JP5223931B2 - クラック特定装置と半導体装置 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体装置の素子と基板等の被接続部材を繋ぐはんだ層に生じ得るクラックの有無を検知するクラック特定装置と、このクラック特定装置を備えた半導体装置に関するものである。
IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の半導体素子を搭載した半導体装置(パワーモジュール)においては、この半導体素子からの発熱を効率よく放熱し、発熱時においても基準温度以下となるような調整が図られている。
ここで、従来の半導体装置の実装構造を図13に基づいて説明する。同図で示すように、窒化アルミニウム(AlN)板や純アルミニウム板等からなる絶縁基板dの一側面に回路基板cが固定され、外部電極に通じるリードフレームfと電気的に接続された半導体素子aと回路基板cがはんだ層bを介して固定され、絶縁基板dの他側面には半導体素子aからの熱を回路基板cを介して放熱する(Q方向)ための放熱板e(ヒートシンク)が配されて半導体装置Hが構成されている。なお、半導体装置の形態は図示例以外にも多様な形態があり、たとえば、ヒートシンクの下方に冷却器等がろう付けされた形態や、図示する装置が封止樹脂体でポッティングされた形態、半導体素子がヒートシンクやリードフレームにろう付けされた形態などもある。
いずれの形態であっても、半導体素子は基板等のはんだ層を介して接続されること、および、半導体装置が各種構成部材の多層積層構造となっていることに変わりはない。たとえば図示例においては、半導体素子の線膨張率(もしくは線膨張係数)が3ppm/K程度、回路基板や絶縁基板の線膨張率が4〜5ppm/K程度、アルミ製のヒートシンクの線膨張率が25ppm/K程度と構成部材ごとに線膨張率が非常に異なっている。
ところで、上記する半導体装置がハイブリッド自動車や電気自動車に搭載される場合には、長期に亘り、しかも寒暖差が極めて激しい冷熱サイクルに対してその耐久性の確保が要求される。しかし、上記のごとく構成部材ごとに線膨張率が大きく異なっていることから、それぞれの部材を直付けした場合には、温度変化に起因する線膨張差によって熱応力が構成部材内や構成部材同士の接合界面に生じ、特に構成部材の中で最も構造的、強度的に弱いはんだ層内ではクラックが生じ易く、これが半導体装置の耐久性を低下させる大きな要因となり得る。
特に、昨今の半導体装置はその小型化が進んでおり、この半導体装置の小型化に伴って半導体素子が発する熱もより一層高くなっており、単位面積当りの熱量が増大していることに鑑みれば、上記するはんだ層におけるクラックの発生は一層顕著なものとなっている。
ここで、公開された従来技術に関し、特許文献1には、半導体素子の中央部とその周辺端部に配置された温度検出素子によってそれぞれの部位の温度を検知し、温度差によってクラックの発生を検知する方法が開示されている。
この検知方法は、クラックが生じている部位はその熱抵抗が増大して放熱が阻害され、これに起因して温度が上昇することに着目したものであり、ある部位が他の部位に比して温度上昇した際にこの部位にクラックが生じたものと同定する方法である。
しかし、ある部位の温度を測定してクラック発生の有無を特定する方法では、以下のような課題がある。
すなわち、熱は拡散し易い性質を有していることから、クラックが生じている部位とクラックが生じていない部位との間で温度差がないと特定されることがあり、測定温度が低いにもかかわらず実際にクラックが生じていたり、測定温度が高いにもかかわらず実際にはクラックが生じていないといったいわゆる誤検知が生じ易いことである。
また、熱の伝わりには時間を要することから、リアルタイムにクラックを特定するのが難しいことである。
特開2005−259753号公報
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、半導体装置の素子と基板等の被接続部材を繋ぐはんだ層において、クラックが生じたことをリアルタイムに、かつ精度よく特定することのできるクラック特定装置と、このクラック特定装置を備えた半導体装置を提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく、本発明によるクラック特定装置は、少なくとも半導体素子がはんだ層を介して被接続部材と接続されてなる半導体装置において、はんだ層にクラックが生じたか否かを特定する、クラック特定装置であって、半導体装置を構成する部材に固定されて磁界を発生する発生部と、はんだ層内に配されて磁界の大きさを検出する検出部と、からなり、前記発生部で生じた磁界を前記検出部で検知するようになっており、クラック発生前に検知されている磁界の大きさに対してこの磁界の大きさが変化したことをもってはんだ層にクラックが生じたものと特定するものである。
本発明のクラック特定装置が組み込まれる半導体装置は、その構成部材である半導体素子や基板等がケース内に収容されるものであっても、ケースレス構造のものであってもよいし、さらに、これらの構成部材が封止樹脂体にてポッティングされているものであってもされていないものであってもよい。さらに、外部電極に通じるリードフレームを具備するものも当然に包含するものである。また、ここでいう「基板」とは、回路基板、絶縁基板、放熱板、もしくは回路基板と絶縁基板の組み合わせ、もしくはそれらと放熱板の組み合わせなど、のすべてを総称するものである。
本発明のクラック特定装置は、磁界を発生する発生部と、はんだ層内に配されて磁界の大きさを検出する検出部とから構成されている。なお、ここでいう「磁界の大きさ」とは、磁界の強さともいうことができ、たとえば測定された磁束密度の値をもって磁界の大きさとすることができる。
ここで、この発生部としては、希土類磁石やフェライト磁石、アルニコ磁石などの磁石のほか、半導体装置が外部に延びるリードフレームを具備するものの場合にはこのリードフレームに取り付けられたコイルなどを挙げることができる。
さらに、この発生部としては、はんだ層を形成するはんだ材料(錫、錫銀、錫銅、錫銀銅、錫亜鉛アルミなど)内に分散されたニッケルや鉄、コバルトやこれらの合金などからなる強磁性材料などであってもよい。
また、これらの強磁性材料からなるバルク体(たとえば球体)がはんだ層の厚み保持手段として埋設されている場合には、このバルク体も上記する発生部となり得る。
また、磁界の大きさを検出する検出部としては、たとえばホール素子や磁気抵抗素子(MR素子)などを挙げることができるが、より微小な磁界の大きさの変化を検出できるものとして、磁気インピーダンス素子(MI素子)などが好ましい。なお、検出される磁界の大きさやその変化が小さな場合には、検出部にアンプを組み込んでおくのがよい。
上記するように、磁界を生じさせる発生部と、この発生部で生じた磁界の大きさを検出する検出部の形態や組み合わせは多様に存在するが、いずれの形態においても、はんだ層にクラックが生じていない状態で検出される磁界の大きさに対して、その検出値が変化した際に、はんだ層にクラックが生じたものと特定するようになっている。
はんだ層にクラックが生じると、このはんだ層が側方へ広がるように潰れたり、はんだ層の下面が波を打つように変形したりして、このはんだ層内に配設された検出部の位置がクラック発生前の位置からずれてしまう。
そして、この検出部の位置ずれによって発生部と検出部の距離が変化し、この距離の変化によって検出部で検出される磁界の大きさが変化することを本発明のクラック特定装置は利用している。
たとえばはんだ層にクラックが生じて検出部と発生部の距離が変化して長くなった際には、これらの間の空間抵抗が増加することに起因して検出部で検出される磁界の大きさは小さくなる。
また、クラックの発生態様によっては検出部と発生部の間の距離がクラック発生前に比して短くなる場合もあり得るが、この場合には検出部で検出される磁界の大きさが逆に大きくなり、いずれの場合であっても、クラック発生前後で検出される磁界の大きさが変化することとなる。
すなわち、本発明のクラック特定装置は、既述する従来の公開技術のごとく、はんだ層の任意部位における温度の変化によってクラックを特定するものでなく、クラックの発生によって必然的に変化する磁界の大きさに基づいてクラックを特定することから、リアルタイムで、かつ精緻にクラックの発生を特定することができるものである。
なお、上記するクラック特定装置は、この検出部における磁界の大きさに関するセンシングデータが常時送信されるコンピュータをさらに備えるものであってもよく、このコンピュータにおいて、受信されたセンシングデータが変化した際に、もしくは、変化量がある閾値を超えた際に、はんだ層にクラックが生じたことを画面表示したり、警報告知するような機能をさらに備えていてもよい。
また、発生部で生じる磁界の大きさやその変化が小さい場合に、検出部にアンプを設置する代わりに、発生部の周囲において検出部側に開口を備えた磁性カバー体を配しておき、この磁性カバー体によって発生部で生じた磁界の大きさを増幅させて検出部で検出するような装置形態を適用してもよい。
さらに、本発明によるクラック特定装置の他の実施の形態は、前記発生部の近傍に前記検出部と異なる別途の検出部が配され、前記検出部と前記別途の検出部の双方で前記発生部で生じた磁界の大きさが検出されるようになっており、温度依存性を有する磁界の大きさに関し、実際の磁界の大きさと、その際の温度と、この温度によって補正された磁界の大きさと、に関するデータが複数の温度と複数の磁界に対して特定されたマップをさらに有しており、前記マップを参照して、前記別途の検出部で検出された磁界の大きさから現在の温度が特定され、前記検出部で検出された磁界の大きさを特定された温度と前記マップに基づいて前記補正された磁界の大きさとし、クラック発生前に検知されている磁界の大きさに対してこの補正された磁界の大きさが変化したことをもってはんだ層にクラックが生じたものと特定するものである。
この形態の特定装置は、磁界の大きさが温度依存性を有していることを勘案し、発生部で生じる磁界の大きさをその近傍の別途の検出部で検出し、はんだ層内に配された検出部によって検出された磁界の大きさを、別途の検出部で検出された磁界の大きさから割り出された温度に基づいて補正し、この補正後の磁界の大きさが以前の磁界の大きさから変化しているか否かを比較してクラック発生の有無を特定するものである。
そのために、実際の磁界の大きさと、その際の温度と、この温度によって補正された磁界の大きさと、に関するデータが複数の温度と複数の磁界に対して特定されたマップを用意しておく必要があり、予め特定されたマップデータを、既述するコンピュータ内に内蔵しておき、2つの検出部での検出データがコンピュータに送信された際に瞬時に補正後の磁界の大きさが割り出され、クラック発生の有無が特定されるようになっているのが好ましい。
さらに、本発明は、上記するクラック特定装置を備えた半導体装置にも及ぶものである。
上記のごとく、リアルタイムで精緻にはんだ層内におけるクラック発生の有無が特定されることから、半導体装置の破損を未然に防止することが可能となる。また、半導体装置が作動不可となる前に、この半導体装置が搭載された電子機器の使用者や、ハイブリッド車、電気自動車等の乗員がその作動を停止することができ、半導体装置の停止による事故を未然に防止することが可能となる。
以上の説明から理解できるように、本発明のクラック特定装置によれば、半導体装置の構成部材内に磁界を生じさせる発生部が配され、クラックが生じ得るはんだ層内に磁界の大きさとその変化を検出する検出部が配されたことにより、はんだ層にクラックが生じたことをリアルタイムでかつ精緻に特定することができる。
本発明のクラック特定装置の一実施の形態とこれを備えた半導体装置を示す模式図である。 図1の半導体装置のはんだ層にクラックが生じた状態を説明した模式図である。 本発明のクラック特定装置の他の実施の形態とこれを備えた半導体装置を示す模式図である。 本発明のクラック特定装置のさらに他の実施の形態とこれを備えた半導体装置を示す模式図である。 図4の半導体装置のはんだ層にクラックが生じた状態を説明した模式図である。 本発明のクラック特定装置のさらに他の実施の形態とこれを備えた半導体装置を示す模式図である。 本発明のクラック特定装置のさらに他の実施の形態とこれを備えた半導体装置を示す模式図である。 図7の半導体装置のはんだ層にクラックが生じた状態を説明した模式図である。 (a)は図7における閉磁路を仮想の磁気回路で説明した図であり、(b)は図8における閉磁路を仮想の磁気回路で説明した図である。 (a)は本発明のクラック特定装置のさらに他の実施の形態とこれを備えた半導体装置を示す模式図であり、(b)はその制御フローを説明した図である。 検出される磁束密度と温度の関係を説明した図である。 検出される磁束密度と、検出部−発生部間の距離の関係を説明した図である。 従来の半導体装置の構造を説明した模式図である。
1…半導体素子、2…回路基板、3…絶縁基板、4…ヒートシンク、5…はんだ層、6…リードフレーム、7…磁石(発生部)、7A…コイル(発生部)、8…MI素子(検出部)、9…磁性カバー体、10,10A,10B,10C,10D,10E…クラック特定装置、20,20A,20B,20C,20D,20E…半導体装置、51…強磁性金属粒、52…強磁性金属バルク体
以下、図面を参照して本発明のクラック特定装置とこれを備えた半導体装置の実施の形態を説明する。なお、半導体装置の構造、すなわち、半導体装置を構成する構成部材やその積層態様などは図示例に限定されるものでないことは勿論のことである。また、検出部での検出データが送信されたり、検出データを現在温度にて補正したり、クラックの発生を表示もしくは警報等するコンピュータをさらに備えていてもよいが、その図示は省略している。
図1は、本発明のクラック特定装置の一実施の形態とこれを備えた半導体装置を示した図であり、図2は、図1の半導体装置のはんだ層にクラックが生じた状態を説明した図である。
図示する半導体装置20は、半導体素子1と回路基板2をはんだ層5が接続し、回路基板2と絶縁基板3、およびヒートシンク4がろう付けや接着等されて接続され、半導体素子1が外部電極へ通じるリードフレーム6と繋がれてその大略が構成されている。
また、この半導体装置20のうち、リードフレーム6には磁界を発生する発生部である磁石7が取り付けられており、はんだ層5の内部には、磁石7から生じた磁界の大きさとその変化を検出する検出部であるMI素子8が配設されていて、これら磁石7とMI素子8からクラック特定装置10が構成されている。
ここで、磁石7は、希土類磁石やフェライト磁石、アルニコ磁石のうちのいずれであってもよいが、磁束密度が大きく、したがってアンプ等を配設せずともMI素子8でその大きさやその大きさの変化をより精緻に検出できる希土類磁石で形成されたものが好ましい。
図1の状態、すなわち、はんだ層5にクラックが生じていない状態における磁石7とMI素子8の距離はL1であり、この距離を磁石7からMI素子8へ磁束が流れて(X1方向)ここで磁界の大きさ(たとえば磁束密度)がセンシングされる。
半導体装置20の繰り返し使用により、はんだ層5には図2で示すようにクラックCが生じ、たとえば同図で示すように、はんだ層5の上方端部で生じたクラックCによってMI素子8が当初位置から外側へ傾いた位置へ傾斜することにより(Y1方向)、磁石7とMI素子8の間の距離は、当初の距離:L1よりも短い距離:L2となる。
距離が短くなることにより、磁石7とMI素子8の間の空間抵抗が小さくなり、MI素子8にて検出される磁界の大きさがクラック発生前の値よりも大きな値に変化し、この変化の検知によってはんだ層5にクラックCが生じたものと特定される。
図3は、クラック特定装置の他の実施の形態とこれを備えた半導体装置を示す図である。
図示する半導体装置20Aは、たとえば銅素材のリードフレーム6に同素材の導線が巻装されたコイル7Aがろう付けされ、リードフレーム6に通電された際に電流の一部がコイル7Aに流れて磁界を発生させるものである。コイル7Aで生じた磁束がMI素子8へ流れて(X1方向)ここで磁界の大きさがセンシングされるものであり、コイル7AとMI素子8からクラック特定装置10Aが構成されている。
また、図4は、クラック特定装置のさらに他の実施の形態とこれを備えた半導体装置を示す図であり、図5は、図4の半導体装置のはんだ層にクラックが生じた状態を説明した図である。
図示する半導体装置20Bでは、はんだ層5内に強磁性金属粒51が分散しており、これらが磁界を生じさせる発生部となっていて、この強磁性金属粒51とMI素子8からクラック特定装置10Bが構成されている。
クラックが生じていない図4の状態では、分散した多数の金属粒51からの磁束がMI素子8へ流れて(X2方向)、それぞれの金属粒51の磁界の大きさの総和(金属粒の集合体の磁界の大きさ)がMI素子8にて検出されている。
一方、このはんだ層5に図5で示すようにクラックCが生じ、MI素子8が当初位置から外側へ傾いた位置へ傾斜することにより(Y2方向)、MI素子8と多数の金属粒51の集合体との間の距離は、当初の距離よりも長くなる。したがって、金属粒51の集合体からMI素子8へ磁束が流れる(X3方向)距離抵抗が大きくなることにより、MI素子8にて検出される磁界の大きさがクラック発生前の値よりも小さな値に変化し、この変化の検知によってはんだ層5にクラックCが生じたものと特定される。
また、図6は、クラック特定装置のさらに他の実施の形態とこれを備えた半導体装置を示す図である。
図示する半導体装置20Cは、はんだ層5内にこのはんだ層の厚みを保証する球状のバルク体52が埋設されたものであり、このバルク体52は強磁性金属であるニッケルや鉄、コバルトやそれらの合金から形成されたものである。したがって、この強磁性金属バルク体52は磁界を生じさせる発生部となり、これと検出部であるMI素子8からクラック特定装置10Cが構成されている。
また、図7は、クラック特定装置のさらに他の実施の形態とこれを備えた半導体装置を示す図であり、図8は、図7の半導体装置のはんだ層にクラックが生じた状態を説明した図である。
図示する半導体装置20Dは、はんだ層5内にこのはんだ層の厚みを保証する球状で強磁性のバルク体52が埋設されるとともに、リードフレーム6には、磁石7が取り付けられ、さらに、この磁石7の周囲においてMI素子8側に開口を備えた磁性カバー体9が配され、この磁性カバー体9によって磁石7で生じた磁界の大きさを増幅させてMI素子8で検出するようになっている。磁石7と、生じた磁界をMI素子8側へ提供する磁性カバー体9と、強磁性のバルク体52およびMI素子8からクラック特定装置10Dが構成されている。なお、このクラック特定装置が強磁性のバルク体を具備しないものであってもよい。
クラックが生じていない図7の状態では、磁性カバー体9とMI素子8の間の距離がL3、強磁性のバルク体52と磁石7の間の距離がL4となっており、磁石7から生じた磁束が磁性カバー体9を通り、距離:L3の空間を通ってMI素子8に入り、さらに強磁性のバルク体52を通り、距離:L4の空間を通って磁石7に入る閉磁路の磁束流れ(X4方向)を形成している。
これに対して、たとえば図8で示すようにはんだ層5のバルク体52の上方にクラックCが生じると、MI素子8は側方に傾いて磁性カバー体9との距離が当初距離:L3からL5に短くなり、その一方で、バルク体52と磁石7の間の距離はクラックCの分だけ当初距離:L4からL6へ長くなる(閉磁路の磁束流れはX4’方向)。
この結果、2つの空間距離:L3,L4がそれぞれL5,L6に変化することで空間抵抗が変化し、MI素子8にて検出される磁界の大きさがクラック発生前の値から変化し、この変化の検知によってはんだ層5にクラックCが生じたものと特定される。
ここで、図9a,bはそれぞれ、図7,8に関する上記閉磁路を仮想の磁気回路で説明した図である。
図9a,bともに、Eは磁界を生じさせる磁石7を模擬しており、Rは磁性カバー体9を抵抗値で模擬しており、RL3、RL4,RL5,RL6はそれぞれ、空間距離:L3〜L6の空間抵抗を示している。
また、図10aは、クラック特定装置のさらに他の実施の形態とこれを備えた半導体装置を示した図であり、図10bは、その制御フローを説明した図である。
図示する半導体装置20Eは、はんだ層5内にこのはんだ層の厚みを保証する球状で強磁性のバルク体52が埋設されるとともに、リードフレーム6には、磁石7が取り付けられ、さらに、この磁石7の周囲においてMI素子8側に開口を備えた磁性カバー体9が配され、さらに、この磁石7と磁性カバー体9の間に磁石7に接するように別途のMI素子8Aが配されたものであり、磁石7と磁性カバー体9、強磁性のバルク体52、MI素子8および別途のMI素子8Aからクラック特定装置10Eが構成されている。
図示するクラック特定装置10Eは、磁界の大きさが温度依存性を有していることを勘案して、磁石7で生じる磁界の大きさをその近傍の別途のMI素子8Aで検出し、はんだ層5内に配されたMI素子8によって検出された磁界の大きさを、別途のMI素子8Aで検出された磁界の大きさから割り出された温度に基づいて補正し、この補正後の磁界の大きさが以前(クラックが生じていない状態)の磁界の大きさから変化しているか否かを比較してクラック発生の有無を特定するものである。
ここで、図11には、検出される磁束密度と温度の関係、すなわち、検出される磁束密度の温度依存性を本発明者等の実証に基づいてグラフで示している。
同図において、実施例1は図1で示すクラック特定装置10の構成で磁石7がフェライトからなるもののであり、実施例2は同様にクラック特定装置10の構成で磁石7が希土類磁石からなるもののであり、実施例3は図10で示すクラック特定装置10Eの構成で磁石7がフェライトからなるものである。また、100℃における実施例3のMI素子8Aで検出された磁束密度を1に正規化し、他の磁束密度の値をこれとの比率で示している。
同図で示すように、半導体装置の使用温度域を図中で示す−40℃〜130℃程度とした際に、検出される磁束密度は温度の上昇とともにリニアに減少する傾向にあることが特定されている。
そこで、検出される磁界の大きさをその温度依存性を考慮して適正に補正することで、実際にはんだ層にクラックが生じているか否かを精緻に特定することが可能となる。
そこで、たとえば、図10bで示す制御フローに基づいて、MI素子8で検出された磁界の大きさ(磁束密度)を、磁石7近傍のMI素子8Aで検出された磁界の大きさから特定される温度によって補正するものである。
具体的には、磁石7近傍のMI素子8Aで磁束密度(測定値1)を測定し(ステップS1)、一方で、温度と磁束密度の相関マップや温度を考慮した磁束密度の補正値を図11等の検証に基づいて作成しておく(ステップS2)。
測定値1を相関マップに照合して現在の温度を特定し(ステップS3)、一方で、はんだ層内に配されたMI素子8で磁束密度(測定値2)を測定し(ステップS4)、測定値2を現在の温度を考慮した補正値として(ステップS5)、はんだ層のMI素子位置における磁界の大きさを精緻に特定することができる。
そして、この補正後の磁界の大きさとそれまでの磁界の大きさを比較し、変化があればクラックが生じたものと特定するものである。
また、図12は、検出される磁束密度と、検出部−発生部間の距離の関係を本発明者等の実証によって特定した図である。なお、同図において、実施例1〜3は図11と同様である。
同図において、検出部−発生部間の距離が近接するにつれて磁束密度の検出感度は顕著に増大することが分かる。
しかし、この距離が1mmよりも短くなってしまうと、検出感度が極めて高い一方で、発生部から生じた磁界が半導体素子の性能に影響を与えかねないことから、1mmを検出部−発生部間の最短距離に設定して図示するクラック特定装置を構成させるのがよい。
このように、図示する本発明のクラック特定装置とこれを備えた半導体装置によれば、はんだ層にクラックが生じたことをリアルタイムでかつ精緻に特定することができる。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。

Claims (10)

  1. 少なくとも半導体素子がはんだ層を介して被接続部材と接続されてなる半導体装置において、はんだ層にクラックが生じたか否かを特定する、クラック特定装置であって、
    半導体装置を構成する部材に固定されて磁界を発生する発生部と、
    はんだ層内に配されて磁界の大きさを検出する検出部と、からなり、
    前記発生部で生じた磁界を前記検出部で検知するようになっており、クラック発生前に検知されている磁界の大きさに対してこの磁界の大きさが変化したことをもってはんだ層にクラックが生じたものと特定するクラック特定装置。
  2. 少なくとも半導体素子がはんだ層を介して被接続部材と接続されてなる半導体装置において、はんだ層にクラックが生じたか否かを特定する、クラック特定装置であって、
    はんだ層内で磁界を発生する強磁性金属からなる発生部と、
    はんだ層内に配されて磁界の大きさを検出する検出部と、からなり、
    前記発生部で生じた磁界を前記検出部で検知するようになっており、クラック発生前に検知されている磁界の大きさに対してこの磁界の大きさが変化したことをもってはんだ層にクラックが生じたものと特定するクラック特定装置。
  3. 前記発生部が磁石からなる請求項1に記載のクラック特定装置。
  4. 前記半導体装置は、半導体素子から外部に延びるリードフレームを具備するものであり、
    前記リードフレームにコイルを取り付けてこれを前記発生部とし、リードフレームに流れる電流の一部を前記コイルに通電させて磁界を生じさせるようになっている請求項1に記載のクラック特定装置。
  5. 前記強磁性金属がはんだ層内に分散している請求項2に記載のクラック特定装置。
  6. 前記強磁性金属がはんだ層内に埋設されてはんだ層の厚みを保持するバルク体である請求項2に記載のクラック特定装置。
  7. 前記強磁性金属が、ニッケル、鉄、コバルト、もしくはこれらの合金のうちのいずれか一種からなる請求項2または請求項2に従属する請求項5または6のいずれかに記載のクラック特定装置。
  8. 前記発生部の周囲であって前記はんだ層の外側に、前記検出部側に開口を備えた磁性カバー体が配されており、この磁性カバー体によって発生部で生じた磁界の大きさが増幅されて検出部に検出される請求項1〜7のいずれかに記載のクラック特定装置。
  9. 前記発生部の近傍に前記検出部と異なる別途の検出部が配され、
    前記検出部と前記別途の検出部の双方で前記発生部で生じた磁界の大きさが検出されるようになっており、
    温度依存性を有する磁界の大きさに関し、実際の磁界の大きさと、その際の温度と、この温度によって補正された磁界の大きさと、に関するデータが複数の温度と複数の磁界に対して特定されたマップをさらに有しており、
    前記マップを参照して、前記別途の検出部で検出された磁界の大きさから現在の温度が特定され、前記検出部で検出された磁界の大きさを特定された温度と前記マップに基づいて前記補正された磁界の大きさとし、クラック発生前に検知されている磁界の大きさに対してこの補正された磁界の大きさが変化したことをもってはんだ層にクラックが生じたものと特定する請求項1〜8のいずれかに記載のクラック特定装置。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載のクラック特定装置を備えた半導体装置。
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