JP5245668B2 - エンジンベンチシステムの制御方式 - Google Patents
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図12はエンジンベンチシステムの機械系概略図を示したもので、エンジンE/GとトルクメータTM(又はトランスミッション)を組合せ、これに結合シャフトSHを介してダイナモメータ(動力計)Dyを連結している。ACTはスロットルアクチェータである。図12で示すようなエンジンベンチシステムの制御方法としては、特許文献1が公知となっている。この文献には、エンジンが発生する脈動トルクにより結合シャフトの共振破壊防止を目的として、ロバスト制御設計理論の一つであるμ設計法を用いた速度制御方法が記載されている。
動力計の速度設定値と速度検出との速度偏差に対する積分手段から得られるトルク指令と、速度検出に対する二次伝達関数の演算手段から得られるトルク指令の差で動力計トルクを算出し、算出された動力計トルクを動力計トルク指令としてインバータに出力することを特徴としたものである。
T2=(Ki/s)×(w2ref−w2)−(b2×s2+b1×s+b0)/(a2×s2+a1×s+1)×w2
で求めることを特徴としたものである。
ただし、w2ref:動力計速度指令、w2:動力計速度検出、(Ki、b2、b1、b0、a2、a1):速度制御パラメータ、
また、本発明は、積分手段、及び二次伝達関数の演算手段に用いる速度制御パラメータは、軸トルクメータで検出した捩れトルクに応じて共振周波数に変換し、
変換された共振周波数を用いて結合シャフトのばね剛性を求め、6次低域フィルタの閉ループ特性多項式の係数に対する係数比較から求めた値であることを特徴としたものである。
また、動力計トルク算出時に用いられる速度制御パラメータを、運転状態に応じた共振周波数から算出することで、共振周波数が軸トルクの大きさにより変化するエンジンベンチシステムにおいても、常に共振周波数に適応した速度制御のためのゲインパラメータが選択される。これにより、共振周波数が変化するような非線形なエンジンベンチシステムに対しても安定なエンジン試験が可能となるものである。
J1 :エンジン慣性モーメント
J2 :動力計慣性モーメント
K12:結合シャフトばね剛性
T12:結合シャフト捩れトルク(軸トルク)
w1 :エンジン角速度
w2 :動力計角速度
T1 :エンジントルク
T2 : 動力計トルク
とすると、ラプラス演算子をsとして、エンジンベンチの運動方程式は(1)〜(3)式となる。
J1×s×w1=T1+T12 …… (1)
T12=K12/s(w2 −w1) …… (2)
J2×s×w2=−T12+ T2 …… (3)
図4、及び図5は、J1=0.3、K12=1000、J2=0.7 としたときの図3で示すエンジンベンチモデルの機械系特性例である。図4は、エンジントルクT1→軸トルクT12のボード線図であり、図5は、エンジントルクT1→動力計角速度w2のボード線図である。各図で明らかなように約11Hz近辺に共振点を有しており、一般的なエンジンベンチシステムの機械系ではある周波数に共振点を持っている。
T2=(Ki/s)×(w2ref−w2)−(b2×s2+b1×s+b0)/(a2×s2+a1×s+1)×w2
……(4)
ただし、Ki、b2、b1、b0、a2、a1は速度制御パラメータである。
(1)〜(3)式、及び(4)式の閉ループ特性多項式を求めると、(5)式の6次多項式になる。
P(s)=1+c1(s/wp)+c2(s/wp)2+c3(s/wp)3+c4(s/wp)4+
c5(s/wp)5+c6(s/wp)6 …… (12)
本実施例では、以下のようにして(4)式のパラメータ(Ki、b2、b1、b0、a2、a1)を決定する。
ステップ1
(c6、c5、c4、c3、c2、c1)を、6次低域通過フィルタの特性多項式の係数に設定する。例えば、二項係数形にするには、
c6=1
c5=6
c4=15
c3=20
c2=15
c1=6
と設定すればよい。また、バターワース形にするには、
c6=1,
c5=3.86970330515627,
c4=7.46410161513775,
c3=9.14162017268564,
c2=7.46410161513775,
c1=3.86970330515627,
と設定すればよい。二項係数形にするか、バターワース形にするかは、得ようとするエンジントルク(T1)→軸トルク(T12)等の特性によって任意に選択される。
ステップ2
(6)〜(11)式を解き、(4)式の制御パラメータ(Ki、b2、b1、b0、a2、a1)を求める。
図6と図9はT1→T12のボード線図である。
エンジンベンチシステムでは、図4、図5で示すように機械系の共振特性を有していることで、図9で示す従来の一般的なPI制御の場合のT1→T12ボード線図でも明らかなように、周波数の11Hz近傍で共振特性が残っている。これに対し、図6で示す本実施例によれば、その共振特性は抑制されている。
また、図8と図11は速度指令値(w2ref)→速度検出(w2)のボード線図である。動力計システムにおける応答性能については、一般にはカットオフ周波数で−3dBとしており、図11で示す一般的なPI制御の場合での−3dBでは3Hz程度の速度制御応答となっているのに対し、図8で示す本実施例における−3dBでは4〜5Hzの速度制御応答に制御され、速度制御応答が向上していることが分かる。
図3で示すエンジンベンチモデルでは、結合シャフト部がクラッチのような非線形ばね(ばね剛性が捩れ角により変化するようなばね)の場合、図4、図5に示すボード線図の周波数特性が、軸トルクによって大きく変化するが、この実施例は変化する場合でも対応できるものである。
K12=J1×J2×WP2/(J1+J2) …… (13)
5は係数記憶手段で、(12)式で求められた6次低域通過フィルタの特性多項式の係数c1〜c6を保存する。6は係数演算手段で、剛性演算手段4で求められた結合シャフトのばね剛性K12と係数記憶手段5での係数c1〜c6を用いて(6)〜(11)の演算を行って速度制御パラメータ(Ki、b2、b1、b0、a2、a1)を求める。したがって、積分手段1と二次の伝達関数を演算する演算手段2は、係数演算手段6によって算出された速度制御パラメータ(Ki、b2、b1、b0、a2、a1)を用いて動力計トルクT2を算出し、動力計トルク指令としてインバータに出力する。
2… 演算手段
3… 捩れトルク→共振周波数変換手段
4… ばね剛性演算手段
5… 係数記憶手段
6… 係数演算手段
Claims (3)
- エンジンと動力計を結合シャフトで連結し、インバータを介して動力計速度を制御するものであって、機械系構成が2慣性系以上の多慣性系機械系モデルとして表現され、この多慣性系機械系モデルが2慣性系に近似できるエンジンベンチシステムにおいて、
動力計の速度設定値と速度検出との速度偏差に対する積分手段から得られるトルク指令と、速度検出に対する二次伝達関数の演算手段から得られるトルク指令の差で動力計トルクを算出し、算出された動力計トルクを動力計トルク指令としてインバータに出力することを特徴としたエンジンベンチシステムの速度制御方式。 - 前記積分手段、及び二次伝達関数の演算手段により算出される動力計トルクT2は、
T2=(Ki/s)×(w2ref−w2)−(b2×s2+b1×s+b0)/(a2×s2+a1×s+1)×w2
で求めることを特徴とした請求項1記載のエンジンベンチシステムの速度制御方式。
ただし、w2ref:動力計速度指令、w2:動力計速度検出、(Ki、b2、b1、b0、a2、a1):速度制御パラメータ、 - 前記積分手段、及び二次伝達関数の演算手段に用いる速度制御パラメータは、軸トルクメータで検出した捩れトルクに応じて共振周波数に変換し、
変換された共振周波数を用いて結合シャフトのばね剛性を求め、6次低域フィルタの閉ループ特性多項式の係数に対する係数比較から求めた値であることを特徴とした請求項2記載のエンジンベンチシステムの速度制御方式。
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