JP5220987B2 - 油性顔料分散体 - Google Patents
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しかし、顔料濃度が高くなると、分散の安定性に問題があることがこれまでに知られている。また、分散溶媒中に水分が含まれると、油性顔料分散体の安定性が著しく悪くなることが知られており、製造工程において綿密な管理が必要である。
また、本発明は、(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエステル化合物が、エチレングリコールジアルキルエステル、ジエチレングリコールジアルキルエステル、トリエチレングリコールジアルキルエステル、プロピレングリコールジアルキルエステル、ジプロピレングリコールジアルキルエステル、トリプロピレングリコールジアルキルエステル中から選ばれる少なくとも1種である上記構成の油性顔料分散体に係るものである。
上記の(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエステル化合物は、分子内の両末端にエステル基を有し、さらに疎水性のアルキル基をを併せ持つものであり、疎水性の溶媒である。これを有機溶媒として使用すると、吸水性が低いため、分散体製造中や保管中に水分が含まれにくく、保存安定性に悪影響を及ぼしにくい。
このような(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエステル化合物を使用することにより、油性顔料分散体を調製した際の、特にインクジェット記録方式用の油性顔料インクを調製した際の引火点を61℃以上に設定することが容易となり、上記油性顔料分散体の輸送時の安全性等において、非常に優れたものとなる。
本発明では、有機溶媒として(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエステル化合物を使用したことにより、上記の顔料を、油性顔料分散体の全体中、顔料濃度が10〜50重量%、特に好ましくは15〜40重量%となる高濃度で使用することを特徴としている。このような高濃度で用いても、微細な分散状態とすることが可能であり、またこの高濃度で保存しても安定な状態を維持させることができる。
これらの中でも、耐候性、着色力等の点から、C.I.ピグメントブルー15:3、15:4から選択される1種または2種以上の混合物が好ましい。
これらの中でも、耐候性、着色力等の点から、C.I.ピグメントレッド122、202、209、254、C.I.ピグメントバイオレット19から選択される1種または2種以上の混合物が好ましい。
これらの中でも、耐候性等の点から、C.I.ピグメントイエロー74、83、109、110、120、128、138、139、150、151、154、155、213、214から選択される1種または2種以上の混合物が好ましい。
これらの中でも、三菱化学社製のHCF#2650、#2600、#2350、#2300、MCF#1000、#980、#970、#960、MCF88、LFFMA7、MA8、MA11、MA77、MA100、デグサ・ヒュルス社製のプリンテックス95、85、75、55、45等から選択される1種または2種以上の混合物が好ましい。
このような顔料分散剤には、イオン性または非イオン性の界面活性剤や、アニオン性、カチオン性またはノニオン性の高分子化合物が用いられているが、分散安定性、耐水性の面で、高分子化合物を使用するのが好ましく、特にカチオン性基またはアニオン性基を含む高分子化合物が好ましい。顔料分散剤は、有機溶媒中で顔料と分散剤との酸塩基相互作用にて分散安定化しているため、顔料吸着サイトであるカチオン性基かアニオン性基の少なくとも一方を含むことが必須であり、顔料の種類等により分散剤中のカチオン性基やアニオン性基の種類と量をコントロールすることが重要である。
これらの中でも、「DISPERBYK161、162、163、168」、「EFKA4050、4055、4060」、「TEXAPHOR P60、P61、P63、SF73」が特に好ましい。これらを顔料、溶媒の種類にあわせて用いることにより、油性顔料分散体として効果が発揮される場合が多い。
低沸点溶媒を取り除く方法としては、減圧蒸留法、再沈法等が用いられる。これらの方法を用いて、顔料分散剤中の沸点が170℃未満の成分を1重量%未満、特に好ましくは0.5重量%未満、さらに好ましくは0.1重量%未満にすることにより、油性顔料分散体を調製した際の臭いを制御することができる。
特に有機顔料を使用する場合は、高分子化合物からなる顔料分散剤は、顔料に対して、40〜120重量%とするのが好ましい。無機顔料を使用する場合は、高分子化合物からなる顔料分散剤は、顔料に対して、5〜60重量%とするのが好ましい。
上記分散体を得る際には、上記の各成分を、ボールミル、遠心ミル、遊星ボールミル等の容器駆動媒体ミル、サンドミル等の高速回転ミル、攪拌槽型ミル等の媒体攪拌ミル、ディスパー等の簡単な分散機により、よく撹拌混合し、分散させればよい。
また、この分散体に上記の各成分を添加したのち、スリーワンモーター、マグネチックスターラー、ディスパー、ホモミキサー、ホモジナイザー等の簡単な攪拌機により均一に混合する。ラインミキサー等の混合機により混合してもよい。析出粒子をより微細化する目的で、ビーズミルや高圧噴射ミル等の分散機により混合してもよい。
なお、本明細書における上記の「累積50%粒径」および「累積90%粒径」とは測定される散乱強度分布の小粒径から散乱強度を累積した際の50%と90%のときの粒子径から求められる値を意味するものである。
このような油性顔料インクを用いて画像形成する場合、例えば、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックを少なくとも含む4色以上の油性顔料インクを同時に用いて画像形成する等の使用形態を任意にとることもできる。
<(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエステル化合物以外の有機溶媒を使用した 油性顔料分散体>
有機溶媒としてプロピレングリコールジメチルエステル9部に代えて、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(引火点60℃、沸点175℃)9部を使用した以外は、実施例1と同様に分散を行い、油性顔料分散体Hを調製した。
<吸水性の高い有機溶媒を使用した油性顔料分散体>
有機溶媒としてプロピレングリコールジメチルエステル9部に代えて、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(引火点79℃、沸点190℃)9部を使用した以外は、実施例1と同様に分散を行い、油性顔料分散体Iを調製した。
<粒度分布の広い油性顔料分散体>
ペイントコンディショナーによる分散時間を、2時間から15分に変更した以外は、実施例2と同様にして、油性顔料分散体Jを調製した。
<顔料濃度が低い油性顔料分散体>
顔料としての「MA8」の使用量を1部に、顔料分散剤としての「BYK168」の使用量を1.7部に、有機溶媒としてのプロピレングリコールジメチルエステルの使用量を17.3部に、それぞれ変更した以外は、実施例2と同様に分散を行い、油性顔料分散体Kを調製した。
油性顔料分散体の粘度は、R100型粘度計(東機産業社製)により、25℃、コーンの回転数5rpmの条件により、測定した。
油性顔料分散体の累積50%粒径、累積90%粒径は、濃厚系粒径アナライザー(大塚電子社製、FPAR−1000)により、測定した。
油性顔料分散体中の水分量については、カールフィッシャー水分計(京都電子工業社製、MKC210)により、測定した。
表1
┌────┬─────┬──────┬─────┬─────┬─────┐
│ │油性顔料分│ 粘 度 │累積50%│累積90%│ 水分量 │
│ │散体の番号│(mN/m)│粒径(nm)│粒径(nm)│(重量%)│
├────┼─────┼──────┼─────┼─────┼─────┤
│ │ │ │ │ │ │
│実施例1│ A │ 42.1 │ 132 │ 223 │ 0.32│
│ │ │ │ │ │ │
│実施例2│ B │ 35.6 │ 102 │ 245 │ 0.43│
│ │ │ │ │ │ │
│実施例3│ C │ 64.7 │ 165 │ 244 │ 0.46│
│ │ │ │ │ │ │
│実施例4│ D │ 59.2 │ 162 │ 281 │ 0.45│
│ │ │ │ │ │ │
│実施例5│ E │221.1 │ 107 │ 256 │ 0.42│
│ │ │ │ │ │ │
│実施例6│ F │ 47.4 │ 151 │ 268 │ 0.44│
│ │ │ │ │ │ │
│実施例7│ G │ 37.8 │ 129 │ 228 │ 0.37│
│ │ │ │ │ │ │
├────┼─────┼──────┼─────┼─────┼─────┤
│ │ │ │ │ │ │
│比較例1│ H │ 42.7 │ 220 │ 581 │ 0.61│
│ │ │ │ │ │ │
│比較例2│ I │ 87.3 │ 187 │ 310 │ 0.67│
│ │ │ │ │ │ │
│比較例3│ J │ 37.9 │ 158 │ 520 │ 0.41│
│ │ │ │ │ │ │
│比較例4│ K │ 3.9 │ 149 │ 442 │ 0.47│
│ │ │ │ │ │ │
└────┴─────┴──────┴─────┴─────┴─────┘
これに対し、比較例1の油性顔料分散体Hは、累積50%粒径および累積90%粒径の値がいずれも高くなっており、微細な顔料分散が得られなかった。また、比較例3,4の油性顔料分散体J,Kは、累積50%粒径は200nm以下であったが、累積90%粒径が400nm以上であり、粒度分布の広い分散体であった。
各油性顔料分散体を、20ccのガラス瓶に10cc採取し、キャップをすることなく温度25℃、湿度60%に保たれた恒温槽に1週間放置した。この放置後に、前記と同様にして、粘度および水分量を測定した。また、目視により、ガラス瓶の底に沈降物があるかどうかを確認した。
┌────┬─────┬───────┬─────┬──────┐
│ │油性顔料分│ 粘度 │ 水分量 │ 沈降物 │
│ │散体の番号│ (mN/m)│(重量%)│ の有無 │
├────┼─────┼───────┼─────┼──────┤
│ │ │ │ │ │
│実施例1│ A │ 44.2 │ 0.46│ なし │
│ │ │ │ │ │
│実施例2│ B │ 36.7 │ 0.54│ なし │
│ │ │ │ │ │
│実施例3│ C │ 65.1 │ 0.62│ なし │
│ │ │ │ │ │
│実施例4│ D │ 60.1 │ 0.58│ なし │
│ │ │ │ │ │
│実施例5│ E │ 223.7 │ 0.45│ なし │
│ │ │ │ │ │
│実施例6│ F │ 48.7 │ 0.49│ なし │
│ │ │ │ │ │
│実施例7│ G │ 38.3 │ 0.51│ なし │
│ │ │ │ │ │
├────┼─────┼───────┼─────┼──────┤
│ │ │ │ │ │
│比較例1│ H │ 83.1 │ 1.21│ なし │
│ │ │ │ │ │
│比較例2│ I │ 166.3 │ 2.29│ なし │
│ │ │ │ │ │
│比較例3│ J │ 38.4 │ 0.57│ あり │
│ │ │ │ │ │
│比較例4│ K │ 4.2 │ 0.49│ あり │
│ │ │ │ │ │
└────┴─────┴───────┴─────┴──────┘
また、比較例4の油性顔料分散体Kについても、保存試験後に沈降物が確認された。これは、顔料を分散する際の顔料濃度が低いため分散効率が低下し、分散体中に粗大粒子が多数存在して、それらが沈降してきたためと考えられる。
このため、これらの油性顔料分散体J,Kを、例えばインクジェット記録方式用の油性顔料インクに適用すると、インクジェットプリンターのヘッドをつまらせるおそれがあり、上記適用が難しくなる。
Claims (2)
- 顔料、顔料分散剤および有機溶媒を含む油性顔料分散体において、有機溶媒として(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエステル化合物を含有し、顔料濃度が10〜50重量%であり、動的光散乱法によって測定される粒度分布における散乱強度の累積50%粒径が200nm以下であり、かつ散乱強度の累積90%粒径が400nm以下であり、水分量が、油性顔料分散体の全体中、2重量%以下であることを特徴とする、インクジェット記録方式用の油性顔料インクとして利用するための油性顔料分散体であって、上記の利用にあたり、この油性顔料分散体にさらに少なくとも有機溶媒を添加し加工してインクジェット記録方式用の油性顔料インクとする油性顔料分散体。
- (ポリ)アルキレングリコールジアルキルエステル化合物は、エチレングリコールジアルキルエステル、ジエチレングリコールジアルキルエステル、トリエチレングリコールジアルキルエステル、プロピレングリコールジアルキルエステル、ジプロピレングリコールジアルキルエステル、トリプロピレングリコールジアルキルエステル中から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の油性顔料分散体。
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