JP5218705B2 - ポリアミド樹脂およびその成形方法 - Google Patents
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Description
本発明は、ポリアミド樹脂およびその成形方法に関し、詳しくは、高い耐熱性を有し、機械物性に優れたポリアミド樹脂およびその成形方法に関する。
ポリアミド樹脂は、耐衝撃性、耐摩擦・摩耗性などの機械的強度に優れ、耐熱性、耐油性などにも優れたエンジニアリングプラスチックスとして、自動車部品、電子・電気機器部品、OA機器部品、機械部品、建材・住宅設備関連部品などの分野で広く使用されており、近年更に使用分野が広がっている。
ポリアミド樹脂には、例えばポリアミド6、ポリアミド66など多くの種類が知られているが、メタキシリレンジアミンとアジピン酸から得られるメタキシリレンアジパミド(以下、「MXD6」ともいう。)は、ポリアミド6、ポリアミド66などとは異なって、主鎖に芳香環を有し、高剛性、低吸水率で、耐油性に優れ、また成形においては、成形収縮率が小さく、引けやソリが小さいことから精密成形にも適しており、極めて優れたポリアミド樹脂として位置付けられる。これらのことから、MXD6は、電子・電気機器部品、自動車等輸送機部品、一般機械部品、精密機械部品、レジャースポーツ用品、土木建築用部材等の様々な分野での成形材料、特に射出成形用材料として、近年ますます広く利用されてきている。
一方で、高度の耐熱性が要求される用途における市場ニーズも近年非常に高まってきており、例えばLED照明におけるリフレクタ(反射板)、LED実装基板等においては、その製造時や使用時に高い耐熱性が必要である。
特許文献1〜4には、かかる用途向けに各種のポリアミド樹脂組成物を使用することが提案されている。特許文献1では、テレフタル酸と1,9−ノナンジアミンおよび2−メチル−1,8−オクタンジアミンからなる半芳香族ポリアミドに酸化チタン、水酸化マグネシウムおよび充填材からなる組成物が開示されている。しかしながら、このポリアミドは融点が例えば306℃付近と高い融点を示すが、溶融流動性が悪く、また、樹脂が分解しやすく、ガスの発生が多く成形が容易でないこと、生産性が悪いなどの問題点があげられ、好ましくない。
特許文献1〜4には、かかる用途向けに各種のポリアミド樹脂組成物を使用することが提案されている。特許文献1では、テレフタル酸と1,9−ノナンジアミンおよび2−メチル−1,8−オクタンジアミンからなる半芳香族ポリアミドに酸化チタン、水酸化マグネシウムおよび充填材からなる組成物が開示されている。しかしながら、このポリアミドは融点が例えば306℃付近と高い融点を示すが、溶融流動性が悪く、また、樹脂が分解しやすく、ガスの発生が多く成形が容易でないこと、生産性が悪いなどの問題点があげられ、好ましくない。
このような高耐熱用途においては、280℃以上、特には300℃を超える融点を有するポリアミド樹脂が望まれるが、このような高い融点を有しながらも成形加工にも優れるポリアミド樹脂は、現時点において工業的に満足いくレベルには達していないというのが、現状である。
本発明の目的は、以上のような状況から、高い耐熱性を有し、樹脂が分解しにくく、成形加工性と機械物性に優れたポリアミド樹脂を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、パラキシリレンジアミンを主成分としメタキシリレンジアミンを配合したジアミン成分と、アジピン酸を主成分とし、必要によりセバシン酸等の直鎖脂肪族ジカルボン酸を配合したジカルボン酸成分からなり、特定の分子量と融点を有し、反応したジカルボン酸成分に対するジアミン成分のモル比を特定量以下に低くしたポリアミド樹脂が、上記目的に適うポリアミド樹脂であることを見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、キシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を70モル%以上含むジカルボン酸単位からなるポリアミド樹脂であって、
キシリレンジアミン単位は、パラキシリレンジアミン50〜95モル%、メタキシリレンジアミン50〜5モル%からなり、
直鎖脂肪族ジカルボン酸単位は、50〜100モル%のアジピン酸と、0〜50モル%未満の、セバシン酸またはその他の直鎖脂肪族ジカルボン酸からなり、
反応したジカルボン酸単位に対する反応したジアミン単位のモル比(反応したジアミン単位のモル数/反応したジカルボン酸単位のモル数)が、0.994未満であり、
数平均分子量が10,000〜25,000、融点が285℃以上であることを特徴とするポリアミド樹脂が提供される。
キシリレンジアミン単位は、パラキシリレンジアミン50〜95モル%、メタキシリレンジアミン50〜5モル%からなり、
直鎖脂肪族ジカルボン酸単位は、50〜100モル%のアジピン酸と、0〜50モル%未満の、セバシン酸またはその他の直鎖脂肪族ジカルボン酸からなり、
反応したジカルボン酸単位に対する反応したジアミン単位のモル比(反応したジアミン単位のモル数/反応したジカルボン酸単位のモル数)が、0.994未満であり、
数平均分子量が10,000〜25,000、融点が285℃以上であることを特徴とするポリアミド樹脂が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、末端アミノ基濃度が10〜100μ当量/gであることを特徴とするポリアミド樹脂が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、末端カルボキシル基濃度が50〜200μ当量/gであることを特徴とするポリアミド樹脂が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、末端カルボキシル基濃度に対する末端アミノ基濃度の比([NH2]/[COOH])が0.6以下であることを特徴とするポリアミド樹脂が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、融点が300℃超であることを特徴とするポリアミド樹脂が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1の発明のポリアミド樹脂を成形してなる耐熱性部品が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第6の発明において、耐熱性部品が、LED用リフレクタ、LED実装用基板または放熱用部材であることを特徴とする耐熱性部品が提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、キシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を70モル%以上含むジカルボン酸単位からなるポリアミド樹脂であって、
キシリレンジアミン単位は、パラキシリレンジアミン50〜95モル%、メタキシリレンジアミン50〜5モル%からなり、
直鎖脂肪族ジカルボン酸単位は、50〜100モル%のアジピン酸と、0〜50モル%未満の、セバシン酸またはその他の直鎖脂肪族ジカルボン酸からなり、
反応したジカルボン酸単位に対する反応したジアミン単位のモル比(反応したジアミン単位のモル数/反応したジカルボン酸単位のモル数)が、0.994未満であり、かつ、
数平均分子量が10,000〜25,000、融点が285℃以上であるポリアミド樹脂を、押出機または成形機にて溶融成形してさらにアミド化反応させることを特徴とするポリアミド樹脂の成形方法が提供される。
キシリレンジアミン単位は、パラキシリレンジアミン50〜95モル%、メタキシリレンジアミン50〜5モル%からなり、
直鎖脂肪族ジカルボン酸単位は、50〜100モル%のアジピン酸と、0〜50モル%未満の、セバシン酸またはその他の直鎖脂肪族ジカルボン酸からなり、
反応したジカルボン酸単位に対する反応したジアミン単位のモル比(反応したジアミン単位のモル数/反応したジカルボン酸単位のモル数)が、0.994未満であり、かつ、
数平均分子量が10,000〜25,000、融点が285℃以上であるポリアミド樹脂を、押出機または成形機にて溶融成形してさらにアミド化反応させることを特徴とするポリアミド樹脂の成形方法が提供される。
また、本発明の第9の発明によれば、第8の発明において、溶融成形後のポリアミド樹脂の数平均分子量が、溶融成形前の数平均分子量に対し0.5〜50%増加することを特徴とするポリアミド樹脂の成形方法が提供される。
本発明によれば、高い耐熱性を有し、樹脂が分解しにくく、成形加工性に優れ、機械物性にも優れたポリアミド樹脂を安定して提供することができる。
また、本発明のポリアミド樹脂を押出機または成形機にて溶融成形してさらにアミド化反応させ、分子量を増大させる成形方法により、耐熱性に優れ機械物性に優れたるポリアミド樹脂成形品を得ることができる。
そして、本発明のポリアミド樹脂を成形して得られる成形品は、これまでポリアミド樹脂が適用できなかった高耐熱性部品等の分野、例えば、LED用リフレクタ、LED実装用基板または放熱用部材等の各種高耐熱用途での使用が期待される。
また、本発明のポリアミド樹脂を押出機または成形機にて溶融成形してさらにアミド化反応させ、分子量を増大させる成形方法により、耐熱性に優れ機械物性に優れたるポリアミド樹脂成形品を得ることができる。
そして、本発明のポリアミド樹脂を成形して得られる成形品は、これまでポリアミド樹脂が適用できなかった高耐熱性部品等の分野、例えば、LED用リフレクタ、LED実装用基板または放熱用部材等の各種高耐熱用途での使用が期待される。
このような樹脂が分解しにくいなどの特徴が発現する原因としては、通常、ジアミンとジカルボン酸からなるポリアミド樹脂の合成においてはジアミン成分とジカルボン酸成分は1:1前後の領域で重合させ、分子量を上げる方法が採用されるが、本発明においては、敢えて、ジアミン成分のモル数/ジカルボン酸成分のモル数を0.994未満と低く設定し、末端カルボキシル基をリッチに、末端アミノ基をアンダーにすることによって、成形加工時の加熱によるポリアミド樹脂の分解を防ぐものである。また、成形機中でさらにアミド化反応が進み、分子量が増大することにより、曲げ等の機械物性に優れた、高耐熱の成形品が得られるものと考えられる。
本発明のポリアミド樹脂は、キシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を70モル%以上含むジカルボン酸単位からなるポリアミド樹脂であって、
キシリレンジアミン単位は、パラキシリレンジアミン50〜95モル%、メタキシリレンジアミン50〜5モル%からなり、
直鎖脂肪族ジカルボン酸単位は、50〜100モル%のアジピン酸と、0〜50モル%未満の、セバシン酸またはその他の直鎖脂肪族ジカルボン酸からなり、
反応したジカルボン酸単位に対する反応したジアミン単位のモル比(反応したジアミン単位のモル数/反応したジカルボン酸単位のモル数)が、0.994未満であり、
数平均分子量が10,000〜25,000、融点が285℃以上であることを特徴とする。
キシリレンジアミン単位は、パラキシリレンジアミン50〜95モル%、メタキシリレンジアミン50〜5モル%からなり、
直鎖脂肪族ジカルボン酸単位は、50〜100モル%のアジピン酸と、0〜50モル%未満の、セバシン酸またはその他の直鎖脂肪族ジカルボン酸からなり、
反応したジカルボン酸単位に対する反応したジアミン単位のモル比(反応したジアミン単位のモル数/反応したジカルボン酸単位のモル数)が、0.994未満であり、
数平均分子量が10,000〜25,000、融点が285℃以上であることを特徴とする。
以下、本発明のポリアミド樹脂およびポリアミド樹脂の成形方法について、詳細に説明する。
なお、本願明細書において、「〜」とは、特に断りがない場合、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
なお、本願明細書において、「〜」とは、特に断りがない場合、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本発明のポリアミド樹脂のジアミン単位は、キシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミン成分に由来するものであり、キシリレンジアミンは、パラキシリレンジアミン50〜95モル%、メタキシリレンジアミン50〜5モル%からなる。
キシリレンジアミンが70モル%未満では、耐熱性、耐薬品性が低下する。キシリレンジアミンは、好ましくは80モル%、より好ましくは90モル%、さらには95モル%、特には98モル%である。
キシリレンジアミンが70モル%未満では、耐熱性、耐薬品性が低下する。キシリレンジアミンは、好ましくは80モル%、より好ましくは90モル%、さらには95モル%、特には98モル%である。
また、キシリレンジアミンのうち、パラキシリレンジアミンが50モル%未満(メタキシリレンジアミンが50モル%超)では耐熱性、結晶性が低下してしまい、95モル%を超える(メタキシリレンジアミンが5モル%未満)と、成形加工性が悪化する。
好ましい割合は、パラキシリレンジアミン55〜95モル%、メタキシリレンジアミン45〜5モル%である。
好ましい割合は、パラキシリレンジアミン55〜95モル%、メタキシリレンジアミン45〜5モル%である。
また、本発明のポリアミド樹脂のジカルボン酸単位は、直鎖脂肪族ジカルボン酸を70モル%以上含むジカルボン酸成分に由来するものであり、直鎖脂肪族ジカルボン酸成分は、50〜100モル%のアジピン酸、0〜50モル%未満の、セバシン酸またはその他の直鎖脂肪族ジカルボン酸からなる。
この範囲であれば、耐熱性が良好で成形加工性に優れたポリアミド樹脂とすることができる。
この範囲であれば、耐熱性が良好で成形加工性に優れたポリアミド樹脂とすることができる。
アジピン酸、セバシン酸以外の直鎖脂肪族ジカルボン酸として用いるのに好ましいジカルボン酸は、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸であり、例えばコハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示でき、1種または2種以上を混合して使用できる。
直鎖脂肪族ジカルボン酸の好ましい割合は、アジピン酸55〜100モル%、セバシン酸45〜0モル%、これ以外の他の直鎖脂肪族ジカルボン酸50モル%未満〜0モル%である。
ポリアミド樹脂の原料ジアミンとして、ジアミンの30モル%未満の範囲で使用できるパラキシリレンジアミンおよびメタキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン(構造異性体を含む。)、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン(構造異性体を含む。)等の脂環式ジアミン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、パラキシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン(構造異性体を含む。)等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
原料ジアミンとして、パラキシリレンジアミンおよびメタキシリレンジアミン以外のジアミンを使用する場合は、ジアミン構成単位の30モル%未満であり、好ましくは1〜25モル%、特に好ましくは5〜20モル%の割合で用いる。
ジカルボン酸の30モル%未満の範囲で使用できる直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸といった異性体等のナフタレンジカルボン酸等が例示され、1種または2種以上を混合して使用できる。
また、安息香酸、プロピオン酸、酪酸等のモノカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等のカルボン酸無水物等も併用することもできる。
また、安息香酸、プロピオン酸、酪酸等のモノカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等のカルボン酸無水物等も併用することもできる。
ジカルボン酸として、直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸を用いる場合は、成形加工性の点から、イソフタル酸を用いることが好ましい。イソフタル酸の割合は、ジカルボン酸構成単位の30モル%未満であり、好ましくは1〜25モル%、特に好ましくは5〜20モル%の範囲である。
本発明のポリアミド樹脂は、末端アミノ基濃度が好ましくは10〜100μ当量/g、より好ましくは15〜70μ当量/g、さらに好ましくは20〜50μ当量/g、末端カルボキシル基濃度が好ましくは50〜200μ当量/g、より好ましくは60〜170μ当量/g、さらに好ましくは70〜150μ当量/gである。
末端アミノ基濃度および末端カルボキシル基濃度を上記範囲とすることにより、ポリアミド樹脂の分子量が適当な範囲になり、機械物性がより良好となり、成形時に樹脂が分解しにくくガスの発生が抑えられ、成形性が良好となる傾向にある。
末端アミノ基濃度および末端カルボキシル基濃度を上記範囲とすることにより、ポリアミド樹脂の分子量が適当な範囲になり、機械物性がより良好となり、成形時に樹脂が分解しにくくガスの発生が抑えられ、成形性が良好となる傾向にある。
また、末端カルボキシル基濃度に対する末端アミノ基濃度の比([NH2]/[COOH])は、0.7以下であるものが好ましく、0.6以下であるものがより好ましく、特に好ましくは0.5以下である。この比が0.6よりも大きいものはポリアミド樹脂の耐熱性が劣り、成形加工時に変色したりガスを発生したりし易い傾向がある。
末端アミノ基濃度は、ポリアミド樹脂0.5gを30mlのフェノール/メタノール(4:1)混合溶液に20〜30℃で攪拌溶解し、0.01Nの塩酸で滴定して測定することができる。また、末端カルボキシル基濃度は、ポリアミド樹脂0.1gを30mlのベンジルアルコールに200℃で溶解し、160℃〜165℃の範囲でフェノールレッド溶液を0.1ml加える。その溶液を0.132gのKOHをベンジルアルコール200mlに溶解させた滴定液(KOH濃度として0.01mol/l)で滴定を行い、色の変化が黄〜赤となり色の変化がなくなった時点を終点とすることで算出することができる。
また、本発明のポリアミド樹脂の融点は、285℃以上であり、好ましくは290℃以上、より好ましくは295℃以上、さらに好ましくは300℃以上、特に好ましくは305℃以上である。その上限としては、好ましくは340℃程度、より好ましくは335℃以下、さらに好ましくは330℃以下、特には320℃以下である。融点を上記範囲とすることで、耐熱性がよくなる。
また、ポリアミド樹脂のガラス転移点は、60℃〜120℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは、65℃〜110℃、特には70℃〜100℃である。
また、ポリアミド樹脂のガラス転移点は、60℃〜120℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは、65℃〜110℃、特には70℃〜100℃である。
なお、本発明において、ポリアミド樹脂の融点およびガラス転移点は、示差走査熱量測定(DSC)法によって測定することができ、試料を一度加熱溶融させ熱履歴による結晶性への影響をなくした後、再度昇温して測定される融点、ガラス転移点をいう。具体的には、例えば、30℃から予想される融点以上の温度まで10℃/分の速度で昇温し、ポリアミド樹脂を溶融させた後急冷する。次いで、10℃/分の速度で融点以上の温度まで昇温し、融点、ガラス転移点を求めることができる。
また、本発明のポリアミド樹脂の数平均分子量は、10,000〜25,000であり、好ましくは11,000〜24,000、さらに好ましくは、12,000〜23,000である。このような範囲であると成形品とした場合の機械的強度が良好となり、また成形加工性が良好となる。
なお、ここでいう数平均分子量とはポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度[NH2](μ当量/g)と末端カルボキシル基濃度[COOH](μ当量/g)から、次式で算出したものである。
数平均分子量=2,000,000/([COOH]+[NH2])
数平均分子量=2,000,000/([COOH]+[NH2])
本発明のポリアミド樹脂は、反応したジカルボン酸単位に対する反応したジアミン単位のモル比(反応したジアミン単位のモル数/反応したジカルボン酸単位のモル数、以下「反応モル比」ともいう。)が、0.994未満であり、好ましくは0.993未満、さらに好ましくは0.992未満、特には0.991未満であり、その下限としては、好ましくは0.970以上、より好ましくは0.975以上、さらに好ましくは0.980以上、特には0.985以上である。
本発明のポリアミド樹脂は、反応モル比を0.994未満とすることにより、成形加工時の樹脂の分解を抑え安定した流動性を有するポリアミド樹脂となる。また、押出機または成形機にて溶融成形してさらにアミド化反応させるに際し、アミド化反応の進行が過剰に起こることなく最適な範囲に反応を進行させやすくなる。反応モル比が0.994以上では、成形加工時に樹脂が分解してガスが発生しやすくなることがある。
本発明のポリアミド樹脂は、反応モル比を0.994未満とすることにより、成形加工時の樹脂の分解を抑え安定した流動性を有するポリアミド樹脂となる。また、押出機または成形機にて溶融成形してさらにアミド化反応させるに際し、アミド化反応の進行が過剰に起こることなく最適な範囲に反応を進行させやすくなる。反応モル比が0.994以上では、成形加工時に樹脂が分解してガスが発生しやすくなることがある。
ここで、反応モル比(r)は次式で求められる。
r=(1−cN−b(C−N))/(1−cC+a(C−N))
式中、
a:M1/2
b:M2/2
c:18.015 (水の分子量)
M1:ジアミンの分子量(g/mol)
M2:ジカルボン酸の分子量(g/mol)
N:末端アミノ基濃度(当量/g)
C:末端カルボキシル基濃度(当量/g)
r=(1−cN−b(C−N))/(1−cC+a(C−N))
式中、
a:M1/2
b:M2/2
c:18.015 (水の分子量)
M1:ジアミンの分子量(g/mol)
M2:ジカルボン酸の分子量(g/mol)
N:末端アミノ基濃度(当量/g)
C:末端カルボキシル基濃度(当量/g)
なお、ジアミン、ジカルボン酸として分子量の異なるモノマーからポリアミド樹脂を合成する際は、M1およびM2は原料として配合するモノマーの配合比(モル比)に応じて計算されることはいうまでもない。なお、合成釜内が完全な閉鎖系であれば、仕込んだモノマーのモル比と反応モル比とは一致するが、実際の合成装置は完全な閉鎖系とはなりえないことから、仕込みのモル比と反応モル比が一致するとは限らない。仕込んだモノマーが完全に反応するとも限らないことから、仕込みのモル比と反応モル比が一致するとは限らない。したがって、反応モル比とは出来上がったポリアミド樹脂の末端基濃度から求められる実際に反応したモノマーのモル比を意味する。
ポリアミド樹脂の反応モル比の調整は、原料ジカルボン酸およびジアミンの仕込みモル比、反応時間、反応温度、キシリレンジアミンの滴下速度、釜内の減圧度、減圧開始タイミング等の反応条件を適当な値にすることにより、可能である。
ポリアミド樹脂の製造方法がいわゆる塩法である場合は、反応モル比を0.994未満にするには、具体的には、例えば、原料ジアミン/原料ジカルボン酸比を0.994未満に設定し、反応を十分進めればよい。また溶融ジカルボン酸に連続的にジアミンを滴下する方法の場合は、仕込み比を0.994未満とすることの他に、ジアミンを滴下する最中に還流させるジアミン量をコントロールし、滴下したジアミンを反応系外に除去することでも可能である。具体的には還流塔の温度を最適な範囲にコントロールすることや充填塔の充填物、所謂、ラシヒリングやレッシングリング、サドル等を適切な形状、充填量に制御することで、ジアミンを系外に除去ればよい。また、ジアミン滴下後の反応時間を短くすることでも未反応のジアミンを系外に除去することができる。さらにはジアミンの滴下速度を制御することによっても未反応のジアミンを必要に応じて反応系外に除去することができる。これらの方法により仕込み比が0.994より高くても反応モル比を所定の範囲にコントロールすることが可能である。
ポリアミド樹脂の製造方法がいわゆる塩法である場合は、反応モル比を0.994未満にするには、具体的には、例えば、原料ジアミン/原料ジカルボン酸比を0.994未満に設定し、反応を十分進めればよい。また溶融ジカルボン酸に連続的にジアミンを滴下する方法の場合は、仕込み比を0.994未満とすることの他に、ジアミンを滴下する最中に還流させるジアミン量をコントロールし、滴下したジアミンを反応系外に除去することでも可能である。具体的には還流塔の温度を最適な範囲にコントロールすることや充填塔の充填物、所謂、ラシヒリングやレッシングリング、サドル等を適切な形状、充填量に制御することで、ジアミンを系外に除去ればよい。また、ジアミン滴下後の反応時間を短くすることでも未反応のジアミンを系外に除去することができる。さらにはジアミンの滴下速度を制御することによっても未反応のジアミンを必要に応じて反応系外に除去することができる。これらの方法により仕込み比が0.994より高くても反応モル比を所定の範囲にコントロールすることが可能である。
本発明のポリアミド樹脂は、キシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミン成分と、アジピン酸、セバシン酸またはその他の直鎖脂肪族ジカルボン酸を70モル%以上含むジカルボン酸成分とを重縮合して得られたものであるが、その製造方法は特に限定されるものではなく、常圧溶融重合法、加圧溶融重合法等の従来公知の方法、重合条件により製造される。
例えば、パラキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミンとアジピン酸(さらにセバシン酸等)からなるポリアミド塩を水の存在下に、加圧下で昇温し、加えた水および縮合水を取り除きながら溶融状態で重合させる方法により製造される。また、パラキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミンを溶融状態のアジピン酸(さらにセバシン酸等)に直接加えて、常圧下で重縮合する方法によっても製造される。この場合、反応系を固化させることの無いように、パラキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミンを連続的に加えて、その間の反応温度が生成するオリゴアミドおよびポリアミドの融点以上となるように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。
例えば、パラキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミンとアジピン酸(さらにセバシン酸等)からなるポリアミド塩を水の存在下に、加圧下で昇温し、加えた水および縮合水を取り除きながら溶融状態で重合させる方法により製造される。また、パラキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミンを溶融状態のアジピン酸(さらにセバシン酸等)に直接加えて、常圧下で重縮合する方法によっても製造される。この場合、反応系を固化させることの無いように、パラキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミンを連続的に加えて、その間の反応温度が生成するオリゴアミドおよびポリアミドの融点以上となるように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。
重縮合によりポリアミド樹脂を得る際には、重縮合反応系に、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム、ω−エナントラクタム等のラクタム類、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、9−アミノノナン酸、パラアミノメチル安息香酸等のアミノ酸等を、性能を損なわない範囲で加えても良い。
本発明においては、上記したポリアミド樹脂を、押出機または成形機にて溶融成形してさらにアミド化反応を進行させることにより、分子量を増大させ、曲げ強度等の機械物性に優れた、高耐熱の成形品とすることができる。
溶融成形の方法は、特に限定されるものではない。例えば、本発明のポリアミド樹脂から樹脂ペレットを製造する場合は、必要により他の成分と混合したドライブレンド物を、さらに溶融混練することによって製造することができる。なかでも、単軸もしくは二軸押出機等の通常用いられる種々の押出機を用いて溶融混練する方法が好ましく、生産性、汎用性等の点から二軸押出機を用いる方法が特に好ましい。その際、溶融混練温度は290〜340℃、滞留時間は10分以下に調整することが好ましく、スクリューには少なくとも一箇所以上好ましくは2箇所以上の逆目スクリューエレメントおよび/またはニーディングディスクを有し、該部分においてポリアミド樹脂を滞留させながら溶融混練することが好ましい。
溶融成形の方法は、特に限定されるものではない。例えば、本発明のポリアミド樹脂から樹脂ペレットを製造する場合は、必要により他の成分と混合したドライブレンド物を、さらに溶融混練することによって製造することができる。なかでも、単軸もしくは二軸押出機等の通常用いられる種々の押出機を用いて溶融混練する方法が好ましく、生産性、汎用性等の点から二軸押出機を用いる方法が特に好ましい。その際、溶融混練温度は290〜340℃、滞留時間は10分以下に調整することが好ましく、スクリューには少なくとも一箇所以上好ましくは2箇所以上の逆目スクリューエレメントおよび/またはニーディングディスクを有し、該部分においてポリアミド樹脂を滞留させながら溶融混練することが好ましい。
また、ポリアミド樹脂を、一般に用いられている成形法、例えば、射出成形、射出圧縮成形、中空成形、押出成形、シート成形等の各種成形法によって各種形状の成形品を製造する場合にも、溶融混練することでアミド化反応を進行させることができる。これらの成形法により、分子量を増大させ、曲げ強度等の機械物性に優れた、高耐熱の成形品を得ることができる。その際の成形温度は290〜340℃、滞留時間は10分以下であることが好ましい。
押出機による溶融混練時の温度、成形時の成形温度を上記範囲とすることにより、ポリアミド樹脂のアミド化反応を促進し、ポリアミド樹脂のアミド化反応率が上がり、分子量が増加しやすい傾向にある。それによってポリアミド樹脂を成形してなる成形品の機械物性が向上する。また、スクリューや押出し温度を上述の範囲とすることによって、押出混練不良や樹脂の分解が生じ難く、ポリアミド樹脂の劣化を抑え着色を低減しやすい傾向となる。
アミド化反応率は、溶融成形前のポリアミド樹脂の状態、すなわち、重合後のポリアミド樹脂としては、0.985〜0.998が好ましく、より好ましくは、0.990〜0.997である。また、アミド化反応率は、溶融成形後には0.986〜0.998が好ましい。重合において、0.998以上のアミド化反応率を達成しようとすると、重合中にポリアミド樹脂に過剰な熱履歴が加わり、さらにその後、成形する際にポリアミド樹脂に加えられる熱によって、ポリアミド樹脂が劣化したり、あるいは重合中にポリアミド樹脂が変色したりすることがあり好ましくない。このような範囲でアミド化反応率を制御することによって成形時にガスの発生が少なく、成形加工性が良好なポリアミド樹脂となる。
なお、アミド化反応率(P)とは反応したモノマーの割合のことであり、ジアミンとジカルボン酸からなるポリアミド樹脂の場合には、反応モル比、数平均分子量、モノマーおよび水の分子量から計算することができ、具体的には以下の式で計算することができる。
アミド化反応率(P)=(Mn+r(Mn−M1)−M2)/(2r(Mn−c))
式中、
Mn:数平均分子量
r:反応モル比
c:18.015 (水の分子量)
M1:ジアミンの分子量(g/mol)
M2:ジカルボン酸の分子量(g/mol)
アミド化反応率(P)=(Mn+r(Mn−M1)−M2)/(2r(Mn−c))
式中、
Mn:数平均分子量
r:反応モル比
c:18.015 (水の分子量)
M1:ジアミンの分子量(g/mol)
M2:ジカルボン酸の分子量(g/mol)
また、溶融成形後のポリアミド樹脂の数平均分子量の増加は、溶融成形前の数平均分子量に対し0.5〜50%増加することが好ましい。分子量の増加率は、成形前の数平均分子量に対する成形後の数平均分子量の増加率(%)として規定され、より好ましくは、1〜40%、さらには3〜30%、特には5〜20%である。
本発明のポリアミド樹脂を用いて得られる成形品としては、フィルム、シート、積層フィルム、積層シート、チューブ、ホース、パイプ、異形押出品、中空容器、ボトル、繊維、各種形状の部品等、種々の成形品を挙げることが出来る。
本発明のポリアミド樹脂を用いて得られる成形品は、耐熱性が求められる各種用途の部品に利用でき、電気・電子機器用部品、自動車等の輸送機器部品、一般機械部品、精密機械部品等が挙げられ、特には、LED用リフレクタ、LED実装用基板または放熱用部材等に好適である。
なお、本発明のポリアミド樹脂には、溶融成形時の加工安定性を高めるため、或いはポリアミド樹脂の着色を防止するためにリン化合物が含まれていても良い。リン化合物としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含むリン化合物が好適に使用され、例えば、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム等のリン酸塩、次亜リン酸塩、亜リン酸塩が挙げられる。なかでも、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の次亜リン酸塩を含有させると、ポリアミド樹脂の着色防止効果に特に優れるため好ましい。リン化合物を使用する場合は、最終的に得られるポリアミド樹脂中のリン原子濃度として1ppm以上200ppm以下、好ましくは5ppm以上160ppm以下、さらに好ましくは10ppm以上100ppm以下となるように、ポリアミド樹脂中に含有させることが望ましい。
また、本発明のポリアミド樹脂には、上記のリン化合物の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、滑剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤等の添加剤等を加えることもできるが、以上に示したものに限定されることなく、種々の材料を混合して加えても良い。
本発明のポリアミド樹脂には、カルボジイミド化合物を配合することも好ましい。カルボジイミド化合物としては、種々の方法で製造した芳香族、脂肪族または脂環式のポリカルボジイミド化合物が好ましく挙げられる。これらの中で、押出時等の溶融混練性の面から、脂肪族または脂環式ポリカルボジイミド化合物が好ましく、脂環式ポリカルボジイミド化合物がより好ましく用いられる。
これらのカルボジイミド化合物は、有機ポリイソシアネートを脱炭酸縮合反応することで製造することができる。例えば、カルボジイミド化触媒の存在下、各種有機ポリイソシアネートを約70℃以上の温度で不活性溶媒中、もしくは溶媒を使用することなく、脱炭酸縮合反応させることによって合成する方法等を挙げることができる。イソシアネート基含有率は好ましくは0.1〜5%、より好ましくは1〜3%である。上記のような範囲とすることにより、ポリアミド樹脂との反応が容易となり、耐加水分解性が良好となる傾向にある。
カルボジイミド化合物の合成原料である有機ポリイソシアネートとしては、例えば芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート等の各種有機ジイソシアネートやこれらの混合物を使用することができる。
有機ジイソシアネートとしては、具体的には、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソプロピルフェニルイソシアネート、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、メチレンビス(4,1−シクロへキシレン)=ジイソシアネート等を例示することができ、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、メチレンビス(4,1−シクロヘキシレン)=ジイソシアネートが好ましい。
有機ジイソシアネートとしては、具体的には、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソプロピルフェニルイソシアネート、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、メチレンビス(4,1−シクロへキシレン)=ジイソシアネート等を例示することができ、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、メチレンビス(4,1−シクロヘキシレン)=ジイソシアネートが好ましい。
カルボジイミド化合物の末端を封止してその重合度を制御するためにモノイソシアネート等の末端封止剤を使用することも好ましい。モノイソシアネートとしては、例えば、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ジメチルフェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
なお、末端封止剤としては、上記のモノイソシアネートに限定されることはなく、イソシアネートと反応し得る活性水素化合物であればよい。このような活性水素化合物としては、脂肪族、芳香族、脂環式の化合物の中で、メタノール、エタノール、フェノール、シクロヘキサノール、N−メチルエタノールアミン、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル等の−OH基を持つ化合物、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の2級アミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン等の1級アミン、コハク酸、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸等のカルボン酸、エチルメルカプタン、アリルメルカプタン、チオフェノール等のチオール類やエポキシ基を有する化合物等を例示することができ、2種以上を併用してもよい。
カルボジイミド化触媒としては、例えば、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシドおよびこれらの3−ホスホレン異性体等のホスホレンオキシド等、チタン酸テトラブチル等の金属触媒等を使用することができ、これらのなかでは、反応性の面から3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシドが好適である。カルボジイミド化触媒は、2種以上併用してもよい。
カルボジイミド化合物の好ましい含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対し0.1〜2質量部であり、より好ましくは、0.2〜1.5質量部、さらに好ましくは、0.3〜1.5質量部である。0.1質量部未満では耐加水分解性が十分ではなく、押出等の溶融混練時の吐出ムラが発生しやすく、溶融混練が不十分となりやすい。一方、2質量部を超えると、溶融混練時の粘度が著しく増加し、溶融混練性、成形加工性が悪くなりやすい。
また、本発明のポリアミド樹脂には、安定剤を配合することも好ましい。安定剤としては、例えば、リン系、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、有機硫黄系、シュウ酸アニリド系、芳香族第2級アミン系などの有機系安定剤、銅化合物やハロゲン化物などの無機系安定剤が好ましい。リン系安定剤としては、ホスファイト化合物およびホスホナイト化合物が好ましい。
ホスファイト化合物としては、例えば、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジノニルフェニルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−イソプロピルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−sec−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−t−オクチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられ、特に、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましい。
ホスホナイト化合物としては、例えば、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,5−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3,4−トリメチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3−ジメチル−5−エチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−t−ブチル−5−エチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3,4−トリブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられ、特に、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトが好ましい。
ヒンダードフェノール系安定剤としては、例えば、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)等が挙げられる。
これらの中では、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)が好ましい。
これらの中では、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)が好ましい。
ヒンダードアミン系安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン骨格を有する周知のヒンダ−ドアミン化合物が挙げられる。ヒンダードアミン系化合物の具体例としては、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェニルアセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−エチルカルバモイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルカルバモイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェニルカルバモイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)カーボネイト、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)エタン、α,α’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルトリレン)−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’,−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジンの重縮合物、1,3−ベンゼンジカルボキサミド−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)等が挙げられる。
ヒンダードアミン系化合物の商品としては、ADEKA社(ADEKA CORPORATION)製の商品名「アデカスタブ(ADK STAB)LA−52、LA−57、LA−62、LA−67、LA−63P、LA−68LD、LA−77、LA−82、LA−87」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社(Ciba Specialty Chemicals Inc.)製の商品名「チヌビン(TINUVIN)622、944、119、770、144」、住友化学社(Sumitomo Chemical Company)製の商品名「スミソーブ(SUMISORB)577」、サイアミド社(American Cyanamid Company)製の商品名「サイアソープ(CYASORB)UV−3346、3529、3853」、クラリアント・ジャパン社(Clariant Japan)製の商品名「ナイロスタブ(Nylostab)S−EED」等が挙げられる。
有機硫黄系安定剤としては、例えば、ジドデシルチオジプロピオネート、ジテトラデシルチオジプロピオネート、ジオクタデシルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、チオビス(N−フェニル−β−ナフチルアミン)等の有機チオ酸系化合物、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾールおよび2−メルカプトベンゾイミダゾールの金属塩等のメルカプトベンゾイミダゾール系化合物、ジエチルジチオカルバミン酸の金属塩、およびジブチルジチオカルバミン酸の金属塩等のジチオカルバミン酸系化合物、並びに1,3−ビス(ジメチルアミノプロピル)−2−チオ尿素、およびトリブチルチオ尿素等のチオウレア系化合物、テトラメチルチウラムモノサルファイド、テトラメチルチウラムジサルファイド、ニッケルジブチルジチオカルバメート、ニッケルイソプロピルキサンテート、トリラウリルトリチオホスファイト等が挙げられる。
これらの中でも、メルカプトベンゾイミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸系化合物、チオウレア系化合物、および有機チオ酸系化合物が好ましく、メルカプトベンゾイミダゾール系化合物、および有機チオ酸系化合物がさらに好ましい。特に、チオエーテル構造を有するチオエーテル系化合物は、酸化された物質から酸素を受け取って還元するため、好適に使用することができる。具体的には、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾール、ジテトラデシルチオジプロピオネート、ジオクタデシルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)がより好ましく、ジテトラデシルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾールがさらに好ましく、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)が特に好ましい。
有機硫黄系化合物の分子量は、通常200以上、好ましくは500以上であり、その上限は通常3,000である。
有機硫黄系化合物の分子量は、通常200以上、好ましくは500以上であり、その上限は通常3,000である。
シュウ酸アニリド系安定剤としては、好ましくは、4,4’−ジオクチルオキシオキサニリド、2,2’−ジエトキシオキサニリド、2,2’−ジオクチルオキシ−5,5’−ジ−第三ブトキサニリド、2,2’−ジドデシルオキシ−5,5’−ジ−第三ブトキサニリド、2−エトキシ−2’−エチルオキサニリド、N,N’−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)オキサニリド、2−エトキシ−5−第三ブチル−2’−エトキサニリドおよびその2−エトキシ−2’−エチル−5,4’−ジ−第三ブトキサニリドとの混合物、o−およびp−メトキシ−二置換オキサニリドの混合物、o−およびp−エトキシ−二置換オキサニリドの混合物などが挙げられる。
芳香族第2級アミン系安定剤としては、ジフェニルアミン骨格を有する化合物、フェニルナフチルアミン骨格を有する化合物およびジナフチルアミン骨格を有する化合物が好ましく、ジフェニルアミン骨格を有する化合物、およびフェニルナフチルアミン骨格を有する化合物がさらに好ましい。具体的には、p,p’−ジアルキルジフェニルアミン(アルキル基の炭素数は8〜14)、オクチル化ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミンおよびN−フェニル−N’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン等のジフェニルアミン骨格を有する化合物、N−フェニル−1−ナフチルアミンおよびN,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等のフェニルナフチルアミン骨格を有する化合物、および2,2’−ジナフチルアミン、1,2’−ジナフチルアミン、および1,1’−ジナフチルアミン等のジナフチルアミン骨格を有する化合物が挙げられる。これらの中でも4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンおよびN,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミンがより好ましく、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンおよび4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンが特に好ましい。
無機系安定剤としては、銅化合物およびハロゲン化物が好ましい。
銅化合物は、種々の無機酸または有機酸の銅塩であって、後述のハロゲン化物を除くものである。銅としては、第1銅、第2銅の何れでもよく、銅塩の具体例としては、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、リン酸銅、ステアリン酸銅の他、ハイドロタルサイト、スチヒタイト、パイロライト等の天然鉱物が挙げられる。
銅化合物は、種々の無機酸または有機酸の銅塩であって、後述のハロゲン化物を除くものである。銅としては、第1銅、第2銅の何れでもよく、銅塩の具体例としては、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、リン酸銅、ステアリン酸銅の他、ハイドロタルサイト、スチヒタイト、パイロライト等の天然鉱物が挙げられる。
また、無機系安定剤として使用されるハロゲン化物としては、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物;ハロゲン化アンモニウムおよび有機化合物の第4級アンモニウムのハロゲン化物;ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリル等の有機ハロゲン化物が挙げられ、その具体例としては、ヨウ化アンモニウム、ステアリルトリエチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリエチルアンモニウムアイオダイド等が挙げられる。これらの中では、塩化カリウム、塩化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム等のハロゲン化アルカリ金属塩が好適である。
銅化合物とハロゲン化物との併用、特に、銅化合物とハロゲン化アルカリ金属塩との併用は、耐熱変色性、耐候性(耐光性)の面で優れた効果を発揮するので好ましい。例えば、銅化合物を単独で使用する場合は、成形品が銅により赤褐色に着色することがあり、この着色は用途によっては好ましくない。この場合、銅化合物とハロゲン化物と併用することにより赤褐色への変色を防止することが出来る。
本発明においては、上記の安定剤のうち、溶融成形時の加工安定性、耐熱老化性、成形品外観、着色防止の点から、特に、有機硫黄系、芳香族第2級アミン系、無機系の安定剤が特に好ましい。
これら安定剤の含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、通常0.01〜1質量部、好ましくは0.01〜0.8質量部である。
これら安定剤の含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、通常0.01〜1質量部、好ましくは0.01〜0.8質量部である。
また、本発明のポリアミド樹脂には、本発明の目的を損なわない限りにおいて、無機充填材を配合することも好ましく、ガラス系充填材(ガラス繊維、粉砕ガラス繊維(ミルドファイバー)、ガラスフレーク、ガラスビーズ等)、ケイ酸カルシウム系充填材(ワラストナイト等)、マイカ、タルク、カオリン、チタン酸カリウムウィスカー、窒化ホウ素、炭素繊維等が挙げられ、これらの2種以上を併用してもよい。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例にのみ限定されるものではない。
(実施例1)
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロートおよび窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、精秤したアジピン酸8.767kg(60mol)、次亜リン酸カルシウム(Ca(PH2O2)2)17.01g(ポリアミド樹脂中のリン原子濃度として350ppm)、酢酸ナトリウム8.75gを入れ、十分に窒素置換した後、窒素で0.3MPaに加圧、撹拌しながら170℃まで加熱しアジピン酸を均一に溶解した。
これにメタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの1:9の混合ジアミン8,172kg(60mol)を撹拌下に滴下し、圧力を0.5MPaに制御した。この間、生成する縮合水と共に所定量の未反応混合ジアミンを分縮器および冷却器を通して系外へ除きながら系内を330℃まで連続的に昇温した。分縮器の温度は145〜147℃の範囲に制御した。混合キシリレンジアミンの滴下終了後、内温を330℃として溶融重合反応を継続した。ジアミン滴下終了後、0.4MPa/時間の速度で降圧し、60分間で常圧まで降圧した。その後0.002MPa/分の速度で降圧し、20分間で0.08MPaまで降圧した。その後攪拌装置のトルクが所定の値となるまで、0.08MPaで反応を継続した。0.08MPaでの反応時間は10分であった。
その後、系内を窒素で加圧し、ストランドダイからポリマーを取り出して、これをペレット化し、約20kgのポリアミド樹脂を得た。得られたペレットを150℃にて7時間真空乾燥した。
このポリアミド樹脂の融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)、数平均分子量(Mn)、反応モル比(r)、末端アミノ基濃度([NH2])、末端カルボキシル基濃度([COOH])およびその比([NH2]/[COOH])、アミド化反応率は、表1に記載のとおりであった。
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロートおよび窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、精秤したアジピン酸8.767kg(60mol)、次亜リン酸カルシウム(Ca(PH2O2)2)17.01g(ポリアミド樹脂中のリン原子濃度として350ppm)、酢酸ナトリウム8.75gを入れ、十分に窒素置換した後、窒素で0.3MPaに加圧、撹拌しながら170℃まで加熱しアジピン酸を均一に溶解した。
これにメタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの1:9の混合ジアミン8,172kg(60mol)を撹拌下に滴下し、圧力を0.5MPaに制御した。この間、生成する縮合水と共に所定量の未反応混合ジアミンを分縮器および冷却器を通して系外へ除きながら系内を330℃まで連続的に昇温した。分縮器の温度は145〜147℃の範囲に制御した。混合キシリレンジアミンの滴下終了後、内温を330℃として溶融重合反応を継続した。ジアミン滴下終了後、0.4MPa/時間の速度で降圧し、60分間で常圧まで降圧した。その後0.002MPa/分の速度で降圧し、20分間で0.08MPaまで降圧した。その後攪拌装置のトルクが所定の値となるまで、0.08MPaで反応を継続した。0.08MPaでの反応時間は10分であった。
その後、系内を窒素で加圧し、ストランドダイからポリマーを取り出して、これをペレット化し、約20kgのポリアミド樹脂を得た。得られたペレットを150℃にて7時間真空乾燥した。
このポリアミド樹脂の融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)、数平均分子量(Mn)、反応モル比(r)、末端アミノ基濃度([NH2])、末端カルボキシル基濃度([COOH])およびその比([NH2]/[COOH])、アミド化反応率は、表1に記載のとおりであった。
なお、これらの評価方法は下記のとおりである。
(1)融点(Tm)およびガラス転移温度(Tg):
示差走査熱量測定(DSC)法により、島津製作所社(SHIMADZU CORPORATION)製DSC−60により、30℃から予想される融点以上の温度まで10℃/分の速度で昇温し、ポリアミド樹脂を溶融させた後急冷し、次いで、10℃/分の速度で融点以上の温度まで昇温し、融点、ガラス転移点を求めた。
(1)融点(Tm)およびガラス転移温度(Tg):
示差走査熱量測定(DSC)法により、島津製作所社(SHIMADZU CORPORATION)製DSC−60により、30℃から予想される融点以上の温度まで10℃/分の速度で昇温し、ポリアミド樹脂を溶融させた後急冷し、次いで、10℃/分の速度で融点以上の温度まで昇温し、融点、ガラス転移点を求めた。
(2)数平均分子量(Mn):
ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度[NH2](μ当量/g)と末端カルボキシル基濃度[COOH](μ当量/g)を、下記した中和滴定により求め、次式で算出した。
数平均分子量=2,000,000/([COOH]+[NH2])
ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度[NH2](μ当量/g)と末端カルボキシル基濃度[COOH](μ当量/g)を、下記した中和滴定により求め、次式で算出した。
数平均分子量=2,000,000/([COOH]+[NH2])
(3)反応モル比(r):
前記した次式により求めた。
r=(1−cN−b(C−N))/(1−cC+a(C−N))
式中、
a:M1/2
b:M2/2
c:18.015
M1:ジアミンの分子量(g/mol)
M2:ジカルボン酸の分子量(g/mol)
N:末端アミノ基濃度(当量/g)
C:末端カルボキシル基濃度(当量/g)
前記した次式により求めた。
r=(1−cN−b(C−N))/(1−cC+a(C−N))
式中、
a:M1/2
b:M2/2
c:18.015
M1:ジアミンの分子量(g/mol)
M2:ジカルボン酸の分子量(g/mol)
N:末端アミノ基濃度(当量/g)
C:末端カルボキシル基濃度(当量/g)
(4)末端アミノ基濃度([NH2]):
ポリアミド樹脂0.5gを精秤し、フェノール/メタノール(4:1)混合溶液30mlに20〜30℃で攪拌溶解し、完全溶解した後、0.01Nの塩酸で中和滴定して求めた。
(5)末端カルボキシル基濃度([COOH]):
ポリアミド樹脂0.1gを精秤し、ベンジルアルコール30mlに窒素気流下200℃で約15分間、攪拌溶解し完全に溶解した後、窒素気流下165℃まで冷却し、攪拌しつつフェノールレッド溶液を0.1ml加える。その溶液を160〜165℃で保持し、0.132gのKOHをベンジルアルコール200mlに溶解させた滴定液(KOHとして0.01mol/l)で滴定を行ない、溶液の色が黄から赤となり色の変化がなくなった時点を終点とすることで求めた。
(6)末端アミノ基濃度/末端カルボキシル基濃度([NH2]/[COOH]):
上記の各濃度から算出した。
ポリアミド樹脂0.5gを精秤し、フェノール/メタノール(4:1)混合溶液30mlに20〜30℃で攪拌溶解し、完全溶解した後、0.01Nの塩酸で中和滴定して求めた。
(5)末端カルボキシル基濃度([COOH]):
ポリアミド樹脂0.1gを精秤し、ベンジルアルコール30mlに窒素気流下200℃で約15分間、攪拌溶解し完全に溶解した後、窒素気流下165℃まで冷却し、攪拌しつつフェノールレッド溶液を0.1ml加える。その溶液を160〜165℃で保持し、0.132gのKOHをベンジルアルコール200mlに溶解させた滴定液(KOHとして0.01mol/l)で滴定を行ない、溶液の色が黄から赤となり色の変化がなくなった時点を終点とすることで求めた。
(6)末端アミノ基濃度/末端カルボキシル基濃度([NH2]/[COOH]):
上記の各濃度から算出した。
(7)アミド化反応率(P):
前記した次式により求めた。
P=(Mn+r(Mn−M1)−M2)/(2r(Mn−c))
式中、
Mn:数平均分子量
r:反応モル比
c:18.015 (水の分子量)
M1:ジアミンの分子量(g/mol)
M2:ジカルボン酸の分子量(g/mol)
前記した次式により求めた。
P=(Mn+r(Mn−M1)−M2)/(2r(Mn−c))
式中、
Mn:数平均分子量
r:反応モル比
c:18.015 (水の分子量)
M1:ジアミンの分子量(g/mol)
M2:ジカルボン酸の分子量(g/mol)
(実施例2〜5、比較例1〜3)
上記製造例1において、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの混合割合およびセバシン酸とアジピン酸の混合割合を表1に記載した割合とした以外は、製造例1と同様にしてポリアミド樹脂を得た。
得られたポリアミド樹脂の評価結果を表1〜表2に示した。
上記製造例1において、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの混合割合およびセバシン酸とアジピン酸の混合割合を表1に記載した割合とした以外は、製造例1と同様にしてポリアミド樹脂を得た。
得られたポリアミド樹脂の評価結果を表1〜表2に示した。
(実施例1〜5、比較例1〜3のポリアミド樹脂の成形評価)
ついで、上記実施例1〜5、比較例1〜3で得られた各ポリアミド樹脂に、安定剤としてステアリン酸カルシウムを20ppm加え、タンブラーにてブレンドした上で、ファナック社(FANUC Ltd)製射出成形機100Tにて、シリンダー温度をポリアミド樹脂の融点+20〜30℃、金型温度60〜90℃の条件で、4mm厚のISO試験片を作製した。試験片はさらに150℃に1時間保持し熱処理を行った。
得られた試験片を、JIS K7171に準じて、東洋精機株式会社(Toyoseiki Seisaku−sho)製ストログラフを使用し、測定温度を23℃、測定湿度を50%RHとして、曲げ弾性率(GPa)を測定した。
また、得られた試験片の数平均分子量を前記方法で測定した。また、成形前の数平均分子量に対する成形後の数平均分子量の増加率(%)も求めた。
表1〜表2にその結果を示す。
ついで、上記実施例1〜5、比較例1〜3で得られた各ポリアミド樹脂に、安定剤としてステアリン酸カルシウムを20ppm加え、タンブラーにてブレンドした上で、ファナック社(FANUC Ltd)製射出成形機100Tにて、シリンダー温度をポリアミド樹脂の融点+20〜30℃、金型温度60〜90℃の条件で、4mm厚のISO試験片を作製した。試験片はさらに150℃に1時間保持し熱処理を行った。
得られた試験片を、JIS K7171に準じて、東洋精機株式会社(Toyoseiki Seisaku−sho)製ストログラフを使用し、測定温度を23℃、測定湿度を50%RHとして、曲げ弾性率(GPa)を測定した。
また、得られた試験片の数平均分子量を前記方法で測定した。また、成形前の数平均分子量に対する成形後の数平均分子量の増加率(%)も求めた。
表1〜表2にその結果を示す。
本発明のポリアミド樹脂は、高い耐熱性を有し、成形加工性に優れ、機械物性にも優れ、また、押出機または成形機にて溶融成形してさらにアミド化反応させ、分子量を増大させる成形方法により、耐熱性に優れ機械物性に優れたるポリアミド樹脂成形品を得ることができるので、これまでポリアミド樹脂が適用できなかった高耐熱性部品等の分野で広く使用でき、産業上の利用性は非常に高い。
Claims (9)
- キシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を70モル%以上含むジカルボン酸単位からなるポリアミド樹脂であって、
キシリレンジアミン単位は、パラキシリレンジアミン50〜95モル%、メタキシリレンジアミン50〜5モル%からなり、
直鎖脂肪族ジカルボン酸単位は、50〜100モル%のアジピン酸と、0〜50モル%未満の、セバシン酸またはその他の直鎖脂肪族ジカルボン酸からなり、
反応したジカルボン酸単位に対する反応したジアミン単位のモル比(反応したジアミン単位のモル数/反応したジカルボン酸単位のモル数)が、0.994未満であり、
数平均分子量が10,000〜25,000、融点が285℃以上であることを特徴とするポリアミド樹脂。 - 末端アミノ基濃度が10〜100μ当量/gであることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂。
- 末端カルボキシル基濃度が50〜200μ当量/gであることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂。
- 末端カルボキシル基濃度に対する末端アミノ基濃度の比([NH2]/[COOH])が0.6以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂。
- 融点が300℃超であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂。
- 請求項1に記載のポリアミド樹脂を成形してなる耐熱性部品。
- 耐熱性部品が、LED用リフレクタ、LED実装用基板または放熱用部材であることを特徴とする請求項6に記載の耐熱性部品。
- キシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を70モル%以上含むジカルボン酸単位からなるポリアミド樹脂であって、
キシリレンジアミン単位は、パラキシリレンジアミン50〜95モル%、メタキシリレンジアミン50〜5モル%からなり、
直鎖脂肪族ジカルボン酸単位は、50〜100モル%のアジピン酸と、0〜50モル%未満の、セバシン酸またはその他の直鎖脂肪族ジカルボン酸からなり、
反応したジカルボン酸単位に対する反応したジアミン単位のモル比(反応したジアミン単位のモル数/反応したジカルボン酸単位のモル数)が、0.994未満であり、かつ、
数平均分子量が10,000〜25,000、融点が285℃以上であるポリアミド樹脂を、押出機または成形機にて溶融成形してさらにアミド化反応させることを特徴とするポリアミド樹脂の成形方法。 - 溶融成形後のポリアミド樹脂の数平均分子量が、溶融成形前の数平均分子量に対し0.5〜50%増加することを特徴とする請求項8に記載のポリアミド樹脂の成形方法。
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