(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。図1は発明を実施する形態の一例であって、本発明の第1実施形態に係るレーザ定着装置が用いられた画像形成装置の全体の構成を示す説明図である。
なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
第1本実施形態は、図1に示すように、表面に静電潜像が形成される感光体ドラム101と、感光体ドラム101表面を帯電させる帯電ユニット(帯電装置)103と、感光体ドラム101表面に静電潜像を形成する光学系ユニット(露光装置)Eと、感光体ドラム101表面の静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像ユニット(現像装置)102と、感光体ドラム101表面のトナー像を中間転写ベルト11に転写する一次転写ユニット(転写装置)13と、中間転写ベルト11に一時的に転写されたトナー像を用紙に転写する二次転写ユニット(転写装置)14と、前記転写されたトナー像を用紙に定着させるレーザ定着装置15とを備え、電子写真方式によりトナーを用いて画像を形成する画像形成装置100において、レーザ定着装置15として、本発明に係る定着装置の構成を採用したものである。
まず、画像形成装置100の全体構成について説明する。画像形成装置100は、例えば、ネットワーク上の各端末装置から送信される画像データ等に基づいて、所定の用紙に対して多色又は単色の画像を形成する。
画像形成装置100は、図1に示すように、光学系ユニットE、4組の可視像形成ユニットpa,pb,pc,pd、中間転写ベルト11、二次転写ユニット14、レーザ定着装置15、内部給紙ユニット16および手差し給紙ユニット17とを備えている。
可視画像形成ユニットpaは、トナー像担持体となる感光体ドラム101aの周囲に、現像ユニット102a、帯電ユニット103a、クリーニングユニット104aおよび一次転写ユニット13aが配置されている。現像ユニット102aには、ブラック(B)のトナーが収容されている。一次転写ユニット13aは、中間転写ベルト11を介して感光体ドラム101a上に配置されている。
帯電ユニット103aとしては、感光体ドラム101a表面を一様に、またオゾンを極力発生させることなく帯電するために、帯電ローラ方式を採用している。
他の3組の可視像形成ユニットpb,pc,pdは、可視画像形成ユニットpaと同様の構成であり、各可視像形成ユニットの現像ユニット102b,102c,102dには、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色トナーが収容されている。
光学系ユニットEは、レーザ光源4からの照射光を4組の感光体ドラム101a,101b,101c,101dに照射するように配置されている。
詳しくは、光学系ユニットEは、メモリから読出した画像データ、または外部の装置から転送されてきた画像データに応じてレーザ光を出射するレーザ光源4、レーザ光を等角速度偏向するポリゴンミラー、等角速度で偏向されたレーザ光が感光体ドラム101上において等角速度で偏向されるように補正するf−θレンズなどから構成されている。そして、帯電された感光体ドラム101a,101b,101c,101dを入力された画像データに応じて露光することにより、その表面に画像データに応じた静電潜像を形成するものである。
中間転写ベルト11は、用紙搬送方向に沿って並設された可視像形成ユニットpa,pb,pc,pdに沿って、テンションローラ11a,11bにより撓むことなく配置されている。中間転写ベルトにおいて、テンションローラ11b側には廃トナーボックス12が当接配置され、テンションローラ11a側には二次転写ユニット14が当接配置されている。
レーザ定着装置15は、用紙上の未定着トナー画像にレーザ光を照射して該未定着トナー画像を溶融して用紙上に定着させるレーザヘッド(レーザ照射手段)15aと、用紙を搬送する用紙搬送装置(記録媒体搬送手段)15bとを備え、レーザ光によりトナー像を用紙に定着するレーザ定着装置である。このレーザ定着装置15は、二次転写ユニット14の用紙搬送方向下流側に配置されている。
光学系ユニットEの下方には、内部給紙ユニット16が設けられ、装置本体の外側面には手差し給紙ユニット17が設けられている。画像形成装置100の上部には排紙トレイ18が設けられている。この排紙トレイ18は、印刷済みの用紙をフェイスダウンで載置するためのものである。
また、画像形成装置100には、内部給紙ユニット16の用紙および手差し給紙ユニット17の用紙を二次転写ユニット14やレーザ定着装置15を経由させて排紙トレイ18に案内するための用紙搬送路Sが設けられている。
用紙搬送路Sには、給紙ローラ16a,17a、レジストローラ19、二次転写ユニット14、レーザ定着装置15、搬送ローラr等が配置されている。
搬送ローラrは、用紙の搬送を促進・補助するための小型のローラであり、用紙搬送路Sに沿って複数設けられている。給紙ローラ16aは、内部給紙ユニット16の端部に備えられ、内部給紙ユニット16から用紙を1枚ずつ用紙搬送路Sに供給する呼び込みローラである。給紙ローラ17aは、手差し給紙ユニット17の近傍に備えられ、手差し給紙ユニット17から用紙を1枚ずつ用紙搬送路Sに供給する呼び込みローラである。
レジストローラ19は、用紙搬送路Sを搬送されている用紙を一旦保持し、中間転写ベルト11上のトナー像の先端と用紙の先端とを合わせるタイミングで用紙を二次転写ユニット14の転写部に搬送するものである。
次に、用紙搬送路Sによる用紙搬送動作について説明する。画像形成装置100には、図1に示すように、上述したように予め用紙を収納する内部給紙ユニット16および少数枚の印字を行う場合等に使用される手差し給紙ユニット17が配置されている。これら両ユニットには各々給紙ローラ16a,17aが配置され、これら給紙ローラ16a,17aによって用紙を1枚ずつ用紙搬送路Sに供給するようになっている。
片面印字の場合は、内部給紙ユニット16から搬送される用紙は、用紙搬送路S中の搬送ローラrによってレジストローラ19まで搬送され、レジストローラ19により用紙の先端と中間転写ベルト11上の積層されたトナー像の先端とが整合するタイミングで二次転写ユニット14の転写部に搬送される。転写部では中間転写ベルト11に形成されたトナー像が用紙上に転写され、このトナー像はレーザ定着装置15にて用紙上に定着される。その後、用紙は排紙ローラ18aから排紙トレイ18上に排出される。
また、手差し給紙ユニット17から搬送される用紙は、複数の搬送ローラrによってレジストローラ19まで搬送される。それ以降の用紙搬送動作は、上述した内部給紙ユニット16から供給される用紙と同様の経過を経て排紙トレイ18に排出される。
一方、両面印字の場合は、上記のようにして片面印字が終了してレーザ定着装置15を通過した用紙は、排紙ローラ18aに搬送され、後端が排紙ローラ18aにてチャックされる。次に、用紙は、排紙ローラ18aが逆回転することによって搬送ローラrに導かれ、再びレジストローラ19を経て裏面印字が行われた後に、排紙トレイ18に排出される。
次に、画像形成装置100における画像形成の行程について説明する。可視像形成ユニットpa,pb,pc,pdにおいて行われる画像形成は同様に行われるため、可視像形成ユニットpaを例に挙げて説明する。
可視像形成ユニットpaでは、感光体ドラム101a表面を帯電ユニット103aにより一様に帯電した後、光学系ユニットEにより感光体ドラム101a表面を画像情報に応じてレーザ露光することにより静電潜像を形成する。
その後、現像ユニット102aにより感光体ドラム101a上の静電潜像に基づきトナー像を現像する。感光体ドラム101a上で顕像化されたトナー画像は、トナーとは逆極性のバイアス電圧が印加された一次転写ユニット13aにより中間転写ベルト11上に転写される。
他の3組の可視像形成ユニットpb,pc,pdにおいても、可視像形成ユニットpaと同様に画像形成が行われて、トナー画像が順次中間転写ベルト11上で重ねて転写されるようになっている。
中間転写ベルト11上に形成されたトナー画像は、二次転写ユニット14において、内部給紙ユニット16の給紙ローラ16aまたは手差し給紙ユニット17の給紙ローラ17aにより給紙され、二次転写ユニット14において、トナー画像とは逆極性のバイアス電圧が印加された用紙に転写される。
トナー画像が転写された用紙は、レーザ定着装置15に搬送され、レーザ定着装置15においてレーザ照射により未定着トナー像が加熱されて用紙上に融着された後、排紙ローラ18aにより外部の排紙トレイ18上に排出される。
次に、第1実施形態に係るレーザ定着装置15の構成について図面を参照して詳細に説明する。
図2は第1実施形態に係るレーザ定着装置の構成を示す説明図、図3は前記レーザ定着装置を構成するレーザヘッドの構成を示す正面から見た説明図、図4は前記レーザヘッドの構成を示す側面から見た説明図である。
レーザ定着装置15は、図2に示すように、レーザヘッド(レーザヘッド)15aと、用紙搬送装置15bとを備えている。
このレーザ定着装置15は、用紙Pの表面に形成された未定着トナー画像をレーザ光によって溶融させて用紙Pに定着させるものである。
具体的には、用紙搬送装置15b上のレーザ光が照射されるレーザ照射部15cに所定の定着速度と複写速度とにより未定着トナー像を担持した用紙が用紙搬送装置15bにより搬送され、レーザヘッド15aから照射されるレーザ光によってトナーが溶融することで定着が行われる。
図中の符号T1は未定着トナー、T2は定着したトナーをそれぞれ示すものである。
本実施形態の画像形成装置100では、例えば、定着速度225(mm/sec)、複写速度50枚/分(A4横送り)である。
未定着トナー画像は、例えば、非磁性トナーを含む非磁性1成分現像剤、非磁性トナーおよびキャリアを含む非磁性2成分現像剤、磁性トナーを含む磁性現像剤などの現像剤に含まれるトナーで形成される。そして、カラートナー(イエロー,マゼンタ,シアン)はモノクロトナーに比べてレーザ光の光吸収率が低いことから、赤外線吸収剤を添加することでモノクロトナーと同じ光吸収率を確保している。
カラートナーは、例えば、カラートナーのメインバインダーレジン100重量部に対して、赤外線吸収剤であるフタロシアニンが1重量部から5重量部が内添されたものが用いられている。また、フタロシアニン以外にポリメチン、シアニン、オニウム、ニッケル錯体等を用いることもできるし、併用することもできる。
まず、用紙搬送装置15bについて説明する。用紙搬送装置15bは、図2に示すように、搬送ベルト15b1、駆動ローラ15b2、従動ローラ15b3、吸着チャージャー15b4、分離チャージャー15b5、除電チャージャー15b6、分離爪15b7、駆動モータ(図示省略)を備えている。
搬送ベルト15b1は、ベルト厚75(μm)、体積抵抗率1×1016(Ω・cm)のポリイミド樹脂からなり、駆動ローラ15b2と従動ローラ15b3に張架されている。駆動ローラ15b2は、図示しない駆動モータにより、任意の速度で回転駆動するよう構成されている。すなわち、搬送ベルト15b1は、駆動ローラ15b2の回転により矢印方向に任意の速度で搬送される。また、搬送ベルト15b1の周囲には、吸着チャージャー15b4、分離チャージャー15b5、除電チャージャー15b6、分離爪15b7が設けられている。
このように構成された用紙搬送装置15bにおいて、二次転写ユニット14から搬送されてきた未定着トナー像が形成された用紙Pは、従動ローラ15b3上の搬送ベルト15b1と吸着チャージャー15b4の間に搬送される。
従動ローラ15b3は、導電性材料で構成されて接地されている。この従動ローラ15b3に対向する位置で、吸着チャージャー15b4によって用紙に電荷を与えることで、用紙Pと搬送ベルト15b1とは、それぞれ誘電分極を起こす。これにより、用紙Pは、搬送ベルト15b1上に静電吸着される。
用紙Pは、駆動ローラ15b2の駆動によってレーザ光が照射されるレーザ照射部15cに搬送される。レーザ照射部15cにおいて、用紙P上の未定着トナー像は、レーザヘッド15aによって画像情報に応じてレーザ照射されることにより溶融して用紙Pに定着する。
そして、レーザ照射部15cにおいて、トナー画像の定着を終了した用紙Pは、搬送ベルト15b1に静電吸着された状態で、分離チャージャー15b5と駆動ローラ15b2との間に搬送される。
駆動ローラ15b2は、導電性材料で構成され接地されている。分離チャージャー15b5によって用紙P上を除電することで、搬送ベルト15b1と用紙Pとの間の静電吸着力が弱まる。
その状態で搬送ベルト15b1が、駆動ローラ15b2に沿って大きな曲率で回動することにより、用紙Pは、その先端部が搬送ベルト15b1から浮き上がり、さらに、分離爪15b7により完全に搬送ベルト15b1から分離される。用紙Pが剥離された搬送ベルト15b1は、除電チャージャー15b6により外面および内面が除電された後、再び用紙Pの吸着位置へ移動される。
次に、レーザヘッド15aの構成について説明する。レーザヘッド15aは、レーザ照射部15cにおいて未定着トナー像にレーザ光を照射し、トナーを用紙に定着させるものである。
レーザヘッド15aは、図2〜図4に示すように、複数の半導体レーザ素子(以下、レーザ素子と略記する)15a1を長手方向(用紙搬送方向に対して直角方向)に一列状に配列した半導体レーザアレイ15aaを備えている。本実施形態では、半導体レーザアレイ15aaは、波長780(nm)で、1個の定格出力が150(mW)のレーザ素子15a1を1,000個配列したものが用いられている。この時、各レーザ素子15a1の配列ピッチpは、0.3(mm)でレーザスポット径dも0.3(mm)となる。レーザスポットが照射される領域が、各レーザ素子15a1がレーザ照射を担う単位照射領域である。
図3、図4に示すように、各レーザ素子(チップ)15a1は、個々にシリコン基板15a3上にマウントされており、レーザ素子15a1とシリコン基板15a3との間は、ワイヤーボンド線15a4等により電気的接続されている。
これら各シリコン基板15a3には、受光素子であるモニター用のフォトダイオード15a2がモノリシックに形成されると共に、入力された信号によりレーザ光出力を可変したり、上記フォトダイオード15a2からの信号によりレーザ出力を一定に保持したりするための制御回路(図示せず)がモノシリックに形成されている。
そして、これら複数のシリコン基板15a3は、ワイヤーボンド線15a4により、セラミック基板15a6に形成された表面電極15a5にそれぞれ電気的に接続され、セラミック基板15a6に取り付けられている。
セラミック基板15a6の裏面には、放熱のためのヒートシンク15a9が貼り付けられている。本実施形態では、ヒートシンク15a9は、アルミニウム合金製でベースサイズが30(mm)×30(mm)、高さ20(mm)、熱抵抗1.6(℃/W)のヒートシンク((株)アルファ社製:UB30−20B)を計10個一列に並べたもの(トータルの熱抵抗0.16(℃/W))を用いている。
さらに、セラミック基板15a6表面には、図2に示すように、レーザヘッド15aの温度を測定するためのサーミスタからなる温度センサ15a10が取り付けられている。温度センサ15a10は、レーザ定着装置15の長手方向(用紙搬送方向に対して用紙Pの表面に沿って垂直方向)の略中央の位置に配置されている。この温度センサ15a10により検出された温度データに基づいて、レーザ素子15a1に印加する電圧(あるいはレーザ素子15a1に流れる電流)が制御される。
また、各レーザ素子15a1に対応して個々に凸レンズ15a8が設けられており、複数の凸レンズ15a8は、レンズホルダ15a7に保持されている。ここで、レーザヘッド15aにおける複数の凸レンズ15a8とレンズホルダ15a7とは、各凸レンズ15a8を樹脂ホルダー等に組み込んだものよりも、樹脂によるレンズ−レンズホルダ一体成形品や、平板ガラスをレンズ状にイオン交換して製造される平板マイクロレンズなどのレンズアレイである方が、価格や工程、組立精度に関して有利である。なお、凸レンズ15a8等の集光光学系を無くし、平行光の状態でトナー画像にレーザを照射することも可能である。
このような各レーザ素子15a1の駆動は、後述するレーザ駆動制御機能151a(図10参照)にて制御される。レーザ駆動制御機能151aは、半導体レーザアレイ15aaの各レーザ素子15a1を選択的にON/OFF制御して、用紙P上のトナー像のある部分に選択的にレーザ光を照射する。各レーザ素子15a1は、レーザ駆動制御機能151aのON/OFF駆動の制御により、1回のON/OFF駆動、つまり、ONしてOFFする1度のON/OFF駆動にて、予め定められた単位照射領域に照射を行わせる。
以下、本実施形態のレーザ定着装置15における特徴的な構成について説明する。図3、図4に示すように、本実施形態のレーザ定着装置15におけるレーザヘッド15aは、レーザ光を用紙Pに対して、紙面の法線の方向である真上からではなく法線に対して傾きをもって斜めから照射するようになっている。これは、トナーが溶け過ぎることを防止するためである。
図5(a)(b)に、レーザ素子15a1よりレーザ光を用紙Pに対して斜め方向から照射したときに、トナーの溶け具合による反射光の変化の様子を示す。図中、一点鎖線にて紙面の法線を示し、入射角度xあるいは照射角度xは、紙面の法線とのなす角である。
図5(a)に示すように、トナーが溶ける前は、反射光は殆ど散乱光となる。その後、トナーが溶け始めると、図5(b)に示すように、入射光と同じ角度xの反射光である鏡面反射成分(鏡面反射光)が増加し出し、反射光量が増加し反射率が高くなる。つまり、反射率は、トナーが溶けるほどに高くなる。そして、一般的に、反射率は、照射角度(入射角度)xが大きくなるほどに高くなる。したがって、レーザ光を用紙Pに対して斜めから当てることで、トナーが溶けるほどにトナーの反射率を上げ、トナーが吸収する熱量を自ずと減少させることができる。
図6に、レーザ素子15a1よりレーザ光を用紙Pに対して斜め方向から照射したときの、照射時間に対するトナーの光吸収率の変化を示す。図6に示すように、レーザ照射開始後のトナーが溶け始めるまでの期間は、トナーはレーザを吸収するため、高い吸収率にて推移する。その後、トナーが溶け始めると、前述したように、鏡面反射成分が増加し出し、これに伴い吸収率は下がり始める。そして、トナーが充分に溶融すると、低い吸収率にて再び推移する。
このように、レーザ光を用紙Pに対して斜めから当てるといった簡単な構成で、トナーが溶けるほどに、トナーが吸収する熱量を自ずと減少させて、トナーが溶け過ぎることを防止できることがわかる。
そして、このような効果を得るには、レーザ光の照射角度は、20〜85°が好ましく、より好ましくは45〜70°である。照射角度xが20°未満であると、反射率は、もっぱら鏡面反射成分の増加によって増加し、照射角度xが大きくなるほどに反射率が高くなる、つまり、トナーへの光吸収が抑えられるといった作用が小さくなり、トナーの溶け過ぎ防止効果が期待できない。
逆に、照射角度が85°を超えると、照射角度xが大きくなるほどに反射率が高くなることによるトナーへの光吸収を抑えるといった作用は充分に得られるものの、レーザビームが楕円になる。そのため、単位面積あたりのレーザパワーが減り、レーザ素子15a1にパワーの大きな素子が必要となる。しかも、レーザビームが楕円になることで、本来レーザ光を照射するべきではないトナー像のない部分にまでレーザ光が照射されてしまい、用紙焦げを発生させるなどの不具合もある。
照射角度xを、より好ましい45〜70°の範囲とすることで、反射率が高くなることによるトナーへの光吸収を抑えるといった作用は充分に得つつ、単位面積あたりのレーザパワーも保持できる。
また、用紙Pの法線に対して傾ける方向は、用紙搬送方向下流側としているが、用紙搬送方向上流側としてもよい。用紙搬送方向と直交する方向に傾けた場合、レーザ定着装置の大型化が避けられないが、このように用紙搬送方向の下流側或いは上流側に傾けることで、斜めからの照射であっても、レーザ定着装置の大型化を回避できる。
そして、さらに、本実施形態のレーザ定着装置15では、単位照射領域に存在するトナーを溶融するにあたり、単位照射領域の鏡面反射光を検出して、トナーの溶融状態を把握し、これに基づいて、レーザ素子15a1をOFFするタイミングを決定している。
図7に、トナーの溶融状態を、トナーの反射率でモニターするための測定原理図を示す。用紙Pの法線に対して角度xをなす位置に光源60が配置されている。この光源60は、本実施形態のレーザ定着装置15であれば、レーザヘッド15aのレーザ素子15a1となる。なお、後述するように、反射光測定用にレーザ素子15a1とは別個に反射光を測定するための測定用光源を設ける場合は、測定用光源がこの光源60に相当する。光源60からの光は、集光レンズ61を介して、用紙P上のトナーへと照射される。
用紙Pの法線を挟んで光源60の反対側には、鏡面反射成分を受光可能な受光センサ62と、用紙P上のトナーからの鏡面反射成分を受光センサ62に集光させる反射光集光レンズ63を配置する。受光センサ62、および反射光集光レンズ63の光軸Yの紙面の法線とのなす角Xは、光源60および集光レンズ61の光軸の紙面の法線とのなす角である照射角度Xと同じである。
このような測定系では、用紙P上のトナーが溶融すると、トナーが溶けるほどに反射率が高くなって、反射光の鏡面反射成分が増加し、受光センサ62の検出出力が上昇する。したがって、受光センサ62の検出出力より、用紙P上のトナーの溶融状態をモニターすることができる。
図8に、上記光源60をレーザ素子15a1とし、レーザ光を用紙Pに対して斜め方向から照射したときの、照射時間に対する受光センサ62の出力の変化を示す。図8に示すように、レーザ照射開始後のトナーが溶け始めるまでの期間は、センサ出力は低く推移し、トナーが溶け始めると、前述したように、鏡面反射成分が増加し出して反射率が上がるため、センサ出力が上昇し始める。その後、トナーの溶融が完了すると、センサ出力の上昇は止まり。高い出力で推移する。
本実施形態のレーザ定着装置15においては、トナーが問題なく溶融したことを実験的に確認したセンサ出力Zを閾値として保持しており、出力が閾値Zに到達すると、単位照射領域に存在するトナーは充分に溶融したとしてレーザ素子15a1をOFFし、照射を停止する。
図9(a)(b)に、本実施形態のレーザ定着装置15における、レーザヘッド15aにてトナーを溶融し、レーザ光の鏡面反射光を受光する光学系を示す。図9(a)は、レーザ定着装置15を上から見た図面であり、図9(b)は、レーザ定着装置15を、レーザヘッド15aにおける各レーザ素子15a1が並ぶ方向である横から見た図面である。
レーザヘッド15aは、用紙Pの法線に対して、用紙搬送方向下流側に傾きを有している。そして、実際の装置では、図7に示した光軸Yの位置に、湾曲した反射板70が配置されている。反射板70は、各レーザ素子15a1のレーザ照射ラインLに照射されたレーザ光の鏡面反射光を、反射光集光レンズ72を介してレーザヘッド15aよりも用紙搬送方向下流側に配されたラインセンサ(反射光量検出部)71に導くものである。
ラインセンサ71は、図7の受光センサ62がライン状に並ぶものであり、CCDやCMOSが使用可能である。但し、レーザ素子15a1のレーザ光の波長が1umを超えると、CCDやCMOSを使用することができない。そのため、レーザ素子15a1のレーザ光の波長が1umを超える場合は、後述する反射光検出用光源を別途に設ける構成とすることが好ましい。
各単位照射領域を一括して読み取ることのできるラインセンサ71を用いることで、用紙搬送方向と直角をなすレーザ照射ラインLを構成する各単位照射領域の反射光量を一括して測定することが可能となり、構成が容易になる。
なお、ラインセンサ71の配置位置の関係から、さらに光路長を長く確保する必要がある場合は、反射板70に加えて、平面ミラーを用いて、光路を折り返しても良い。
図10に、本実施形態のレーザ定着装置15の制御ブロック図を示す。CPU等からなる制御装置151のレーザ駆動制御機能(レーザ駆動制御部)151aが、レーザヘッド15aの各レーザ素子15a1のON/OFFを制御する。
レーザ駆動制御機能151aは、用紙P上のトナー像の位置情報を、画像処理部73を介して、感光体ドラム101上に静電潜像を形成するために用いた画像データより取得して、各レーザ素子15a1の単位照射領域にトナーが存在するかどうかを判断し、単位照射領域にトナーが存在するレーザ素子15a1をONしてレーザ光を照射する。
なお、後述するように、反射光測定用にレーザ素子15a1とは別個に設けた光源を利用する構成であれば、レーザ駆動制御機能151aは、画像処理部73からの情報に頼らず、受光センサ62のセンサ出力より、単位照射領域にトナーがあるかどうかを判定することもできる。反射率は、未定着トナー<用紙<定着後トナー、の順に高くなる。したがって、トナー溶融のためのレーザ素子15a1とは別に測定用光源を備えてその反射光を受光センサ62にて検出することで、センサ出力が用紙に対応した出力よりもさらに低下した場合に、レーザ照射領域にトナーがあると判定することができる。
そして、レーザ駆動制御機能151aは、各レーザ素子15a1において、レーザ光を照射している状態で、ラインセンサ71における該当する受光素子にて検出された鏡面反射光量が予め定められた光量に達し、センサ出力が閾値Z(図8参照)に達すると、該当するレーザ素子15a1をOFFし、レーザ光の照射を停止する。このように、レーザ駆動制御機能151aは、レーザ素子15a1毎に個別に担当する単位照射領域にあるトナーの溶融状態を把握し、レーザ照射を停止するタイミングを決定することで、トナーを適切な溶融状態にて定着させることができ。
図11に、あるレーザ素子15a1におけるレーザ照射駆動のフローを示す。レーザ駆動制御機能151aは、画像データを基に、当該レーザ素子15a1の単位照射領域であるレーザ照射面に、トナーがあるかどうかを判断する(S1)。
レーザ照射面にトナーが無い場合は、S6に移行し、トナーがある場合には、S2に進んで、レーザ照射を開始する。レーザ照射を開始した場合は、S3に進んで、ラインセンサ71のセンサ出力をモニターして反射光量を測定し、ラインセンサ71のセンサ出力が閾値Zに到達したか否かを判断する(S4)。そして、センサ出力が閾値Zに到達したと判断すると、レーザ素子15a1をOFFしてレーザ照射を停止し、S6に進む。
S6では、画像データを基に、トナー像の最終ラインへの照射が完了したかどうかを判断し、最終ラインへの照射が完了していれば、処理を終了し、完了していなければS1に戻り、次のレーザ照射ラインに担当するレーザ照射面にトナーがあるかどうかを判断する。S1〜S6までのステップを、S6において、トナー像の最終ラインへの照射完了を確認するまで繰り返す。
以上のように、本実施形態のレーザ定着装置15においては、レーザヘッド15aは、未定着のトナー像に対しレーザ光を、用紙Pの法線に対して傾きをもって斜めから照射するようになっているので、トナーが溶けるにつれて、トナーに吸収される熱量を自ずと減少させることができ、溶け過ぎによる弊害を抑えることができる。
しかも、本実施形態のレーザ定着装置15においては、各レーザ素子15a1の照射光の鏡面反射光量を検出し、予め定めた規定の反射光量に達したときに該当するレーザ素子15a1をOFFして照射を停止するようになっている。これにより、何れのレーザ素子15a1にて溶融されたトナーであっても、適切な溶融状態とできるので、トナー量の違いや、熱によるレーザ出力の変動、個々のレーザ素子の個体差があっても、トナーを過不足のない適切な状態に溶融させて定着させることのできる。
また、本実施形態のレーザ定着装置15では、レーザ素子15a1からのレーザ光の鏡面反射光をモニターすることで、反射光検出用光源を別途設ける必要がなく、部品点数を削減して、レーザ定着装置15を小型化できるといたメリットがある。但し、上述したように、レーザ素子15a1の波長によっては、ラインセンサ71に汎用のCCDやCMOSセンサを用いることができない場合があり、その場合は、コストパフォーマンスが著しく低下するため、測定用別光源を設けて、ラインセンサ71に汎用のCCDやCMOSセンサを用いる構成とすることが好ましい。
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態について図面を参照して説明する。なお、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、第1実施形態と同一の符号を付することにより重複説明を省略し、構成の異なる部分のみ説明する。
第2実施形態のレーザ定着装置は、反射光測定用にレーザ素子15a1とは別個に光源を設けた構成である。
図12(a)(b)に、本実施形態のレーザ定着装置15−1における、反射光測定用の測定用光源80を別途有し、該測定用光源80からの光の鏡面反射光をラインセンサ81が受光する光学系を示す。図12(a)は、レーザ定着装置15−1を上から見た図面であり、図12(b)は、レーザ定着装置15−1を、レーザヘッド15aにおける各レーザ素子15a1が並ぶ方向である横から見た図面である。
レーザ素子15a1からのレーザ照射によって溶かしているトナー表面を、別光源である測定用光源80からの光の鏡面反射光をラインセンサ81で検出してモニターすることで、レーザ素子15a1をOFFするタイミングを決定する。
このような測定用光源80を設ける構成では、レーザ素子15a1として波長の長いものを選ぶことが可能となり、加熱効率が向上する。また、測定用光源80を可視波長(赤外域線の波長域以外)にすれば、ラインセンサ81として、反射光量を測定するために、CCDやCMOS等の汎用のラインセンサを使用することができる。
また、CCDやCMOS等の汎用のラインセンサをラインセンサ81として使用した場合は、図12(a)(b)に示すように、ラインセンサ81の手前に、赤外線の入光(入射)を素子する赤外線カットフィルタ82を設ける構成とすることが好ましい。これにより、熱輻射によるノイズが低減し、受光感度を高めることができる。別光源のトナー上への光強度を高めるために、集光手段を用いることが望ましい。
さらに好ましくは、図13(a)(b)に示す、本実施形態の変形例のレーザ定着装置15−1’のように、測定用光源80の光をレーザ照射ライン上に集め光強度を高めるための集光レンズ83を備えることである。
(第3実施形態)
以下、本発明の第3実施形態について図面を参照して説明する。なお、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、第1実施形態、第2実施形態と同一の符号を付することにより重複説明を省略し、構成の異なる部分のみ説明する。
第3実施形態のレーザ定着装置15−2は、図14に示すように、単一のレーザ光源150を備え、レーザ光を、ポリゴンミラー153を介して用紙P上に形成された未定着のトナー像にスキャンして照射するタイプのレーザ定着装置である。参照符号152は、収差補正レンズである。
図15(a)(b)に、本実施形態のレーザ定着装置15-2における、レーザ光源150にてレーザ光をスキャンして照射することでレーザ照射ラインL上のトナーを溶融し、レーザ光の鏡面反射光をラインセンサ71にて受光する光学系を示す。図15(a)は、レーザ定着装置15-2を上から見た図面であり、図15(b)は、レーザ定着装置15-2を、レーザ光源150におけるスキャン方向である横から見た図面である。
レーザ光源150は、用紙Pの法線に対して、用紙搬送方向下流側に傾きをもって、レーザ光をスキャン照射する。スキャンタイプのレーザ定着装置15−2においても、単位照射領域毎に、単位照射領域のレーザ光の鏡面反射光を基に、当該単位照射領域におけるレーザ光源150をOFFするタイミングが決定される。
スキャンタイプのレーザ定着装置15−2の場合、単位照射領域を用紙上に形成されるトナー像の画像形成の一単位である1ドットに対応している構成することもでき、これによれば、画像形成の一単位である1ドット毎に最適なレーザ光を照射できるので、トナーの定着ムラ、トナーの溶けすぎをより詳細に防ぐことができる。
なお、図示してはいないが、スキャンタイプのレーザ定着装置において、第2実施形態のレーザ定着装置15−1のように、測定用光源80を備える構成とすることもできる。