JP5223729B2 - オイルミストセパレータ - Google Patents

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本発明は、エンジンのシリンダヘッドカバー上に設けられ、ブローバイガス流路中のブローバイガスに含まれるオイルミストをフィルタ内で液滴化して除去するためのオイルミストセパレータに関する。
自動車のエンジンの作動中に発生するオイルミストを含んだブローバイガスが吸気系統に還流されると、オイルミストがスロットルや吸気バルブなどの吸気系部品に付着、堆積し、不具合の原因となり得るため、オイルミストセパレータでオイルミストが除去され、ガス分だけがエンジンの負圧を利用してインテークマニホールド等の吸気路に還流されて燃焼される。この種のオイルミストセパレータとしては、ブローバイガス流路にフィルタを配置し、該フィルタによってブローバイガス中のオイルミストを除去するフィルタ式のオイルミストセパレータが知られている。例えば、エンジンヘッドカバーと一体に設けられブローバイガスの入口と出口とを備え、内部にオイルミスト分離手段を有し、入口を下向きの入口管で形成し、入口管内壁に大径部より小径部が低位置となる傾斜壁を有する環状バッフルプレートを取付けたオイルミストセパレータが提案されている(特許文献1を参照)。
実開平6−76614号公報(第2頁及び第3頁)
しかしながら、特許文献1に記載されているオイルミストセパレータにおいては、フィルタに付着したオイルミストが液滴化した後自重によりフィルタ下部に溜まるが、そのフィルタ下部に溜まったオイルの一部はブローバイガス流がフィルタ下部に当ることによって再飛散し、ブローバイガスによって吸気路側に搬送される。このため、オイルミストはフィルタに一旦付着されて分離されるが、再飛散した分だけ分離性能が低下するという問題があった。
そこで、本発明の目的とするところは、フィルタに溜まったオイルの再飛散を抑制し、オイルミストの分離性能を向上させることができるオイルミストセパレータを提供することにある。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明のオイルミストセパレータは、エンジンのシリンダヘッドカバー上にはブローバイガス流路を有するオイルミストセパレータのハウジングを設け、該ハウジング内にはフィルタ固定枠を備え、該フィルタ固定枠にブローバイガス中に含まれるオイルミストを付着、液滴化するフィルタを固定したものである。そして、前記フィルタの下端部はハウジングの底壁に設けられた開口を介して下方へ延出され、その延出部からフィルタ内で液滴化したオイルを排出するように構成し、前記フィルタの延出部の少なくとも下部を、フィルタを構成する繊維の密度がその他の部分より低密度となるように形成することを特徴とする。
請求項に記載の発明のオイルミストセパレータは、請求項1に係る発明において、前記フィルタの延出部は、ハウジングの底壁に凹設され下端部にオイル排出孔を有する保持受部により保持されていることを特徴とする。
請求項に記載の発明のオイルミストセパレータは、請求項に係る発明において、前記保持受部の中間部には下方が縮幅する係合段部を設け、該係合段部にフィルタの下端部が係合されるように構成されていることを特徴とする。
請求項に記載の発明のオイルミストセパレータは、請求項1から請求項のいずれか1項に係る発明において、前記フィルタ固定枠はフィルタの上流側に設けられていることを特徴とする。
請求項に記載の発明のオイルミストセパレータは、請求項1から請求項のいずれか1項に係る発明において、前記フィルタ固定枠は、上部枠及び両側部枠により門型状に形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
本発明のオイルミストセパレータにおいては、フィルタの下端部はハウジングの底壁に設けられた開口を介して下方へ延出され、その延出部からフィルタ内で付着、液滴化したオイルを排出するように構成されている。このため、オイルミストがフィルタに付着し液滴化してフィルタの延出部に溜まったとき、該延出部はブローバイガス流路の外に位置し、従ってブローバイガス流に晒されない。そのため、フィルタの延出部に溜まったオイルの飛散が抑えられる。
よって、本発明のオイルミストセパレータによれば、フィルタ中に液滴化して溜まったオイルの再飛散を抑制することができ、その結果オイルミストの分離性能を向上させることができる。
第1実施形態におけるオイルミストセパレータを示す縦断面図。 オイルミストセパレータにおけるフィルタ延出部の近傍を拡大して示す断面図。 オイルミストセパレータを示す横断面図。 第2実施形態のオイルミストセパレータにおけるフィルタ延出部の近傍を拡大して示す断面図。 第3実施形態のオイルミストセパレータにおけるフィルタ延出部の近傍を拡大して示す断面図。 別例としてのオイルミストセパレータにおけるフィルタ延出部の近傍を拡大して示す断面図。 さらに他の別例としてのオイルミストセパレータにおけるフィルタ延出部の近傍を拡大して示す断面図。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1に示すように、エンジンのシリンダブロックに設けられたシリンダヘッドカバーC上には、ブローバイガス流路を流れるブローバイガス中のオイルミストからオイルを回収するオイルミストセパレータ10が設けられている。図1及び図3に示すように、オイルミストセパレータ10のハウジング11は四角筒状に形成され、図中左端部にはブローバイガスが導入される入口12が設けられるとともに、右端部にはブローバイガスが排気される出口13が設けられている。従って、ハウジング11内では図中矢印で示すように入口12から出口13に向かってブローバイガスが流れるブローバイガス流路14が形成されている。
ハウジング11内のブローバイガスの流れ方向中央位置には、門型状をなすフィルタ固定枠15が配設され、その下流側の面にはブローバイガス中のオイルミストを付着し、液滴化してオイルを分離、回収するためのフィルタ16が接着されている。フィルタ固定枠15は、同一幅の上部枠17及び両側部枠18により構成され、下部枠は設けられていない。前記ハウジング11の底壁11aにおけるブローバイガスの流れ方向中央位置すなわちフィルタ16の下方位置には開口21が底壁11aの幅全体に渡って形成されるとともに、その開口21からさらに下方へ延びる保持受部22が凹設されている。なお、ハウジング11の底壁11aはシリンダヘッドカバーCと一体的に形成されている。
上記保持受部22にはフィルタ16の下端部すなわち前記開口21から下方へ延出された延出部16aが嵌まり込んで保持されている。従って、フィルタ16はその上部及び両側部が前記フィルタ固定枠15に固定され、下部が開口21を通って保持受部22に固定されている。この保持受部22の底部にはオイル排出孔20が保持受部22の長さ方向全体に渡って透設され、フィルタ16の延出部16aに溜まったオイルが排出されるようになっている。
前記保持受部22に嵌入されたフィルタ16の延出部16aにはブローバイガス流が当たることはなく、フィルタ16内で液滴化されたオイルがブローバイガスの流れによって飛散しないようになっている。また、図2の二点鎖線で示すように、前記保持受部22の下方位置にはカム23を備えるカムシャフト24が配置されている。このため、カム23やカムシャフト24から飛散するオイルは保持受部22で遮られ、フィルタ16の延出部16aに当って吸収されることを抑制できるようになっている。
前記フィルタ16は、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル製の繊維などにより形成されている。該フィルタ16は、複数枚のフィルタ素材を重ね合わせたものであってもよい。図2に示すように、前記保持受部22に保持されたフィルタ16の延出部16aの少なくとも下部はその他の部分(高密度部分25)よりも繊維の密度が低い低密度部分26となるように設定され、フィルタ16内で液滴化されたオイルが速やかに下降するように構成されている。繊維の密度が異なるフィルタ16の作製方法は特に制限されないが、例えば繊維の密度が異なるフィルタ16を別々に作製し、それらを順に配置する方法が採用される。
なお、フィルタ16には撥油加工を施すことが好ましく、その場合フィルタ16内に付着したオイルミストが液滴化されやすく、さらに液滴化されたオイルが自重により下降しやすくなる。フィルタ16の撥油加工は特に制限されないが、フッ素樹脂、シリコーン等の化合物をフィルタ16内に浸透させ、高温で加熱処理する方法など常法に従って実施される。
次に、上記のように構成されたオイルミストセパレータ10について作用を説明する。
さて、オイルミストセパレータ10のハウジング11の入口12からハウジング11内へ導入されたブローバイガスはハウジング11内の中央位置に設けられたフィルタ16に到り、フィルタ16内を通過する。このとき、ブローバイガス中のオイルミストはフィルタ16内の繊維表面に付着し、そこで液滴化される。液滴化されたオイルは自重により繊維表面を伝って下降し、フィルタ16内の下部から延出部16aに到り、そこに溜まる。
このとき、フィルタ16の延出部16aはハウジング11のブローバイガス流路14外に位置する保持受部22に保持されていることから、フィルタ16の延出部16aに溜まったオイルがブローバイガス流によって吹き飛ばされ、気化することが回避される。そして、フィルタ16の延出部16aの下部が低密度に形成されていることから、フィルタ16内で液滴化されたオイルは下降してその低密度部分26に到ると下降速度を増して下方へ移動し、オイル排出孔20からシリンダヘッドカバーC内に排出される。また、フィルタ16の延出部16aは前記保持受部22に被覆されていることから、カム23やカムシャフト24から飛散するオイルが保持受部22で遮蔽され、フィルタ16の延出部16aに吸収されることが防止される。
このように、ブローバイガス中のオイルミストがフィルタ16中で液滴化され、液滴化されたオイルが自重で下降して延出部16aに溜まり、飛散することなく低密度部分26を経てオイル排出孔20から速やかに排出される。一方、フィルタ16を通過したブローバイガスはオイルミストが除去された状態で出口13から排気され、インテークマニホールド等に還流されて燃焼される。
〔第1実施形態により発揮される効果のまとめ〕
・ 第1実施形態におけるオイルミストセパレータ10では、フィルタ16の延出部16aからフィルタ16内で液滴化したオイルを排出するように構成されている。前述のように延出部16aはブローバイガス流に晒されないことから、延出部16aに溜まったオイルの飛散によるミスト化が抑えられる。従って、オイルミストセパレータ10によれば、フィルタ16に溜まったオイルの再飛散を抑制することができ、その結果オイルミストの分離性能を向上させることができる。
・ フィルタ固定枠15は上部枠17及び両側部枠18で構成され、下部枠19が設けられていないことから、その分ブローバイガス流路14の通路面積を拡大することができ、オイルミストセパレータ10の濾過能力を向上させることができる。
・ フィルタ16の延出部16aの少なくとも下部を、フィルタ16を構成する繊維の密度がその他の部分より低密度となるように設定することにより、液滴化したオイルを延出部16aの低密度部分26で詰まり難くし、下方へ円滑に移動させて排出することができる。
・ フィルタ16の延出部16aがその下端部にオイル排出孔20を有する保持受部22により保持されていることにより、シリンダヘッド内のカム23やカムシャフト24からのオイルの飛散によってフィルタ16の延出部16aがオイルを吸収することを防止することができる。さらに、フィルタ16の延出部16aにオイルが溜まることにより、溜まったオイルが逆止弁の働きをし、オイル排出孔20からのブローバイガスの逆流を防止することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態について説明する。なお、この第2実施形態においては、主に第1実施形態と異なる部分について説明し、同一部分については同一の符号を付して説明を省略する。
図4に示すように、フィルタ16の延出部16a全体が低密度部分26となっている。さらに、フィルタ固定枠15には下部枠19が設けられ、フィルタ16の下部が下部枠19に接着されている。
この第2実施形態では、フィルタ16の延出部16aはその全体が低密度部分26で構成されているが、保持受部22で覆われていることから、ブローバイガス流の影響を避けることができる。しかも、フィルタ16下部の上流側はフィルタ固定枠15の下部枠19に接着され、その下部枠19によってブローバイガス流が遮られることから、フィルタ16の下部(延出部16aより上方)に溜まったオイルの飛散を抑制することができる。
(第3実施形態)
続いて、本発明を具体化した第3実施形態について説明する。この第3実施形態においても、主に第1実施形態と異なる部分について説明し、同一部分については同一の符号を付して説明を省略する。
図5に示すように、フィルタ16には低密度部分26は設けられておらず、全体が均一に構成されている。また、ハウジング11の底壁11aには保持受部22は設けられておらず、開口21のみが設けられ、延出部16aはシリンダヘッドカバーC内において露出状態となっている。さらに、フィルタ固定枠15には下部枠19が設けられ、フィルタ16の下部が下部枠19に接着されている。
この第3実施形態では、フィルタ16下部の上流側がフィルタ固定枠15の下部枠19に接着され、その下部枠19によってブローバイガス流が遮られるため、フィルタ16の下部に溜まったオイルの飛散を抑制することができる。さらに、保持受部22が設けられておらず、かつフィルタ16の構成が単一であることから、オイルミストセパレータ10の構成を簡易にすることができる。
なお、前記実施形態を次のように変更して実施することも可能である。
・ 図6に示すように、前記第1実施形態において、保持受部22の中間部には下方が縮幅する係合段部27を設け、該係合段部27にフィルタ16の延出部16aの下端部が係合されるように構成することができる。このように構成した場合、フィルタ16の延出部16aの下端部が保持受部22内の中間位置で保持され、カム23又はカムシャフト24からのオイルの飛散によってフィルタ16の延出部16aがオイルを吸収し、オイル排出孔20からブローバイガスが逆流することを一層有効に防止することができる。また、フィルタ16として、低密度部分26を設けることなく、全体を均一な密度のもので構成することができる。
・ 図7に示すように、前記第1実施形態において、フィルタ固定枠15をフィルタ16の下流側に配置するとともに、下部枠19を設けるように構成することができる。さらに、フィルタ16の低密度部分26を下部枠19の上端縁より下方部分とすることができる。
・ 第1実施形態又は第2実施形態において、フィルタ16として低密度部分26を設けることなく、全体を均一な密度のもので構成することができる。また、第3実施形態において、フィルタ16の下部又は延出部16aを低密度部分26とすることができる。
10…オイルミストセパレータ、11…ハウジング、11a…底壁、14…ブローバイガス流路、15…フィルタ固定枠、16…フィルタ、17…上部枠、18…側部枠、16a…延出部、20…オイル排出孔、21…開口、22…保持受部、26…低密度部分、27…係合段部、C…シリンダヘッドカバー。

Claims (5)

  1. エンジンのシリンダヘッドカバー上にはブローバイガス流路を有するオイルミストセパレータのハウジングを設け、該ハウジング内にはフィルタ固定枠を備え、該フィルタ固定枠にブローバイガス中に含まれるオイルミストを付着、液滴化するフィルタを固定したオイルミストセパレータであって、
    前記フィルタの下端部はハウジングの底壁に設けられた開口を介して下方へ延出され、その延出部からフィルタ内で液滴化したオイルを排出するように構成し
    前記フィルタの延出部の少なくとも下部を、フィルタを構成する繊維の密度がその他の部分より低密度となるように形成することを特徴とするオイルミストセパレータ。
  2. 前記フィルタの延出部は、ハウジングの底壁に凹設され下端部にオイル排出孔を有する保持受部により保持されていることを特徴とする請求項1に記載のオイルミストセパレータ。
  3. 前記保持受部の中間部には下方が縮幅する係合段部を設け、該係合段部にフィルタの下端部が係合されるように構成されていることを特徴とする請求項に記載のオイルミストセパレータ。
  4. 前記フィルタ固定枠はフィルタの上流側に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載のオイルミストセパレータ。
  5. 前記フィルタ固定枠は、上部枠及び両側部枠により門型状に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載のオイルミストセパレータ。
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