JP5224718B2 - ハロヒドリンエポキシダーゼ活性を有する溶液組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、ハロヒドリンエポキシダーゼ活性を有する溶液組成物及び該溶液組成物を利用したエピハロヒドリン又は4−ハロ−3−ヒドロキシニトリルの製造方法に関する。
ハロヒドリンエポキシダーゼは、1,3−ジハロ−2−プロパノールをエピハロヒドリンに変換する活性およびその逆反応を触媒する活性を有する酵素である。
ハロヒドリンエポキシダーゼを産生する微生物としては、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属、アースロバクター(Arthrobacter)属が知られている。具体的には、アグロバクテリウム ラジオバクター(Agrobacterium radiobacter) AD1株、マイコバクテリウム(Mycobacterium)sp.GP1およびアースロバクター(Arthrobacter)sp.AD2のハロヒドリンエポキシダーゼが見出されている。そのうち、アグロバクテリウム ラジオバクター(Agrobacterium radiobacter) AD1株においては、その立体構造が明らかになっている(非特許文献1、2)。
エピハロヒドリンは、種々の有機薬品の原料として有用な物質である。4−ハロ−3−ヒドロキシニトリルは、2種の異なる官能基を有する化合物であり、種々の医薬品や生理活性物質の合成原料として有用な物質である。特に、L−カルニチンの合成原料として有用である。
ハロヒドリンエポキシダーゼを利用した微生物変換反応としては、上述のハロヒドリンエポキシダーゼの作用により、1,3-ジハロ-2-プロパノールから光学活性4-ハロ-3-ヒドロキシブチロニトリルを製造する方法(特許文献1、特許文献2参照)及びエピハロヒドリンから光学活性4-ハロ-3-ヒドロキシブチロニトリルを製造する方法(特許文献3参照)が知られている。
さらに、遺伝子組換え技術を利用し、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属由来のハロヒドリンエポキシダーゼ酵素遺伝子を有する組換えベクターを得、この組換えベクターを含有した形質転換体を使用した3−ヒドロキシブチロニトリルの製造方法が知られている(特許文献4、特許文献5、非特許文献3参照)。また、本発明者らは、ハロヒドリンエポキシダーゼ遺伝子を導入したロドコッカス属細菌の形質転換体を作製し、ハロヒドリンエポキシダーゼを大量発現させることに成功している(特許文献6)。
しかしながら、上記の方法では、微生物細胞内に目的酵素が生産されているにもかかわらず、微生物細胞中への基質の透過性が低いため、高い反応速度が得られないという課題があった。
一方、微生物細胞における低分子化合物の透過性を向上させる方法としては、以下に例示するような化学的処理が知られている。処理に際し、目的とする酵素を失活させないことが触媒コストの点で非常に重要である。化学的処理方法としては、例えば、トルエンなどの有機溶媒を添加する方法、トリトンX-100などの非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤を反応液に添加する、あるいは微生物細胞を浸漬する方法が知られている。また、ハロヒンドリンエポキシダーゼ活性を有するロドコッカス属細菌を、陽イオン界面活性剤である塩化ベンゼトニウムで処理することで微生物菌体の透過性が向上し、菌体活性が向上することが報告されている(特許文献6)。しかしながら、塩化ベンゼトニウムはハロヒドリンエポキシダーゼの強い失活剤であること、また再現性の高い結果が得られないことから工業的に実用可能な処理方法では無かった。
さらに界面活性剤を使用し微生物細胞を処理する例としてはロドコッカス属細菌において塩化ベンゼトニウムなどの陽イオン界面活性剤やEDTAなどのキレート剤で処理する方法が報告されている(特許文献7、8)。しかし、これらの特許はニトリルヒドラターゼ、ニトリラーゼ等酵素での例のみであり、ハロヒドリンエポキシダーゼに関する記載はない。
殺菌剤として使用される界面活性剤の作用は、細胞膜に結合することで細胞膜の流動性が変化し細胞の破裂を引き起こすか、細胞膜の破壊までに至らないにしても細胞膜の機能、特に細胞膜に存在する酵素機能を不活性化して、細胞死へ至らしめると考えられている。このような効果を持つ界面活性剤として塩化ベンゼトニウムのような陽イオン界面活性剤が広く使用されており、広い抗菌スペクトルを有している。同様に、両性界面活性である塩酸アルキルアミノアチルグリシンは陽イオン界面活性剤でも殺菌できない結核菌まで殺菌効果を示すことが知られているが、微生物細胞の透過性を向上させる目的で両性界面活性剤を使用した例は知られていない。
特開平03−053889号公報 特開2001−25397号公報 特開平03−053890号公報 特開平04−278089号公報 特開平05−317066号公報 特開平2007−49932号公報 WO01/036592 特開2001−136958号公報 Janssen et al、The EMBO Journal.,22(19), 4933-4944, 2003 Janssen et al、J.Bacteriology 183(17), 5058-5066, 2001 Janssen et al、Biosci. Biotech. Biochem.,58(8), 1451-1457, 1994
本発明の目的は、工業的に実用可能な高活性のハロヒドリンエポキシダーゼ活性を有する微生物菌体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ハロヒドリンエポキシダーゼ活性を有する微生物を、両性界面活性剤を含む溶液に浸漬させることにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、「ハロヒドリンエポキシダーゼ活性を有する微生物を、両性界面活性剤を含む溶液に接触させた微生物菌体」である。
本発明によれば、工業的に実用可能な高活性のハロヒドリンエポキシダーゼ活性を有する微生物菌体を提供でき、且つこれを利用してエピハロヒドリン又は4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを効率よく製造することができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明は、「ハロヒドリンエポキシダーゼ活性を有する微生物を、両性界面活性剤を含む溶液に接触させた微生物菌体」である。
本発明において、「ハロヒドリンエポキシダーゼ活性」とは、1,3−ジハロ−2−プロパノールをエピハロヒドリンに変換する活性およびその逆反応を触媒する活性を意味する。
1,3−ジハロ−2−プロパノールとは、下記一般式(1)で示される化合物である。
Figure 0005224718
(式中、X1およびX2は、それぞれ独立して同一又は異なるハロゲン原子を表す。)
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が好ましく、塩素、臭素が特に好ましい。具体的には1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,3−ジクロロ−2−プロパノール(以下、「DCP」と称することがある)、1,3−ジブロモ−2−プロパノール、1,3−ジヨード−2−プロパノール等が挙げられ、好ましくは、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、1,3−ジブロモ−2−プロパノールである。
エピハロヒドリンとは、下記一般式(2)で示される化合物である。
Figure 0005224718
(式中、Xはハロゲン原子を表す。)
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が好ましく、塩素、臭素が特に好ましい。具体的にはエピフルオロヒドリン、エピクロロヒドリン(以下、「ECH」と称することがある)、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン等が挙げられ、特に好ましくはエピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンである。
本発明においては、「ハロヒドリンエポキシダーゼ活性」は、時間あたりの1,3−ジハロ−2−プロパノールからのエピハロヒドリン生成量又は塩化物イオン生成量を測定することにより求めることができる。エピハロヒドリン生成量は、例えば、液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーなどによって定量することができる。また、塩化物イオン生成量は、例えば、その塩化物イオンの生成に伴って低下するpHをある一定の値に保つように連続的又は断続的にアルカリ溶液を添加し、時間あたりに要したアルカリの量から便宜的に求めることができる。この方法により算出されるハロヒドリンエポキシダーゼ活性を特に「脱クロル活性」と呼ぶことがある。その他、ハロヒドリンエポキシダーゼ活性が形質転換体内における発現量と比例すると仮定する場合は、ハロヒドリンエポキシダーゼ活性が既知であるサンプルと比較することなどにより、SDS-PAGEなどの分析手段によっても間接的に求めることができる。SDS-PAGEは当業者であれば公知の方法を用いて行うことができる。
なお、少なくとも一部のハロヒドリンエポキシダーゼについては、上述の「ハロヒドリンエポキシダーゼ活性」に加え、シアン化合物の存在下にエピハロヒドリンを開環シアノ化して4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを生成する反応を触媒する活性を有する。この場合におけるシアン化合物としては、シアン化水素、シアン化カリウム(以下、「KCN」と称することがある)、シアン化ナトリウム、シアン酸又はアセトンシアンヒドリン等の反応液中に添加した際にシアンイオン(CN−)又はシアン化水素を生じる化合物又はその溶液等が挙げられる。また、4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルは、下記一般式(3)で示される化合物である。
Figure 0005224718
(式中、Xはハロゲン原子を表す。)
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が好ましく、塩素、臭素が特に好ましい。具体的には4−フルオロ−3−ヒドロキシブチロニトリル、4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリル(以下、「CHBN」と称することがある)、4−ブロモ−3−ヒドロキシブチロニトリル、4−ヨード−3−ヒドロキシブチロニトリル等が挙げられ、好ましくは、4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリル、4−ブロモ−3−ヒドロキシブチロニトリルである。
ハロヒドリンエポキシダーゼを産生する微生物としては、コリネバクテリウム(Corynebacterium)sp.N−1074(FERM BP-2643)、ミクロバクテリウム(Microbacterium)sp.N−4701(FERM BP-2644)、アグロバクテリウム ラジオバクター(Agrobacterium radiobacter) AD1、マイコバクテリウム(Mycobacterium)sp.GP1およびアースロバクター(Arthrobacter)sp.AD2等が挙げられる。特に好ましい微生物は、コリネバクテリウム(Corynebacterium)sp.N−1074(FERM BP-2643)である。
N-4701株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1-1-1中央第6)に平成1年4月19日付で寄託されており、その受託番号はFERM BP-2644である。
またハロヒドリンエポキシダーゼを産生する微生物には、上記微生物よりハロヒドリンエポキシダーゼをコードする遺伝子(以下、ハロヒドリンエポキシダーゼ遺伝子と称する)を適当な宿主に導入した形質転換体(形質導入体)も含まれる。
ハロヒドリンエポキシダーゼ遺伝子としては、例えば、GenBankに公表されており、コリネバクテリウムsp.(Corynebacterium)N-1074由来の ハロヒドリンエポキシダーゼ遺伝子(hheB)のAccession番号は D90350である。
ハロヒドリンエポキシダーゼ遺伝子を宿主で発現させるためには、遺伝子の上流に転写プロモーターを、下流にターミネーターを挿入して発現カセットを構築し、このカセットを発現ベクターに挿入することができる。ベクターにハロヒドリンエポキシダーゼ遺伝子を挿入するには、制限酵素を用いる方法、トポイソメラーゼを用いる方法等を利用することができる。また、挿入の際に必要であれば、適当なリンカーを付加してもよい。
プロモーターの種類は宿主において適切な発現を可能にするものであれば特に限定されるものではないが、例えば、大腸菌宿主において利用できるのものとしては、トリプトファンオペロンのtrpプロモーター、ラクトースオペロンのlacプロモーター、ラムダファージ由来のPLプロモーターおよびPRプロモーターなどが挙げられ、tacプロモーター、trcプロモーターのように改変、設計された配列も利用できる。枯草菌宿主において利用できるものとしては、グルコン酸合成酵素プロモーター(gnt)、アルカリプロテアーゼプロモーター(apr)、中性プロテアーゼプロモーター(npr)、α−アミラーゼプロモーター(amy)などが挙げられる。ロドコッカス属細菌宿主において利用できるものとしては、発現ベクターpSJ034に含まれるロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)SK92-B1株由来のニトリラーゼ発現調節遺伝子に係るプロモーターが挙げられる。pSJ034はロドコッカス(Rhodococcus)属細菌においてニトリルヒドラターゼを発現するプラスミドであり、特開平10-337185号公報に示す方法でpSJ023より作製することができる。なお、pSJ023は、形質転換体ATCC12674/pSJ023(受託番号「FERM BP-6232」)として独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1−1−1 中央第6)に平成9年3月4日付けで寄託されている。
ターミネーターは必ずしも必要ではなく、その種類も特に限定されるものではなく、例えばρ因子非依存性のもの、例えばリポプロテインターミネーター、trpオペロンターミネーター、rrnBターミネーター等が挙げられる。
また、アミノ酸への翻訳にとって重要な塩基配列として、SD配列やKozak配列などのリボソーム結合配列が知られており、これらの配列を遺伝子の上流に挿入することもできる。
一般に、ベクターには目的とする形質転換体を選別するための因子(選択マーカー)が含まれる。選択マーカーとしては、薬剤耐性遺伝子や栄養要求性相補遺伝子、資化性付与遺伝子などが挙げられ、目的や宿主に応じて選択されうる。例えば大腸菌で選択マーカーとして用いられる薬剤耐性遺伝子としては、アンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等が挙げられる。
本発明において使用されるベクターは、上記の変異遺伝子を保持するものであれば特に限定されず、それぞれの宿主に適したベクターを使用することができる。ベクターとしては、例えば、プラスミドDNA、バクテリオファージDNA、レトロトランスポゾンDNA、人工染色体DNAなどが挙げられる。例えば、大腸菌を宿主とする場合には、大腸菌内での自律複製可能な領域を有するpTrc99A(Centraalbureau voor Schimmelcultures (CBS)、オランダ;http://www.cbs.knaw.nl/)、pUC19(タカラバイオ、日本)、pKK233-2(Centraalbureau voor Schimmelcultures (CBS)、オランダ;http://www.cbs.knaw.nl/)、pET-12(Novagen社、ドイツ)、pET-26b(Novagen社、ドイツ)などを用いることができる。また、必要に応じてこれらベクターを改変したものも用いることができる。また、発現効率の高い発現ベクター、例えばtrcプロモーター、lacオペレーターを有する発現ベクターpTrc99A又はpKK233-2などを用いることもできる。
本発明において使用する宿主は、上記組換えベクターが導入された後、目的のハロヒドリンエポキシダーゼを発現することができる限り特に限定されるものではない。宿主としては、例えば大腸菌、枯草菌、ロドコッカス属細菌などの細菌、酵母(Pichia、Saccharomyces)、カビ(Aspergillus)等が挙げられ、大腸菌、ロドコッカス属細菌を好ましい宿主として用いることができる。
大腸菌としては、例えば、大腸菌K12株やB株、あるいはそれら野生株由来の派生株であるJM109株、XL1-Blue株、C600株などを挙げることができる。特に、上述したようなラクトースオペロンのlacプロモーターおよびその派生プロモーターを発現プロモーターとして用いる場合、lacIレプレッサー遺伝子を有する宿主を用いれば発現が誘導型となり(IPTG等で誘導)、lacIレプレッサー遺伝子を有しない宿主を用いれば発現は構成型となるので、必要に応じた宿主を利用することができる。これら菌株は、例えば、アメリカン・タイプカルチャー・コレクション(ATCC)などから容易に入手可能である。
枯草菌としては、例えば、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)などが挙げられる。
ロドコッカス(Rhodococcus)属細菌としては、例えば、ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)ATCC999株、ATCC12674株、ATCC17895株、ATCC15998株、ATCC33275株、ATCC184、ATCC4001株、ATCC4273株、ATCC4276株、ATCC9356株、ATCC12483株、ATCC14341株、ATCC14347株、ATCC14350株、ATCC15905株、ATCC15998株、ATCC17041株、ATCC19149株、ATCC19150株、ATCC21243株、 ATCC29670株、ATCC29672株、ATCC29675株、ATCC33258株、ATCC13808株、ATCC17043株、ATCC19067株、ATCC21999株、ATCC21291株、ATCC21785株、ATCC21924株、 IFO14894株、IFO3338株、NCIMB11215株、NCIMB11216株、JCM3202株、ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)J1株(受託番号「FERM BP-1478」)、ロドコッカス・グロベルルス(Rhodococcus globerulus)IFO14531株、ロドコッカス・ルテウス(Rhodococcus luteus)JCM6162株、JCM6164株、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)IFO12538株、IFO12320株、JCM3201株、ロドコッカス・エクイ(Rhodococcus equi)IFO3730株、JCM1313株が挙げられる。好ましくはロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)J1株(受託番号「FERM BP-1478」)が挙げられる。
なお、上記ATCC株はアメリカンタイプカルチャーコレクションから、IFO株は独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部生物遺伝資源部門(NBRC)から、JCM株は、独立行政法人 理化学研究所 バイオリソースセンター 微生物材料開発室からそれぞれ入手可能である。
細菌への組換えベクターの導入方法としては、細菌にDNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。例えば、カルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレーション法等が挙げられる。
酵母としては、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピヒア・パストリス(Pichia pastoris)等が用いられる。酵母への組換えベクターの導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であれば特に限定されず、例えばエレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法等が挙げられる。
次に、上述の微生物又は形質転換体を培養し、微生物菌体を得る。ここで、「微生物菌体」とは、培養後の培養液、培養した後に集菌した菌体、その菌体を洗浄した洗浄菌体等を意味するものである。
微生物を培養する方法は、通常の方法に従って行われる。微生物を培養する培地としては、微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。炭素源としては、グルコース、フラクトース、スクロース、デンプン等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類が挙げられる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩又はその他の含窒素化合物のほか、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー等が挙げられる。無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅若しくは炭酸カルシウム等が挙げられる。
培養は、振盪培養又は通気攪拌培養などの好気的条件下、30〜40℃で行うことが好ましい。培養は、無機又は有機酸、アルカリ溶液等を用いて適時pH 調整を行うことが好ましい。培養中は必要に応じてアンピシリンやカナマシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターを含有する形質転換体を培養する場合は、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。
特に大腸菌形質転換体を培養する場合には、振盪培養又は通気攪拌培養(ジャーファーメンター)により好気的条件下で培養することが好ましく、この場合、通常の固体培養法で培養してもよいが、可能な限り液体培養法を採用して培養するのが好ましい。培養に用いる培地としては、例えば、酵母エキス、トリプトン、ポリペプトン、コーンスティープリカー、大豆若しくは小麦ふすまの浸出液等の1種以上の窒素源に、塩化ナトリウム、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄若しくは硫酸マンガン等の無機塩類の1種以上を添加し、更に必要により糖質原料、ビタミン等を適宜添加したものが用いられる。なお、培地の初発pHは7〜9に調整するのが適当である。また、培養は、5℃〜40℃、好ましくは10℃〜37℃で5〜100時間行う。通気攪拌深部培養、振盪培養、静置培養、流加培養等により実施するのが好ましい。
本発明において、両性界面活性剤とは、界面活性剤のうち、水に溶解してイオンに解離し、分子内に陽イオン性官能基と陰イオン性官能基を一つ以上有する界面活性物質を言う。両性界面活性剤は、塩基性条件下は陰イオン性を、酸性条件下では陽イオン性を示す。
本発明において用いる両性界面活性剤は、目的タンパク質の機能(目的タンパク質が酵素である場合にはその活性)を消失させずに細胞破砕液からの細胞破砕片除去を効率よく達成しうるものであれば如何なるものでもよいが、分子内の陰イオン性官能基がカルボン酸又はスルホン酸であることが好ましい。本発明において用いることが好ましい両性界面活性剤の具体的な態様としては、例えば、アルキルアミノ脂肪酸又はその塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシドが挙げられ、より好ましくはアルキルジアミノエチルグリシンおよびその塩が挙げられ、さらに具体的には塩酸アルキルジアミノエチルグリシンおよびアルキルジアミノエチルグリシンナトリウムが挙げられる。
両性界面活性剤による微生物菌体の処理方法としては、上述の培養から得られる培養物等を、両性界面活性剤を含む溶液に接触させることにより実施される。また、培養物を所望の微生物変換反応に使用する場合は、該反応時に反応溶液に両性界面活性剤を添加しておいても良い。
界面活性剤の終濃度は、ハロヒドリンエポキシダーゼ活性を失活させない濃度で使用すれば特に制限は無い。培養物の菌濃度が630nmの吸光度で10の場合、0.01%〜0.5%とすることが好ましく、0.05%〜0.15%とすることが特に好ましい。培養物の菌濃度が630nmの吸光度で10を超える場合には、両性界面活性剤の濃度を適宜調整し、ハロヒドリンエポキシダーゼ活性が低下しないことを確認して使用するのが良い。
処理温度としては、ハロヒドリンエポキシダーゼ活性を失活させない温度にすれば特に制限は無いが、0℃〜40℃とすることが好ましく、4℃〜20℃とすることが特に好ましい。浸漬時間は菌体処理の効果が認められる時間内であればよく、15分〜24時間とすることが好ましく、30分〜2時間とすることが特に好ましい。
両性界面活性剤で浸漬した菌は、緩衝液や水で洗浄して用いても良いし、洗浄せずそのまま用いても良い。
次に上述の方法で調製した微生物菌体をエピハロヒドリンおよび4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルの製造に使用する使用形態を説明する。
上記方法で調製した微生物菌体は次の(I)〜(III)に示す反応に供することができる。
(I)1,3−ジハロ−2−プロパノールのエピハロヒドリンへの変換
本変換反応は、1,3−ジハロ−2−プロパノールを上述の培養物又はその処理物と接触させることにより行う。基質である1,3−ジハロ−2−プロパノールは、以下に示す化合物である。
Figure 0005224718
(式中、X1、X2はハロゲン原子)
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が好ましく、塩素、臭素が特に好ましい。具体的には1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、1,3−ジブロモ−2−プロパノール、1,3−ジヨード−2−プロパノール等が挙げられ、好ましくは、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、1,3−ジブロモ−2−プロパノールである。変換反応液中の基質濃度は、 0.01〜15(W/V) %が好ましい。この範囲内であると酵素安定性の観点から好ましく、0.01〜10%が特に好ましい。
基質は反応液に一括添加あるいは分割添加することができる。分割添加により基質濃度を一定にすることが蓄積性の観点から望ましい。
反応液の溶媒としては、酵素活性の最適pH4〜10の付近である水又は緩衝液が好ましく、特に水が好ましい。緩衝液としては、例えば、リン酸、ホウ酸、クエン酸、グルタル酸、リンゴ酸、マロン酸、o-フタル酸、コハク酸又は酢酸等の塩等によって構成される緩衝液、Tris緩衝液あるいはグッド緩衝液等が好ましい。
反応温度は、5〜50℃、反応 pH は4〜10の範囲で行うことが好ましい。反応温度は、より好ましくは10〜40℃である。反応 pHは、より好ましくはpH6〜9である。反応時間は基質等の濃度、菌体濃度あるいはその他の反応条件等によって適時選択するが、1〜120 時間で終了するように条件を設定するのが好ましい。尚、本反応においては、反応の進行に伴い生成する塩素イオンを反応系内から取り除くことにより、光学純度をより一層向上させることができる。この塩素イオンの除去は、硝酸銀等の添加によって行うことが好ましい。
反応液中に生成、蓄積したエピハロヒドリンは公知の方法を用いて採取および精製することができる。例えば、反応液から遠心分離等の方法を用いて菌体を除いた後、酢酸エチルなどの溶媒で抽出を行い、減圧下に溶媒を除去することによりエピハロヒドリンのシロップを得ることができる。また、これらのシロップを減圧下に蒸留することによりさらに精製することもできる。
(II)1,3−ジハロ−2−プロパノールの4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルへの変換
本変換反応は、1,3−ジハロ−2−プロパノールを上述の培養物又はその処理物と接触させることにより行う。基質である1,3−ジハロ−2−プロパノールは、上述の式(1)に示す化合物である。好ましくは1,3−ジクロロ−2−プロパノール、1,3−ジブロモ−2−プロパノール等である。
また、シアン化合物としては、シアン化水素、シアン化カリウム、シアン化ナトリウム、シアン酸又はアセトンシアンヒドリン等の反応液中に添加した際にシアンイオン(CN−)又はシアン化水素を生じる化合物又はその溶液を用いることができる。反応液中の基質濃度は、 酵素安定性の観点から0.01〜15(W/V) %が好ましく、0.01〜10%が特に好ましい。また、シアン化合物の使用量は、酵素安定性の観点から基質の1〜3倍量(モル)が好ましい。反応条件は、上記(1)と同様に行うことができる。
反応液中に生成、蓄積した4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルは公知の方法を用いて採取および精製することができる。例えば、反応液から遠心分離等の方法を用いて菌体を除いた後、酢酸エチルなどの溶媒で抽出を行い、減圧下に溶媒を除去することにより4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルのシロップを得ることができる。また、これらのシロップを減圧下に蒸留することによりさらに精製することもできる。
(III)エピハロヒドリンの4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルへの変換
本変換反応は、エピハロヒドリンを上述の培養物又はその処理物と接触させることにより行う。
Figure 0005224718
(図中、X1はハロゲン原子を示す)
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が好ましく、塩素、臭素が特に好ましい。具体的にはエピフルオロヒドリン、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン等が挙げられ、特に好ましくはエピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンである。
また、シアン化合物はシアン化水素、シアン化カリウム、シアン化ナトリウム、シアン酸又はアセトンシアンヒドリン等の反応液中に添加した際にシアンイオン(CN−)又はシアン化水素を生じる化合物又はその溶液を用いることができる。反応条件、採取および精製方法は、上記(2)と同様に行うことができる。
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。
<実施例1>
ハロヒドリンエポキシダーゼ活性を有するロドコッカス(Rhodococcus)属細菌形質転換体の作製(1)
(1)組換えベクターの構築
コリネバクテリウム(Corynebacterium)sp.N−1074 (FERM BP-2643)を、MYK培地(0.5%ポリペプトン、0.3%バクトイーストエキス、0.3%バクトモルトエキス、1%グルコース、0.2%K2HPO4及び0.2%KH2PO4、pH7.0)100ml中、30℃で72時間振盪培養した。培養後、菌体を集菌し、Saline−EDTA溶液(0.1M EDTA及び0.15M NaCl(pH8.0))4mlに懸濁した。次いで、懸濁液にリゾチーム8mgを加えて、37℃で1〜2時間振盪した後、-20℃で凍結した。
次に、凍結した懸濁液に、Tris-SDS液(1%SDS、0.1M NaCl及び0.1M Tris-HCl(pH9.0))10mlを穏やかに振盪しながら加え、さらにプロテイナーゼK(メルク社)(最終濃度0.1mg)を加えて37℃で1時間振盪し混合液を得た。
次いで、混合液に等量のTE飽和フェノール(TE:10mM Tris-HCl及び1mM EDTA(pH8.0))を加えて撹拌した後、遠心した。遠心後、上層を回収し、2倍量のエタノールを加え、析出したDNAをガラス棒で巻きとり、90%、80%、70%のエタノールの順にすすぎ、残存するフェノールを取り除いた。
得られたDNAをTE緩衝液3mlに溶解させた。次いで、溶液にリボヌクレアーゼA溶液(100℃、15分間の加熱処理済)を10μg/mlになるよう加え、37℃で30分間振盪した。その後プロテイナーゼKを加え、37℃で30分間振盪した後、等量のTE飽和フェノール(TE:10mM Tris-HCl及び1mM EDTA(pH8.0))を加えて遠心し、上層と下層とに分離させた。
得られた上層に等量のTE飽和フェノール(TE:10mM Tris-HCl及び1mM EDTA(pH8.0))を加えてから上層と下層とに分離させるまでの操作を2回繰り返した後、得られた上層に等量のクロロホルム(4%イソアミルアルコール含有)を加えて遠心し、上層と下層とに分離させた(以下、上記操作を「フェノール処理」という)。その後、上層に2倍量のエタノールを加え、ガラス棒でDNAを巻き取り、回収し、染色体DNAを得た。 得られた染色体DNAを鋳型として使用し、以下に示す反応液組成(表1)及びプライマー(表2)を用いてPCRを行った。
Figure 0005224718
Figure 0005224718
反応液を調製した後、1サイクルが98℃:10秒、60℃:5秒及び72℃:1分である反応を、30サイクル行った。電気泳動でハロヒドリンエポキシダーゼ遺伝をコードする約1.1KbのDNA断片(配列番号*)を確認した。次いで、反応液をGFX PCR DNA band and GelBand Purification kit(アマシャムバイオサイエンス社製)で精製し、制限酵素XbaIとSse8387Iで制限酵素処理を行いPCR産物を切断した。制限酵素処理を行ったPCR産物を、0.7%アガロースゲルにおける電気泳動に供し、1Kb付近のバンドを回収した。回収したPCR産物を、Ligation Kit(宝酒造社製)を用いてプラスミドpSJ034のXbaI-Sse8387I部位に連結し、組換え体プラスミドを作製した。なお、pSJ034は、ロドコッカス(Rhodococcus)属細菌においてニトリルヒドラターゼを発現するプラスミドであり、特開平10-337185号公報に示す方法でpSJ023より作製した。なお、pSJ023は形質転換体ATCC12674/pSJ023(FERM BP-6232)として独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に平成9年3月4日付け寄託されている。得られた組換え体プラスミドを、pJHB057と名付けた。
図1は、組換え体プラスミドpJHB057の構造を示す模式図である。
(2)ロドコッカス(Rhodococcus)属細菌形質転換体の作製
ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous) ATCC 12674 株の対数増殖期の細胞を遠心分離器により集菌し、氷冷した滅菌水にて3回洗浄し、滅菌水に懸濁した。(1)で調製したプラスミド(pJHB057)各 1μlと菌体懸濁液各10μlを混合し、各々氷冷した。キュベットに各プラスミドと各菌体の懸濁液を入れ、遺伝子導入装置 Gene Pulser (BIO RAD)により2.0KV、200 OHMSで電気パルス処理を行った。電気パルス処理液を氷冷下10分静置し、37℃で10分間ヒートショクを行った。その後、キュベットにMYK培地(0.5%ポリペプトン、0.3%バクトイーストエキス、0.3%バクトモルトエキス、0.2%KHPO4 、0.2% KHPO )500μl を加え、30℃、5時間静置した後、50μg/mlカナマイシン入りMYK寒天培地に塗布し、30℃、3日間培養した。得られたコロニーのプラスミドを確認し、形質転換体(ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)ATCC12674/pJHB057)を得た。
次にこの組換え菌からプラスミドを回収した。100 mlのMY培地(0.5 %ポリペプトン、0.3 %バクトイーストエキス、0.3 %バクトモルトマルツエキス、1 %グルコース、50μg/mlカナマイシン)に植菌し、24時間後に終濃度2%となるように滅菌した20 %グリシン溶液を添加し、さらに24時間培養した。培養後、遠心分離により菌体を回収し、菌体を40 ml TES緩衝液(10 mM Tris-HCl(pH8)、10 mM NaCl、1 mM EDTA)で洗浄後、11 mlのリゾチーム溶液(50 mM Tris-HCl(pH8)、12.5 %シュークロース、100 mM NaCl、1 mg/mlリゾチーム)に懸濁し、37℃にて3時間振盪した。これに1 mlの10 % SDSを加え室温で穏やかに1時間振盪し、さらに1 mlの5 M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.2)を添加し、氷中で1時間静置した。その後、4℃にて10,000×g、1時間遠心し、上清を得た。ここに5倍量のエタノールを加え、−20℃で30分静置した後、10,000×g、20分間遠心した。沈澱物を30 mlの70%エタノールで洗浄した後、100μlのTE緩衝液に溶解してDNA溶液を得た。得られたDNA溶液はQIAprep Spin Miniprep Kit(キアゲン)を用い、以下の方法でさらに精製を行った。DNA溶液をBuffer P1と混合し、その後の操作はマニュアルに従い、最後に50μlの滅菌水で回収した。
(3)J-1菌コンピテントセルの調製
ロドコッカス・ロドクロウスJ-1菌は、Rhodococcus rhodocrouse J-1(FERM BP-1478)として独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託されている。
10 mlのMYKG培地(0.5 %ポリペプトン、0.3 %バクトイーストエキス、0.3 %バクトモルトマルツエキス、0.2% KH2PO4、0.2% K2HPO4、1%グルコース)にJ-1菌を植菌し、30℃で培養した。17時間後、終濃度2%となるように滅菌した20 %グリシン溶液を添加し、さらに24時間培養した。この培養液を1%グリシンを含有した10 mlのMYKG培地に2%植菌し、さらに30℃で48時間培養を行った。この培養液を滅菌水で3回洗浄し、最後に滅菌水500μlに再懸濁した。得られた菌をコンピテントセルとして用いた。
(4)形質転換
上記(2)で調製した各プラスミド1μlと(3)で調整したJ-1菌コンピテントセル10μlを混合し、30分間氷冷した。キュベットにDNAと菌体との懸濁液を入れ、遺伝子導入装置 Gene Pulser(BIO RAD)により20 KV/cm、100 OHMSで電気パルス処理を行った。電気パルス処理液を氷冷下10分静置し、37℃で10分間ヒートショクを行い、MYK培地(0.5 %ポリペプトン、0.3 %バクトイーストエキス、0.3 %バクトモルトエキス、0.2 % K2HPO4 、0.2% KH2PO4)500μl を加え30℃、24時間静置した。その後、10μg/mlカナマイシン入りMYK寒天培地に塗布し、30℃、3日間培養した。
得られたコロニーのプラスミドを確認し、3種の形質転換体(ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous) J-1/pSJH057)を得た。
<実施例2> 界面活性剤による菌体処理
実施例1で得られたロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)J-1/pJHB057をGGPK培地(1.5%グルコース、1%グルタミン酸ナトリウム、0.1%バクトイーストエキス、0.05%K2HPO4、0.05%KH2PO4、0.05% MgSO4・7H2O、カナマイシン 50μg/ml、pH7.2)100mlに植菌し、30℃で72時間振盪培養した。培養菌体を50mM トリス−硫酸緩衝液(pH 8.0)で洗浄し、630nmの吸光度で10の菌液を調製した。次に、この菌液に界面活性剤である塩化ベンゼトニウム、塩酸アルキルジアミノグリシンを0.01〜0.15%で添加し、4℃で30分攪拌した。
ハロヒドリンエポキシダーゼの活性測定は以下の方法で測定した。100mlの活性測定用反応液(50mM DCP、50mM Tris−硫酸(pH8))を調製して、温度を20℃に調整した。該反応液に、希釈した各形質転換体由来の粗酵素液添加し、反応を開始した。ハロヒドリンエポキシダーゼ活性による塩化物イオンの遊離に伴うpHの低下を、pH自動コントローラーを用い、0.01規定の水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pHを8に保つよう連続的に調整した。10分間の反応の間に、pHを8に保つために投入された0.01規定の水酸化ナトリウム水溶液の量から、塩化物イオン生成量を算出し、ハロヒドリンエポキシダーゼ活性(脱クロル活性)(U)を算出した。1Uは上記条件下でDCPから1分間あたり1μmol塩化物イオンの脱離する酵素量に相当するものと定義し、活性測定に用いた各粗酵素液の活性、および該活性を活性測定に用いた各粗酵素液の液量で除することにより各粗酵素溶液の液活性を算出した。測定結果を表3に示す。

<表3>
Figure 0005224718
以上の結果より、両性界面活性剤である塩酸アルキルジアミノグリシンによる処理では、高濃度溶液でも酵素が失活せず、安定して酵素活性が測定できた。
<実施例3>
ハロヒドリンエポキシダーゼ活性を有するロドコッカス(Rhodococcus)属細菌形質転換体の作製(2)
実施例1(2)と同様の方法でロドコッカスエリストポリス(Rhodococcus erythropolis)JCM3201にプラスミドpJH057を形質転換し、形質転換体(ロドコッカスエリストポリス(Rhodococcus erythropolis)JCM3201/pJH057)を得た。
得られた組換え菌は実施例2と同じ方法で培養し、菌体処理を実施して酵素活性を測定した。比較対照として無処理菌を使用した。結果は表4に示した。
<表4>
Figure 0005224718
以上の結果より、ロドコッカスエリストポリス(Rhodococcus erythropolis)JCM3201を宿主とする組換え菌においても両性界面活性剤の効果があることを確認できた。
<実施例4> ハロヒドリンエポキシダーゼ活性を有する大腸菌組換え菌の作製
ハロヒドリンエポキシダーゼ活性を有する大腸菌としてJM109/pST111を用い、LB培地(1mM IPTG、50μg/mlアンピシリン含有)で37℃、20時間振盪培養した、実施例2と同様にして活性を測定した。pST111は、コリネバクテリウム(Corynebacterium)sp.N−1074のハロヒドリンエポキシダーゼ遺伝子(hheB)を含むBamHI-PastI1.1Kb 断片をpUC118 に結合させたプラスミドである(図3)。尚、pST111は、特公平5−317066公報に記載されており、JM109/pST111は、FERM P-12065として、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1-1-1中央第6)に平成3年3月1日付け寄託されている。結果は表5に示した。
<表5>
Figure 0005224718
以上の結果より、大腸菌を宿主とする組換え菌においても両性界面活性剤の効果があることを確認できた。
<実施例5>
ハロヒドリンエポキシダーゼによる1,3−ジクロロ−2−プロパノールから4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルの合成
100mM のトリス−硫酸緩衝液(pH 8.0)にシアン化カリウムを300mM になるように溶かした後、1Nの硫酸でpHを8.0 に調整した。この溶液25mlに、実施例2で得られた菌体処理物(OD630 nmの吸光度が10、0.1%塩酸アルキルジアミノグリシン含有)1ml と100mM の1,3−ジクロロ−2−プロパノール溶液25mlを加え、20℃で1時間反応した。生成した4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルをガスクロマトグラフィーで測定して、活性を調べた。また、比較例として両性界面活性剤を添加していない菌体処理物(OD630 nmの吸光度が10)を用いて、同様の実験を実施した。
なお、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、エピクロルヒドリン及び4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルの定量は、ガスクロマトグラフィーを用いて、表6の分析条件で行った。結果を表7に示す。
<表6>
Figure 0005224718
<表7>
Figure 0005224718


以上の結果より、両性界面活性剤に浸漬した菌体処理物を使用することにより、4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルが効率よく合成できることを確認した。
pSJH057の構築図 pST111の構築図
配列番号1:合成DNA
配列番号2:合成DNA

Claims (5)

  1. ハロヒドリンエポキシダーゼ活性を有する微生物を、アルキルジアミノエチルグリシン又はその塩を含む溶液に接触させた微生物菌体。
  2. ハロヒドリンエポキシダーゼ活性を有する微生物が、外来のハロヒドリンエポキシダー遺伝子で形質転換されたロドコッカス属細菌又は大腸菌であることを特徴とする、請求項1記載の菌体。
  3. アルキルジアミノエチルグリシン又はその塩の終濃度(微生物菌体濃度が630nmの吸光度で10の場合)が、0.05%から0.5%である、請求項1又は2記載の菌体。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の菌体を、1,3−ジハロ−2−プロパノールと接触させることを含む、エピハロヒドリンの製造方法。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の菌体を、シアン化合物存在下、1,3−ジハロ−2−プロパノール又はエピハロヒドリンと接触させることを含む、4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルの製造方法。
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