JP5370182B2 - 音声処理装置および音声処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、音声信号を増幅可能な音声処理装置および音声処理方法に関する。
パーソナルコンピュータ等の電子機器にスピーカが内蔵されていない場合や、小さなスピーカしか内蔵されていない場合、別体の音声処理装置を接続して音声を出力することがある。かかる音声処理装置としては、商用電源から電力を受電するタイプもあるが、USB(Universal Serial Bus)等の外部接続端子を通じて受電することもできる。かかる構成では、USBを通じて、出力したい音声信号と電源とを並行して取得することが可能なので、例えば1本の接続線をUSBポートに挿入するだけといった容易な作業のみで、商用電源の受電が物理的に困難な状況であっても、音声を聴くことが可能となる。
しかし、USB等の外部接続端子では、音声処理装置に供給可能な電力が例えば5V×500mA=2.5Wに制限されているので、音声処理装置として、1Wの出力電力を有するスピーカを2ch分設ける程度の対応しかできず、最終的な音量が不十分な場合もあった。
一方、電力の有効利用に関して、電力が有限である電池の電圧を監視し、電圧の低下に伴い電子ボリュームを制御して電池の消耗を抑制し、電池の寿命を延命する技術(例えば、特許文献1)は存在する。しかしながら、電力供給能力が比較的小さいながら、接続している限り電力を供給することができるUSB等から電力供給を受ける機器に、同様の構成をそのまま適応することはできなかった。
特開平5−007118号公報
そこで、音声処理装置内にUSB等を通じた電源の電気エネルギーを蓄積する蓄積素子を設け、音声信号が小さいときには電気エネルギーを蓄積素子に蓄積し、音声信号が大きいときにその蓄積された電気エネルギーを放出することで、2.5W以上の出力を実現することが実用化されている。
しかし、このような蓄積素子を設けた音声処理装置では、最終的に出力される音量が蓄積素子に蓄積された電気エネルギー量に依存するため、大きな音声信号が連続すると、電気エネルギーが消耗され音量が急激に減衰してしまう。ユーザは、その音量の急激な減衰に違和感を覚えるだけでなく、小さくなってしまった音量が聴き取りにくくなるといった問題が生じていた。
本発明は、このような課題に鑑み、音量の変動を抑え音声信号の再現性を高めることで音質の向上を図ることが可能な、音声処理装置および音声処理方法を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明の音声処理装置は、電気エネルギーを蓄積する蓄積素子と、蓄積素子に蓄積された電気エネルギー量に応じた信号である検出信号を平滑化することで遅延させて制御信号を生成する遅延部と、制御信号と、音声処理装置に入力された音声信号とを乗算する乗算部と、蓄積素子に蓄積された電気エネルギーを受電して、乗算部によって制御信号と乗算された音声信号を増幅する増幅器と、を備える。
ここで、遅延部は、低域通過フィルタを有して構成されてもよい。また、検出信号の値が時間経過とともに増大するときの遅延部における遅延量は、検出信号の値が時間経過とともに減少するときの遅延部における遅延量より少なくてもよい。
検出信号が所定の閾値以上であるときに、検出信号または制御信号のレベルが略一定の値になるように制限する制限部をさらに備えてもよい。
上記課題を解決するために、本発明の音声処理方法は、電気エネルギーを蓄積する蓄積ステップと、蓄積された電気エネルギー量に応じた信号である検出信号を平滑化することで遅延させて制御信号を生成する生成ステップと、制御信号と、入力された音声信号とを乗算する乗算ステップと、蓄積された電気エネルギーを受電して、乗算ステップにおいて制御信号と乗算された音声信号を増幅する増幅ステップと、を有する。
本発明によれば、音量の変動を抑え音声信号の再現性を高めることで音質の向上を図ることが可能となり、変動の少ない比較的大きな音量で違和感のない音声を楽しむことができる。
音声処理システムの概略的な接続関係を示した説明図である。 音声処理装置の概略的な構成を説明するための機能ブロック図である。 蓄積素子を用いた回路による基本動作を説明するための説明図である。 遅延部を通じた制御信号によって音声信号を制限する場合の動作を説明するための説明図である。 遅延部の平滑化動作を説明するための説明図である。 制限部の動作を説明するための説明図である。 遅延部と制限部とをハードウェアで構成した場合の回路例を示した回路図である。 遅延部と制限部とをソフトウェアで構成した場合の回路例を示した回路図である。 音声処理方法の具体的な流れを示したフローチャートである。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
(音声処理システム100)
図1は、音声処理システム100の概略的な接続関係を示した説明図である。音声処理システム100は、電子機器110と、音声処理装置120とを含んで構成され、音声信号を処理する。ここで音声信号の「音声」は、人声や音楽等、聴覚で知覚可能なあらゆる音を含む概念である。
電子機器110としては、パーソナルコンピュータ、AV機器、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、カーナビゲーション、ポータブルテレビ、ゲーム機器、リモートコントローラ等、USB等の外部接続端子から音声信号を出力する機能を有する様々な機器を適用することができる。また、電子機器110は、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disk)、BD(Blu-ray Disc)、USBメモリ等の記憶媒体112から、または、放送局114からの放送電波を受信して、もしくは、サーバ装置116からインターネット、LAN(Local Area Network)、専用回線等の通信網118を通じて、音声信号の元となる音声データを受信し、リアルタイムに音声信号を出力するため、その音声データを記憶することができる。
音声処理装置120は、電子機器110に設けられたUSB等の外部接続端子に接続され、電子機器110から出力された音声信号を再生する。また、音声処理装置120は、音声信号同様、外部接続端子を通じて電力も受電する。したがって、ユーザは、1本の接続線を外部接続端子に挿入するだけといった容易な作業のみで、商用電源の受電が困難な状況であっても、電子機器110から出力された音声を聴くことができる。
しかし、外部接続端子としての例えばUSBでは、供給可能な電力が制限されているので、外部接続端子から供給される電力に基づいて単純に音声信号を増幅しただけでは、十分な音量を得ることができない場合がある。本実施形態の音声処理装置120では、USB等の外部接続端子を通じた電気エネルギーを蓄積して大きな音量で音声信号を出力すると共に、その音量の変動を抑え、滑らかに推移させて音声信号の再現性を高め、音質の向上を図ることを目的としている。以下、音声処理装置120の具体的な構成を詳述する。なお、USB端子を例に説明するが、電力供給可能な端子であればよく、USB端子に限定されるわけではない。また、無線で電力を供給可能な機器から電力の供給を受けてその電力を蓄積素子152に蓄積する構成にしてもよい。
(音声処理装置120)
図2は、音声処理装置120の概略的な構成を説明するための機能ブロック図である。図2に示すように、音声処理装置120は、乗算部150と、蓄積素子152と、増幅器154と、スピーカ156と、遅延部158と、制限部160とを含んで構成される。
乗算部150は、電子機器110から外部接続端子を通じて当該音声処理装置120に入力された音声信号と、後述する制御信号とを乗算する。かかる乗算部150は、ハードウェアで構成することもソフトウェアで構成することもでき、ハードウェアで構成する場合には、その前段にDAC(Digital to Analog Converter)を、ソフトウェアで構成する場合にはその後段にDACを設ければよい。
蓄積素子152には、電界コンデンサや電気二重層コンデンサ等の比較的容量が大きいコンデンサを用いることができる。蓄積素子152は、電子機器110から外部接続端子を通じて受電された電気エネルギーを一時的に蓄積する。このとき、蓄積素子152には、外部接続端子の電源電圧(例えば5V)を昇圧した電圧(例えば25V)が印加される。蓄積素子152は、音声信号が小さいとき、すなわち、後述する増幅器154での消費エネルギーが小さいとき、電子機器110から供給される電気エネルギーを蓄積し、音声信号が大きいときにその蓄積された電気エネルギーを増幅器154に放出する。こうして、増幅器154では、外部接続端子で制限されている以上の電力で音声信号を増幅することが可能となる。
増幅器154は、蓄積素子を電源として、蓄積素子152に蓄積された電気エネルギー(例えば、最大電圧25V)を受電し、乗算部150によって制御信号が乗算された音声信号を増幅する。こうして、単に外部接続端子から電力の供給を受ける場合(5V×500mA=2.5W)と比較して、例えば、10倍(25W)の出力が可能となる。
スピーカ156は、ダイナミックスピーカ、コンデンサスピーカ、骨伝導スピーカ、ヘッドホン等で構成され、増幅器154から出力された音声信号を物理的な振動に変換し、音声を出力する。ここで音声の強さを示す音圧は、スピーカ156のインピーダンスRzに印加される電圧Vに応じて変化する(V /Rz)。以下、図3を用いて、音声信号がスピーカ156から出力されるまでの基本動作を説明する。
図3は、蓄積素子152を用いた回路による基本動作を説明するための説明図である。図3や以下に示す図4〜6では、横軸が時間、縦軸が電圧となっており、その最大値をmaxで示している。また、回路図における各点の波形は、同一のアルファベットを付して対応付けている。ここでは、仮に、後述する遅延部158や制限部160を機能させず、乗算部150へ入力される制御信号を100%に固定している。したがって、乗算部150から出力された音声信号(図3(b))は、乗算部150に入力された音声信号(図3(a))と等しくなる。
図3(c)に示す蓄積素子152に蓄積された電気エネルギー量に相当する電圧は、増幅器154が消費する電気エネルギーに応じて変動し、乗算部150から入力された音声信号(図3(b))が大きなところでは減衰し、小さなところでは充電により増大する。そして、増幅器154は、その変動した蓄積素子152の電気エネルギーを受電し、乗算部150から入力された音声信号(図3(b))に応じた音声信号を出力する。したがって、増幅器154で増幅された音声信号は、図3(d)の如く、点線で示した、入力時の音声信号に基づいて本来出力しなければならないレベルと比較して差分が生じることとなる。
このような蓄積素子152を用いた回路では、入力時の音声信号が一定であっても増幅器154から出力される音声信号が蓄積素子152に蓄積された電気エネルギー量に依存するため、外部出力端子の定格を越えた大きな音声信号の入力が連続すると、電気エネルギーの消耗分だけ音量も急激に減衰する。そこで、蓄積素子152に蓄積された電気エネルギー量に応じた信号である検出信号を乗算部150に制御信号としてフィードバックし、音声信号を制限する。また、音声信号の変動幅を小さくするため、乗算部150に入力する制御信号として、検出信号を以下の遅延部158によって遅延させた信号を用いる。なお、検出信号は、蓄積素子152の電圧、または、蓄積素子152の電圧に応じた電圧である。
遅延部158は、蓄積素子152に蓄積された電気エネルギー量に応じた信号である検出信号を遅延させて制御信号を生成する。かかる遅延部158による遅延量は、例えば200msecといった具合に予め設定することもできるが、音声信号に応じて最適な出力が得られるように、随時設定しなおすこともできる。
図4は、遅延部158を通じた制御信号によって音声信号を制限する場合の動作を説明するための説明図である。蓄積素子152の電圧が最大(max)となっている状態で、図4(a)のような音声信号が乗算部150に入力されると、図3同様、図4(c)に示すように、増幅器154が消費する電気エネルギーに応じて蓄積素子152の電圧が変動する。
遅延部158は、蓄積素子152に蓄積された電気エネルギー量に相当する電圧を検出信号として取得し、図4(e)の如く遅延させて制御信号を生成する。乗算部150に入力された図4(a)の音声信号は、かかる図4(e)に示した制御信号が乗算され、図4(b)のように推移する。増幅器154は、図4(c)に示した蓄積素子152の電気エネルギー(電圧)を電源として受電し、乗算部150から入力された音声信号(図4(b))に基づいて図4(d)のような音声信号を出力する。
このとき、図4(d)と、図3(d)とを比較すると、入力された一定の音声信号に対する増幅器154から出力された音声信号の変動幅hが小さくなっていることが理解できる。これは、検出信号における増大と減衰との切り替わり点が、遅延部158によって後退し、一定の音声信号に対する増幅器154から出力された音声信号が凸形状や凹形状になったことに起因している。
このように検出信号を遅延させた制御信号を用いて音声信号のゲイン制御を行うことで、音量の変動量を抑制し、急激な信号の増大や低下を防止して、音声信号の再現性を高めることができる。こうして音質の向上を図ることが可能となる。また、図3(d)に示したように音声信号が急激に大きくなった後、反転して急激に小さくなる場合に比べ、図4(d)では、音声信号が滑らかに推移するので、ユーザは、違和感のない音声を楽しむことができる。
また、遅延部158は、検出信号を遅延するのみならず、さらに検出信号を平滑化してもよい。かかる平滑化は、例えば、1または複数次の低域通過フィルタ(LPF)によって実現できる。この場合、遅延部158の遅延量は低域通過フィルタの時定数を用いて表すことができる。
図5は、遅延部158の平滑化動作を説明するための説明図である。例えば、図5(a)のような音声信号が乗算部150に入力され、蓄積素子152の電圧が図5(c)のように変化したとする(「遅延のみ」「遅延と平滑化」共通)。遅延部158が「遅延のみ」実行する場合と、「遅延と平滑化」を実行する場合では、遅延後の制御信号が図5(e)のように異なることとなる。
したがって、増幅器154から出力される音声信号(図5(d))も「遅延のみ」実行する場合と、「遅延と平滑化」を実行する場合とで異なることとなり、「遅延のみ」に比べて「遅延と平滑化」の方が音声信号の変動幅hがさらに小さくなることが理解できる。これは、検出信号を平滑化することによって、検出信号における増大と減衰との切り替わり点が滑らかに推移することで、切り替わり点が丸まり、制御信号の最大値が低下したことを理由としている。
以上のように、検出信号を遅延および平滑化させ、乗算部150を通じて音声信号を制限することで、増幅器154から出力される音声信号の変動を抑えることができる。
ところで、上述した実施形態では、検出信号に応じて忠実に、入力された音声信号を制限しているが、蓄積素子152に十分に電気エネルギーが蓄積されている場合においてまで入力された音声信号を制限すると、不要な音声信号の変動を誘発するおそれがある。そこで、以下の制限部160によって、電気エネルギーが十分に蓄積されているときの動作を他のときと異ならせる。
制限部160は、蓄積素子152に蓄積された電気エネルギー量に応じた信号である検出信号を、所定の閾値以下に制限して遅延部158に送信する。
図6は、制限部160の動作を説明するための説明図である。図6(a)のような音声信号が乗算部150に入力されると、図5同様、増幅器154が消費する電気エネルギーに応じて蓄積素子152の電圧(図6(c))も変動する。
制限部160は、蓄積素子152の電圧を検出信号として取得し、検出信号が所定の閾値以上であるときに、図6(f)の如く検出信号のレベルが略一定の値になるように、所定の閾値(Limit)以下に抑える。遅延部158は、所定の閾値以下に制限された検出信号を遅延させ、図6(e)に示すように、所定の閾値に相当する電圧を100%とする制御信号を生成する。なお、所定の閾値は、例えば、蓄積素子152に蓄えられる最大電圧の80%に相当する電圧である。これにより、蓄積素子152に蓄積可能な最大電圧の80%以上の電圧が蓄えられている場合、制御信号は変動しない。
乗算部150に入力された図6(a)の音声信号は、かかる図6(e)に示した制御信号と乗算され、図6(b)のように推移する。増幅器154は、図6(c)に示した蓄積素子152の電気エネルギー(電圧)を受電し、乗算部150から入力された音声信号(図6(b))に基づいて図6(d)のような音声信号を出力する。
また、上記の実施形態では、制限部160を遅延部158の前段に設けているが、制限部160を遅延部158の後段に設けることもできる。制限部160を遅延部158の前段に設けても後段に設けても、制御信号は同様に推移するが、遅延部158が平滑化もサポートしている場合、検出信号または制御信号が所定の閾値に至った点または所定の閾値未満に陥る点で移行軌跡が異なることとなる。すなわち、制限部160を遅延部158の前段に設けた場合、上記の変化点での移行軌跡は平滑化により丸みを帯びるが、後段に設けた場合、変化点において角を有するように(接線の傾きが大きく)変化する。
ここでは、制限部160が、蓄積素子152に電気エネルギーが十分に蓄積されている間(蓄積素子152に蓄えられる電圧が、蓄積可能な最大電圧の80%以上に相当する電圧であるとき)、制御信号を平らにして、音声信号が略一定となる時間を延長している。こうして、蓄積素子152に電荷が比較的多く蓄積されている間は、音量の変動量のさらなる抑制を通じて音質のより一層の向上を図ることが可能となる。
(具体的回路例)
以下では、上述した音声処理装置120の具体的回路例を挙げる。
図7は、遅延部158と制限部160とをハードウェアで構成した場合の回路例を示した回路図である。ここでは、蓄積素子152の電圧を高抵抗R、Rで抵抗分割し(R/(R+R))、その抵抗分割された電圧によって検出信号を生成している。
また、制限部160は、上限となる所定の閾値(降伏電圧)で電圧を維持するツェナダイオード(Zener Diode)Dによって構成する。ここでは、ツェナダイオードといった簡易かつ安価な回路を用いることによって、蓄積素子152に電気エネルギーが十分に蓄積されている間、検出信号を制限して遅延部158に入力するので、音声信号が略一定となる時間を延長することができる。
また、遅延部158は、抵抗R(およびR)とコンデンサCとによる低域通過フィルタを有して構成される。このような抵抗とコンデンサによる低域通過フィルタは、ツェナダイオード同様、簡易かつ安価な回路であって信頼性や安定性も高い。また、遅延量(時定数)も、抵抗やコンデンサの一方の値を変更することによって容易に変更できるので、設定時のみならず、事後的な変更にも容易に対応することが可能となる。
さらに、ここでは、ダイオードDを抵抗Rに直列に挿入することで、検出信号の値が上昇(検出信号の値が時間経過とともに増大)するときの遅延部158における遅延量が、検出信号の値が下降(検出信号の値が時間経過とともに減少)するときの遅延部158における遅延量より少なくなるように設定している。具体的に、検出信号が下降するとき、ダイオードDの整流作用によって、抵抗RとコンデンサCによってのみ時定数が決定される。一方、検出信号が上昇するときには、抵抗Rより小さい、抵抗RとRの合成抵抗(R×R/(R+R))とコンデンサCによって時定数が決定される。
したがって、時定数は、検出信号が上昇するときの方が、検出信号が下降するときより小さくなる。こうして音声信号の上昇に対しては迅速に追従し、蓄積素子152の電圧降下に対しては反応を緩和することで、入力された音声信号の波形により近づき、音質のさらなる向上を図ることが可能となる。また、ダイオードDの極性を反転することで、時定数の特性を上昇と下降で逆転することも可能ではある。
また、上述したように遅延部158をハードウェアで構成した場合、乗算部150もハードウェアで構成するとよい。図7に示した回路例により図6に示した音声信号とほぼ等しい結果を得ることができる。
図8は、遅延部158と制限部160とをソフトウェアで構成した場合の回路例を示した回路図である。ここでは、蓄積素子152の電圧を高インピーダンスのADC(Analog to Digital Converter)170で読み出し、コンピュータ172によって制限部160、遅延部158、乗算部150を実現する。ここでコンピュータ172は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を協働させ、ソフトウェアを実行させる装置をいう。そして、乗算部150によって制御信号が乗算された音声信号は、DAC174を通じて増幅器154に入力される。以下、コンピュータ172の動作を音声処理方法として詳述する。
(音声処理方法)
図9は、音声処理方法の具体的な流れを示したフローチャートである。音声処理装置120におけるコンピュータ172は、ADC170を通じて、蓄積素子152に蓄積された(蓄積ステップ)電気エネルギー量に応じた信号である検出信号を例えば一定時間ごとに取得し、その検出信号が所定の閾値を越えているか否か判定する(S200)。そして、検出信号が所定の閾値を越えていれば(S200のYES)、検出信号を所定の閾値に変更する(S202)。
そして、検出信号の現在値を前回値と比較し、現在値が前回値未満であるか否かを判断する(S204)。現在値が前回値未満でなければ、すなわち、検出信号が上昇または同一値を維持していれば(S204のNO)、検出信号の値が上昇しているときに用いる検出信号上昇用の遅延量を用いて検出信号を遅延させ、制御信号を生成する(S206:生成ステップ)。また、現在値が前回値未満であれば、すなわち、検出信号が下降していれば(S204のYES)、検出信号の値が下降しているときに用いる検出信号下降用の遅延量を用いて検出信号を遅延させ、制御信号を生成する(S208:生成ステップ)。そして、現在値を、次に検出信号を取得したときの前回値として用いるため登録し(S210)、コンピュータ172に入力された音声信号と、生成した制御信号とを乗算し(S212:乗算ステップ)、その乗算された音声信号をDAC174を通じて増幅器154に出力する(S214)。増幅器154では、蓄積素子152に蓄積された電気エネルギーを受電して、入力された音声信号が増幅される(増幅ステップ)。なお、時定数は、検出信号上昇用の遅延量を、検出信号下降用の遅延量より少なく設定することが望ましい。
以上説明した音声処理装置120により、音量の変動を抑え音声信号の再現性を高めることで音質の向上を図ることが可能となり、変動の少ない比較的大きな音量で違和感のない音声を楽しむことができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
なお、本明細書の音声処理方法の各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
本発明は、音声信号を増幅可能な音声処理装置および音声処理方法に利用することができる。
120 …音声処理装置
150 …乗算部
152 …蓄積素子
154 …増幅器
156 …スピーカ
158 …遅延部
160 …制限部

Claims (5)

  1. 音声処理装置において、
    電気エネルギーを蓄積する蓄積素子と、
    前記蓄積素子に蓄積された電気エネルギー量に応じた信号である検出信号を平滑化することで遅延させて制御信号を生成する遅延部と、
    前記制御信号と、前記音声処理装置に入力された音声信号とを乗算する乗算部と、
    前記蓄積素子に蓄積された電気エネルギーを受電して、前記乗算部によって前記制御信号と乗算された音声信号を増幅する増幅器と、
    を備えることを特徴とする音声処理装置。
  2. 前記遅延部は、低域通過フィルタを有して構成されることを特徴とする請求項に記載の音声処理装置。
  3. 前記検出信号の値が時間経過とともに増大するときの前記遅延部における遅延量は、前記検出信号の値が時間経過とともに減少するときの前記遅延部における遅延量より少ないことを特徴とする請求項1または2に記載の音声処理装置。
  4. 前記検出信号が所定の閾値以上であるときに、前記検出信号または前記制御信号のレベルが略一定の値になるように制限する制限部をさらに備えることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の音声処理装置。
  5. 電気エネルギーを蓄積する蓄積ステップと、
    蓄積された電気エネルギー量に応じた信号である検出信号を平滑化することで遅延させて制御信号を生成する生成ステップと、
    前記制御信号と、入力された音声信号とを乗算する乗算ステップと、
    蓄積された電気エネルギーを受電して、前記乗算ステップにおいて前記制御信号と乗算された音声信号を増幅する増幅ステップと、
    を有することを特徴とする音声処理方法。
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