JP5226685B2 - ポリミキシン誘導体およびその使用 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリミキシン誘導体およびグラム陰性菌による感染症の治療への使用に関するものである。このポリミキシン誘導体は、抗菌効果を有するか、または細菌を感作して他の抗菌剤の効果を高めることができる。
敗血症によって毎年215,000人以上のアメリカ人が死亡している。毎年750,000人のアメリカ人が重篤な敗血症に感染し、そのうち29%が毎年死亡していると推定されている。敗血症による死亡は、アメリカ合衆国において全死亡数の9%を占める。敗血症により、交通事故よりも多くて心筋感染症と同程度の人数のアメリカ人が死亡している。
毎年200〜300万人のアメリカ人が院内感染し、この感染者の10%が敗血症に進行する。これらの患者のうち90,000人以上が病院内において感染した敗血症によって死亡している。
重篤な敗血症および敗血症ショック(低血圧を伴う重篤な敗血症)は、2000年OECD保健報告によると、欧州連合(EU)内の集中治療室(ICU)において135,000人にも上った。イギリスにおいては、院内感染した100,000人の患者のうち5,000人が毎年NHS機関に属する救急病院において敗血症により死亡している。
死亡者数が年々増加しているのは、高齢者、未熟児、癌患者等の敗血症にかかりやすい患者数が増加しているためであり、特に、他の多くの重症疾患が以前よりも治療可能であるからである。侵襲的な医療機器および攻撃的な治療法の用途も同様に増加してきている。
グラム陰性菌は、全敗血症感染症の40%以上を引き起こし、グラム陰性菌の多くは、極めて多耐性である。グラム陰性菌は、その最外側構造として外膜が独特の構造を有するので、グラム陽性菌よりも治療が困難である。外膜に位置するリポ多糖類分子は、多くの抗菌剤がその最終的な標的が位置する細胞内に深く拡散するのを阻害する。1972〜1991年に自然界から単離されたまたは化学的に合成された新規な抗菌剤の95%以上は、グラム陰性菌に対する活性に欠ける(Vaara 1993)。
ポリミキシン類は、パエニバチルスポリミキサ(Paenibacillus polymyxa)および関連微生物の菌株によって産生した一群の密接に関連した抗生物質である。これらの陽イオン性薬物は、分子量が約1000の比較的簡単なペプチドである。ポリミキシンBのようなポリミキシン類は、デカペプチド抗生物質、すなわち10個のアミノアシル残基からなるものである。これらは殺菌性であり、特に大腸菌および他の種族の腸内細菌、シュードモナス、アシネトバクターバウマンニ(Acinetobacter baumannii)等のようなグラム陰性菌に対して効果的である。しかし、ポリミキシン類は、腎毒性および神経毒性を含む重大な副作用を有する。したがって、これら薬物は、高い全身毒性のために治療薬としての使用が制限されてきた。
ポリミキシン類は、その細菌によって生起された重篤な感染症の治療に用いられてきたが、より新しくより高い耐性を持つ抗生物質が開発されると、その毒性のために70年代に使用が著しく破棄された。グラム陰性菌の多耐性の菌株が近年出現したことにより、毒性にも関わらず、ポリミキシン類の治療上の使用を最後の手段として必要となり、また毒性の低い抗生物質の多くが既に前記細菌の特定の菌株に対する効力を失ったため、ポリミキシン類の使用が再び増加した。
したがって、ポリミキシン類は、その毒性により極めて制限された規模ではあるが、現在治療備品に呼び戻されている。しかし、これらの体系的な(すなわち、局所的でない)使用は、緑膿菌およびアシネトバクターバウマンニの多耐性の菌株並びにカルバペネム耐性腸内細菌によって生起された命を脅かす感染症の治療に大きく制限されている。
ポリミキシン類は、環状のヘプタペプチド部と、トリペプチド部分および該トリペプチドのN末端アミノ酸残基のaアミノ基に尾結合した疎水性脂肪酸からなる直鎖状部とからなり、次式
によって表すことができ、ここでR1−R3がトリペプチドの側鎖部分を表し、R4−R10がヘプタペプチド環状部分を表し、R(FA)がトリペプチドのN末端アミノ酸残基のaアミノ基に尾結合した疎水性脂肪酸を表す。
ポリミキシン群は、以下のポリミキシン類、A1,A2,B1−B6,C,D1,D2,E1,E2,F,K1,K2,M,P1,P2,SおよびTを含む(Storm その他. 1977; Srinivasa and Ramachandran 1979)。すべてのポリミキシン類は、ポリ陽イオン性であり、4個の正電荷を有するポリミキシンD,FおよびSを除いて、5個の正電荷を有する。脂肪酸部R(FA)がないが、R1−R10を有する修飾したポリミキシン類は、それらを誘導した天然ポリミキシン類と比較すると、誘導体のN末端における遊離αアミノ基により、1個の追加正電荷を有することに注目すべきである。したがって、例えば、ポリミキシンBまたはポリミキシンEの誘導体は、全部で6個の正電荷を有する。
臨床的に用いるポリミキシンBおよびポリミキシンEは、残基R6のみが互いに異なり、ポリミキシンBではD―フェニルアラニン残基、ポリミキシンEではD―ロイシン残基である。
また、サークリンAおよびBをポリミキシン類として分類する(Strom その他 1977)。これらが他のポリミキシン類と異なるのは、位置R7においてイソロイシル残基を有することのみであり、他のポリミキシン類は前記位置にトレオニルまたはロイシル残基のいずれかを有する。いくつかのポリミキシン類の構造の概要については表1を参照。
ポリミキシンBは次式で表される。
市販のポリミキシンBは、R−FAが主に6―メチルオクタノイル(6−MOA、ポリミキシンB1において)であるが、6―メチルヘプタノイル(6−MHA、ポリミキシンB2において)、オクタノイル(ポリミキシンB3において)またはヘプタノイル(ポリミキシンB4)のような関連する脂肪酸アシルでもよい混合物である(Sakura その他2004)。これらすべての変異体は、大腸菌のようなグラム陰性菌に対して等しく効効能がある(Sakura その他2004)。同様に、ポリミキシンE1(コリスチンA)およびサークリンAにおけるR−FAは6−MOAであり、ポリミキシンE2(コリスチンB)およびサークリンBにおけるR−FAは6−MHAである。多くの研究者が、様々な脂肪酸アシル残基を含む様々な疎水部分をポリミキシン誘導体およびその類似体のN末端に結合させ、生成した誘導体が強力な抗菌活性を有することを示した(Chihara その他1973, Sakura その他2004,および 米国特許出願公開第2006004185号)。R−FAとして巨大な疎水性9フルオレニルメトキシカルボニル残基を有する誘導体さえも、大腸菌および他のグラム陰性菌の増殖を阻害するのにポリミキシンBと同じくらい強力である(Tsubery その他2001)。
ヘプタペプチド環状構造が生物学的活性に必須である(Storm その他 1997)。オクタペプチド環を有する誘導体は、抗生物質としての活性が著しく少ない。
ポリミキシン類の多様な修飾体および多様なポリミキシン類似合成分子が作成され、一定の制限を伴って生物活性を維持する。修飾体並びに分子は側鎖を有するが、これに限定されず、ここで固有の疎水性アミノ酸残基(DPhe又はLeuのような)が他のアミノ酸残基と交換されるか、または陽イオン性DabがLys,Argまたはオレニチン残基のような他の陽イオン性アミノアシル残基と交換される(Storm その他 1997, Tsubery その他 2000a, Tsubery その他 2002, 米国特許出願公開2004082505号,Sakura その他 2004,米国特許出願公開2006004185号)。
微生物学的に少なくとも部分的に活性な化合物となる他の修飾体は、アルカノイルエステルを備えるが、これに限定されず、ここでトレオニン残基のOH基がプロピオニルおよびブチリルのようなアルカノイルとエステルを形成する(米国特許3450687号明細書)。
オクタペプチン類は、ポリミキシン類と密接に関連しているものであるが、残基R1−R2の代わりに共有結合を有する(表1)。本発明においては、R位置を天然ポリミキシン類におけるものに従って番号付けし、したがってオクタペプチン類の側鎖におけるアミノアシル残基のみがR3として定義される。したがって、オクタペプチンはオクタペプチドであり、すべての天然ポリミキシン類はデカペプチドであり、4個の正電荷しか持たない。様々なオクタペプチン類(A1,A2,A3,B1,B2,B3,C1)中のR−FA残基は、以下の3−OH−8−メチルデカン酸、3−OH−8−メチルノナン酸およびβ−OH−6−メチルオクタン酸を含む。6〜18個の炭素原子の脂肪酸アシル残基を有する誘導体は、大腸菌に対して強力な抗菌活性を有する(Storm その他 1997)。
グラム陰性菌におけるポリミキシン類の最初のターゲットは、大きな(700d以上のMw)抗生物質および疎水性抗生物質を含む多くの有害性剤に対して効果的な透過障壁である外膜(OM)である。OMの外面に露呈したリポ多糖体(LPS)分子に結合することによって、ポリミキシン類は、OMの構造および機能にダメージを与え、その結果OMをポリミキシン自体並びに他の多くの有害性剤に透過性にする(すなわち透過可能となる)(Nikaido and Vaara 1985, Vaara 1992, Nikaido 2003)。ポリミキシン類の最終的な致死のターゲット(殺菌性のターゲット)は、細菌の細胞質膜(内膜)だと言われている。
ポリミキシン類の毒性を低減するために多くの努力がなされてきた。ホルムアルデヒドおよび亜硫酸水素ナトリウムでポリミキシンE(コリスチン)を処理すると、5個のジアミノ酪酸残基の遊離アミノ基がスルホメチル基によって部分的に置換されたコリスチン硫酸(colistin sulphomethate)が得られる(表1)。調剤は、モノ、ジ、トリ、テトラおよびペンタ置換化合物の不定の混合物からなる。スルホメチル化調剤は、新たに水に溶解する際、最初に親分子の抗菌活性および毒性の両方を失うが、化合物が溶液中、血中または組織中で分解を開始してより置換の少ない誘導体および遊離コリスチンを生成する際は、抗菌活性および毒性の両方が部分的に回復する。さらに、初期のスルホメチル化の程度は、明らかに市販の医薬品によって異なる。すべての遊離アミノ基をブロックする多くの他の方法も開示されてきた。実施例には、限定することはないが、アミノ酸類で不安定なシッフ塩基の形成がある(Storm その他 1997)。
ポリミキシンEを酵素的に処理し、R−FAおよびR1を欠くことにより得たポリミキシンEノナペプチド(PMEN、コリスチンノナペプチド、表1)は、ネズミの正確な毒性試験(おそらく直接的神経筋遮断薬による突然死)において親化合物よりも毒性が低いことが1973年に示された(Chihara その他 1973)。しかし、これは、細菌増殖を阻害する能力として測定して抗菌活性も失う(Chihara その他 1973)。
一方、VaaraおよびVaaraは、ポリミキシンBノナペプチド(PMBN、表1)がグラム陰性菌のOMを透過性にする能力を維持することを示した(Vaara and Vaara 1983a,b,c;米国特許4510132号;Vaara 1992)。したがって、直接的な抗菌活性(すなわち、細菌の増殖阻害能力)が欠けているけれども、疎水性抗生物質および大きな抗生物質のような多くの抗菌剤や他の幾つかの有害性剤に対して細菌を感作させる(すなわち敏感にする、または同様に言うと、多感にする)ことができる。
PMBNはまた、侵入物に対する第一線の防御系として新鮮なヒトの血清に存在するヒトの補体系の殺菌活性に細菌を感作させる(Vaara and Vaara 1983a, Vaara その他 1984, Vaara 1992)。さらに、血清補体およびヒト多核白血球の共同殺菌活性に細菌を感作させる(Rose その他 1999)。
PMBNは、未修飾のポリミキシン類よりネズミの正確な毒性試験において毒性が低い点でPMENと似ている。さらなる毒性試験において、様々な基準によってPBMは親化合物より毒性が低いと証明されたが、このポリミキシン誘導体は、依然として臨床用途では腎毒性が強すぎると判断された(Vaara 1992)。
PMBNは5個の正電荷を有する。その後の研究によって、全く予想通り、5個の正電荷を有するPMEN並びに共に6個の正電荷を有するデアシルポリミキシンBおよびデアシルポリミキシンEが、他の抗生物質に細菌を感作させる強力な物質であることが解明された(Viljanen その他 1991, Vaala 1992)。加えて、構造的にさらに減少した誘導体ポリミキシンBオクタペプチド(PMBO)は極めて有効な透過活性を維持するが、ポリミキシンBヘプタペプチド(PMBH)は活性が低いことが示された(Kimura その他 1992)。PMBN,PMENおよびPMBOは5個の正電荷を有するが、PMBHは4個しか正電荷を有さない。この違いによりPMBHの低活性を説明できる。
最近、Ofek,TsubeyおよびFriedkinは、多形核白血球を引き付けるfMLFのような走化性ペプチドに結合したポリミキシン類似ペプチドを開示している(米国特許出願公開2004082505号、Tsurbey その他 2005)。彼らは、化合物濃度を高くした比較研究はされなかったけれども、すべて4個の正電荷を有し、抗生物質にグラム陰性菌を感作させるペプチドfMLF−PMBN,MLF−PMBN,fMLF−PMEN,fMLF−PMBOを開示している(Tsurbey その他 2005)。
ポリミキシン類の構造および機能特性を研究するため、数人の研究者が、他の化合物のうち4個未満の正電荷を有するポリミキシン誘導体を開示した。
Teuber(1970)は、ポリミキシンBを無水酢酸で処理してポリミキシンB並びにそのモノ、ジ、トリ、テトラおよびペンタ−N−アセチル化体を含む調剤を得ることを開示した。Teuberはまた、各基を分け、寒天拡散試験を用いてペンタアセチル化体およびテトラアセチル化体が、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)の増殖を止める能力に欠けるが、ジおよびモノアセチル化体はこの能力を有することを非定量的に示した。トリアセチル化体はいくらかの能力を有する。
SrinivasaおよびRamachandran(1978)は、一部ホルミル化したポリミキシンB誘導体を分離し、ジホルミル誘導体並びにトリホルミル誘導体が緑膿菌の増殖を阻害することを示した。彼らは、この化合物の抗生物質に細菌を感作する能力を開示しなかった。さらに、1980年彼らは、残基R1およびR3におけるトリホルミルポリミキシンBの遊離アミノ基と、残基R1,R3,およびR5におけるジホルミルポリミキシンBの遊離アミノ基が増殖阻害に必須であるが、R8およびR9における遊離アミノ基は必須でないことを示した(Srinivasa and Ramachandran, 1980a)。
短縮ポリミキシンB誘導体オクタノイルポリミキシンBヘプタペプチドが、Sakuraらによって開示された(2004)。オクタノイル残基をポリミキシンBヘプタペプチドの残基R4のN末端に結合させると、3個の正電荷のみを有する化合物になる。Sakuraらは、オクタノイルポリミキシンBヘプタペプチドが、極めて高い濃度(128μg/ml)でのみ細菌の増殖を阻害するが、共に4個の正電荷を有するオクタノイルポリミキシンBオクタペプチドおよびオクタノイルポリミキシンBノナペプチドのような他の誘導体が細菌の増殖を阻害する極めて強力な薬剤であることを見出した。
米国特許出願公開2006004185号には、新たなペプチド抗生物質を合成するのに使用することができるポリミキシン誘導体および中間生成物を最近開示した。開示された抗菌性化合物は4個または5個の正電荷を有する。
細菌性感染症、特に多耐性のグラム陰性菌によって生起される感染症に対する効果的な治療が差し迫って必要である。
[参考文献]
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米国特許出願公開2006004185号明細書 米国特許出願公開2004082505号明細書 米国特許3450687号明細書 米国特許4510132号明細書
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本発明は、生物学的pHでの全正電荷数が少なくとも2個で3個を越えず、但しR(FA)−R1−R2−R3が天然のポリミキシンB側鎖を構成する際にはR8およびR9が共にホルミル化されず、またR4−R10が天然のポリミキシンB環状構造を構成する際にはR4が直接オクタノイル残基に結合しないポリミキシン誘導体に関するものである。より詳細には、本発明は、R1−R10を配列番号s9−26、好ましくは配列番号s9−20からなる群から選択する誘導体に関するものである。
本発明はまた、2個またはそれ以上の本発明に係る誘導体を有する併用製品に関するもので、またかかる誘導体又はその組合せと、薬学的に許容される担体および賦形剤とを備える医薬組成物に関するものである。
さらに、本発明は、グラム陰性菌により生起された個体における感染症を治療、緩和、および改善する方法に関するもので、前記個体に対して本発明に係る誘導体またはその組合わせを治療に効果的な量で投与することを備え、前記細菌を大腸菌、肺炎桿菌、クレブシエラオキシトーカ(Klebsiella oxytoca)、エンテロバクタークロアカ(Enterobacter cloacae)、シトロバクターフロインディ(Citrobacter freundii)、緑膿菌およびアシネトバクターバウマンニからなる群から選択し得る。
他の実施形態において、本発明は、グラム陰性菌を抗菌剤に感作させる方法に関するもので、前記抗菌剤および本発明に係る誘導体を治療に効果的な量で同時にまたはいずれかの順番で順に投与することを備え、前記抗菌剤をクラリスロマイシン、アジスロマイシン、エリスロマイシンおよび他のマクロライド系抗生物質、ケトライド、クリンダマイシンおよび他のリンコサミン類、ストレプトグラミン、リファンピン、リファブチン、リファラジルおよび他のリファマイシン類、フシジン酸、ムピロシン、オキサゾリジノン類、バンコマイシン、ダルババンシン、テラバンシン、オリタバンシンおよび他のグリコペプチド系抗生物質、フルオロキノロン類、バシトラシン、テトラサイクリン誘導体、ベータラクタム系抗生物質、ノボビオシン、プレウロムチリン類、葉酸合成阻害剤、デホルミラーゼ阻害剤および細菌排出ポンプ阻害剤からなる群から選択し得る。
また、新規な抗生物質の開発方法、天然ポリミキシン類、オクタペプチン類およびそれらの誘導体の毒性を低減する方法、天然ポリミキシン類、オクタペプチン類およびそれらの誘導体の薬物速度論的特性を改善する方法、臨床学的に重要なグラム陰性菌を血清中に存在する宿主防御機構補体に感作させる方法を提供する。
本発明はまた、大腸菌、肺炎桿菌、クレブシエラオキシトーカ、エンテロバクタークロアカ、シトロバクターフロインディ、緑膿菌およびアシネトバクターバウマンニのようなグラム陰性菌によって生起された感染症を治療するための薬剤の製造への本発明に係るポリミキシン誘導体の使用、グラム陰性菌を抗菌剤に対して感作させるための薬剤の製造するための使用、およびグラム陰性菌を血清中に存在する宿主防御機構補体に対して感作させるため使用を提供する。
最後に、本発明は、本発明に係るポリミキシン誘導体を製造する方法に関するもので、2または3個の正に荷電した残基を有する式(I)のポリミキシン誘導体を得るために前記残基の1〜4個を中性の残基もしくは共有結合に交換するか、または前記残基の1〜4個を中性の残基に転換することにより4〜6個の正に荷電した残基を有する天然もしくは合成ポリミキシンもしくはオクタペプチン化合物またはその誘導体を修飾することを備える。
[定義]
ここで用いる「生物学的pH」は、7.1〜7.5の範囲、例えば7.2〜7.4の範囲のpH値のような7.0より大きく7.6以下のpH値を表す。
ここで用いる「正電荷」は、上述した生物学的pHでの正電荷を意味する。
ここで用いる「陽イオン性」分子は、1個またはそれ以上の正電荷を有する分子を表す。
ここで用いる「アミノ酸残基」は、LもしくはD配置のいずれかの天然、非天然または修飾アミノ酸残基を表す。
ここで用いる「等価残基」は、非天然アミノ酸またはその誘導体になるが、交換した残基の構造および/または機能を維持するアミノ酸に対する明らかな修飾を有することを意味する。
ここで用いる「天然ポリミキシン」は、ポリミキシン類およびサークリン類を表す。
「ポリミキシン誘導体」は、本発明の目的に対して、環状ヘプタペプチド(すなわちヘプタペプチド環)部分R4−R10と、N末端アミノアシル残基R4に結合した側鎖とを有する天然ポリミキシン類もしくはオクタペプチン類の合成もしくは半合成誘導体を示す。側鎖は、R(FA)トリアミノアシル(R1−R3)、R(FA)ジアミノアシル(R2−R3)、R(FA)モノアミノアシル(R3)、またはR(FA)単独から構成することができる。
ここで用いる「化合物」は、前記化合物のすべての立体化学異性体を含む。
ここで用いる「感作活性」または「感作させる能力」は、細菌を抗菌剤に対して感度を高める、敏感にするまたは多感にする能力を有することを示す。
脂肪酸の略称:FA、脂肪酸アシル残基;6−MOAおよびMOA、6−メチルオクタノイル残基;6−MHAおよびMHA、6−メチルヘプタノイル残基;MO(H)A、ポリミキシンBにおいて生ずる6−メチルオクタノイル、6−メチルヘプタノイルおよび関連する脂肪酸アシル残基の混合物;OHMDA,3−OH−8−メチルデカン酸;OA、オクタノイル残基;DA、デカノイル残基;
アミノ酸の略称:Dab、α,g−ジアミノ−n―ブチル残基;fDab、N−g−ホルミル−ジアミノ−n−ブチリル残基;acDab、N−g−アセチルジアミノ−n−ブチリル残基;Abu、a−アミノブチリル残基;Thr、トレオニル残基;Ser、セリニル残基;Phe、フェニルアラニン残基;Leu、ロイシン残基;Ile、イソロイシン残基;Ala、アラニル残基;sm−Dab、g−スルホメチル化α,g−ジアミノ−n−ブチリル残基。修飾アミノアシル残基に対する1文字コードはX、Dab;Z、Abu;B、N−y−fDab;J、N−y−acDabである。
ペプチドの略称:DAPB、デアシルポリミキシンB;DAC、デアシルコリスチン;PMBN、ポリミキシンBノナペプチド;PMEN、ポリミキシンEノナペプチド;PMBO、ポリミキシンBオクタペプチド;PMHP、ポリミキシンBヘプタペプチドである。
その他の略称:cy、シクロ(括弧内のペプチドの環状部を意味する);f、ホルミル;ac、アセチル;LPS、リポ多糖体;OM、外膜;CFU、コロニー形成ユニットである。記号*は、化合物のヘプタペプチド環状部分を閉じて分子の残りの部分を側鎖として残すような残基を作るときに使用する。
少なくとも2個で3個を越えない正電荷を有するポリミキシン誘導体は、グラム陰性菌に対して抗菌活性を有し、および/または抗生物質、半合成抗生物質、化学療法剤のような抗菌剤および補体のような宿主防御要因などにグラム陰性菌を感作させる能力を有することを見出した。
この正電荷の減少は、天然ポリミキシン類およびその既知誘導体と比較すると、本発明に係る誘導体の薬理学的特性を改善することができる。より詳細には、化合物の腎毒性を含む毒性を低減し、および/または化合物による宿主組織からのヒスタミン遊離を減少させ、および/またはポリミキシンBノナペプチドのような臨床的に用いるポリミキシンおよびそれらの以前開示および特徴付けられた誘導体と比較して、血清の半減期が長く、ポリアニオン系組織および膿成分によって不活性化しにくい等のより適切な薬物速度論的特性をもたらす。
したがって、本発明は、次の一般式I
(ここでR1,R2,およびR3はなくてもよく、
化合物中の遊離した未置換の陽イオン性電荷数が少なくとも2個で3個を超えない)によって表わし得るポリミキシン誘導体又はその薬物学的に許容し得る塩に関するものである。
天然ポリミキシン類およびオクタペプチン類において、R(FA)は6−メチルオクタン酸(6−MOA)、6−メチルヘプタン酸(6−MHA)、オクタン酸、ヘプタン酸、ノナン酸、3−OH−6−メチルオクタン酸、3−OH−8−メチルデカン酸、3−OH−8−メチルノナン酸、3−OH−8−デカン酸および3−OH−6−メチルオクタン酸である。抗菌活性を有する既知の誘導体を例示すると、R(FA)がγ−フェニルブチル酸、イソ吉草酸、9−フルオレニルメトキシカルボン酸、C9〜14の直鎖脂肪酸、およびイソC9とイソC10脂肪酸がある。
本発明に係る誘導体において、R(FA)はあらゆる疎水性脂肪酸残基とすることができ、好ましくはオクタノイル、デカノイルおよび6−MHA残基からなる群から選択される。
当業者は、これらの好ましい疎水性R(FA)残基の等価物を容易に認識でき、これは任意に置換されたアシル残基またはアルキル残基、任意に置換されたイソアルキル残基、任意に置換されたシクロアルキル残基、任意に置換されたアルケニル残基、任意に置換されたシクロアルケニル残基、任意に置換されたアリール残基、任意に置換されたヘテロアリール残基、任意に置換された複素環残基のようなアシル残基からなる群から選択することができ、ここで前記残基が、好ましくは5個以上の炭素原子を有し、また置換基がペプチド残基とN末端との間で任意に設計されたものも含むことができる。R(FA)は、疎水性オリゴペプチドでもよい。可能なR(FA)残基を例示すると(限定することはないが)、オクタノイル、ノナノイル、イソノナノイル、デカノイル、イソデカノイル、ウンデカノイル、ドデカノイル、テトラデカノイル、シクロへキサノイル、シクロヘプタノイル、シクロオクタノイル、シクロノナノイル、シクロイソノナノイル、シクロデカノイル、シクロイソデカノイル、シクロウンデカノイル、シクロドデカノイル、シクロテトラデカノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイルおよび9−フルオレニルメトキシカルボニル残基がある。
天然ポリミキシン類およびオクタペプチン類において、R1はDabまたは存在しない(すなわち、共有結合に交換された)。抗菌活性を有する既知の誘導体の例は、R1がAlaまたは共有結合であるものを含む。
本発明に係る誘導体において、R1は、存在するのであれば、あらゆるアミノ酸残基とすることができ、但し前記誘導体における全正電荷数が3個を超えず、また側鎖部分における全正電荷数が2個を超えず、好ましくは、存在するのであれば、Abuである。
天然ポリミキシン類およびオクタペプチン類において、R2はThrまたは存在しない(すなわち、共有結合に交換された)。抗菌活性を有する既知の誘導体の例は、R2がO−アセチル−Thr、O−プロピニル−Thr、O−ブチリル−Thrまたは共有結合であるものを含む。
本発明に係る誘導体において、R2は、存在するのであれば、あらゆるアミノ酸残基とすることができ、但し前記誘導体における全正電荷数が3個を超えず、また側鎖部分における全正電荷数が2個を超えず、好ましくは、存在するのであれば、Thr,DThr,およびDAlaからなる群から選択される。当業者は、Thrの等価残基がSerであると認識できる。
天然ポリミキシン類およびオクタペプチン類において、R3はDab,DDabまたはDSerである。抗菌活性を有する多くの既知の合成誘導体の例は、R3がLysまたは2−アミノ−4−グアニジノ酪酸であるものを含む。
本発明に係る誘導体において、R3は、存在するのであれば、あらゆるアミノ酸残基とすることができ、ただし前記誘導体における全正電荷数が3個を超えず、また側鎖部分における全正電荷数が2個を超えず、好ましくは、存在するのであれば、Thr,DThr,Ser,DSer,DAla,Dab,およびAbuからなる群から選択される。
当業者は、これら好ましい残基R1,R2,およびR3の等価残基を容易に認識でき、例えば共有結合、アラニン、2−アミノアジピン酸、α−n−酪酸、N−(4−アミノブチル)グリシン、α−アミノ酪酸、γ−アミノ酪酸、α−アミノカプロン酸、アミノシクロプロパンカルボキシレート、アミノイソ酪酸、アミノノルボルニルカルボキシレート、α−アミノ−n−吉草酸、アルギニン、Nω−メチルアルギニン、アスパラギン、α−メチルアスパラギン酸塩、アスパラギン酸、N−ベンジルグリシン、N−(2−カルバミルエチル)グリシン、N−(カルバミルエチル)グリシン、1−カルボキシ−1(2,2−ジフェニルエチルアミノ)シクロプロパン、システイン、Nα−メチルジアミノ−n−酪酸、Nγ−アセチルジアミノ−n−酪酸、Nγ−ホルミルジアミノ−n−酪酸、Nγ−メチルジアミノ−n−酪酸、N−(N−2,2−ジフェニルエチル)カルバミルメチル−グリシン、N−(N−3,3−ジフェニルプロピル)カルバミルメチル(1)グリシン、N−(3,3−ジフェニルプロピル)グリシン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、t−ブチルグリシン、2−アミノ−4−グアニジノ酪酸、N−(3−グアニジノプロピル)グリシン、ヒスチジン、ホモフェニルアラニン、イソデスモシン、イソロイシン、ロイシン、ノルロイシン、ヒドロキシリジン、Nα−メチルリジン、リジン、Nα−メチルヒドロキシリジン、Nα−メチルリジン、N−アセチルヒドロキシリジン、N−アセチルリジン、N−ホルミルヒドロキシリジン、N−ホルミルリジン、N−メチルヒドロキシリジン、N−メチルリジン、メチオニン、α−メチル−γ−アミノブチレート、α−メチル−アミノイソブチレート、α−メチルシクロヘキシルアラニン、α−ナフチルアラニン、ノルロイシン、ノルバリン、α−メチルオルニチン、Nα−メチルオルニチン、Nδ−アセチルオルニチン、Nδ−ホルミル−オルニチン、Nδ−メチルオルニチン、オルニチン、ペニシラミン、フェニルアラニン、ヒドロキシプロリン、プロリン、Nα−メチルジアミノ−n−プロピオン酸、Nβ−アセチルジアミノ−n−プロピオン酸、Nβ−ホルミルジアミノ−n−プロピオン酸、Nβ−メチルジアミノ−n−プロピオン酸、ホスホセリン、セリン、リン酸スレオニン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、ノルバリン、およびバリンからなる群から選択することができる。
天然ポリミキシン類およびオクタペプチン類において、R4はDabである。抗菌活性を有する合成誘導体の例は、R4がLysであるものを含む。
本発明に係る誘導体において、R4は、分子を環化し得る機能的な側鎖を有するアミノ酸残基であり、Lys,ヒドロキシリジン、オルニチン、Glu,Asp,Dab、ジアミノプロピオン酸、Thr,SerおよびCysからなる群から選択することができ、好ましくはDabである。
天然ポリミキシン類およびオクタペプチン類において、R5,R8およびR9はDabである。抗菌活性を有する合成誘導体の例は、R5,R8およびR9がLysまたは2−アミノ−4−グアニジノ酪酸であるものを含む。
本発明に係る誘導体において、R5,R8およびR9は、正に荷電した、または中性のアミノ酸残基とすることができ、好ましくは、前記誘導体における全正電荷数が3個を超えないのであれば、DabまたはAbuである。
当業者は、これら好ましい残基の等価残基を容易に認識することができ、例えばジアミノ酪酸、ジアミノプロピオン酸、リジン、ヒドロキシリジン、オルニチン、2−アミノ−4−グアニジノ酪酸、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、D−フェニルアラニン、メチオニン、トレオニン、セリン、α−アミノ−n−酪酸、α−アミノ−n−吉草酸、α−アミノ−カプロン酸、N−ホルミルリジン、N−アセチルリジン、N−メチルリジン、N−ホルミルヒドロキシリジン、N−アセチルヒドロキシリジン、N−メチルヒドロキシリジン、L−Nα−メチルヒドロキシリジン、Nγ−ホルミルジアミノ−n−酪酸、Nγ−アセチルジアミノ−n−酪酸、Nγ−メチルジアミノ−n−酪酸、Nβ−ホルミルジアミノ−n−プロピオン酸、D−Nβ−ホルミルジアミノ−n−プロピオン酸、Nβ−アセチルジアミノ−n−プロピオン酸、Nβ−メチルジアミノ−n−プロピオン酸、Nδ−ホルミルオルニチン、Nδ−アセチルオルニチンおよびNd-メチルオルニチンからなる群から選択することができる。
天然ポリミキシン類およびオクタペプチン類において、R6はDPheまたはDLeuであり、R7はLeu,Ile,PheまたはThrである。抗菌活性を有する合成誘導体は、R6がDTrpで、R7がAlaであるものを含む。
本発明に係る誘導体において、R6は任意に置換した疎水性のアミノ酸残基、好ましくはDPheまたはDleuであり、R7は任意に置換した疎水性残基、好ましくはLeu,ThrまたはIleである。
当業者は、これら好ましい疎水性残基の等価残基を容易に認識することができ、例えばフェニルアラニン、a−アミノ−n−酪酸、トリプトファン、ロイシン、メチオニン、バリン、ノルバリン、ノルロイシン、イソロイシン、およびチロシンからなる群から選択することができる。当業者はまた、トレオニンの等価残基がセリンであることを認識することもできる。
天然ポリミキシン類およびオクタペプチン類において、R10はThrおよびLeuである。抗菌活性を有する既知の合成誘導体の例は、R10がO−アセチル−Thr、O−プロピオニル−ThrまたはO−ブチリル−Thrであるものを含む。
本発明に係る誘導体において、R10はLeuまたはあらゆる非疎水性アミノ酸残基であり、但し前記誘導体における全正電荷数が3個を超えない。好ましくは、R10はThrまたはLeuである。
当業者はまた、トレオニンの等価残基がセリンであることを認識することもできる。
より詳細には、R(FA)−R1−R2−R3が天然のポリミキシンB側鎖を構成する際には、R8およびR9が共にホルミル化されず、またR4〜R10が天然のポリミキシンB環状構造を構成する際には、R4がオクタノイル残基に直接結合しないような方法で好適な残基を選択する。
上述した最大3個の正電荷の特定の位置は、ヘプタペプチド環状部分および/または存在するなら、側鎖において位置させることができる。3個の正電荷が本発明に係る誘導体に存在する場合、当該3個の正電荷をヘプタペプチド環状部分に位置されることができ、若しくは2個の正電荷をヘプタペプチド環状部分に位置させ、残り1個の正電荷を側鎖に位置させ、または1個の正電荷をヘプタペプチド環状部分に位置させ、残り2個の正電荷を側鎖に位置させる。好ましくは、少なくとも2個の正電荷がヘプタペプチド環状部分に位置する。
一実施形態において、本発明に係る誘導体は、R1〜R10をThr−DSer−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、配列番号10、Thr−DThr−cy[Dab−Dab−DPhe−Thr−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、配列番号11、Thr−DSer−cy[Dab−Dab−DPhe−Thr−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、配列番号12、Thr−Abu−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、配列番号13、Abu−Thr−Abu−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、配列番号14、Thr−Dab−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Abu−Dab−Thr−]、すなわち、配列番号15、Thr−Abu−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Dab−Dab−Leu−]、すなわち、配列番号16、Thr−DAla−cy[Dab−Dab−DPhe−Thr−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、配列番号17、Thr−Dab−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Dab−Abu−Thr−]、すなわち、配列番号18、Thr−Abu−cy[Dab−Dab−DLeu−Leu−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、配列番号19、DAla−DAla−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、配列番号20、cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、配列番号9、Abu−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、配列番号21、Thr−Dab−cy[Dab−Abu−DPhe−Leu−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、配列番号22、Dab−Thr−Dab−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Abu−Abu−Thr−]、すなわち、配列番号23、Thr−Abu−cy[Dab−Lys−DPhe−Leu−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、配列番号24、Thr−Abu−cy[Dab−Abu−DPhe−Leu−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、配列番号25、および、Thr−Abu−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Dab−Abu−Thr−]、すなわち、配列番号26からなる群から選択した誘導体の群から選択できるものとする。
他の実施形態において、本発明に係る誘導体は、OA−Thr−DSer−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、OA配列番号10、DA−Thr−DSer−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、DA配列番号10、OA−Thr−DThr−cy[Dab−Dab−DPhe−Thr−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、OA配列番号11、OA−Thr−DSer−cy[Dab−Dab−DPhe−Thr−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、OA配列番号12、DA−Thr−Abu−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、DA配列番号13、OA−Thr−Abu−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、OA配列番号13、MHA−Thr−Abu−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、MHA配列番号13、MHA−Abu−Thr−Abu−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、MHA配列番号14、OA−Thr−Dab−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Abu−Dab−Thr−]、すなわち、OA配列番号15、OA−Thr−Abu−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Dab−Dab−Leu−]、すなわち、OA配列番号16、OA−Thr−DAla−cy[Dab−Dab−DPhe−Thr−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、OA配列番号17、OA−Thr−Dab−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Dab−Abu−Thr−]、すなわち、OA配列番号18、OA−Thr−Abu−cy[Dab−Dab−DLeu−Leu−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、OA配列番号19、OA−DAla−DAla−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、OA配列番号20、DA−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、DA配列番号9、OA−Abu−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、OA配列番号21、OA−Thr−Dab−cy[Dab−Abu−DPhe−Leu−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、OA配列番号22、MHA−Dab−Thr−Dab−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Abu−Abu−Thr−]、すなわち、MHA配列番号23、OA−Thr−Abu−cy[Dab−Lys−DPhe−Leu−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、OA配列番号24、OA−Thr−Abu−cy[Dab−Abu−DPhe−Leu−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、OA配列番号25、および、OA−Thr−Abu−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Dab−Abu−Thr−]、すなわち、OA配列番号26からなる群から選択できるものとする。
好ましくは、本発明に係る誘導体は、OA−Thr−DSer−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、OA配列番号10、DA−Thr−DSer−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、DA配列番号10、OA−Thr−DThr−cy[Dab−Dab−DPhe−Thr−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、OA配列番号11、OA−Thr−DSer−cy[Dab−Dab−DPhe−Thr−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、OA配列番号12、DA−Thr−Abu−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、DA配列番号13、OA−Thr−Abu−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、OA配列番号13、MHA−Thr−Abu−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、MHA配列番号13、MHA−Abu−Thr−Abu−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、MHA配列番号14、OA−Thr−Dab−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Abu−Dab−Thr−]、すなわち、OA配列番号15、OA−Thr−Abu−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Dab−Dab−Leu−]、すなわち、OA配列番号16、OA−Thr−DAla−cy[Dab−Dab−DPhe−Thr−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、OA配列番号17、OA−Thr−Dab−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Dab−Abu−Thr−]、すなわち、OA配列番号18、OA−Thr−Abu−cy[Dab−Dab−DLeu−Leu−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、OA配列番号19、OA−DAla−DAla−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、OA配列番号20、および、DA−cy[Dab−Dab−DPhe−Leu−Dab−Dab−Thr−]、すなわち、DA配列番号9からなる群から選択される。
本明細書の実施例の項に示すように、3個の正電荷のみを有する本発明に係る化合物は、グラム陰性菌の増殖を阻害するか、または抗菌剤に感作させる極めて強力な薬剤とすることができ、2個の正電荷のみを有する誘導体でさえも、軽度ではあるが、同様の効果を有することができる。
直接的な抗菌活性に対しては、少なくとも2個、より好ましくは3個の正電荷をヘプタペプチド環状部分に位置させ、また感作活性に対しては、少なくとも1個、より好ましくは2個もしくは3個の正電荷をヘプタペプチド環状部分に位置させる。さらに、側鎖部に2個のヒドロキシル基が存在すると、直接的な抗菌活性を著しく高める。
Teuber(1970)、SrinivasaおよびRamachandran(1980年代)、およびSakuraら(2004)の研究によって、他のポリミキシン誘導体のうち、2個または3個の正電荷のみを有する誘導体が開示された。しかし、これら開示された誘導体の抗菌活性は、非常に弱く、臨床的に不適切であり(Sakura その他 1980)、本発明の発見と全く矛盾するアミノ酸残基に起因する(Srinivasa and Ramachandran 1980a)か、または不完全な精製のために特定のアミノ酸残基でないことに起因すると考えた(Teuber 1970)。さらに、上述の研究はどれも、グラム陰性菌を抗菌剤に対して感作させる誘導体の能力を研究することについての記述、示唆もしくは動機付けがない。本発明の実施例が明らかに示すように、グラム陰性菌の増殖阻害能力を基にして、ポリミキシン誘導体がグラム陰性菌を抗菌剤に対して感作させることができる能力を予測することは誰もできない。例えば、128μg/ml程の臨床的に不適切な高濃度のオクタノイルポリミキシンBヘプタペプチドが大腸菌の増殖を阻害するのに必要であるが(Sakura その他 2004)、本明細書の実施例の項に示すように、リファンピンに対する細菌の適度な感作には4μg程の低濃度で十分である。
Teuber(1970)によって開示されたアセチル化ポリミキシン誘導体は、異なるアセチル化誘導体の混合物である。無水酢酸が、ポリミキシンB分子の5個の遊離アミノ基のいずれかと反応して、モノアセチル化ポリミキシンを生成することができる。したがって、Teuberによるモノアセチル化ポリミキシンは、それぞれ異なるアミノ基でアセチル化した5個のモノアセチル化ポリミキシン誘導体の混合物である。Teuberによるジアセチル化ポリミキシンは、10個の異なるジアセチル化誘導体の混合物であり、トリアセチル化ポリミキシンも、10個の異なるトリアセチル化誘導体の混合物である。Teuberは、これらの誘導体を混合物から分離することはなかった。かかる修飾ポリミキシンの問題は、部分修飾が特異性の減少をもたらし得ることである。したがって、抗菌活性に重要ないくつかのアミノ基を部分的に置換する(したがって不活性化する)が、重要でないアミノ基のいくつかは部分的に未置換のままである。さらに、置換度は、ロット間変動をもたらす場合がある。
一方、本発明に係るポリミキシン誘導体は、分離し、構造的に明確に規定、同定された化合物である。
SrinivasaおよびRamachandran(1980a)は、残基R1およびR3におけるトリホルミルポリミキシンBの遊離側鎖アミノ基と、残基R1,R3,およびR5におけるジホルミルポリミキシンBの遊離アミノ基とが緑膿菌の増殖阻害に重要であるが、R8およびR9における遊離アミノ基は重要でないことを提唱した。この結論と対比して、本発明における化合物は、R1およびR3に遊離アミノ基がなく、R5,R8,およびR9にこれらを有するものを含み、また緑膿菌並びに他のグラム陰性菌に対してなお強力な薬剤である。
短縮化ポリミキシンB誘導体オクタノイルポリミキシンBヘプタペプチドが、Sakuraら(2004)によって開示された。オクタノイル残基のポリミキシンBヘプタペプチドの残基R4のN末端への結合が3個の正電荷のみを有する化合物をもたらす。Sakuraらは、オクタノイルポリミキシンBヘプタペプチドが、非常に高い(および臨床的に不適切な)濃度(128μg/ml)でのみ細菌の増殖を阻害するが、4個の正電荷を有するオクタノイルポリミキシンBオクタペプチドおよびオクタノイルポリミキシンBノナペプチドのような他の誘導体が、細菌増殖を阻害する極めて強力な薬剤であることを見出した。Sakuraらは、オクタノイルポリミキシンBヘプタペプチドが細菌を抗菌剤に対して感作させる能力を開示または提案せず、本明細書における実施例の項において示したように、より長い脂肪酸尾が抗菌活性を高めることも教示しなかった。
一態様における本発明は、2個または3個の正電荷のみを有し、それでもなお1個もしくはそれ以上のグラム陰性菌類の増殖を阻害できるか、または1個もしくはそれ以上のグラム陰性菌類を抗生物質もしくは抗菌剤に感作させることができる新しいポリミキシン誘導体を提供する。
細菌の抗菌剤に対する感受性を2個の微生物法によって決定することができる。敏速だが粗雑な手段は、特定量の抗菌剤を含浸した市販の濾紙ディスクを用いる。これらのディスクを、試験する生物の懸濁液を接種した寒天平板の表面に設置し、この平板を増殖阻害の区間に関し観察する。より正確な技法は、液体希釈感受試験であり、液体培養媒体に段階希釈の薬剤を含有する試験管を調製し、試験する生物を当該試験管に接種させることを含む。適度な培養時間後に細菌の増殖を阻害する薬剤の最低濃度を、最低阻害濃度(MIC)として報告する。
本発明に係る誘導体は、アシネトバクター属、アエロモナス属、アルカリゲネス属、ボルデテラ属、ブランハメラ亜属、カンピロバクター菌、シトロバクター属、エンテロバクター属、エシェリキア属、フランシセラ属、フソバクテリウム属、ヘモフィルス属、ヘリコバクター族、クレブシエラ属、レギオネラ菌、モラクセラ属、パスツレラ属、プレシオモナス属、シュードモナス菌、サルモネラ属、セラシア族、赤痢菌およびエルシニア属類に属するもののような臨床的に重要なグラム陰性菌の増殖を阻害するか、または抗菌剤に対して感作させることができる。細菌には、例えば、大腸菌、肺炎桿菌、クレブシエラオキシトーカ、エンテロバクターアエロゲネス、他のエントロバクター種、シトロバクターフロインディ、緑膿菌、他のシュードモナス種、アシネトバクターバウマンニ並びに多くの他の種の非発酵性グラム陰性菌類がある。細菌はまた、ヘリコバクターピロリ菌並びに他の臨床的に重要なグラム陰性菌を含む。
治療すべき細菌性感染症には、例えば、菌血症、敗血症、皮膚軟組織感染症、肺炎、髄膜炎、腎領域における感染症、異物感染症、血液患者の熱、静脈ラインもしくは他のカテーテル、キャニルおよび/または装置に関連する感染症、消化管、眼もしくは耳における感染症、表皮感染症、および猛毒の細菌による消化管、粘膜および/または皮膚へのコロニー形成がある。
細菌感染病には、重篤な院内感染、免疫不全の患者の感染、臓器移植患者の感染、集中治療室(ICU)での感染、火傷による重篤な感染症、重篤な地域感染型感染症、嚢胞性線維症患者の感染、並びに多耐性グラム陰性菌によって生起された感染症がある。
本発明はまた、併用療法用の本発明に係る2個またはそれ以上の誘導体の組合せに指向するものである。この組合せは、抗菌活性の異なるスペクトルまたはグラム陰性菌の異なる菌種もしくは菌株を抗菌剤に感作させる能力を有する誘導体を含むことができる。
本発明の他の態様は、1個またはそれ以上の医薬担体および医薬賦形剤と一緒に処方された本発明に係るポリミキシン誘導体、その塩形態、その選択された組合せ、および随意の抗菌剤とを備える医薬組成物に指向するものである。これらは、活性化合物の製薬学的に使用可能で、例えば希釈、充填、緩衝、増粘、湿潤、分散、溶解、懸濁、乳化、結合、安定化、分解、カプセル化、被覆、埋め込み、潤滑、着色および香料剤並びに当業者に周知の吸収剤、吸収促進薬、湿潤剤、保存剤等を含む製剤への加工を容易にする。
医薬組成物には、活性成分を所定の目的を達成するに有効な量で含む組成物がある。より詳細には、治療に効果的な量は、病状の症状を治療、予防、緩和もしくは改善するか、またはあらゆる医薬療法に適用可能な合理的損益比で治療する患者の生存期間を延長させるのに有効な化合物の量である。治療に有効な量の画定は、医学に精通している人の能力の範囲内で行う。
組成物は、当業界で周知の方法、例えば、従来の混合、溶解、カプセル化、封入、凍結乾燥、乳化および粒化方法により製造することができる。適切な処方は、選択した投与経路に依存するので、医薬組成物を即時型または持続放出型(例えば治療効果を引き伸ばすおよび/または耐性を改善するために)に処方することができる。さらに、製剤を製薬学の技術で既知の方法により単位投薬量の形で便利に存在させることができる。
本発明に係る医薬組成物には(限定することはないが)、静脈、筋肉内、経口または局所性投与のためのもの並びに座薬または吸入可能エアロゾルとして投与するものがある。この組成物には、静脈、筋肉内、腹腔内、皮下、髄内、髄腔内、心室内、鼻腔内、もしくは眼球内注射、吸入可能エアロゾル並びに直腸、経口、膣内、経粘膜的もしくは経皮的送達のものがある。
非経口投与(例えば、静脈内ボーラス、急速輸液、もしくは遅速輸液)に関して、本発明に係る化合物並びに上述した組合せを、無菌水溶液、好ましくは生理食塩水、5%ブドウ糖液、リンガー溶液およびハンクス液のような生理学的に適合性の液に適切な塩またはエステル形態として処方することができる。該製剤はまた、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールのような有機溶媒、プロピレングリコールまたは関連化合物並びに防腐剤および界面活性剤を含むことができる。
薬学的に許容の酸付加塩を無機酸または有機酸から調製することができる。無機酸から誘導した塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等がある。有機酸から誘導した塩には、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエン−スルホン酸、サリチル酸等がある。
加えて、非経口投与用の医薬組成物は、油性媒体もしくは水性媒体における懸濁液または乳濁液とすることができ、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤のような処方剤を含む場合がある。適切な脂溶性媒体および溶媒には、エチルオレエートおよびトリグリセリドのような天然および/もしくは合成脂肪酸エステルのような脂肪油、またはリポソームがある。懸濁液には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール又はデキストランのような懸濁液の粘度を高める物質を含有することができる。
非経口組成物は、アンプルおよびバイアルのような単位投薬または多投薬シール容器内に存在させ、使用直前に注射用に滅菌液賦形剤、例えば水の添加のみを要求するするフリーズドライ(凍結乾燥)した状態で保存することができる。
経口投与用の固形製剤には、例えば、粉末、タブレット、ピル、糖衣錠、トローチ剤、カプセル剤、カシェ剤および微粒製剤がある。医薬調剤は、固形賦形剤を用い、任意に生成した混合物を粉砕し、所要に応じて適当な助剤を添加した後顆粒混合物を加工してタブレットまたは糖衣剤芯を得ることで作成することができる。固体担体/賦形剤は、希釈剤、可溶化剤、滑剤、懸濁化剤、結合剤、防腐剤、香料添加剤、湿潤剤、崩壊剤、または封入剤としても機能する、1個またはそれ以上の物質とすることができる。適切な担体には、限定することはないが、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ブドウ糖、ラクトース、ペクチン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバター等がある。
経口投与に適した液体製剤には、例えば水溶液、シロップ、エリキシル剤、水性懸濁液、乳濁液およびゲルがある。水溶液は、活性成分を水に溶かし、適当な安定化剤および増粘剤並びに着色剤および香味剤を加えることにより調製することができる。水性懸濁液は、天然または合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および他の既知の懸濁化剤のような粘着性物質とともに微粒化した活性成分を水に分散させることで調製することができる。乳濁液は、プロピレングリコール水溶液中の溶液で調製することができ、またはレシチン、モノオレイン酸ソルビタンまたはアカシアのような乳化剤を含有する場合がある。
本発明に係る化合物または上述した組合せも、局所的投与用に処方することができる。活性化合物を、任意の必要な緩衝剤および防腐剤を含む制約学的に許容な担体/賦形剤と滅菌状態で混合する。軟膏、クリーム、およびローションは、例えば、適切な乳化剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、安定化剤もしくは着色剤を加えた水性または油性基剤で処方することができる。一般に用いる賦形剤には、動物および植物油脂、ワックス、パラフィン、デンプン、セルロース誘導体、トラガカントおよびポリエチレングリコールがある。
他の局所的製剤には、限定することはないが、点耳剤、点眼剤、経皮貼布がある。
経皮的および経粘膜的投与に関して、当業者に既知の浸透剤を製剤に用いることができる。
吸入投与に関して、本発明に係る化合物および上述した組合せを、適当な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン又は二酸化炭素を用いて、人工呼吸器、加圧パックまたは噴霧器からエアゾールスプレー調剤の形態で投与する。加圧エアゾールの場合、弁を設けて計量した量を投与することにより単位投薬量を決定することができる。吸入器での使用用の例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、該化合物およびラクトースもしくはデンプンのような適切な粉末の粉状混合物を含んで処方することができる。
本発明に係る化合物および上述した組合せはまた、ココアバター、他のグリセリド、ポリエチレングリコールもしくは座薬ワックスのような従来の座薬基剤を用いて、停留浣腸または座薬のような直腸組成物に処方することができる。
本発明はまた、本発明のポリミキシン誘導体またはこれら誘導体の組合せを、感染病を患ったヒトもしくは動物の治療(または予防投薬計画)の一部として使用する方法に関するもので、治療に効果的な投与量の本発明に係る少なくとも1個の誘導体を随意に抗菌剤と組合わせて前記対象に投与することを備える。
本発明はまた、グラム陰性菌を抗菌剤に感作させる方法に関するもので、本発明に係る誘導体を、治療に効果的な量の前記抗菌剤と同時に、または任意の順番で順に投与する。
本発明の誘導体および抗菌剤は、一つの製剤として一緒に、または異なる経路から投与することができる。例えば、ポリミキシン誘導体を静脈内に投与する一方、抗菌剤を筋肉内、静脈内、皮下、経口または腹腔内に投与することができる。或いはまた、誘導体を筋肉内もしくは腹腔内に投与する一方、抗菌剤を静脈内、筋肉内、もしくは腹腔内に投与するできるか、または誘導体をエアロゾル形もしくは霧状形態で投与する一方、抗菌剤を例えば静脈内に投与することができる。誘導体および抗菌剤は、共に感染部位で効果的な濃度に達するのに十分である限り、同時または順に投与することができる。
「治療の有効性」は、功を奏する臨床結果に基づき、本発明に係る誘導体が、任意的に抗菌剤と併用して、感染症に関わる細菌の100%を殺すことは必要としない。功を奏する治療は、宿主を受益者としてバランスを傾ける方法で細菌を阻害するのに十分な感染部位の抗菌活性のレベルを達成することに依存する。宿主防衛が最大限の効果をもたらすとき、必要な抗菌効果を適度にすることができる。有機体負荷を一対数(10の因数)だけ減らすと、宿主自身の防衛が感染を制御することができるようになる。加えて、初期の殺菌/静菌効果を高めることは、長期の殺菌/静菌効果を高めるよりも重要である。これら初期の出来事が治療の成功の重大かつ重要な部分であり、その理由は宿主防衛機構用の時間を活性化することができるからである。殺菌率の増加は、髄膜炎、骨または間接感染等の感染にとってとくに重要である。
抗菌剤の治療有効性は、本発明に係る誘導体の臨床的に意義のある濃度での前記抗菌剤に対する細菌種の感受性に依存する。生体内で抗菌剤の治療有効性を改善するための本発明に係る化合物の効果は、マウス腹膜炎またはウサギ菌血症のような生体内動物モデルで実証することができ、また(1)グラム陰性菌の増殖を24時間阻害するのに必要な抗菌剤の最低阻害濃度(MIC)の決定と、(2)グラム陰性菌の増殖速度曲線に対する抗菌剤の効果の決定と、(3)抗菌剤単独の段階希釈または化合物の段階希釈との組合せでのMICのチェックボード検定とを含む種々の生体外試験を基にして予測することができる。典型的なモデル又は試験は当業界で周知である。
24時間での生体内MICの決定を用いて、本発明に係る誘導体が抗菌剤のMICを低減することを示すことができる。この結果、生体内での化合物の併用投与が抗菌剤に対するグラム陰性菌の感受性を高めることを予想する。本発明に係る化合物はまた、抗菌剤のMICを有機体が臨床的に耐性であると見なせる範囲から有機体が臨床的に感染しやすい範囲まで低減することを示すことができる。この結果、抗菌剤と本発明に係る1個またはそれ以上の化合物の生体内への併用投与は、耐性を逆転させ、抗体耐性有機体を抗体感受性有機体へ効果的に変化させることが予想される。
本発明に係る化合物の存在下または非存在下でグラム陰性菌の生体内増殖曲線への抗菌剤の効果を測定することによって、該化合物は、好ましくは24時間未満の時間内で抗菌剤の早期抗菌効果を強化することを示すことができる。早期殺菌/増殖阻害効果の増強は、治療結果を決定するのに重要である。
本発明に係るポリミキシン誘導体および抗菌剤はまた、各剤の単独の個々の効果もしくは複数の剤一緒にした付加的な効果を超えた相乗効果または増強効果を有することができる。チェックボード検定において、本発明に係る化合物と抗菌剤の組合せが、「相乗」部分阻害濃度指数(FIC)をもたらすことができる。チェックボード法は、多重薬物で観測した結果が試験した薬剤の個別の効果の和であると仮定した加法に基づいている。このシステムによると、0.5未満のFICを相乗として記録し、1を相加として記録し、また1より大きく2未満を普通として記録する。
本発明に係る誘導体との併用に適した抗菌剤には、例えばクラリスロマイシン、アジスロマイシンおよびエリスロマイシンのようなマクロライド類、ケトライド類、クリンダマイシンのようなリンコサミン類、ストレプトグラミン類、リファンピン、リファブチンおよびリファラジルのようなリファマイシン類、フンジン酸、ムピロシン、オキサゾリジノン類、バンコマイシン、ダルババンシン、テラバンシンおよびオリタバンシンのようなグリコペプチド抗生物質、フルオロキノロン類、テトラサイクリン誘導体、ペニシリンの疎水性誘導体、セファロスポリン類、モノバクタム類、カルバペネム類、ペネムおよび他のベータラクタム抗生物質、ノボビオシン、プレウロムチリン、葉酸合成阻害剤、デフォミラーゼ阻害剤および細菌排出ポンプ阻害剤がある。グラム陰性感染を治療する当業者は、付加的で臨床的に意義のある有効な抗菌剤を容易に認識できる。好ましくは、前記抗菌剤を、グラム陰性菌の外膜が透過障壁として機能するものに対する疎水性またはやや疎水性の抗菌剤の群から選択する。
本発明はまた、本発明の化合物またはその組合せを用いて、臨床的な感染期間または感染が疑わしい期間にここに挙げた臨床的に重要な細菌に当該化合物の作用を施すことにより前記細菌を宿主防衛機構補体(新鮮なヒトおよび動物の血清に存在する)に対して感作させることを含む。宿主防衛は、例えば補体と多形核白血球との組合せ作用によって発揮させることができる。
薬学に精通している当業者は、本発明に係る化合物および併用投与における抗生物質に対する有効投薬量および投与計画を、投与する対象のタイプ、年齢、体重、性別および対象の医学的状態、投与経路、対象の腎臓および肝臓の機能、所望の効果、用いる本発明の特定化合物、および対象の耐性を含む要因を考慮に入れて容易に最適化できる。すべての抗菌薬の投薬量は、低下した代謝および/またはこれら状態の患者における薬物の排泄により、腎臓機能障害または肝不全を患った患者において調整すべきである。子供への投薬量も、一般に体重に従って減らすべきである。
ヒトまたは動物に投与する本発明に係る誘導体の全日用量は、例えば、体重1kg当たり0.1〜100mg、好ましくは体重1kg当たり0.25〜25mgとすることができる。
当業者は、最適な治療単位、すなわち、所定日数の1日当たりの投与回数が、治療する状態の性質および程度、投与の形態、経路および部位、また治療する特定の患者によって確定され、またかかる最適化を従来の技術で画定できることもわかる。
また、本発明に係る化合物を検定する方法も提供し、前記化合物が天然ポリミキシンおよびオクタペプチンの誘導体であり、該誘導体がこれを誘導する天然産出化合物と対照的に有害なグラム陰性菌に対する抗菌活性に関しておよび/または前記細菌を抗菌剤および/もしくは血清中に存在する補体に対して感作させる能力に関して2〜3個の正電荷のみを有し、前記方法が細菌を前記天然ポリミキシンまたはオクタペプチンの誘導体に接触させ、抗菌活性を有するおよび/または前記細菌に対する活性を感作させる誘導体を同定する工程を備える。
また、試験動物もしくはヒトの臓器の腎組織もしくはその構成分への結合を低減したポリミキシンおよびオクタペプチン誘導体をスクリーニングし、その低減能力を測定してアミノグリコシドの結合を競合的にブロックするか、または既知の他の物質の結合をブロックする方法を提供する。
さらなる態様においては、新規な抗生物質を開発する方法を提供し、この方法は、全部で4個または5個の正電荷を有するか、又はデアシルポリミキシン類におけるように全部で6個の正電荷を有する天然ポリミキシンもしくはオクタペプチン化合物またはその誘導体を準備し、1個またはそれ以上の正電荷を帯びた1〜4個の残基を正電荷を有しない残基または共有結合で置換して2個または3個の正電荷を有するポリミキシン誘導体を生成し、該誘導体化合物をグラム陰性菌に対する抗菌活性および/またはグラム陰性菌を抗菌剤に感作させる能力に関して検定し、グラム陰性菌に対する抗菌活性またはグラム陰性菌を抗菌剤に感作させる能力を有する化合物を選択する工程を備える。
また、本発明に従って、天然産出ポリミキシン類もしくはオクタペプチン類を化学的または酵素的に処理することによって得られた半合成ポリミキシン誘導体、またはその遺伝子組み換え有機体に製造した変異体も提供する。化学的処理には、限定することはないが、無水酢酸、ギ酸、ヒドラジンおよびシュウ酸を用いた処理がある。酵素的処理には、限定することはないが、ポリミキシンデアシラーゼ、フィシン、パパイン、ブロメライン、サブチリンペプチダーゼ、スブチリシン、コリスチンヒドロラーゼおよびナガーゼのような酵素の使用がある。
一態様に従った好ましい化合物は、天然ポリミキシンまたはオクトペプチンより陽イオン性が低く、2個または3個の正電荷のみを有し、また
(a)大腸菌、肺炎桿菌、クレブシエラオキシトーカ、シトロバクターフレウンディ、緑膿菌
もしくはアシネトバクターバウマンニの増殖を阻害する、および/またはそれらすべてを抗生物質に感作させることができ、および/または、
(b)生体内動物モデルにおいて確証されるように、臨床的に用いたポリミキシンより毒性が低く、および/または、
(c)動物モデルおよび/または腎臓の構造に対する化合物の親和性を測定する生体内試験において確証されるように、臨床的に用いたポリミキシンよりも腎毒性が低く、および/または、
(d)局所的に投与するか、もしくはエアロゾルとして吸入するとき、組織からのヒスタミン遊離を臨床的に用いたポリミキシンより少なく生起することができ、および/または、
(e)臨床的に用いたポリミキシンよりも長い血清の半減期を有する、および/もしくはポリアニオン組織および膿成分による不活性化が低いなどのように薬物動態学的により好ましい。
本発明に係る化合物の合成方法は、限定することはないが、以下に説明するものを含む。合成すべき特定の化合物に関して、当業者は適切な方法を選択することができる。
1.未変化のヘプタペプチド部および修飾したアシルアミノアシル側鎖を有するポリミキシン類およびオクタペプチン類の半合成誘導体は、以下に記述する手順によって製造することができる。
当業者に既知の方法による出発材料(ポリミキシンもしくはオクタペプチンまたはその修飾物)における遊離アミノ基の保護。この保護は、t−ブトキシカルボニル(tBOC)、フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、ベンジルオキシカルボニル(CBZ,Z)、アリルオキシカルボニル(ALOC)、3−ピリジルーN−オキサイドーメトキシカルボニル(英国特許1323962号に開示されている)のような残基を用いることによるか、生成物の性質と親和性の従来の条件によって除去し得るベンズアルデヒドのようなシッフ塩基を日本特許公開7115630/1971号に開示された方法等により用いることによって達成することができる。
弱い水溶性が次の工程で時々問題を引き起こす条件では、Fmocのスルホン酸誘導体またはFmocのカルボン酸誘導体のような負の電荷を帯びたブロッキング基を用いることにより前記保護を行うことができ、この方法が米国特許出願公2006004185号に記載されている。水溶性はまた、適当な除去可能で、負の電荷を帯びた極めて疎水性のブロッキング基をトレオニンのOH基に結合させることにより高めることができる。
然る後、化合物にポリミキシンデアシラーゼ、ポリミキシンヒドロラーゼ、パパイン、フィシン、ブロメライン、サブチロペプチダーゼ、ナガーズのような酵素またはポリミキシンまたはオクタペプチド化合物の側鎖の末端部または側鎖全体までも除去する他の酵素で酵素的処理を施す。この処理の後に任意にエドマン分解処理を行うことができる。生成した化合物は全側鎖がなく、環状ヘプタペプチド部のみからなるが、遊離N末端アルファアミノ基を有する。
或いはまた、ベンジルオキシカルボニルよって保護されたアミノ基を有するポリミキシン類およびオクタペプチン類は、シュウ酸またはギ酸により処理して保護デアシル誘導体を得ることができ、この方法がKuriharaら(1974)によって開示されている。この手順の後に、上述したさらなる酵素的処理および/またはエドマン分解を行ってヘプタペプチドを得る。
その後、適切な残基をヘプタペプチド環状部の遊離アルファアミノ位置に結合する。この残基は、アシルまたは関連する残基並びに任意的なアミノ酸残基、好ましくは3個の残基まで含有するかもしれない。例えば、アシル基と2個のアミノ酸残基を有する半合成化合物は、上述したヘプタペプチドに合成N−(アシル)−トレオニル−Dトレオニル残基を加えることにより製造することができる。これは、有機化学に精通した人に既知の従来の一般的な技術によって達成でき、これら技術には、米国特許出願公開2006004185号に開示されたようなN−ヒドロキシ−スクシンイミド結合残基の使用を含む。この特別な合成における処理は、2−N−(n−オクタノイル)−スレオニル−Dスレオニル−N−ヒドロキシスクシンイミドの使用を含むことができる。
2.遊離アミノ基3個を有するアシル化ポリミキシンノナペプチド。ポリミキシンDは、4個の正電荷のみを有す
リミキシンDの遊離アミノ基を上述した方法で保護することができる。この後、酵素的処理および任意のエドマン分解工程を行ってノナペプチドを得、次いでこれをアシルイソチオシアネート(当業者には既知で、米国特許出願公開2006004185号に記載された方法)によるか、アシルクロライド(当業者には既知で、Chiharaら1974によって開示された方法)によるか、またはN−ヒドロキシスクシンイミドに結合した残基を用いること(当業者には既知で、米国特許出願公開2006004185号に記載された方法)によってアシル化することができる。最後に、この保護基を除去する。
同様の方法で、アシル化ポリミキシンSノナペプチドおよびアシル化ポリミキシンFノナペプチドを製造することができる。共に3個の遊離アミノ基のみを有する。
3.アシル化ポリミキシンおよびオクタペプチンヘプタペプチド。ヘプタペプチドをKimuraらにより1992に開示されているように、天然化合物のNagarse処理によって製造することができる。或いはまた、これらをポリミキシンアシラーゼ、ポリミキシンヒドラーゼ、フィシン、パパイン、ブロメラインおよびサブチロペプチダーゼのような他の酵素で処理し、その後任意のエドマン分解を行うことによって製造することができる。これらはまた、ヒドラジンまたはギ酸およびシュウ酸のような酸によって天然化合物を脱アシル化し、その後エドマン分解を行うことによっても製造することができる。次いで、ヘプタペプチドを、例えば、当業者に既知でChiharaら(1974)によって開示された塩化アシル技術を用いてアシル化することができる。アシル化ポリミキシンヘプタペプチドは3個の遊離アミノ基のみを有する。
4.すべての合成ポリミキシンおよびオクタペプチド誘導体を当業者に既知の従来の方法で製造することができる。この方法には、液相合成処理並びに例えばSakuraら(2004)、Tsuberyら(2000a,2000b、2002,2005)、およびOfekら(2004)によって開示された固相合成処理がある。当該方法は、例えば、有利な位置でのFmoc,tBocおよびCBZのような保護剤の使用、並びにDPPA(ジフェニルホスフオラジデート)またはベンゾトリアゾール−1−イルーオキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウム・ヘキサフルオロホスフェート(PyBop)、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HoBt)およびN−メチルモルホリン(NMM)の混合物を用いる環化工程を含む。多くの自明でないFmoc誘導体およびDアミノ酸が市販されている。
5.本発明に係る2個または3個の正電荷を有する化合物を生成する遊離アミノ基の変換に関連する例示的な反応には、(限定することはないが)、以下の反応がある。
A)β−ヒドロキシ−アミン結合をもたらす化合物の遊離アミノ基と反応性エポキシド基を有する共役部分との反応
B)スルホンアミド結合をもたらす化合物の遊離アミノ基と反応性ハロゲン化スルホニルを有する共役部分との反応
C)アミン結合をもたらす化合物の遊離アミノ基と反応性カルボキシル酸を有する共有部分との反応
D)アミン結合をもたらす化合物の遊離アミノ基と反応性アルデヒド基を有する共役部分との反応(還元性条件下)
E)アミン結合をもたらす化合物の遊離アミノ基と反応性ケトン基を有する共役部分との反応(還元性条件下)
F)尿素結合をもたらす化合物の遊離アミノ基と反応性イソシアネート基を有する共役部分との反応
以下の実施例は、本発明のある実施形態を示し、本発明の範囲を限定するようには解釈されない。
[実施例1]ペプチド合成
ポリミキシン誘導体(「NABペプチド」または「NAB化合物」)は、標準的なFmoc保護戦略を用いた従来の固相化学によって合成した。C末端のアミノ酸は、固相に予備付着したものとして市販され、また樹脂を酸で開裂する際にC末端カルボキシル酸を得る。
保護における戦略は、直交保護、酸開裂段階中に除去されるアルファアミノ機能基に関する一時的なFmoc保護、および環化反応が起こる間に反応性側鎖機能を覆う半永久的保護との三準位の使用にある。樹脂からペプチドを開裂した後、C末端カルボキシル酸をアミノ酸の一つの側鎖上のアミノ機能と反応させて環状ペプチドを形成する。環化工程後、半永久的保護基を除去してNABペプチドを得る。
したがって、アミノ酸のアルファアミノ機能をフルオレニル−メトキシカルボニル(Fmoc)によって保護し、Fmocを全てのサイクルで20%ピペリジンのDMF溶液により除去した。環化と関連を持つアミノ酸、例えばジアミノ酪酸をt−ブトキシカルボニル(tBoc)、すなわち開裂工程で除去した不安定な酸基によって保護した。機能的な側鎖基を有する他のアミノ酸はすべて、酸開裂段階で安定な基、すなわち、ベンジルオキシカルボニル(Z)によって保護した。アミノ酸フェニルアラニンおよびロイシンは、当然側鎖保護が必要ない。アミノ末端は保護していない、すなわち、これによってアシル化における直接的な反応が可能である。
合成工程を、−(6−クロロンゾトリアゾール−1−イル)−N’N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HCTU)を活性剤として用いる市販の自動化シンセサイザーにおいて行った。
6−メチルヘプタン酸(6−MHA)を米国のUltra Scientific Inc (製品番号, FLBA 002)から入手した。他の脂肪酸は、一般の業者から入手した。
アシル化は、4倍モル過剰の各アミノ酸または脂肪酸と、4倍モル過剰の活性剤HCTU(上述)と、8倍モル過剰のN-メチルモルホリンとを用いることにより行った。反応時間は30分であった。
アミノ酸は一般の業者から、既に保護した状態で購入した。このペプチドを室温で95%トリフルオロ酢酸および5%水の溶液で2時間反応させることによって樹脂から除去して一部保護した生成物を得た。生成した生成物をジエチルエーテルで沈殿させた。
使用した環化混合物は、それぞれモル過剰2,2,4倍のベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウム・ヘキサフルオロホスフェート(PyBop)、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HoBt)、およびN−メチルモルホリン(NMM)とした。ペプチドをジメチルホルムアミドに溶解し、環化混合物を加えて2時間反応させた。環化し、保護したペプチドを冷ジエチルエーテルの添加により沈殿させた。あらゆる残留PyBopが、ペプチドを水で洗浄することによって除去された。
残りの側鎖保護基(Z)を触媒脱水素によって除去した。ペプチドを酢酸−メタノール−水(5:4:1)の溶液に水素雰囲気下およびパラジウム炭触媒の存在下で溶解した。
ペプチドを、アセトニトリル:水:トリフルオロ酢酸の従来の勾配を用いる逆相クロマトグラフィーによって精製した。生成物を凍結乾燥によって乾燥した。
収量は20〜40mgで、樹脂に結合した最初のアミノアシル残基のモル量(約100マイクロモル)から計算して、理論値の約20〜40%であった。
逆相HPLCによって推定される純度は、95%を超えた。アシル化ペプチドに関して、エドマン分解生成物は、あらゆるアミノ酸残基を見せず、予想通り功を奏したN−アシル化によってN末端アミノ酸残基のα−アミノ基がブロックされたことを示す。実験誤差内で、得られた質量は、理論値から得た値であった。
[実施例2]大腸菌に対する化合物の直接抗菌活性
すべて少なくとも2個で3個以下の正電荷を帯びている実施例1で合成したペプチドを、大腸菌の増殖を阻害する能力について研究した。これは、LB寒天(LB Agar Lennox, Difco, BD, Sparks, MD1 U.S.A)プレートを用いて試験した。指示有機体の大腸菌IH3080(K1:O18)は、髄膜炎を患った新生児から最初に単離した被包性の菌株で、フィンランドのヘルシンキにおける国立公衆衛生研究所から得た。
LB寒天上のIH3080の一晩の増殖培養から、約108個の細胞/mlの0.9%NaCl懸濁液を調製した。次いで、この懸濁液の一定分量を寒天プレート上にピペットで置き、該プレートを穏やかに振ってプレートの表面全体に懸濁液が均一に平らに広げた。その後、懸濁液の未吸収部をパスツールピペットを用いることによって除去した。表面を乾燥した後、殺菌した刃の鋭い細い金属管、使い捨てのピペットチップおよび真空吸引を用いることにより、小ウェル(直径2mm)をプレート上に穿孔した(1プレートにつき5個のウェル)。次いで、0.9%NaClのペプチド溶液(1μg/mlおよび0.1μg/mlの濃度)のサンプル(4μlおよび10μl)を、当該ウェルにピペットで入れ、サンプル溶液を吸収させた。実験対照には、試験すべき化合物を含まない0.9%NaCl溶液を用いた。次いで、プレートを18時間37℃で培養し、その後各ウェルの周りの増殖阻害ゾーンの直径を測定した。ウェル自体の直径は減少しなかった。最後に、直径を増殖阻害の表面積(平方mm)に変換した。
表2は、大腸菌IH3080に対する誘導体の抗菌活性を、等量のポリミキシンBおよび本発明には関連しない幾つかのポリミキシン誘導体のものと比較して示す。NAB734,NAB737,NAB739およびNAB740は、最も抗菌活性が高い化合物で、ポリミキシンBの大腸菌IH3080に対する抗菌活性よりも高い。4μgのNAB739を含有するウェルは、133平方mmの広い増殖阻害面積をもたらす。これら4個のNAB化合物のすべてにおいて、側鎖はヒドロキシル基を有する2個のアミノアシル残基からなる。
NAB739と異なり、NAB7061は、4μgでは抗菌活性とならなかった。しかし、10μgでは顕著な抗菌活性を示した。NAB7061は、NAB739と、R3においてAbu(DSerの代わりに)を有する点が異なる。脂肪アシル部の長さをNAB7061におけるC8からNAB7062におけるC10まで長くすると、4μgで現れる著しく増強した抗菌活性をもたらす。加えて、3個の他のペプチド(NAB738、NAB716およびNAB719)は、著しい抗菌活性を示したが、NAB739および他の最も抗菌活性が高い化合物よりも明らかに低い。
大腸菌に対し直接抗菌活性な化合物の共通の特性は、3個の正電荷の存在であり、3個すべてまたは少なくとも2個が環状部の適切な場所に位置する。後者の場合、前記電荷の相対位置が、大腸菌に対する抗菌活性の効力に大きな影響を与える。
さらに、表2に示すように、側鎖の構造および長さが、抗菌活性の効力に大きな影響を与える。少なくとも2個のアミノアシル残基からなる側鎖の存在が、大腸菌に対して抗菌活性な化合物に対し重要であること明らかで、その理由はR2(NAB713)またはR2およびR3(オクタノイルPBHP)の両方がない化合物は、この検定に用いる条件下で直接的な抗菌活性を失うからである。しかし、それらの残基の欠如は、オクタノイル残基の代わりにさらに広がった残基をR(FA)として用いることで補償させ得ると予想できる。
*LBプレート上に4又は10μgの化合物を含有するウェルの周りで増殖阻害として測定した抗菌活性(平方mm)
**アミノアシル残基の一文字コード A:Ala,F:Phe,K:Lys,L:Leu,S:Ser,T:Thr,X:Dab,Z:Abu,B:N−g−ホルミル−Dab,J:N−g−アセチル−Dab 下線部の文字はD−構造における残基を示す。 ボールド文字は正電荷を有する残基を示す。 ボールド+はペプチドのN末端におけるa−アミノ基の正電荷を示す。 略記 cy:シクロ
***列挙した配列において、X,Z,B,JおよびD−構造におけるアミノ酸をXaaで表わし、修飾残基として規定する(MOD RES)。
[実施例3]選択したNAB化合物のアシネトバクターバウマンニおよび緑膿菌に対する直接抗菌活性
12個のNAB化合物のアシネトバクターバウマンニATCC19606および緑膿菌ATCC27853に対する直接抗菌活性を、実施例2に開示した感受性画定方法を用いることで試験した。結果を表3に示す。5個の化合物(NAB7062,NAB734,NAB737,NAB739およびNAB740)は、アシネトバクターバウマンニに対して著しい活性を有する。実施例2において、同一化合物が大腸菌に対して非常に効力があることを示した。NAB739およびNAB740の抗菌活性は、ポリミキシンBの抗菌活性と同じ程度または強かった。
緑膿菌に対して最も活性が高いNAB化合物は、NAB739、NAB740並びに大腸菌およびアシネトバクターバウマンニに対して全く不活性なNAB736である。NAB740は最も活性の高い化合物で、その活性がポリミキシンBのものと同程度の強さであった。これら3個すべてのNAB化合物は、側鎖に正電荷を欠き、緑膿菌に対してなお活性であった。この発見は、R1およびR3における遊離アミノ基が緑膿菌の増殖阻害に重要であるというSrinivasaおよびRamachandran(1980a)の結論と異なる。
驚くべきことに、NAB736は緑膿菌に対してかなり効果的であるが、オクタノイルPMBHはより効果的でない。したがって、C8からC10へR(FA)部を延長することは、活性に大きな効果を有する。
*LBプレート上に4又は10μgの化合物を含有するウェルの周りで増殖阻害として測定した抗菌活性(平方mm)
[実施例4]NAB734の選択したグラム陰性菌に対する直接抗菌活性
11個のグラム陰性菌の菌株(9個の異なる細菌種)のNAB734およびポリミキシンBに対する感受性を、実施例2に開示した感受性画定方法を用いることで比較した。かかる菌株には、セラチアマルセッセンス(Serratia marcescens)およびミラビリス変形菌(Proteus mirabilis)の種に属するもので、これらは共にポリミキシンに耐性があると一般に知られている。さらに、ポリミキシン耐性として一般に既知のグラム陽性菌である黄色ブドウ球菌を用いることによって感受性画定を行った。10個の菌株は、ATCC(アメリカンタイプカルチャーコレクション,VA,USA)に由来し、1個の菌株は、CCUG(スウェーデンのゴッテンブルグ大学の菌株保存機関)に由来する。大腸菌IH3080源は、実施例2において開示した。ポリミキシンB硫酸塩は、シグマアルドリッチ(セントルイス,MO,USA)からのものである。
表4における結果は、NAB734が概して大腸菌、肺炎桿菌、クレブシエラオキシトーカ、エンテロバクタークロアカおよびサイトロバクターフレウンディに対してポリミキシンBとほぼ同程度の効力と見做すことができることを示す。これは、アシネトバクターバウマンニに対してポリミキシンBより効力がいくらか低く、緑膿筋に対してポリミキシンBより効力が低いことが明らかである。既知のポリミキシン耐性細菌種の代表は、NAB734にも耐性である。これは、NAB734が極めて特異的な抗菌作用を有し、その作用形態がポリミキシンBのものと類似していることを示唆する。
*LBプレート上に4又は10μgの化合物を含有するウェルの周りで増殖阻害として測定した抗菌活性(平方mm)
[実施例5]大腸菌IH3080を抗生物質リファンピシンに感作させるNAB化合物の能力
本発明に係るすべて少なくとも2個で3個以下の正電荷を有する新規なNABペプチド類を、大腸菌IH3080をリファンピンに対して感作させる能力に関しても研究した。これは、実施例2に開示した感受性画定と平行して、高濃度(0.1μg/ml,0.3μg/ml,1μg/ml)のリファンピン(シグマアルドリッチ、セントルイス、MO,USA)を含むLBプレートを用いることによって試験した。
表5は、リファンピン(0.1および1μg/ml)の存在下で大腸菌IH3080に対するNAB化合物(4μg)の活性を、グラム陰性菌を抗菌剤に対して感作させる既知の等量の前述した物質、すなわち、ポリミキシンBヘプタペプチド、デアシルポリミキシンB、デアシルコリスチン、ポリミキシンBノナペプチドおよびポリミキシンBの活性と比較して示す。前記化合物はまた、細菌を抗生物質に対して感作させることができると以前報告されてなかった薬剤であるオクタノイルPMBHも含む。
数個のNAB化合物は、低濃度0.1μg/mlのリファンピンの抗菌作用に対して大腸菌IH3080を感作させた。試験した化合物の非存在下においては、100倍濃度(10μg/ml)のリファンピンが阻害効果に必要であった。4μgで顕著な直接抗菌活性がない数個の化合物が、リファンピンに対してターゲットの細菌を感作させることができた。かかる化合物には、NAB7061,NAB717,NAB718およびNAB733がある。
さらに、直接抗菌活性、すなわちリファンピンの非存在下で抗菌活性(実施例2参照)を有するNAB化合物のほとんどが、リファンピンの存在下でより効果的にターゲットの細菌を阻害した。最も活性が高い化合物NAB734、NAB737,NAB738およびNAB739の能力は、明らかにOMの既知の効果的な透過剤であるPMBNよりもずっと高かった。
最も活性の高いNAB化合物は3個の正電荷を有し、その少なくとも2個の正電荷が感作活性の効力に影響する相対位置である環状部に適切に位置する。環状部に2個の正電荷のみを有し、R3にDab残基の形で3個目の正電荷を有するNAB716は、リファンピンに対して大腸菌を著しく感作させることができるに実際注目すべきである。
オクタノイル残基をR(FA)として有する一連の化合物のうち、R2およびR3の両方を欠如したオクタノイルPMHPは最も低い感作活性を有し、R2を欠如したNAB713は若干高い活性を有し、またR2およびR3の両方を有するNAB7061は顕著な活性を有する。これは、R2およびR3の存在が有利であることを示す。しかし、これらの欠如は、NAB736におけるようにR(FA)部を延長させることによって少なくとも部分的に補償することができる。これは、R(FA)部としてデカノイル残基を有し、R2およびR3の両方を欠如し、感作剤として全く活性である。
環状部に2個の正電荷を有するNAB化合物は、環状部に3個の正電荷を有する構造的に異なる同類のNAB化合物より活性が低く、また一つの化合物(NAB708)に関しては、使用した実験条件下で不活性である。
側鎖に2個の正電荷を有し、環状部に1個の正電荷を有するNAB化合物は、使用した実験条件下で、たとえ活性があったとしても非常に穏やかである。側鎖に3個すべての正電荷を有するNAB735は、使用した実験条件下で不活性である。また、環状部における前記電荷の相対位置は、感作活性の効力に影響を与える。
*リファンピンなし又はリファンピン(0.1又は1.0μg)でのLBプレート上に4μgの化合物を含有するウェルの周りで増殖阻害として測定した抗菌活性(平方mm)
**括弧内の値は、10μgの化合物を含有するウェルを用いて得た
[実施例6]アシネトバクターバウマンニおよび緑膿筋をモデル抗生物質リファンピンに対して感作させるNAB化合物の能力
本発明に関連するNABペプチド類をまた、アシネトバクターバウマンニおよび緑膿筋をリファンピンに対して感作させる能力に関して研究した。これは、実施例3に開示した感受性画定と平行して、高濃度(0.1μg/ml,1μg/ml)のリファンピンを含むLBプレートを用いることで試験した。
数個のNAB化合物は、アシネトバクターバウマンニをリファンピンに対して感作させる極めて顕著な能力を有する。最も活性な化合物NAB734,NAB737,およびNAB739の能力は、OMの既知な効果的透過剤であるPMBNのものより明らかに優れている。NAB739は、リファンピンの非存在下よりも存在下で緑膿筋の増殖をより阻害する。
*リファンピンなし(対照)又はリファンピン(0.1又は0.3μg)でのLBプレート上に4μgの化合物を含有するウェルの周りで増殖阻害として測定した抗菌活性(平方mm)
[実施例7]大腸菌、肺炎桿菌およびエンテロバクタークロアカを広範囲の抗菌剤に対して感作させるNAB7061
臨床用途の抗菌剤の代表的なセットの最低阻害濃度(MIC)を、2個の菌株の大腸菌(ATCC25922およびIH3080)、肺炎桿菌ATCC13883およびエンテロバクタークロアカATCC23355に関して、NAB7061(4μg/ml)の存在下および非存在下でミューラーヒントン寒天培地(製品番号LabO39;LabM Ltd.,Bury,Lancs,U.K.)を用いることで画定した。MICは、メーカーの使用説明書に従ってE−ストリップ(Biodisk Ltd.,Solna,Sweden)を用いることで画定した。使用したNAB7061濃度は、それ自体ターゲット細菌の増殖を阻害するものでない。大腸菌IH3080および肺炎桿菌ATCC13883に対するNAB7061のMICは、>16μg/mlであり、大腸菌ATCC25922に対して16μg/ml、またエンテロバクタークロアカATCC23355に対して8μg/mlである。
結果を表7に示す。4μg/ml濃度のNAB7061は、170〜1500の範囲の因子だけリファンピンに対して試験菌株を感作させることができた。感作因子は、NAB7061非存在下における抗生物質のMICの、4μg/mlのNAB7061存在下におけるものに対する比として定義される。極度に高い感作因子は、クラリスロマイシン(63−380)、ムピロシン(24−512)、アジスロマイシン(31−94)、エリスロマイシン(21−48)に対しても観察され、またいくつかの菌株に関しては、フンジン酸、キヌプリスチンダルフォプリスチン、クリンダマイシン、リネゾリドおよびバンコマイシンに対して観察された。これらすべての抗菌剤は、著しく疎水性が高いまたは大きく(バンコマイシン)、また、グラム陰性菌の無傷OMによって排除されるが、損傷OMに浸透することが既知である。感受性なし(感受因子<2、大腸菌ATCC25922を用いて試験)が、ピペラシリン、セフタジジム、レポフロキサシン、シプロフロキサシン、メロペネムおよびトブラマイシンに対して観察され、これら薬剤全てが親水性または比較的親水性であり、これに対し無傷OMは効果的な透過障壁ではない。
*感作因子は、NAB7061非存在下における抗生物質のMICの、4μg/mlのNAB7061存在下におけるものに対する比である
**5個の独立した画定による結果
***2個の独立した画定による結果
[実施例8]NAB7061(4μg/ml)存在下でのリファンピンおよびクラリスロマイシンに対するグラム陰性菌の33個の異なる菌株の感受性
臨床的に関連するグラム陰性菌の異なる菌株の代表セットに対するリファンピンおよびクラリスロマイシンの最低阻害濃度(MIC)を、実施例7と同様のEテスト法によりNAB7061(4μg/ml)の存在下または非存在下でミューラーヒントン寒天培地を用いて画定した。NAB7061の濃度は、それ自体ターゲット細菌の増殖を阻害しない。菌株は、ATCC(11菌株)、CCUG(11菌株)およびNCTC(英国のコリンデールにおける国際タイプカルチャーコレクション、2菌株)から得た。8菌株(F菌株)は、フィンランドのヘルシンキにおけるMobidiag社から購入した。大腸菌IH3080の源は実施例2において与えた。感作因子は、実施例7と同様に定義した。
結果を表8に示す。大腸菌、肺炎桿菌、エンテロバクタークロアカおよびサイトロバクターフレウンディからなる群に属するすべての菌株(17)に関して、リファンピンのMICは、NAB7061(4μg/ml)の存在下で0.125μg/ml以下で、感作因子は85〜2000であった。非常に類似した結果がクラリスロマイシンで得られた。大腸菌、肺炎桿菌、エンテロバクタークロアカおよびサイトロバクターフレウンディからなる群に属する17個の菌株のうち15個の菌株に関して、クラリスロマイシンのMICは、NAB7061(4μg/ml)の存在下で0.25μg/ml以下で、17菌株すべてに対する感作因子は90〜1000であった。肺炎桿菌の菌株は、両方の抗生物質に対して幾分耐性が残り、感作因子は10〜500であった。アシネトバクターバウマンニの3個の菌株に関して、感作因子は24〜125であり、生成するMIC値は非常に低くなった(リファンピンに対しては≦0.125μg/ml、クラリスロマイシンに対しては≦0.5μg/ml)。
*2個の独立した画定による結果
**感作因子は、NAB7061非存在下におけるリファンピンのMICの、4μg/mlのNAB7061存在下におけるものに対する比である
***感作因子は、NAB7061非存在下におけるクラリスロマイシンのMICの、4μg/mlのNAB7061存在下におけるものに対する比である
****5個(リファンピン)および2個(クラリスロマイシン)の独立した画定による結果
*****3個の独立した画定による結果(リファンピン)
[実施例9]アシネトバクターのカルバペネム耐性菌株をカルバペネムに対して感作させるNAB7061
アシネトバクターバウマンニの3菌株に対する2個のカルバペネム、イミペネムおよびメロペネムの最低阻害濃度(MIC)を、実施例7と同様のEテスト法によりNAB7061(4μg/ml)存在下または非存在下でミューラーヒントン寒天培地を用いて画定した。NAB7061の濃度は、それ自体ターゲット細菌の増殖を阻害しない。感受因子を実施例7と同様に定義した。結果を表9に示す。NAB7061は、両方のカルバペネムに対して両カルバペネム耐性菌株(F263,F264)を4以上の因子だけ感作させた。

[実施例10]大腸菌を新鮮な通常血清中の補体に対して感作させるNAB7061
大腸菌の被嚢性の平坦な菌株を通常のモルモット血清(GPS)の殺菌作用に対して感作させるNAB7061の能力を、Vaaraら(1984)によって開示された方法で研究した。大腸菌IH3080(018,K1)を、回転式振盪培養機中の37℃のLB培養液(LBブロスレノックス、ディフコ(Difco)、BD、スパークス(Sparks)、MD、USA)中で早期の対数増殖相に増殖し、PBS(リン酸緩衝食塩水、1リットル当たり8.0gNaCl,0.2gKCl,1.44gNaHPO・2HO,0.2gKHPO)で洗浄し、約10細胞/mlまでPBSに再懸濁した。GPSを補体源として用いた。これは、使用前−70℃で保管した。補体を不活性化するため、血清を56℃で30分間培養した。
実験手順は、以下の通りである。10%GPSのPBS液を、1ml当たり細菌約500CFU(コロニー形成単位)で培養し、0.2ml分割量でマイクロタイタープレートのウェル内にピペットで入れた。このウェルは、すでに0.9%NaClの0.020mlに高濃度のNAB7061を含有していた。該プレートを37℃で2時間培養し、その後各ウェルをLBプレート上で空にした。プレートを37℃で一晩培養し、新たに発現したコロニーを数えた。
結果を表10に示す。NAB7061は、それ自体GPSの非存在下または熱不活性な10%GPSの存在下でCFU数を大きく減らすことはなかった。しかし、2μg/ml程度の低濃度NAB7061は、10%の新鮮GPSの存在下で約100の因子だけCFU数を減少させるに十分であった。したがって、NAB7061は、この特性を有することが既知のPMBNと同様に、新鮮な血清中に存在する細菌補体機構と相乗的に機能する。



*37℃で2時間処理後の生存率%として測定
[実施例11]腎皮質の刷子縁膜(BBM)に対するNAB7061の親和性の減少
本発明に係る化合物の腎皮質から分離した刷子緑膜(BBM)への結合を、BBMへの放射性標識ゲンタマイシンの結合を阻害する能力を求めることで間接的に測定することができる。したがって、例えばポリミキシンBよりBBMに対する親和性が低い本発明に係る化合物は、放射性標識ゲンタマイシンへの結合をポリミキシンBよりも阻害することが少ない。
BBMを、Nagaiら(2006)が開示したMg2+/EGTA沈殿技術を用いて雄の白ネズミの腎皮質から分離した。ゲンタマイシンの結合は、Nagaiら(2006)によって開示された方法に従って、試験すべき化合物又は陽性対照があってもなくても、20μM[H]ゲンタマイシン(Amersham Biosciencessy社、Buckinghamshire, U.K.)の存在下で100mMマンニトールを用いて10mM のHEPES(pH7.5)中にBBM小胞(20μl)を培養することにより測定された。60分間4℃で培養後、1mlの上述した氷冷緩衝液を加え、生成した混合物をミリポア濾過器(0.45μm;HAWP)を通して濾過した。濾過器を緩衝液で洗浄し、濾過器に残存する放射性活性を液体シンチレーションカウンターを用いて測定した。IC50値は、Nagaiら(2006)に記載されているようにHill式を用いて決定した。
試験NAB化合物および対照に対するIC50値(μM)は以下の通りであった。NAB7061に対して187.3+24.3(それぞれ3個の平行画定による2個の独立した実験の平均)、ポリミキシンBに対して39.3+5.5(それぞれ3個の平行画定による2個の独立した実験の平均)、未標識のゲンタマイシンに対して90.2+9.7(3個の平行画定)であった。したがって、NAB7061のBBMに対する親和性は、ゲンタマイシンのBBMに対する親和性の約半分であり、ポリミキシンBのBBMに対する親和性の約5分の1である。
[実施例12]マウスの大腸菌腹膜炎実験モデルにおけるNAB7061の活性
生理食塩水(0.9%NaCl)中の大腸菌IH3080(K1:O18)の懸濁液を、血液寒天培地(Statens Serum Institute, Copenhagen, Denmark)上で一晩培養して調製した。すべてのネズミ(Harlan Scandinavia, Allerod, DenmarkからのメスNMR1;体重25〜30g)の下外側4分の1の腹部において、1ml当たり0.96×10CFUを含有する0.5ml懸濁液を腹腔内培養した。1時間後、CFU数を3匹のマウスから画定し、残りのマウス(1グループ当たり4匹)に、エリスロマイシンの生理食塩水溶液(体重kg当たり5mgに相当)もしくはNAB7061の生理食塩水溶液(体重kg当たり5mgに相当)またはエリスロマイシンとNAB7061の両方(両薬剤の体重kg当たり5mgに相当;2個の離れた場所に付与)の0.2mlを皮下注射した。対照群には、生理食塩水の0.2mlを2回注射した。4.5時間の後感染後、すべてのマウスをCOで麻酔させ犠牲にした。無菌食塩水(2ml)を腹腔内に注射し、腹部を開き液体をサンプリングする前に腹部を優しくマッサージした。該液体の適当に希釈液を血液寒天培地上に置き、この培地を一晩培養し、コロニーを数えた。
1時間の後感染後、CFU数は1ml当たり0.74(+0.7)×10であった。4.5時間の後感染後(処理後3.5時間に相当)、CFU数(1ml当たり)は11.1(±6.2)×10(対称群)、8.9(±6.4)×10(エリスロマイシン群)、1.1(±0.6)×10(NAB7061群)、2.1(±1.2)×10(NABとエリスロマイシン群)であった。したがって、NAB7061の非存在下において、細菌数は15の因子(生理食塩水群)だけ、または12の因子(エリスロマイシン群)だけ増加し、NAB7061存在下においては、1.5〜3の因子だけ増加した。
[実施例13]NAB7061に対する毒性研究
若令ラット(研究開始時の体重約150g)における毒性を、NAB7061並びに対照化合物ポリミキシンBの投薬量(1日当たり1,2,4,8,16および32mg/kg)を2週間1日2回静脈注射することによって画定した。10匹のラットを一グループとして、各投与処方に対して研究した。臨床的観察を毎日行い、体重を週2回測定し、食料消費を週2回測定した。2週間後、すべての動物を殺生した。
対照化合物ポリミキシンBは、1日当たり1mg/kg程度の投薬量で体重増加に悪影響を与えたが、この効果をもたらすNAB7061の最低投薬量は8mg/kgであった。ポリミキシンBは、1日当たり32mg/kgで死亡する(死亡率100%)が、NAB7061を投薬したすべてのラットが研究の間生存していた。研究の最後には、血液尿素窒素(BUN)は、1日当たりポリミキシン16mg/kgを投薬した群の方が、対照群またはポリミキシン低投薬量の群(1日当たり1mg/kg)よりも15%高くなった。NAB7061を1日当たり16mg/kg投薬した群においては、このような上昇は見られず、NAB7061を1日当たり32mg/kg投薬した群においては、上昇率は7%であった。
腎臓の組織病理を各動物に対して行い、全組織の組織病理を3個のNAB7061高投薬量の群において行った。NAB7061に関する組織病理学的所見は、一般的な病理学および全器官の組織病理学において、またはNAB7061を投薬した全動物における腎臓の組織病理学において見られなかった。

Claims (27)

  1. 一般式(I)のポリミキシン誘導体であって、

    式中、R1は存在しないか、α―アミノブチリル残基であって、
    R2はスレオニル残基、セリニル残基、及びアラニル残基から選択され、
    R3はスレオニル残基、セリニル残基、アラニル残基、アミノブチリル残基、及びα、γ−ジアミノ−n−ブチリル残基から選択され、
    R4はα、γ−ジアミノ−n−ブチリル残基であって、
    R5はα、γ−ジアミノ−n−ブチリル残基、α―アミノブチリル残基、及びリジル残基から選択され、
    R6はD−フェニルアラニル残基及びD−ロイシル残基から選択され、
    R7はロイシル残基、スレオニル残基、及びイソロイシル残基から選択され、
    R8はα、γ−ジアミノ−n−ブチリル残基及びα―アミノブチリル残基から選択され、
    R9はα、γ−ジアミノ−n−ブチリル残基及びα―アミノブチリル残基から選択され、
    R10はスレオニル残基及びロイシル残基から選択され;
    R(FA)は未置換若しくは置換脂肪酸残基又はアルキル残基であり、
    前記アミノ酸残基は、生理学的なpHにおける正電荷の合計が3となり、かつ、R4−R10のヘプタペプチド環部分の正電荷の合計が少なくとも2となるように選択される)、
    グラム陰性細菌への抗菌活性を有する及び/又はグラム陰性細菌を抗菌剤に対して感作させる性能を有する、
    ポリミキシン誘導体又はその製薬学的に許容される塩。
  2. 前記R1〜R10を配列番号10〜22及び24からなる群から選択する請求項1に記載の誘導体。
  3. 前記R(FA)をオクタノイル(OA)残基、デカノイル(DA)残基、及び6−メチルヘプタノイル(MHA)残基からなる群から選択する請求項1又は2に記載の誘導体。
  4. 前記R1〜R10を配列番号10〜20からなる群から選択する請求項1〜3のいずれか一項に記載の誘導体。
  5. OA配列番号10、DA配列番号10、OA配列番号11、OA配列番号12、DA配列番号13、OA配列番号13、MHA配列番号13、MHA配列番号14、OA配列番号15、OA配列番号16、OA配列番号17、OA配列番号18、OA配列番号19、およびOA配列番号20からなる群から選択した請求項4に記載の誘導体。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の誘導体の2個又はそれ以上を有する組合せ製品。
  7. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の少なくとも1個の誘導体と、少なくとも1個の製薬学的に許容の担体および/又は賦形剤とを備える医薬組成物。
  8. さらに抗菌剤を備える請求項7に記載の医薬組成物。
  9. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の誘導体または請求項7に記載の医薬組成物を用いて、グラム陰性菌によって生起された感染症を、治療、緩和、または改善するための薬剤を製造する、薬剤の製造方法。
  10. 前記グラム陰性菌を大腸菌、肺炎桿菌、クレブシエラオキシトーカ、エンテロバクタークロアカ、シトロバクターフロインディ、緑膿菌およびアシネトバクターバウマンニからなる群から選択する請求項9に記載の薬剤の製造方法
  11. 治療効果的に十分な量の抗菌剤と、請求項1〜5のいずれか一項に記載の誘導体または請求項6に記載の組合せ製品とを使用し、前記抗菌剤と、前記誘導体または組み合わせ製品とが、順番に又は同時に投与されるように構成する、グラム陰性菌を抗菌剤に対して感作させるための薬剤の製造方法。
  12. 前記抗菌剤を、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、エリスロマイシンおよび他のマクロライド系、ケトライド、クリンダマイシンおよび他のリンコサミン系、ストレプトグラミン系、リファンピン、リファブチン、リファラジルおよび他のリファマイシン系、フシジン酸、ムピロシン、オキサゾリジノン類、バンコマイシン、ダルババンシン、テラバンシン、オリタバンシンおよび他のグリコペプチド系抗生物質、フルオロキノロン系、バシトラシン、テトラサイクリン誘導体、ベータラクタム系抗生物質、ノボビオシン、プレウロムチン、葉酸合成阻害剤、デホルミラーゼ阻害剤および細菌排出ポンプ阻害剤からなる群から選択する請求項11に記載の薬剤の製造方法。
  13. 前記抗菌剤を、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、エリスロマイシン、クリンダマイシン、ストレプトグラミン、キヌプリスチン−ダルホプリスチンのストレプトグラミンの組み合わせ、リファンピン、フシジン酸、ムピロシン、オキサゾリジノン系リネゾリド、バンコマイシン、フルオロキノロン系モキシフロキサシン、及び葉酸合成阻害剤からなる群から選択する請求項11に記載の薬剤の製造方法。
  14. 前記グラム陰性菌を大腸菌、肺炎桿菌、クレブシエラオキシトーカ、エンテロバクタークロアカ、シトロバクターフロインディ、緑膿菌およびアシネトバクターバウマンニからなる群から選択する請求項11に記載の薬剤の製造方法。
  15. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の誘導体を用いる、臨床的に重要なグラム陰性菌を血清中に存在する宿主防衛機構補体に対して感作させるための薬剤の製造方法。
  16. 前記細菌を大腸菌、肺炎桿菌、クレブシエラオキシトーカ、エンテロバクタークロアカ、シトロバクターフロインディ、緑膿菌およびアシネトバクターバウマンニからなる群から選択する請求項15に記載の薬剤の製造方法
  17. 請求項1〜5のいずれか一項の誘導体を用いる、グラム陰性菌を抗菌剤に対して感作させるための薬剤の製造方法。
  18. 前記細菌を大腸菌、肺炎桿菌、クレブシエラオキシトーカ、エンテロバクタークロアカ、シトロバクターフロインディ、緑膿菌およびアシネトバクターバウマンニからなる群から選択する請求項17に記載の薬剤の製造方法。
  19. 前記抗菌剤をクラリスロマイシン、アジスロマイシン、エリスロマイシンおよび他のマクロライド、ケトライド、クリンダマイシンおよび他のリンコマイシン、ストレプトグラミン、リファンピン、フシジン酸、ムピロシン、オキサゾリジノン、バンコマイシン、ダルババンシン、テラバンシン、オリタバンシンおよび他のグリコペプチド系抗生物質、フルオロキノロン、バシトラシン、テトラサイクリン誘導体、ベータラクタム系抗生物質、ノボビオシン、プレウロムチン、葉酸合成阻害剤、デホルミラーゼ阻害剤および細菌排出ポンプ阻害剤からなる群から選択する請求項17に記載の薬剤の製造方法。
  20. 前記抗菌剤をクラリスロマイシン、アジスロマイシン、エリスロマイシン、クリンダマイシン、ストレプトグラミン併用キヌプリスチンダルフォプリスチン、リファンピン、フシジン酸、ムピロシン、オキサゾリジノンリネゾリド、バンコマイシン、フルオロキノロンモキシフロキサシンおよび葉酸合成阻害トリメトプリムからなる群から選択する請求項17に記載の薬剤の製造方法。
  21. 請求項1で定義した式(I)のポリミキシン誘導体を製造するに当たり、
    4〜6個の正電荷を帯びた残基を有する天然もしくは合成ポリミキシンもしくはオクタペプチンまたはその誘導体の前記残基の1〜3個を中性の残基もしくは共有結合で置換するか、または前記残基の1〜3個を中性の残基に変換することにより、請求項1に記載の式(I)のポリミキシン誘導体を得られるように修飾することを備え、
    生理学的なpHにおける正電荷の合計が3となり、かつ、R4−R10のヘプタペプチド環部分の正電荷の合計が少なくとも2となる、
    ポリミキシン誘導体の製造方法。
  22. 全合成プロセスとして実行する請求項21に記載のポリミキシン誘導体の製造方法。
  23. 準合成プロセスとして実行する請求項21に記載のポリミキシン誘導体の製造方法。
  24. a)天然もしくは合成ポリミキシンもしくはオクタペプチン化合物またはその誘導体に開裂を施して前記ポリミキシン化合物の側鎖を除去し、該化合物の環状部を回収し、
    b)前記工程a)で得た環状部に合成によって作成した側鎖を結合させて、請求項1に記載の式(I)のポリミキシン誘導体を得る
    工程を備える請求項23に記載のポリミキシン誘導体の製造方法。
  25. 前記工程a)における開裂を酵素的に実行する請求項24に記載のポリミキシン誘導体の製造方法。
  26. 前記工程a)における開裂を化学的に実行する請求項24に記載のポリミキシン誘導体の製造方法。
  27. 前記工程a)における開裂を化学的および酵素的処理の両方を併用して実行する請求項24に記載のポリミキシン誘導体の製造方法。
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