感及び呈味改善方法を提供することにある。
本発明者らは、本課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、トマト含有飲料中のカルシウム濃度を特定の範囲に調整し、かつ飲料中の粒子の大きさを特定範囲に調整することによって、さらっとした食感を有しながらも、酸味が低減されると共に甘み及び厚みが十分感じられる、呈味が良好で飲み易い容器詰トマト含有飲料が得られることが明らかとなった。
すなわち、本発明は、以下(1)〜(8)を提供する。
(1)粒子を含有する容器詰トマト含有飲料であって、該粒子の累積50%粒子径が300μm以下であり、且つ累積90%粒子径が500μm以下であり、カルシウム濃度が55〜340mg/Lであることを特徴とする容器詰トマト含有飲料。
(2)前記カルシウムの含有量が90〜300mg/Lであることを特徴とする(1)に記載の容器詰トマト含有飲料。
(3)さらに、飲料液中における固形分濃度(Bx)に対する、クエン酸含有量(Ci)の比[Ci/Bx]が35〜90であることを特徴とする(1)乃至(2)に記載の容器詰トマト含有飲料。
(4)溶液中の固形分濃度が6.0〜12.0であることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれか1に記載の容器詰トマト含有飲料。
(5)カルシウム含有量を55〜340mg/Lに調整する工程と、
容器詰トマト含有飲料に含まれる粒子の累積50%粒子径を300μm以下、且つ累積90%粒子径を500μm以下となるように調整する工程を含むことを特徴とする容器詰トマト含有飲料の製造方法。
(6)さらに、飲料液中における固形分濃度(Bx)に対する、クエン酸含有量(Ci)の比[Ci/Bx]が35〜90に調整することを特徴とする(5)に記載の容器詰トマト含有飲料の製造方法。
(7)前記カルシウム含有量を55〜340mg/Lに調整する工程が、カルシウム又はその塩を配合することにより脱酸処理したトマト汁及び重炭酸置換又は炭酸置換された陰イオン交換樹脂に通液することにより脱酸処理したトマト汁を混合することにより行われることを特徴とする(5)乃至(6)のいずれか1に記載の容器詰トマト含有飲料の製造方法。
(8)カルシウム含有量を55〜340mg/Lに調整し、容器詰トマト含有飲料に含まれる粒子の累積50%粒子径を300μm以下、且つ累積90%粒子径を500μm以下となるように調整することを特徴とする容器詰トマト含有飲料の食感及び呈味改善方法。
(9)さらに、飲料液中における固形分濃度(Bx)に対する、クエン酸含有量(Ci)の比[Ci/Bx]を35〜90に調整することを特徴とする(8)に記載の容器詰トマト含有飲料の食感及び呈味改善方法。
本発明によれば、トマト含有飲料中のカルシウム濃度を特定の範囲に調整し、かつ飲料中の粒子の大きさを特定範囲に調整することによって、さらっとした食感を有しながらも、酸味が低減されると共に甘みが十分感じられる、呈味が良好で飲み易い容器詰トマト含有飲料及び容器詰トマト含有飲料の酸味抑制方法並びに容器詰トマト含有飲料の食感及び呈味改善方法を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されるものではない。
本発明においてトマト含有飲料とは、トマトジュースのみならず、これらトマトジュースと果汁や野菜汁を混合した所謂ミックスジュース、あるいはトマトジュースを配合した炭酸飲料等、トマト搾汁を主体とした飲料を意味するものであり、原料としてトマトの破断物、より具体的にはトマトを破砕して搾汁し、或いは裏ごしし、皮や種子等を除去して得られるトマト搾汁、及び、これらを濃縮したもの(濃縮トマト)を意味し(これらを希釈還元したものが含まれる)、JAS規格で指定されたトマトジュース、トマトピューレ、トマトペースト及び濃縮トマト等を含むものである。これらは、さらに他の成分(例えば、少量の食塩や香辛料、食品添加物等)を含有していてもよい。かかるトマト加工物の性状は、特に限定されず、例えば、液状、ゲル状、ペースト状(擬固体状)、半固体状、固体状のいずれであってもよい。なお、主原料とは、トマト含有飲料の総量に対して50重量%以上を占めるものをいう。
本発明のトマト含有飲料は、粒子を含有する容器詰トマト含有飲料であって、該粒子の累積50%粒子径が300μm以下であり、且つ累積90%粒子径が500μm以下であり、カルシウム濃度が55〜340mg/Lであることを特徴とする容器詰トマト含有飲料である。
(トマト含有飲料のカルシウム含有量)
トマト含有飲料中に含まれるカルシウム量は、55〜340mg/Lに調整される。トマト含有飲料において、カルシウム濃度が55mg/L以上含有すると、さらっとした状態であってもカルシウム由来の塩味(えんみ)がトマトの甘味を引き立て、トマト含有飲料の呈味を改善する機能を果たす傾向があるが、340mg/Lを上回る量含有すると、その機能よりもむしろカルシウム特有のエグ味が強く現れる傾向にあり、トマト含有飲料全体の呈味のバランスを崩すことになる。したがって、カルシウム量は、特定範囲量含むことがトマト含有飲料においては重要であり、好ましくは90〜300mg/L、さらに好ましくは100〜280mg/Lに調整することとする。
(トマト含有飲料の含有粒子径)
本発明に係るトマト含有飲料は、含有粒子径が600μm以下、好ましくは500μm以下、更に好ましくは350μm以下、最も好ましくは120μm以下である。このように、飲料中の粒子径を特定サイズ以下にすることにより、さらりとしてのど越しが良く、飲みやすい性状のトマト含有飲料になるだけでなく、飲料自体酸味が抑制され、その分低粘度であっても甘みを感じやすくなることがわかった。含有粒子径は、より小さい粒子径に限定するほど滑らかできめ細かい性状のトマト含有飲料となり、好ましい。
ここで、含有粒子径が600μm以下とは、粒子の全て(100%)が600μm以下であることを要求するものではなく、トマト含有飲料中に含有される粒子の90%以上、好ましくは95%以上の粒子の粒子径が600μm以下であればよい。
ここで、粒子の粒子径は、粒子の長径を測定したものであり、具体的には島津製作所社製のレーザ解析式粒度分布測定装置SALD−2100によって測定した値である。粒子としては、トマト由来の粒子、野菜由来の粒子、果物由来の粒子又はそれらの混合物が挙げられる。粒子には、繊維状のものも含まれるものとする。
(トマト含有飲料の累積頻度径)
本発明に係るトマト含有飲料が含有する粒子径は、粒度分布を測定したときに、粒度分布積算値の50%累積頻度径が300μm以下、好ましくは280μm以下、更に好ましくは275μm以下である。また、90%累積頻度径は、500μm以下、好ましくは495μm以下、更に好ましくは492μm以下である。
トマト含有飲料の粒子径の調整は、特に限定されるものではないが、代表的かつ簡便な手段はろ過である。用いる篩は、その果実の粉砕状況や繊維の硬さなどの質的なものにより、また処理時の圧力によっても変わるため、これに限定されるものではない。ろ過処理は、数段階に分けて、最初は目の粗いろ紙でろ過し、徐々に目の細かいろ紙を用いて段階的に行ってもよい。また、優位にはそれ自体大きな粒子を含まない透明トマト汁を使用することができる。
ここで、「a%累積頻度径」とは、累積粒子数が全粒子のa%に達したときの粒子径をいう。なお、粒度分布の測定は、粒度分布計を使用して行うことができ、具体的には、島津製作所社製のレーザ解析式粒度分布測定装置SALD−2100によって測定した値である。50%累積頻度径及び90%累積頻度径が上記範囲にあることで、よりさらっとしたテクスチャーが得られながらも、酸味が低減され、甘みが感じられ、完熟したトマト感のある、のどごしがより良いトマト含有飲料となる。このような粒度分布を有する粒子は、破砕又は磨砕、裏ごし、濾過等を適宜行うことにより得ることができる。また、このような粒子径調整のためには透明トマト汁を用いることも効果的である。
([Ci/Bx]比)
クエン酸(Ci)は、トマトに含有されている主要な有機酸の1つである。また、固形分濃度(Brix,Bx)は、溶液中の固形分濃度であり、本発明のトマト含有飲料は、6.0〜12.0、好ましくは6.3〜11.0、更に好ましくは6.5〜10.0である。本発明者らは、重量基準において、トマト含有飲料における固形分濃度(Bx)に対する、クエン酸含有量(Ci)の比[Ci/Bx]が特定の範囲内にある場合には、トマト飲料の完熟したような甘みが感じられ、良好な呈味となることを見出した。即ち、飲料液中のクエン酸の含有量:(Ci)(mg/100g)と固形分濃度:(Bx)の比率がトマト含有飲料の呈味と重要な相関関係があることを見出し、この数値によりトマト含有飲料における、完熟した甘み及び厚みを具現することが可能である。
本発明にあっては,[Ci/Bx]比は、35〜90、望ましくは40〜85、更に望ましくは45〜84である。[Ci/Bx]比の調整は、種々の[Ci/Bx]比を有する原材料を適宜選択したり、クエン酸単体を添加することによって適宜調整可能である。
トマト含有飲料は、トマト以外の野菜汁を含有してもよく、これら原料となる野菜の種類としては、特に限定されることなく、例えば、ナス、カボチャ、ピーマン、ゴーヤ、ナーベラ、トウガン、オクラ、エダマメ、サヤエンドウ、サヤインゲン、ソラマメ、トウガラシ、トウモロコシ、キュウリ等の果菜類、ニンジン、ゴボウ、タマネギ、タケノコ、レンコン、カブ、ダイコン、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、ラッキョウ、ニンニク、ショウガ等の根菜類、モロヘイヤ、アスパラガス、セロリ、ケール、チンゲンサイ、ホウレンソウ、コマツナ、キャベツ、レタス、ハクサイ、ブロッコリー、カリフラワー、ミツバ、パセリ、ネギ、シュンギク、ニラ等の葉茎類等が挙げられる。上記の野菜は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
また、本トマト含有飲料は、果実汁を含んでもよく、これら果実の種類としては、本発明の効果が発揮される限りにおいて特に限定されることなく、例えば、イチゴ、キウイフルーツ、ブドウ、モモ、パイナップル、グアバ、バナナ、マンゴー、アセロラ、プルーン、パパイヤ、パッションフルーツ、ウメ、ナシ、アンズ、ライチ、メロン、西洋ナシ、スモモ類、柑橘類果実類(オレンジ、温州ミカン、レモン、グレープフルーツ、ライム、マンダリン、ユズ、シークワーサー、タンジェリン、テンプルオレンジ、タンジェロ、カラマンシー等)等が挙げられる。上記の果実は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。なお、リンゴは、上記粒子径を有する粒子範囲に調整した場合、パルプの苦渋味が炭酸ガスの刺激と重なり、エグ味が強く感じるようになり、良質な果実感を得ることができなかったため、使用しないことが好ましい。
本発明のトマト含有飲料は、トマト本来の風味維持し、トマト本来の風味をより一層際立たせる観点から、トマト以外の野菜汁及び/又は果汁を一定比率以上含まないことが好ましい。即ち、飲料の総量に対するトマト以外の野菜汁及び果汁の総含有量が0〜10.0重量%、好ましくは0〜8.0重量%、さらに好ましくは0.0〜5.0重量%であることを意味する。トマト以外の野菜汁及び/又は果汁を一定以上含まないものは、トマト本来の甘みが際立ち、飲料形態としておいしく飲めるトマト含有飲料という、消費者への訴求力に優れた飲料となる。
(トマト含有飲料の製造方法)
本発明のトマト含有飲料は、主原料としてトマトを搾汁して得られるトマト汁を含有するものであって、トマト汁はトマト搾汁又はその濃縮物(これらの希釈還元物が含まれる。)であってもよいが、さらさら感等の観点から好ましくは透明トマト汁を優位に使用することができる。また、1又は複数のトマト汁をブレンドすることにより得ることが可能である。好ましくは、トマト搾汁又はその濃縮物(これらの希釈還元物が含まれる。)などのトマト汁及びカルシウム処理によって脱酸処理したトマト汁(脱酸トマト汁)を少なくとも含有するものである。本発明によれば、完熟トマトのような甘みがあり且つトマトの酸味が抑制されているにも関わらず、さらっとして格別に飲み易いトマト含有飲料が、再現性よく簡便に実現される。
本発明のトマト含有飲料の製造方法を説明するにあたり、まず原料として特に好適なトマト汁、透明トマト汁及び脱酸トマト汁などについて以下に説明することとする。
(トマト汁)
本発明の実施の形態において、トマト汁とは、トマトを破砕して搾汁し或いは裏ごしし、皮や種子等を除去して得られるトマト搾汁、及び、これらを濃縮したもの(濃縮トマト)を意味し(これらを希釈還元したものが含まれる)、JAS規格で指定されたトマトジュース、トマトピューレ、トマトペースト及び濃縮トマト等を包含する概念である。なお、トマトペーストとは、上記の濃縮トマトのうち、無塩可溶性固形分が24%以上のものを意味する。トマトペーストは、必要に応じて濃縮或いは希釈して用いることができ、特に限定されないが、飲料製造時の扱いやすさの観点から、無塩可溶性固形分が24〜40%のものが好ましい。一方、本明細書において、トマトピューレとは、上記の濃縮トマトのうち、無塩可溶性固形分が8%以上24%未満のものを意味する。これらは、さらに他の成分(例えば、少量の食塩や香辛料、食品添加物等)を含有していてもよい。かかるトマト加工物の性状は、特に限定されず、例えば、液状、ゲル状、ペースト状(擬固体状)、半固体状、固体状のいずれであってもよい。なお、主原料とは、容器詰トマト含有飲料の総量に対して50重量%以上を占めるものをいう。
なお、トマト汁の搾汁方法としては、リーマ等を用いて搾り取る方法、油圧プレス機、ローラー圧搾機やインライン搾汁機を用いて圧搾し搾汁する方法、パルパー・フィニッシャー等を用いて破砕し搾汁する方法、並びにクラッシャー等を用いて破砕し、エクストラクター等を用いて搾汁する方法が知られている。好ましくは、搾汁時の温度は、ペクチナーゼの失活温度以下の所謂コールドブレイク処理とする。
さらに、これらの方法に従って圧搾(搾汁)されたものを、所望により、ジューサーにかけてもよい。さらに、これらの方法に従って圧搾(搾汁)されたものを、所望により、ペクチナーゼやセルラーゼといった酵素処理、ジューサーにかけてもよい。
また、上記における濃縮方法としては、本願においては減圧濃縮、低温濃縮、真空濃縮、凍結濃縮、及び逆浸透濃縮等、加熱濃縮以外の手段が適用できる。
(透明トマト汁)
透明トマト汁は本発明の容器詰トマト含有飲料を製造するに当たって特に好適である。本明細書において、透明トマト汁とは、濁度の指標であるT%(660nmでの透過率)が10%以上のものを意味する。かかる透明トマト汁としては、上述したトマト搾汁或いは濃縮トマトを遠心分離等して得た上清を濃縮したもの(言い換えれば、トマト搾汁或いは濃縮トマトに含まれる水不溶性固形分の一部を除去した濃縮トマト)及びこれらを希釈還元したものが包含される。また、「透明」とは、Brix4.5において、Brix4.5を超えるものに対して、透明度に優れることを意味する。なお、透明トマト汁は、必要に応じて濃縮或いは希釈して用いることができ、特に限定されないが、飲料製造時の扱いやすさの観点から、無塩可溶性固形分が4〜70%のものが好ましい。
上記の透明トマト汁の調製は、当業界で公知の手法により適宜行うことができ、特に限定されない。例えば、常法にしたがい、上述したトマト搾汁、或いは濃縮トマトを遠心分離する等して得た上清を濃縮して濁度を10%以上とすることにより得ることができ、また、市販のトマト搾汁或いは濃縮トマトを濃縮することにより得ることもでき、さらには、市販の透明トマト汁を用いることもできる。市販品の透明トマト汁としては、特に限定されないが、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ社のクリアトマト濃縮汁等が挙げられる。
なお、透明トマト汁は、1種のみを単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
(脱酸トマト汁)
脱酸トマト汁は、トマト汁、好ましくは透明トマト汁を、脱酸処理することにより得られる。酸味を抑え、甘味を引き出したトマト含有飲料を作製するには、脱酸処理を行い、酸成分を低減させた1または2種類以上脱酸トマト汁を、一部含有することが好ましい。脱酸処理の手法に関しては、吸着剤処理や膜処理など、一般に用いられる脱酸処理を採用することができるが、好ましくはカルシウム又はその塩を配合することにより脱酸処理する「カルシウム脱酸」、及び重炭酸置換又は炭酸置換された陰イオン交換樹脂に通液することにより脱酸処理する「陰イオン交換樹脂脱酸」が採用される。「カルシウム脱酸」は、カルシウム由来の塩味(えんみ)がトマトの甘味を引き立て、トマト含有飲料の呈味を改善する点で効果的であり、また、操作も簡単である。また、「陰イオン交換樹脂脱酸」は透明トマト汁本来の味覚を維持する点で好適である。
脱酸トマト汁の原料として用いる透明トマト汁は、必要に応じて濃縮或いは希釈して用いることができる。高糖度の脱酸トマト汁を得たい場合は、Brixが8〜80であることが好ましいが、特に限定するものではない。なお、本明細書において、糖度とはBrix値を意味する。ここで、Brix値とは、溶液100g中に含まれる可溶性固形分(糖類など)のグラム量を計測する単位である。Brix値は、市販の屈折率計又は糖度計を用いて測定することができる。
また、本発明の脱酸トマト汁の原料として用いる透明トマト汁等は、特に限定されないが、Brix4.5調整時の酸度が0.1〜0.5であることが好ましい。酸度が低い透明トマト汁を用いることで得られる脱酸トマト汁の酸度が低くなる傾向にある。一方、透明トマト汁の酸度が高いほど、カルシウム又はその塩の配合による酸度の低減効果が顕著に発揮され易い傾向にある。なお、本明細書において、酸度は、0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液を用いた電位差滴定法により算出される、クエン酸換算での濃度(%)を意味する。
また、本発明の脱酸トマト汁の原料として用いる透明トマト汁等は、特に限定されないが、pHが3.7〜4.8、さらには4.2〜4.6であることが好ましい。pHが中性側に偏ると、カルシウム又はその塩の配合による効果が低くなり、得られる脱酸トマト汁のクエン酸の低減率が低くなる傾向にある。
(カルシウム脱酸トマト汁)
カルシウム脱酸とは、上記のトマト汁等、好ましくは透明トマト汁に、カルシウム又はその塩を配合することにより、トマト汁中の酸成分を除去することであり、処理後の透明トマト汁(脱酸トマト汁)において酸味が低減するものである。これは、透明トマト汁等に含まれる酸味成分、例えばクエン酸等のヒドロキシ酸及とカルシウムとが反応してカルシウム生成物(塩、水和物、又はキレート等)を形成することによるものと推定される。脱酸トマト汁の酸味を低減させるために配合されるカルシウム又はその塩の具体例としては、例えば、カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、コハク酸カルシウム、塩化カルシウム等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム及び乳酸カルシウムが好ましく、脱酸処理後トマト加工物の香味へ与える影響を極力抑える観点から、炭酸カルシウムがより好ましい。上記のカルシウム又はその塩の配合量は、脱酸トマト汁の所望する酸味に応じて適宜設定することができ、特に限定されない。カルシウム又はその塩を配合することにより生成するカルシウム生成物(塩、水和物、又はキレート等)を脱酸トマト汁から除去すると、脱酸トマト汁の酸味が一段と低減する。また、未反応のカルシウム又はその塩及びカルシウム生成物は白色の固形物が多く、かかる白色沈殿物の存在により飲料の見栄えが損なわれ得るとともに、他の飲料と混合した際に所望しない色変化を生じ得る。したがって、透明トマト汁にカルシウム又はその塩を配合した後、上記カルシウム生成物の少なくとも一部を除去することが好ましい。その際、未反応のカルシウム又はその塩を除去することがより好ましい。カルシウム生成物の除去方法は、濾過、遠心分離等の公知の手法を適宜適用して行うことができ、特に限定されない。とりわけ、脱酸トマト汁中に沈殿・析出・分散しているカルシウム生成物は、濾過法によって簡易且つ低コストで除去することができる。かかる濾過法を適用する場合、安価に透明性の高い脱酸トマト汁を得る観点から、珪藻土或いはフィルターを用いた濾過等を用いることが好ましい。
かくして得られる濾過、遠心分離等の処理を施した脱酸トマト汁は、不要な水不溶性固形分の少なくとも一部が除去され、且つ、カルシウム生成物が必要に応じて除去されることにより、そうでないものと比較して、低粘度であり、且つ、酸度が低減されたものとなる。そのため、かかる脱酸トマト汁を用いて、トマト含有飲料を調製することにより、得られるトマト含有飲料の粘度の低減、及び、酸度或いは酸味の低減が、再現性よく簡便に行われる。
(陰イオン交換樹脂脱酸トマト汁)
脱酸のもう1つの方法は陰イオン交換樹脂脱酸法であり、前述の透明トマト汁等を重炭酸置換又は炭酸置換された陰イオン交換樹脂に通液することにより、処理後の透明トマト汁(脱酸トマト汁)においてクエン酸等に由来する酸味を低減させるものである。これは、透明トマト汁等に含まれるクエン酸等の酸味成分が重炭酸置換又は炭酸置換することで除去され、また、置換した重炭酸が炭酸ガスとなって抜け出ることによるものと推定される。ここで、透明トマト汁等に含まれる酸味成分のなかでも、比較的に透明トマト汁中の含有量が多く、また比較的に酸味を強く感じさせる成分はクエン酸である。上述した酸味低減効果は、透明トマト汁等中のクエン酸の除去によるところが大きいと考えられる。陰イオン交換樹脂脱酸法によって得られた脱酸トマト汁は、カルシウム脱酸法によって得られた脱酸トマト汁に混合して使用することができる。
透明トマト汁等を脱酸処理するために用いる重炭酸置換又は炭酸置換された陰イオン交換樹脂は、重炭酸イオン又は炭酸イオンがイオン結合した陰イオン交換樹脂であることが必要とされる。その母材となる陰イオン交換樹脂は、強塩基性イオン交換樹脂又は弱塩基性イオン交換樹脂であることが好ましい。かかる強塩基性イオン交換樹脂又は弱塩基性イオン交換樹脂中に含まれるClイオン或いは水酸基等のイオン交換基を、重炭酸イオン又は炭酸イオンにイオン交換させることにより、重炭酸置換又は炭酸置換された陰イオン交換樹脂を簡易に得ることができる。
陰イオン交換樹脂脱酸法における透明トマト汁等の通液方法は、特に限定されず、上向流方式或いは下向流方式のいずれであっても構わないが、生産性の観点から、上向流方式が好ましい。重炭酸イオン又は炭酸イオンへの置換に伴い炭酸ガスが発生し得るが、上向流方式を採用すると炭酸ガスが通液方向に沿って抜けやすくなるので、陰イオン交換樹脂中或いはこれが配置されたカラム内の炭酸ガスの滞留による生産性の低下が抑制され得る。
このようにして得られる脱酸トマト汁は、透明トマト汁に含まれるクエン酸等の酸味成分が重炭酸置換又は炭酸置換することで除去されるばかりでなく、ろ過等の処理を施すことにより不要な水不溶性固形分の少なくとも一部が除去され、更には置換した重炭酸又は炭酸が炭酸ガスとなって抜け出ることにより、そうでないものと比較して、低粘度であり、且つ、酸度が低減されたものとなる。そのため、このような脱酸トマト汁を用いて、トマト含有飲料を調製することにより、得られるトマト含有飲料の粘度の低減、及び酸度或いは酸味の低減が、再現性よく簡便に行われる。
なお、脱酸トマト汁は、必要に応じて濃縮或いは希釈して用いることができるため、特に限定されないが、容器詰トマト含有飲料の低粘度化をより一層高める観点から、粘度が0〜400cP、好ましくは100〜400cP、さらには200〜300cPであることが好ましい。ここで、脱酸トマト汁の粘度は、トマトストレートBrix4.5換算で算出したものとする。また、粘度が0とは、粘度が0.5未満のもの、及び、検出限界以下のものを含む含意である。粘度の下限は、特に限定されないが、0.01cP以上であることが好ましい。
本発明のトマト含有飲料は、上述の加工処理した1又は複数のトマト加工物をブレンドすることにより製造することができ、好ましくは、トマト搾汁又はその濃縮物(これらの希釈還元物が含まれる。)などのトマト汁、カルシウム脱酸トマト汁及び陰イオン交換樹脂脱酸トマト汁の3種類を少なくとも含有するものである。
トマト含有飲料中に含まれるカルシウム量を前述のとおりの範囲に調整するには、カルシウム又はその塩を単独で添加することでも調整可能であるが、カルシウム又はその塩を配合することにより脱酸処理した脱酸トマト汁を、カルシウム添加処理がなされていないトマト汁と適宜ブレンドすることによっても調整可能である。カルシウム添加処理がなされていないトマト汁は、重炭酸置換又は炭酸置換された陰イオン交換樹脂に通液することにより脱酸処理した陰イオン交換樹脂脱酸トマト汁を使用すると、酸味が抑えられる一方で甘みが引き出された、呈味の改善されたトマト含有飲料を得ることが可能となる。
また、本発明のトマト含有飲料において、トマト汁と脱酸トマト汁(カルシウム脱酸トマト汁と陰イオン交換樹脂脱酸処理した脱酸トマト汁の混合物)との重量割合は、特に限定されないが、1.5〜4.5であることが好ましい。ここで、本明細書において、かかる重量割合は、トマトストレートBrix4.5換算で算出したものとする。トマトペーストと脱酸トマト汁とを上記の重量割合で含ませることにより、フルーツトマトのような甘みがあり且つトマトの酸味が抑制されたトマト含有飲料を再現性よく簡易に得ることができる。トマトの甘み及び酸味のバランスをより一層高める観点から、トマトペーストと透明トマト汁との重量割合は、2.5〜3.5であることが好ましい。
本発明に係るトマト含有飲料は、前述のように含有粒子径が600μm以下、好ましくは500μm以下、更に好ましくは350μm以下、最も好ましくは120μm以下に調整される。この調整は、既に調整済みのトマト汁を用いてもよいが、これらをブレンドした後に調整を行ってもよい。
本発明に係るトマト含有飲料は、前述のように果実由来の粒子又は野菜由来の粒子を含有してもよく、それにより、飲用したときに得られる果実感又は野菜感を、味、香り等の点から、より向上させることができる。それらは常法によって得ることが可能である。例えば、破砕、磨砕等の処理により、さらに所望により裏ごしすることにより得ることができる。さらに、ふるい等を使用して濾過することが好ましい。
破砕又は磨砕する場合には、例えば、原料としての果実又は野菜に対して、温める、煮る、蒸す等の加熱処理や、十分な水洗い、水にさらす、薬品処理する等の非加熱処理を施してから、ラインミキサー、エマルダー、カッターミル、ディスパー、ジューサーミキサー、マイルダー、ホモミキサー、高圧ホモジナイザー等の装置を使用して、破砕又は磨砕する。裏ごしは、裏ごし機等を使用して行うことができる。また、含有粒子径を600μm以下、好ましくは500μm以下、更に好ましくは350μm以下、最も好ましくは120μm以下にするために使用するふるいとしては、その果実の粉砕状況や繊維の硬さなどの質的なものにより、また処理時の圧力等を勘案して適宜選択することができる。
また、本発明に係るトマト含有飲料は、上記成分の他、水や、公知の飲料に含まれる材料(成分)、例えば、酸味料、香料、ミネラル分、ビタミン類、色素成分、栄養成分、酸化防止剤等を含有してもよい。
水は、飲用に適した水であればよく、例えば、純水、硬水、軟水、イオン交換水等のほか、これらの水を脱気処理した脱気水等が挙げられる
酸味料としては、例えば、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、又はそれらの塩類が挙げられ、中でも、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸等が好ましい。
香料としては、例えば、柑橘その他果実から抽出した香料、果汁又は果実ピューレ、植物の種実、根茎、木皮、葉等又はこれらの抽出物、乳又は乳製品、合成香料等が挙げられる。
ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンD及びビタミンB等が挙げられる。
ミネラル分としては、例えば、カルシウム、クロム、銅、フッ素、ヨウ素、鉄、マグネシウム、マンガン、リン、セレン、ケイ素、モリブデン及び亜鉛等が挙げられる。
色素成分としては、例えば、クロレラ、葉緑素等が挙げられる。
栄養成分としては、例えば、L−アスコルビン酸やそのナトリウム塩等が挙げられる。
機能性成分としては、例えば、コラーゲン、鮫軟骨、牡蛎エキス、キトサン、プロポリス、オクタコサノール、トコフェロール、カロチン、ポリフェノール、梅エキス、アロエ、乳酸菌、霊芝、アガリクス等が挙げられる。
また、本発明に係るトマト含有飲料は、その他、各種エステル類、乳化剤、保存料、調味料、ガム、油、pH調整剤、品質安定剤等を含有してもよい。
本発明に係るトマト含有飲料のpHは、3.7〜5.4が好ましく、3.8〜4.8、さらには4.2〜4.6であることがより好ましい。トマト含有飲料のpHが上記範囲内にあると、果実感又は野菜感を損なうことなく、ほどよい酸味が得られる。pHの調整は、一般的に用いられるpH調整剤を配合することにより行われる。pH調整剤としては、重曹が好ましい。pH調整剤として重曹を採用することにより、上述したpH調整機能に加えて、さらにトマトのエグ味(青臭さ、生臭さ等)が緩和されてトマト含有飲料の飲み易さが向上する傾向にある。
本発明のトマト含有飲料は、粘度が100〜800cP、より好ましくは100〜400cP、さらに好ましくは200〜300cPに調整されていることが好ましい。この程度の低粘度であることにより、殊にさらっとして、飲み易さが高められる傾向にある。
本発明に係るトマト含有飲料は、容器に充填した形態で提供することができる。当該容器としては、紙容器、金属缶、PETボトル等のプラスチック製ボトル、瓶などの通常の野菜果汁飲料に用いられる容器を使用可能である。
本発明に係るトマト含有飲料は、特定の粒子を特定量使用する以外、従来公知の方法により製造することができる。例えば、水に、前述した方法によって得られた野菜由来の粒子及び/又は果実由来の粒子、そして所望により野菜汁及び/又は果汁、さらに所望により前述した他の成分を添加して攪拌し、飲料原液を調製する。そして、必要に応じてpHの調整及び/又は加熱殺菌をしてから冷却した後、容器に充填して、殺菌する工程により製造することができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明は限定されるものではない。
(トマトペースト1〜3)
70℃以下でトマトを破砕(コールドブレイク)して搾汁後、裏ごしし、皮や種子等を除去して得た濃縮したトマト加工物を、目開きが異なるメッシュ処理をして3種類のトマトペーストを得た。
(脱酸トマト汁試料A:カルシウム脱酸)
本実施例において使用するカルシウム脱酸トマト汁は以下の手順で調製されたものである。
まず、市販の透明濃縮トマト加工物(Clear Tomato Concentrate 60°Brix、LYCORED社製、Brix:60、酸度:3.64、pH:4.15)をイオン交換水で約4倍に希釈還元して、透明トマト汁(Brix:17.5、酸度:1.06、pH:4.2、Brix4.5調整時の粘度:1.36cP)を準備した。次に、得られた透明トマト汁1500kgをタンク内に仕込み、80℃まで加温した後、タンク上部から炭酸カルシウム12.75kgを投入し、60分間撹拌して、発生する炭酸ガスを排出した。タンクを20℃まで冷却した後、遠心分離し、市販の珪藻土を用いて濾過し、さらに5μmのフィルターで濾過することで固形分を除去した。
(脱酸トマト汁試料B:樹脂脱酸)
本実施例において使用する陰イオン交換脱酸トマト汁は以下の手順で調製されたものである。
即ち、強塩基性陰イオン交換樹脂(三菱化学株式会社製、PA316)をタンクに充填し、これに3%NaOH水溶液を通液した後、イオン交換水、3%NaHCO水溶液、イオン交換水を順次通液して、重炭酸置換を行った。
次に、市販の透明濃縮トマト加工物(Clear Tomato Concentrate 60°Brix、LYCORED社製、Brix:60、酸度:3.64、pH:4.15)をイオン交換水で約4倍に希釈還元して、透明トマト汁(Brix:14.6、酸度:0.86、pH:4.2、Brix4.5調整時の粘度:1.36cP)を準備し、これを重炭酸置換した陰イオン交換樹脂に上向流方式で複数回通液した後、100メッシュのフィルターで濾過することにより、本実施例の脱酸トマト汁を得た。
(サンプル調製)
上記のトマトペースト1〜3、市販の混濁トマト汁及び脱酸トマト汁試料A,Bを、Bx5.0に換算した際に表2の割合となるように配合し(小数点第三位を四捨五入)、その後、目標のBxになるよう加水調整を行い、比較例1〜4及び実施例1〜10を得た。
Figure 0005249453
上記実施例において、各種含有成分の種測定方法は、例えば以下の方法によって行うことができる。
なお、測定方法については、以下に示す方法以外であっても、公知方法から適宜選択することができる。
また、本願発明の評価にあって特に必須ではない数値項目については、適宜測定を省略することができる。
<Brix>
光学屈折率計(アタゴ社製、Digital Refractometers、RX5000α−Bev)を用いて、Brixを測定した。
<カルシウム量>
カルシウム(Ca)含有量は、ICP発光分析法により定量を行った。また、カリウム(K)の含有量は、原子吸光光度法により定量を行った。詳しくは、『第8版食品添加物公定書解読書』B一般分析法B62(株式会社廣川書店.平成19年12月10日発行)参照のこと。
<クエン酸>
LC−10ADvp(株式会社 島津製作所)を用いて、HPLC法に基づいてクエン酸の含有量を求めた。
サンプル調整法:
サンプルを適量はかりとり、蒸留水に懸濁後、フィルターろ過して分析に供した。
HPLC測定条件:
検出器:紫外可視吸光光度計 SPD−20AV(株式会社 島津製作所)
カラム:Shodex RSpak KC−811×2、φ8mm×300mm(昭和電工株式会社)
カラム温度:40℃
移動相:3mmol/L過塩素酸
反応液:0.2mmol/Lブロムチモールブルー含有
15mmol/Lりん酸水素二ナトリウム溶液
流量:移動相0.5ml/min、反応液0.5ml/min
測定波長:445nm
<粒子径測定>
レーザー解析粒度分布測定装置(島津製作所製「SALD−2100」を用い、10積算質量%の粒子径(D10)、50積算質量%の粒子径(D50)、90積算質量%の粒子径(D90)を測定した。
<官能評価試験>
トマト含有飲料の官能評価試験は、7人のパネラーに委託して行い、各項目を以下に示す基準で評価したものである。ここで、表中の数値は、7人のパネラーの評価の平均値である。
<酸味>
◎:感じられない
○:わずかに感じる
△:感じる
×:強く感じる
<完熟したような甘み>
◎:十分に感じる
○:感じる
△:わずかに感じる
×:あまり感じられない
<エグ味>
◎:感じられない
○:わずかに感じる
△:感じる
×:強く感じる
<厚み>
◎:十分に感じる
○:感じる
△:わずかに感じる
×:あまり感じられない
<飲みやすさ>
◎:とても飲みやすい
○:飲みやすい
△:やや飲みづらい
×:飲みづらい
<総合評価>
各評価項目を総合的に勘案して、商品としての適性を評価した。
◎:商品としての適性に非常に優れている
○:商品としての適性に優れている
△:商品としての適性は標準的である
×:商品としての適性に劣っている
以下に、実施例及び比較例についての各種測定結果及び官能評価結果を示す。
Figure 0005249453
(考察)
実施例1〜10は、エグ味が感じられないか、気にならない程度であり、酸味も抑えられ、完熟したような甘み及び味の厚みがあり、総合評価において、比較例1〜4と比較して高い官能評価結果を得られた。特に実施例3〜5、8及び9は、甘み及び味の厚みがより強く感じられた。
一方、比較例1はエグ味を強く感じ、比較例2は味の厚みが感じられず、比較例3及び4は完熟したような甘みが感じられない飲料であったため、実施例より商品適性が劣っているものと判断された。
このことから、トマト含有飲料中のカルシウム濃度を特定の範囲に調整し、かつ飲料中の粒子の大きさを特定範囲に調整することによって、さらっとした食感を有しながらも、酸味が抑制され、完熟したような甘み及び味の厚みが十分感じられる、呈味が良好で飲み易いトマト含有飲料を提供することができる。
これによって、トマト含有飲料に対する消費者の幅広い嗜好に応えられる、サラッとした食感を有しながらも、甘みが感じられるトマト含有飲料及びその製造方法を提供することができる。
また、本願に係る方法は、トマトの酸味を抑制する方法としても、広く一般的に適用できるものであり、その応用範囲は広い。
本発明によれば、さらっとした食感を有しながらも、酸味が抑制され、完熟したような甘み及び味の厚みが十分感じられる、呈味が良好で飲み易い容器詰トマト含有飲料並びに容器詰トマト含有飲料の食感及び呈味改善方法を提供することができる。

Claims (9)

  1. 粒子を含有し、甘味付与剤を含まない容器詰トマト含有飲料であって、該粒子の累積50%粒子径が300μm以下であり、且つ累積90%粒子径が500μm以下であり、カルシウム濃度が55〜340mg/Lであり、pHが4.2〜4.6であることを特徴とする容器詰トマト含有飲料。
  2. 前記カルシウムの含有量が90〜300mg/Lであることを特徴とする請求項1に記載の容器詰トマト含有飲料。
  3. さらに、飲料液中における固形分濃度(Bx)に対する、クエン酸含有量(Ci)の比[Ci/Bx]が35〜90であることを特徴とする請求項1乃至2に記載の容器詰トマト含有飲料。
  4. 溶液中の固形分濃度が6.0〜12.0であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の容器詰トマト含有飲料。
  5. カルシウム含有量を55〜340mg/Lに調整する工程と、容器詰トマト含有飲料に含まれる粒子の累積50%粒子径を350μm以下、且つ累積90%粒子径を500μm以下となるように調整する工程を含むことを特徴とする、甘味付与剤を含まず、且つpHが4.2〜4.6である容器詰トマト含有飲料の製造方法。
  6. さらに、飲料液中における固形分濃度(Bx)に対する、クエン酸含有量(Ci)の比[Ci/Bx]が35〜90に調整することを特徴とする請求項5に記載の容器詰トマト含有飲料の製造方法。
  7. 前記カルシウム含有量を55〜340mg/Lに調整する工程が、カルシウム又はその塩を配合することにより脱酸処理したトマト汁及び重炭酸置換又は炭酸置換された陰イオン交換樹脂に通液することにより脱酸処理したトマト汁を混合することにより行われることを特徴とする請求項5乃至6のいずれか1項に記載の容器詰トマト含有飲料の製造方法。
  8. カルシウム含有量を55〜340mg/Lに調整し、容器詰トマト含有飲料に含まれる粒子の累積50%粒子径を350μm以下、且つ累積90%粒子径を500μm以下となるように調整することを特徴とする、甘味付与剤を含まず、且つpHが4.2〜4.6である容器詰トマト含有飲料の食感及び呈味改善方法。
  9. さらに、飲料液中における固形分濃度(Bx)に対する、クエン酸含有量(Ci)の比[Ci/Bx]を35〜90に調整することを特徴とする請求項8に記載の容器詰トマト含有飲料の食感及び呈味改善方法。
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