JP5219952B2 - リチウムイオン電池集電体用銅箔 - Google Patents

リチウムイオン電池集電体用銅箔 Download PDF

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Description

本発明はリチウムイオン電池集電体用銅箔に関し、とりわけリチウムイオン二次電池負極集電体用銅箔に関する。
リチウムイオン電池はエネルギー密度が高く、比較的高い電圧が得ることができるという特徴を有し、ノートパソコン、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯電話等の小型電子機器用に多用されている。将来、電気自動車や一般家庭の分散配置型電源といった大型機器の電源としての利用も有望視されている。
リチウムイオン電池の電極体は一般に、正極11、セパレータ12及び負極13が幾十にも巻回又は積層されたスタック構造を有している。図1は、リチウムイオン電池のスタック構造の模式図である。典型的には、正極は、アルミニウム箔でできた正極集電体とその表面に設けられたLiCoO2、LiNiO2及びLiMn24といったリチウム複合酸化物を材料とする正極活物質から構成され、負極は銅箔でできた負極集電体とその表面に設けられたカーボン等を材料とする負極活物質から構成される。正極同士及び負極同士は各タブ(14、15)でそれぞれ溶接される。また、正極及び負極はアルミニウムやニッケル製のタブ端子と接続されるが、これも溶接により行われる。溶接は超音波溶接により行われるのが通常である。
負極の集電体として使用される銅箔に要求される特性としては、負極活物質との密着性、銅箔又はタブ端子との超音波溶接性、更には防錆性が挙げられる。
活物質層との密着性を改善するための一般的な方法としては、予め粗化処理と呼ばれる銅箔表面に凹凸を形成する表面処理が挙げられる。粗化処理の方法としては、ブラスト処理、粗面ロールによる圧延、機械研磨、電解研磨、化学研磨及び電着粒のめっき等の方法が知られており、これらの中でも特に電着粒のめっきは多用されている。この技術は、硫酸銅酸性めっき浴を用いて、銅箔表面に樹枝状又は小球状に銅を多数電着せしめて微細な凹凸を形成し、投錨効果による密着性の改善を狙ったり、体積変化の大きな活物質の膨張時に活物質層の凹部に応力を集中させて亀裂を形成せしめ、集電体界面に応力が集中することによる剥離を防ぐことを狙ったりして行われている(例えば、特許第3733067号公報)。
特許第3733065号公報には、好ましい表面性状が粗さのパラメータで具体的に特定されており、表面粗さRaの値が大きな銅箔を集電体として用いることにより、集電体と活物質との密着性が向上することが記載されている(段落0209)。集電体の表面粗さRaは、0.01μm以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.01〜1μmであり、さらに好ましくは0.05〜0.5μmであるとされる(段落0021等)。集電体の表面粗さRaと局部山頂の平均間隔Sは、100Ra≧Sの関係を有することが好ましいとされる(段落0022等)。集電体表面の凹凸の凸部の形状は錐体状であることが好ましいとされる(段落0023等)。
そして、このような表面形態は、電解銅箔(段落0044)、圧延銅箔の表面に電解法により銅を析出させて表面を粗面化すること(段落0045)、及びエメリー紙で研磨処理すること(段落0205)で得られることが記載されている。
防錆性を向上させる方法としては、銅箔表面をクロメート処理やシランカップリング処理する方法が知られている。シランカップリング処理は、密着性の向上効果も得られる。例えば、特開2008−184657号公報には、銅箔の少なくとも一方の面に、ニッケル、コバルト、タングステン、モリブデンのうち少なくとも一つ以上から選択された金属又はこれら金属とメタロイド金属であるリン又は、ほう素との間で形成されたバリア層を形成し、次いで形成したバリア層上に三価クロムをクロム源とするクロメート処理を施し、得られた三価クロメート皮膜上にシランカップリング処理を施すことで、密着性及び防錆性が向上したことが記載されている。ここには、シランカップリング処理の条件として、シランカップリング剤の濃度を0.5mL/L以上、10mL/L以下とすること、液温30℃で5秒間浸漬後、直ちに処理液から取り出して乾燥させることが記載されている。
一方、超音波溶接性については、従来、材料の溶接性に合わせて溶接エネルギーを大きく与えることで大きな問題とはなっていなかった。しかながら、溶接エネルギーを大きく与えることは溶接に使われる消耗品の消耗が激しいことから、近年のコスト削減において溶接エネルギーを小さくしても溶接性のよい銅箔が求められるようになってきた。超音波溶接性と防錆性の両立を図る方法としては、超音波溶接性(接合強度)が銅箔表面に設けた防錆処理層の厚さと銅箔の表面粗さに大きく影響されることに着目して、クロム水和酸化物層の銅箔表面への被覆量を0.5〜70μg−Cr/dm2に規定したり、クロム水和酸化物層が被覆されている面のRz(JISB0601−1994で規定する10点平均粗さ)を2.0μm以下にしたりする方法が特開2009−68042号公報に記載されている。実施例にはこのような表面粗さを電解銅箔で作り込んだことが記載されている。
特許第3733067号公報 特許第3733065号公報 特開2008−184657号公報 特開2009−68042号公報
このように、リチウムイオン電池の集電体として使用される銅箔の特性向上のための技術開発が、密着性及び防錆性については種々行われてきているが、超音波溶接性については少なく、いずれも密着性、超音波溶接性、及び防錆性のすべてには着目しておらず、これら三種類の特性をバランス良く向上させる方法は未だ知られていない。そこで、本発明はこれら三種類の特性をバランス良く向上したリチウムイオン電池の集電体用銅箔を提供することを第一の課題とする。本発明はそのような銅箔を製造する方法を提供することを第二の課題とする。更に、本発明は本発明に係る銅箔を集電体として用いたリチウムイオン電池を提供することを第三の課題とする。
本発明者は上記課題を解決するために研究を重ねたところ、シランカップリング処理に課題解決の糸口を見出した。そこで、シランカップリング処理の条件を詳細に検討したところ、銅箔表面をシランカップリング処理することによって得られる有機皮膜の厚みを従来よりも薄くすることで、好ましくは、更に銅箔表面に残存する未反応のシランカップリング剤を低減することで、密着性、銅箔又はタブ端子との超音波溶接性、防錆性のバランスにより優れた銅箔を提供できることを見出した。
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、表面の少なくとも一部がシランカップリング処理されたリチウムイオン電池集電体用銅箔であって、XPSによる深さ方向分析でSiを検出し、かつC検出量がバックグラウンドレベルよりも大きい深さ範囲(以下、「有機皮膜厚み」という。)の平均値D0が1.0〜5.0nmであり、且つ表面粗さが0.01μm≦Ra≦0.10μmを満たすリチウムイオン電池集電体用銅箔である。
本発明に係る銅箔は一実施形態において、純水に10秒間浸漬する洗浄操作後の有機皮膜厚みの平均値D1が1.0nm以上である。
本発明に係る銅箔は別の一実施形態において、洗浄操作前の有機皮膜厚みの平均値D0に対する、純水に10秒間浸漬する洗浄操作後の有機皮膜厚みの平均値D1の比率(D1/D0)が0.6以上である。
本発明に係る銅箔は更に別の一実施形態において、銅箔が電解銅箔であり、S面、M面における表面粗さについて、どちらの面も0.01μm≦Ra≦0.10μmを満たす。
本発明に係る銅箔は更に別の一実施形態において、銅箔が圧延銅箔であり、上下面の圧延平行方向における表面粗さについて、どちらの面もRSm≦20μmを満たし、且つ、RSm/Ra≦400である。
本発明に係る銅箔は更に別の一実施形態において、リチウムイオン二次電池負極集電体用である。
本発明は別の一側面において、本発明に係る銅箔を集電体として用いたリチウムイオン電池である。
本発明は更に別の一側面において、銅箔表面の少なくとも一部を0.1〜1.0質量%のシランカップリング剤溶液と接触させる工程と、次いでシランカップリング剤を銅箔表面の銅と反応させる工程とを含み、前記反応は50℃以上の雰囲気中で加熱処理を行うことで実施し、これによりXPSによる深さ方向分析でSiを検出し、かつC検出量がバックグラウンドレベルよりも大きい深さ範囲(以下、「有機皮膜厚み」という。)の平均値D 0 が1.0〜5.0nmであり、且つ表面粗さが0.01μm≦Ra≦0.10μmを満たす銅箔を製造するリチウムイオン電池集電体用銅箔の製造方法である。
本発明に係るリチウムイオン電池集電体用銅箔の製造方法は一実施形態において、未反応のシランカップリング剤を銅箔表面から除去する工程を更に含む。
本発明に係る銅箔は負極活物質との密着性、銅箔又はタブ端子との超音波溶接性、更には防錆性がバランス良く向上する。そのため、リチウムイオン電池の集電体として好適に使用することができる。
リチウムイオン電池のスタック構造の模式図を示す。 有機皮膜の厚みを測定する際に得られるXPSのデプスプロファイルの例であり、上図がC、下図がSiのデプスプロファイルを表す。
1.銅箔基材
本発明において、銅箔は電解銅箔及び圧延銅箔のいずれでもよい。また、「銅箔」には銅合金箔も含まれるものとする。銅箔の材料としては、特に制限はなく、用途や要求特性に応じて適宜選択すればよい。例えば、限定的ではないが、圧延銅箔の場合、高純度の銅(無酸素銅やタフピッチ銅等)の他、Sn入り銅、Ag入り銅、Ni、Si等を添加したCu−Ni−Si系銅合金、Cr、Zr等を添加したCu−Cr−Zr系銅合金のような銅合金が挙げられる。
電解銅箔と比べた圧延銅箔の利点について説明する。リチウムイオン電池の集電体として使用する場合、銅箔を薄肉化した方がより高容量の電池を得ることができるが、薄肉化すると強度低下による破断の危険性が生じる。この点、電解銅箔よりも強度の高い圧延銅箔を使用するのが有利となる。圧延銅箔は振動が継続的に発生する環境等に対応し、耐屈曲性が高い点でも優れている。
また、電解銅箔では製造工程の都合上、陰極に接していた側の平滑で光沢があるS面と、これとは反対側の粗く無光沢であるM面が生じる。両者は表面性状は通常異なっているが、電解条件の管理によっては、平滑、かつ両面の差異がほとんどなくなるように製造することが可能である。ただし、このような制御は、添加剤や電解条件管理に多大なノウハウを必要とする。一方、圧延銅箔では、その製造プロセスにおいて、原理的に、平滑な両面を得るのに適しており、実質的に同一の表面性状とすることができるので有利である。
銅箔の厚みは特に制限はなく、要求特性に応じて適宜選択すればよい。一般的には1〜100μmであるが、リチウム二次電池負極の集電体として使用する場合、銅箔を薄肉化した方がより高容量の電池を得ることができる。そのような観点から、典型的には2〜50μm、より典型的には5〜20μm程度である。
2.シランカップリング処理
シランカップリング処理は、銅箔の上下面のうち負極活物質との密着性が要求される少なくとも一面にシランカップリング剤を浸漬、塗布及び噴霧などによって接触させ、その後、乾燥時の熱によりシランカップリング剤を銅箔表面の銅と反応させ、銅箔表面に固定することで行う事ができる。シランカップリング剤は銅箔と負極活物質の間の接着剤としての役割のほか、防錆性を高める役割も果たす。
シランカップリング剤は分子内に有機材料と反応結合する官能基、及び無機材料と反応結合する官能基を同時に有する有機ケイ素化合物である。有機材料と反応結合する官能基としては、例えば、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、アミノ基、N−フェニルアミノプロピル基、ウレイド基、クロロプロピル基、メルカプト基、イソシアネート基、スルフィド基、ヘキシル基、イミダゾール基等が挙げられ、アミノ基、ビニル基、エポキシ基、ヘキシル基が好ましい。無機材料と反応結合する官能基としては、例えば、クロル基等のハロゲン基、アルコキシ基、アセトキシ基、イソプロペノキシ基等が挙げられる。シランカップリング剤は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
シランカップリング剤の具体例としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピル、トリメトキシシラン、N−(p−ビニルベンジル)−N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリクロルシラン、アリルトリメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、及び3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
本発明で使用することのできるシランカップリング剤としては、特開平6−256358号公報に記載のアゾール系化合物とエポキシシラン系化合物との反応で得られたシランカップリング剤も例示することができ、その全内容を本明細書に援用する。
エポキシシラン系化合物としては、以下の一般式:
(式中、R1、R2は、同一でも異なっていてもよく、水素又は炭素数が1〜3のアルキル基であり、nは1〜3である。)
で示されるエポキシシランカップリング剤(例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)が特に好ましい。アゾール系化合物としては、ベンゾイミダゾール、イミダゾールが特に好ましい。アゾール系化合物とエポキシシラン系化合物との反応は、特開平6−256358号公報に説示されている条件で行うことができる。例えば、80〜200℃でアゾール系化合物1モルに対して0.1〜10モルのエポキシシラン系化合物を滴下して5分〜2時間反応させる。その際、溶媒は特に不要であるが、クロロホルム、ジオキサン、メタノール、エタノール等の有機溶媒を用いてもよい。
従来は、負極活物質との密着性や防錆性を上げるという目的でシランカップリング剤の有機皮膜を銅箔表面に形成することを考えていたため、シランカップリング剤の有機皮膜を銅箔表面にある程度厚く形成していた。一方、超音波溶接性については、従来、溶接エネルギーを大きく与えていたため大きな問題とはなっていなかったが、溶接エネルギーを大きく与えると溶接に使われる消耗品の消耗が激しいことから、近年のコスト削減において溶接エネルギーを小さくしても溶接性のよい銅箔が求められるようになってきた。有機皮膜は厚くなるほど銅箔の超音波溶接性が低下してしまい、超音波溶接性がもっとも良いのはシランカップリング剤が塗布される前の状態のときであるが、有機皮膜の厚みを極端に薄くすると密着性、防錆性、特には防錆性を低下させるため、超音波溶接性との両立は図ることは難しかった。そこで、本発明では密着性、防錆性及び超音波溶接性の共存を図るための適正な有機皮膜の厚みにする(従来よりも薄くする)ことで超音波溶接性とのバランスを図ることとした。
従って、本発明に係る銅箔の一実施形態においては、シランカップリング処理により表面に形成された有機皮膜の平均厚みD0が1.0〜5.0nmである。有機皮膜の平均厚みは密着性、防錆性及び超音波溶接性の共存を図る観点から1.5〜4.5nmが好ましく、2.0〜4.0nmがより好ましい。
さらに、銅箔表面に残存する未反応のシランカップリング剤の割合を制御することで活物質塗付工程前の密着性、防錆性、特には防錆性を同じ塗布濃度でも向上させることを見出した。これにより、有機皮膜の平均厚みが薄くても、密着性、防錆性及び超音波溶接性のバランスが安定的に保たれる。これは、未反応のシランカップリング剤は銅との結合が弱く、水への浸漬や洗浄等により、未反応のシランカップリング剤が落ちてその部分の有機皮膜が薄くなるためでありその結果、その部分の密着性や防錆性が落ちてしまう。なお、従来は有機皮膜が十分厚いため、多少の落ちは問題とはならなかったのである。
このような負極活物質との密着性にほとんど寄与せず、特性向上に寄与しない銅と未反応の有機皮膜の厚みが厚くなるのは超音波溶接性の劣化につながるだけである。同じ膜厚であれば、銅箔表面に残存する未反応のシランカップリング剤が少ない方が密着性は向上する。
銅表面上の有機皮膜の厚みが一定の場合には、銅箔表面に残存する未反応のシランカップリング剤が少ない方が、防錆性の向上にもつながる。銅表面上の未反応シランカップリング剤は乾燥時に銅表面とシランカップリング剤の結合が強固になる、あるいは、脱水縮合反応が進むことで、強固なシロキサンネットワークができることで、高い防錆性が得られるようになる。未反応のシランカップリング剤が残存すると、腐食環境下に置かれたときに腐食性成分が銅箔表面に接近しやすくなり、銅箔表面の未反応の銅に対して腐食性成分が攻撃することで、銅の腐食反応が進行する。
銅箔表面に残存する未反応のシランカップリング剤の割合は、シランカップリング処理後の銅箔に対して純水に10秒間浸漬する洗浄操作を行い、洗浄前後の有機皮膜の平均厚みを比較することで評価することが可能である。ここで使用する純水は、厳密な意味での純水である必要はなく、比抵抗2×105Ωcm程度の蒸留水で足りる。未反応のシランカップリング剤は、銅箔表面との結合力が弱いので洗浄操作によって洗い流されてしまう。一方、シランカップリング剤が銅箔表面に十分に反応結合している場合には、洗浄操作を行っても簡単に洗い流されない。本発明においては、洗浄操作前の有機皮膜の平均厚みD0に対する洗浄操作後の有機皮膜の平均厚みD1の比率(D1/D0)により、銅箔表面に残存する未反応シランカップリング剤の割合を評価することとした。
従って、本発明に係る銅箔の好ましい一実施形態においては、D1/D0が0.6以上であり、D1/D0は0.7以上が好ましく、0.8以上がより好ましい。
1/D0が小さいことは銅箔表面で密着性や防錆性を発揮しないシランカップリング剤が存在することを意味するので、上記のような範囲が好ましいことは間違いないが、D1/D0に関わらず、少なくともD1が1.0nm以上であるような銅箔であれば、所望の密着性及び防錆性は得られる。D1は好ましくは1.5nm以上であり、より好ましくは2.0nm以上である。
本発明では、有機皮膜の平均厚みは、アルゴンスパッタとX線光電子分光分析装置(XPS装置)を組み合わせて深さ方向の元素分析を行い、Siを検出し、かつC検出量がバックグラウンドレベルよりも大きい深さ範囲を有機皮膜の厚みとしてこれを複数箇所測定し、その平均値を有機皮膜の平均厚みとする。XPS装置によるデプスプロファイルの例を図2に示す。
シランカップリング剤はエタノールや水等の溶媒に溶かして使用することができる。酢酸等の添加によりpHを5前後(例:4.5〜5.5)に調整することにより溶液中で速やかに加水分解し、基材への反応性を高めることができる。一般に、シランカップリング剤の濃度を高くするとシランカップリング処理後の膜厚が厚くなり、低くすると薄くなる。0.1〜1.0質量%、好ましくは0.1〜0.8質量%、より好ましくは0.2〜0.8質量%の範囲としたシランカップリング剤溶液を使用することで、シランカップリング処理後の有機皮膜の平均厚みを上述した範囲にすることが可能である。
銅箔表面に残存する未反応のシランカップリング剤を少なくする方法の一つとして、シランカップリング剤と銅箔表面の銅との反応率を高める方法がある。シランカップリング剤の反応率を高めるためには、シランカップリング剤を銅箔表面に接触させた後に十分に高い温度及び時間で乾燥させることが重要となる。具体的には50℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上の雰囲気中で銅箔表面を乾燥させる。ただし、150℃を超えると保持時間と雰囲気によっては銅箔が変色し、外観不良となるため、150℃以下とするのが好ましい。また、あまり短時間の加熱だと反応が十分に進行しないため、加熱温度が低い場合、加熱時間は5秒以上とすべきであり、10秒以上とするのが好ましい。ただし、高い加熱温度であまり長時間の加熱を行うと酸化によって銅箔表面が変色するので、加熱温度が高い場合、300秒以下とするのが望ましい。
銅箔表面に残存する未反応のシランカップリング剤を少なくする別の方法の一つとして、未反応のシランカップリング剤を銅箔表面から除去する方法がある。先述したように、未反応のシランカップリング剤は特性向上に寄与しない。未反応のシランカップリング剤を除去しても密着性や防錆性にはほとんど影響がなく、逆に有機皮膜の厚みが薄くなって超音波溶接性が向上する。未反応のシランカップリング剤を銅箔表面から除去する方法としては、限定的ではないが、純水への浸漬、純水スプレーによる方法が挙げられる。ただし、未反応のシランカップリング剤を強力に除去してしまうと、銅箔に反応結合しているシランカップリング剤までも除去されるおそれがあるので、条件設定には留意する必要がある。
3.銅箔基材の表面性状
好ましい一実施形態においては、シランカップリング処理を施す前の表面性状が以下の条件を満たす。具体的には、銅箔の上下面の圧延平行方向における表面粗さについて、0.01μm≦Ra≦0.10μmを満たし、好ましくは、5μm≦RSm≦20μmも満たす。Raは粗さ曲線を中心線から折り返し、その粗さ曲線と中心線によって得られた面積を長さLで割った値であり、RSmは粗さ曲線が平均線と交差する交点から求めた山谷−周期の間隔の平均値である。何れもJIS B0601:2001に準拠して測定される。
表面粗さの小さい銅箔であっても、特許文献2に記載のように、表面に電解法により銅を析出させて表面を粗面化したり、エメリー紙で研磨処理したりして積極的に表面を粗くしてしまうと、Raは0.10μmを超え、RSmは20μmを超えてしまう。
すなわち、上記の表面性状は粗化処理した銅箔に比べて、凹凸が微細である。このような表面性状を有することで、超音波溶接性が向上する。理論によって本発明が限定されることを意図しないが、これは以下の理由が考えられる。圧延銅箔の場合、一般的な表面の粗化処理と比較して、オイルピットによる表面の凹凸は、より一層微細であり、これにより重なり合った銅箔同士の接触点が増える。接触点は、超音波溶接時に表面の酸化物や異物が除去され新生面が現れることで、新生面同士が接合するが、接触点が多いほど接合点が多くなり、超音波溶接性が向上する。また、密着性に関しては、表面の微細な凹凸によって材料の表面積が大きくなることで、シランカップリング剤と材料表面の接触面積が大きくなり、さらに、単位面積当たりの凹凸数が多くなることでの投錨効果の増大が生じ、密着性が増大する効果もある。
0.01μm≦Ra≦0.10μmを条件としたのは、Raが0.01μm未満だと表面が平滑で、また、0.10μmを超えると微細な凹凸が少なくなることで、いずれの場合も重なり合った銅箔同士の接触点が少なくなり、溶接性が低下するためである。Raは好ましくは0.03≦Ra≦0.08であり、より好ましくは0.04≦Ra≦0.06である。
RSm≦20μmを条件としたのは、RSmが20μmを超えると、単位面積当たりの凹凸の数が少なくなり、重なり合った銅箔同士の接触点が少なくなることで、溶接性が低下するためである。好ましくはRSm≦16μmである。下限は特に制限はないが、5μm未満のRSmを安定して工業的に製造することは技術的に難しいことからRSmは典型的には5μm≦RSmであり、より典型的には8μm≦RSmである。
別の好ましい一実施形態においては、シランカップリング処理を施す前の銅箔の表面がRSm/Ra≦400である。RSm/Raの増加は、銅箔表面の凹凸が緩やかになることを意味し、重なり合った銅箔同士が接触し難くなることで、溶接性を低下させる影響がある。したがって、RSm/Ra≦400が好ましく、より好ましくはRSm/Ra≦200である。
なお、以上の説明はシランカップリング処理を行う前の銅箔の表面性状についてであるが、本発明においてはシランカップリング処理により形成される有機皮膜の厚みが極めて薄いため、シランカップリング処理を行った後も同様の表面性状が保持される。
上記のような表面性状を有する圧延銅箔は、研磨処理や電着粒のめっきといった粗化処理を行わずに、オイルピットに起因する表面の凹凸状態を制御することにより構築することが可能である。オイルピットとは、ロールバイト内で圧延用ロールと被圧延材により封じ込められた圧延油が、被圧延材の表面に部分的に発生する微細な窪みである。粗化処理を行ってしまうと、オイルピットの微細凹凸が失われてしまうため好ましくない。粗化処理工程が省略されるので、経済性・生産性が向上するメリットもある。
圧延銅箔のオイルピットの形状、すなわち表面性状は、圧延ロールの表面粗さ、圧延速度、圧延油の粘度、1パス当たりの圧下率(とりわけ最終パスの圧下率)などを調節する事で制御可能である。例えば、Raの大きな圧延ロールを使用すれば得られる圧延銅箔のRaも大きくなり、逆に、Raの小さな圧延ロールを使用すれば得られる圧延銅箔のRaも小さくなりやすい。また、圧延速度を速く、圧延油の粘度を高く、又は1パス当たりの圧下率を小さくすることでオイルピットの発生量が増加し、RSmが小さくなりやすい。逆に、圧延速度を遅く、圧延油の粘度を低く、又は1パス当たりの圧下率を大きくすることでオイルピットの発生量が減少し、RSmが大きくなりやすい。
一方、電解銅箔については、電流密度を調整することで所定の表面粗さRaにすることが可能である。
本発明に係る銅箔を材料とする集電体とその上に形成された活物質層によって構成された負極を用いて、慣用手段によりリチウムイオン電池を作製することができる。リチウムイオン電池には、電解質中のリチウムイオンが電気伝導を担うリチウムイオン一次電池用及びリチウムイオン二次電池が含まれる。負極活物質としては、限定的ではないが、炭素、珪素、スズ、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、アルミニウム、インジウム、リチウム、酸化スズ、チタン酸リチウム、窒化リチウム、インジウムを固溶した酸化錫、インジウム−錫合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−インジウム合金等が挙げられる。
以下、本発明の実施例を示すが、これらは本発明をより良く理解するために提供するものであり、本発明が限定されることを意図するものではない。
例1(シランカップリング処理が特性に与える影響の検討)
[圧延銅箔の製造]
厚さ200mm、幅600mmのタフピッチ銅のインゴットを製造し、熱間圧延により10mmまで圧延した。
次に、焼鈍と冷間圧延を繰り返し、最後に冷間圧延で、ワークロール径60mm、ワークロール表面粗さRaを0.03μmとし、最終パスの圧延速度400m/分、加工度20%として厚さ10μmに仕上げた。圧延油の粘度は9.0cSt(25℃)であった。得られた圧延銅箔はRaが0.11μm、RSmが29μm、RSm/Raが264であった。
[電解銅箔の製造]
電解液として、硫酸銅(CuSO4・5H2O)300g/L、硫酸120g/L、塩化物イオン濃度0.5mg/L、ニカワ濃度0.5mg/Lとした硫酸酸性硫酸銅溶液を用い、電解液温度約55℃、電流密度100A/dm2で電解して10μmの電解銅箔を製造した。得られた電解銅箔はRaが0.12μm、RSmが19.7μm、RSm/Raが164であった。
[シランカップリング処理]
上記の通り製造した板厚10μmの圧延銅箔又は電解銅箔につき、表1に記載の濃度のN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランに3秒間浸漬し乾燥機にて表1に記載の雰囲気温度で3分間乾燥した。その後、以下の通り、活物質の密着性、防錆性、超音波溶接性を評価した。結果を表1に示す。
[活物質との密着性]
(1)平均径9μmの人工黒鉛とポリビニリデンフルオライドを重量比1:9で混合し、これを溶剤N−メチル−2−ピロリドンに分散させる。
(2)銅箔の表面に上記の活物質を塗布する。
(3)活物質を塗布した銅箔を乾燥機にて90℃×30分間加熱する。なお、このときにはシランカップリング剤は銅表面にOH基が結合していないため、未反応のシランカップリング剤との脱水反応により銅表面と反応することはほとんどない。
(4)乾燥後、20mm角に切り出し、1.5トン/mm2×20秒間の荷重をかける。
(5)上記サンプルをカッターにて碁盤目状に切り傷を形成し、市販の粘着テープ(セロテープ(登録商標))を貼り、重さ2kgのローラーを置いて1往復させて粘着テープを圧着する。
(6)粘着テープを剥がし、銅箔上に残存した活物質は、表面の画像をPCに取り込み、二値化によって銅表面の金属光沢部分と活物質が残存する黒色部分を区別し、活物質の残存率を算出。残存率は、各サンプル3つの平均値とした。活物質密着性の判定は、残存率50%未満を「×」、50%以上70%未満を「△」、70%以上90%未満を「○」、90%以上を「◎」とした。
[防錆性]
(1)銅箔を50mm×100mmの大きさに切り出し、3枚重ね粘着テープで固定し、ビニールの袋に入れて中の空気を追い出しながらテープで封印する。
(2)試料(1)を湿潤試験機(50℃×90%RH)に入れ、168時間保持する。
(3)試料を(2)の試験機から取り出し、銅箔が重なっていた部分の表面の色調を確認する。
(4)試験後の銅箔表面の色調が試験前と同じものを「◎」、試験前と比較して、僅かに変色したものを「○」、薄い赤褐色に変色したものを「△」、表面全体が赤黒色に変色したものを「×」とした。
[超音波溶接性]
(1)銅箔を100mm×150mmの大きさに切り出し、30枚重ねる。
(2)ブランソン社製のアクチュエータ(型番:Ultraweld L20E)にホーン(ピッチ0.8mm、高さ0.4mm)を取り付ける。アンビルは0.2mmピッチを使用した。
(3)溶接条件は、圧力40psi、振幅60μm、振動数20kHz、溶接時間は0.1秒とした。
(4)上記条件で溶接した後、銅箔を1枚ずつ剥離したときに、21枚以上の銅箔が溶接部分で破れた場合を「◎」、11〜20枚の銅箔が溶接部分で破れた場合を「○」、1〜10枚の銅箔が溶接部分で破れた場合を「△」、一枚も銅箔が破れなかった場合を「×」とした。なお、銅箔を剥離する前に、ホーンに接触していた最表層の銅箔の溶接部分を実態顕微鏡にて20倍で拡大観察し、クラックが発生していないことを確認してから剥離試験を実施した。
[有機皮膜の厚み]
有機皮膜の厚みは、アルゴンスパッタしながらXPS装置で銅箔の深さ方向について元素分析し、Siを検出し、かつC検出量がバックグラウンドレベルよりも大きな深さ範囲(SiO2換算)を有機皮膜厚みとし、任意の5カ所の平均値を有機皮膜厚みの平均値とした。
・装置:XPS装置(アルバックファイ社、型式5600MC)
・真空度:5.7×10-7Pa
・X線:単色AlKα、X線出力210W、入射角45°、取り出し角45°
・イオン線:イオン種Ar+、加速電圧3kV、掃引面積3mm×3mm、スパッタリングレート2.3nm/min(SiO2換算)
実施例1−1〜1−9は、シランカップリング剤濃度が適当な範囲にあることで、有機皮膜厚がいずれも1.0〜5.0nmの範囲にある。そのため、活物質密着性、防錆性、及び超音波溶接性のいずれも良好であった。
比較例1−10は、シランカップリング処理未実施のため、活物質密着性及び防錆性が劣る。
比較例1−11は、シランカップリング剤濃度が低かった。そのため、有機皮膜厚が1.0nm未満と薄く、活物質密着性及び防錆性が劣った。
比較例1−12は、シランカップリング剤濃度が高く、有機皮膜厚が5.0nmを超えており、超音波溶接性が劣った。
例2(未反応のシランカップリング剤が特性に与える影響の検討)
例1と同様の方法で銅箔を製造し、活物質との密着性、防錆性、超音波溶接性を評価した。
なお、シランカップリング処理、乾燥後に、蒸留水中に10秒間浸漬して銅箔表面を洗浄し、これを用いてD1を測定した。
[有機皮膜の厚み]
有機皮膜の厚みにつき、分析装置と条件は例1と同様とした。ここでの測定は、シランカップリング処理後に、蒸留水中に10秒間浸漬して銅箔表面を洗浄する前と洗浄した後に行い、洗浄前の有機皮膜厚みの平均値をD0とし、洗浄後の有機皮膜厚みの平均値をD1とした。
実施例2−1〜2−9は、シランカップリング剤濃度と乾燥温度が適当な範囲にあることで、有機皮膜厚がいずれも1.0〜5.0nmの範囲にあり、また、D1が1.0nm以上、D1/D0が0.6以上である。そのため、活物質密着性、防錆性、及び超音波溶接性のいずれも良好であった。
比較例2−10は、乾燥温度は適度であるものの、シランカップリング剤濃度が低かった。そのため、有機皮膜厚D0が1.0nm未満と薄く、活物質密着性及び防錆性が劣った。
比較例2−11は、シランカップリング剤濃度が低かった。そのため、有機皮膜厚D0が1.0nm以上であっても、D1が1.0未満、D1/D0が0.6未満となり、防錆性が劣った。
比較例2−12は、シランカップリング剤濃度が適度で有機皮膜厚D0が適当であるものの、乾燥温度が低いために未反応のシランカップリング剤が残存し、D1が1.0未満、D1/D0が0.6未満となり、防錆性が劣った。
例3(銅箔の表面性状が特性に与える影響についての検討)
種々の圧延銅箔及び電解銅箔について、負極活物質との密着性を評価した。
[圧延銅箔の製造]
厚さ200mm、幅600mmのタフピッチ銅のインゴットを製造し、熱間圧延により10mmまで圧延した。次に、焼鈍と冷間圧延を繰り返し、最後に冷間圧延で、ワークロール径60mm、ワークロール表面粗さRa0.01〜0.09μmとし、最終パスでは圧延速度100〜400m/分及び圧下率20%として厚さ10μmに仕上げた。圧延油の粘度は9.0cSt(25℃)であった。
[電解銅箔の製造]
例1の電解銅箔の製造方法に対して、電流密度を調整することで表3に示す表面粗さの電解銅箔を得た。
[表面粗さ測定]
銅箔をガラス板上に乗せて固定し、レーザーテック社のコンフォーカル顕微鏡HD100Dを用いて、圧延銅箔は圧延平行方向、電解銅箔は製品の長手方向の表面粗さを測定した。圧延銅箔については、上下面のうち一方の面についての測定結果を記載したが、両面とも同様の表面性状であった。Ra及びRSmはJIS B0601:2001に準拠してレーザーテック社製HD100Dを使用して測定した。
[シランカップリング処理]
上記の通り製造した板厚10μmの圧延銅箔及び電解銅箔を濃度0.2質量%のN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランに3秒間浸漬した後、80℃の温度の乾燥機内にて5分間乾燥した後、以下の通り、活物質の塗布及び密着性評価を行った。
[その他の特性]
例1と同様の方法で密着性、防錆性、有機皮膜の厚み及び超音波溶接性を評価した。
結果を表3に示す。
No.3−1〜3−14は、いずれもシランカップリング剤濃度と乾燥温度が適当な範囲にあることで、有機皮膜厚D0がいずれも1.0〜5.0nmの範囲にあり、また、D1/D0が0.6以上であった。そのため、密着性、防錆性、及び超音波溶接性のバランスが良好であった。
また、Raが0.01〜0.1μmの範囲にある場合、RSmが20μm以下にある場合、及びRSm/Raが400以下の場合には、同程度の有機皮膜厚みであっても、特性が向上していることが分かる。具体的には、No.3−1はNo.3−2、No.3−3、No.3−9及びNo.3−11に比べて密着性が高く、No.3−4はNo.3−5、No.3−6、No.3−10及びNo.3−12に比べて超音波溶接性が高い。また、No.3−2、No.3−3は、No.3−9、No.3−11に比べ、密着性が高く、No.3−5、No.3−6は、No.3−10、No.3−12に比べて超音波溶接性が高い。No.3−7及びNo.3−8はNo.3−13やNo.3−14に比べて密着性又は超音波溶接性が高い。例1と比べてもこの傾向が窺える。

Claims (9)

  1. 表面の少なくとも一部がシランカップリング処理されたリチウムイオン電池集電体用銅箔であって、XPSによる深さ方向分析でSiを検出し、かつC検出量がバックグラウンドレベルよりも大きい深さ範囲(以下、「有機皮膜厚み」という。)の平均値D0が1.0〜5.0nmであり、且つ表面粗さが0.01μm≦Ra≦0.10μmを満たすリチウムイオン電池集電体用銅箔。
  2. 純水に10秒間浸漬する洗浄操作後の有機皮膜厚みの平均値D1が1.0nm以上である請求項1記載の銅箔。
  3. 洗浄操作前の有機皮膜厚みの平均値D0に対する、純水に10秒間浸漬する洗浄操作後の有機皮膜厚みの平均値D1の比率(D1/D0)が0.6以上である請求項1又は2記載の銅箔。
  4. 銅箔が電解銅箔であり、S面、M面における表面粗さについて、どちらの面も前記0.01μm≦Ra≦0.10μmを満たす請求項1〜3何れか一項記載の銅箔。
  5. 銅箔が圧延銅箔であり、上下面の圧延平行方向における表面粗さについて、どちらの面もRSm≦20μmを満たし、且つ、RSm/Ra≦400である請求項1〜何れか一項記載の銅箔。
  6. リチウムイオン二次電池負極集電体用である請求項1〜何れか一項記載の銅箔。
  7. 請求項1〜何れか一項記載の銅箔を集電体として用いたリチウムイオン電池。
  8. 銅箔表面の少なくとも一部を0.1〜1.0質量%のシランカップリング剤溶液と接触させる工程と、次いでシランカップリング剤を銅箔表面の銅と反応させる工程とを含み、前記反応は50℃以上の雰囲気中で加熱処理を行うことで実施し、これによりXPSによる深さ方向分析でSiを検出し、かつC検出量がバックグラウンドレベルよりも大きい深さ範囲(以下、「有機皮膜厚み」という。)の平均値D 0 が1.0〜5.0nmであり、且つ表面粗さが0.01μm≦Ra≦0.10μmを満たす銅箔を製造するリチウムイオン電池集電体用銅箔の製造方法。
  9. 前記反応後に、未反応のシランカップリング剤を銅箔表面から除去する工程を更に含む請求項記載の製造方法。
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