JP5248654B2 - 飛翔害虫誘引防除剤、飛翔害虫誘引防除装置、及び飛翔害虫誘引防除方法 - Google Patents

飛翔害虫誘引防除剤、飛翔害虫誘引防除装置、及び飛翔害虫誘引防除方法 Download PDF

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Description

本発明は、ハエ類、蚊類、コバエ類等の飛翔害虫、特に、ショウジョウバエ、ノミバエ、クロバネキノコバエ、キノコバエ、チョウバエ等のコバエ類を誘引して防除する飛翔害虫誘引防除剤、飛翔害虫誘引防除装置、及び飛翔害虫誘引防除方法に関する。
コバエ等の飛翔害虫を防除する目的で、飛翔害虫を捕獲する容器の内部に誘引剤と殺虫剤とを仕込んだ装置が市販されている。ここで、飛翔害虫を効率よく捕獲するためには、誘引効果の高いものを誘引剤として使用することが重要となる。従来においては、例えば、ハエ取り用トラップに使用する誘引剤として、果実、果実加工品、醸造酒、蒸留酒、酒粕、乳酸飲料等を用いるものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
特許文献1では、誘引剤がハエ取りトラップの内部に仕込まれている。ハエはトラップに設けられた誘引孔から発せられる誘引剤の芳香成分に誘引され、当該誘引孔からトラップ内部に侵入し、体表面が誘引剤で濡らされることにより、そのまま脱出不能となって、トラップ内で死滅するしくみとなっている。
特開2002−20213号公報
特許文献1に示されている果実、果実加工品、醸造酒、蒸留酒、酒粕、乳酸飲料等を有効成分とする誘引剤は、例えば、ハエ類を対象とした誘引剤として広く用いられている。しかしながら、現状では、これらの誘引剤についての検討は十分になされているとは言えず、さらに高い誘引効果が望まれるところである。
また、誘引した飛翔害虫を確実に死滅させるためには、忌避性が少なく、且つ十分な殺虫力を有する物質を殺虫剤として使用することが必要となる。この場合、殺虫剤と誘引剤との組み合わせが飛翔害虫誘引防除剤の効能に大きく影響する。しかしながら、現状においては、飛翔害虫に対して誘引効果が高く、且つ確実に防除効果(殺虫効果)を発揮し得る誘引剤と殺虫剤との組み合わせは十分に見出されていない。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、コバエに対して優れた誘引効果及び防除効果を示す飛翔害虫誘引防除剤、及び飛翔害虫誘引防除装置を提供することを目的とする。また、当該飛翔害虫誘引防除装置を用いて行う飛翔害虫誘引防除方法を確立することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明に係るコバエ用の飛翔害虫誘引防除剤の特徴構成は、
バルサミコ酢又はバルサミコ酢を含む誘引物質と、ジノテフランと、を含むことにある。
コバエに対して効果的な防除を行うためには、上述のように、誘引剤と殺虫剤との組み合わせが重要となる。ここで、誘引効果が高い誘引剤を選択すれば、殺虫剤の分量に関係なく、当該殺虫剤の近傍に多数のコバエを引き寄せることができる。
この点、本構成のコバエ用の飛翔害虫誘引防除剤であれば、誘引剤としてバルサミコ酢又はバルサミコ酢を含む誘引物質を使用している。本発明者らによる鋭意研究の結果、バルサミコ酢はコバエに対して特に誘引効果が高いことが判明した。そこで、この誘引効果の優れたバルサミコ酢又はバルサミコ酢を含む誘引物質と殺虫剤としてジノテフランとを組み合わせると、コバエジノテフランの近傍にまで大量に誘引することができる。しかも、誘引したコバエジノテフランの殺虫作用により確実に死滅させることが可能となる。ジノテフランは水溶性であるため、誘引されたコバエがジノテフランを少量でも接触又は摂取すれば、確実にコバエを死滅させることができる。
本発明に係るコバエ用の飛翔害虫誘引防除剤において、
前記バルサミコ酢を含む誘引物質は、前記バルサミコ酢と、醸造酢、酒類、酒粕、糖類、果実、果実加工品、乳酸製品、魚介類、魚介類加工品、魚介類抽出物、食肉、食肉加工品、食肉抽出物、及び香料からなる群から選択される少なくとも一つと、の混合物であることが好ましい。
本構成のコバエ用の飛翔害虫誘引防除剤では、バルサミコ酢の他にも誘引剤として、醸造酢、酒類、酒粕、糖類、果実、果実加工品、乳酸製品、魚介類、魚介類加工品、魚介類抽出物、食肉、食肉加工品、食肉抽出物、及び香料からなる群から選択される少なくとも一つをさらに含んでいる。このため、飛翔害虫誘引防除剤から種々の芳香成分を発散させることができ、結果として、コバエに対して高い誘引効果を示すことができる。また、他の種類の誘引剤を含めることにより、バルサミコ酢の使用量を低減することができるので、コバエ用の飛翔害虫誘引防除剤として有用である。
上記課題を解決するための本発明に係るコバエ用の飛翔害虫誘引防除装置の特徴構成は、
コバエを捕集する筐体を備えたコバエ用の飛翔害虫誘引防除装置であって、バルサミコ酢又はバルサミコ酢を含む誘引物質を発散させて前記コバエを前記筐体の内部に誘引する誘引部と、誘引した前記コバエに対してジノテフランを接触又は摂取させることにより死滅させる殺虫部と、を備えたことにある。
本構成のコバエ用の飛翔害虫誘引防除装置であれば、上述のコバエ用の飛翔害虫誘引防除剤と同様の優れた作用効果を得ることができる。すなわち、誘引効果の優れたバルサミコ酢又はバルサミコ酢を含む誘引物質を発散させる誘引部がコバエを筐体の内部に大量に誘引し、殺虫部において誘引したコバエジノテフランを接触又は摂取させることにより確実に死滅させることが可能となる。ジノテフランは水溶性であるため、誘引されたコバエがジノテフランを少量でも接触又は摂取すれば、確実にコバエを死滅させることができる。
本発明に係るコバエ用の飛翔害虫誘引防除装置において、
前記筺体の内部において、前記誘引部と前記殺虫部とを一体に構成してあることが好ましい。
筺体の内部において、誘引部と殺虫部とを一体に構成してある本構成のコバエ用の飛翔害虫誘引防除装置であれば、コバエジノテフランが存在する殺虫部の位置にまで確実に誘引することができる。また、誘引部と殺虫部とを一体化することにより、装置構成を簡素化することができる。
本発明に係るコバエ用の飛翔害虫誘引防除装置において、
前記筐体の内部において、前記誘引部と前記殺虫部とを夫々独立して設けることも可能である。
筐体の内部において、誘引部と殺虫部とを夫々独立して設けてある本構成のコバエ用の飛翔害虫誘引防除装置であれば、誘引剤とジノテフランとは互いに接触しない状態で配置される。誘引剤が揮散することにより誘引効果が低下した場合には、誘引部にバルサミコ酢又はバルサミコ酢を含む誘引物質を補充したり、あるいは誘引部自体を新品に取り替えることが容易となる。さらに、飛翔害虫誘引防除装置を廃棄する場合、ジノテフランを含む殺虫部のみを分別して廃棄することができるので、環境にも優しい。
上記課題を解決するための本発明に係るコバエ用の飛翔害虫誘引防除方法の特徴構成は、
コバエを捕集する筐体を備えたコバエ用の飛翔害虫誘引防除装置を用いて行うコバエ用の飛翔害虫誘引防除方法であって、バルサミコ酢又はバルサミコ酢を含む誘引物質を発散させて前記コバエを前記筐体の内部に誘引する誘引工程と、誘引した前記コバエに対してジノテフランを接触又は摂取させることにより死滅させる殺虫工程と、を包含することにある。
本構成のコバエ用の飛翔害虫誘引防除方法であれば、上述のコバエ用の飛翔害虫誘引防除剤及び飛翔害虫誘引防除装置と同様の優れた作用効果を得ることができる。すなわち、誘引効果の優れたバルサミコ酢又はバルサミコ酢を含む誘引物質を発散させてコバエを筐体の内部に大量に誘引し、誘引したコバエジノテフランを接触又は摂取させることにより確実に死滅させることが可能となる。ジノテフランは水溶性であるため、誘引されたコバエがジノテフランを少量でも接触又は摂取すれば、確実にコバエを死滅させることができる。
本発明の第1実施形態による飛翔害虫誘引防除装置の断面を示した概略構成図である。 本発明の第2実施形態による飛翔害虫誘引防除装置の断面を示した概略構成図である。 本発明の第3実施形態による飛翔害虫誘引防除装置の断面を示した概略構成図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図しない。
初めに、本明細書中の用語「バルサミコ酢」について説明する。バルサミコ酢とは、一般には、イタリア北部のエミリア・ロマーニャ州モデナ地方において、ブドウを原料に伝統的製法で作られている酢を意味する。本場のバルサミコ酢は、省令や法律(例えば、1965年発令の省令であるアチュート・バルサミコ・ディ・モデナ)によって定義されている。アチュート・バルサミコ・ディ・モデナによれば、バルサミコ酢は、伝統的技術により製造され、濃縮ブドウ果汁に少なくとも10年熟成したワインビネガーを所定の割合含めることにより、濃縮ブドウ果汁のアルコール発酵及び酢酸発酵を促進し、独特の風味や芳香を醸し出すものにされる。バルサミコ酢の熟成には、例えば、樫、栗、桑、ネズ等の木材で作られた樽が使用される。完成したバルサミコ酢は、甘酸っぱさを有しており、芳香が深く、濃褐色を呈した液体である。バルサミコ酢は、酢酸含有量が6重量%以上、アルコール度が1.5重量%以下、糖分含有量が30g/L以上のものが市場に流通される。
このように、バルサミコ酢は、本来、厳密に定義された食酢である。しかしながら、本発明における「バルサミコ酢」は、その構成成分、性質、状態等が、上述した「本場のバルサミコ酢」と実質同等であればよい。従って、例えば、イタリア以外の国で製造された食酢であっても、性質が「本場のバルサミコ酢」と実質同等であれば「バルサミコ酢」とみなし、そのような食酢も本発明の範囲に含まれる。
〔飛翔害虫誘引防除剤〕
本発明の飛翔害虫誘引防除剤は、主成分(有効成分)として、バルサミコ酢又はバルサミコ酢を含む誘引物質と殺虫剤とを含む。本発明者らの鋭意研究の結果、バルサミコ酢は飛翔害虫に対して特に誘引効果が高いことが判明した。そこで、この誘引効果の優れたバルサミコ酢又はバルサミコ酢を含む誘引物質と殺虫剤とを組み合わせることにより、ハエ類、蚊類、コバエ類等の種々の飛翔害虫を殺虫剤の近傍にまで大量に誘引しつつ、誘引した飛翔害虫を殺虫剤の殺虫作用により確実に死滅させることが可能となる。
バルサミコ酢又はバルサミコ酢を含む誘引物質と組み合わせる殺虫剤としては、例えば、アレスリン、プラレトリン、イミプロトリン、フタルスリン、トランスフルトリン、レスメトリン、フェノトリン、シフェノトリン、ペルメトリン、サイパーメスリン、エトフェンプロックス、シフルスリン、デルタメスリン、ビフェントリン、フェンバレレート、フェンプロパスリン、エムペンスリン、シラフルオフェン、メトフルトリン、プロフルトリン、天然ピレトリン、除虫菊エキス、等のピレスロイド系化合物、カルバリル、プロポクスル、メソミル、チオジカルブ等のカーバメート系化合物、フェニトロチオン、ダイアジノン、マラソン、ピリダフェンチオン、プロチオホス、ホキシム、クロルピリホス、ジクロルボス等の有機リン系化合物、メトキサジアゾン等のオキサジアゾール系化合物、フィプロニル等のフェニルピラゾール系化合物、アミドフルメト等のスルホンアミド系化合物、ジノテフラン、イミダクロプリド等のネオニコチノイド系化合物、メトプレン、ハイドロプレン、ピリプロキシフェン等の昆虫成長制御化合物等が挙げられ、これらを単独又は混合して使用することができる。
これらの殺虫剤のうち、とりわけ、ネオニコチノイド系化合物を有効成分とするネオニコチノイド系殺虫剤を好適に使用することができる。ネオニコチノイド系殺虫剤としては、各種のものが使用可能である。特に、水溶性のものは使用に適している。ネオニコチノイド系殺虫剤は、飛翔害虫に対する忌避性が小さく、飛翔害虫をバルサミコ酢又はバルサミコ酢を含む誘引物質の高い誘引作用により殺虫剤の近傍にまで効果的に引き寄せることができる。そして、誘引された飛翔害虫が殺虫剤を少量でも接触又は摂取すれば、確実に飛翔害虫を死滅させることができる。最も好適に使用可能な殺虫剤は、ジノテフランである。ジノテフランもネオニコチノイド系殺虫剤の一種であり、水溶性である。飛翔害虫誘引防除剤中のジノテフランの含有量は、0.01〜1.0重量%とすることが好ましい。ジノテフランの含有量が0.01重量%未満では十分な殺虫効果が得られないおそれがある。一方、ジノテフランの含有量を1.0重量%より大きくしても殺虫効果は大きく向上しないため、通常、1.0重量%が上限となる。
本発明の飛翔害虫誘引防除剤は、上記バルサミコ酢を含む誘引物質として、バルサミコ酢の他に、醸造酢、酒類、酒粕、糖類、果実、果実加工品、乳酸製品、魚介類、魚介類加工品、魚介類抽出物、食肉、食肉加工品、食肉抽出物、及び香料からなる群から選択される少なくとも一つ(以下、第三成分と記す場合がある。)をさらに含んでも構わない。
醸造酢の例としては、リンゴ酢、米酢、玄米酢、粕酢、大豆酢、黒酢、ワインビネガー、すだち酢、赤酢、柿酢、麦芽酢、紫イモ酢、サトウキビ酢等が挙げられる。
酒類の例としては、紹興酒、桂花陳酒、焼酎、ウォッカ、日本酒、果実酒、ブドウ酒、リンゴ酒、ウメ酒、ワイン、シャンパン、ブランデー、ウイスキー、ビール、発泡酒、ラム酒、ジン、リキュール、白酒、黄酒、マッコリ、泡盛等が挙げられる。
糖類の例としては、砂糖、黒砂糖、ハチミツ類、液糖、ブドウ糖、ショ糖、麦芽糖、三温糖、オリゴ糖、多糖類、甜菜糖、メープルシロップ、トレハロース等が挙げられる。
果実の例としては、リンゴ、オレンジ、ミカン、レモン、ブドウ、メロン、スイカ、ナシ、バナナ、マンゴー、パイナップル、キーウイ、パパイア、イチゴ、カキ、アボガド、セイヨウスモモ(プルーン)、ブルーベリー、ヤマモモ、オウトウ、モモ等が挙げられる。
果実加工品の例としては、フルーツジュース、フルーツゼリー、フルーツ寒天、フルーツ缶詰、ドライフルーツ、フルーツペースト、フルーツピューレ等が挙げられる。
乳酸製品の例としては、カルピス(登録商標)、ヤクルト(登録商標)等の乳酸飲料、ヨーグルト、チーズ、漬物等の乳酸食品が挙げられる。
魚介類の例としては、サバ、カツオ、ムロアジ、イワシ、マグロ、ブリ、タイ、イカ、タコ、エビ、カニ、コイ、フナ、アユ、ナマズ、ブラックバス等が挙げられる。
魚介類加工品の例としては、カツオブシ、サバブシ、干物、練物、魚粉、魚卵加工品等が挙げられる。
魚介類抽出物の例としては、カツオブシフレーバー、サバブシフレーバー、ムロアジフレーバー、エビフレーバー、カニフレーバー、魚油等が挙げられる。
食肉の例としては、牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉、馬肉等が挙げられる。
食肉加工品の例としては、ハム、ソーセージ、ベーコン、ひき肉、人造肉、干肉、燻製肉、肉骨粉等が挙げられる。
食肉抽出物の例としては、牛肉エキス、豚肉エキス、鶏肉エキス、羊肉エキス、馬肉エキス、ビーフフレーバー、ポークフレーバー、チキンフレーバー、動物性油脂等が挙げられる。
香料の例としては、合成香料、天然香料、調合香料等が挙げられる。これらのうち、合成香料としては、イソブタノール、イソアミルアルコール、フェネチルアルコール、イソ酪酸、乳酸エチル、2−メチル酪酸、メチオノール、ベンジルアルコール、1−メチル−1−ペンタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、3−オクタノール、cis−3−ヘキセノール、1−オクテン−3−オール、1−ペンタノール、2−メチルブタナール、n−ヘキサナール、n−ヘプタナール、アセトアルデヒド、イソブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、メチルバニリン、ヘリオトロビン、フルフラール、アセトイン、ソトロン、2−ヘプタノン、ジアセチル、イソ酪酸エチル、吉草酸エチル、イソ吉草酸エチル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、安息香酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸、乳酸、プロピオン酸、パルミチン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸等が挙げられる。その他、香料として、ローストシュガーフレーバー、ゴマ油フレーバー、オニオンフレーバー、キャベツフレーバー、ヌカフレーバー、ミソフレーバー、ローストショウユフレーバー、ビールフレーバー、コーンフレーバー、ピーナッツフレーバー、バターフレーバー、チーズフレーバー、ミルクフレーバー、ハニーフレーバー、メープルエッセンス等も使用可能である。
上記列挙した第三成分も、バルサミコ酢と同様に誘引剤として機能する。飛翔害虫誘引防除剤に第三成分である他の誘引剤を追加することにより、当該飛翔害虫誘引防除剤から種々の芳香成分を発散させることができ、結果として、種々の飛翔害虫に対して高い誘引効果を示すことができる。また、第三成分である他の誘引剤(すなわち、バルサミコ酢とは異なる誘引剤)を含めることにより、比較的高価なバルサミコ酢の使用量を低減することができるので、飛翔害虫誘引防除剤として特に有用である。
なお、本発明の飛翔害虫誘引防除剤には、上述した物質の他に、苦味剤、防腐剤、安定剤、甘味料、着色料、保存料、油脂、ゲル化剤、乳化剤、脂肪族多価アルコール又は糖アルコールなどの蒸散抑制物質、増量剤、精製水等のさらなる成分を含ませても構わない。上記蒸散抑制物質としては、グリセリン、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、トリメチルグリシン、キシリトール、ソルビトール、ジグリセロール等が挙げられる。
〔飛翔害虫誘引防除装置〕
本発明においては、上記の飛翔害虫誘引防除剤を用いて、飛翔害虫を捕集する飛翔害虫誘引防除装置を構成することができる。以下、本発明の飛翔害虫誘引防除装置の実施形態について、図1〜図3を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態による飛翔害虫誘引防除装置100の断面を示した概略構成図である。本実施形態の飛翔害虫誘引防除装置100は、通常、水平な設置面に据え付けて使用されるが、底面側を壁等の垂直面に取り付けることも可能である。本実施形態の飛翔害虫誘引防除装置100は、コバエ等の飛翔害虫Xを捕集する筐体10を備える。筺体10は、本体1と蓋部2とから構成される。本体1には、後述の誘引部3と殺虫部4とが設置される。蓋部2には、飛翔害虫Xを引き込む誘引孔5が形成されている。さらに、蓋部2は、本体1に対して着脱可能に構成される。これにより、必要に応じて、本体1の内部の誘引部3や殺虫部4を取り替えたり、本体1の内部に誘引されて死滅した飛翔害虫Xの死骸を容易に取り出すことができる。
誘引部3にはバルサミコ酢又はバルサミコ酢を含む誘引物質が仕込まれている。従って、誘引部3は、例えば、液体吸収可能なスポンジ、セルロース、紙、繊維集合体等で構成することができる。また、バルサミコ酢又はバルサミコ酢を含む誘引物質をそのまま誘引部3として使用することも可能である。あるいは、バルサミコ酢又はバルサミコ酢を含む誘引物質をゲル状に固めたものを誘引部3として使用しても構わない。誘引部3は、バルサミコ酢又はバルサミコ酢を含む誘引物質を発散させて、飛翔害虫Xを筐体10の内部に誘引するように機能する。
殺虫部4には殺虫剤が仕込まれている。殺虫剤は、単独で使用してもよいし、他の成分を添加して使用することも可能である。殺虫部4は、例えば、液体吸収可能なスポンジ、セルロース、紙、繊維集合体等で構成することができる。また、殺虫剤をそのまま殺虫部4として使用することも可能である。あるいは、殺虫剤をゲル状に固めたものを殺虫部4として使用しても構わない。殺虫部4は、誘引した飛翔害虫Xに対して殺虫剤を接触又は摂取させることにより死滅させるように機能する。
本実施形態の飛翔害虫誘引防除装置100は、誘引部3と殺虫部4とを一体に構成してあることが特徴である。このような一体構成とすることにより、飛翔害虫Xを殺虫剤が存在する殺虫部4の位置にまで確実に誘引することができる。また、誘引部3と殺虫部4とを一体化することにより、装置構成を簡素化することができる。
<第2実施形態>
図2は、本発明の第2実施形態による飛翔害虫誘引防除装置200の断面を示した概略構成図である。本実施形態の飛翔害虫誘引防除装置200も、通常、水平な設置面に据え付けて使用されるが、底面側を壁等の垂直面に取り付けることも可能である。本実施形態の飛翔害虫誘引防除装置200は、誘引部3と殺虫部4とを夫々独立して設けてあることが特徴である。
図2では、図面視で、本体1の右側に誘引部3を配置し、左側に殺虫部4を配置してある。そして、殺虫部4の上方の蓋部2に誘引孔5が形成されている。飛翔害虫Xは、誘引部3から筺体10の外部に発せられる誘引物質に誘引され、誘引孔5から筺体10の内部に侵入する。このとき、誘引孔5の下部には殺虫部4が存在するため、飛翔害虫Xは殺虫部4に仕込まれた殺虫剤を接触又は摂取する。これにより、飛翔害虫Xは筺体10の内部で死滅する。
本実施形態のように、誘引部3と殺虫部4とを夫々独立して設けると、誘引剤と殺虫剤とは互いに接触しない状態で配置される。誘引剤が揮散することにより誘引効果が低下した場合には、誘引部3にバルサミコ酢又はバルサミコ酢を含む誘引物質を補充したり、あるいは誘引部3自体を新品に取り替えることが容易なので、特に有用である。さらに、飛翔害虫誘引防除装置200を廃棄する場合、殺虫剤を含む殺虫部4のみを分別して廃棄することができるので、環境にも優しい。
なお、本実施形態において、誘引部3と殺虫部4との配置を交換しても構わない。すなわち、図面視で、本体1の左側に誘引部3を配置し、右側に殺虫部4を配置することも可能である。
<第3実施形態>
図3は、本発明の第3実施形態による飛翔害虫誘引防除装置300の断面を示した概略構成図である。本実施形態の飛翔害虫誘引防除装置300も、通常、水平な設置面に据え付けて使用されるが、底面側を壁等の垂直面に取り付けることも可能である。本実施形態の飛翔害虫誘引防除装置300は、飛翔害虫誘引防除装置200を改変したものであるが、誘引部3と殺虫部4とを夫々独立して設けてある点は第2実施形態と同様である。
図3では、図面視で、本体1の中央に誘引部3を配置し、誘引部3を挟んで両側に殺虫部4を配置してある。そして、夫々の殺虫部4の上方の蓋部2に誘引孔5が形成されている。飛翔害虫Xは、誘引部3から筺体10の外部に発せられる誘引物質に誘引され、誘引孔5から筺体10の内部に侵入する。このとき、誘引孔5の下部には殺虫部4が存在するため、飛翔害虫Xは殺虫部4に仕込まれた殺虫剤を接触又は摂取する。これにより、飛翔害虫Xは筺体10の内部で死滅する。
本実施形態のように、本体1の中央に誘引部3を配置するとともに、当該誘引部3の両側に殺虫部4を配置すると、飛翔害虫を筺体10の両側から効率よく内部に誘引し、大量に死滅させることができる。
なお、本実施形態においても、誘引部3と殺虫部4との配置を交換しても構わない。すなわち、図面視で、本体1の中央に殺虫部4を配置するとともに、当該殺虫部4の両側に誘引部3を配置することも可能である。
次に、本発明の飛翔害虫誘引防除剤の効能を確認するため、本発明に基づく実施例について説明する。また、本発明との比較のため、比較例についても合わせて説明する。
なお、以下の実施例では、バルサミコ酢として、株式会社ミツカン製の業務用ぶどう酢「バルサミコ20Lキュービ」を使用した。本実施例で使用したバルサミコ酢の分析値を以下に示す。
・酸度 :6.1±0.4重量%
・水分含有量 :100g当たり75.2g
・有機酸含有量:100g当たり5.5g
<実施例1>
上述の第1実施形態に実質的に相当する飛翔害虫誘引防除装置を使用し、飛翔害虫の捕集試験を実施した。実施例1で使用した飛翔害虫誘引防除剤の構成を以下に示す。
(1)誘引剤
バルサミコ酢 :5.0重量%
桂花陳酒 :2.5重量%
カツオブシフレーバー:0.5重量%
三温糖 :2.0重量%
(2)殺虫剤
ジノテフラン :0.1重量%
(3)他成分
苦味剤、防腐剤、精製水
上記(1)〜(3)を混合した薬液10gをセルロース系担体(30mm角、12mm厚)に保持させた薬剤保持体を飛翔害虫誘引防除装置の内部に配置した。薬液保持体は、上記実施形態で説明した誘引部3と殺虫部4とを兼ねるものである。飛翔害虫誘引防除装置は、縦45mm×横45mm×高さ20mmのサイズを有するプラスチック製容器であり、蓋部に1個当たり3.2mmの開孔面積を有する誘引孔が53箇所穿設されている。この飛翔害虫誘引防除装置をコバエ類が集っている台所の流し台に設置し、装置内部に捕獲されたコバエ類の数をカウントした。
その結果、実施例1では、約1ヵ月間にわたり、ショウジョウバエやノミバエ等のコバエ類に対して優れた誘引性及び殺虫性を示し、装置に捕獲したコバエ類の総数は約150匹に達した。
<実施例2>
上述の第2実施形態に実質的に相当する飛翔害虫誘引防除装置を使用し、飛翔害虫の捕集試験を実施した。誘引部としてセルロース系担体(9mm角、6mm厚)を使用し、殺虫部としてセルロース系担体(45mm角、6mm厚)を使用し、これらを装置内部に併設した。実施例2における誘引剤及び殺虫剤の構成を以下に示す。
(1)誘引剤
バルサミコ酢(0.5g)
(2)殺虫剤
ジノテフラン含有薬液(10g)
〔内訳〕
ジノテフラン :0.2重量%
グラニュー糖 :3.0重量%
精製水 :残部
上記(1)及び(2)を夫々のセルロース系担体に保持させ、飛翔害虫誘引防除装置の内部に配置した。飛翔害虫誘引防除装置は、縦60mm×横70mm×高さ10mmのサイズを有するプラスチック製容器であり、蓋部に1個当たり3.2mmの開孔面積を有する誘引孔が16箇所穿設されている。この飛翔害虫誘引防除装置をコバエ類が集っているカブトムシ飼育ケースの側方に設置し、装置内部に捕獲されたコバエ類の数をカウントした。
その結果、実施例2では、1日経過後に多数のコバエ類(ショウジョウバエ)が誘引され、装置に捕獲したコバエ類の総数は25匹に達した。
<実施例3>
実施例1で使用した誘引剤(バルサミコ酢を含む混合誘引剤)を、5.0重量%バルサミコ酢単独の誘引剤に変更し、実施例3として飛翔害虫の捕集試験を実施した。この実施例3では、ショウジョウバエ300匹を放出した約25mの試験室の床面に飛翔害虫誘引防除装置を設置し、1日経過後に装置内部に捕獲されたショウジョウバエの数をカウントした。この試験は3回行った。
その結果、実施例3における平均捕獲虫数は、141.3匹であった。
<比較例1〜4>
実施例3で使用した誘引剤(5.0重量%バルサミコ酢)を、5.0重量%リンゴ酢(比較例1)、5.0重量%黒酢(比較例2)、5.0重量%米酢(比較例3)、及び5.0重量%白ワイン酢(比較例4)に夫々変更し、比較例1〜4として同様の飛翔害虫の捕集試験を実施した。これらの比較例1〜4は、実施例3と同時に実行した。すなわち、ショウジョウバエ300匹を放出した約25mの試験室の床面に飛翔害虫誘引防除装置を設置し、1日経過後に装置内部に捕獲されたショウジョウバエの数をカウントした。この試験は3回行った。
その結果、比較例1〜4における平均捕獲虫数は、12.0匹(比較例1)、51.0匹(比較例2)、10.3匹(比較例3)、及び38.7匹(比較例4)であった。このように、バルサミコ酢を含まない誘引剤では、バルサミコ酢単独の誘引剤(実施例3)と比較して、飛翔害虫の誘引効果が明らかに劣っていた。
実施例3及び比較例1〜4の試験結果を表1にまとめた。
Figure 0005248654
<実施例4〜11>
実施例1で使用した誘引剤(バルサミコ酢を含む混合誘引剤)を、表2に記載のバルサミコ酢を含む8種類の混合誘引剤に変更し、実施例4〜11として飛翔害虫の捕集試験を実施した。この実施例4〜11では、夫々について、ショウジョウバエ300匹を放出した約6mの試験室の床面に飛翔害虫誘引防除装置を設置し、2時間経過後に装置内部に捕獲されたショウジョウバエの数をカウントした。この試験は3回行った。試験結果を表2に示す。
<比較例5〜12>
実施例1で使用した誘引剤(バルサミコ酢を含む混合誘引剤)を、表2に記載のバルサミコ酢を含まない8種類の単独誘引剤又は混合誘引剤に変更し、比較例5〜12として飛翔害虫の捕集試験を実施した。比較例5〜12は、実施例4〜11で使用した誘引剤から夫々バルサミコ酢を除いたものに相当する。ここで、比較例5及び実施例4を同時に実行した。同様に、比較例6及び実施例5、比較例7及び実施例6、比較例8及び実施例7、比較例9及び実施例8、比較例10及び実施例9、比較例11及び実施例10、並びに比較例12及び実施例11を夫々同時に実施した。試験結果を表2に示す。
Figure 0005248654
表2の結果から、誘引剤としてバルサミコ酢を含有するもの(実施例4〜11)は、何れもショウジョウバエの平均捕獲虫数が100匹を超えており、高い誘引効果を示すことが判明した。一方、誘引剤としてバルサミコ酢を含有しないもの(比較例5〜12)は、一定の誘引効果は認められるが、ショウジョウバエの平均捕獲虫数は、誘引剤としてバルサミコ酢を含有するもの(実施例4〜11)より劣っていた。バルサミコ酢は、飛翔害虫に対して特に高い誘引効果を示す。従って、この誘引効果の優れたバルサミコ酢又はバルサミコ酢を含む誘引物質と殺虫剤とを組み合わせると、ハエ類、蚊類、コバエ類等の種々の飛翔害虫を殺虫剤の近傍にまで大量に誘引することができ、さらに、誘引した飛翔害虫を殺虫剤の殺虫作用により確実に死滅させることが可能となる。
3 誘引部
4 殺虫部
10 筺体
100 飛翔害虫誘引防除装置

Claims (6)

  1. バルサミコ酢又はバルサミコ酢を含む誘引物質と、
    ジノテフランと、
    を含むコバエ用の飛翔害虫誘引防除剤。
  2. 前記バルサミコ酢を含む誘引物質は、
    前記バルサミコ酢と、
    醸造酢、酒類、酒粕、糖類、果実、果実加工品、乳酸製品、魚介類、魚介類加工品、魚介類抽出物、食肉、食肉加工品、食肉抽出物、及び香料からなる群から選択される少なくとも一つと、の混合物である請求項に記載のコバエ用の飛翔害虫誘引防除剤。
  3. コバエを捕集する筐体を備えたコバエ用の飛翔害虫誘引防除装置であって、
    バルサミコ酢又はバルサミコ酢を含む誘引物質を発散させて前記コバエを前記筐体の内部に誘引する誘引部と、
    誘引した前記コバエに対してジノテフランを接触又は摂取させることにより死滅させる殺虫部と、
    を備えたコバエ用の飛翔害虫誘引防除装置。
  4. 前記筺体の内部において、前記誘引部と前記殺虫部とを一体に構成してある請求項に記載のコバエ用の飛翔害虫誘引防除装置。
  5. 前記筐体の内部において、前記誘引部と前記殺虫部とを夫々独立して設けてある請求項に記載のコバエ用の飛翔害虫誘引防除装置。
  6. コバエを捕集する筐体を備えたコバエ用の飛翔害虫誘引防除装置を用いて行うコバエ用の飛翔害虫誘引防除方法であって、
    バルサミコ酢又はバルサミコ酢を含む誘引物質を発散させて前記コバエを前記筐体の内部に誘引する誘引工程と、
    誘引した前記コバエに対してジノテフランを接触又は摂取させることにより死滅させる殺虫工程と、
    を包含するコバエ用の飛翔害虫誘引防除方法。
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