JP5236629B2 - オキシ硫化物およびフッ素化有機誘導体の製造方法 - Google Patents

オキシ硫化物およびフッ素化有機誘導体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明の主題は、オキシ硫化物およびフッ素化有機誘導体の製造のための改良方法である。
さらに具体的には、本発明は、フルオロアルカンスルフィン酸およびフルオロアルカンスルホン酸、およびこれらの塩の製造に関する。
本発明は、塩化された形の、パーフルオロアルカンスルフィン酸およびパーフルオロアルカンスルホン酸、ならびに好ましくは、トリフルオロメタンスルフィン酸およびトリフルオロメタンスルホン酸の製造を目標にするものである。
パーハロアルカンスルホン酸およびさらに具体的にはトリフルオロメタンスルホン酸は、有機合成において触媒として、または中間体として使用されている。
EP0735023には、極性の有機溶媒中において、有機または無機の陽イオンによって少なくとも部分的に塩化されている式:Ea−CF−COOH(式中、Eaは、電子求引性原子または基を表す。)のフルオロカルボン酸と、硫黄酸化物、具体的には二酸化硫黄とを反応させ、生成した混合物を100℃と200℃の間の温度で、30分と20時間の間の時間、加熱することによるオキシ硫化物およびフッ素化有機誘導体、具体的には、塩化された形のパーフルオロメタンスルフィン酸の合成が記載されている。
前記出発するフルオロカルボン酸と硫黄酸化物、好ましくは二酸化硫黄との相対的な量は、フルオロカルボン酸のモルあたりの硫黄原子の数の比率が、1と10の間、有利には、2の近辺であるような量である。
EP0735023によれば、2つの条件、すなわち、溶媒の選択および反応混合物中に放出可能なプロトンの含有量が、不可欠であるように思われる。
得られたオキシ硫化物およびフッ素化有機誘導体の収率は、実施例6を除いて、30と55%の間の範囲であり、反応選択率は50%のオーダーであるが、実施例6においては、非常に厳密な無水の条件の使用によって85%の選択率が得られるが、このことは、工業的な観点から非常に制約的である。
その上、最終生成物の過度に大きな分解を防ぎ、その結果、反応の良好な選択率を与えるために、出発のフルオロカルボン酸を完全に変換しようとしないことが好ましいということに注意すべきである。したがって、反応は40から80%、好ましくは、50から70%の変換の程度が得られるまで実施される。
この研究を続けている途中で、出願人の会社は導入された硫黄酸化物の量を制限しながら、スルフィン化反応が実施される場合、この方法を改良できることを見出した。
さらに具体的には、本発明の主題は、極性非プロトン性有機溶媒の存在下での、
(i)有機または無機の陽イオンによって少なくとも部分的に塩化されている、式:
Ea−CF−COOH (I)
[式中、Eaは、電子求引性原子または基を表す。]のフルオロカルボン酸と、
(ii)硫黄酸化物、好ましくは二酸化硫黄と
の反応を含み、フルオロカルボン酸のモル数に対する硫黄酸化物のモル数の比率が1未満、好ましくは0.99未満であることを特徴とする、オキシ硫化物およびフッ素化有機誘導体の製造方法である。
本発明の方法によれば、硫黄酸化物(好ましくは二酸化硫黄)の量が化学量論量より少なければ、スルフィン化反応の選択率を改良することができることが見出された。したがって、前に定義された比率は、1未満、好ましくは0.99未満、さらに好ましくは0.4と0.95の間になるように選択される。
一般的に、このような反応においては、硫黄酸化物の量は、化学量論的に大過剰であり、前記比率における減少によって、本発明で導入される利点を得ることが可能になることは、当業者にとってまったく明白ではなかった。
また、反応の選択率が改良されるだけではなく、反応の圧力を下げ、大気圧と等しくすることができるという事実のために、本方法はより容易に実施される。
本発明の方法によれば、塩化された形のフルオロカルボン酸を、硫黄酸化物と反応させる。
式(I)に相当するフルオロカルボン酸において、ジフルオロ化された炭素原子に電子求引性効果を及ぼす単位(entity)Eaは、0.1以上のハメット定数σを有する官能基から好ましくは選択される。
さらに、前記σ、σの誘導性要素は、0.2以上、有利には0.3以上であることが好ましい。
この点において、Jerry Marchによる研究、Advanced Organic Chemistry、第4版、John Wiley and Sons発行、1992年、第9章、278−286頁、および具体的には、このセクションの表9.4を参照されたい。
さらに具体的には、電子求引性単位Eaは、フッ素原子である。
相当するフルオロカルボン酸は、式(Ia):
X−CF−COOH (Ia)
[式中、
Xは、フッ素原子である。]
のハロフルオロ酢酸である。
また、Eaは、有利には、カルボニル、スルホンおよびパーフルオロアルキル基から選択することができる。
使用され得るこのタイプのフルオロカルボン酸は、式(Ib):
R−G−CF−COOH (Ib)
[式中、
Gは、C=OまたはS=O官能基を表し、
Gは、パーフルオロアルキレン基−(CF(ここで、nは1以上である。)を表し、
Rは、ハロゲン原子、好ましくは塩素またはフッ素原子を表し、
Rは、任意の無機または有機の残基、好ましくは有機基、例えばアリール、アルキルまたはアラルキル(前記基は、場合により、置換されていてもよい。)を表し、また
Rは、固体の無機または有機の支持体、例えば樹脂を表すことができる。]
に相当するものである。
有機基の好ましい意味は、次のとおりである。
「アルキル」という用語は、直鎖または分枝のC−C15、好ましくはC−C10、さらに好ましくはC−Cの炭化水素鎖を意味すると解釈される。好ましいアルキル基の例は、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルまたはt−ブチルである。
「シクロアルキル」という用語は、C−Cの単環式基、好ましくはシクロペンチルまたはシクロヘキシル基またはC−C18の多環式(二環式または三環式)基、具体的にはアダマンチルまたはノルボニルである、環式炭化水素基を意味すると解釈される。
「アリール」という用語は、単環式または多環式芳香族基、好ましくはC−C20の単環式または二環式の芳香族基、好ましくはフェニルまたはナフチルを意味すると解釈される。この基が、多環式である場合、すなわち、1つを超える環状核を有する場合、環状核は、対で縮環を形成してもよく、互いにσ結合で結合されていてもよい。(C−C18)のアリール基の例は、具体的には、フェニルまたはナフチルである。
「アリールアルキル」という用語は、C−C12の単環式芳香環、好ましくはベンジルを有する、直鎖または分枝の炭化水素基を意味すると解釈され、脂肪族鎖は、1個または2個の炭素原子を含む。
前記基の1つが環を含むと、この環は、1個または複数、好ましくは2個の置換基で置換され得ることに注意すべきである。置換基は、これが、反応を妨げることを条件に、いかなる性質のものでもよい。具体的には、好ましい例として、1個から4個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシ基を挙げることができる。
本発明に関しては、アルキル基が、好ましい有機基である。
Gが、パーフルオロアルキレン基−(CF−を表す場合、nは、有利には1と10の間、好ましくは1と5の間である。さらにまた、この場合において、Rは、ハロゲン原子、具体的には、フッ素を表すことができる。
一般的に、フルオロカルボン酸がポリマーである場合を除いて、フルオロカルボン酸の炭素原子の総数は、有利には、30を超えない。これは、好ましくは2と12の間である。
前記フルオロカルボン酸と塩を形成することができる対イオンは、有利には、嵩張ったものである。したがって、好ましくはアルカリ金属塩であり、有利には、前記金属がナトリウム、カリウム、ルビジウム、およびセシウムから選択される場合が好ましい。
好ましくは、前記金属は、ナトリウムより大きい元素番号のものであり、具体的にはカリウムまたはセシウムである。
また、例えば第四級アンモニウムもしくは第四級ホスホニウムの陽イオンなどの本来嵩張った陽イオン、またはキレート剤、または、好ましくはクリプタンド、例えばアミン基および酸素原子の両方を含むクラウンエーテルまたは誘導体などの添加で嵩張るようにされる陽イオンを使用することによって反応を改良することも可能である。
好ましくは、第四級アンモニウム陽イオンまたは第四級ホスホニウム陽イオンとして、テトラアルキルアンモニウム、またはテトラアルキルホスホニウム、トリアルキルベンジルアンモニウム、またはトリアルキルベンジルホスホニウムまたはテトラアリールアンモニウム、またはテトラアリールホスホニウム(これらの同一または異なるアルキル基は、直鎖または分枝の4から12個、好ましくは4から6個の炭素原子を有するアルキル鎖を表し、これらのアリール基は、有利にはフェニル基である。)が使用される。
好ましくは、テトラブチルアンモニウム陽イオンが選択される。
パーフルオロカルボン酸の塩は、有利には、例えばアルカリ金属、具体的にはカリウム、トリフルオロ酢酸、パーフルオロプロピオン酸、パーフルオロ酪酸またはパーフルオロオクタン酸を使用することができる。
本発明は、好ましくは、塩化された形、好ましくは、アルカリ金属塩、さらに好ましくは、カリウム塩の形のトリフルオロメタンスルフィン酸の製造に関する。
硫黄酸化物、好ましくは二酸化硫黄は、気体の形で使用することができる。また、溶液の形で、反応のために選択される有機溶媒中に一般的に1と10重量%の間、好ましくは、3と6重量%の間で変化する濃度で導入することができる。
本発明の方法の特徴によると、フルオロカルボン酸のモル数に対する硫黄酸化物のモル数の比率は1未満、好ましくは0.99未満である。
前記比率は、好ましくは0.4と0.95の間、優先的には0.7と0.9の間で選択される。
本発明の方法は、有機溶媒中でスルフィン化反応を実施することにある。
有機溶媒は、本発明で重要な役割を果たし、非プロトン性で、有利には極性のものでなければならず、酸性水素を有する不純物はほとんど含むべきではない。
「非プロトン性溶媒」という用語は、ルイス理論で放出するプロトンを有していない溶媒を意味すると解釈される。
反応条件下で十分に安定である溶媒を用いることが必要である。
溶媒は、少なくとも部分的にまたは好ましくは完全に、フルオロカルボン酸塩を溶解することが望ましい。
したがって、有機溶媒は、極性があるものが選択される。その結果、使用することができる極性非プロトン性溶媒は、有意な双極子モーメントを有していることが好ましい。したがって、比誘電率εは、有利には、約5以上である。好ましくは、この誘電率は、50以下で、5以上であり、具体的には30と40の間である。
有機溶媒が、前記誘電率条件を満たすかどうか決定するためには、とりわけ、研究:Techniques of Chemistry、II−Organic solvents−536頁およびそれ以降、第3版(1970年)の表を参照されたい。
さらに、本発明の溶媒は、陽イオンを徹底的に溶媒和することが可能であること(このことは、溶媒がルイスの意味の範囲内で塩基性の或る種の性質を示すことを意味する。)が好ましい。
溶媒がこの要件を満たすかどうか決定するためには、溶媒の塩基性は「ドナー数」に関して評価される。10を超える、好ましくは、20以上のドナー数を示す極性有機溶媒が選択される。上限は、なんらの臨界的な性質をも示さない。好ましくは、10と30の間のドナー数を有する有機溶媒が選択される。
DNによって簡略化された形で示される「ドナー数」は、溶媒の求核性に関して示唆を与え、二重項を与える能力を現すことを思い出されたい。
Christian Reichardtによる研究[Solvents and Solvent Effects in Organic Chemistry、VCH、19頁(1990年)]は、「ドナー数」の定義を含んでおり、ドナー数は希薄なジクロロエタン溶液中の溶媒と五塩化アンチモンとの間の相互作用のエンタルピー(kcal/モル)のマイナス(−ΔH)として定義されている。
本発明によると、極性溶媒(単数または複数)が酸性水素を示さない。具体的には、溶媒(単数または複数)の極性の性質が、電子求引性基の存在によって得られる場合、電子求引性官能基に対してα位置の原子に水素が存在しないことが望ましい。
より一般的には、溶媒の最初の酸性度に相当するpKaが、約20以上(「約」は、最初の数字のみが有意であることを強調する。)、有利には、約25以上、好ましくは25と35の間であることが好ましい。
また、酸性の性質は、Christian Reichardt[Solvents and Solvent Effects in Organic Chemistry、第2版、VCH(RFA)、1990年、23−24頁]によって定義されている溶媒のアクセプター数ANによって表すこともできる。
有利には、このアクセプター数ANは、20未満、具体的には18未満である。
様々な必要条件を満たし、良好な結果を与える溶媒は、具体的にはアミド型溶媒であり得る。また、アミドは、例えば四置換尿素および一置換ラクタムなど特定の性質を有するアミドを含む。アミドは、好ましくは置換されている(普通のアミドについては、二置換されている。)。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジエチルホルムアミドまたはN,N−ジメチルアセトアミドなどのアミドあるいは例えばN−メチルピロリドンなどのピロリドン誘導体を挙げることができる。
別の特に有利な溶媒のカテゴリーは、エーテル(対称であろうと非対称であろうと、開いていようと、閉じていようと関係なく)からなる。グリコールエーテルの様々の誘導体、例えば様々のグリム、例えばジグリムなどが、エーテルのカテゴリーに含まれなければならない。
前記溶媒の中で、好ましくはDMFが使用される。
使用される有機溶媒の量は、選択された有機溶媒の性質の関数として決定される。
これは、有機溶媒中のフルオロカルボン酸の濃度が、好ましくは、1と30重量%の間、さらに好ましくは、10と20重量%の間であるように決定される。
本発明の方法を実施するための好ましい条件によれば、反応媒体中に存在する不純物の含量をコントロールすることが望まれる。
系の不安定な水素原子の含有量またはさらに正確には、この様々の成分が有する放出可能なプロトンの含有量は、不純物も含めて、フルオロカルボン酸の分解によって放出されるフッ素含有基の含有量より少なくなければならない。
「不安定な水素原子」または「放出可能なプロトン」という用語は、強塩基によってプロトンの形で引き抜かれ得る水素原子を意味すると解釈される。実際には、これらは、約20未満のpKaを示す酸性の官能基のプロトンである。
放出可能なプロトンの含有量が、少なくなればなるほど、副反応のリスクは少なくなり、収率は良くなる。
溶媒に存在する放出可能なプロトンの含有量は、前記フルオロカルボン酸の出発時のモル濃度の20%以下である。
有利には、この含有量は、前記フルオロカルボン酸の出発時の含有量に対して10%以下、好ましくは1%(モルにおいて)以下である。
不安定な水素原子を有する主な分子は、一般的に、分子あたり2個までのプロトンを放出することができる水である。
一般的に、反応剤中の水の重量含有率が、反応剤の全重量に対して1/1000以下になるように、脱水された反応剤および溶媒を使用することが好ましい。
化合反応条件によって、そのような水分含有量は、満足し得るものあり得るが、いくつかの場合においては、例えば1/10000のオーダーのより低いレベルで作用させることが有利であり得る。
しかしながら、すべての水を除去するのが必ずしも不可欠であるというわけではなく、10%未満の水/フルオロカルボン酸のモル比は許容され得る。
EP0735023に述べられているように、金属不純物は、少ない量であることが好ましい。金属元素は、具体的には、反応剤または溶媒によって、あるいは腐食の結果として、金属装置によって導入された不純物として存在し得る。
したがって、金属による追加の混入を導入しないように、使用される出発のフルオロカルボン酸塩は、塩基がほぼ化学量論量、好ましくは化学量論量に等しい量で導入されるような条件下に式(I)のフルオロカルボン酸と塩基との反応によって製造されることが重要である。
さらに一般的には、金属の2つのカテゴリー、すなわち2つの価電子状態を含む遷移元素(例えば銅など)および第VIII族からの元素(具体的には、白金、オスミウム、イリジウム、パラジウム、ロジウム、およびルテニウムで構成された族である白金鉱石金属)が、1000モルppm以下、好ましくは10モルppm以下の含有量(フルオロカルボン酸に対して表される。)で溶媒中に存在しなければならないことが示され得る。
本説明においては、Bulletin de la Societe Chimique de France、第1号、1966年1月の補充(ここには、元素周期律表が公開されている。)を参照されたい。
本発明の方法によれば、塩化された形のフルオロカルボン酸、硫黄酸化物、および有機溶媒を接触させる。
処理は、バッチ式または連続式で実施され得る。
導入方法は、重要ではないが、その一部は好ましい。
バッチ式の実施形態によれば、フルオロカルボン酸の塩を有機溶媒に導入し、次に、硫黄酸化物を全部または少しずつ加えることができ、硫黄酸化物は、前記溶媒中への吸収によってガスの形で導入することができ、または、有機溶媒、好ましくは反応の有機溶媒中の溶液で導入することもできる。
反応は、加熱装置(熱交換器)および攪拌装置、例えばプロペラを使用して攪拌する攪拌装置を備えた、従来の反応器中で実施される。
反応混合物は、次に加熱される。
連続式の実施形態によれば、連続式の処理を可能にする装置、例えば熱交換流体(熱交換流体の特性は、所望の反応温度を実現することを可能にする。)が循環しているジャケットが備え付けられたカスケード型またはチューブ型の数個の反応器を用いる。
この場合、フルオロカルボン酸の塩を、有機溶媒との混合物として、装置に供給し、二酸化硫黄を導入する。
二酸化硫黄は、フルオロカルボン酸および有機溶媒を含む供給溶液中に加えることができ、あるいは、装置の様々なポイントで導入することができ、この送り込みは、反応器のヘッドスペースまたは反応物中に行うことが可能である。
次に、所望の変換の程度が得られるまで、加熱を行う。
本発明の方法によれば、反応混合物の加熱は、100℃と200℃の間、好ましくは120℃と160℃の間の温度で有利に行われる。
スルフィン化反応は、大気圧下で有利に行われるが、より高い圧力も使用することができる。したがって、1と20バールの間、好ましくは1と3バールの間で選択される合計絶対圧が好適であり得る。
加熱の時間は、選択された反応温度の関数として広く変えることができる。これは、約30分と最大1日の間で変えることができる。これは、有利には、1時間を超えて20時間未満まで、さらに好ましくは、2時間と7時間の間である。
連続式の実施形態によれば、平均滞留時間(これは供給流量に対する反応物の容積の比率として定義される。)が30分と10時間の間、さらに好ましくは、2時間と4時間の間である。
前記硫黄酸化物が二酸化硫黄である場合、スルフィン化段階から生じる混合物は、2つの相:少なくとも前記酸および二酸化硫黄の一部が前記溶媒中に溶解されている液相と、二酸化硫黄および反応中に形成された二酸化炭素ガスを本質的に含む気相とを含むことができる。
最終生成物の過大な分解を避け、その結果、反応の良好な選択性を与えるために、出発のフルオロカルボン酸を完全に変換しようとしないことが好ましい。
酸の変換の程度(DC)(これは反応溶媒中の酸の初期量に対する消失した酸の量のモル比である。)によって反応の進行度を監視することができ、この程度は、溶媒中に残存する酸を定量的に測定した後に容易に算出される。
有利には、反応は30から80%、好ましくは、40から60%の変換の程度が達成されるまでのみ実施され、次に、反応生成物は分離される。その結果、80%を超える、さらには90%を超える選択率(所望の生成物/変換されたフルオロカルボン酸のモル比によって表される。)さえ達成することが可能である。
所望の変換の程度が一度達成されると、得られた生成物を分離するためにこれ自体知られた方法で反応混合物を処理することができ、ターゲットにした有機誘導体の追加量を製造するために出発物質をリサイクルさせることができる。
前記硫黄酸化物が二酸化硫黄である場合、反応溶媒を加熱することによって得られた生成物は、スルフィン酸塩であり、この塩の対イオンは、出発のフルオロカルボン酸塩の対イオンである。
反応生成物を分離するために、有利には、比較的揮発性で、容易に蒸留可能な誘導体を与えるために追加の変換を実施することが可能である。
したがって、例えば、SOとトリフルオロ酢酸CFCOHの塩との反応の間に、得られたトリフルオロメチルスルフィン酸CFSOHの塩は、塩素Clの存在下で容易に変換され、CFSOClを与えることができる(この反応は、酸、具体的には、パーフルオロアルカンスルフィン酸RSOHが使用されることが一般的である。)。この反応により、有利には、無機の塩化物およびトリフルオロメタンスルホン酸の塩を反応溶媒中に未変化のまま残して蒸留でCFSOClを分離することが可能になり、したがって、これは、硫黄酸化物との反応を継続するために再利用することができる。この反応は、本発明によって得ることができる様々なフッ素化スルフィン酸に共通である。この例は、適切な反応によって変換して、より揮発性の生成物を与えることができる、本発明によって得られたすべてのタイプのオキシ硫化物およびフッ素化有機誘導体の分離を一般化することができる。
スルフィン酸から相当するスルホン酸に変換するため、反応生成物または精製された反応生成物に、酸化(これ自体知られ、具体的には水性過酸化水素溶液または次亜塩素酸ナトリウムによって)を施すことが適切である。本発明によって適用され得る、トリフルオロメチルスルフィン酸ナトリウムの精製方法およびスルホン酸塩を与えるための酸化方法は、番号EP−A−0396458の下で公開されたヨーロッパ特許出願において記載されている。
このようにして得られたスルフィン酸またはスルホン酸塩は、酸性溶媒中で相当する遊離酸に変換することができる。好ましくは、硫酸、場合により発煙硫酸の形の硫酸、または塩酸を使用することができる。
反応生成物、塩または遊離酸は、容易に単離することができ、有機合成のその後の段階において使用することができる。このようにして、例えば、本発明によって製造されたフッ素化スルフィン酸から得られた塩化スルフィニルは、使用に供することができる。
次の実施例は、本発明を例証するが、これを限定しない。
実施例で使用される略語の意味を以下に示す。
変換の程度(DC)は、仕込まれた基質のモル数に対する変換された基質のモル数の比率に相当する。
収率(RY)は、仕込まれた基質のモル数に対する形成された生成物のモル数の比率に相当する。
選択率(CY)は、反応の間に変換された基質のモル数に対する形成された生成物のモル数の比率に相当する。
KTFAは、「トリフルオロ酢酸カリウム」を意味する。
次に示される実施例1および実施例2は、バッチ式の製造方法を説明する。
実施例3から6は、連続式の実施形態を例証する。
実施例1
トリフルオロメチルスルフィン酸カリウムの製造
ジャケット、中央の機械攪拌機および大気への出口およびアセトン/ドライアイスコンデンサー(これは二酸化硫黄の還流を可能にする。)を備え付けた500cmの反応器中に、周囲の温度(約20℃)でジメチルホルムアミド125.5gを仕込む。
トリフルオロ酢酸カリウム25.5gをDMF中に導入する。
次いで、加圧下で二酸化硫黄のボトルに接続された毛細管を通して、二酸化硫黄6.9gを仕込む。
この混合物を大気圧で140℃で加熱する。
KTFAに対するSOのモル比は、0.64である。
4時間25分後、イオンクロマトグラフィーによる分析は、以下の結果を与える。
トリフルオロ酢酸カリウムの変換の程度: 57.1%
トリフルオロメチルスルフィン酸カリウムの収率: 52.8%
トリフルオロメチルスルフィン酸カリウムの選択率: 92.4%
非常に良好な反応選択率が記録されている。
実施例2
トリフルオロメチルスルフィン酸カリウムの製造
KTFAに対するSOのモル比が0.72であるという相違を除いて、実施例1を繰り返す。
ジメチルホルムアミド116.2gを、実施例1に記載される装置に仕込み、トリフルオロ酢酸カリウム23.8gをDMF中に仕込み、二酸化硫黄7.2gをバブリングしながら加える。
この混合物を大気圧で137℃で加熱する。
5時間後、イオンクロマトグラフィーによる分析は、以下の結果を与える。
トリフルオロ酢酸カリウムの変換の程度: 52%
トリフルオロメチルスルフィン酸カリウムの収率: 47.4%
トリフルオロメチルスルフィン酸カリウムの選択率: 90.4%
非常に良好な反応選択率が記録されている。
実施例3から6
トリフルオロメチルスルフィン酸カリウムの製造
連続式ルートによる一連の実施例を以下に示す。
次の様々な実施例において、ジャケット中を循環する熱交換流体(シリコーン油)によって加熱される円柱形状の反応器を使用する。
反応器は、4つのコンパートメントから構成され、これらのコンパートメントは、これらを分離する壁の脚部に位置する穴によって通じている。
したがって、タンクから流量調節ポンプを通して第1のコンパートメントへ供給される反応液は、第2のコンパートメント中などを通過し、最後のコンパートメントに入ることができる。
反応物は、最後のコンパートメントから溢れることによって出て、重力で容器中に集められる。
各コンパートメントには、垂直シャフトを含む機械的攪拌装置、独立している大気圧吸排装置、温度検出子、およびまた注射器を通して液相を取り出すことを可能にする側面開口部を備え付けられている。
仕事量、すなわち、各コンパートメントの反応物の容量は、約50cmである。
実施例3
1.3cm/分の流速で、次の組成を有する溶液を反応器に仕込む。
ジメチルホルムアミド: 82.1%
トリフルオロ酢酸カリウム: 13.4%
二酸化硫黄: 4.5%
KTFAに対するSOのモル比は0.8である。
4つのコンパートメントを140℃で加熱する。
21時間の稼働時間の後に、定常状態を達成する。
様々なコンパートメントの組成物をイオンクロマトグラフィーで分析する。
各コンパートメントにおいて、KTFAの変換率、トリフルオロメチルスルフィン酸塩の収率およびトリフルオロメチルスルフィン酸塩の選択率は、以下のとおりであることが見出される。
Figure 0005236629
実施例4
0.7cm/分の流速で、次の組成を有する溶液を反応器に仕込む。
ジメチルホルムアミド: 82.1%
トリフルオロ酢酸カリウム: 13.4%
二酸化硫黄: 4.5%
KTFAに対するSOのモル比は0.8である。
4つのコンパートメントを135℃で加熱する。
5時間の稼働時間の後に、定常状態が達成されると考えることができる。
様々なコンパートメントの組成物をイオンクロマトグラフィーで分析する。
各コンパートメントにおいて、KTFAの変換率、トリフルオロメチルスルフィン酸塩の収率およびトリフルオロメチルスルフィン酸塩の選択率は、以下のとおりであることが見出される。
Figure 0005236629
実施例5
1.7cm/分の流速で、次の組成を有する溶液を反応器に仕込む。
ジメチルホルムアミド: 78.5%
トリフルオロ酢酸カリウム: 16.1%
二酸化硫黄: 5.4%
KTFAに対するSOのモル比は0.8である。
4つのコンパートメントを140℃で加熱する。
5時間の稼働時間の後に、定常状態が達成されると考えることができる。
様々なコンパートメントの組成物をイオンクロマトグラフィーで分析する。
第4コンパートメントにおいて、KTFAの変換率およびトリフルオロメチルスルフィン酸塩の収率が、それぞれ29.1%および28.1%であることが見出される。
トリフルオロメチルスルフィン酸カリウムの選択率は、96.4%である。
実施例6
1.7cm/分の流速で、次の組成を有する溶液を反応器に仕込む。
ジメチルホルムアミド: 83.1%
トリフルオロ酢酸カリウム: 13.5%
二酸化硫黄: 3.4%
KTFAに対するSOのモル比は0.6である。
4つのコンパートメントを135℃で加熱する。
5時間の稼働時間の後に、定常状態が達成されると考えることができる。
様々なコンパートメントの組成物をイオンクロマトグラフィーで分析する。
第4コンパートメントにおいて、KTFAの変換率およびトリフルオロメチルスルフィン酸塩の収率が、それぞれ37%および35%であることが見出される。
トリフルオロメチルスルフィン酸カリウムの選択率は、94%である。

Claims (23)

  1. 極性非プロトン性有機溶媒の存在下での、
    (i)有機または無機の陽イオンによって少なくとも部分的に塩化されている、フルオロカルボン酸と、ここで該フルオロカルボン酸は、
    式(Ia):
    X−CF −COOH (Ia)
    [式中、
    Xは、フッ素原子である。]
    のハロフルオロ酢酸
    または
    式(Ib):
    R−G−CF −COOH (Ib)
    [式中、
    Gは、パーフルオロアルキレン基−(CF (ここで、nは1以上である。)を表し、
    Rは、ハロゲン原子である。]
    の酸であり、
    (ii)二酸化黄と
    の反応を含み、フルオロカルボン酸のモル数に対する二酸化硫黄のモル数の比率が1未満であることを特徴とする、フルオロアルカンスルフィン酸若しくはフルオロアルカンスルホン酸、またはこれらの塩の製造方法。
  2. フルオロカルボン酸のモル数に対する二酸化硫黄のモル数の比率が0.99未満であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
  3. フルオロカルボン酸のモル数に対する二酸化硫黄のモル数の比率が、0.4と0.95の間であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
  4. フルオロカルボン酸のモル数に対する二酸化硫黄のモル数の比率が、0.7と0.9の間であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
  5. 記フルオロカルボン酸が、当該式(Ib)[式中、(nは1と10の間である。)]のハロフルオロ酢酸であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
  6. 前記フルオロカルボン酸が、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選択されるアルカリ金属陽イオンまたは第四級アンモニウムもしくは第四級ホスホニウムで塩化されていることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記フルオロカルボン酸が、カリウム塩の形であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
  8. 二酸化硫黄を、ガスの形または溶液で、反応のために選択される極性非プロトン性有機溶媒中において、1と10重量%の間で変化する濃度で使用することを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
  9. 極性非プロトン性有機溶媒が、50以下および5以上の間の比誘電率を有する非プロトン性溶媒であることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
  10. 極性非プロトン性有機溶媒が、10を超えるドナー数を示すことを特徴とする、請求項に記載の方法。
  11. 極性非プロトン性有機溶媒が、20未満のアクセプター数を示すことを特徴とする、請求項または10に記載の方法。
  12. 極性非プロトン性有機溶媒が、20以上である、最初の酸性度に相当するpKaを示すことを特徴とする、請求項から11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 極性非プロトン性有機溶媒が、四置換尿素および一置換ラクタムを含むN−二置換アミド、ならびに環状エーテルから選択されることを特徴とする、請求項から12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 極性非プロトン性有機溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジエチルホルムアミドまたはN,N−ジメチルアセトアミドであることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
  15. 反応媒体中のフルオロカルボン酸以外の成分由来のプロトンの含有量が、フルオロカルボン酸の出発時のモル濃度の20%以下であることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 反応媒体中のフルオロカルボン酸以外の成分由来の水分含有量が、フルオロカルボン酸の出発時のモル濃度の10%未満であることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 2つの価電子状態を含む遷移元素および第VIII族からの元素の含有量が、前記フルオロカルボン酸に対して、1000モルppm未満であることを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
  18. 連続式またはバッチ式で実施されることを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
  19. 塩化された形のフルオロカルボン酸、二酸化黄および極性非プロトン性有機溶媒を接触させ、反応混合物を100℃と200℃の間の温度で加熱することを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
  20. 前記反応が、大気圧下で実施されることを特徴とする、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
  21. 生成した反応混合物が、2つの相、すなわち、少なくとも前記フルオロカルボン酸および二酸化硫黄の一部が前記溶媒中に溶解している液相と、二酸化硫黄および反応中に形成された二酸化炭素ガスを本質的に含む気相とを含むことを特徴とする、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
  22. フルオロカルボン酸の変換の程度が、30から80%となったときに、反応生成物を分離することを特徴とする、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
  23. 次の段階において、前に得られたスルフィン酸の塩を、酸化剤と合わせることによって酸化することを特徴とする、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
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