JP5233792B2 - 増幅回路 - Google Patents
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Description
しかしながら、このような手法によっては、出力信号のレベルは当然落ちてしまうことになるので、スピーカ等から最終的に出力される音が、若干迫力に欠く(あるいは、物足りない音となる)、といった事態を招来するおそれがある。
この際、補正部においては、増幅部の状態(例えば、その電源電圧の状態、等々)に応じて「滑曲線化処理」が行われる。ここで「滑曲線化処理」とは、第3信号を第1信号に変換する際に、所定の滑らかな曲線関係に従ってその変換が行われる処理をいう。すなわち、第3信号をV3、第1信号をV1とした場合、V1は、V1=F(V3)(Fはある所定の曲線を表現する)として与えられるということであり、より詳細に言えば、V3が、V31,V32,…,V3nという数列で与えられたとした場合、これに基づくV1、即ちV11=F(V31), V12=F(V32), … , V1n=F(V3n)が、V3-V1平面の上で所定の曲線を描く、ということである。
すなわち、第1ゲイン補正部10は、レベル検出部12によって検出された、ゲイン補正後の入力信号のレベルL(Vg)と、予め定められた固定値たるVI MAXとに基づいて、入力信号Viに対するゲイン係数Ginを適当な値に設定するが、このゲイン係数Ginは、当該ゲイン係数Ginの入力信号Viへの作用後の信号(即ち、第1変換信号Vg)がVI MAXを超えないような値として設定されるようになっている。つまり、Vgは、Vg=Vi・Ginであるが、この場合、必ず、Vg≦VI MAXが満たされる(言い換えれば、Vgの最大値たるVgMAXは、必ず、VI MAX以下である。)。なお、前記LPF11は、入力信号のレベルL(Vg)とVI MAXとの差分値におけるジャギーノイズを低減する。
本実施形態に関しては特に、この特性補正部20は、図1に示すように、ゲイン係数G1及びG2を用いて、第1変換信号Vg、及び、この第1変換信号Vgに前述したf処理を施した後の信号Vg’のそれぞれに対して、いわば相補的な増減処理をかける。つまり、ある時点において、Vgのレベルが何らの減少処理をも受けない場合(即ち、G2=1)には、Vg’は完全に無視され(即ち、G1=0)、その逆の場合(即ち、G2=0)には、Vg’のレベルは何らの減少処理をも受けない(即ち、G1=1)。また、Vgのレベルが中間的な減少処理を受ける場合(即ち、0<G1<1.0)は、Vg’のレベルも中間的な減少処理を受ける。このような処理のいずれが選ばれるかは、図1に示すように、後述する曲線化開始点VxTyp(本発明にいう「状態変数」の一例に該当する)と固定値たるVSCとの加算値の値に応じる。なお、このようなゲイン係数G1及びG2の定められ方、あるいは、定数VSCの性質等については、後に改めて触れる。
特性補正部20は、以上のような各処理を受けた後の両信号の加算値を、第2変換信号Vx(本発明にいう「第3信号」の一例に該当する)として、滑曲線補正部30へ供給する。
スムース・テーブル31は、第2変換信号Vxのうち一定のレベル以上の第2変換信号Vxについて、滑曲線化処理を行う。ここで「滑曲線化処理」とは、第2変換信号Vxを、第3変換信号Vcに変換する際に、リニアな関係に従ってその変換を行うのではなく、所定の滑らかな曲線関係に従ってその変換を行う処理をいう。言い換えれば、仮に、Vy=a・Vx(aは適当な定数)なる比例関数を考えるとした場合、Vcは、単純にVc=Vyとして与えられるのではなく、Vc=F(Vx)(Fはある所定の曲線を表現する)として与えられる、ということである。
スムース・テーブル31には、このようなFの具体的かたちが予め記憶されている。それは例えば、適当な対数関数、三角関数等で表現されるようなものであり得る。
なお、本実施形態においては、上述のようなF(Vx)なる関係に基づく変換処理が、すべてのレベルの第2変換信号Vxに対して適用されない。Vxが所定のレベルにある場合に限って、当該の変換処理は行われる。この点については後に改めて触れる。
他方、VxTyp設定部32は、上述した滑曲線化処理の適用が開始される“所定のレベル”を確定する作用を果たす。すなわち、VxTyp設定部32は、図1に示すように、後述する増幅部50から原初的に与えられる“VxTyp”と、予め定められた固定値たるVXTHD(本発明にいう「第1定数」の一例に該当する)との間の大小関係に基づいて、VxTypの値を設定、ないしは更新する作用をもつが、この設定後のVxTypなる値と、前記第2変換信号Vxのレベルとの関係の如何に応じて、前記滑曲線化処理によって変換されるべき第2変換信号Vxの範囲が確定される。
第2ゲイン補正部40は、このようなゲイン係数Gcが乗ぜられた第3変換信号Vc、即ち第4変換信号Vd(本発明にいう「第1信号」の一例に該当する)を増幅部50へ供給する。
なお、上述した、滑曲線補正部30及び第2ゲイン補正部40は、これらが一体として、本発明にいう「補正部」の一例に該当する。
また、増幅部50は、図1に示すように、GxTyp増減処理部52を含む。このGxTyp増減処理部52は更に、GxTyp設定部53及びリニア変換部54を含む。
例えば、これらの制御信号LMT、OCP、OTPのいずれもが、仮に1(アクティブ)又は0(ノン・アクティブ)の2値でもって増幅器51の状態を表現するとするなら、それら制御信号LMT、OCP、OTPのいずれかがアクティブとなる瞬間は、当該増幅器51が一種の限界的状況に至ったことの表出とみることができる。
なお、この増幅器51の限界的状況という事態は、本実施形態に関する限り、前記スピーカが発する音の質を好適に維持するための、あるいは、スピーカの安定的動作が確保される領域を超えないための、当該スピーカについての限界的状況、というように言い換えることもできる。この点に鑑みるなら、増幅器51の限界的状況とは、そのような状況に至った後以降、スピーカに、あるいは当該増幅器51に、過大な入力が行われるべきでない状態を意味することになる。
以上により、当該GxTypは、前述した、VxTypを定める一基準となり、またしたがって、ゲイン係数Gc、G1、及びG2を定める一基準ともなる(図1参照)。
なお、以上に述べたような、制御信号LMT、OCP、OTPの入力に応じたGxTypの設定、が行われる最も簡単な例の1つとしては、例えば、制御信号LMTの入力を一単位受けたら、GxTypを一単位減らす、などがある。
本実施形態に係る増幅回路1の動作の要点は、増幅器51が一種の限界的状況にあるときに、当該増幅器51内で扱われる信号のレベルを、一定の方法で制約することにある。したがって、以下の説明は、この順番、即ち第1に、増幅器51について、第2に、前記レベルを一定で制約する方法について、という順番に従って行う。
そして、そのような限界的状況が肯定される場合は、GxTyp設定部53は、当該増幅器51が最終的に出力するスピーカ駆動信号Voの最大値(即ち、VoMAX)の値が下がるように、GxTypの値の増減を行う。例えば、既に述べたように、制御信号LMTの入力を一単位受けたら、GxTypを一単位減らす、などというようである。
いずれにせよ、本発明は、基本的に、GxTypの設定に関するどのような手法をも、本発明の範囲内に収める。
このように、VxTypは、GyTypに基づいて定められるため、増幅器51の状態が時々刻々と変化していくのに連れて、VxTypもまた、それに伴って変化していく。そして、このようなVxTypは、図1に示すように、滑曲線補正部30及び第2ゲイン補正部40へと供給される。
以下、滑曲線補正部30及び第2ゲイン補正部40における曲線化開始点VxTypの利用に関し、〔I〕及び〔II〕に分別して説明する。
(i) 注意すべき点の第1は、前述のように、VxTypが増幅器51の現実の状況に応じて変動することである。図2(A)及び(B)の区分けは、そのVxTypの変動の様子を反映しており、図2(A)は、よりVxTypが大きい場合、図2(B)は、より小さい場合の例示である。
図1のVxTyp設定部32は、いま述べた処理を実現するように、VxTypの値を設定する。すなわち、このVxTyp設定部32によれば、VxTyp≧VXTHDが成立するときは、そのVxTypがそのまま、滑曲線化処理の開始点を決定し(図中、「VxTyp=VxTyp」なる記載参照)、VxTyp<VXTHDが成立するときは、VxTypにはVXTHDが代入される(図中、「VxTyp=VXTHD」なる記載参照)。
このFは、「Vxが許容最大値をとるとき(この点、すぐ後に再述)、最終的な出力であるスピーカ駆動信号Voが所定の歪率以内の歪率をもつように設定される」。例えば仮に、ここでいう所定の歪率が10〔%〕とされるなら、Fのかたちは、Voが最大でも10〔%〕の歪率しかもたないように、決定されるのである。
また、Fは、一般的にいえば、既述のように対数関数、三角関数等で表現されるようなものであり得るが、仮にそのような概括的な規定が可能であっても、その種類は複数あってよい。すなわち、Fが、その全体としては「対数関数」であるという性質付けを許容する場合でも、このFには、例えば相互に各種係数等の値に相違がある、F1,F2,…,Fnが含まれていてよい。
さらに、Fは、単調増加する関数を表現し、Vxの増加につれてVcが漸増していくようなものであって、当該の曲線が上に凸であるようなものとして定められることが好ましい(図2参照)。
この場合、VxTypがある一定の値をとっている間は、VxTyp+VSCもまた一定の値をとることになるから、滑曲線化処理が行われる範囲の上限値であるVxMAXは一定の値として定められ得ることになる。そして、このVxMAXは、前記にいう、Vxに係る「許容最大値」である。つまり、前記のFのかたちの定め方に関する規定を言い換えれば、Fは、「“Vx=VxMAX”なるときに、スピーカ駆動信号Voが所定の歪率以下の歪率をもつように設定される」、ということになる。
ここで更に、Vxは、通常一定の周期性をもつ信号であることが想定されるから、その場合には、上記のFの規定に言う「“Vx=VxMAX”なるとき」とは更に、「Vxが正弦波信号である場合の最大振幅VxMAXを当該Vxがとるとき」とも読み替えられ得る。
他方、VxTypが曲線化処理限界VXTHDに等しくなるとき、滑曲線補正部30が送り出す前記VcMAXの値は、その最小値であるVCTHDとなる。つまり、滑曲線補正部30は、入力最大値VxMAXの入力を受けたとき、それに応じた出力最大値VcMAXを出力するが、そのVcMAXは、いかに小さくなろうともVCTHDは下らない、ということである。
結局、滑曲線補正部30は、以上のような意味において、必ず、ある一定のパワーを保持したままの第3変換信号Vcを、後段の第2ゲイン補正部40へと供給するようになっているのである。
そして、Gc設定部42は、Gc=(VxTyp/VXTHD)>1ならば、その(VxTyp/VXTHD)なる値の如何に関係なく、Gc=1.0と設定する。この、(VxTyp/VXTHD)>1が成立するときとは、即ちVxTyp>VXTHDが成立するときであるから、前述の〔I〕においては、VxTypが滑曲線化処理の開始点として機能し得る場合である。また、この場合は即ち、VxTypがさほど小さな値とはなっておらず、増幅器51、あるいはスピーカの動作範囲に未だ余裕がある場合でもある。
Gc=1.0と設定されるのは、そのような事情に裏付けられており、前述したVc=F(Vx)をそのまま維持して、第4変換信号Vdを、Vd=Gc・Vc=Vc=F(Vx)、要するにVd=F(Vx)として求めようとすることに、その理由がある。そして、このようなVdに係る変換は、前述したパワーの保持をなお継続することを意味する。
1よりも小さなGc=(VxTyp/VXTHD)が維持されるのは、そのような事情に裏付けられており、第4変換信号Vdの値を小さくしようとする意図に出ている(Gc<1で、Vd=Gc・Vc(=Gc・Vx)だから、Vd<Vc(あるいはVd<Vx))。そして、このような直接的なVdの減少は、増幅器51通過後のスピーカ駆動信号Voのクリップを生じさせない結果を生む。
この際、既に述べたように、第1変換信号Vgに対してはf処理が行われる。ここでは特に、このf処理として、第1変換信号Vgのうち低周波域にある信号のレベルをブーストする処理を例に挙げて説明する。このブースト処理によると、例えば図3(A)の符号A1に示す、低周波信号を含む第1変換信号Vgの一部は、符号A2に示すように、その部分に係るレベルが上昇させられる。これにより、スピーカは、聴感上より適切に駆動されることになる。
ただし、この場合、そのようなブースト処理は、当該増幅器51に過大な入力を与える結果を招く(したがって、最終的なスピーカ駆動信号Voを大きく歪ませる)原因となる可能性が大きくなる(図3(A)の符号A3参照)。
この場合は、VxMAXが比較的小さく、増幅器51、あるいはスピーカの好適な動作範囲の観点からみて、未だ余裕があるとみなせる場合であるから、ブースト処理が行われた信号が増幅器51に入力することになったとしても、特に問題は生じない。したがって、ここでは、第1変換信号Vg用のゲイン係数G2は“0”に、第1変換信号Vgに前記ブースト処理をかけた信号Vg’用のゲイン係数G1は“1”になるように調整される。第2変換信号Vxは、これらVg及びVg’の加算値として得られるので(図1参照)、結局、Vxは、Vx=Vg’として出力されることになる(図3(B)の符号B3、及び、図3(C)参照)。
この場合は、VxMAXが比較的大きく、増幅器51、あるいはスピーカの好適な動作範囲の観点からみて、殆ど余裕がない(あるいは、全くない)とみなせる場合であるから、ブースト処理が行われた信号Vg’が、そのまま増幅器51に入力することになった場合、問題が生じ得る。したがって、ここでは、ゲイン係数G2は“1”に、ゲイン係数G1は“0”になるように調整される。これにより、第2変換信号Vxは、結局、Vx=Vgとして出力されることになる。
この様子は、図3(B)に例示されており、同図の符号B1に示す第1変換信号Vgは、低周波信号を含むものの、その部分に係るレベルは、同図の符号B2に示すように上昇させられない(図3(A)の符号A2が示す波形と対比参照)。
要するに、この場合、ブースト処理がいわば無視されるようなかたちになるのである。
この場合は、VxMAXが中間的な値をとり、増幅器51、あるいはスピーカの好適な動作範囲の観点からみて、十分ではないが、それでも未だ一定の余裕があるとみなせる場合であるから、ブースト処理が行われた信号Vg’が、増幅器51に一定程度入力することが許容される。したがって、ここでは、ゲイン係数G2及びG1のいずれもが、0から1までの間の適当な値となるように調整される。これにより、第2変換信号Vxは、結局、Vx=G1・Vg’+G2・Vgとして出力されることになる。
なお、この場合、G1及びG2の関係は、図1中のゲイン係数調整部21の四角形内に示されているように、一方が増大すれば、他方が減少するという関係にあるのが好ましい。
このようなG1及びG2の増大・減少関係を具体的に定めるに当たっては、スピーカから発せられる音の迫力等、聴感上の効果が勘案されて好適である。本実施形態の例は、かかる観点からみて好適な一例を提供するが、それ以外にも、例えばG1・G2が、図1に示すのとは異なって“非線形的”に増大し、あるいは、減少する、などという場合も想定されないではない。本発明は、基本的に、どのような場合も本発明の範囲内に収める。
いずれにせよ、本実施形態においては、VxMAXとVI MAXとの大小関係に応じ、その時々の場合に応じた、ブースト処理に係る具体的な処理内容が定立されることに本質があるのであり、そのような場合における前述した境界が、若干流動的な性質をもつことになるとしても、それが特別問題になるというわけではない。
この場合、既に述べたように、必ずGin・Vi=Vg≦VI MAXが成立する。このVI MAXは、本実施形態に係る増幅回路1において処理可能な信号の最大レベルを意味する。VI MAXが、このような意義を持つことから、入力信号Viが、第1変換信号Vgとなった後、また、このVgが更なる処理を受けて第2,第3,…変換信号Vx,Vc,…となっても、これらの第2,第3,…変換信号Vx,Vc,…は、VI MAXの制約を逃れることはない。また、VxMAXもまた、VI MAXを超えない(図2参照)。
このような、VI MAXの制約が設けられることによって、増幅回路1の安定的動作が確保される。
すなわち、図4においては、まず、入力信号Viが、第1ゲイン補正部10によって、第1変換信号Vg(≦VI MAX)に変換される(図4のステップS101)。
次いで、第1変換信号Vgに基づき、第2変換信号Vxを生成する処理が行われるが(図4のステップS200)、この場合、増幅器51の現状態に応じたVxTypに基づいて、3種の処理が行われる。3種の処理とは即ち、第1に、VxMAX(=VxTyp+VSC)が小であるとき、f処理後のVg’が、そのままVxとして生成される処理(図4のステップS201)、第2に、VxMAXが大であるとき、f処理を受けないVgが、そのままVxとして生成される処理(図4のステップS200内、右端参照)、第3に、VxMAXが中間であるとき、f処理後のVg’と、該処理を受けないVgとが調合された信号が、Vxとして生成される処理(図4のステップS202)、である。なお、VxMAXが、小、及び、大であるときとは、上述においては、それぞれ、「VxMAXがVI MAXに比べて十分小さい場合」、及び、「VxMAXがVI MAXに相当程度近接する場合」、として説明した。
次いで、このようにして生成された第2変換信号Vxに基づき、第4変換信号Vdを生成する処理が行われるが(図4のステップS400参照)、この場合も、前記VxTypの値の相違に応じた処理が行われる。すなわち、VxTyp≧VXTHDが成立するときには、滑曲線化処理が行われ(図4のステップS301;YESから、ステップ401)、VxTyp<VXTHDが成立するときには、ゲイン係数Gcの減少処理が行われる(図4のステップS301;NOから、ステップ402)、というようである。なお、前者は、主に滑曲線補正部30の作用により、後者は、主に第2ゲイン補正部40の作用により、実現されることは、上に述べたとおりである。
(1) まず、本実施形態の増幅回路1によれば、前述した〔I〕〔II〕における説明からわかるように、限界的状況にある増幅器51に対して、過大な入力が供給されることが回避されると同時に、スピーカ駆動信号Voのパワーが、可能な限り維持されるようになっている(=大きく犠牲とされるようなことがない。)。これは、主に、滑曲線補正部30、あるいは図4のステップS401として示す滑曲線化処理の存在による。
図5は、スピーカ駆動信号Voがとりうる種々の波形と、それに応じた歪率及びパワーとの関係を概念的に表す。図5(A)は、Voが理想的な正弦波信号である場合であり、図5(B)は、完全な矩形波信号である場合であり、図5(C)はこれらの中間的な波形をとる信号である場合である。
これらのうち、図5(A)の場合には歪率は0〔%〕であり、図5(B)の場合には歪率は100〔%〕である。また、これらのパワーは、図示するように、それぞれ、(1/2)(Vdd2/R)及び(Vdd2/R)となる。ここで、Vddは増幅器51の電源電圧、Rは負荷抵抗である。
すなわち、本実施形態では、前述した、滑曲線化処理等に関する説明から明らかなように、増幅器51が限界的状況にあるというだけの理由で、直ちに、ゲインを下げることはしない。例えば図2中のVCTHDの表示が端的に示唆するように、Vc(あるいは、Vd、Vo)の出力は、一定のパワーが維持されたままで行われるのである。
もっとも、この場合、Voが、一定程度の歪を含むことは予定されることにはなる。しかし、人間の聴覚能力等との関係から考えれば歪の存在が全く許容されないというわけでもないし、そもそも、図5(A)のような「理想的な正弦波」を実現することは、極めて厳密な観点から言えば、技術的に不可能であるともいえるので、歪に関し、あまりにも厳格な考え方をとることは有益ではない。
このようなことからすれば、むしろ、そのような許容しうる歪率の設定を好適に行い、かつ、それを破らない程度において可能な限りパワーを維持・確保することを考える方がより有利であるということができる。
ここまでの説明から既に明らかなように、本実施形態は、かかる観点からみて極めて優位に立つ。というのも、本実施形態においては、主に、滑曲線化処理が施されることによって、Vcが、いわばモデラートに増大するようになっているからである。これにより、増幅器51に過大な入力がもたらされるということもないし、また、一定程度の歪は予定されるもののパワーが大きく損なわれるということもないのである。
これにより、本実施形態においては、すべてのレベルのVxについて滑曲線化処理を施す場合などと比べると、その処理の簡易化・迅速化が達成され得る。また、本実施形態では特に、Vxの値が一定程度の小ささをもつ場合(即ち、Vx<VxTypが成立する場合)には、Vcは、Vxのレベルをそのまま反映する(即ち、Vc=Vx)のだから、スピーカ駆動信号Voの出力レベルを維持するという観点からは勿論、無用な変換処理を回避する、あるいは元の信号がもっていた情報をそのまま生かすという観点からも好ましい、ということができる。
このようにして、本実施形態によれば、増幅器51に過大な入力が供給されるという事態が、上述した(1)の場合(即ち、VxTyp≧VXTHDの場合)とも相まって、極めて実効的に防止される。なお、この(2)の効果は、主に、第2ゲイン補正部40、あるいは図4のステップS402として示すゲイン減少処理の存在による。
すなわち、本実施形態によれば、VxMAXとVI MAXとの大小関係に応じて、f処理を受けた信号Vg’のみが第2変換信号Vxとして生成されるか、あるいは、f処理を受けない信号のみがVxとして生成されるかが定められることによって、パワーの維持を図るべき場合と、クリップ防止をすべき場合との好適な使い分けが行われる。
このようなことから、本実施形態によれば要するに、f処理を施すことによって得られる効果と、クリップ現象を回避するという効果の2つの効果をバランスよく享受することが可能となるのである。
しかも、この場合、本実施形態においては、G1の増大(又は減少)に対して、G2が減少(又は増大)するという、両者間の関係が定められていることにより、上述のようにスピーカから発せられる音の迫力等、聴感上の効果も好適に確保される。
上述の実施形態では、前記〔A〕において、あるいは図4を参照して述べた、3つの場合、即ちVxMAXが小、大、及び両者の中間の場合の3つの場合それぞれを分ける境界に関し、本発明は、以下に述べるような態様をとることができる。
このような場合は、〔A〕の処理(=f処理、あるいは第2変換信号Vxの生成処理(図4参照))と、前述した〔I〕〔II〕の処理(=それぞれ、滑曲線化処理及びゲイン減少処理(図4参照))とは、ともにVxTypを利用するという共通性をもつということができる。
すなわち、この図6では、まず、第2変換信号Vxの生成処理の中において、Vg<VXTHDが成立する場合は、Vx=Vg’とされ(図6のステップS199;YESから、ステップS201)、VXTHD≦Vg(≦VI MAX)が成立する場合は、Vx=G1・Vg’+G2・Vgとされる(図6のステップS199;NOから、ステップS202)。すなわち、この場合は、図4とは異なって、Vgの値がそのままVxとして出力されるという処理は行われない(言い換えると、この場合のVxは、必ず、ブースト処理等を含むf処理を受けた成分を含む。)。図4を基準としていえば、「VxMAX大」及び「VxMAX中間」の2つの場合がともに、「VxMAX中間」に相当するものとして、Vx=G1・Vg’+G2・Vgなる処理が、図6においては行われるのである。
これに続く、第4変換信号Vdの生成処理は、上述の実施形態と同様である。すなわち、VxTyp≧VXTHDが成立する場合は、滑曲線化処理(図6のステップS401)が行われ、VxTyp<VXTHDが成立する場合は、ゲイン減少処理(図6のステップS402)が行われる。
このように、上記の2つの処理は、VXTHDを軸として、関連付けられ、かつ、規定されるようになっているのである。
まず、Vg<VXTHDが成立する場合は、そのVx=Vg’の値の大きさ如何によって、当該Vx(=Vg’)が滑曲線化処理を受けるか否かが変わる。すなわち、前記ブースト処理等を含むf処理を受けてもなお、そのVx(=Vg’)が、Vx<VxTypを満たすのであれば、当該Vxはリニアな関係に従って、Vcに変換され、Vx≧VxTypを満たすのであれば、当該Vxは滑曲線化処理を受けてVcに変換される(図2参照)。
このような処理は、Vg≧VXTHDが成立する場合でも同様に行われる。すなわち、この場合は、当該Vx(=G1・Vg’+G2・Vg)とVxTypとの大小関係に応じた、Vcへの変換が行われることになる。
このようにして、本形態では、聴感上、より好ましい音質を実現する可能性が高まる。
Vi……入力信号、Vg……第1変換信号、Vg’……特性補正処理を受けた信号、Vx……第2変換信号、Vc……第3変換信号、Vd……第4変換信号、Vo……スピーカ駆動信号、VxTyp……曲線化開始点、VXTHD……曲線化処理限界、VSC……曲線化範囲、Gc,G1,G2,Gin……ゲイン係数
Claims (5)
- 第1信号を増幅して第2信号を生成する増幅部と、
当該増幅部の状態に応じて変動する状態変数に基づいて、その入力信号である第3信号の全部又は一部に対し滑曲線化処理を施して前記第1信号を生成する補正部と、
を備え、
前記滑曲線化処理は、
前記第3信号が一単位増加するのに対して、前記第1信号を前記一単位以下で増加させることによって、当該第3信号を曲線化する処理を含み、
前記補正部は、
前記第3信号のうち前記状態変数よりも大きい値をとる部分に限り、前記滑曲線化処理を施して、前記第1信号を生成する、
ことを特徴とする増幅回路。 - 前記滑曲線化処理は、
前記第3信号が最大値をとるとき、
当該第3信号に対し当該滑曲線化処理を施した結果得られる前記第2信号のもつ歪率が所定値以下となるように、
行われる、
ことを特徴とする請求項1に記載の増幅回路。 - 前記補正部は、
前記状態変数が所定の第1定数以下となる場合において、
前記滑曲線化処理を実施せず、前記第3信号に1以下のゲイン係数を乗じることによって前記第1信号を生成する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の増幅回路。 - 前記第1定数は、
前記第3信号が最大値をとるとき、
当該第3信号に対し当該第1定数を開始点とする前記滑曲線化処理を施した結果得られる前記第2信号のもつ歪率が所定値以下となるように、
定められる、
ことを特徴とする請求項3に記載の増幅回路。 - 前記状態変数に基づいて、その入力信号である第4信号の全部又は一部に対し周波数特性処理を施し又は施さないで、前記第3信号を生成する特性補正部を更に備え、
当該特性補正部は、
前記第1定数に比べて、前記第4信号のうちの大きい部分と小さい部分とに応じて、
前記周波数特性処理の態様を変更する
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の増幅回路。
Priority Applications (2)
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Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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Publications (2)
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