本発明は、希土類磁石合金をマルチ切断する際の希土類磁石を固定するための磁石固定治具、及びこれを備える希土類磁石切断加工装置に関するものである。
希土類磁石の製品を製造する場合、プレス成形の段階で製品形状とほぼ同様な形状とする1個取りを行う場合と、大きなブロック状に成形し、加工工程で切断する場合(多数個取り)がある。その概念図を図1に示す。図1(a)に示される1個取りの場合、成形品101、焼結・熱処理品102及び加工処理品(製品)103において、形状と大きさがほぼ同じであり、正常な焼結をすることができれば、加工工程の負担が比較的少なく、ニアネットシェイプな焼結体を得ることができる。但し、小さい製品や磁化方向の厚みが薄い製品を製造する場合、プレス成形、焼結において正常な形状の焼結体を得ることが難しくなり、歩留まりの劣化を招きやすく、ひどい場合は製造できなくなってしまう。
これに対し、図1(b)に示される多数個取りの場合、上記のような問題もなく、またプレス成形、焼結・熱処理等の工程での生産性が高く、汎用性もあるため希土類磁石製造の主流となってきている。但し、この場合、成形品101及び焼結・熱処理品102においては、形状と大きさがほぼ同じであるが、その後の工程である加工時に切断工程が必要であり、いかに効率よく無駄なく切断加工して、加工処理品103を得ることができるかが重要なポイントとなってくる。
希土類磁石の切断刃としては、薄板ドーナツ状円板の内周部分にダイヤモンド砥粒を接着したダイヤモンド砥石内周刃や、薄板円板を台板としてその外周部分にダイヤモンド砥粒を固着したダイヤモンド砥石外周刃の2種類があるが、最近では特に生産性の点から外周刃を用いた切断が主流となってきている。即ち、内周刃の場合、単刃切断であり生産性が低いのに対し、外周刃の場合、例えば、図2に示されるような、外周縁部に砥粒部11aを薄板ドーナッツ状円板の砥石台板11bに固着した外周刃11を複数、スペーサー(図示せず)を介して回転軸(シャフト)12に取り付け、組み上げたマルチ切断刃1を用いれば、一度に多数個取りができるいわゆるマルチ切断が可能であるためである。
このような外周刃のダイヤモンド砥粒の結合剤として、樹脂結合剤であるレジンボンド、金属結合剤であるメタルボンド及びメッキによる電着の3種類が代表的であり希土類磁石の切断に広く使用されている。
切断砥石を使用して希土類磁石を切断加工するとき、前述のようにある大きさのブロックを切断して多数の製品を切り出す場合には、切断砥石の刃厚と被切断物(希土類磁石)の材料歩留まりとの関係が非常に重要となり、できるだけ薄い刃を用い、しかも精度よく切断して切断加工代を少なくし、切断屑を減らし、得られる製品の数を多くして材料歩留まりを上げ、生産性を高めることが肝要である。
材料歩留まりの観点から、薄い切断刃にするためには、当然砥石台板を薄くする必要がある。図2に示されるような外周刃11の場合、その砥石台板11bの材質として従来は主に材料コスト及び機械強度の点から鉄鋼材料が用いられており、特に実用化されているものとして、JIS規格でSK、SKS、SKD、SKT、SKH等と規定される合金工具鋼が専ら使用されてきた。しかし、希土類磁石のような硬質材料を薄い外周刃によって切断しようとすると、前述した従来の合金工具鋼の合板では機械強度が不足し、切断に際し湾曲などの変形を生じ寸法精度が失われてしまう。
この改善策として、超硬合金を用いた台金を使用し、レジンボンド、メタルボンド及びメッキ電着の結合剤でダイヤモンド、cBN等の高硬度砥粒を台金に結合した希土類磁石合金用切断刃が開発され(特許文献1:特開平10−175172号公報)、超硬合金を台金材料として使用することにより、加工時の応力による座屈変形が軽減され、希土類磁石を精度よく切断できるようになった。しかし、希土類磁石の切断において、刃先への研削液の供給が不十分であると、超硬合金の台金を使用したとしても、砥石の目つぶれや目詰まりを誘発して加工中の研削抵抗が増大し、チッピングや曲がりが生じ加工状態に悪影響を及ぼす。
この対策として複数のノズルを切断刃周りに配置して研削液を強制的に刃先まで供給する方法や、大容量のポンプより大量の研削液を供給する方法があるが、前者は1mm前後の間隔で複数のブレードが配置された希土類磁石のマルチ切断刃による切断においては、ノズルを切断刃周りに配置することができず、実施し難い。後者の大量の研削液を供給する方法では、切断刃が回転していることにより刃周りに生じる気流により、研削液は分断されて飛散し、肝心の刃先に供給できず、無理に供給しようとして高圧で研削液をかけると砥石を湾曲させるばかりか、振動発生の要因になるなど高精度加工の阻害となる。
特開平10−175172号公報
特開平7−171765号公報
特開平5−92420号公報
二ノ宮進一他、精密工学会誌、Vol.73、No.7、2007
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、希土類磁石のマルチ切断において、従来に比べて少量の研削液を効果的に切断加工点に供給し、高精度な切断を高速に行うことを可能とする磁石固定治具、及びこれを備える希土類磁石切断加工装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、薄板円板状又は薄板ドーナツ円板状の台板の外周縁部に砥石外周刃を備える切断砥石ブレードを回転軸にその軸方向に沿って所定の間隔で複数配列し、これら複数の切断砥石ブレードを回転させて希土類磁石をマルチ切断加工する際、この希土類磁石をその切削方向に押圧して固定する治具として、それらの一方又は双方の表面に各々の切断砥石ブレードに対応する複数のガイド溝を各々の切断砥石ブレードの外周部を挿入可能に形成した対の磁石固定治具が有効であることを知見した。
そして、この対の磁石固定治具を用い、各々のガイド溝に各々の切断砥石ブレードの外周部を挿入した状態で、各々の切断砥石ブレードを回転させたとき、各々のガイド溝により、各々の切断砥石ブレードの回転軸方向のぶれが規制され、また、研削液供給ノズルの各々のスリット部から各々の切断砥石ブレードの表面に同伴して移動した研削液が、各々のガイド溝に流入し、各々のガイド溝に流入した研削液が、回転する各々の切断砥石ブレードの表面に同伴されて切断砥石ブレードの各々の刃先に効率よく供給され、希土類磁石のマルチ切断において、従来に比べて少量の研削液を効果的に希土類磁石の切断加工点に供給して、高精度な切断を高速に行うことができることを見出した。
従って、本発明は、以下の磁石固定治具及びこれを備える希土類磁石切断加工装置を提供する。
請求項1:
薄板円板状又は薄板ドーナツ円板状の台板の外周縁部に砥石外周刃を備える切断砥石ブレードを回転軸にその軸方向に沿って所定の間隔で複数配列してなる希土類磁石を切断するためのマルチ切断砥石ブレードにより希土類磁石を切断加工する際に、該希土類磁石を固定するための磁石固定治具であって、
希土類磁石をその切削方向の両端側から切削方向に押圧して固定可能に対で構成され、それら双方の表面に各々の切断砥石ブレードに対応する複数のガイド溝を、各々の切断砥石ブレードの外周部を挿入可能に、かつ流入した研削液を保持して該研削液が切断砥石ブレードの外周部と接触して切断砥石ブレードの外周部に同伴されるように形成してなることを特徴とする磁石固定治具。
請求項2:
上記磁石固定治具のガイド溝が、希土類磁石を固定した状態の該希土類磁石からの長さで1mm以上100mm以下に形成されていることを特徴とする請求項1記載の磁石固定治具。
請求項3:
上記磁石固定治具のガイド溝の幅が、上記切断砥石ブレードの砥石外周刃の幅Wに対して、Wmmを超えて(W+6)mm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の磁石固定治具。
請求項4:
更に、上部に磁石固定治具のガイド溝に対応した溝が形成され、希土類磁石が載置されるベース板を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の磁石固定治具。
請求項5:
請求項1乃至4のいずれか1項記載の磁石固定治具を備える希土類磁石切断加工装置。
本発明によれば、希土類磁石のマルチ切断において、従来に比べて少量の研削液を効果的に切断加工点に供給し、高精度な切断を高速に行うことができ、産業上その利用価値は極めて大きい。
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明において、希土類磁石は、薄板円板状又は薄板ドーナツ円板状の台板の外周縁部に砥石外周刃を備える切断砥石ブレードを回転軸にその軸方向に沿って所定の間隔で複数配列し、上記複数の切断砥石ブレードを回転させて切断するマルチ切断加工によって切断加工する。
このマルチ切断加工には、従来公知の外周刃切断用の切断砥石ブレードを用いることができ、例えば、図2に示されるような、外周縁部に砥粒部(砥石外周刃)11aを薄板ドーナッツ状円板の台板11bに固着した外周刃(切断砥石ブレード)11を複数(図2に示されているものの場合は19であり、その数は限定されないが、通常は2〜100である。)、スペーサー(図示せず)を介して回転軸(シャフト)12に取り付け、組み上げたマルチ切断刃(マルチ切断砥石ブレード)1を用いることができる。
台板の大きさは、特に限定されるものではないが、外径が80〜200mm、好ましくは100〜180mm、厚みが0.1〜1.0mm、特に0.2〜0.8mmのものが好ましく、台板が薄板ドーナツ円板状の場合、内穴の直径が30〜80mm、好ましくは40〜70mmの寸法を有するものであることが好ましい。
また、マルチ切断砥石ブレードの台板の材質は、SK、SKS、SKD、SKT、SKHなど切断刃に用いられる材質のいずれであってもよいが、超硬台板を使用することで一層の薄刃化が行えるため好ましい。台板となる超硬合金としては、WC、TiC、MoC、NbC、TaC、Cr3C2などの周期表IVB、VB、VIB族に属する金属の炭化物粉末をFe、Co、Ni、Mo、Cu、Pb、Sn、又はそれらの合金を用いて焼結結合した合金が好ましく、これらの中でも特にWC−Co系、WC−Ni系、TiC−Co系、WC−TiC−TaC−Co系の代表的なものを用いることが特に好ましい。
一方、砥粒部(砥石外周刃)は、台板の外周縁部を覆うように形成され、砥粒部としては、砥粒と結合材とからなるものが挙げられ、結合材によりダイヤモンド砥粒、cBN砥粒又はダイヤモンド砥粒とcBN砥粒との混合砥粒が台板の外周縁部に結合されたものが挙げられる。このような外周刃の砥粒の結合剤として、樹脂結合剤であるレジンボンド、金属結合剤であるメタルボンド及びメッキによる電着の3種類が代表的でありいずれでもよい。
台板の厚さ方向に沿った砥粒部(砥石外周刃)の幅は、(台板の厚さ+0.01)mm〜(台板の厚さ+4)mm、特に(台板の厚さ+0.02)mm〜(台板の厚さ+2)mmとすることが好適である。また、砥粒部(砥石外周刃)の台板より先方に突出している突出部の突出長さは、固定する砥粒の大きさによるが、0.1〜10mm、特に0.3〜8mmであることが好ましい。更に、台板の径方向に沿った砥粒部(砥石外周刃)の幅は0.1〜10mm、特に0.3〜8mmであることが好ましい。
また、各々の切断砥石ブレードの間隔は、切断後の希土類磁石の厚さによって適宜設定されるが、切断後の希土類磁石の厚さより若干広く(例えば0.01〜0.4mm広く)設定することが好ましい。
切削時の切断砥石ブレードの回転数は、例えば1,000〜15,000rpm、特に3,000〜10,000rpmとすることが好適である。
希土類磁石のマルチ切断加工においては、切断砥石ブレードに研削液を供給して切断が行われるが、本発明においては、一端側に研削液の導入口が形成され、他端側に上記各々の切断砥石ブレードに対応する複数のブレード挿入用スリットが形成され、かつ上記各々のスリットに各々の切断砥石ブレードの外周部を挿入可能に構成された研削液供給ノズルを用いることが好ましい。
図3,4に示されるように、この研削液供給ノズル2は、中空の研削液供給ノズル本体2aと、研削液の導入流路2bで構成され、研削液の導入流路2bは、一端が開口して研削液の導入口22をなし、また、他端は研削液供給ノズル本体2aの一端側の側面に取付けられ、研削液供給ノズル本体2aの中空部(液だまり)23と連通している。一方、研削液供給ノズル本体2aは、他端側に切断砥石ブレードの数に応じてこれに対応する数(通常は、マルチ切断砥石ブレードの切断砥石ブレードの数と同数で複数個、図3,4に示されているものの場合は19であり、その数は限定されないが、通常は2〜100である。)のスリット21が形成されている。なお、スリットから噴出する研削液の量を調整するため、ノズル使用時にブレードが挿入されていないスリットが残るように、スリットの数がブレードの数より多くなるようにしてもよい。
この研削液供給ノズル2の各々のスリット21には、後述するように各々の切断砥石ブレードの外周部が挿入される。従って、スリット21の間隔は、上述したマルチ切断砥石ブレードの個々の切断砥石ブレードの間隔に対応するように設定され、直線状に互いに平行に形成される。
また、研削液供給ノズル、そのスリット及び研削液の導入口の形状や位置は図3,4に示されるものに限定されるものではなく、例えば、図5に示される研削液供給ノズルを例示することもできる。この研削液供給ノズル2は、中空の研削液供給ノズル本体2aと、研削液の導入流路2bで構成され、研削液の導入流路2bは、上端が開口して研削液の導入口22をなし、また、下端は研削液供給ノズル本体2aの一端側の上面に取付けられ、研削液供給ノズル本体2aの中空部(液だまり)23と連通している。一方、研削液供給ノズル本体2aは、他端側に切断砥石ブレードの数に応じてこれに対応する数(通常は、マルチ切断砥石ブレードの切断砥石ブレードの数と同数で複数個、図5に示されているものの場合は19であり、その数は限定されないが、通常は2〜100である。)のスリット21が形成されている。なお、スリット21が形成されている研削液供給ノズル本体2aの他端側は、スリット21の先端側に向かって研削液供給ノズル本体2aの上面が下方に傾斜しており、スリット21の先端側の研削液供給ノズル本体2aの厚さ(中空部の厚さ)が薄く形成されている。この場合もスリット21の間隔は、上述したマルチ切断砥石ブレードの個々の切断砥石ブレードの間隔に対応するように設定され、直線状に所定の間隔で平行に形成される。この研削液供給ノズルの場合、研削液供給ノズルのスリット側が薄く形成されているため、研削液をより勢いよく切断砥石ブレード側に供給することができる。また、この場合も、スリットから噴出する研削液の量を調整するため、ノズル使用時にブレードが挿入されていないスリットが残るように、スリットの数がブレードの数より多くなるようにしてもよい。
ここで、スリットに挿入される切断砥石ブレードの外周部は、切断砥石ブレードと接触した研削液を、切断砥石ブレードの表面(外周部)に同伴させて研削液を希土類磁石の各々の切断加工点に供給することになる。そのため、スリットの幅は、切断砥石ブレードの幅(即ち、砥石外周刃の幅)より広く形成する必要がある。スリットの幅があまり広いと、研削液が効果的に切断砥石ブレード側に供給できず、スリットから流下する量が多くなるだけであるため、研削液供給ノズルのスリットの幅は、切断砥石ブレードの砥石外周刃の幅Wに対して、Wmmを超えて、好ましくは(W+0.1)mm以上で、(W+6)mm以下であることが好ましい。
研削液供給ノズルのスリット形成部21aの肉厚は、肉厚が薄い場合、強度が弱くスリットが、切断刃等との接触により容易に変形してしまい、安定した研削液の供給ができないおそれがあり、厚すぎると研削液供給ノズル内部の流路が確保できない場合や、切断砥石ブレードの外周部を挿入しても、切断砥石ブレードの外周部が、研削液供給ノズルの内部で研削液と十分接触した状態にできない場合が生じるおそれがある。そのため、研削液供給ノズル材質にもよるが、プラスチック素材であれば0.5〜10mm、金属素材であれば0.1〜5mmであることが好ましい。
一方、スリットの長さは、切断砥石ブレードの外周部を挿入したとき、切断砥石ブレードの外周部が、研削液供給ノズルの内部で研削液と十分接触した状態にできるような長さに形成され、通常、切断砥石ブレードの台板の外径の2〜30%程度の長さが好適である。また、スリットは、切断砥石ブレードの外周部を挿入した状態で、スリットが切断砥石ブレードと接触しない程度でほぼ塞がれるようにすることが好ましいが、研削液の一部を切断砥石ブレードや、切断する希土類磁石や、後述する磁石固定治具に直接噴射するために、切断砥石ブレードの外周部を挿入した状態で、スリットの長さ方向基端部に切断砥石ブレードで塞がれていない部分を残すようにしてもよい。
このような研削液供給ノズルを用い、図6,7に示されるように、マルチ切断砥石ブレード1の各々の切断砥石ブレード11の外周部を研削液供給ノズル2の各々のスリット21に挿入した状態で、研削液供給ノズルに導入口22から研削液を導入して各々のスリットから研削液を噴出させながら切断砥石ブレードを回転させ、切断砥石ブレードの砥石外周刃により希土類磁石mを切削することができる。研削液供給ノズルは、切断砥石ブレードを介して希土類磁石と向かい合わせて配置してもよく、また、希土類磁石の上方に研削液供給ノズルに配置したとき、切断砥石ブレードが、研削液供給ノズルのスリットを上方から下方に通過する位置に配置しても、下方から上方に通過する位置に配置してもよい。なお、図6,7において、マルチ切断砥石ブレード1の各部の構成は、図2と同じ参照符号を付してその説明を省略する。
研削液供給ノズルのスリットと希土類磁石との間は、あまり離れていない方が、切断砥石ブレードの表面への同伴による研削液の供給に有利である一方、近接しすぎていると、マルチ切断砥石ブレード、希土類磁石の移動や、研削液の噴射、排出等の障壁になる場合があるので、研削液供給ノズルのスリットと希土類磁石との距離は、切断終了時に研削液供給ノズルと希土類磁石の上面との距離が1〜50mmとなるように(例えば、図示される例においては、切断終了時に研削液供給ノズルが希土類磁石の上面より1〜50mm高く位置するように)することが好適である。
このように、マルチ切断砥石ブレードと研削液供給ノズルと希土類磁石とを配置し、マルチ切断砥石ブレード及び研削液供給ノズルと、希土類磁石とのいずれか又は双方を、マルチ切断砥石ブレードを回転させながら、その砥粒部を希土類磁石に接触させて相対的に移動させる(希土類磁石の長さ方向、希土類磁石の厚さ方向又はそれら双方に移動させる)ことにより、希土類磁石を切削することができる。このようにして希土類磁石を切断すると、スリットにより、各々の切断砥石ブレードの回転軸方向のぶれが規制され、精度よい切断加工が可能となる。
また、高速で回転する切断砥石ブレードの周りには、空気の流れが発生する。この流れは、特に切断砥石ブレードの外周縁部(砥石外周刃)を取り囲むように存在するため、切断砥石ブレードの砥石外周刃に研削液を直接噴射すると、研削液はこの空気の流れに接して研削液が飛散し、空気層に研削液の接触が邪魔されて効率的な供給ができない。これに対して、本発明のように、切断砥石ブレードの外周部を研削液供給ノズルのスリットに挿入した状態で、研削液供給ノズルの内部で研削液と接触させるようにすると、研削液供給ノズル本体(即ち、スリットを囲む部分)によって空気の流れが遮断され、研削液が空気層に邪魔されることなく切断砥石ブレードの外周部に接触するようになる。
従って、各々のスリット部に到達して各々の切断砥石ブレードの外周部と接触した研削液は、回転する各々の切断砥石ブレードの表面(外周面及び表裏面の外周部)に同伴され、切断砥石ブレードの回転の遠心力によって各々の切断砥石ブレードの砥石外周刃側に移動する。そして、砥石外周刃側に移動した研削液は、切断砥石ブレードの回転と共に、希土類磁石の各々の切断加工点に移動し、研削液が切断加工点に効率よく、かつ確実に供給され、その結果、研削液の供給量を低減することができる。また、加工部を効果的に冷却することも可能である。
このような本発明の研削液供給ノズルは、希土類磁石切断加工装置における研削液供給ノズルとして好適である。
希土類磁石のマルチ切断加工においては、切断砥石ブレードに研削液を供給して切断が行われるが、本発明の磁石固定治具は、希土類磁石をその切削方向に押圧して固定可能に対で構成された磁石固定治具を用いることが好ましい。これらの磁石固定治具の一方又は双方の表面には、複数の切断砥石ブレードの各々に対応して各々の切断砥石ブレードの外周部を挿入可能にした複数のガイド溝が形成される。
図8には、本発明の磁石固定治具の一例(図(8(a))が示されている。この場合、基体30上には、希土類磁石mが載置されるベース板31が設けられており、このベース板31の長さ方向の両端側に磁石固定治具31,31が設けられている。そして、図8(b)に示されるように、磁石固定治具31,31は、希土類磁石mをその切削方向(希土類磁石の長さ方向)に押圧した状態で基体30に固定されるように構成されている。なお磁石固定治具31,31は対(この場合、1対であるが、その数は限定されない。)で構成され、磁石固定治具31,31は、希土類磁石mを両端側から押圧した後、その押圧状態を保持してビス31bによって基体30に着脱可能に固定されるようになっている。なお、図8の場合は、ビス31bによって固定するようになっているが、これに限定されるものではなく、空気圧や油圧によって押圧して固定することも好適である。
そして、磁石固定治具31,31の表面には、複数の切断砥石ブレード1の各々の切断砥石ブレードに対応する複数(この場合は、各々19本であるが、その数は限定されない。)のガイド溝31aが形成されている。
この磁石固定治具31の各々のガイド溝31aには、後述するように各々の切断砥石ブレードの外周部が挿入される。従って、ガイド溝31aの間隔は、上述したマルチ切断砥石ブレードの個々の切断砥石ブレードの間隔に対応するように設定され、直線状に互いに平行に形成される。ガイド溝31a間の幅は、切断されて得られる希土類永久磁石の厚さと同じ又はそれ以下に形成される。
磁石固定治具と上述した研削液供給ノズルとを用いて研削液を供給する場合、研削液供給ノズル中で切断砥石ブレードの外周部に接触した研削液が、切断砥石ブレードの表面(外周部)に同伴されて磁石固定治具のガイド溝に入り、更に、希土類磁石側に移動することで切断加工点に供給される。また、上述した研削液供給ノズルを用いる場合や、上述した研削液供給ノズルを用いないで研削する場合であっても、例えば、切断砥石ブレードに研削液を直接噴射する場合は、研削液がガイド溝に流入するようにしてやれば、ガイド溝内を切断砥石ブレードが通過する際、研削液が切断砥石ブレードの外周部に接触し、切断砥石ブレードの表面(外周部)に同伴されて、希土類磁石側に移動することで切断加工点に供給されるようにすることができる。そのため、ガイド溝の幅は、切断砥石ブレードの幅(即ち、砥石外周刃の幅)より広く形成する必要がある。ガイド溝の幅があまり広いと、研削液が効果的に切断砥石ブレード側に供給できないため、磁石固定治具のガイド溝の幅は、切断砥石ブレードの砥石外周刃の幅Wに対して、Wmmを超えて、好ましくは(W+0.1)mm以上で、(W+6)mm以下であることが好ましい。
一方、ガイド溝の長さ(切削方向の長さ)は、希土類磁石を固定した状態の希土類磁石からの長さで1mm以上、好ましくは3mm以上で、100mm以下であることが好ましい。ガイド溝の長さが1mm未満の場合、研削液を被切断物である希土類磁石へと供給する際の研削液の飛散をガードしたり、研削液を保持したりする効果が低く、希土類磁石を固定して保持するための十分な強度も得られにくくなる。ガイド溝の長さが100mmを超えても、研削液を切断加工部に供給する効果や、希土類磁石の保持強度向上の効果が更に向上することはなく、切断加工装置をいたずらに大型化するのみである。また、ガイド溝の深さは、希土類永久磁石の高さに応じて適宜設定されるが、固定される希土類永久磁石の下面の位置より若干深く形成することが好ましい。
なお、図8に示されたベース板32には、その上部に磁石固定治具のガイド溝に対応した溝(図8の場合は、ガイド溝と同じ幅の溝であるが、これに限定されない。)が形成されており、これは、希土類磁石の切断の最終段階で、切断砥石ブレードの外周端部が希土類磁石の下方に突出したときの空間となるものであり、このようにしておけば、切断砥石ブレードにベース板を切断する余分な負荷をかけることがないため好ましい。
磁石固定治具の材質は、挟み込み力に負けない強度を有していれば特に限定されないが、高強度エンジニアリングプラスティックや、鉄系、ステンレス系又はアルミ系などの金属系材料が好ましく、特に省スペースを望まれる場合は超硬や高強度セラミックスを使用するのがよい。
なお、磁石固定治具のガイド溝、及びベース板の溝は、予め形成しておくこともできるが、希土類磁石を切断する最初のサイクルにおいて、希土類磁石又はダミーの被切断物を固定した状態で希土類磁石又はダミーの被切断物を切断し、この際に、ガイド溝、ベース板の溝を形成するいわゆる共切りによって形成してもよい。
このように、図8(a)に示されるような磁石固定治具、及び好ましくはベース板を用いて、図8(b)に示されるように、切断される希土類磁石を磁石固定治具により押圧した状態で磁石固定治具を固定すると共に、これにより希土類磁石を固定し、マルチ切断砥石ブレード1の各々の切断砥石ブレード11の外周部を磁石固定治具の各々のガイド溝に挿入した状態で、上述した研削液供給ノズルを用いてマルチ切断砥石ブレードに研削液を供給して、又は研削液をガイド溝に流入させるようにして、切断砥石ブレードを回転させながら、その砥粒部を希土類磁石に接触させて相対的に移動させて(希土類磁石の長さ方向、希土類磁石の厚さ方向又はそれら双方に移動させて)、図8(c)に示されるように、切断砥石ブレードの砥石外周刃により希土類磁石mを切削することにより、図8(d)に示されるように、希土類磁石mを切断することができる。
上述した研削液供給ノズルを用いる場合、研削液供給ノズルのスリットと磁石固定治具のガイド溝とを連通させて用いることが好ましいが、研削液供給ノズルのスリットと磁石固定治具のガイド溝と間は、あまり離れていない方が、切断砥石ブレードの表面への同伴による研削液の供給に有利である一方、近接しすぎていると、マルチ切断砥石ブレード、希土類磁石の移動や、研削液の噴射、排出等の障壁になる場合があるので、研削液供給ノズルのスリットと磁石固定治具のガイド溝との距離は、切断終了時に研削液供給ノズルと磁石固定治具の上面との距離が1〜50mmとなるように(例えば、図示される例においては、切断終了時に研削液供給ノズルが磁石固定治具の上面より1〜50mm高く位置するように)することが好適である。
希土類磁石のマルチ切断加工においては、希土類磁石を何らかの方法で固定して切断され、従来、カーボンベース等の基板上に、ワックス等の希土類磁石の切断後に除去可能な接着剤を用いて希土類磁石を接着し、基板を固定して切断する方法が採られている。しかしながら、この方法では、接着、剥離、洗浄の工程が必要であり、非常に手間がかかる。これに対して、本発明の磁石固定治具を用いて、希土類磁石を挟み込んで固定することで、従来のような接着、剥離、洗浄の工程を省略し、加工の省力化を図ることができる。
また、このように、マルチ切断砥石ブレードと磁石固定治具と希土類磁石とを配置して希土類磁石を切断すると、ガイド溝により、各々の切断砥石ブレードの回転軸方向のぶれが規制され、精度よい切断加工が可能となる。
更に、高速で回転する切断砥石ブレードの周りには、空気の流れが発生する。この流れは、特に切断砥石ブレードの外周縁部(砥石外周刃)を取り囲むように存在するため、切断砥石ブレードの砥石外周刃に研削液を直接噴射すると、研削液はこの空気の流れに接して研削液が飛散し、空気層に研削液の接触が邪魔されて効率的な供給ができない。これに対して、本発明のように、切断砥石ブレードの外周部を磁石固定治具のガイド溝に挿入すると、磁石固定治具本体(即ち、溝を囲む部分)によって空気の流れが遮断され、ガイド溝に流入した研削液が空気層に邪魔されることなく、切断砥石ブレードの外周部に接触するようになる。そして、上述した研削液供給ノズルと磁石固定治具との双方を用いれば、それらの相乗作用により、特に効果的、かつ確実に研削液を切削加工点に供給することができる。
従って、各々の切断砥石ブレードの外周部と接触した研削液は、回転する各々の切断砥石ブレードの表面(外周面及び表裏面の外周部)に同伴され、切断砥石ブレードの回転の遠心力によって各々の切断砥石ブレードの砥石外周刃側に移動する。そして、砥石外周刃側に移動した研削液は、切断砥石ブレードの回転と共に、希土類磁石の各々の切断加工点に移動し、研削液が切断加工点に効率よく、かつ確実に供給され、その結果、研削液の供給量を低減することができる。また、加工部を効果的に冷却することも可能である。
このような本発明の磁石固定治具は、希土類磁石切断加工装置における磁石固定治具として好適である。
更に、本発明では、図9に示されるように、上述した研削液供給ノズルと磁石固定治具との双方を用いてマルチ切断砥石ブレードを用いて希土類磁石を切断することが、上述した効果、特に、切断砥石ブレードをより確実にガイドすると共に、研削液を切断砥石ブレードの表面に同伴させて供給する作用を、研削液供給ノズルと磁石固定治具との双方において、切断砥石ブレードの回転方向に連続して発揮させることができることから、より好ましい。なお、図9において、各部の構成は、図7及び8と同じ参照符号を付してその説明を省略する。また、図9においては、マルチ切断砥石ブレードが1つの希土類磁石を切断する状態を示しているが、これに限定されるものではなく、2以上の希土類磁石を並列及び/又は直列に配置して、1つのマルチ切断砥石ブレードで複数の希土類磁石を切断するように構成してもよい。
被切断物である希土類磁石の表面は通常フラットであるため、研削液は、研削の初期段階においてはこのフラットな面に供給されるが、このようなフラットな面に研削液を噴射しても、研削液が容易に流れてしまい、効果的に切断加工点に供給することができない。そのため、希土類磁石の切断の初期(最初の切削)で、複数の切断砥石ブレード及び希土類磁石のいずれか又は双方を、希土類磁石の切削方向(希土類磁石の長さ方向)に希土類磁石の長さ方向一端から他端にかけて相対的に移動させて、希土類磁石の表面を長さ方向全体に亘って所定の深さに切削して希土類磁石に切断溝を形成することが好ましい。特に、上述した磁石固定治具を用いる場合は、その切削方向両端側の切削時においては磁石固定治具の各々のガイド溝に各々の切断砥石ブレードの外周部が挿入された状態で切断することが好適である。
このようにまず切断溝を形成すると、最初の切削によって形成された切断溝が、次の切削において切断砥石ブレードのガイドとして機能し、各々の切断砥石ブレードの回転軸方向のぶれが規制され、精度よい切断加工が可能となる。
また、まず切断溝を形成すると、希土類磁石の被切断物表面に到達した研削液は、形成された切断溝に流入することとなり、上述した研削液供給ノズルを用いた場合は、研削液供給ノズルの各々のスリット部から各々の切断砥石ブレードの表面に同伴して移動した研削液と共に、各々の切断溝に流入した研削液が、回転する各々の切断砥石ブレードの表面に同伴され、研削液は、切断砥石ブレードの回転と共に、希土類磁石の各々の切断加工点に移動し、研削液が切断加工点に効率よく、かつ確実に供給され、その結果、研削液の供給量を低減することができる。また、加工部を効果的に冷却することも可能である。
即ち、切断砥石ブレードがフラットな面を切削する状態を希土類磁石の多くの部分を切断する間継続して切断する場合に比べ、まず切断溝を形成すれば、切断溝がそれ以降の切削において、研削液を効果的に切断加工点に供給する供給路として機能することになる。また、切断砥石ブレードの回転に伴い、研削液が、切断加工点から切断溝を通して切断砥石ブレードの回転方向下流側に効果的に排出されることから、加工スラッジ(研削磁石クズ)が研削液と共にこの切断溝を通して効率よく排出され、砥石の目つぶれ、目詰まりが発生しにくい良好な研削環境を与えることができる。
この最初に形成される切断溝の深さ(希土類磁石の長さ方向への移動による最初の切削の深さ)は、0.1mm以上20mm以下、特に1mm以上10mm以下であることが好ましい。切削溝の深さが0.1mm未満の場合、磁石表面での研削液の飛散防止効果が小さく、切断加工点に研削液を効果的に供給することができないおそれがある。一方、切断溝の深さが20mmを超える場合、切断溝を設けるための研削自体が、不十分な研削液供給状態での加工となる場合があり、精度の高い溝加工が行えなくなるおそれがある。
切断溝の幅は、切断砥石ブレードの幅によって決定されるが、切断時、切断砥石ブレードの振動により、通常、切断砥石ブレードの幅より若干(例えば、切断砥石ブレードの幅(砥石外周刃の幅)を超え、2mm以下、好ましくは1mm以下)広くなる。
切断溝を形成した後、希土類磁石を更に切削することにより、希土類磁石を切断することができ、例えば、切断溝を形成した後、希土類磁石の側方で複数の切断砥石ブレード及び希土類磁石のいずれか又は双方を希土類磁石の切断溝の深さ方向に両者を近づけるように相対的に移動させ、希土類磁石の各々の切断溝、上述した磁石固定治具を用いる場合は、磁石固定治具の各々のガイド溝、又は切断溝及びガイド溝の双方に各々の切断砥石ブレードの外周部が挿入された状態で、再び複数の切断砥石ブレード及び希土類磁石のいずれか又は双方を、切削方向(希土類磁石の長さ方向)に、希土類磁石の長さ方向一端から他端にかけて相対的に移動させて希土類磁石を切削する操作を1回又は2回以上繰り返して実施してやれば、希土類磁石の厚さ方向全体を切断することができる。この際の切断溝の深さ方向の移動距離(移動後の切削の深さ)は、0.1mm以上20mm以下、特に1mm以上10mm以下であることが好ましい。
また、上記切断溝を形成する際の切断砥石ブレードの回転数と、その後に希土類磁石を切削する際の切断砥石ブレードの回転数とを異なる回転数とすることが可能である。また、上記切断溝を形成する際の切断砥石ブレードの移動速度と、その後に希土類磁石を切削する際の切断砥石ブレードの移動速度とを異なる速度とすることも可能である。
更に、上述した希土類磁石の切断溝の長さ方向への移動による切削時(切断溝の形成の切削時、その後の切削時、又はそれら双方)における上記移動方向に沿った切削応力が、切削される希土類磁石に対し、希土類磁石に対する複数の切断砥石ブレードの移動方向と反対方向に付与されるようにすることが好ましい。
即ち、マルチ切断砥石ブレードが被切断物である希土類磁石に対し相対的に進む方向(ここで相対的とは希土類磁石が動いてもマルチ切断砥石ブレードが動いてもよいことを意味する。)と逆方向の力が切断砥石ブレードから希土類磁石にかかるように切削することが好ましい。その理由は、切断砥石ブレードが希土類磁石に対し相対的に進行する方向に力を受けた場合、切断砥石ブレードは、希土類磁石より抗力を受けるため、切断砥石ブレードには圧縮応力が加わる。切断砥石ブレードに圧縮応力が加えられると、切断砥石ブレードが湾曲し、加工精度の劣化や切断砥石ブレードの台板が切削している希土類磁石と接触するいわゆる胴摺りを引き起こす。こうなると加工精度の低下はもとより、その摩擦により高温となり、希土類磁石が不良となり、切断砥石ブレードも使用不可能となる。
切断砥石ブレードから希土類磁石へかかる力が、マルチ切断砥石ブレードの進行方向と反対方向であれば、切断砥石ブレードに圧縮応力がかからないようになり、胴摺りを防止して、加工精度を上げることができる。しかも、切断砥石ブレードと希土類磁石との間で圧縮の力がかかっていないため、削りだされた加工スラッジは、研削液により効果的に排出され、切断砥石ブレードの切れ味も持続される。
マルチ切断砥石ブレードの進行方向と逆向きの力を働かせるためには、切断砥石ブレードの周速と切削面積(切削高さ×切断砥石ブレードの幅)及びマルチ切断砥石ブレードの進行速度が大きくかかわってくる。周速が速いと、回転中の刃先と磁石との間の摩擦抵抗により刃の進行方向に対し逆向きの力が生じる。しかし、進行方向にはマルチ切断砥石ブレードが進行することによる応力が進行方向に生じ、この力と切削面積の積が進行方向への力となる。これらのうち切断砥石ブレードの回転力による反進行方向への応力が、切断砥石ブレードの進行による応力より大きくなることが必要となる。
この条件を満たすようにするためには、例えば、切断砥石ブレードの周速を20m/sec以上とすることが好ましい。切削面積を小さくするためには、切断砥石ブレードの幅(砥石切断刃の幅)は1.5mm以下が好ましい。また、この幅が0.1mmよりも薄い場合、切削面積は低減できるが、刃の強度が低下し、寸法精度を低下させるおそれがあるため、切断砥石ブレードの幅(砥石切断刃の幅)は0.1〜1.5mmが好ましい。一方、切削高さは20mm以下が好ましく、切断砥石ブレードの送り速度(進行速度)は3000mm/min以下、特に50〜2000mm/minが好ましい。なお、切削加工点におけるマルチ切断砥石ブレードの回転方向と、マルチ切断砥石ブレードの上記移動方向(進行方向)とは、同一方向であっても反対方向であってもよい。
本発明は、希土類磁石を好適に切断の対象とし、この被切断物である希土類磁石(希土類焼結磁石)は特に限定されるものではないが、一例を挙げれば、特にR−Fe−B系(RはYを含む希土類元素のうちの少なくとも1種、以下同じ)の希土類磁石(希土類焼結磁石)の切断に好適に適用できる。
R−Fe−B系希土類焼結磁石としては、質量百分率で5〜40%のR、50〜90%のFe、0.2〜8%のBを含有するもの、更に、磁気特性や耐食性を改善するために、必要に応じてC、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Ag、Sn、Hf、Ta、Wなどの添加元素の1種以上を含むものが好適である。これらの添加元素の添加量は、Coの場合は30質量%以下、その他の元素の場合は8質量%以下が通常である。添加元素をこれ以上加えると逆に磁気特性を劣化させてしまう。
R−Fe−B系希土類焼結磁石は、例えば、原料金属を秤量して、溶解、鋳造し、得られた合金を平均粒径1〜20μmまで微粉砕し、R−Fe−B系希土類永久磁石粉末を得、その後、磁場中で成形し、次いで1000〜1200℃で0.5〜5時間焼結し、更に400〜1000℃で熱処理して製造することが可能である。
以下、実験例及び比較実験例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に制限されるものではない。
[実験例1]
SKD(工具用合金JIS)製の120mmφ×40mmφ×0.5mmtのドーナツ円板状台板の外周縁部にレジンボンド法によりダイヤモンド砥粒を固着(平均粒径150μmの人工ダイヤモンドを体積含有率で25%含有させた)させてこれを砥石部(砥石外周刃)とし、外周切断刃(切断砥石ブレード)を作製した。砥石部の台板からの突き出しは片側0.05mm、即ち、砥石部の幅(台板の厚さ方向の幅)は0.6mmとした。
この外周切断刃を用いて、Nd−Fe−B系希土類焼結磁石を被切断物として切断試験を行った。切断試験は次のような条件で行った。外周切断刃を、スペーサーを挟んで2.1mm間隔で39枚組んでマルチ切断砥石ブレードとした。スペーサーは80mmφ×40mmφ×2.1mmtのものを用いた。これは、切断後の希土類磁石の厚さを2.0mmtとする設定である。
39枚の外周切断刃と38枚のスペーサーで組んだマルチ切断砥石ブレードを、図3,4に示される研削液供給ノズルのスリット内に、外周切断刃の外周から8mmの位置まで、図6に示されるように挿入した。研削液供給ノズルの各スリットは、肉厚2.5mm、幅は0.7mmであり、切断刃がスリットの中央部に位置するように設定した。
また、被切断物であるNd−Fe−B系希土類焼結磁石は長さ100mm×幅30mm×高さ17mmに竪両頭研磨機を用いて±0.05mmの精度に加工したものを用いた。長さ方向に外周切断刃で切断し、一度に2.0mm厚の製品を多数個取りするが、この場合、磁石1ブロックから両端の2枚を除く38枚を得る38枚取りである。
Nd−Fe−B系希土類焼結磁石は、その切削方向両端側を長さ30mmで、幅0.9mm、厚さ(深さ方向)19mmで、各々の外周切断刃に対応する位置に同数(即ち、39本)のガイド溝を有する磁石固定治具により、切断位置とガイド溝とを合わせて、図8(b)に示されるように固定した。なお、この場合、磁石固定治具の上面(マルチ切断砥石ブレード側の面)と、被切断物であるNd−Fe−B系希土類焼結磁石の上面(マルチ切断砥石ブレード側の面)の高さは同じとした。
切断操作は以下のとおりとした。
使用する研削液は30L/minとした。まず、マルチ切断砥石ブレードをNd−Fe−B系希土類焼結磁石を固定している一方の磁石固定治具上でNd−Fe−B系希土類焼結磁石側に降下させ、各々の外周切断刃をその外周から2mm各々のガイド溝に挿入し、マルチ切断砥石ブレードを7,000rpmで回転させ、研削液を研削液供給ノズルから供給しながら、100mm/minの速度で他方の磁石固定治具側へ移動させて切削し、更に、マルチ切断砥石ブレードの高さを変えずに、上記一方の磁石固定治具側に戻して、Nd−Fe−B系希土類焼結磁石に切断溝(深さ2mm)を形成した。
次に、上記一方の磁石固定治具上で、マルチ切断砥石ブレードをNd−Fe−B系希土類焼結磁石側に16mm降下させ、マルチ切断砥石ブレードを7,000rpmで回転させ、研削液を研削液供給ノズルから供給しながら、20mm/minの速度で他方の磁石固定治具側へ移動させて切削し、更に、マルチ切断砥石ブレードの高さを変えずに、上記一方の磁石固定治具側に戻した。
実験例1で外周刃を用いて切断された希土類磁石は、切断面間の中央部の厚みをマイクロメーターで測定し、切断寸法管理幅とした2.0±0.05mmであれば合格とし、寸法が外れた場合には、スペーサー厚みを調整し、管理幅内に入るようにマルチ切断砥石ブレードの修正を行った。更に、同じ外周切断刃の位置でスペーサー調整を3回以上実施の場合には、外周切断刃の安定性がないものと判断し、新しい外周切断刃と交換した。このような条件下、Nd−Fe−B系希土類焼結磁石1000ブロックを切断した。表1に切断状態の評価結果を示した。
[比較実験例1]
以下の変更点以外は実験例1と同様にしてNd−Fe−B系希土類焼結磁石1,000ブロックの切断を実施した。表1に切断状態の評価結果を示した。
研削液供給ノズルをスリットのない1つの開口部(高さ3mm、幅100mm(開口部面積300mm2))のみを有するものに変え、マルチ切断砥石ブレードの外方から研削液を研削液供給ノズルの開口部より噴射するようにした。
また、被切断物であるNd−Fe−B系希土類焼結磁石は、カーボンベース板にワックスによる接着により固定し、磁石固定治具は使用しなかった。
切断操作を以下のとおりとした。
使用する研削液は30L/minとした。まず、マルチ切断砥石ブレードをNd−Fe−B系希土類焼結磁石の切削方向の一端の外方で、各々の外周切断刃の下端がNd−Fe−B系希土類焼結磁石の上面より18mm下の高さとなるようにNd−Fe−B系希土類焼結磁石側に降下させ、マルチ切断砥石ブレードを7,000rpmで回転させ、研削液を研削液供給ノズルから供給しながら、20mm/minの速度で切削方向の他端側の外方へ移動させて切削し、更に、マルチ切断砥石ブレードの高さを変えずに、上記一端側の外方に戻した。
表1から明らかなように、本発明のマルチ切断加工方法によって、刃厚が薄くても長期に亘り寸法精度が安定し、スペーサー厚の調整、外周切断刃の交換等を減らすことができ、生産性の向上が図れることが確認された。
[実験例2]
超硬合金(WC−90質量%/Co−10質量%の組成)製の120mmφ×40mmφ×0.35mmtのドーナツ円板状台板の外周縁部にレジンボンド法によりダイヤモンド砥粒を固着(平均粒径150μmの人工ダイヤモンドを体積含有率で25%含有させた)させてこれを砥石部(砥石外周刃)とし、外周切断刃(切断砥石ブレード)を作製した。砥石部の台板からの突き出しは片側0.05mm、即ち、砥石部の幅(台板の厚さ方向の幅)は0.45mmとした。
この外周切断刃を用いて、Nd−Fe−B系希土類焼結磁石を被切断物として切断試験を行った。切断試験は次のような条件で行った。外周切断刃を、ペーサーを挟んで2.1mm間隔で41枚組んでマルチ切断砥石ブレードとした。スペーサーは80mmφ×40mmφ×2.1mmtのものを用いた。これは、切断後の希土類磁石の厚さを2.0mmtとする設定である。
41枚の外周切断刃と40枚のスペーサーで組んだマルチ切断砥石ブレードを、図3,4に示される研削液供給ノズルのスリット内に、外周切断刃の外周から8mmの位置まで、図6に示されるように挿入した。研削液供給ノズルの各スリットは、肉厚2.5mm、幅は0.6mmであり、切断刃がスリットの中央部に位置するように設定した。
また、被切断物であるNd−Fe−B系希土類焼結磁石は長さ100mm×幅30mm×高さ17mmに竪両頭研磨機を用いて±0.05mmの精度に加工したものを用いた。長さ方向に外周切断刃で切断し、一度に2.0mm厚の製品を多数個取りするが、この場合、磁石1ブロックから両端の2枚を除く40枚を得る40枚取りである。
Nd−Fe−B系希土類焼結磁石は、その切削方向両端側を長さ30mmで、幅0.9mm、厚さ(深さ方向)19mmで、各々の外周切断刃に対応する位置に同数(即ち、41本)のガイド溝を有する磁石固定治具により、切断位置とガイド溝とを合わせて、図8(b)に示されるように固定した。なお、この場合、磁石固定治具の上面(マルチ切断砥石ブレード側の面)と、被切断物であるNd−Fe−B系希土類焼結磁石の上面(マルチ切断砥石ブレード側の面)の高さは同じとした。
切断操作は以下のとおりとした。
使用する研削液は30L/minとした。まず、マルチ切断砥石ブレードをNd−Fe−B系希土類焼結磁石を固定している一方の磁石固定治具上でNd−Fe−B系希土類焼結磁石側に降下させ、各々の外周切断刃をその外周から2mm各々のガイド溝に挿入し、マルチ切断砥石ブレードを7,000rpmで回転させ、研削液を研削液供給ノズルから供給しながら、100mm/minの速度で他方の磁石固定治具側へ移動させて切削し、更に、マルチ切断砥石ブレードの高さを変えずに、上記一方の磁石固定治具側に戻して、Nd−Fe−B系希土類焼結磁石に切断溝(深さ2mm)を形成した。
次に、上記一方の磁石固定治具上で、マルチ切断砥石ブレードをNd−Fe−B系希土類焼結磁石側に16mm降下させ、マルチ切断砥石ブレードを7,000rpmで回転させ、研削液を研削液供給ノズルから供給しながら、20mm/minの速度で他方の磁石固定治具側へ移動させて切削し、更に、マルチ切断砥石ブレードの高さを変えずに、上記一方の磁石固定治具側に戻した。
作製した外周刃を用いて切断された希土類磁石は、切断面間の中央部の厚みをマイクロメーターで測定し、切断寸法管理幅とした2.0±0.05mmであれば合格とし、寸法が外れた場合には、スペーサー厚みを調整し、管理幅内に入るようにマルチ切断砥石ブレードの修正を行った。更に、同じ外周切断刃の位置でスペーサー調整を3回以上実施の場合には、外周切断刃の安定性がないものと判断し、新しい外周切断刃と交換した。このような条件下、Nd−Fe−B系希土類焼結磁石1000ブロックを切断した。表2に切断状態の評価結果を示した。
表2から明らかなように、本発明のマルチ切断加工方法によって、超硬台板を用いた薄刃超硬砥石を使用することでも長期に亘り寸法精度が安定し、スペーサー厚の調整、外周切断刃の交換等を減らすことができ、生産性の向上と、更なる取り数向上が図れることがわかった。
[実験例3]
超硬合金(WC−90質量%/Co−10質量%の組成)製の130mmφ×40mmφ×0.5mmtのドーナツ円板状台板の外周縁部にレジンボンド法によりダイヤモンド砥粒を固着(平均粒径150μmの人工ダイヤモンドを体積含有率で25%含有させた)させてこれを砥石部(砥石外周刃)とし、外周切断刃(切断砥石ブレード)を作製した。砥石部の台板からの突き出しは片側0.05mm、即ち、砥石部の幅(台板の厚さ方向の幅)は0.6mmとした。
この外周切断刃を用いて、Nd−Fe−B系希土類焼結磁石を被切断物として切断試験を行った。切断試験は次のような条件で行った。外周切断刃を、ペーサーを挟んで3.1mm間隔で14枚組んでマルチ切断砥石ブレードとした。スペーサーは70mmφ×40mmφ×3.1mmtのものを用いた。これは、切断後の希土類磁石の厚さを3.0mmtとする設定である。
14枚の外周切断刃と13枚のスペーサーで組んだマルチ切断砥石ブレードを、図3,4に示される研削液供給ノズルのスリット内に、外周切断刃の外周から8mmの位置まで、図6に示されるように挿入した。研削液供給ノズルの各スリットは、肉厚2.5mm、幅は0.8mmであり、切断刃がスリットの中央部に位置するように設定した。
また、被切断物であるNd−Fe−B系希土類焼結磁石は長さ47mm×幅30mm×高さ20mmに竪両頭研磨機を用いて±0.05mmの精度に加工したものを用いた。長さ方向に外周切断刃で切断し、一度に3.0mm厚の製品を多数個取りするが、この場合、磁石1ブロックから両端の2枚を除く13枚を得る13枚取りである。
Nd−Fe−B系希土類焼結磁石は、その切削方向両端側を長さ50mmで、幅0.8mm、厚さ(深さ方向)22mmで、各々の外周切断刃に対応する位置に同数(即ち、14本)のガイド溝を有する磁石固定治具により、切断位置とガイド溝とを合わせて、図8(b)に示されるように固定した。なお、この場合、磁石固定治具の上面(マルチ切断砥石ブレード側の面)と、被切断物であるNd−Fe−B系希土類焼結磁石の上面(マルチ切断砥石ブレード側の面)の高さは同じとした。
切断操作は以下のとおりとした。
使用する研削液は30L/minとした。まず、マルチ切断砥石ブレードをNd−Fe−B系希土類焼結磁石を固定している一方の磁石固定治具上でNd−Fe−B系希土類焼結磁石側に降下させ、各々の外周切断刃をその外周から7mm各々のガイド溝に挿入し、マルチ切断砥石ブレードを9,000rpm(61m/sec)で回転させ、研削液を研削液供給ノズルから供給しながら、70mm/minの速度で他方の磁石固定治具側へ移動させて切削し、更に、マルチ切断砥石ブレードの高さを変えずに、上記一方の磁石固定治具側に戻して、Nd−Fe−B系希土類焼結磁石に切断溝(深さ7mm)を形成した。
次に、上記一方の磁石固定治具上で、マルチ切断砥石ブレードをNd−Fe−B系希土類焼結磁石側に14mm降下させ、マルチ切断砥石ブレードを9,000rpmで回転させ、研削液を研削液供給ノズルから供給しながら、20mm/minの速度で他方の磁石固定治具側へ移動させて切削し、更に、マルチ切断砥石ブレードの高さを変えずに、上記一方の磁石固定治具側に戻した。
Nd−Fe−B系希土類焼結磁石の切削の際、Nd−Fe−B系希土類焼結磁石の下にキスラー社製の薄型切削動力計 9254を設置し、磁石の受ける応力を測定した。最初のガイド溝を形成した切削時のマルチ切断砥石ブレードの移動方向に沿った応力は、切断砥石ブレードの進行方向に75N、次の切削時のマルチ切断砥石ブレードの移動方向に沿った応力は、切断砥石ブレードの進行方向に140Nであった。
作製した外周刃を用いて切断された希土類磁石は、図10(d)に示されるような切断面間の角部及び中央部の5点の厚みをマイクロメーターで測定し、最大値と最小値との差を求めた。結果を図10(a)に示した。
[実験例4]
以下の変更点以外は実験例3と同様にしてNd−Fe−B系希土類焼結磁石の切断を実施した。
切断操作を以下のとおりとした。
使用する研削液は30L/minとした。まず、マルチ切断砥石ブレードをNd−Fe−B系希土類焼結磁石を固定している一方の磁石固定治具上でNd−Fe−B系希土類焼結磁石側に降下させ、各々の外周切断刃をその外周から0.75mm各々のガイド溝に挿入し、マルチ切断砥石ブレードを9,000rpm(61m/sec)で回転させ、研削液を研削液供給ノズルから供給しながら、1500mm/minの速度で他方の磁石固定治具側へ移動させて切削し、更に、マルチ切断砥石ブレードの高さを変えずに、上記一方の磁石固定治具側に戻して、Nd−Fe−B系希土類焼結磁石に切断溝(深さ0.75mm)を形成した。
次に、上記一方の磁石固定治具上で、マルチ切断砥石ブレードをNd−Fe−B系希土類焼結磁石側に0.75mm降下させ、マルチ切断砥石ブレードを9,000rpmで回転させ、研削液を研削液供給ノズルから供給しながら、1500mm/minの速度で他方の磁石固定治具側へ移動させて切削し、更に、マルチ切断砥石ブレードの高さを変えずに、上記一方の磁石固定治具側に戻した。この降下と移動(切削)を26サイクル繰り返して、Nd−Fe−B系希土類焼結磁石を切断した。
Nd−Fe−B系希土類焼結磁石の切削の際、Nd−Fe−B系希土類焼結磁石の下にキスラー社製の薄型切削動力計 9254を設置し、磁石の受ける応力を測定した。結果を図11(a)に示す。(なお、図11(a)には、マルチ切断砥石ブレードの移動方向に沿った応力と共に、この方向に直交する上下方向及び切断砥石ブレードの回転軸方向の応力が併記されている。)最初のガイド溝を形成した切削時のマルチ切断砥石ブレードの移動方向に沿った応力、これ以降の切削時のマルチ切断砥石ブレードの移動方向に沿った応力のいずれも、切断砥石ブレードの進行方向と反対方向に100Nであった。
作製した外周刃を用いて切断された希土類磁石は、図10(d)に示されるような切断面間の角部及び中央部の5点の厚みをマイクロメーターで測定し、最大値と最小値との差を求めた。結果を図10(b)に示した。
[比較実験例2]
以下の変更点以外は実験例3と同様にしてNd−Fe−B系希土類焼結磁石の切断を実施した。
研削液供給ノズルをスリットのない1つの開口部(高さ3mm、幅50mm(開口部面積150mm2))のみを有するものに変え、マルチ切断砥石ブレードの外方から研削液を研削液供給ノズルの開口部より噴射するようにした。
また、被切断物であるNd−Fe−B系希土類焼結磁石は、カーボンベース板にワックスによる接着により固定し、磁石固定治具は使用しなかった。
切断操作を以下のとおりとした。
使用する研削液は30L/minとした。まず、マルチ切断砥石ブレードをNd−Fe−B系希土類焼結磁石の切削方向の一端の外方で、各々の外周切断刃の下端がNd−Fe−B系希土類焼結磁石の上面より21mm下の高さとなるようにNd−Fe−B系希土類焼結磁石側に降下させ、マルチ切断砥石ブレードを9,000rpmで回転させ、研削液を研削液供給ノズルから供給しながら、20mm/minの速度で切削方向の他端側の外方へ移動させて切削し、更に、マルチ切断砥石ブレードの高さを変えずに、上記一端側の外方に戻した。
Nd−Fe−B系希土類焼結磁石の切削の際、Nd−Fe−B系希土類焼結磁石の下にキスラー社製の薄型切削動力計 9254を設置し、磁石の受ける応力を測定した。結果を図11(b)に示す(なお、図11(b)には、マルチ切断砥石ブレードの移動方向に沿った応力と共に、この方向に直交する上下方向及び切断砥石ブレードの回転軸方向の応力が併記されている。)。切削時のマルチ切断砥石ブレードの移動方向に沿った応力は、切断砥石ブレードの進行方向に190Nであった。
作製した外周刃を用いて切断された希土類磁石は、図10(d)に示されるような切断面間の角部及び中央部の5点の厚みをマイクロメーターで測定し、最大値と最小値との差を求めた。結果を図10(c)に示した。
図10から明らかなように、本発明のマルチ切断加工方法によって、切断することにより切断精度が格段に向上することがわかる。更に、マルチ切断砥石ブレードの移動方向と反対方向に応力がかかるように切削することで、更なる精度向上が図れることがわかる。
希土類磁石の製造のプレス成形、焼結・熱処理及び加工における形状の変化を説明する概念図である。
本発明に用いるマルチ切断砥石ブレードの一例を示す斜視図である。
本発明に用いられる研削液供給ノズルの一例を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は正面図、(d)は(a)のX部の拡大図である。
図3の研削液供給ノズルを示す別の図であり、(a)は平面図、(b)は(a)中のB−B線に沿った断面図、(c)は(a)中のC−C線に沿った断面図、(d)は(a)中のD−D線に沿った断面図である。
本発明に用いられる研削液供給ノズルの別の例を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は正面図、(c)は側面図である。
本発明に用いられる一例の研削液供給ノズルのスリットに図2のマルチ切断砥石ブレードを挿入した状態を示す斜視図である。
図6で示したマルチ切断砥石ブレード及び研削液供給ノズルを用いて希土類磁石を切断する状態を示す斜視図である。
本発明の一例の磁石固定治具を用いて希土類磁石を切断する過程を説明する斜視図である。
本発明の一例マルチ切断砥石ブレード、一例の研削液供給ノズル及び一例の磁石固定治具を用いて希土類磁石を切断する状態を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図、(d)は正面図である。
実験例3,4及び比較実験例2における、切断された磁石の厚みの精度を示すグラフである。
実験例4及び比較実験例2における切削応力の測定結果を示すグラフである。
符号の説明
1 マルチ切断砥石ブレード(マルチ切断刃)
11 切断砥石ブレード(外周刃)
11a 砥石外周刃(砥粒部)
11b 台板
12 回転軸(シャフト)
2 研削液供給ノズル
2a 研削液供給ノズル本体
2b 導入流路
21 スリット
21a スリット形成部
22 研削液導入口
23 流路(液だまり)
30 基体
31 磁石固定治具
31a ガイド溝
31b ビス31b
32 ベース板
m 希土類磁石
101 成形品
102 焼結・熱処理品
103 加工処理品(製品)