「第1実施形態」
本発明に係る第1実施形態のディスクブレーキを図1〜図8を参照して以下に説明する。
第1実施形態のディスクブレーキは、自動二輪車用のディスクブレーキである。図1〜図3に示すように、このディスクブレーキ11は、制動対象である車両の図示略の車輪とともに回転するディスク12と、ディスク12の一面側であるアウタ側(車輪とは反対側)に配置されて車両の非回転部に固定されるマウンティングブラケット13と、マウンティングブラケット13に固定されたガイドピン14およびメインピン15でマウンティングブラケット13に対し摺動可能に支持されるキャリパ16とを有している。なお、図1〜図3においては、車両の前進制動時のディスクの回転方向を矢印Rで示しており、この回転方向の入口側をディスク回入側、出口側をディスク回出側として以下説明を行う。
第1実施形態のディスクブレーキ11は、図2に示すように、マウンティングブラケット13に固定されたメインピン15とキャリパ16に固定されたパッドピン20とに摺動可能に支持されてディスク12の他面側であるインナ側(車輪側)に配置されるブレーキパッド(一方のブレーキパッド)21と、図3に示すように、マウンティングブラケット13とキャリパ16に固定されたパッドピン20とに摺動可能に支持されてディスク12の一面側であるアウタ側に配置されるブレーキパッド(他方のブレーキパッド)22と、キャリパ16に係止され、一対のブレーキパッド21,22を少なくともディスク径方向内側に付勢するパッドスプリング23と、マウンティングブラケット13に取り付けられてアウタ側のブレーキパッド22を案内するパッドガイド24と、ガイドピン14を覆う図1に示すブーツ25と、メインピン15を覆うブーツ26とを有している。
マウンティングブラケット13は、板材から板金で形成されるブラケット本体30を有しており、ブラケット本体30は、図3に示すように、ディスク回転方向に延在するベース部31と、ベース部31のディスク回出側の端部からディスク径方向外方である下方に延出する延出部32とを有している。ベース部31には、ディスク回入側の端部に取付穴33が、ディスク回出側つまり延出部32側の端部に取付穴34が、それぞれディスク軸方向に貫通して形成されている。マウンティングブラケット13は、取付穴33の周囲の固定部35と取付穴34の周囲の固定部36とが、取付穴33,34にそれぞれ挿通される図示略の取付ボルトで車両の非回転部に固定される。
ブラケット本体30には、ベース部31のディスク回入側の固定部35よりも若干ディスク回出側にガイドピン取付穴40が、延出部32のディスク径方向外側つまり下側の端部に、ガイドピン取付穴40よりも大径のメインピン取付穴41が、それぞれディスク軸方向に貫通して形成されている。ディスク回入側のガイドピン取付穴40には、ディスク軸方向に沿ってディスク12とは反対側(アウタ側)のみに突出するように上記したガイドピン14が固定されており、ディスク回出側のメインピン取付穴41には、ディスク軸方向に沿ってディスク12側(インナ側)およびディスク12とは反対側(アウタ側)に突出するように、ガイドピン14よりも大径の上記したメインピン15が固定されている。なお、メインピン15はディスク12の径方向外側に配置されており、図1に示すように、アウタ側(図1の上側)からインナ側(図1の下側)にディスク12を超えて突出している。マウンティングブラケット13は、図3に示すように、ブラケット本体30、ガイドピン14およびメインピン15で構成されている。
ブラケット本体30には、ベース部31のディスク径方向外側におけるガイドピン取付穴40よりも若干ディスク回入側に、ベース部31からディスク径方向外方に向けて突出するガイド突部44が形成されており、延出部32のベース部31側のディスク回入側に、延出部32からディスク回入側に突出するガイド突部45が形成されている。このガイド突部45に上記したパッドガイド24が取り付けられている。
キャリパ16は、ディスク12を跨いだ状態でマウンティングブラケット13のガイドピン14およびメインピン15に摺動可能に取り付けられるキャリパボディ50と、キャリパボディ50に摺動可能に設けられるピストン51と、キャリパボディ50に取り付けられる上記したパッドピン20とを有している。
キャリパボディ50は、鋳造により一体成形されるもので、図1に示すように、マウンティングブラケット13のアウタ側に配置されるシリンダ部52と、シリンダ部52のディスク径方向外側である下部からディスク12の径方向外側を超えるようにインナ側に延出するブリッジ部53と、ブリッジ部53のインナ側の端部からシリンダ部52に対向するようにディスク12の径方向内側に延出する爪部54とを有している。
図2に示すように、シリンダ部52は、ディスク回入側のガイドピン14を摺動可能に嵌合させる摺動案内部57と、ディスク回出側のメインピン15を摺動可能に嵌合させる摺動案内部58と、これら摺動案内部57,58の間にあってピストン51を摺動可能に保持するシリンダ本体部59とを有している。シリンダ本体部59には、図4に示すように、爪部54側に開口するボア60がディスク軸方向に沿って形成されており、このボア60内に、図3に示すようにピストン51が嵌合される。
ブリッジ部53は、そのディスク径方向の内側にディスク径方向の外側に凹む凹部63が形成されている。凹部63は、ボア60の中心を通るディスク径方向の線に対して直交方向に広がる底面64と、底面64の周囲からディスク径方向に沿って立ち上がる周囲壁面65とを有しており、周囲壁面65の底面64とは反対側はディスク径方向内側ほど拡大する形状をなしている。そして、ブリッジ部53には、凹部63の底面64からディスク径方向に沿って貫通する貫通穴67が形成されている。また、ブリッジ部53の凹部63内をディスク軸方向に貫通するようにシリンダ部52と爪部54とに上記したパッドピン20が架設されている。ディスク軸方向から見た場合に、パッドピン20は、ボア60の中心を通るディスク径方向の線上に配置されており、この線を中心として、爪部54およびブリッジ部53は、鏡面対象の形状をなしている。
このようなキャリパ16は、図1に示すように、インナ側のブレーキパッド21のディスク12とは反対側に爪部54が配置され、図3に示すように、アウタ側のブレーキパッド22のディスク12とは反対側にピストン51が配置されることになり、シリンダ部52内に導入されたブレーキ液圧でピストン51が爪部54側に前進すると、ピストン51がアウタ側のブレーキパッド22をディスク12に押圧することになり、その反力でガイドピン14およびメインピン15を摺動して爪部54でインナ側のブレーキパッド21をディスク12に押圧することになる。これにより、ブレーキパッド21,22をディスク12に接触させ、その摩擦抵抗により、ディスク12を制動する。
図2に示すように、インナ側のブレーキパッド21は、ディスク12に接触して摩擦抵抗を発生させる摩擦材71と、この摩擦材71を保持する板状の裏金72とを有している。
裏金72は、摩擦材71が固着される主板部73と、この主板部73からディスク回出側かつディスク径方向外方(下方)に突出する端部突出部74と、主板部73のディスク径方向外側のディスク回転方向中央位置からディスク径方向外方に突出する中間突出部75と、主板部73のディスク径方向外側における中間突出部75よりもディスク回入側からディスク径方向外方に突出する被押圧突起部76と、主板部73のディスク径方向外側における中間突出部75よりもディスク回出側からディスク径方向外方に突出する被押圧突起部77とを有している。被押圧突起部76,77は、中間突出部75からの距離が同等になっており、互いに鏡面対象の形状をなしている。
ディスク回入側の被押圧突起部76の先端部は、そのディスク回入側にあってディスク回転方向の端部側ほどディスク径方向内側に位置するように傾斜する傾斜面76aと、傾斜面76aのディスク回出側にあってディスク回転方向の端部側ほどディスク径方向内側に位置するように傾斜する傾斜面76bとを有しており、これら傾斜面76a,76bの境界部分が、被押圧突起部76において最もディスク径方向外側に位置する頂部76cとなっている。ボア60の中心を通るディスク径方向の線に直交し頂部76cを通る面を基準面とした場合、ディスク回入側の傾斜面76aと基準面とのなす角度が、ディスク回出側の傾斜面76bと基準面とのなす角度よりも大きくなっている。
ディスク回出側の被押圧突起部77の先端部は、そのディスク回出側にあってディスク回転方向の端部側ほどディスク径方向内側に位置するように傾斜する傾斜面77aと、傾斜面77aのディスク回入側にあってディスク回転方向の端部側ほどディスク径方向内側に位置するように傾斜する傾斜面77bとを有しており、これら傾斜面77a,77bの境界部分が、被押圧突起部77において最もディスク径方向外側に位置する頂部77cとなっている。ボア60の中心を通るディスク径方向の線に直交し頂部77cを通る面を基準面とした場合、ディスク回出側の傾斜面77aと基準面とのなす角度が、ディスク回入側の傾斜面77bと基準面とのなす角度より大きくなっている。
端部突出部74にはメインピン15を挿通させる略矩形状のメインピン穴78がディスク軸方向に貫通して形成されており、中間突出部75にはパッドピン20を挿通させる横長形状のパッドピン穴79がディスク軸方向に貫通して形成されている。インナ側のブレーキパッド21は、摩擦材71をディスク12側に裏金72を爪部54側に配置して、これらメインピン15およびパッドピン20によってマウンティングブラケット13およびキャリパ16に摺動可能に支持されている。
図3に示すように、アウタ側のブレーキパッド22も、ディスク12に接触して摩擦抵抗を発生させる摩擦材81と、この摩擦材81を保持する板状の裏金82とを有している。
裏金82は、摩擦材81が固着される主板部83と、この主板部83のディスク径方向外側からディスク回出側に突出する端部突出部84と、主板部83のディスク径方向内側のディスク回入側からディスク径方向内方(上方)に突出する内側突出部85と、主板部83のディスク径方向外側のディスク回転方向中央位置からディスク径方向外方(下方)に突出する中間突出部86と、主板部83のディスク径方向外側における中間突出部86よりもディスク回入側からディスク径方向外方に突出する被押圧突起部87と、主板部83のディスク径方向外側における中間突出部86よりもディスク回出側からディスク径方向外方に突出する被押圧突起部88とを有している。被押圧突起部87,88は、中間突出部86からの距離が同等になっており、互いに鏡面対象の形状をなしている。
ディスク回入側の被押圧突起部87の先端部は、そのディスク回入側にあってディスク回転方向の端部側ほどディスク径方向内側に位置するように傾斜する傾斜面87aと、傾斜面87aのディスク回出側にあってディスク回転方向の端部側ほどディスク径方向内側に位置するように傾斜する傾斜面87bとを有しており、これら傾斜面87a,87bの境界部分が、被押圧突起部87において最もディスク径方向外側に位置する頂部87cとなっている。ボア60の中心を通るディスク径方向の線に直交し頂部87cを通る面を基準面とした場合、ディスク回入側の傾斜面87aと基準面とのなす角度が、ディスク回出側の傾斜面87bと基準面とのなす角度より大きくなっている。
ディスク回出側の被押圧突起部88の先端部は、そのディスク回出側にあってディスク回転方向の端部側ほどディスク径方向内側に位置するように傾斜する傾斜面88aと、傾斜面88aのディスク回入側にあってディスク回転方向の端部側ほどディスク径方向内側に位置するように傾斜する傾斜面88bとを有しており、これら傾斜面88a,88bの境界部分が、被押圧突起部88において最もディスク径方向外側に位置する頂部88cとなっている。ボア60の中心を通るディスク径方向の線に直交し頂部88cを通る面を基準面とした場合、ディスク回出側の傾斜面88aと基準面とのなす角度が、ディスク回入側の傾斜面88bと基準面とのなす角度より大きくなっている。
中間突出部86にはパッドピン20を挿通させる横長形状のパッドピン穴89がディスク軸方向に貫通して形成されている。アウタ側のブレーキパッド22は、摩擦材81をディスク12側に裏金82をシリンダ部52側に配置して、パッドピン20によってキャリパ16に摺動可能に支持されている。なお、アウタ側のブレーキパッド22は、端部突出部84がマウンティングブラケット13のガイド突部45に取り付けられたパッドガイド24のディスク径方向外側に当接するとともに主板部83のディスク回出側の端部突出部84を除く端面がパッドガイド24のディスク回入側に当接し、内側突出部85がマウンティングブラケット13のガイド突部44のディスク回出側の面に当接して、これらパッドガイド24およびガイド突部44で摺動が案内される。
ここで、図2に示すインナ側のブレーキパッド21の摩擦材71と裏金72の主板部73、中間突出部75および被押圧突起部76,77とは、図3に示すアウタ側のブレーキパッド22の摩擦材81と裏金82の主板部83、中間突出部86および被押圧突起部87,88と同形状(つまり同体積)になっており、重さも同等になっている。これに対し、図2に示すインナ側のブレーキパッド21の裏金72の端部突出部74の体積は、図3に示すアウタ側のブレーキパッド22の裏金82の端部突出部84および内側突出部85を合わせた体積よりも大きくなっており、その結果、ディスク12の両面に設けられる一対のブレーキパッド21,22は、図2に示す一方のインナ側のブレーキパッド21の重量が、図3に示す他方のアウタ側のブレーキパッド22の重量よりも大きくなっている。なお、図2に示すインナ側のブレーキパッド21の主板部73、中間突出部75および被押圧突起部76,77と、図3に示すアウタ側のブレーキパッド22の主板部83、中間突出部86および被押圧突起部87,88とが同形状をなしているため、上記した基準面は同一面となっている。
パッドスプリング23は、図2に示すように、キャリパ16の凹部63の底面64に当接してキャリパ16に係止される係止部95と、係止部95のインナ側のディスク回入側の端部からディスク径方向内側かつディスク回入側に斜めに延出してインナ側のブレーキパッド21のディスク回入側の被押圧突起部76に当接する押圧片96と、係止部95のインナ側のディスク回出側の端部からディスク径方向内側かつディスク回出側に斜めに延出してインナ側のブレーキパッド21のディスク回出側の被押圧突起部77に当接する押圧片97とを有している。
また、パッドスプリング23は、図3に示すように、係止部95のアウタ側のディスク回入側の端部からディスク径方向内側かつディスク回入側に斜めに延出してアウタ側のブレーキパッド22のディスク回入側の被押圧突起部87に当接する押圧片98と、係止部95のアウタ側のディスク回出側の端部からディスク径方向内側かつディスク回出側に斜めに延出してアウタ側のブレーキパッド22のディスク回出側の被押圧突起部88に当接する押圧片99とを有している。
つまり、パッドスプリング23は、ブレーキパッド21,22毎に、ブレーキパッド21を付勢する2つの押圧片96,97およびブレーキパッド22を付勢する2つの押圧片98,99を有しており、押圧片96〜99は、パッドスプリング23のキャリパ16への係止部95からディスク12の回転方向両側に延びて4つに分かれて形成されている。
パッドスプリング23は自然状態にあるとき図5〜図8に示す形状をなしている。
パッドスプリング23の係止部95は、略長方形状の基板部102と、基板部102の長さ方向の一端縁部から長さ方向外方かつ板厚方向に斜めに延出する係止板部103と、基板部102の長さ方向の他端縁部から長さ方向外方かつ板厚方向に斜めに延出する係止板部104とを有している。そして、図4に示すように、キャリパボディ50の底面64に基板部102を当接させた状態で、パッドスプリング23は、係止板部103が周囲壁部65の爪部54側に係止され、係止板部104が周囲壁部65のシリンダ部52側に係止される。なお、係止部95は、基板部102の幅方向に鏡面対称形状をなしている。
図5および図7に示すように、押圧片96は、基板部102の幅方向の一端縁部の長さ方向の一側から、基板部102と所定の鈍角をなして基板部102の幅方向外方かつ板厚方向一側に斜めに直線状に延出する第1板部108と、第1板部108の先端から基板部102に対し第1板部108よりも大きい所定の鈍角で傾斜して基板部102の幅方向外方かつ板厚方向一側に斜めに直線状に延出する第2板部109と、第2板部109の先端から基板部102に対し第1板部108よりも大きくかつ第2板部109よりも小さい所定の鈍角で傾斜して基板部102の幅方向外方かつ板厚方向一側に斜めに直線状に延出する第3板部110と、第3板部110の先端から基板部102の幅方向外方かつ板厚方向逆側に斜めに突出する先端板部111と、第3板部110の押圧片98側の端縁部から垂直に基板部102の幅方向内方に突出する規制板部112とを有している。
図6および図7に示すように、押圧片97は、基板部102の幅方向の他端縁部の長さ方向の一側から、幅方向外方かつ板厚方向一側に斜めに直線状に延出する第1板部115と、第1板部115の先端から基板部102に対し第1板部115よりも大きい所定の鈍角で傾斜して基板部102の幅方向外方かつ板厚方向一側に斜めに直線状に延出する第2板部116と、第2板部116の先端から基板部102の幅方向外方かつ板厚方向逆側に斜めに突出する先端板部117と、第2板部116の押圧片99側の端縁部から垂直に基板部102とは反対側に突出する規制板部118とを有している。
ここで、押圧片96の第1板部108と押圧片97の第1板部115とは、基板部102とのなす角度が同等とされている。これに対して、押圧片96の第2板部109の基板部102とのなす角度は押圧片97の第2板部116の基板部102とのなす角度よりも小さくなっており、押圧片96の第3板部110の基板部102とのなす角度は、第2板部116の基板部102とのなす角度よりもさらに小さくなっている。また、基板部102から押圧片96の第1板部108の先端までの高さは押圧片97の第1板部115の先端までの高さよりも小さくなっており、基板部102からの高さ方向において、押圧片96の第3板部110に押圧片97の第2板部116が位置を合わせている。以上により、押圧片96および押圧片97は非対称形状となっている。
図5および図8に示すように、押圧片98は、基板部102の幅方向の一端縁部の長さ方向の他側から、幅方向外方かつ板厚方向一側に斜めに直線状に延出する第1板部121と、第1板部121の先端から基板部102に対し第1板部121よりも大きい所定の鈍角で傾斜して基板部102の幅方向外方かつ板厚方向一側に斜めに直線状に延出する第2板部122と、第2板部122の先端から基板部102の幅方向外方かつ板厚方向逆側に斜めに突出する先端板部123とを有している。この押圧片98の基板部102に対する第1板部121および第2板部122の角度関係および高さ関係と、長さ関係とは、押圧片97と同等となっている。
図6および図8に示すように、押圧片99は、基板部102の幅方向の他端縁部の長さ方向の他側から、幅方向外方かつ板厚方向一側に斜めに直線状に延出する第1板部126と、第1板部126の先端から基板部102に対し第1板部126よりも大きい所定の鈍角で傾斜して基板部102の幅方向外方かつ板厚方向一側に斜めに直線状に延出する第2板部127と、第2板部127の先端から基板部102の幅方向外方かつ板厚方向逆側に斜めに突出する先端板部128とを有している。この押圧片99の基板部102に対する第1板部126および第2板部127の角度関係および高さ関係と、長さ関係とについても、押圧片97と同等となっている。これにより、押圧片98および押圧片99は鏡面対称形状となっている。
図5および図6に示すように、押圧片96〜99は、第1板部108,121の基板部102側同士が繋がっており、第1板部115,126の基板部102側同士も繋がっている。また、押圧片96〜99は、第1板部108,115,121,126の中間部分の幅が同等となっている。これに対して、インナ側の押圧片96の第2板部109および第3板部110を含む先端側の幅および押圧片97の第2板部116を含む先端側の幅は、アウタ側の押圧片98の第2板部122を含む先端側の幅および押圧片99の第2板部127を含む先端側の幅よりも狭くなっている。
そして、上記のパッドスプリング23がキャリパ16に組み付けられると、図2に示すように、ディスク回入側かつインナ側の押圧片96が、ディスク径方向外方に若干撓みながら第3板部110においてインナ側のブレーキパッド21の被押圧突起部76の傾斜面76aに当接することになり、ディスク回出側かつインナ側の押圧片97が、ディスク径方向外方に若干撓みながら第2板部116においてブレーキパッド21の被押圧突起部77の頂部77cに当接することになる。また、図3に示すように、ディスク回入側かつアウタ側の押圧片98がディスク径方向外方に若干撓みながら第2板部122においてアウタ側のブレーキパッド22の被押圧突起部87の頂部87cに当接することになり、ディスク回出側かつアウタ側の押圧片99がディスク径方向外方に若干撓みながら第2板部127においてブレーキパッド22の被押圧突起部88の頂部88cに当接することになる。なお、このとき、図7に示すインナ側の押圧片96の規制板部112および押圧片97の規制板部118は、図2に示すインナ側のブレーキパッド21の被押圧突起部76,77のディスク12側に当接する。
ここで、押圧片96の第3板部110は、被押圧突起部76の傾斜面76aに当接することから上記した基準面に対して比較的大きな角度で傾斜することになり、矢印F1で示すように、ディスク径方向内側かつディスク回出側であってディスク回出側に比較的大きく傾いた方向にブレーキパッド21を押圧する。
これに対して、押圧片97の第2板部116は、被押圧突起部77の頂部77cに当接し、上記した基準面に対して押圧片96よりも小さな角度で反対回り方向に傾斜することになり、矢印F2で示すように、ディスク径方向内側かつディスク回入側であってディスク回入側に比較的傾きが小さい方向に、押圧片96と同等のバネ力でブレーキパッド21を押圧する。
また、図3に示すように、押圧片98の第2板部122は、被押圧突起部87の頂部87cに当接することから上記した基準面に対して押圧片96よりも小さな角度で同じ方向に傾斜することになり、矢印F3で示すように、ディスク径方向内側かつディスク回出側であってディスク回出側に比較的傾きが小さい方向に、押圧片97と同等のバネ力でブレーキパッド22を押圧する。
また、押圧片99の第2板部127は、被押圧突起部88の頂部88cに当接して、上記した基準面に対して押圧片98と同角度で反対回り方向(押圧片97と同角度で同じ方向)に傾斜することになり、矢印F4で示すように、ディスク径方向内側かつディスク回入側であってディスク回入側に比較的傾きが小さい方向に、押圧片97,98と同等のバネ力でインナ側のブレーキパッド21を押圧する。
インナ側のブレーキパッド21へは、押圧片96の押圧力および押圧片97の押圧力の合力が加わることになり、アウタ側のブレーキパッド22へは、押圧片98の押圧力および押圧片99の押圧力の合力が加わることになる。そして、上記のように、パッドスプリング23において、重量が大きいインナ側のブレーキパッド21に当接する押圧片96,97のうちディスク回入側に位置する押圧片96は、重量が小さいアウタ側のブレーキパッド22に当接する押圧片98,99のうちディスク回入側に位置する押圧片98に対し、ディスク回出方向への付勢力が大きくなるように、インナ側のブレーキパッド21への当接角度が、押圧片98のアウタ側のブレーキパッド22への当接角度と異なっている。そして、インナ側のブレーキパッド21に当接する押圧片96,97のうちディスク回出側に位置する押圧片97のインナ側のブレーキパッド21への当接角度と、アウタ側のブレーキパッド22に当接する押圧片98,99のうちディスク回出側に位置する押圧片99のアウタ側のブレーキパッド22への当接角度とが同等で、押圧片97,99のディスク回出方向への付勢力が同等になっていることから、パッドスプリング23の押圧片96〜99のうち、重量が大きいインナ側のブレーキパッド21に当接する押圧片96,97は、重量が小さいアウタ側のブレーキパッド22に当接する押圧片98,99よりもディスク回出方向への付勢力が大きくなっている。
そして、図2に示すインナ側のブレーキパッド21は、押圧片96の押圧力および押圧片97の押圧力の合力によって押圧され、その結果、パッドピン20にパッドピン穴79が押し付けられ、メインピン15にメインピン穴78が押し付けられる。図3に示すアウタ側のブレーキパッド22は、押圧片98の押圧力および押圧片99の押圧力の合力によって押圧され、その結果、パッドピン20にパッドピン穴89が押し付けられ、パッドガイド24に端部突出部84が押し付けられる。
以上のディスクブレーキ11は、キャリパ16のシリンダ部52内にブレーキ液圧が導入されることでピストン51が爪部54側に前進すると、ピストン51がアウタ側のブレーキパッド22をディスク12に押圧することになり、その際に、アウタ側のブレーキパッド22はパッドスプリング23の押圧片98,99で押圧されながら、パッドピン穴89がパッドピン20に案内され、端部突出部84がパッドガイド24に案内され、内側突出部85がガイド突部44で案内されてマウンティングブラケット13に対して摺動する。他方、ピストン51が受ける反力でキャリパ16がガイドピン14およびメインピン15を摺動して爪部54でインナ側のブレーキパッド21をディスク12に押圧することになり、その際に、インナ側のブレーキパッド21はパッドスプリング23の押圧片96,97で押圧されながら、メインピン穴78がメインピン15に案内され、パッドピン穴79がパッドピン20に案内されて、マウンティングブラケット13に対して摺動する。このようにして、キャリパ16は、ブレーキパッド21,22をディスク12に接触させ、その摩擦抵抗により、ディスク12を制動する。
以上に述べた第1実施形態によれば、パッドスプリング23の押圧片96〜99のうち、重量が大きいインナ側のブレーキパッド21に当接する押圧片96,97は、重量が小さいアウタ側のブレーキパッド22に当接する押圧片98,99よりもディスク回出方向への付勢力が大きくなっていることから、重量が大きいインナ側のブレーキパッド21のメインピン穴78をメインピン15にディスク回出側に向け大きな力で押し付けることができる。これにより、重量が大きいほど生じやすいブレーキパッド21のガタツキを抑制することができる。したがって、メインピン15の摩耗を抑制でき、異音やブレーキ鳴きを抑制できる。一方、重量が小さく制動時にキャリパ16とともに摺動するアウタ側のブレーキパッド22に対しては、パッドスプリング23の押圧片98,99がディスク回転方向に大きな押圧力を発生させることがないため、摺動性を低下させることなく、引き摺りを抑制できる。このように、パッドスプリング23によって、重量が異なる一対のブレーキパッド21,22をそれぞれ適正に押圧することができる。このため、ブレーキパッド21のガタツキやブレーキパッド21、22の引き摺りによる異音の発生を抑制することができる。
また、パッドスプリング23は、重量が大きいインナ側のブレーキパッド21に当接する押圧片96,97のうちディスク回入側に位置する押圧片96が、重量が小さいアウタ側のブレーキパッド22に当接する押圧片98,99のうちディスク回入側に位置する押圧片98に対し、ディスク回出方向への付勢力が大きくなるようにインナ側のブレーキパッド21への当接角度が、押圧片98のアウタ側のブレーキパッド22への当接角度と異なっているため、簡素な構成で、重量が異なる一対のブレーキパッド21,22をそれぞれ適正に押圧することができる。このため、ブレーキパッド21のガタツキやブレーキパッド21、22の引き摺りによる異音の発生を抑制することができる。
また、パッドスプリング23は、重量が大きいインナ側のブレーキパッド21に当接する押圧片96,97のうち、その拘束中心であるメインピン15から遠いディスク回入側に位置する押圧片96のディスク回出方向への付勢力を大きくしているため、発生するモーメントが大きくなり、インナ側のブレーキパッド21のメインピン穴78をメインピン15に効率良く安定的に押し付けることができる。このため、車両の前進時における制動時にブレーキパッド21の移動による異音(いわゆる、クロンク音)の発生を抑制することができる。
「第2実施形態」
次に、本発明に係る第2実施形態を主に図9〜図11に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第2実施形態においては、パッドスプリング23のディスク回入側かつインナ側の押圧片96のみが第1実施形態に対して相違している。
第2実施形態のパッドスプリング23は自然状態にあるとき図9および図10に示す形状をなしている。
第2実施形態において、押圧片96は、基板部102と直交に近い所定の鈍角をなして基板部102の幅方向外方かつ板厚方向一側に斜めに直線状に延出する第1板部131と、第1板部131の先端から基板部102に対し第1板部131よりも大きい所定の鈍角で傾斜して基板部102の幅方向外方かつ板厚方向一側に斜めに直線状に延出する第2板部132と、第2板部132の先端から基板部102の幅方向外方かつ板厚方向逆側に斜めに突出する先端板部133と、第2板部132の押圧片98側の端縁部から垂直に基板部102とは反対側に突出する規制板部134とを有している。
これにより、押圧片96の第1板部131は、基板部102とのなす角度が他の押圧片97〜99の第1板部115,121,126と相違しており、押圧片96の第1板部131の方が、他の押圧片97〜99の第1板部115,121,126よりも基板部102となす角度が小さくなっている。一方、押圧片96の第2板部132の第1板部131とのなす角度は、他の押圧片97の第2板部116の第1板部115とのなす角度、押圧片98の第2板部122の第1板部121とのなす角度および押圧片99の第2板部127の第1板部126とのなす角度と同等になっている。また、押圧片96の第1板部131の長さは他の押圧片97〜99の第1板部115,121,126の長さと同等になっており、第2板部132の長さも他の押圧片97〜99の第2板部116,122,127の長さと同等になっている。これにより、押圧片96および押圧片97は、自然状態では、鏡面対称の形状に対して基板部102に対する第1板部131,115の角度のみを異ならせた非対称の形状となっている。
そして、図11に示すように、上記のパッドスプリング23がキャリパ16に組み付けられると、ディスク回入側かつインナ側の押圧片96が図9に二点鎖線で示す自然状態からディスク径方向外方(下方)に大きく撓みながら第2板部132においてインナ側のブレーキパッド21の被押圧突起部76の頂部76cに当接することになる。これに対し、ディスク回出側かつインナ側の押圧片97は、ディスク径方向外方に、押圧片96よりも小さい撓み量だけ撓みながら第2板部116においてブレーキパッド21の被押圧突起部77の頂部77cに当接することになる。また、第1実施形態の図3と同様、ディスク回入側かつアウタ側の押圧片98がディスク径方向外方に若干撓みながら第2板部122においてアウタ側のブレーキパッド22の被押圧突起部87の頂部87cに当接することになり、ディスク回出側かつアウタ側の押圧片99がディスク径方向外方に若干撓みながら第2板部127においてブレーキパッド22の被押圧突起部88の頂部88cに当接することになる。
このような取付状態で、図11に示すように、押圧片96の第2板部132は、頂部76cに当接し、上記した基準面に対して押圧片97の第2板部116と同角度で反対回り方向に傾斜することになり、第1実施形態の図3と同様の押圧片98と同角度で同じ方向に傾斜することになり、第1実施形態の図3と同様の押圧片99と同角度で反対回り方向に傾斜することになる。つまり、押圧片96および押圧片97は取付状態では略鏡面対称となっている。これにより、撓み量の大きい押圧片96の押圧力が、押圧片98の押圧力よりも大きくなり、ディスク径方向内方に向く成分およびディスク回出側に向く成分も大きくなる。
インナ側のブレーキパッド21へは、押圧片96および押圧片97の押圧力の合力が加わることになり、アウタ側のブレーキパッド22へは、押圧片98および押圧片99の押圧力の合力が加わることになる。そして、上記のように、重量が大きいインナ側のブレーキパッド21に当接する押圧片96,97のうちディスク回入側に位置する押圧片96は、重量が小さいアウタ側のブレーキパッド22に当接する押圧片98,99のうちディスク回入側に位置する押圧片98に対し、ディスク回出方向への付勢力が大きくなるようにブレーキパッド21への押圧力が、押圧片98のブレーキパッド22への押圧力と異なっている。そして、インナ側のブレーキパッド21に当接する押圧片96,97のうちディスク回出側に位置する押圧片97のブレーキパッド21への押圧力と、アウタ側のブレーキパッド22に当接する押圧片98,99のうちディスク回出側に位置する押圧片99のブレーキパッド22への押圧力とが同等で、押圧片97,99のディスク回出方向への付勢力が同等になっていることから、パッドスプリング23の押圧片96〜99のうち、重量が大きいインナ側のブレーキパッド21に当接する押圧片96,97は、重量が小さいアウタ側のブレーキパッド22に当接する押圧片98,99よりもディスク回出方向への付勢力が大きくなっている。
以上に述べた第2実施形態によれば、重量が大きいインナ側のブレーキパッド21に当接する押圧片96,97のうちディスク回入側に位置する押圧片96が、重量が小さいアウタ側のブレーキパッド22に当接する押圧片98,99のうちディスク回入側に位置する押圧片98に対し、ディスク回出方向への付勢力が大きくなるように自然状態での角度を異ならせているため、押圧片96,98の自然状態での角度を異ならせるという、より簡素な構成で、重量が異なる一対のブレーキパッド21,22をそれぞれ適正に押圧することができる。このため、ブレーキパッド21のガタツキやブレーキパッド21、22の引き摺りによる異音の発生を抑制することができる。
「第3実施形態」
次に、本発明に係る第3実施形態を主に図12に基づいて第2実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第2実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第3実施形態においては、パッドスプリング23のディスク回入側かつインナ側の押圧片96が第2実施形態に対して相違しており、加えて、インナ側のブレーキパッド21のディスク回入側の被押圧突起部76が第2実施形態に対して相違している。
第3実施形態のパッドスプリング23は、図示略の自然状態で、ディスク回入側かつインナ側の押圧片96の第1板部131が、基板部102に対し押圧片97の第1板部115と同じ所定の鈍角をなして基板部102の幅方向外方かつ板厚方向一側に斜めに直線状に延出している。
これにより、第3実施形態において、押圧片96の第1板部131は、基板部102とのなす角度が、他の押圧片97の第1板部115および他の押圧片98,99の第1板部121,126(図12では図示略)と同等になっており、押圧片96および押圧片97は、自然状態では、鏡面対称の形状となっている。つまり、パッドスプリング23の全体が、自然状態では、鏡面対称の形状となっている。
上記に対して、インナ側のブレーキパッド21のディスク回入側の被押圧突起部76の主板部73からの突出量が、他の同等であるインナ側のブレーキパッド21のディスク回出側の被押圧突起部77の主板部73からの突出量、アウタ側のブレーキパッド22のディスク回入側の被押圧突起部87の主板部83(図12では図示略)からの突出量およびアウタ側のブレーキパッド22のディスク回出側の被押圧突起部88(図12では図示略)の主板部83からの突出量に対して大きくなっている。
そして、図12に示すように、上記のパッドスプリング23がキャリパ16に組み付けられると、ディスク回入側かつインナ側の押圧片96が図12に二点鎖線で示す自然状態からディスク径方向外方(下方)に大きく撓みながら第2板部132においてインナ側のブレーキパッド21の被押圧突起部76の頂部76cに当接することになる。これに対し、ディスク回出側かつインナ側の押圧片97は、ディスク径方向外方に、押圧片96よりも小さい撓み量で撓みながら第2板部116においてインナ側のブレーキパッド21の被押圧突起部77の頂部77cに当接することになる。また、図12では図示は略すが、第1実施形態の図3と同様、ディスク回入側かつアウタ側の押圧片98がディスク径方向外方に若干撓みながら第2板部122においてアウタ側のブレーキパッド22の被押圧突起部87の頂部87cに当接することになり、ディスク回出側かつアウタ側の押圧片99がディスク径方向外方に若干撓みながら第2板部127においてアウタ側のブレーキパッド22の被押圧突起部88の頂部88cに当接することになる。これにより、押圧片96の押圧力が押圧片98の押圧力よりも大きくなり、ディスク径方向内方に向く成分およびディスク回出側に向く成分も大きくなる。
インナ側のブレーキパッド21へは、押圧片96および押圧片97の押圧力の合力が加わることになり、アウタ側のブレーキパッド22へは、押圧片98および押圧片99の押圧力の合力が加わることになる。そして、上記のように、重量が大きいインナ側のブレーキパッド21に当接する押圧片96,97のうちディスク回入側に位置する押圧片96は、重量が小さいアウタ側のブレーキパッド22に当接する押圧片98,99のうちのディスク回入側に位置する押圧片98に対し、ディスク回出方向への付勢力が大きくなるようにブレーキパッド21への押圧力が、押圧片98のブレーキパッド22への押圧力と異なっている。そして、インナ側のブレーキパッド21に当接する押圧片96,97のうちディスク回出側に位置する押圧片97のインナ側のブレーキパッド21への押圧力と、アウタ側のブレーキパッド22に当接する押圧片98,99のうちディスク回出側に位置する押圧片99のアウタ側のブレーキパッド22への押圧力とが同等で、押圧片97,99のディスク回出方向への付勢力が同等になっていることから、パッドスプリング23の押圧片96〜99のうち、重量が大きいインナ側のブレーキパッド21に当接する押圧片96,97は、重量が小さいアウタ側のブレーキパッド22に当接する押圧片98,99よりもディスク回出方向への付勢力が大きくなっている。
以上に述べた第3実施形態によれば、重量が大きいインナ側のブレーキパッド21に当接する押圧片96,97のうちディスク回入側に位置する押圧片96が、重量が小さいアウタ側のブレーキパッド22に当接する押圧片98,99のうちディスク回入側に位置する押圧片98に対し、ディスク回出方向への付勢力が大きくなるようにインナ側のブレーキパッド21のディスク回入側の被押圧突起部76の突出量をアウタ側のブレーキパッド22のディスク回入側の被押圧突起部87に対して異ならせているため、被押圧突起部76の突出量を被押圧突起部87に対して異ならせるという、簡素な構成で、重量が異なる一対のブレーキパッド21,22をそれぞれ適正に押圧することができる。このため、ブレーキパッド21のガタツキや引き摺りによる異音の発生を抑制することができる。
「第4実施形態」
次に、本発明に係る第4実施形態を主に図13および図14に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第4実施形態においては、パッドスプリング23のディスク回出側かつインナ側の押圧片97のみが第1実施形態に対して相違している。
第4実施形態のパッドスプリング23は自然状態にあるとき図13に示す形状をなしている。
ディスク回出側かつインナ側の押圧片97は、基板部102に対して他の押圧片96,98,99の第1板部108,121,126よりも大きい所定の鈍角をなして基板部102の幅方向外方かつ板厚方向一側に斜めに直線状に延出する第1板部141と、第1板部141の先端から基板部102に対し略直交して板厚方向一側に直線状に延出する第2板部142と、第2板部142の先端から、基板部102に対し第1板部141よりも大きい所定の鈍角で傾斜して基板部102の幅方向外方かつ板厚方向一側に斜めに直線状に延出する第3板部143と、第3板部143の先端から基板部102と略平行をなして基板部102の幅方向外方に直線状に延出する第4板部144と、第4板部144の押圧片99側の端縁部から垂直に基板部102とは反対側に突出する規制板部145とを有している。
そして、図14に示すように、上記のパッドスプリング23がキャリパ16に組み付けられると、第1実施形態と同様、ディスク回入側かつインナ側の押圧片96がディスク径方向外方(下方)に若干撓みながら第3板部110においてインナ側のブレーキパッド21の被押圧突起部76の傾斜面76aに当接することになり、また、第1実施形態とは異なって、ディスク回出側かつインナ側の押圧片97がディスク径方向外方に撓みながら第4板部144においてインナ側のブレーキパッド21の被押圧突起部77のディスク回入側の角部に当接することになる。また、第1実施形態の図3と同様、ディスク回入側かつアウタ側の押圧片98がディスク径方向外方に若干撓みながら第2板部122においてアウタ側のブレーキパッド22の被押圧突起部87の頂部87cに当接することになり、ディスク回出側かつアウタ側の押圧片99がディスク径方向外方に若干撓みながら第2板部127においてアウタ側のブレーキパッド22の被押圧突起部88の頂部88cに当接することになる。
このとき、押圧片97の第4板部144は、被押圧突起部77のディスク回入側の角部に当接し、上記した基準面に対して押圧片96の第3板部110よりも小さい角度で同じ方向に傾斜することになり、第1実施形態の図3と同様のアウタ側のディスク回出側の押圧片99と逆方向に傾斜することになる。よって、押圧片97は、インナ側のブレーキパッド21を、ディスク径方向内側かつディスク回出側に押圧することになる。
インナ側のブレーキパッド21へは、押圧片96および押圧片97の押圧力の合力が加わることになり、アウタ側のブレーキパッド22へは、押圧片98および押圧片99の押圧力の合力が加わることになる。そして、第1実施形態と同様、重量が大きいインナ側のブレーキパッド21に当接する押圧片96,97のうちディスク回入側に位置する押圧片96は、重量が小さいアウタ側のブレーキパッド22に当接する押圧片98,99のうちディスク回入側に位置する押圧片98に対し、ディスク回出方向への付勢力が大きくなるようにインナ側のブレーキパッド21への押圧力が、押圧片98のアウタ側のブレーキパッド22への押圧力と異なっている。加えて、重量が大きいインナ側のブレーキパッド21に当接する押圧片96,97のうちディスク回出側に位置する押圧片97も、重量が小さいアウタ側のブレーキパッド22に当接する押圧片98,99のうちディスク回出側に位置する押圧片99に対し、ディスク回出方向への付勢力が大きくなるようにブレーキパッド21への押圧力が、押圧片99のブレーキパッド22への押圧力と異なっている。
以上により、パッドスプリング23の押圧片96〜99のうち、重量が大きいインナ側のブレーキパッド21に当接する押圧片96,97は、重量が小さいアウタ側のブレーキパッド22に当接する押圧片98,99よりもディスク回出方向への付勢力が大きくなっている。
以上に述べた第4実施形態によれば、重量が大きいインナ側のブレーキパッド21に当接する押圧片96,97のうちディスク回出側に位置する押圧片97が、重量が小さいアウタ側のブレーキパッド22に当接する押圧片98,99のうちディスク回出側に位置する押圧片99に対し、ディスク回出方向への付勢力が大きくなるようにブレーキパッド21,22への当接角度を異ならせているため、簡素な構成で、重量が異なる一対のブレーキパッド21,22をそれぞれ適正に押圧することができる。このため、ブレーキパッド21のガタツキや引き摺りによる異音の発生を抑制することができる。
なお、第4実施形態において、ディスク回入側かつインナ側の押圧片96を第3実施形態と同様にして、押圧片97を主体としてパッドスプリング23のディスク回出側の付勢力を大きくしても良い。また、第1〜第4実施形態を適宜組み合わせても良い。