JP5246269B2 - 減衰力制御装置 - Google Patents
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Description
本発明は、減衰力を制御する減衰力制御装置に関する。本発明は、例えば車両のサスペンション装置の減衰力を制御する減衰力制御装置に適用される。
車両のサスペンション装置は、バネ上部材とバネ下部材との間に介装されたサスペンションスプリングおよびダンパを備える。ダンパは、車両が路面凹凸を乗り越えることなどにより発生するバネ上部材の振動やバネ下部材の振動を減衰する。サスペンションスプリングは上記振動を吸収(緩衝)する。すなわちサスペンション装置は、外部から入力される振動を吸収(緩衝)するとともにその振動を減衰するための減衰力を発生する減衰力発生装置として機能する。
車両の走行状況に応じて減衰力特性を変更することができるダンパが搭載されたサスペンション装置が知られている。このようなダンパは、所定の制御理論に基づいて設計されるフィードバックコントローラから算出される制御入力に基づいてアクチュエータが作動することにより、その減衰力特性が可変制御される。
ダンパの減衰力特性を可変制御するときに、乗り心地が向上するように減衰力の可変分の大きさを計算する制御理論として非線形H∞制御理論が良く適用される。例えば、特開2001−1736号公報は、サスペンション装置の運動方程式を表す力学的運動モデルに非線形重みを加えて設計した一般化プラントと、この一般化プラントの状態フィードバックコントローラを有する閉ループ制御系について、非線形H∞制御問題を満足するように設計された状態フィードバックコントローラ、すなわち閉ループ制御系のL2ゲインが正定数γ未満となるように設計された状態フィードバックコントローラにより求められる制御入力に基づいて、可変減衰係数を算出する減衰力制御装置を開示している。
車両の走行状況に応じて減衰力特性を変更することができるダンパが搭載されたサスペンション装置が知られている。このようなダンパは、所定の制御理論に基づいて設計されるフィードバックコントローラから算出される制御入力に基づいてアクチュエータが作動することにより、その減衰力特性が可変制御される。
ダンパの減衰力特性を可変制御するときに、乗り心地が向上するように減衰力の可変分の大きさを計算する制御理論として非線形H∞制御理論が良く適用される。例えば、特開2001−1736号公報は、サスペンション装置の運動方程式を表す力学的運動モデルに非線形重みを加えて設計した一般化プラントと、この一般化プラントの状態フィードバックコントローラを有する閉ループ制御系について、非線形H∞制御問題を満足するように設計された状態フィードバックコントローラ、すなわち閉ループ制御系のL2ゲインが正定数γ未満となるように設計された状態フィードバックコントローラにより求められる制御入力に基づいて、可変減衰係数を算出する減衰力制御装置を開示している。
一般に、減衰力制御装置は、減衰力制御に係る閉ループ制御系のフィードバックコントローラにより算出される制御入力に基づいてアクチュエータを作動させることにより、減衰力発生装置の減衰力を制御する。この場合、アクチュエータが作動を開始してからその作動が完了するまでには時間がかかる。この作動時間分の遅れによって、フィードバックコントローラから得られる制御入力がアクチュエータの作動完了時に必要とする制御入力ではなくなっている事態が生ずる。このように、アクチュエータの作動の遅れは制御のタイミングにずれを生じさせる。すなわち、アクチュエータの作動遅れは、フィードバックコントローラにより与えられる制御入力に基づいて行われる減衰力制御に対して悪影響を及ぼす。
アクチュエータの応答性を速くすることによりアクチュエータの作動の遅れを小さくすることができる。しかし、応答性を速くすると異音が発生してしまう。つまり、遅れによる悪影響をできるだけ小さくするために単純にアクチュエータの応答性を上げた場合には、別の不具合が発生する。
また、減衰力発生装置の力学的運動モデルにアクチュエータの作動の遅れを考慮した制御モデル(本明細書においてこのようなモデルを「遅れ考慮モデル」と呼ぶ)を用いて閉ループ制御系のフィードバックコントローラを設計することができれば、設計したフィードバックコントローラからアクチュエータの作動の遅れを見越した制御入力、つまり作動の遅れによる制御タイミングのずれが修正された制御入力を得ることができる。したがって、設計したフィードバックコントローラから得られた制御入力に基づいて減衰力を制御することで、遅れによる悪影響が除外された減衰力制御を行うことができる。
しかし、非線形H∞制御理論を用いて減衰力を制御するためには、制御モデルが双線形システムでなければならない。制御モデルが双線形システムである場合は、近似的にリカッチ不等式の解を求めることによりフィードバックコントローラを設計することができるのに対し、制御モデルが双線形でない非線形である場合には、ハミルトンヤコビ偏微分不等式の解を求めなければならず、この解を解析的に求めることはほぼ不可能と言われているからである。上記した遅れ考慮モデルは非線形なシステムであり、且つ双線形にもならない。よって、この遅れ考慮モデルは、非線形H∞制御理論を適用して減衰力を制御するときに制御モデルとして用いることはできない。このため、アクチュエータの作動遅れを考慮に入れた減衰力制御を行うことができなかった。
本発明は、上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、アクチュエータの作動遅れによる制御タイミングのずれ(遅れ)などの悪影響が除外された減衰力制御を行うことができる減衰力制御装置を提供することにある。
本発明の特徴は、アクチュエータを作動させることによって、外部から入力される振動に対して減衰力発生装置により発生される減衰力を制御する減衰力制御装置であり、前記減衰力発生装置の力学的運動モデルに前記アクチュエータの作動の遅れを表す遅れ要素Rおよび前記遅れを打ち消す遅れ補償要素R*を作用させた制御モデルであって、双線形システムであり且つ前記減衰力発生装置の力学的運動モデルに前記遅れを考慮した制御モデルに近似するように設計された制御モデルである遅れ近似モデルMを用いて設計された一般化プラントGおよびこの一般化プラントGの状態フィードバックコントローラKを含む閉ループ制御系SのL2ゲインが予め設定される正定数γ未満となるように設計された前記状態フィードバックコントローラKにより制御入力uを算出する制御入力算出手段と、前記制御入力算出手段により算出された制御入力uに基づいて前記アクチュエータの作動を制御する作動制御手段と、を備える減衰力制御装置とすることにある。この場合、前記制御入力uは可変減衰係数Cvであるのがよい。この可変減衰係数Cvは、制御により変動する可変分の減衰係数であり、外部から入力される振動の速度dr/dt−dy/dtに対する減衰力の可変分の大きさの変化勾配により表される。
本発明によれば、一般化プラントの設計に用いられる遅れ近似モデルMは、減衰力発生装置の力学的運動モデルにアクチュエータの作動の遅れを表す遅れ要素Rおよびこの遅れを打ち消す遅れ補償要素R*を作用させた制御モデルである。つまり、遅れ近似モデルMは、減衰力発生装置の力学的運動モデルを表すブロック線図にアクチュエータの作動の遅れを表す遅れ要素Rおよびこの遅れを打ち消す遅れ要素補償R*を加えたブロック線図により表される制御モデルである。この遅れ近似モデルMは双線形システムとなるように構成されているので、遅れ近似モデルMを用いて設計した一般化プラントGも双線形システムとなる。よって、リカッチ不等式を解くことによって閉ループ制御系SのL2ゲインが所定の正定数γ未満となる状態フィードバックコントローラKを設計することができる。
また、遅れ近似モデルMは、減衰力発生装置の力学的運動モデルにアクチュエータの遅れを考慮した制御モデルである遅れ考慮モデルに近似している。したがって、遅れ近似モデルMを用いて設計された閉ループ制御系Sの状態フィードバックコントローラKによって与えられる制御入力uは、アクチュエータの作動の遅れが考慮された制御入力となる。つまり制御入力uは、アクチュエータの作動の遅れによる制御タイミングのずれ(遅れ)が修正された制御入力として算出される。よって、このように算出された制御入力uに基づいてアクチュエータを作動させることにより、アクチュエータは自身の遅れを無くすように作動する。これによりアクチュエータの作動遅れによる制御タイミングのずれが修正される。つまり、本発明の減衰力制御装置によれば、アクチュエータの作動の遅れによる制御タイミングのずれなどによる悪影響が除外された減衰力制御を行うことができる。
上記遅れ補償要素R*は、アクチュエータの作動遅れを打ち消す要素である。「アクチュエータの作動遅れを打ち消す」とは、アクチュエータの作動遅れを表す遅れ要素Rと掛け合わされた場合に遅れ要素Rが作用しなくなるということである。具体的には、例えば遅れ要素Rがある伝達関数により表されたときに、遅れ補償要素R*は、遅れ要素Rを表す伝達関数と掛け合わせられた場合に出力が1となるような伝達関数により表される。
また、上記双線形システムとは、一般化プラントあるいは制御モデルを状態空間表現したときに、状態量に係る行列が定数行列であり、制御入力に係る行列が状態量の関数により表される制御系をいう。
また、「遅れ考慮モデルに近似するように設計された制御モデル」とは、モデルの構成に遅れ考慮モデルとは異なった部分が存在するものの、遅れ考慮モデルと等価な制御モデル、あるいは等価とみなすことができるように設計された制御モデルをいう。例えば、減衰力制御装置により制御すべき減衰力の可変分の大きさを表す可変減衰力Fvを制御入力や状態量により表現したときに、遅れ考慮モデルにて表現される減衰力と同じ表現形式で減衰力が表される制御モデルは、遅れ考慮モデルに近似するように設計された制御モデルである。この場合、遅れ近似モデルは、常に遅れ考慮モデルに近似するものでなくてもよく、所定の条件が満たされる場合に遅れ考慮モデルに近似するものであってもよい。
また、前記遅れ近似モデルMは、前記速度dr/dt−dy/dtに前記遅れ補償要素R*が作用し、その出力が前記制御入力uと積算され、その積算結果に前記遅れ要素Rが作用するように設計されているとよい。つまり、遅れ近似モデルMをブロック線図により表したときに、速度dr/dt−dy/dtを表す部分に遅れ補償要素R*が作用しており、その出力が制御入力uに掛け合わされている。そして、その積算結果に遅れ要素Rが作用している。このように遅れ近似モデルMを設計することにより、遅れ近似モデルMを双線形システムとするができる。
また、このように遅れ近似モデルMを設計することにより、速度dr/dt−dy/dtまたは制御入力uが一定であるという条件の下で、遅れ近似モデルMにて表される可変減衰力Fvの表現形式と遅れ考慮モデルにて表される可変減衰力Fvの表現形式が一致する。したがって、速度dr/dt−dy/dtの変化量Δvまたは制御量uの変化量Δuが予め設定された微少量以下であるときに、遅れ近似モデルMが遅れ考慮モデルと等価な制御モデル、あるいは等価とみなすことができる制御モデルとなる。つまり、遅れ近似モデルが遅れ考慮モデルに近似した制御モデルとなる。
よって、速度dr/dt−dy/dtの変化量Δvおよび制御入力uの変化量Δuが予め設定された微小量以下である場合に、双線形な遅れ近似モデルMを基に設計した一般化プラントGの状態フィードバックコントローラKにより算出される制御入力uに基づいてアクチュエータを作動させて減衰力を制御することにより、アクチュエータの作動遅れによる制御タイミングのずれなどの悪影響が十分に除外された最適な減衰力制御を行うことができる。なお、このとき一般化プラントGは、その状態量xが速度dr/dt−dy/dtおよび可変減衰力Fvを含み、制御入力uは可変減衰係数Cvであるのがよい。
速度dr/dt−dy/dtの変化量Δvおよび制御入力uの変化量Δuは、遅れ近似モデルMが遅れ考慮モデルに近似する範囲で設計者が任意に設定することができる。これらの変化量の具体的な範囲は扱う制御モデルや遅れの大きさによって異なるため一概に決定することはできないが、例えば速度の変化量の絶対値|Δv|の上限が0.05〜0.5m/sであるときに本発明を適用することができる。また制御入力uの変化量Δuの絶対値|Δu|の上限が100〜400N・S/mであるときに本発明を適用することができる。勿論、遅れ近似モデルが遅れ考慮モデルに十分近似した制御モデルとなる限りにおいては、速度または制御入力の変化量が上記の範囲ではなくてもよい。
また、前記遅れ要素Rは、一次遅れ要素として下記式(eq.1)により表され、前記遅れ補償要素R*は、下記式(eq.2)により表されるものであってもよい。
(τは時定数、sはラプラス演算子)
これによれば、アクチュエータの一次遅れによる制御タイミングのずれが修正されるように算出された制御入力に基づき減衰力が制御される。
また、前記減衰力発生装置は、車両のバネ上部材とバネ下部材との間に介装されて、バネ下部材に対するバネ上部材の振動を減衰するダンパと、前記振動を吸収する弾性部材を備えるサスペンション装置であり、前記減衰力制御装置は、前記状態フィードバックコントローラKにより算出される制御入力uに基づいて前記アクチュエータを作動させて前記ダンパの減衰力特性を可変制御することによって、バネ上部材の振動を抑制するように、前記減衰力発生装置の減衰力を制御するものであるのがよい。この場合、前記遅れ近似モデルMの状態空間表現が、下記式(eq.3)により表されるものであるのがよい。
ここで、
Ksは弾性部材(例えばバネ)の弾性係数(バネ定数)、
Mはバネ上部材の質量、Csは線形減衰係数、τは時定数である。
これによれば、サスペンション装置に本発明の減衰力制御装置を適用し、アクチュエータの作動遅れによる制御タイミングのずれが修正された制御入力に基づき減衰力制御を行うことで、車両の乗り心地を向上させることができる。
また、本発明の他の特徴は、アクチュエータを作動させることによって、外部から入力される振動に対して減衰力発生装置により発生される減衰力を制御する減衰力制御方法であって、その減衰力制御方法を、前記減衰力発生装置の力学的運動モデルに前記アクチュエータの作動の遅れを表す遅れ要素Rおよび前記遅れを打ち消す遅れ補償要素R*を作用させた制御モデルであって、双線形システムであり且つ前記減衰力発生装置の力学的運動モデルに前記遅れを考慮した制御モデルに近似するように設計された制御モデルである遅れ近似モデルMを用いて設計された一般化プラントGおよびこの一般化プラントGの状態フィードバックコントローラKを含む閉ループ制御系SのL2ゲインが予め設定された正定数γ未満となるように、前記状態フィードバックコントローラKを設計するステップと、設計した前記状態フィードバックコントローラKにより制御入力uを算出するステップと、算出した制御入力uに基づいて前記アクチュエータを作動させるステップと、を含むものとしたことである。
この場合、前記制御入力uは、外部から入力される振動の速度dr/dt−dy/dtに対する減衰力の可変分の大きさの変化勾配を表す可変減衰係数Cvであるのがよい。また、前記遅れ近似モデルMは、前記速度dr/dt−dy/dtに前記遅れ補償要素R*が作用し、その出力が前記制御入力uと積算され、その積算結果に前記遅れ要素Rが作用するように設計されているとよい。また、前記遅れ近似モデルMは、前記速度dr/dt−dy/dtの変化量または前記制御入力uの変化量が予め設定された微小量以下である場合に、前記遅れ考慮モデルに近似するように設計されているものであるのがよい。
このような方法の発明においても、上述の減衰力制御装置の発明と同様の作用効果を得ることができる。
アクチュエータの応答性を速くすることによりアクチュエータの作動の遅れを小さくすることができる。しかし、応答性を速くすると異音が発生してしまう。つまり、遅れによる悪影響をできるだけ小さくするために単純にアクチュエータの応答性を上げた場合には、別の不具合が発生する。
また、減衰力発生装置の力学的運動モデルにアクチュエータの作動の遅れを考慮した制御モデル(本明細書においてこのようなモデルを「遅れ考慮モデル」と呼ぶ)を用いて閉ループ制御系のフィードバックコントローラを設計することができれば、設計したフィードバックコントローラからアクチュエータの作動の遅れを見越した制御入力、つまり作動の遅れによる制御タイミングのずれが修正された制御入力を得ることができる。したがって、設計したフィードバックコントローラから得られた制御入力に基づいて減衰力を制御することで、遅れによる悪影響が除外された減衰力制御を行うことができる。
しかし、非線形H∞制御理論を用いて減衰力を制御するためには、制御モデルが双線形システムでなければならない。制御モデルが双線形システムである場合は、近似的にリカッチ不等式の解を求めることによりフィードバックコントローラを設計することができるのに対し、制御モデルが双線形でない非線形である場合には、ハミルトンヤコビ偏微分不等式の解を求めなければならず、この解を解析的に求めることはほぼ不可能と言われているからである。上記した遅れ考慮モデルは非線形なシステムであり、且つ双線形にもならない。よって、この遅れ考慮モデルは、非線形H∞制御理論を適用して減衰力を制御するときに制御モデルとして用いることはできない。このため、アクチュエータの作動遅れを考慮に入れた減衰力制御を行うことができなかった。
本発明は、上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、アクチュエータの作動遅れによる制御タイミングのずれ(遅れ)などの悪影響が除外された減衰力制御を行うことができる減衰力制御装置を提供することにある。
本発明の特徴は、アクチュエータを作動させることによって、外部から入力される振動に対して減衰力発生装置により発生される減衰力を制御する減衰力制御装置であり、前記減衰力発生装置の力学的運動モデルに前記アクチュエータの作動の遅れを表す遅れ要素Rおよび前記遅れを打ち消す遅れ補償要素R*を作用させた制御モデルであって、双線形システムであり且つ前記減衰力発生装置の力学的運動モデルに前記遅れを考慮した制御モデルに近似するように設計された制御モデルである遅れ近似モデルMを用いて設計された一般化プラントGおよびこの一般化プラントGの状態フィードバックコントローラKを含む閉ループ制御系SのL2ゲインが予め設定される正定数γ未満となるように設計された前記状態フィードバックコントローラKにより制御入力uを算出する制御入力算出手段と、前記制御入力算出手段により算出された制御入力uに基づいて前記アクチュエータの作動を制御する作動制御手段と、を備える減衰力制御装置とすることにある。この場合、前記制御入力uは可変減衰係数Cvであるのがよい。この可変減衰係数Cvは、制御により変動する可変分の減衰係数であり、外部から入力される振動の速度dr/dt−dy/dtに対する減衰力の可変分の大きさの変化勾配により表される。
本発明によれば、一般化プラントの設計に用いられる遅れ近似モデルMは、減衰力発生装置の力学的運動モデルにアクチュエータの作動の遅れを表す遅れ要素Rおよびこの遅れを打ち消す遅れ補償要素R*を作用させた制御モデルである。つまり、遅れ近似モデルMは、減衰力発生装置の力学的運動モデルを表すブロック線図にアクチュエータの作動の遅れを表す遅れ要素Rおよびこの遅れを打ち消す遅れ要素補償R*を加えたブロック線図により表される制御モデルである。この遅れ近似モデルMは双線形システムとなるように構成されているので、遅れ近似モデルMを用いて設計した一般化プラントGも双線形システムとなる。よって、リカッチ不等式を解くことによって閉ループ制御系SのL2ゲインが所定の正定数γ未満となる状態フィードバックコントローラKを設計することができる。
また、遅れ近似モデルMは、減衰力発生装置の力学的運動モデルにアクチュエータの遅れを考慮した制御モデルである遅れ考慮モデルに近似している。したがって、遅れ近似モデルMを用いて設計された閉ループ制御系Sの状態フィードバックコントローラKによって与えられる制御入力uは、アクチュエータの作動の遅れが考慮された制御入力となる。つまり制御入力uは、アクチュエータの作動の遅れによる制御タイミングのずれ(遅れ)が修正された制御入力として算出される。よって、このように算出された制御入力uに基づいてアクチュエータを作動させることにより、アクチュエータは自身の遅れを無くすように作動する。これによりアクチュエータの作動遅れによる制御タイミングのずれが修正される。つまり、本発明の減衰力制御装置によれば、アクチュエータの作動の遅れによる制御タイミングのずれなどによる悪影響が除外された減衰力制御を行うことができる。
上記遅れ補償要素R*は、アクチュエータの作動遅れを打ち消す要素である。「アクチュエータの作動遅れを打ち消す」とは、アクチュエータの作動遅れを表す遅れ要素Rと掛け合わされた場合に遅れ要素Rが作用しなくなるということである。具体的には、例えば遅れ要素Rがある伝達関数により表されたときに、遅れ補償要素R*は、遅れ要素Rを表す伝達関数と掛け合わせられた場合に出力が1となるような伝達関数により表される。
また、上記双線形システムとは、一般化プラントあるいは制御モデルを状態空間表現したときに、状態量に係る行列が定数行列であり、制御入力に係る行列が状態量の関数により表される制御系をいう。
また、「遅れ考慮モデルに近似するように設計された制御モデル」とは、モデルの構成に遅れ考慮モデルとは異なった部分が存在するものの、遅れ考慮モデルと等価な制御モデル、あるいは等価とみなすことができるように設計された制御モデルをいう。例えば、減衰力制御装置により制御すべき減衰力の可変分の大きさを表す可変減衰力Fvを制御入力や状態量により表現したときに、遅れ考慮モデルにて表現される減衰力と同じ表現形式で減衰力が表される制御モデルは、遅れ考慮モデルに近似するように設計された制御モデルである。この場合、遅れ近似モデルは、常に遅れ考慮モデルに近似するものでなくてもよく、所定の条件が満たされる場合に遅れ考慮モデルに近似するものであってもよい。
また、前記遅れ近似モデルMは、前記速度dr/dt−dy/dtに前記遅れ補償要素R*が作用し、その出力が前記制御入力uと積算され、その積算結果に前記遅れ要素Rが作用するように設計されているとよい。つまり、遅れ近似モデルMをブロック線図により表したときに、速度dr/dt−dy/dtを表す部分に遅れ補償要素R*が作用しており、その出力が制御入力uに掛け合わされている。そして、その積算結果に遅れ要素Rが作用している。このように遅れ近似モデルMを設計することにより、遅れ近似モデルMを双線形システムとするができる。
また、このように遅れ近似モデルMを設計することにより、速度dr/dt−dy/dtまたは制御入力uが一定であるという条件の下で、遅れ近似モデルMにて表される可変減衰力Fvの表現形式と遅れ考慮モデルにて表される可変減衰力Fvの表現形式が一致する。したがって、速度dr/dt−dy/dtの変化量Δvまたは制御量uの変化量Δuが予め設定された微少量以下であるときに、遅れ近似モデルMが遅れ考慮モデルと等価な制御モデル、あるいは等価とみなすことができる制御モデルとなる。つまり、遅れ近似モデルが遅れ考慮モデルに近似した制御モデルとなる。
よって、速度dr/dt−dy/dtの変化量Δvおよび制御入力uの変化量Δuが予め設定された微小量以下である場合に、双線形な遅れ近似モデルMを基に設計した一般化プラントGの状態フィードバックコントローラKにより算出される制御入力uに基づいてアクチュエータを作動させて減衰力を制御することにより、アクチュエータの作動遅れによる制御タイミングのずれなどの悪影響が十分に除外された最適な減衰力制御を行うことができる。なお、このとき一般化プラントGは、その状態量xが速度dr/dt−dy/dtおよび可変減衰力Fvを含み、制御入力uは可変減衰係数Cvであるのがよい。
速度dr/dt−dy/dtの変化量Δvおよび制御入力uの変化量Δuは、遅れ近似モデルMが遅れ考慮モデルに近似する範囲で設計者が任意に設定することができる。これらの変化量の具体的な範囲は扱う制御モデルや遅れの大きさによって異なるため一概に決定することはできないが、例えば速度の変化量の絶対値|Δv|の上限が0.05〜0.5m/sであるときに本発明を適用することができる。また制御入力uの変化量Δuの絶対値|Δu|の上限が100〜400N・S/mであるときに本発明を適用することができる。勿論、遅れ近似モデルが遅れ考慮モデルに十分近似した制御モデルとなる限りにおいては、速度または制御入力の変化量が上記の範囲ではなくてもよい。
また、前記遅れ要素Rは、一次遅れ要素として下記式(eq.1)により表され、前記遅れ補償要素R*は、下記式(eq.2)により表されるものであってもよい。
(τは時定数、sはラプラス演算子)
これによれば、アクチュエータの一次遅れによる制御タイミングのずれが修正されるように算出された制御入力に基づき減衰力が制御される。
また、前記減衰力発生装置は、車両のバネ上部材とバネ下部材との間に介装されて、バネ下部材に対するバネ上部材の振動を減衰するダンパと、前記振動を吸収する弾性部材を備えるサスペンション装置であり、前記減衰力制御装置は、前記状態フィードバックコントローラKにより算出される制御入力uに基づいて前記アクチュエータを作動させて前記ダンパの減衰力特性を可変制御することによって、バネ上部材の振動を抑制するように、前記減衰力発生装置の減衰力を制御するものであるのがよい。この場合、前記遅れ近似モデルMの状態空間表現が、下記式(eq.3)により表されるものであるのがよい。
ここで、
Ksは弾性部材(例えばバネ)の弾性係数(バネ定数)、
Mはバネ上部材の質量、Csは線形減衰係数、τは時定数である。
これによれば、サスペンション装置に本発明の減衰力制御装置を適用し、アクチュエータの作動遅れによる制御タイミングのずれが修正された制御入力に基づき減衰力制御を行うことで、車両の乗り心地を向上させることができる。
また、本発明の他の特徴は、アクチュエータを作動させることによって、外部から入力される振動に対して減衰力発生装置により発生される減衰力を制御する減衰力制御方法であって、その減衰力制御方法を、前記減衰力発生装置の力学的運動モデルに前記アクチュエータの作動の遅れを表す遅れ要素Rおよび前記遅れを打ち消す遅れ補償要素R*を作用させた制御モデルであって、双線形システムであり且つ前記減衰力発生装置の力学的運動モデルに前記遅れを考慮した制御モデルに近似するように設計された制御モデルである遅れ近似モデルMを用いて設計された一般化プラントGおよびこの一般化プラントGの状態フィードバックコントローラKを含む閉ループ制御系SのL2ゲインが予め設定された正定数γ未満となるように、前記状態フィードバックコントローラKを設計するステップと、設計した前記状態フィードバックコントローラKにより制御入力uを算出するステップと、算出した制御入力uに基づいて前記アクチュエータを作動させるステップと、を含むものとしたことである。
この場合、前記制御入力uは、外部から入力される振動の速度dr/dt−dy/dtに対する減衰力の可変分の大きさの変化勾配を表す可変減衰係数Cvであるのがよい。また、前記遅れ近似モデルMは、前記速度dr/dt−dy/dtに前記遅れ補償要素R*が作用し、その出力が前記制御入力uと積算され、その積算結果に前記遅れ要素Rが作用するように設計されているとよい。また、前記遅れ近似モデルMは、前記速度dr/dt−dy/dtの変化量または前記制御入力uの変化量が予め設定された微小量以下である場合に、前記遅れ考慮モデルに近似するように設計されているものであるのがよい。
このような方法の発明においても、上述の減衰力制御装置の発明と同様の作用効果を得ることができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る車両のサスペンション制御装置の全体概略図である。
図2は、マイクロコンピュータが非線形H∞制御部にて実行する可変減衰係数計算処理の流れを示すフローチャートである。
図3は、マイクロコンピュータが要求減衰力決定部にて実行する要求減衰力決定処理の流れを示すフローチャートである。
図4は、マイクロコンピュータが要求段数決定部にて実行する要求段数決定処理の流れを示すフローチャートである。
図5は、一般化プラントGの状態量をフィードバックした閉ループ制御系Sのブロック線図である。
図6は、本実施形態に係るサスペンション装置の単輪モデルを表す図である。
図7は、サスペンション装置の力学的運動モデルを表すブロック線図である。
図8は、サスペンション装置の力学的運動モデルにアクチュエータの一次遅れを考慮して設計した制御モデルである遅れ考慮モデルを表すブロック線図である。
図9は、本実施形態の制御モデルである遅れ近似モデルのブロック線図である。
図10は、本実施形態の遅れ近似モデルを用いた一般化プラントGおよび一般化プラントGの状態フィードバックコントローラKよりなる閉ループ制御系Sのブロック線図である。
図11は、遅れ要素および遅れ補償要素の作用箇所を明確に表した閉ループ制御系Sのブロック線図である。
図2は、マイクロコンピュータが非線形H∞制御部にて実行する可変減衰係数計算処理の流れを示すフローチャートである。
図3は、マイクロコンピュータが要求減衰力決定部にて実行する要求減衰力決定処理の流れを示すフローチャートである。
図4は、マイクロコンピュータが要求段数決定部にて実行する要求段数決定処理の流れを示すフローチャートである。
図5は、一般化プラントGの状態量をフィードバックした閉ループ制御系Sのブロック線図である。
図6は、本実施形態に係るサスペンション装置の単輪モデルを表す図である。
図7は、サスペンション装置の力学的運動モデルを表すブロック線図である。
図8は、サスペンション装置の力学的運動モデルにアクチュエータの一次遅れを考慮して設計した制御モデルである遅れ考慮モデルを表すブロック線図である。
図9は、本実施形態の制御モデルである遅れ近似モデルのブロック線図である。
図10は、本実施形態の遅れ近似モデルを用いた一般化プラントGおよび一般化プラントGの状態フィードバックコントローラKよりなる閉ループ制御系Sのブロック線図である。
図11は、遅れ要素および遅れ補償要素の作用箇所を明確に表した閉ループ制御系Sのブロック線図である。
以下、本発明の減衰力制御装置を車両のサスペンション装置に適用した一実施形態について図面を用いて説明する。
[サスペンション制御装置の構造]
図1は、本実施形態の車両のサスペンション制御装置の全体概略図である。このサスペンション制御装置は、サスペンション装置1と電気制御装置5を備えている。
サスペンション装置1は本発明の減衰力発生装置に相当するものであり、サスペンションスプリング10とダンパ20を備えている。サスペンションスプリング10およびダンパ20は、車両のバネ上部材HAとバネ下部材LAとの間に介装されており、一端(下端)がバネ下部材LAに接続され、他端(上端)がバネ上部材HAに接続されている。サスペンションスプリング10は本発明の弾性部材に相当し、バネ下部材LAおよびバネ上部材HAの振動を吸収(緩衝)する。ダンパ20はサスペンションスプリング10と並行に配置されており、バネ下部材LAに対するバネ上部材HAの振動を減衰する。なお、車輪に連結されたナックルや、一端がナックルに連結されたロアアーム等がバネ下部材LAに相当する。バネ上部材HAは、サスペンションスプリング10およびダンパ20に支持される部材であり、車体もバネ上部材HAに含まれる。
ダンパ20は、シリンダ21と、ピストン22と、ピストンロッド23を備える。シリンダ21は内部にオイルなどの粘性流体が封入された中空の部材であり、その下端がバネ下部材LAであるロアアームに連結されている。ピストン22はシリンダ21内に配設され、シリンダ21の内部を軸方向に移動可能に構成されている。ピストンロッド23は棒状の部材であって、その一端がピストン22に接続され、その接続端からシリンダ21の軸方向上方に延設されてシリンダ21の上端から外部に突き出ている。そして、他端がバネ上部材HAである車体に連結している。
図に示されるように、シリンダ21の内部に配設されたピストン22によって、シリンダ21内に上部室21aと下部室21bが区画形成されている。また、ピストン22には連通路22cが形成されている。この連通路22cは、上部室21aに面している上面22aと下部室21bに面している下面22bとに開口し、上部室21aと下部室21bとを連通している。
上記構造のダンパ20において、車両が路面凹凸などを乗り越えることにより発生するバネ下部材LAの振動がサスペンションスプリング10およびダンパ20を介してバネ上部材HAに伝達されることにより、バネ上部材HAがバネ下部材LAに対して上下に振動した場合に、ピストンロッド23を介してバネ上部材HAに連結したピストン22がバネ下部材LAに連結したシリンダ21内を軸方向に相対変位する。この相対変位に伴い連通路22c内を粘性流体が流通する。この流通時に発生する粘性抵抗が上下振動に対する減衰力となって、バネ下部材LA(シリンダ21側)に対するバネ上部材HA(ピストン22側)の振動が減衰する。なお、減衰力の大きさは、シリンダ21に対するピストン22の振動速度(この速度は後述するバネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtである)が大きくなる程大きくなる。
また、サスペンション装置1には、可変絞り機構30が取付けられている。可変絞り機構30は、バルブ31およびアクチュエータ32を有する。バルブ31はピストン22に形成された連通路22cに設けられている。バルブ31は、作動することによって、連通路22cの少なくとも一部の流路断面積の大きさや連通路22cの接続本数を変化させる。すなわち連通路22cの開度OPを変化させる。バルブ31は、例えば連通路22c内に組み込まれたロータリーバルブにより構成することができる。ロータリーバルブの回転角を変化させて連通路22cの接続本数や流路断面積を変更させることにより、開度OPを変化させることができる。アクチュエータ32はバルブ31に接続されている。このアクチュエータ32の作動に連動してバルブ31も作動する。アクチュエータ32は、例えばバルブ31が上記のようにロータリーバルブである場合に、このロータリーバルブを回転させるためのモータにより構成することができる。
アクチュエータ32の作動に連動したバルブ31の作動によって開度OPが変更された場合、連通路22c内を粘性流体が流通するときの抵抗の大きさも変更される。この抵抗力は上述したように振動に対する減衰力である。したがって、開度OPが変更されれば、ダンパ20の減衰力特性も変更される。なお、減衰力特性は、シリンダ21に対するピストン22の速度(すなわち後述するバネ上−バネ下相対速度)に対する減衰力の大きさの変化特性であり、減衰力が速度に比例する場合はこの減衰力特性は減衰係数により表される。
また、本実施形態においては、開度OPは段階的に設定される。このため開度OPの変更に伴いダンパ20の減衰力特性も段階的に変化していく。減衰力特性は、設定される開度OPの設定段数により表される。すなわち各減衰力特性は、開度OPの設定段数に習って、1段、2段、・・・、というように段数表示される。この場合、例えば段数を表す数字が大きくなるほど、ピストン22の速度(バネ上−バネ下相対速度)に対する減衰力が大きくなるように、減衰力特性を表す各段数を設定することができる。減衰力特性を表す設定段数は、上述のように可変絞り機構30の作動により変更される。すなわち可変絞り機構30は、減衰力特性を変更する減衰力特性変更手段である。
次に、電気制御装置5について説明する。電気制御装置5は、バネ上加速度センサ51と、バネ下加速度センサ52と、ストロークセンサ53と、マイクロコンピュータ60を備える。バネ上加速度センサ51は車体に組み付けられていて、絶対空間に対するバネ上部材HAの上下方向の加速度であるバネ上加速度d2y/dt2を検出し、検出したバネ上加速度d2y/dt2に応じた信号を出力する。バネ下加速度センサ52はバネ下部材LAに固定され、絶対空間に対するバネ下部材LAの上下方向の加速度であるバネ下加速度d2r/dt2を検出し、検出したバネ下加速度d2r/dt2に応じた信号を出力する。ストロークセンサ53は、バネ上部材HAとバネ下部材LAとの間に配設されており、バネ上部材HAの基準位置からの上下方向の変位量であるバネ上変位量yとバネ下部材LAの基準位置からの上下方向の変位量であるバネ下変位量rとの差であるバネ上−バネ下相対変位量r−yを検出し、検出したバネ上−バネ下相対変位量r−yに応じた信号を出力する。なお、本実施形態においては、バネ下部材LAの上下変位は路面の上下変位に等しいものとしている。よって、バネ下変位量rは路面変位量でもある。
なお、バネ上加速度センサ51およびバネ下加速度センサ52は、上方向に向かう加速度を正の加速度として検出し、下方向に向かう加速度を負の加速度として検出する。また、ストロークセンサ53は、正のバネ上変位量がバネ上部材HAの基準位置から上方向への変位量、負のバネ上変位量がバネ上部材HAの基準位置から下方向への変位量であり、正のバネ下変位量がバネ下部材LAの基準位置から上方向への変位量、負のバネ下変位量がバネ下部材LAの基準位置から下方向への変位量である場合における、相対変位量を検出する。
マイクロコンピュータ60は、バネ上加速度センサ51、バネ下加速度センサ52、ストロークセンサ53に電気的に接続されており、各センサから出力された信号に基づいて、減衰力特性の制御目標段数を表す要求段数Dreqを決定する。そして、決定した要求段数Dreqに応じた指令信号をアクチュエータ32に出力する。アクチュエータ32は上記指令信号に基づいて作動する。これによりバルブ31も作動する。このようにマイクロコンピュータ60が可変絞り機構30を制御してダンパ20の減衰力特性を可変制御することにより、サスペンション装置1の減衰力が制御される。すなわち、マイクロコンピュータ60が、本発明の減衰力制御装置に相当する。
また、マイクロコンピュータ60は、図1からわかるように非線形H∞制御部61、要求減衰力決定部62および要求段数決定部63を備える。非線形H∞制御部61は、各センサ51,52,53から信号を入力し、非線形H∞制御理論に基づいて、制御すべき可変分の減衰係数である可変減衰係数Cvを計算する。そして、計算した可変減衰係数Cvを出力する。要求減衰力決定部62は、可変減衰係数Cvを入力するとともに、入力した可変減衰係数Cvと予め設定されている線形減衰係数Csとの和により求められる要求減衰係数Creqに基づいて、制御に必要な減衰力である要求減衰力Freqを計算する。そして、計算した要求減衰力Freqを出力する。要求段数決定部63は要求減衰力Freqを入力し、入力した要求減衰力Freqに基づいて、減衰力特性の制御目標段数である要求段数Dreqを決定する。そして、決定した要求段数Dreqに対応する信号を指示信号としてアクチュエータ32に出力する。
[サスペンション装置の減衰力制御]
上記のように構成された本実施形態のサスペンション制御装置において、車両のイグニッションキーが操作されることによりイグニッションがON状態になると、マイクロコンピュータ60は、非線形H∞制御部61にて可変減衰係数計算処理を、要求減衰力決定部62にて要求減衰力決定処理を、要求段数決定部63にて要求段数決定処理を、それぞれ所定の短時間ごとに繰り返し実行する。
図2は、マイクロコンピュータ60が非線形H∞制御部61にて実行する可変減衰係数計算処理の流れを示すフローチャートである。マイクロコンピュータ60は、図2のステップ100(以下、ステップ番号をSと略記する)にてこの処理を開始し、次のS102にてバネ上加速度センサ51からバネ上加速度d2y/dt2を、バネ下加速度センサ52からバネ下加速度d2r/dt2を、ストロークセンサ53からバネ上−バネ下相対変位量r−yを入力する。次に、S104にて、入力したバネ上加速度d2y/dt2およびバネ下加速度d2r/dt2をそれぞれ時間積分してバネ上部材HAの上下方向の速度であるバネ上速度dy/dtおよびバネ下部材LAの上下方向の速度であるバネ下速度dr/dtを計算し、さらに入力したバネ上−バネ下相対変位量r−yを時間微分して、バネ上速度dy/dtとバネ下速度dr/dtとの差であるバネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtを計算する。ここで、バネ上速度dy/dtおよびバネ下速度dr/dtは、上方向に向かう速度であるときに正の速度として計算され、下方向に向かう速度であるときに負の速度として計算される。また、相対速度dr/dt−dy/dtは、バネ上部材HAとバネ下部材LAとの間隔を狭める方向に向かう速度、つまりダンパ20が圧縮する側に向かう速度であるときに正の速度として計算され、上記間隔を広げる方向に向かう速度、つまりダンパ20が伸びる側に向かう速度であるときに負の速度として計算される。なお、バネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtは、外部からサスペンション装置1に入力される振動の速度を表し、この速度は上述したピストン22のシリンダ21に対する速度に等しい。
次いで、マイクロコンピュータ60は、S106にて、非線形H∞制御理論に基づいて可変減衰係数Cvを算出する。可変減衰係数Cvは、減衰力が制御されることによって変動する可変分の減衰係数を表す。この場合、詳細は後述するが、可変減衰係数Cvは、一般化プラントGおよび状態フィードバックコントローラKからなる閉ループ制御系SのL2ゲインが正定数γ未満となるように設計された状態フィードバックコントローラKにより、制御入力uとして算出される。すなわち、このS106の処理を有する非線形H∞制御部61が、本発明の制御入力算出手段に相当する。マイクロコンピュータ60はS106にて可変減衰係数Cvを算出した後は、S108にて可変減衰係数Cvを出力する。その後、S110に進んでこの処理を終了する。
図3は、マイクロコンピュータ60が要求減衰力決定部62にて実行する要求減衰力決定処理の流れを示すフローチャートである。マイクロコンピュータ60は図3のS200にてこの処理を開始し、次のS202にて、可変減衰係数Cvを入力する。次いで、S204にて要求減衰係数Creqを計算する。要求減衰係数Creqは、可変減衰係数Cvに、予め設定されている線形減衰係数Csを加算することにより求められる。この線形減衰係数Csは、減衰力が制御されることによっては変動しない固定分(線形分)の減衰係数を表す。続いてマイクロコンピュータ60は、S206にて要求減衰力Freqを計算する。要求減衰力Freqは、計算した要求減衰係数Creqにバネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtを乗ずることにより求められる。次いで、マイクロコンピュータ60は、S208にて求めた要求減衰力Freqを出力し、その後S210に進んでこの処理を終了する。
図4は、マイクロコンピュータ60が要求段数決定部63にて実行する要求段数決定処理の流れを示すフローチャートである。マイクロコンピュータ60は図4のS300にてこの処理を開始し、次のS302にて要求減衰力Freqを入力する。次いで、S304にて要求段数Dreqを決定する。なお、マイクロコンピュータ60は、複数のバネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtに対して減衰力特性の設定段数ごとにダンパ20が発生し得る減衰力の大きさを記憶した減衰力特性テーブルを有している。そして、S304において、減衰力特性テーブルを参照して要求段数Dreqを決定する。具体的には、マイクロコンピュータ60は、S304にて、減衰力特性テーブルに記憶されている減衰力の中から、入力されている相対速度dr/dt−dy/dtに対応する減衰力を段数ごとに選択する。そして、選択した減衰力のうち、S302にて入力した要求減衰力Freqに最も近い減衰力についての段数を、要求段数Dreqとして決定する。
S304にて要求段数Dreqを決定した後は、マイクロコンピュータ60はS306に進み、要求段数Dreqに応じた指令信号をアクチュエータ32に出力する。指令信号を受けたアクチュエータ32は、その指令信号に基づいて作動する。これによりバルブ31が作動し、ダンパ20の減衰力特性の設定段数が要求段数Dreqとなるように、可変絞り機構30が制御される。その後S308に進んでこの処理を終了する。
以上のようにして可変絞り機構30を制御することにより、ダンパ20の減衰力特性が可変制御される。これによりサスペンション装置1の減衰力が制御される。なお、要求減衰力決定部62および要求段数決定部63が、制御入力uとして算出された可変減衰係数Cvに基づいてアクチュエータ32の作動を制御する作動制御手段に相当する。
[可変減衰係数Cvの制御理論]
可変減衰係数Cvは、可変減衰係数計算処理のS106にて算出される。可変減衰係数Cvは、制御により変動する可変分の減衰係数を表す。つまり、可変減衰係数Cvは、バネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtに対する可変分の減衰力(可変減衰力Fv)の大きさの変化勾配を表し、この可変減衰係数Cvとバネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtとの積が可変減衰力Fvに相当する。車両の乗り心地の善し悪しは、車両の走行状況に応じていかにして理想的な可変減衰係数Cvを算出し、それに基づいて減衰力を制御するかにより決定付けられる。本実施形態においては、可変減衰係数Cvは、非線形H∞制御理論に基づいて算出される。非線形H∞制御理論を用いた可変減衰係数Cvの算出手法について、以下に説明する。
1.非線形H∞制御理論
まず、非線形H∞制御理論について説明する。
1−1.状態空間表現
図5は、一般化プラントGの状態量xを状態フィードバックコントローラKによりフィードバックした閉ループ制御系Sのブロック線図である。この閉ループ制御系Sにおいて、外乱はw、評価出力はz、制御入力はu、状態量はxにより表されている。一般化プラントGの状態空間表現は、外乱w、評価出力z、制御入力uおよび状態量xを用いて下記式(eq.4)のように表すことができる。
特に特殊なケースとして、状態空間表現が下記式(eq.5)に示す形式により表される場合、その一般化プラントGにより表される制御システムは双線形システムであるという。
1−2.非線形H∞状態フィードバック制御問題
非線形H∞状態フィードバック制御問題、すなわち非線形H∞状態フィードバック制御における制御目的は、閉ループ制御系Sの外乱wが評価出力zにだけできるだけ現れないような状態フィードバックコントローラKを設計することである。この問題は、閉ループ制御系SのL2ゲイン(‖S‖L2)がある与えられた正定数γ未満となるように、すなわち下記式(eq.6)を満たすように、状態フィードバックコントローラK(=u=K(x))を設計することと等しい。
1−3.非線形H∞状態フィードバック制御問題の解
非線形H∞状態フィードバック制御問題が可解であるための必要十分条件は、式(eq.7)に示すハミルトンヤコビ偏微分不等式を満たす正定関数V(x)および正定数εが存在することである。
このとき状態フィードバックコントローラK(=u=K(x))の一つは下記式(eq.8)により与えられる。
ハミルトンヤコビ偏微分不等式を解析的に解くことはほぼ不可能といわれている。したがって、制御入力uを解析的に導くことはできない。しかし、制御モデルが双線形システムである場合には、下記式(eq.9)に示すリカッチ不等式を満たす正定対称行列Pが存在することが、非線形H∞状態フィードバック制御問題が可解であることの必要十分条件であることが知られている。このリカッチ不等式は、解析的に解くことができる。
このとき状態フィードバックコントローラK(=u=K(x))の一つは下記式(eq.10)により与えられる。
式(eq.9)および式(eq.10)において、C11は、評価出力に掛る周波数重みの状態空間表現における、出力方程式中の状態量に掛る行列であり、C12は、制御入力に掛る周波数重みの状態空間表現における、出力方程式中の状態量に掛る行列である。D122は、評価出力に掛る周波数重みの状態空間表現における、出力方程式中の制御入力に掛る行列である。また、m(x)は、周波数重みに掛けられる非線形重みの制約条件に影響する任意の正定スカラー値関数であり、非線形重みが重みとして作用しない場合には、m(x)=0とすることができる。したがって、一般化プラントGで表される制御モデルが双線形システムである場合には、リカッチ不等式を解くことにより状態フィードバックコントローラKを設計することができる。そして、設計した状態フィードバックコントローラKから制御入力uを求めることができる。
2.サスペンション装置の運動モデルの設計
2−1.サスペンション装置の運動方程式の導出
図6は、サスペンション装置1の単輪モデルを表す。図において、Mはバネ上部材HAの質量、Ksはサスペンションスプリング10のバネ定数(弾性定数)、Csはダンパ20の線形減衰係数、Cvはダンパ20の可変減衰係数、yはバネ上部材HAの上下変位量(バネ上変位量)、rはバネ下部材LAの上下変位量(バネ下変位量)である。なお、この単輪モデルにおいてはバネ下部材LAの上下変位と路面の上下変位とは等しいものと仮定している。したがって、バネ下変位量rは路面変位量でもある。
図6に示す単輪モデルで表されるサスペンション装置1の運動方程式は、下記式(eq.11)により表される。
ここで、
2−2.力学的運動モデルの設計
図7は、サスペンション装置1の力学的運動モデルを表すブロック線図である。このブロック線図は、式(eq.11)に示される運動方程式を表している。図中、符号Pで示される点は積算点であり、入力同士の時間領域における積を表す。
この運動モデルにおいて、制御入力uが可変減衰係数Cv、外乱wがバネ下速度dr/dtに設定されている。また、加算点Q1にて、外乱wであるバネ下速度dr/dtからバネ上速度dy/dtが減算されている。減算結果であるバネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtが制御入力uである可変減衰係数Cvと積算点Pにて乗算されている。乗算結果である可変減衰力Fvに、加算点Q2にて線形減衰力Fs(=Cs(dr/dt−dy/dt))が、加算点Q3にてサスペンションスプリング10による弾性力Fk(=Ks(r−y))がそれぞれ加算され、さらに質量Mの逆数が掛け合わされることにより、バネ上加速度d2y/dt2が表されている。この関係は、式(eq.11)に示される運動方程式から導かれる。また、上記のように表されたバネ上加速度d2y/dt2を時間積分することによりバネ上速度dy/dtが表されている。このバネ上速度dy/dtが上記したようにバネ下速度dr/dtから減算されることにより、バネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtが表されている。
このブロック線図において、バネ上−バネ下相対変位量r−yおよびバネ上速度dy/dtを状態量xpに設定した場合、状態空間表現は下記式(eq.12)により表される。
式(eq.12)は、下記式(eq.13)のように表すことができる。
ここで、
式(eq.13)により表される制御モデルは双線形システムである。したがって、リカッチ不等式を解くことにより制御入力uすなわち可変減衰係数Cvを求めることができる。
3.遅れ考慮モデルの設計
ところで、アクチュエータ32を作動させることによりサスペンション装置1の減衰力を制御する場合、アクチュエータ32の作動の遅れによる制御タイミングのずれが発生する。図7の運動モデルはこのアクチュエータの遅れが考慮されていない。このため、上記式(eq.12)に基づいて制御入力u(可変減衰係数Cv)を算出し、算出した制御入力uに基づいて減衰力を制御しても、アクチュエータ32の作動の遅れの分だけ制御タイミングがずれるので、適切な減衰力制御を行うことができない。したがって、この遅れによる制御タイミングのずれを考慮した制御系の設計が要求される。
図8は、サスペンション装置1の力学的運動モデルにアクチュエータ32の一次遅れを考慮して設計した制御モデルである遅れ考慮モデルを表すブロック線図である。図において、符号Rにより表されたブロック(1/(τs+1))が、アクチュエータ32の一次遅れを表す遅れ要素である。この遅れ要素Rが制御入力uに作用するように、遅れ考慮モデルが設計されている。この遅れ考慮モデルを用いた閉ループ制御系の状態フィードバックコントローラが設計できれば、その状態フィードバックコントローラから与えられた制御入力uはアクチュエータ32の遅れが考慮された制御入力ということになる。よって、遅れが考慮された制御入力uに基づいてアクチュエータ32を作動させてサスペンション装置1の減衰力を制御することにより、遅れによる制御タイミングのずれを修正することができる。
この場合、可変減衰係数Cvと制御入力uとの関係は、一次遅れを考慮して下記式(eq.14)のように表される。
式(eq.14)において、sはラプラス演算子、τは時定数である。式(eq.14)を状態空間表現に書き直すと、式(eq.15)が得られる。
バネ上−バネ下相対変位量r−y、バネ上速度dy/dtおよびxτ(=可変減衰係数Cv)が状態量に設定された場合、図8に示される遅れ考慮モデルの状態空間表現は、式(eq.12)に式(eq.15)を組み込むことにより、下記式(eq.16)のように表される。
上記式(eq.16)の右辺第1項の状態量に掛かる行列には、下線で示したように状態量に関連する成分が含まれる。よって、この式(eq.16)は、状態量の積を伴う非線形システムである。つまり、式(eq.16)は、下記式(eq.17)のように書き表される。
状態空間表現が式(eq.17)により表される遅れ考慮モデルは双線形システムではない。したがって、リカッチ不等式を適用することができない。このため閉ループ制御系のフィードバックコントローラを設計することができず、制御入力uを求めることができない。
4.遅れ近似モデルMの設計(本発明)
本実施形態においては、図9に示されるブロック線図により表される制御モデルである遅れ近似モデルMが提案される。遅れ近似モデルMは、サスペンション装置1の力学的運動モデルに、遅れ要素R及び遅れ補償要素R*を作用させた制御モデルである。遅れ補償要素R*は、遅れ要素Rによって表されるアクチュエータ32の一次遅れを打ち消すような要素として予め設定される。例えば、遅れ要素Rが一次遅れとして式(eq.18)のように表される場合、遅れ補償要素R*は、式(eq.19)のように表される。
ここで、τは時定数、sはラプラス演算子
つまり、遅れ要素Rと遅れ補償要素R*は、両者が直接掛け合わされた場合、その出力が1になる関係にある。
また、図9からわかるように、遅れ補償要素R*は、外部から入力される振動の速度であるバネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtに作用している。その出力をAとすると、出力Aと制御入力uが掛け合わされている。その積Auに遅れ要素Rが作用している。その出力が減衰力の可変分を表す可変減衰力Fvとされる。遅れ近似モデルMは上記の関係が成立するように設計されている。
図9に示される遅れ近似モデルMは双線形システムである。これは、以下のように証明される。
まず、式(eq.12)により表される単輪モデルの運動方程式の状態空間表現を、下記式(eq.20)のように書き換える。
また、図9中に示される出力Aは下記式(eq.21)のように表される。
可変減衰力Fvは、下記式(eq.22)のように表される。
式(eq.22)の状態空間表現は、式(eq.23)のように表される。
式(eq.23)の関係を式(eq.20)の状態空間表現に組み込むと、遅れ近似モデルMの状態空間表現として下記式(eq.24)が成立する。
ここで、
Ksは弾性部材(例えばバネ)の弾性係数(バネ定数)、
Mはバネ上部材の質量、Csは線形減衰係数、τは時定数である。
式(eq.24)は、下記式(eq.25)のように表すことができる。
ここで、
式(eq.25)からわかるように、遅れ近似モデルMは双線形システムとなる。
5.遅れ近似モデルMと遅れ考慮モデルとの比較
図9の遅れ近似モデルMと図8の遅れ考慮モデルとを、以下の条件A,Bの下で比較する。
条件A.バネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtが一定(=α)の場合
条件B.制御入力uが一定(=β)の場合
A.バネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtが一定(=α)の場合
この場合、dr/dt−dy/dt=vとすると、v=αである。したがって、図8に示される遅れ考慮モデルにおいて、可変減衰力Fvは下記式(eq.26)のように表される。
式(eq.26)からわかるように、可変減衰力Fvは一次遅れ(1/(τs+1))の影響を受けている。したがって、バネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtが一定(=α)である場合、可変減衰力Fvの応答は制御入力uに対して遅れる。
一方、図9に示される本実施形態の遅れ近似モデルMにおいて、相対速度vのラプラス変換L(v)をステップ応答(=α/s)で表すことによって、出力Aのラプラス変換L(A)について、下記式(eq.27)が成立する。
相対速度vは定常的に一定(=α)であるから、最終値定理により下記式(eq.28)が成立する。
よって、バネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtが一定(=α)であれば、A=αが成り立つ。
A=αであるので、図9に示される遅れ近似モデルMにおいて、可変減衰力Fvは下記式(eq.29)のように表される。
式(eq.29)からわかるように可変減衰力Fvは一次遅れ(1/(τs+1))の影響を受けている。したがって、バネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtが一定である場合、可変減衰力Fvの応答は制御入力uに対して遅れる。
B.制御入力uが一定(=β)の場合
制御入力uが一定(=β)、すなわちu=βである場合、図8の遅れ考慮モデルにおいて、uのラプラス変換L(u)をステップ応答(=β/s)で表すと、可変減衰係数Cvのラプラス変換L(Cv)について、下記式(eq.30)が成立する。
uは定常的に一定であるから、最終値定理により下記式(eq.31)が成立する。
上記式(eq.31)よりCv=βとなる。したがって、図8の遅れ考慮モデルにおいて、可変減衰力Fvは下記式(eq.32)のように表される。
式(eq.32)からわかるように、可変減衰力Fvは一次遅れの影響を受けていない。つまり、制御入力uが一定(=β)である場合は、可変減衰力Fvの応答はバネ上−バネ下相対速度vに対して遅れない。
また、図9の遅れ近似モデルMにおいて、可変減衰力Fvは下記式(eq.33)のように表される。
また、出力Aは、下記式(eq.34)のように表される。
式(eq.33)および式(eq.34)から、図9の遅れ近似モデルMにおいて、可変減衰力Fvは下記式(eq.35)のように表される。
式(eq.35)からわかるように、可変減衰力Fvは一次遅れの影響を受けていない。つまり、制御入力uが一定(=β)である場合は、可変減衰力Fvの応答はバネ上−バネ下相対速度vに対して遅れない。
バネ上−バネ下相対速度vが一定(=α)である場合、および、制御入力uが一定(=β)である場合について、図9の遅れ近似モデルMにおける可変減衰力Fvと、図8の遅れ考慮モデルにおける可変減衰力Fvとを比較すると、その比較結果は、上記考察から下記表のようになる。
上記表からわかるように、バネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtが一定である場合、および、制御入力uが一定である場合は、遅れ近似モデルにおける可変減衰力Fvと遅れ考慮モデルにおける可変減衰力Fvは等しくなる。つまり、これらの条件下では遅れ近似モデルは遅れ考慮モデルと等価な制御モデルである。
このことは、バネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtの時間変化量Δvが微小である場合、および、制御入力uの時間変化量Δuが微小である場合には、遅れ近似モデルにおける可変減衰力Fvと遅れ考慮モデルにおける可変減衰力Fvは非常に近い値になることを意味する。したがって、バネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtの時間変化量Δvが微小である場合、および、制御入力uの時間変化量Δuが微小である場合は、遅れ近似モデルMは遅れ考慮モデルと等価とみなすことができる制御モデルとなる。すなわち、バネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtの時間変化量Δvおよび、制御入力uの時間変化量Δuが微小範囲内である場合は、遅れ近似モデルMは遅れ考慮モデルに近似する。
この場合、ΔvおよびΔuの範囲は、扱う制御モデルや遅れの大きさなどにより変化するため、一概に決定することができない。例えばΔvは、その絶対値の上限が0.05〜0.5m/sであるときに、遅れ近似モデルMが遅れ考慮モデルに近似する場合がある。また、例えばΔuは、その絶対値の上限が100〜400N・S/mであるときに、遅れ近似モデルMが遅れ考慮モデルに近似する場合がある。一例として、Δvおよび/またはΔuは、下記式(eq.36)および(eq.37)に示される範囲とすることができる。
以上の考察から、バネ上−バネ下相対速度の変化量および制御入力の変化量が、遅れ近似モデルMが遅れ考慮モデルに近似するとみなされる範囲内であるような運動モデルを扱う場合には、遅れ考慮モデルを遅れ近似モデルMに置き換えることができる。遅れ近似モデルMは双線形システムであるので、リカッチ不等式の解を求めることにより、閉ループ制御系の状態フィードバックコントローラKを設計することができる。また、遅れ近似モデルMはアクチュエータ32の作動の遅れを考慮した制御モデルであるので、設計した状態フィードバックコントローラKにより算出される制御入力uもアクチュエータ32の一次遅れを考慮した制御入力となる。よって、求めた制御入力uに基づいてアクチュエータ32を作動させることにより、遅れによる制御タイミングのずれが修正された減衰力制御を行うことができる。
6.一般化プラントGの設計
図9の遅れ近似モデルMにおいて、バネ上−バネ下相対変位量r−y、バネ上速度dy/dt、制御入力uが評価出力zpに設定される。また、上述の式(eq.25)に示したように、状態量xpは、バネ上−バネ下相対変位量r−y,バネ上速度dy/dtおよびxτである。すると、この遅れ近似モデルMの状態空間表現は、下記式(eq.38)のように表される。
ここで、
図10は、式(eq.38)によって表される図9の遅れ近似モデルMを用いて設計した一般化プラントGおよび、この一般化プラントGの状態フィードバックコントローラK(K(x))からなる閉ループ制御系Sを表すブロック線図である。また、図11は、遅れ要素Rおよび遅れ補償要素R*の作用箇所を明確に表した閉ループ制御系Sのブロック線図である。図10において、一点鎖線で囲まれた領域Tにより表される部分が、図9に示す遅れ近似モデルMに対応する。図からわかるように、評価出力zpに、周波数により変動する重みである周波数重みWsが作用している。周波数重みWsの状態空間表現は、状態xw、出力zwおよび各定数行列Aw,Bw,Cw,Dwにより、下記式(eq.39)のように表される。
ここで、
式(eq.39)は、下記式(eq.40)のように変形できる。
また、制御入力uにも、周波数により変動する周波数重みWuが作用している。周波数重みWuの状態空間表現は、状態量xu、出力zuおよび各定数行列Au,Bu,Cu,Duにより、下記式(eq.41)により表される。
ここで、
一般化プラントGの状態空間表現は、式(eq.38)〜式(eq.41)を用いることによって下記式(eq.42)のように表される。
ここで、
7.制御入力uの算出
一般化プラントGの状態空間表現が上記式(eq.42)のように表されている場合、一般化プラントGは双線形システムとなる。したがって、予め設定される正定数γに対して下記式(eq.43)に示すリカッチ不等式を満たす正定対称行列Pが存在する場合、図10の閉ループ制御系Sが内部安定となり、且つ、外乱に対するロバスト性を表すL2ゲインをγ未満にすることができる。
このとき制御入力uを表す状態フィードバックコントローラK(=K(x))の一つは下記式(eq.44)に示すように表される。
式(eq.44)は、式(eq.45)により表される条件により、式(eq.46)のように記述される。
制御入力uは、上記式(eq.46)のように設計された状態フィードバックコントローラK、すなわち閉ループ制御系SのL2ゲインが正定数γ未満となるように設計される状態フィードバックコントローラKにより算出される。算出された制御入力uが可変減衰係数Cvを表す。
遅れ近似モデルMを用いて設計した一般化プラントGの状態フィードバックコントローラKから算出される制御入力uにより表される可変減衰係数Cvは、アクチュエータ32の一次遅れが考慮された減衰係数、すなわちアクチュエータの一次遅れによる制御タイミングのずれが無くなるように修正された減衰係数である。マイクロコンピュータ60は、このように算出された可変減衰係数Cvを用いて要求減衰力Freqおよび要求段数Dreqを計算し、ダンパ20の減衰力特性を表す段数が計算した要求段数Dreqとなるように可変絞り機構30を制御する。これにより、アクチュエータ32の作動の遅れによる制御タイミングのずれが修正されるとともに、バネ上部材HAの振動を抑制するように、サスペンション装置1の減衰力が制御される。つまり、本実施形態の減衰力制御装置によれば、アクチュエータ32の遅れによる制御タイミングのずれなどの悪影響が除外された減衰力制御を行うことができるのである。
以上説明したように、本実施形態の制御モデルである図9の遅れ近似モデルMは、サスペンション装置1の力学的運動モデルにアクチュエータ32の一次遅れを表す遅れ要素Rおよび遅れを打ち消す遅れ補償要素R*が作用するように設計されている。さらに、遅れ近似モデルMは、外部から入力される振動の速度であるバネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtに前記遅れ補償要素R*が作用し、その出力Aに制御入力u(可変減衰係数Cv)が乗じられ、その積Auに前記遅れ要素Rが作用するように設計されている。
このように設計された遅れ近似モデルMは双線形システムであるので、リカッチ不等式を解くことにより、遅れ近似モデルMを用いて設計された一般化プラントGおよびこの一般化プラントGの状態フィードバックコントローラKを有する図10に示す閉ループ制御系SについてのL2ゲインが予め設定された正定数γ未満となるように状態フィードバックコントローラKを設計することができる。また、遅れ近似モデルMは、図8の遅れ考慮モデルに近似する。したがって、設計された状態フィードバックコントローラKにより算出される制御入力uである可変減衰係数Cvは、アクチュエータ32の一次遅れによる制御タイミングのずれが無くなるように遅れが考慮された減衰係数となる。よって、この可変減衰係数Cvに基づいて決定される要求段数Dreqにしたがってダンパ20の減衰力特性が制御されることにより、アクチュエータ32の一次遅れによる制御タイミングのずれなどの悪影響が除外された最適な減衰力制御が行われる。
また、減衰力制御装置であるマイクロコンピュータ60は、車両のサスペンション装置1の減衰力を制御する。よって、アクチュエータ32の遅れによる制御タイミングのずれによる悪影響が除外された最適な乗り心地制御が行われる。また、このサスペンション装置1について設計した遅れ近似モデルMの状態空間表現が上記式(eq.24)のように表されることにより、制御モデルを双線形システムにすることができる。
上記説明した実施形態から、以下に示す発明も把握することができる。
(1)アクチュエータを作動させることによって、外部から入力される振動に対して減衰力発生装置により発生される減衰力を制御する際に用いられる制御モデルであり、前記減衰力発生装置の力学的運動モデルに前記アクチュエータの作動の遅れを表す遅れ要素Rおよび前記遅れを打ち消す遅れ補償要素R*を作用させ、双線形システムであり、且つ前記減衰力発生装置の力学的運動モデルに前記遅れを考慮した制御モデルである遅れ考慮モデルに近似するように設計された遅れ近似モデルM。
(2)アクチュエータを作動させることによって、外部から入力される振動に対して減衰力発生装置により発生される減衰力を制御する減衰力制御装置であり、前記減衰力発生装置の力学的運動モデルに前記アクチュエータの作動の遅れを表す遅れ要素Rおよび前記遅れを打ち消す遅れ補償要素R*を作用させた制御モデルであって、双線形システムであり且つ前記減衰力発生装置の力学的運動モデルに前記遅れを考慮した制御モデルに近似するように設計された制御モデルである遅れ近似モデルMを用いて設計された一般化プラントGおよび状態フィードバックコントローラKを含む閉ループ制御系Sに、非線形H∞制御理論を適用することにより制御入力uを算出する制御入力算出手段と、前記制御入力算出手段により算出された制御入力uに基づいて前記アクチュエータの作動を制御する作動制御手段と、を備える減衰力制御装置。
(3)アクチュエータを作動させることにより、ある与えられた制御対象の振動を制御する振動制御装置であり、前記制御対象の力学的運動モデル(振動モデル)に前記アクチュエータの作動の遅れを表す遅れ要素Rおよび前記遅れを打ち消す遅れ補償要素R*を作用させた制御モデルであって、双線形システムであり且つ前記力学的運動モデルに前記遅れを考慮した制御モデルに近似するように設計された制御モデルである遅れ近似モデルMを用いて設計された一般化プラントGおよび状態フィードバックコントローラKを含む閉ループ制御系Sに、非線形H∞制御理論を適用することにより制御入力uを算出する制御入力算出手段と、前記制御入力算出手段により算出された制御入力uに基づいて前記アクチュエータの作動を制御する作動制御手段と、を備える振動制御装置。
(4)上記(1)〜(3)において、遅れ近似モデルMは、外部から入力される振動の速度dr/dt−dy/dtに前記遅れ補償要素R*が作用し、その出力が前記制御入力uと積算され、その積算結果に前記遅れ要素Rが作用するように設計されていることを特徴とする。
(5)アクチュエータを作動させることによって、外部から入力される振動に対して減衰力発生装置により発生される減衰力を制御するための制御系の設計方法であり、前記減衰力発生装置の力学的運動モデルに前記アクチュエータの作動の遅れを表す遅れ要素Rおよび前記遅れを打ち消す遅れ補償要素R*を作用させ、双線形システムであり且つ前記減衰力発生装置の力学的運動モデルに前記遅れが考慮された制御モデルである遅れ考慮モデルに近似した制御モデルである遅れ近似モデルMを用いて一般化プラントGを設計するステップと、一般化プラントGの状態フィードバックコントローラKを含む閉ループ制御系Sを設計するステップと、閉ループ制御系SのL2ゲインが予め設定された正定数γ未満となるように、前記状態フィードバックコントローラKを設計するステップとを含む、制御系の設計方法。
本発明は、上記実施形態に限定されるべきものではない。上記実施形態においては、車両のサスペンション装置に適用する減衰力制御装置の例について説明したが、アクチュエータの遅れを伴う減衰力発生装置であれば、その他の装置にも本発明の減衰力制御装置が適用できる。また、上記実施形態においては、アクチュエータの一次遅れが発生する場合における減衰力制御について説明したが、本発明は、一次遅れとして表される遅れ以外の遅れにも適用できる。例えば遅れ要素Rが2次遅れとして表される場合には、その2次遅れを打ち消すように遅れ補償要素R*を設定するとよい。また、何らかの処理の都合によりアクチュエータの作動の開始時期が遅れるような場合についても、その遅れを打ち消すように遅れ補償要素R*を設定すればよい。
また、上記実施形態においては、遅れ近似モデルMが遅れ考慮モデルに近似するような、バネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtの時間変化量Δvおよび制御入力uの時間変化量Δuの数値範囲についても言及している。しかし、上述のようにこれらの変化量の範囲は、アクチュエータの遅れの大きさや扱うモデルにより適用可能範囲が変化するので、一概に決定できるものではない。また本発明はこれらの数値に限定されるものではない。
また、制御対象のバネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtおよび/または制御入力uが、遅れ近似モデルMが遅れ考慮モデルに近似する範囲でのみ変化する場合には、その制御対象に対して恒常的に本発明の遅れ近似モデルMを制御モデルとして適用することができる。そうでない制御対象に対しては、遅れ近似モデルMが遅れ考慮モデルに近似する範囲で、遅れ近似モデルMを制御モデルとして適用することができる。
このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。
[サスペンション制御装置の構造]
図1は、本実施形態の車両のサスペンション制御装置の全体概略図である。このサスペンション制御装置は、サスペンション装置1と電気制御装置5を備えている。
サスペンション装置1は本発明の減衰力発生装置に相当するものであり、サスペンションスプリング10とダンパ20を備えている。サスペンションスプリング10およびダンパ20は、車両のバネ上部材HAとバネ下部材LAとの間に介装されており、一端(下端)がバネ下部材LAに接続され、他端(上端)がバネ上部材HAに接続されている。サスペンションスプリング10は本発明の弾性部材に相当し、バネ下部材LAおよびバネ上部材HAの振動を吸収(緩衝)する。ダンパ20はサスペンションスプリング10と並行に配置されており、バネ下部材LAに対するバネ上部材HAの振動を減衰する。なお、車輪に連結されたナックルや、一端がナックルに連結されたロアアーム等がバネ下部材LAに相当する。バネ上部材HAは、サスペンションスプリング10およびダンパ20に支持される部材であり、車体もバネ上部材HAに含まれる。
ダンパ20は、シリンダ21と、ピストン22と、ピストンロッド23を備える。シリンダ21は内部にオイルなどの粘性流体が封入された中空の部材であり、その下端がバネ下部材LAであるロアアームに連結されている。ピストン22はシリンダ21内に配設され、シリンダ21の内部を軸方向に移動可能に構成されている。ピストンロッド23は棒状の部材であって、その一端がピストン22に接続され、その接続端からシリンダ21の軸方向上方に延設されてシリンダ21の上端から外部に突き出ている。そして、他端がバネ上部材HAである車体に連結している。
図に示されるように、シリンダ21の内部に配設されたピストン22によって、シリンダ21内に上部室21aと下部室21bが区画形成されている。また、ピストン22には連通路22cが形成されている。この連通路22cは、上部室21aに面している上面22aと下部室21bに面している下面22bとに開口し、上部室21aと下部室21bとを連通している。
上記構造のダンパ20において、車両が路面凹凸などを乗り越えることにより発生するバネ下部材LAの振動がサスペンションスプリング10およびダンパ20を介してバネ上部材HAに伝達されることにより、バネ上部材HAがバネ下部材LAに対して上下に振動した場合に、ピストンロッド23を介してバネ上部材HAに連結したピストン22がバネ下部材LAに連結したシリンダ21内を軸方向に相対変位する。この相対変位に伴い連通路22c内を粘性流体が流通する。この流通時に発生する粘性抵抗が上下振動に対する減衰力となって、バネ下部材LA(シリンダ21側)に対するバネ上部材HA(ピストン22側)の振動が減衰する。なお、減衰力の大きさは、シリンダ21に対するピストン22の振動速度(この速度は後述するバネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtである)が大きくなる程大きくなる。
また、サスペンション装置1には、可変絞り機構30が取付けられている。可変絞り機構30は、バルブ31およびアクチュエータ32を有する。バルブ31はピストン22に形成された連通路22cに設けられている。バルブ31は、作動することによって、連通路22cの少なくとも一部の流路断面積の大きさや連通路22cの接続本数を変化させる。すなわち連通路22cの開度OPを変化させる。バルブ31は、例えば連通路22c内に組み込まれたロータリーバルブにより構成することができる。ロータリーバルブの回転角を変化させて連通路22cの接続本数や流路断面積を変更させることにより、開度OPを変化させることができる。アクチュエータ32はバルブ31に接続されている。このアクチュエータ32の作動に連動してバルブ31も作動する。アクチュエータ32は、例えばバルブ31が上記のようにロータリーバルブである場合に、このロータリーバルブを回転させるためのモータにより構成することができる。
アクチュエータ32の作動に連動したバルブ31の作動によって開度OPが変更された場合、連通路22c内を粘性流体が流通するときの抵抗の大きさも変更される。この抵抗力は上述したように振動に対する減衰力である。したがって、開度OPが変更されれば、ダンパ20の減衰力特性も変更される。なお、減衰力特性は、シリンダ21に対するピストン22の速度(すなわち後述するバネ上−バネ下相対速度)に対する減衰力の大きさの変化特性であり、減衰力が速度に比例する場合はこの減衰力特性は減衰係数により表される。
また、本実施形態においては、開度OPは段階的に設定される。このため開度OPの変更に伴いダンパ20の減衰力特性も段階的に変化していく。減衰力特性は、設定される開度OPの設定段数により表される。すなわち各減衰力特性は、開度OPの設定段数に習って、1段、2段、・・・、というように段数表示される。この場合、例えば段数を表す数字が大きくなるほど、ピストン22の速度(バネ上−バネ下相対速度)に対する減衰力が大きくなるように、減衰力特性を表す各段数を設定することができる。減衰力特性を表す設定段数は、上述のように可変絞り機構30の作動により変更される。すなわち可変絞り機構30は、減衰力特性を変更する減衰力特性変更手段である。
次に、電気制御装置5について説明する。電気制御装置5は、バネ上加速度センサ51と、バネ下加速度センサ52と、ストロークセンサ53と、マイクロコンピュータ60を備える。バネ上加速度センサ51は車体に組み付けられていて、絶対空間に対するバネ上部材HAの上下方向の加速度であるバネ上加速度d2y/dt2を検出し、検出したバネ上加速度d2y/dt2に応じた信号を出力する。バネ下加速度センサ52はバネ下部材LAに固定され、絶対空間に対するバネ下部材LAの上下方向の加速度であるバネ下加速度d2r/dt2を検出し、検出したバネ下加速度d2r/dt2に応じた信号を出力する。ストロークセンサ53は、バネ上部材HAとバネ下部材LAとの間に配設されており、バネ上部材HAの基準位置からの上下方向の変位量であるバネ上変位量yとバネ下部材LAの基準位置からの上下方向の変位量であるバネ下変位量rとの差であるバネ上−バネ下相対変位量r−yを検出し、検出したバネ上−バネ下相対変位量r−yに応じた信号を出力する。なお、本実施形態においては、バネ下部材LAの上下変位は路面の上下変位に等しいものとしている。よって、バネ下変位量rは路面変位量でもある。
なお、バネ上加速度センサ51およびバネ下加速度センサ52は、上方向に向かう加速度を正の加速度として検出し、下方向に向かう加速度を負の加速度として検出する。また、ストロークセンサ53は、正のバネ上変位量がバネ上部材HAの基準位置から上方向への変位量、負のバネ上変位量がバネ上部材HAの基準位置から下方向への変位量であり、正のバネ下変位量がバネ下部材LAの基準位置から上方向への変位量、負のバネ下変位量がバネ下部材LAの基準位置から下方向への変位量である場合における、相対変位量を検出する。
マイクロコンピュータ60は、バネ上加速度センサ51、バネ下加速度センサ52、ストロークセンサ53に電気的に接続されており、各センサから出力された信号に基づいて、減衰力特性の制御目標段数を表す要求段数Dreqを決定する。そして、決定した要求段数Dreqに応じた指令信号をアクチュエータ32に出力する。アクチュエータ32は上記指令信号に基づいて作動する。これによりバルブ31も作動する。このようにマイクロコンピュータ60が可変絞り機構30を制御してダンパ20の減衰力特性を可変制御することにより、サスペンション装置1の減衰力が制御される。すなわち、マイクロコンピュータ60が、本発明の減衰力制御装置に相当する。
また、マイクロコンピュータ60は、図1からわかるように非線形H∞制御部61、要求減衰力決定部62および要求段数決定部63を備える。非線形H∞制御部61は、各センサ51,52,53から信号を入力し、非線形H∞制御理論に基づいて、制御すべき可変分の減衰係数である可変減衰係数Cvを計算する。そして、計算した可変減衰係数Cvを出力する。要求減衰力決定部62は、可変減衰係数Cvを入力するとともに、入力した可変減衰係数Cvと予め設定されている線形減衰係数Csとの和により求められる要求減衰係数Creqに基づいて、制御に必要な減衰力である要求減衰力Freqを計算する。そして、計算した要求減衰力Freqを出力する。要求段数決定部63は要求減衰力Freqを入力し、入力した要求減衰力Freqに基づいて、減衰力特性の制御目標段数である要求段数Dreqを決定する。そして、決定した要求段数Dreqに対応する信号を指示信号としてアクチュエータ32に出力する。
[サスペンション装置の減衰力制御]
上記のように構成された本実施形態のサスペンション制御装置において、車両のイグニッションキーが操作されることによりイグニッションがON状態になると、マイクロコンピュータ60は、非線形H∞制御部61にて可変減衰係数計算処理を、要求減衰力決定部62にて要求減衰力決定処理を、要求段数決定部63にて要求段数決定処理を、それぞれ所定の短時間ごとに繰り返し実行する。
図2は、マイクロコンピュータ60が非線形H∞制御部61にて実行する可変減衰係数計算処理の流れを示すフローチャートである。マイクロコンピュータ60は、図2のステップ100(以下、ステップ番号をSと略記する)にてこの処理を開始し、次のS102にてバネ上加速度センサ51からバネ上加速度d2y/dt2を、バネ下加速度センサ52からバネ下加速度d2r/dt2を、ストロークセンサ53からバネ上−バネ下相対変位量r−yを入力する。次に、S104にて、入力したバネ上加速度d2y/dt2およびバネ下加速度d2r/dt2をそれぞれ時間積分してバネ上部材HAの上下方向の速度であるバネ上速度dy/dtおよびバネ下部材LAの上下方向の速度であるバネ下速度dr/dtを計算し、さらに入力したバネ上−バネ下相対変位量r−yを時間微分して、バネ上速度dy/dtとバネ下速度dr/dtとの差であるバネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtを計算する。ここで、バネ上速度dy/dtおよびバネ下速度dr/dtは、上方向に向かう速度であるときに正の速度として計算され、下方向に向かう速度であるときに負の速度として計算される。また、相対速度dr/dt−dy/dtは、バネ上部材HAとバネ下部材LAとの間隔を狭める方向に向かう速度、つまりダンパ20が圧縮する側に向かう速度であるときに正の速度として計算され、上記間隔を広げる方向に向かう速度、つまりダンパ20が伸びる側に向かう速度であるときに負の速度として計算される。なお、バネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtは、外部からサスペンション装置1に入力される振動の速度を表し、この速度は上述したピストン22のシリンダ21に対する速度に等しい。
次いで、マイクロコンピュータ60は、S106にて、非線形H∞制御理論に基づいて可変減衰係数Cvを算出する。可変減衰係数Cvは、減衰力が制御されることによって変動する可変分の減衰係数を表す。この場合、詳細は後述するが、可変減衰係数Cvは、一般化プラントGおよび状態フィードバックコントローラKからなる閉ループ制御系SのL2ゲインが正定数γ未満となるように設計された状態フィードバックコントローラKにより、制御入力uとして算出される。すなわち、このS106の処理を有する非線形H∞制御部61が、本発明の制御入力算出手段に相当する。マイクロコンピュータ60はS106にて可変減衰係数Cvを算出した後は、S108にて可変減衰係数Cvを出力する。その後、S110に進んでこの処理を終了する。
図3は、マイクロコンピュータ60が要求減衰力決定部62にて実行する要求減衰力決定処理の流れを示すフローチャートである。マイクロコンピュータ60は図3のS200にてこの処理を開始し、次のS202にて、可変減衰係数Cvを入力する。次いで、S204にて要求減衰係数Creqを計算する。要求減衰係数Creqは、可変減衰係数Cvに、予め設定されている線形減衰係数Csを加算することにより求められる。この線形減衰係数Csは、減衰力が制御されることによっては変動しない固定分(線形分)の減衰係数を表す。続いてマイクロコンピュータ60は、S206にて要求減衰力Freqを計算する。要求減衰力Freqは、計算した要求減衰係数Creqにバネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtを乗ずることにより求められる。次いで、マイクロコンピュータ60は、S208にて求めた要求減衰力Freqを出力し、その後S210に進んでこの処理を終了する。
図4は、マイクロコンピュータ60が要求段数決定部63にて実行する要求段数決定処理の流れを示すフローチャートである。マイクロコンピュータ60は図4のS300にてこの処理を開始し、次のS302にて要求減衰力Freqを入力する。次いで、S304にて要求段数Dreqを決定する。なお、マイクロコンピュータ60は、複数のバネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtに対して減衰力特性の設定段数ごとにダンパ20が発生し得る減衰力の大きさを記憶した減衰力特性テーブルを有している。そして、S304において、減衰力特性テーブルを参照して要求段数Dreqを決定する。具体的には、マイクロコンピュータ60は、S304にて、減衰力特性テーブルに記憶されている減衰力の中から、入力されている相対速度dr/dt−dy/dtに対応する減衰力を段数ごとに選択する。そして、選択した減衰力のうち、S302にて入力した要求減衰力Freqに最も近い減衰力についての段数を、要求段数Dreqとして決定する。
S304にて要求段数Dreqを決定した後は、マイクロコンピュータ60はS306に進み、要求段数Dreqに応じた指令信号をアクチュエータ32に出力する。指令信号を受けたアクチュエータ32は、その指令信号に基づいて作動する。これによりバルブ31が作動し、ダンパ20の減衰力特性の設定段数が要求段数Dreqとなるように、可変絞り機構30が制御される。その後S308に進んでこの処理を終了する。
以上のようにして可変絞り機構30を制御することにより、ダンパ20の減衰力特性が可変制御される。これによりサスペンション装置1の減衰力が制御される。なお、要求減衰力決定部62および要求段数決定部63が、制御入力uとして算出された可変減衰係数Cvに基づいてアクチュエータ32の作動を制御する作動制御手段に相当する。
[可変減衰係数Cvの制御理論]
可変減衰係数Cvは、可変減衰係数計算処理のS106にて算出される。可変減衰係数Cvは、制御により変動する可変分の減衰係数を表す。つまり、可変減衰係数Cvは、バネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtに対する可変分の減衰力(可変減衰力Fv)の大きさの変化勾配を表し、この可変減衰係数Cvとバネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtとの積が可変減衰力Fvに相当する。車両の乗り心地の善し悪しは、車両の走行状況に応じていかにして理想的な可変減衰係数Cvを算出し、それに基づいて減衰力を制御するかにより決定付けられる。本実施形態においては、可変減衰係数Cvは、非線形H∞制御理論に基づいて算出される。非線形H∞制御理論を用いた可変減衰係数Cvの算出手法について、以下に説明する。
1.非線形H∞制御理論
まず、非線形H∞制御理論について説明する。
1−1.状態空間表現
図5は、一般化プラントGの状態量xを状態フィードバックコントローラKによりフィードバックした閉ループ制御系Sのブロック線図である。この閉ループ制御系Sにおいて、外乱はw、評価出力はz、制御入力はu、状態量はxにより表されている。一般化プラントGの状態空間表現は、外乱w、評価出力z、制御入力uおよび状態量xを用いて下記式(eq.4)のように表すことができる。
特に特殊なケースとして、状態空間表現が下記式(eq.5)に示す形式により表される場合、その一般化プラントGにより表される制御システムは双線形システムであるという。
1−2.非線形H∞状態フィードバック制御問題
非線形H∞状態フィードバック制御問題、すなわち非線形H∞状態フィードバック制御における制御目的は、閉ループ制御系Sの外乱wが評価出力zにだけできるだけ現れないような状態フィードバックコントローラKを設計することである。この問題は、閉ループ制御系SのL2ゲイン(‖S‖L2)がある与えられた正定数γ未満となるように、すなわち下記式(eq.6)を満たすように、状態フィードバックコントローラK(=u=K(x))を設計することと等しい。
1−3.非線形H∞状態フィードバック制御問題の解
非線形H∞状態フィードバック制御問題が可解であるための必要十分条件は、式(eq.7)に示すハミルトンヤコビ偏微分不等式を満たす正定関数V(x)および正定数εが存在することである。
このとき状態フィードバックコントローラK(=u=K(x))の一つは下記式(eq.8)により与えられる。
ハミルトンヤコビ偏微分不等式を解析的に解くことはほぼ不可能といわれている。したがって、制御入力uを解析的に導くことはできない。しかし、制御モデルが双線形システムである場合には、下記式(eq.9)に示すリカッチ不等式を満たす正定対称行列Pが存在することが、非線形H∞状態フィードバック制御問題が可解であることの必要十分条件であることが知られている。このリカッチ不等式は、解析的に解くことができる。
このとき状態フィードバックコントローラK(=u=K(x))の一つは下記式(eq.10)により与えられる。
式(eq.9)および式(eq.10)において、C11は、評価出力に掛る周波数重みの状態空間表現における、出力方程式中の状態量に掛る行列であり、C12は、制御入力に掛る周波数重みの状態空間表現における、出力方程式中の状態量に掛る行列である。D122は、評価出力に掛る周波数重みの状態空間表現における、出力方程式中の制御入力に掛る行列である。また、m(x)は、周波数重みに掛けられる非線形重みの制約条件に影響する任意の正定スカラー値関数であり、非線形重みが重みとして作用しない場合には、m(x)=0とすることができる。したがって、一般化プラントGで表される制御モデルが双線形システムである場合には、リカッチ不等式を解くことにより状態フィードバックコントローラKを設計することができる。そして、設計した状態フィードバックコントローラKから制御入力uを求めることができる。
2.サスペンション装置の運動モデルの設計
2−1.サスペンション装置の運動方程式の導出
図6は、サスペンション装置1の単輪モデルを表す。図において、Mはバネ上部材HAの質量、Ksはサスペンションスプリング10のバネ定数(弾性定数)、Csはダンパ20の線形減衰係数、Cvはダンパ20の可変減衰係数、yはバネ上部材HAの上下変位量(バネ上変位量)、rはバネ下部材LAの上下変位量(バネ下変位量)である。なお、この単輪モデルにおいてはバネ下部材LAの上下変位と路面の上下変位とは等しいものと仮定している。したがって、バネ下変位量rは路面変位量でもある。
図6に示す単輪モデルで表されるサスペンション装置1の運動方程式は、下記式(eq.11)により表される。
ここで、
2−2.力学的運動モデルの設計
図7は、サスペンション装置1の力学的運動モデルを表すブロック線図である。このブロック線図は、式(eq.11)に示される運動方程式を表している。図中、符号Pで示される点は積算点であり、入力同士の時間領域における積を表す。
この運動モデルにおいて、制御入力uが可変減衰係数Cv、外乱wがバネ下速度dr/dtに設定されている。また、加算点Q1にて、外乱wであるバネ下速度dr/dtからバネ上速度dy/dtが減算されている。減算結果であるバネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtが制御入力uである可変減衰係数Cvと積算点Pにて乗算されている。乗算結果である可変減衰力Fvに、加算点Q2にて線形減衰力Fs(=Cs(dr/dt−dy/dt))が、加算点Q3にてサスペンションスプリング10による弾性力Fk(=Ks(r−y))がそれぞれ加算され、さらに質量Mの逆数が掛け合わされることにより、バネ上加速度d2y/dt2が表されている。この関係は、式(eq.11)に示される運動方程式から導かれる。また、上記のように表されたバネ上加速度d2y/dt2を時間積分することによりバネ上速度dy/dtが表されている。このバネ上速度dy/dtが上記したようにバネ下速度dr/dtから減算されることにより、バネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtが表されている。
このブロック線図において、バネ上−バネ下相対変位量r−yおよびバネ上速度dy/dtを状態量xpに設定した場合、状態空間表現は下記式(eq.12)により表される。
式(eq.12)は、下記式(eq.13)のように表すことができる。
ここで、
式(eq.13)により表される制御モデルは双線形システムである。したがって、リカッチ不等式を解くことにより制御入力uすなわち可変減衰係数Cvを求めることができる。
3.遅れ考慮モデルの設計
ところで、アクチュエータ32を作動させることによりサスペンション装置1の減衰力を制御する場合、アクチュエータ32の作動の遅れによる制御タイミングのずれが発生する。図7の運動モデルはこのアクチュエータの遅れが考慮されていない。このため、上記式(eq.12)に基づいて制御入力u(可変減衰係数Cv)を算出し、算出した制御入力uに基づいて減衰力を制御しても、アクチュエータ32の作動の遅れの分だけ制御タイミングがずれるので、適切な減衰力制御を行うことができない。したがって、この遅れによる制御タイミングのずれを考慮した制御系の設計が要求される。
図8は、サスペンション装置1の力学的運動モデルにアクチュエータ32の一次遅れを考慮して設計した制御モデルである遅れ考慮モデルを表すブロック線図である。図において、符号Rにより表されたブロック(1/(τs+1))が、アクチュエータ32の一次遅れを表す遅れ要素である。この遅れ要素Rが制御入力uに作用するように、遅れ考慮モデルが設計されている。この遅れ考慮モデルを用いた閉ループ制御系の状態フィードバックコントローラが設計できれば、その状態フィードバックコントローラから与えられた制御入力uはアクチュエータ32の遅れが考慮された制御入力ということになる。よって、遅れが考慮された制御入力uに基づいてアクチュエータ32を作動させてサスペンション装置1の減衰力を制御することにより、遅れによる制御タイミングのずれを修正することができる。
この場合、可変減衰係数Cvと制御入力uとの関係は、一次遅れを考慮して下記式(eq.14)のように表される。
式(eq.14)において、sはラプラス演算子、τは時定数である。式(eq.14)を状態空間表現に書き直すと、式(eq.15)が得られる。
バネ上−バネ下相対変位量r−y、バネ上速度dy/dtおよびxτ(=可変減衰係数Cv)が状態量に設定された場合、図8に示される遅れ考慮モデルの状態空間表現は、式(eq.12)に式(eq.15)を組み込むことにより、下記式(eq.16)のように表される。
上記式(eq.16)の右辺第1項の状態量に掛かる行列には、下線で示したように状態量に関連する成分が含まれる。よって、この式(eq.16)は、状態量の積を伴う非線形システムである。つまり、式(eq.16)は、下記式(eq.17)のように書き表される。
状態空間表現が式(eq.17)により表される遅れ考慮モデルは双線形システムではない。したがって、リカッチ不等式を適用することができない。このため閉ループ制御系のフィードバックコントローラを設計することができず、制御入力uを求めることができない。
4.遅れ近似モデルMの設計(本発明)
本実施形態においては、図9に示されるブロック線図により表される制御モデルである遅れ近似モデルMが提案される。遅れ近似モデルMは、サスペンション装置1の力学的運動モデルに、遅れ要素R及び遅れ補償要素R*を作用させた制御モデルである。遅れ補償要素R*は、遅れ要素Rによって表されるアクチュエータ32の一次遅れを打ち消すような要素として予め設定される。例えば、遅れ要素Rが一次遅れとして式(eq.18)のように表される場合、遅れ補償要素R*は、式(eq.19)のように表される。
ここで、τは時定数、sはラプラス演算子
つまり、遅れ要素Rと遅れ補償要素R*は、両者が直接掛け合わされた場合、その出力が1になる関係にある。
また、図9からわかるように、遅れ補償要素R*は、外部から入力される振動の速度であるバネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtに作用している。その出力をAとすると、出力Aと制御入力uが掛け合わされている。その積Auに遅れ要素Rが作用している。その出力が減衰力の可変分を表す可変減衰力Fvとされる。遅れ近似モデルMは上記の関係が成立するように設計されている。
図9に示される遅れ近似モデルMは双線形システムである。これは、以下のように証明される。
まず、式(eq.12)により表される単輪モデルの運動方程式の状態空間表現を、下記式(eq.20)のように書き換える。
また、図9中に示される出力Aは下記式(eq.21)のように表される。
可変減衰力Fvは、下記式(eq.22)のように表される。
式(eq.22)の状態空間表現は、式(eq.23)のように表される。
式(eq.23)の関係を式(eq.20)の状態空間表現に組み込むと、遅れ近似モデルMの状態空間表現として下記式(eq.24)が成立する。
ここで、
Ksは弾性部材(例えばバネ)の弾性係数(バネ定数)、
Mはバネ上部材の質量、Csは線形減衰係数、τは時定数である。
式(eq.24)は、下記式(eq.25)のように表すことができる。
ここで、
式(eq.25)からわかるように、遅れ近似モデルMは双線形システムとなる。
5.遅れ近似モデルMと遅れ考慮モデルとの比較
図9の遅れ近似モデルMと図8の遅れ考慮モデルとを、以下の条件A,Bの下で比較する。
条件A.バネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtが一定(=α)の場合
条件B.制御入力uが一定(=β)の場合
A.バネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtが一定(=α)の場合
この場合、dr/dt−dy/dt=vとすると、v=αである。したがって、図8に示される遅れ考慮モデルにおいて、可変減衰力Fvは下記式(eq.26)のように表される。
式(eq.26)からわかるように、可変減衰力Fvは一次遅れ(1/(τs+1))の影響を受けている。したがって、バネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtが一定(=α)である場合、可変減衰力Fvの応答は制御入力uに対して遅れる。
一方、図9に示される本実施形態の遅れ近似モデルMにおいて、相対速度vのラプラス変換L(v)をステップ応答(=α/s)で表すことによって、出力Aのラプラス変換L(A)について、下記式(eq.27)が成立する。
相対速度vは定常的に一定(=α)であるから、最終値定理により下記式(eq.28)が成立する。
よって、バネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtが一定(=α)であれば、A=αが成り立つ。
A=αであるので、図9に示される遅れ近似モデルMにおいて、可変減衰力Fvは下記式(eq.29)のように表される。
式(eq.29)からわかるように可変減衰力Fvは一次遅れ(1/(τs+1))の影響を受けている。したがって、バネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtが一定である場合、可変減衰力Fvの応答は制御入力uに対して遅れる。
B.制御入力uが一定(=β)の場合
制御入力uが一定(=β)、すなわちu=βである場合、図8の遅れ考慮モデルにおいて、uのラプラス変換L(u)をステップ応答(=β/s)で表すと、可変減衰係数Cvのラプラス変換L(Cv)について、下記式(eq.30)が成立する。
uは定常的に一定であるから、最終値定理により下記式(eq.31)が成立する。
上記式(eq.31)よりCv=βとなる。したがって、図8の遅れ考慮モデルにおいて、可変減衰力Fvは下記式(eq.32)のように表される。
式(eq.32)からわかるように、可変減衰力Fvは一次遅れの影響を受けていない。つまり、制御入力uが一定(=β)である場合は、可変減衰力Fvの応答はバネ上−バネ下相対速度vに対して遅れない。
また、図9の遅れ近似モデルMにおいて、可変減衰力Fvは下記式(eq.33)のように表される。
また、出力Aは、下記式(eq.34)のように表される。
式(eq.33)および式(eq.34)から、図9の遅れ近似モデルMにおいて、可変減衰力Fvは下記式(eq.35)のように表される。
式(eq.35)からわかるように、可変減衰力Fvは一次遅れの影響を受けていない。つまり、制御入力uが一定(=β)である場合は、可変減衰力Fvの応答はバネ上−バネ下相対速度vに対して遅れない。
バネ上−バネ下相対速度vが一定(=α)である場合、および、制御入力uが一定(=β)である場合について、図9の遅れ近似モデルMにおける可変減衰力Fvと、図8の遅れ考慮モデルにおける可変減衰力Fvとを比較すると、その比較結果は、上記考察から下記表のようになる。
上記表からわかるように、バネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtが一定である場合、および、制御入力uが一定である場合は、遅れ近似モデルにおける可変減衰力Fvと遅れ考慮モデルにおける可変減衰力Fvは等しくなる。つまり、これらの条件下では遅れ近似モデルは遅れ考慮モデルと等価な制御モデルである。
このことは、バネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtの時間変化量Δvが微小である場合、および、制御入力uの時間変化量Δuが微小である場合には、遅れ近似モデルにおける可変減衰力Fvと遅れ考慮モデルにおける可変減衰力Fvは非常に近い値になることを意味する。したがって、バネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtの時間変化量Δvが微小である場合、および、制御入力uの時間変化量Δuが微小である場合は、遅れ近似モデルMは遅れ考慮モデルと等価とみなすことができる制御モデルとなる。すなわち、バネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtの時間変化量Δvおよび、制御入力uの時間変化量Δuが微小範囲内である場合は、遅れ近似モデルMは遅れ考慮モデルに近似する。
この場合、ΔvおよびΔuの範囲は、扱う制御モデルや遅れの大きさなどにより変化するため、一概に決定することができない。例えばΔvは、その絶対値の上限が0.05〜0.5m/sであるときに、遅れ近似モデルMが遅れ考慮モデルに近似する場合がある。また、例えばΔuは、その絶対値の上限が100〜400N・S/mであるときに、遅れ近似モデルMが遅れ考慮モデルに近似する場合がある。一例として、Δvおよび/またはΔuは、下記式(eq.36)および(eq.37)に示される範囲とすることができる。
以上の考察から、バネ上−バネ下相対速度の変化量および制御入力の変化量が、遅れ近似モデルMが遅れ考慮モデルに近似するとみなされる範囲内であるような運動モデルを扱う場合には、遅れ考慮モデルを遅れ近似モデルMに置き換えることができる。遅れ近似モデルMは双線形システムであるので、リカッチ不等式の解を求めることにより、閉ループ制御系の状態フィードバックコントローラKを設計することができる。また、遅れ近似モデルMはアクチュエータ32の作動の遅れを考慮した制御モデルであるので、設計した状態フィードバックコントローラKにより算出される制御入力uもアクチュエータ32の一次遅れを考慮した制御入力となる。よって、求めた制御入力uに基づいてアクチュエータ32を作動させることにより、遅れによる制御タイミングのずれが修正された減衰力制御を行うことができる。
6.一般化プラントGの設計
図9の遅れ近似モデルMにおいて、バネ上−バネ下相対変位量r−y、バネ上速度dy/dt、制御入力uが評価出力zpに設定される。また、上述の式(eq.25)に示したように、状態量xpは、バネ上−バネ下相対変位量r−y,バネ上速度dy/dtおよびxτである。すると、この遅れ近似モデルMの状態空間表現は、下記式(eq.38)のように表される。
ここで、
図10は、式(eq.38)によって表される図9の遅れ近似モデルMを用いて設計した一般化プラントGおよび、この一般化プラントGの状態フィードバックコントローラK(K(x))からなる閉ループ制御系Sを表すブロック線図である。また、図11は、遅れ要素Rおよび遅れ補償要素R*の作用箇所を明確に表した閉ループ制御系Sのブロック線図である。図10において、一点鎖線で囲まれた領域Tにより表される部分が、図9に示す遅れ近似モデルMに対応する。図からわかるように、評価出力zpに、周波数により変動する重みである周波数重みWsが作用している。周波数重みWsの状態空間表現は、状態xw、出力zwおよび各定数行列Aw,Bw,Cw,Dwにより、下記式(eq.39)のように表される。
ここで、
式(eq.39)は、下記式(eq.40)のように変形できる。
また、制御入力uにも、周波数により変動する周波数重みWuが作用している。周波数重みWuの状態空間表現は、状態量xu、出力zuおよび各定数行列Au,Bu,Cu,Duにより、下記式(eq.41)により表される。
ここで、
一般化プラントGの状態空間表現は、式(eq.38)〜式(eq.41)を用いることによって下記式(eq.42)のように表される。
ここで、
7.制御入力uの算出
一般化プラントGの状態空間表現が上記式(eq.42)のように表されている場合、一般化プラントGは双線形システムとなる。したがって、予め設定される正定数γに対して下記式(eq.43)に示すリカッチ不等式を満たす正定対称行列Pが存在する場合、図10の閉ループ制御系Sが内部安定となり、且つ、外乱に対するロバスト性を表すL2ゲインをγ未満にすることができる。
このとき制御入力uを表す状態フィードバックコントローラK(=K(x))の一つは下記式(eq.44)に示すように表される。
式(eq.44)は、式(eq.45)により表される条件により、式(eq.46)のように記述される。
制御入力uは、上記式(eq.46)のように設計された状態フィードバックコントローラK、すなわち閉ループ制御系SのL2ゲインが正定数γ未満となるように設計される状態フィードバックコントローラKにより算出される。算出された制御入力uが可変減衰係数Cvを表す。
遅れ近似モデルMを用いて設計した一般化プラントGの状態フィードバックコントローラKから算出される制御入力uにより表される可変減衰係数Cvは、アクチュエータ32の一次遅れが考慮された減衰係数、すなわちアクチュエータの一次遅れによる制御タイミングのずれが無くなるように修正された減衰係数である。マイクロコンピュータ60は、このように算出された可変減衰係数Cvを用いて要求減衰力Freqおよび要求段数Dreqを計算し、ダンパ20の減衰力特性を表す段数が計算した要求段数Dreqとなるように可変絞り機構30を制御する。これにより、アクチュエータ32の作動の遅れによる制御タイミングのずれが修正されるとともに、バネ上部材HAの振動を抑制するように、サスペンション装置1の減衰力が制御される。つまり、本実施形態の減衰力制御装置によれば、アクチュエータ32の遅れによる制御タイミングのずれなどの悪影響が除外された減衰力制御を行うことができるのである。
以上説明したように、本実施形態の制御モデルである図9の遅れ近似モデルMは、サスペンション装置1の力学的運動モデルにアクチュエータ32の一次遅れを表す遅れ要素Rおよび遅れを打ち消す遅れ補償要素R*が作用するように設計されている。さらに、遅れ近似モデルMは、外部から入力される振動の速度であるバネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtに前記遅れ補償要素R*が作用し、その出力Aに制御入力u(可変減衰係数Cv)が乗じられ、その積Auに前記遅れ要素Rが作用するように設計されている。
このように設計された遅れ近似モデルMは双線形システムであるので、リカッチ不等式を解くことにより、遅れ近似モデルMを用いて設計された一般化プラントGおよびこの一般化プラントGの状態フィードバックコントローラKを有する図10に示す閉ループ制御系SについてのL2ゲインが予め設定された正定数γ未満となるように状態フィードバックコントローラKを設計することができる。また、遅れ近似モデルMは、図8の遅れ考慮モデルに近似する。したがって、設計された状態フィードバックコントローラKにより算出される制御入力uである可変減衰係数Cvは、アクチュエータ32の一次遅れによる制御タイミングのずれが無くなるように遅れが考慮された減衰係数となる。よって、この可変減衰係数Cvに基づいて決定される要求段数Dreqにしたがってダンパ20の減衰力特性が制御されることにより、アクチュエータ32の一次遅れによる制御タイミングのずれなどの悪影響が除外された最適な減衰力制御が行われる。
また、減衰力制御装置であるマイクロコンピュータ60は、車両のサスペンション装置1の減衰力を制御する。よって、アクチュエータ32の遅れによる制御タイミングのずれによる悪影響が除外された最適な乗り心地制御が行われる。また、このサスペンション装置1について設計した遅れ近似モデルMの状態空間表現が上記式(eq.24)のように表されることにより、制御モデルを双線形システムにすることができる。
上記説明した実施形態から、以下に示す発明も把握することができる。
(1)アクチュエータを作動させることによって、外部から入力される振動に対して減衰力発生装置により発生される減衰力を制御する際に用いられる制御モデルであり、前記減衰力発生装置の力学的運動モデルに前記アクチュエータの作動の遅れを表す遅れ要素Rおよび前記遅れを打ち消す遅れ補償要素R*を作用させ、双線形システムであり、且つ前記減衰力発生装置の力学的運動モデルに前記遅れを考慮した制御モデルである遅れ考慮モデルに近似するように設計された遅れ近似モデルM。
(2)アクチュエータを作動させることによって、外部から入力される振動に対して減衰力発生装置により発生される減衰力を制御する減衰力制御装置であり、前記減衰力発生装置の力学的運動モデルに前記アクチュエータの作動の遅れを表す遅れ要素Rおよび前記遅れを打ち消す遅れ補償要素R*を作用させた制御モデルであって、双線形システムであり且つ前記減衰力発生装置の力学的運動モデルに前記遅れを考慮した制御モデルに近似するように設計された制御モデルである遅れ近似モデルMを用いて設計された一般化プラントGおよび状態フィードバックコントローラKを含む閉ループ制御系Sに、非線形H∞制御理論を適用することにより制御入力uを算出する制御入力算出手段と、前記制御入力算出手段により算出された制御入力uに基づいて前記アクチュエータの作動を制御する作動制御手段と、を備える減衰力制御装置。
(3)アクチュエータを作動させることにより、ある与えられた制御対象の振動を制御する振動制御装置であり、前記制御対象の力学的運動モデル(振動モデル)に前記アクチュエータの作動の遅れを表す遅れ要素Rおよび前記遅れを打ち消す遅れ補償要素R*を作用させた制御モデルであって、双線形システムであり且つ前記力学的運動モデルに前記遅れを考慮した制御モデルに近似するように設計された制御モデルである遅れ近似モデルMを用いて設計された一般化プラントGおよび状態フィードバックコントローラKを含む閉ループ制御系Sに、非線形H∞制御理論を適用することにより制御入力uを算出する制御入力算出手段と、前記制御入力算出手段により算出された制御入力uに基づいて前記アクチュエータの作動を制御する作動制御手段と、を備える振動制御装置。
(4)上記(1)〜(3)において、遅れ近似モデルMは、外部から入力される振動の速度dr/dt−dy/dtに前記遅れ補償要素R*が作用し、その出力が前記制御入力uと積算され、その積算結果に前記遅れ要素Rが作用するように設計されていることを特徴とする。
(5)アクチュエータを作動させることによって、外部から入力される振動に対して減衰力発生装置により発生される減衰力を制御するための制御系の設計方法であり、前記減衰力発生装置の力学的運動モデルに前記アクチュエータの作動の遅れを表す遅れ要素Rおよび前記遅れを打ち消す遅れ補償要素R*を作用させ、双線形システムであり且つ前記減衰力発生装置の力学的運動モデルに前記遅れが考慮された制御モデルである遅れ考慮モデルに近似した制御モデルである遅れ近似モデルMを用いて一般化プラントGを設計するステップと、一般化プラントGの状態フィードバックコントローラKを含む閉ループ制御系Sを設計するステップと、閉ループ制御系SのL2ゲインが予め設定された正定数γ未満となるように、前記状態フィードバックコントローラKを設計するステップとを含む、制御系の設計方法。
本発明は、上記実施形態に限定されるべきものではない。上記実施形態においては、車両のサスペンション装置に適用する減衰力制御装置の例について説明したが、アクチュエータの遅れを伴う減衰力発生装置であれば、その他の装置にも本発明の減衰力制御装置が適用できる。また、上記実施形態においては、アクチュエータの一次遅れが発生する場合における減衰力制御について説明したが、本発明は、一次遅れとして表される遅れ以外の遅れにも適用できる。例えば遅れ要素Rが2次遅れとして表される場合には、その2次遅れを打ち消すように遅れ補償要素R*を設定するとよい。また、何らかの処理の都合によりアクチュエータの作動の開始時期が遅れるような場合についても、その遅れを打ち消すように遅れ補償要素R*を設定すればよい。
また、上記実施形態においては、遅れ近似モデルMが遅れ考慮モデルに近似するような、バネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtの時間変化量Δvおよび制御入力uの時間変化量Δuの数値範囲についても言及している。しかし、上述のようにこれらの変化量の範囲は、アクチュエータの遅れの大きさや扱うモデルにより適用可能範囲が変化するので、一概に決定できるものではない。また本発明はこれらの数値に限定されるものではない。
また、制御対象のバネ上−バネ下相対速度dr/dt−dy/dtおよび/または制御入力uが、遅れ近似モデルMが遅れ考慮モデルに近似する範囲でのみ変化する場合には、その制御対象に対して恒常的に本発明の遅れ近似モデルMを制御モデルとして適用することができる。そうでない制御対象に対しては、遅れ近似モデルMが遅れ考慮モデルに近似する範囲で、遅れ近似モデルMを制御モデルとして適用することができる。
このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。
Claims (9)
- アクチュエータを作動させることによって、外部から入力される振動に対して減衰力発生装置により発生される減衰力を制御する減衰力制御装置であり、
前記減衰力発生装置の力学的運動モデルに前記アクチュエータの作動の遅れを表す遅れ要素Rおよび前記遅れを打ち消す遅れ補償要素R*を作用させた制御モデルであって、双線形システムであり且つ、外部から入力される振動の速度dr/dt−dy/dtの変化量が予め設定された微小量以下である場合に前記減衰力発生装置の力学的運動モデルに前記遅れを考慮した制御モデルに近似するように設計された制御モデルである遅れ近似モデルMを用いて設計された一般化プラントGおよびこの一般化プラントGの状態フィードバックコントローラKを含む閉ループ制御系SのL2ゲインが予め設定される正定数γ未満となるように設計された前記状態フィードバックコントローラKにより制御入力uを算出する制御入力算出手段と、
前記制御入力算出手段により算出された制御入力uに基づいてアクチュエータの作動を制御する作動制御手段と、
を備える減衰力制御装置。 - 前記制御入力uは、外部から入力される振動の速度dr/dt−dy/dtに対する減衰力の可変分の大きさの変化勾配を表す可変減衰係数CVであることを特徴とする、請求の範囲1に記載の減衰力制御装置。
- 前記遅れ近似モデルMは、前記速度dr/dt−dy/dtに前記遅れ補償要素R*が作用し、その出力が前記制御入力uと積算され、その積算結果に前記遅れ要素Rが作用するように設計されていることを特徴とする、請求の範囲1または2に記載の減衰力制御装置。
- 前記減衰力発生装置は、車両のバネ上部材とバネ下部材との間に介装されて、バネ下部材に対するバネ上部材の振動を減衰するダンパと、前記振動を吸収する弾性部材を備えるサスペンション装置であり、
前記減衰力制御装置は、前記状態フィードバックコントローラKにより算出される制御入力uに基づいて前記アクチュエータを作動させて前記ダンパの減衰力特性を可変制御することによって、バネ上部材の振動を抑制するように、前記減衰力発生装置の減衰力を制御することを特徴とする、請求の範囲2,3,5のいずれかに記載の減衰力制御装置。 - アクチュエータを作動させることによって、外部から入力される振動に対して減衰力発生装置により発生される減衰力を制御する減衰力制御方法であり、
前記減衰力発生装置の力学的運動モデルに前記アクチュエータの作動の遅れを表す遅れ要素Rおよび前記遅れを打ち消す遅れ補償要素R*を作用させた制御モデルであって、双線形システムであり且つ、外部から入力される振動の速度dr/dt−dy/dtの変化量が予め設定された微小量以下である場合に前記減衰力発生装置の力学的運動モデルに前記遅れを考慮した制御モデルに近似するように設計された制御モデルである遅れ近似モデルMを用いて設計された一般化プラントGおよびこの一般化プラントGの状態フィードバックコントローラKを含む閉ループ制御系SのL2ゲインが予め設定される正定数γ未満となるように、前記状態フィードバックコントローラKを設計するステップと、
設計した前記状態フィードバックコントローラKにより、制御入力uを算出するステップと、
算出した制御入力uに基づいて前記アクチュエータを作動させるステップと、
を含む、減衰力制御方法。 - 前記制御入力uは、外部から入力される振動の速度dr/dt−dy/dtに対する減衰力の可変分の大きさの変化勾配を表す可変減衰係数CVであることを特徴とする、請求の範囲8に記載の減衰力制御方法。
- 前記遅れ近似モデルMは、前記速度dr/dt−dy/dtに前記遅れ補償要素R*が作用し、その出力が前記制御入力uと積算され、その積算結果に前記遅れ要素Rが作用するように設計されていることを特徴とする、請求の範囲8または9に記載の減衰力制御方法。
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