JP6098058B2 - 難燃性ポリアミド樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、難燃性ポリアミド樹脂組成物に関し、詳しくは、高剛性で低吸水性の難燃性ポリアミド樹脂組成物に関する。
ポリアミド樹脂は、耐衝撃性、耐摩擦・摩耗性などの機械的強度に優れ、耐熱性、耐油性などにも優れたエンジニアリングプラスチックスとして、自動車部品、電子・電気機器部品、OA機器部品、機械部品、建材・住設関連部品などの分野で広く使用されており、近年更に使用分野が広がっている。
ポリアミド樹脂には、例えばポリアミド6、ポリアミド66など多くの種類が知られているが、メタキシリレンジアミンとアジピン酸から得られるメタキシリレンアジパミド樹脂(以下、「MXD6」ともいう。)は、ポリアミド6、ポリアミド66などとは異なって、主鎖に芳香環を有し、高剛性、低吸水率で、耐油性に優れ、また成形においては、成形収縮率が小さく、引けやソリが小さいことから精密成形にも適しており、極めて優れたポリアミド樹脂として位置付けられる。これらのことから、MXD6は、自動車等輸送機部品、一般機械部品、精密機械部品、電子・電気機器部品、レジャースポーツ用品、土木建築用部材等の様々な分野での成形材料、特に射出成形用材料として、近年ますます広く利用されてきている。
しかし、MXD6は、ポリアミド66などの他のポリアミド樹脂に比べれば、吸水率は低いが、近年の更なる要求に伴い、吸水時の機械的物性がより高い成形材料が求められている。また、さらに、市場ニーズの高度化と多様化に伴い、より軽くて強いポリアミド樹脂材料も求められており、MXD6よりも軽いキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂として、キシリレンジアミンとセバシン酸から得られるキシリレンセバカミド系ポリアミド樹脂(以下、「XD10」ともいう。)が提案されており(特許文献1参照)、軽量で剛性が高く、耐薬品性や耐衝撃性に優れる高性能のポリアミド樹脂として、機械部品、電気・電子機器部品、車両用部品・部材等、各種部品用の材料として、大いに期待されてきている。
これらの用途、特に、電気・電子部品用途においては、難燃性に対する要求レベルがますます高くなり、高度な難燃性が要求されている。
特許文献2では、XD10に共重合ポリアミド6/66/12又は6/66/11を配合したポリアミド樹脂組成物が提案され、その発明の詳細な説明には、難燃剤等の添加剤を加えることができると記載されている。しかしながら、その具体的な難燃化の方法については記載されていない。
また、一方で、このようなポリアミド樹脂材料においても、石油由来の原料ではなく、天然物、特に植物由来の材料が近年要求されており、高度な難燃性を有し、かつ地球環境配慮型のポリアミド樹脂組成物が期待されている。
特開昭63−137956号公報 特開2012−31403号公報
本発明の目的は、上記課題を解決し、低吸水性、耐加水分解性で、原料の天然物由来度が高く、かつ高度の難燃性を有するポリアミド樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、キシリレンジアミンとセバシン酸に由来するポリアミド樹脂に、特定の難燃性化合物を特定量配合することにより、難燃性が向上し、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに到った。
本発明は、以下の難燃性ポリアミド樹脂組成物を提供する。
[1]ジアミン構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸構成単位の50モル%以上がセバシン酸に由来するポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、(B1)ハロゲン系難燃剤及びアンチモン系難燃助剤、(B2)メラミン系難燃剤、並びに(B3)水和金属化合物からなる群から選ばれる難燃剤(B)を5〜60質量部含有することを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物。
[2]キシリレンジアミンが、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン又はこれらの混合物である上記[1]に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
[3]前記(B1)のハロゲン系難燃剤が臭素系難燃剤であり、アンチモン系難燃助剤が三酸化アンチモンである上記[1]に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
[4](B3)水和金属化合物が水酸化アルミニウムである上記[1]に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
本発明によれば、キシリレンジアミンとセバシン酸からなる構成単位を主成分とする高機能ポリアミド樹脂に、(B1)ハロゲン系難燃剤及びアンチモン系難燃助剤、(B2)メラミン系難燃剤、並びに(B3)水和金属化合物からなる群から選ばれる難燃剤(B)を特定量配合することにより、低吸水性、耐加水分解性で、原料の天然物由来度が高く、高度の難燃性を有する難燃性ポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
そして、本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物を成形した成形品は、各種機械的物性に優れるため、製品の軽量化が可能であり、電気・電子機器の部品若しくは筐体、あるいは自動車用各種部品・部材、各種構造用部材等に利用でき、石油原料依存度の低い、地球環境配慮型の難燃性樹脂材料として、大いに期待される。
[発明の概要]
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、ジアミン構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸構成単位の50モル%以上がセバシン酸に由来するポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、(B1)ハロゲン系難燃剤及びアンチモン系難燃助剤、(B2)メラミン系難燃剤、並びに(B3)水和金属化合物からなる群から選ばれる難燃剤(B)を5〜60質量部含有することを特徴とする。
以下、本発明の内容について詳細に説明する。
[ポリアミド樹脂(A)]
本発明に用いるポリアミド樹脂(A)は、ジアミン構成単位(ジアミンに由来する構成単位)の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸構成単位(ジカルボン酸に由来する構成単位)の50モル%以上がセバシン酸に由来するポリアミド樹脂である。好ましくは、ジアミン構成単位の80モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸構成単位の好ましくは70モル%以上、特には80モル%以上が、植物由来のセバシン酸に由来するキシリレンセバカミド系ポリアミド樹脂である。
また、ポリアミド樹脂(A)は、一種類もしくは複数のポリアミド樹脂をブレンドして使用することもできる。
キシリレンジアミンとしては、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンが好ましく、これらを単独又は混合して使用できる。混合して使用する場合、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンは、任意の割合で混合してよいが、耐熱性を重視する場合は、メタキシリレンジアミン0〜50モル%及びパラキシリレンジアミン50〜100モル%が好ましく、得られる難燃性ポリアミド樹脂組成物の成形加工性を重視する場合は、メタキシリレンジアミン50〜100モル%及びパラキシリレンジアミン0〜50モル%が好ましい。
ポリアミド樹脂(A)の原料ジアミン成分として用いることが出来る、メタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種又は2種以上を混合して使用できる。
ジアミン成分として、キシリレンジアミン以外のジアミンを用いる場合は、ジアミン構成単位の30モル%以下であり、25モル%以下であることが好ましく、より好ましくは20モル%以下の割合で用いる。
ポリアミド樹脂(A)の原料ジカルボン酸はセバシン酸を主成分するが、セバシン酸としては、植物由来のものであることが好ましい。特には、トウゴマから抽出されるセバシン酸が好ましい。このようなセバシン酸を用いることで、得られる難燃性ポリアミド樹脂組成物中の植物由来成分による割合、すなわち、植物度を高くすることができる。なお、セバシン酸としては、植物由来でないものを併用することも可能であり、その割合は、好ましくは全セバシン酸量の50質量%未満、より好ましくは30質量%以下、特には10質量%以下であることが好ましい。
ポリアミド樹脂(A)のセバシン酸以外の原料として用いるジカルボン酸としては、セバシン酸を除く炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸が好ましく、例えばコハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が好ましいものとして挙げられ、1種又は2種以上を混合して使用できるが、これらの中でもポリアミド樹脂(A)の融点が成形加工するのに適切な範囲となることから、アジピン酸が特に好ましい。
また、セバシン酸以外のジカルボン酸成分として、芳香族ジカルボン酸も用いることができ、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸といった異性体等のナフタレンジカルボン酸等を例示することができ、1種又は2種以上を混合して使用できる。
このうち、成形加工性、バリア性の点から、イソフタル酸を用いることが好ましく、イソフタル酸の割合は、ジカルボン酸構成単位の50モル%以下であり、より好ましくは30モル%以下、特に好ましくは5〜20モル%の範囲である。
さらに、上記ジアミン成分、ジカルボン酸成分以外にも、ポリアミド樹脂(A)を構成する成分として、本発明の効果を損なわない範囲でε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類も共重合成分として使用できる。
ポリアミド樹脂(A)として、最も好ましいものは、ポリメタキシリレンセバカミド樹脂、ポリパラキシリレンセバカミド樹脂、及び、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの混合キシリレンジアミンをセバシン酸と重縮合してなるポリメタキシリレン/パラキシリレン共重合セバカミド樹脂である。これらのポリアミド樹脂は成形加工性が特に良好となる傾向にある。
本発明において、ポリアミド樹脂(A)の数平均分子量(Mn)は、6,000〜35000であることが好ましい。数平均分子量(Mn)が6,000〜35,000の範囲を外れると、得られる難燃性ポリアミド樹脂組成物あるいはその成形品の強度が悪くなりやすい。
より好ましい数平均分子量(Mn)は8,000〜28,000であり、さらに好ましくは9,000〜26,000であり、なかでも10,000〜25,000が好ましく、特に好ましくは11,000〜24,000であり、最も好ましくは12,000〜23000である。このような範囲であると、耐熱性、弾性率、寸法安定性、成形加工性がより良好である。
なお、ここでいう数平均分子量(Mn)とは、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度[NH](μ当量/g)と末端カルボキシル基濃度[COOH](μ当量/g)から、次式で算出される。
数平均分子量(Mn)=2,000,000/([COOH]+[NH])
また、ポリアミド樹脂(A)は、末端アミノ基濃度([NH])が好ましくは100μ当量/g未満、より好ましくは5〜75μ当量/g、さらに好ましくは10〜60μ当量/gであり、末端カルボキシル基濃度([COOH])は、好ましくは150μ当量/g未満、より好ましくは10〜120μ当量/g、さらに好ましくは10〜100μ当量/gのものが好適に用いられる。このような末端基濃度のポリアミド樹脂を用いることにより、ポリアミド樹脂(A)を成形、加工する際の粘度が安定しやすくなる傾向にある。
また、末端カルボキシル基濃度に対する末端アミノ基濃度の比([NH]/[COOH])は、0.7以下であるものが好ましく、0.6以下であるものがより好ましく、特には0.5以下であることが好ましい。この比が0.7よりも大きいものは、ポリアミド樹脂(A)を重合する際に、分子量の制御が難しくなる場合がある。
末端アミノ基濃度は、ポリアミド樹脂0.5gを30mlのフェノール/メタノール(4:1)混合溶液に20〜30℃で攪拌溶解し、0.01Nの塩酸で滴定して測定することができる。また、末端カルボキシル基濃度は、ポリアミド樹脂0.1gを30mlのベンジルアルコールに200℃で溶解し、160〜165℃の範囲でフェノールレッド溶液を0.1ml加え、その溶液を、0.132gのKOHをベンジルアルコール200mlに溶解させた滴定液(KOH濃度として0.01mol/l)で滴定を行い、色の変化が黄から赤となって色の変化がなくなった時点を終点とすることで算出することができる。
ポリアミド樹脂(A)は、反応したジカルボン酸単位に対する反応したジアミン単位のモル比(反応したジアミン単位のモル数/反応したジカルボン酸単位のモル数、以下「反応モル比」という場合がある。)が、0.97〜1.02の範囲にあることが好ましい。このような範囲とすることにより、ポリアミド樹脂(A)の分子量や分子量分布を、任意の範囲に制御しやすくなる。
反応モル比は、より好ましくは1.0未満、さらに好ましくは0.995未満、特には0.990未満であり、下限は、より好ましくは0.975以上、さらに好ましくは0.98以上である。
ここで、反応モル比(r)は次式で求められる。
r=(1−cN−b(C−N))/(1−cC+a(C−N))
式中、
a:M/2
b:M/2
c:18.015 (水の分子量(g/mol))
:ジアミンの分子量(g/mol)
:ジカルボン酸の分子量(g/mol)
N:末端アミノ基濃度(当量/g)
C:末端カルボキシル基濃度(当量/g)
なお、ジアミン成分、ジカルボン酸成分として分子量の異なるモノマーからポリアミド樹脂を合成する際は、M及びMは原料として配合するモノマーの配合比(モル比)に応じて計算されることはいうまでもない。なお、合成釜内が完全な閉鎖系であれば、仕込んだモノマーのモル比と反応モル比とは一致するが、実際の合成装置は完全な閉鎖系とはなりえないことから、仕込みのモル比と反応モル比が一致するとは限らない。仕込んだモノマーが完全に反応するとも限らないことから、仕込みのモル比と反応モル比が一致するとは限らない。したがって、反応モル比とは出来上がったポリアミド樹脂の末端基濃度から求められる実際に反応したモノマーのモル比を意味する。
ポリアミド樹脂(A)の反応モル比の調整は、原料ジカルボン酸成分及びジアミン成分の仕込みモル比、反応時間、反応温度、キシリレンジアミンの滴下速度、釜内の圧力、減圧開始タイミング等の反応条件を適切な値にすることにより、可能である。
ポリアミド樹脂の製造方法がいわゆる塩法である場合、反応モル比を0.97〜1.02にするには、具体的には、例えば、原料ジアミン成分/原料ジカルボン酸成分比をこの範囲に設定し、反応を十分進めればよい。溶融ジカルボン酸に連続的にジアミンを滴下する方法の場合は、仕込み比をこの範囲とすることの他に、ジアミンを滴下する最中に還流させるジアミン量をコントロールし、滴下したジアミンを反応系外に除去することでも可能である。具体的には還流塔の温度を最適な範囲にコントロールすることや充填塔の充填物、所謂、ラシヒリングやレッシングリング、サドル等を適切な形状、充填量に制御することで、ジアミンを系外に除去すればよい。また、ジアミン滴下後の反応時間を短くすることでも未反応のジアミンを系外に除去することができる。さらにはジアミンの滴下速度を制御することによっても未反応のジアミンを必要に応じて反応系外に除去することができる。これらの方法により仕込み比が所望範囲から外れても反応モル比を所定の範囲にコントロールすることが可能である。
ポリアミド樹脂(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法、重合条件により製造される。ポリアミド樹脂の重縮合時に分子量調節剤として少量のモノアミン、モノカルボン酸を加えてもよい。例えば、キシリレンジアミンを含むジアミンとセバシン酸を含むジカルボン酸からなる塩を水の存在下に、加圧状態で昇温し、加えた水及び縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法により製造される。また、キシリレンジアミンを溶融状態のセバシン酸に直接加えて、常圧下で重縮合する方法によっても製造できる。この場合、反応系を均一な液状状態に保つため、ジアミンをジカルボン酸に連続的に加え、その間、反応温度が、生成するオリゴアミド及びポリアミドの融点よりも下回らないように、反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。
また、ポリアミド樹脂(A)は、溶融重合法により製造された後に、固相重合を行っても良い。固相重合の方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法、重合条件により製造される。
本発明においては、ポリアミド樹脂(A)の融点は、150〜310℃であることが好ましく、より好ましくは160〜305℃であり、さらに好ましくは170〜300℃であり、特には180〜295℃であることが好ましい。
また、ポリアミド樹脂(A)のガラス転移点は、50〜130℃が好ましく、50〜120℃がより好ましく、特に好ましくは55〜110℃である。この範囲であると、耐熱性が良好となる傾向にある。
なお、融点とは、DSC(示差走査熱量測定)法により観測される昇温時の吸熱ピークのピークトップの温度である。また、ガラス転移点とは、試料を一度加熱溶融させ熱履歴による結晶性への影響をなくした後、再度昇温して測定されるガラス転移点をいう。測定には、例えば、島津製作所社製「DSC−60」を用い、試料量は約5mgとし、雰囲気ガスとしては窒素を30ml/分で流し、昇温速度は10℃/分の条件で、室温から予想される融点以上の温度まで加熱し溶融させた際に観測される吸熱ピークのピークトップの温度から融点を求めることができる。次いで、溶融したポリアミド樹脂を、ドライアイスで急冷し、10℃/分の速度で融点以上の温度まで再度昇温し、ガラス転移点を求めることができる。
本発明の樹脂組成物には、上記ポリアミド樹脂(A)以外の、他のポリアミド樹脂やエラストマー成分を含むこともできる。他のポリアミド樹脂としては、ポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド6/66、ポリアミド10、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸及びテレフタル酸からなるポリアミド66/6T、ヘキサメチレンジアミン、イソフタル酸及びテレフタル酸からなるポリアミド6I/6Tなどが挙げられる。
エラストマー成分としては、例えば、ポリオレフィン系エラストマー、ジエン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、フッ素系エラストマー、シリコーン系エラストマー等公知のエラストマーが使用でき、好ましくはポリオレフィン系エラストマー及びポリスチレン系エラストマーである。
これらのエラストマーとしては、ポリアミド樹脂(A)に対する相溶性を付与するため、ラジカル開始剤の存在下または非存在下で、α,β−不飽和カルボン酸及びその酸無水物、アクリルアミド並びにそれらの誘導体等で変性した変性エラストマーも好ましい。
このような他のポリアミド樹脂やエラエストマー成分の含有量は、ポリアミド樹脂(A)に対し、通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下、特には10質量%以下である。
さらに、本発明の目的・効果を損なわない範囲で、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスチレン樹脂等の樹脂を一種もしくは複数ブレンドすることもできる。
[難燃剤(B)]
本発明のポリアミド樹脂組成物は、(B1)ハロゲン系難燃剤及びアンチモン系難燃助剤、(B2)メラミン系難燃剤、並びに(B3)水和金属化合物からなる群から選ばれる難燃剤(B)を、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、5〜60質量部含有することを特徴とする。なお、(B1)ないし(B3)の難燃剤を複数含有する場合は、合計の含有量が5〜60質量部であることを意味する。
[ハロゲン系難燃剤及びアンチモン系難燃助剤(B1)]
ハロゲン系難燃剤としては、ハロゲン元素を含む難燃剤であれば、特に限定されるものではなく、例えば、塩素系難燃剤や臭素系難燃剤等が挙げられる。
これら難燃剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
塩素系難燃剤としては、例えば、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、塩素化ナフタレン等の塩素化芳香族化合物、パークロロペンタデカン等の塩素化脂肪族化合物、ドデカクロロペンタシクロオクタデカ−7,15−ジエン等の塩素化脂環式化合物等が挙げられる。
臭素系難燃剤としては、デカブロモジフェニルオキサイド、オクタブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモ無水フタル酸、テトラブロモフタレートエステル、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ヘキサブロモベンゼン、1,1−スルホニル[3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロポキシ)]ベンゼン、ポリジブロモフェニレンオキサイド、テトラブロムビスフェノール−S、トリス(2,3−ジブロモプロピル−1)イソシアヌレート、トリブロモフェノール、トリブロモフェニルアリルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、トリブロモネオペンチルアルコール、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリエチレン、テトラブロムビスフェノール−A、テトラブロモビスフェノールA又はその誘導体、テトラブロモビスフェノールAエポキシオリゴマー又はポリマー、臭素化フェノールノボラックエポキシなどの臭素化エポキシオリゴマー又はポリマー、テトラブロモビスフェノールAカーボネートオリゴマー又はポリマー、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(2−ヒドロキシジエチルエーテル)、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(アリルエーテル)、テトラブロモシクロオクタン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、ポリ(ペンタブロモベンジル)アクリレート、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、ジブロモネオペンチルグリコール、ペンタブロモベンジルポリアクリレート及びその反応体、ジブロモクレジルグリシジルエーテル、N,N’−エチレン−ビス−テトラブロモテレフタルイミド、臭素化トリアジン、トリブロモスチレン及びその反応体、トリブロモフェニルマレイミド及びその反応体などが挙げられる。
これの中でも、ハロゲン系難燃剤としては、テトラブロモビスフェノール−A、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン等が好ましい。
ハロゲン系難燃剤を使用する場合は、難燃助剤を併用する。難燃助剤を併せて用いることにより、さらに優れた難燃性を発揮することができる。
難燃助剤としては、特に限定はされないが、例えば、三酸化二アンチモン、四酸化二アンチモン、五酸化二アンチモン、アンチモン酸ナトリウムなどの酸化アンチモン類などのアンチモン系化合物が挙げられる。これらの中では、三酸化二アンチモンが好ましい。
ハロゲン系難燃剤を含有する場合の含有量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、3〜30質量部であることが好ましい。ハロゲン系難燃剤の含有量が、3質量部未満では、難燃性が十分に得られにくく、一方、ハロゲン系難燃剤の含有量が30質量部を超えるものでは、強度が低下しやすい。
また、その際、難燃助剤の含有量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、1〜10質量部であることが好ましい。
[メラミン系難燃剤(B2)]
メラミン系難燃剤としては、例えば、メラミン、メラム、メレム、メロン、メラミンシアヌレート、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩、アルキルホスホン酸メラミン、フェニルホスホン酸メラミン、硫酸メラミン、メタンスルホン酸メラム等が挙げられ、中でもメラミンシアヌレート、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、硫酸メラミン等が好ましく挙げられ、これらを単独もしくは併用して用いることができる。
メラミン系難燃剤(B2)を含有する場合の含有量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、15〜35質量部であることが好ましい。メラミン系難燃剤の含有量が、15質量部未満では、難燃性が十分に得られにくく、一方、メラミン系難燃剤の含有量が35質量部を超えると、強度が低下しやすい。
[水和金属化合物(B3)]
水和金属化合物系の難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウムなどを好ましく挙げることができ、その他にも、水酸化亜鉛、水酸化セリウム、水酸化鉄、水酸化銅、水酸化チタン、水酸化バリウム、水酸化ベリリウム、水酸化マンガン、水酸化ストロンチウム、水酸化ジルコニウム及び水酸化ガリウム等から選ばれる金属水酸化物を用いることも可能である。これらは1種又は2種以上を混合して用いることもできる。水和金属化合物としては、これらのうち、水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムが好ましく、水酸化アルミニウムがより好ましい。
また、水和金属化合物は、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、高級脂肪酸などを用いて表面処理したものが、分散性、親和性の点で好ましい。
水和金属化合物(B3)を含有する場合の含有量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、5〜60質量部であることが好ましい。水和金属化合物の含有量が、5質量部未満では、難燃性が十分に得られにくく、一方、水和金属化合物の含有量が60質量部を超えるものでは、強度低下を引き起こしやすい。
[その他添加剤]
本発明のポリアミド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、熱安定剤等の安定剤、耐加水分解性改良剤、耐候安定剤、艶消剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、分散剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤、着色剤、離型剤等の添加剤等を加えることができる。
[安定剤]
本発明のポリアミド樹脂(A)には、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤)を配合することが好ましい。安定剤としては、例えば、リン系、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、シュウ酸アニリド系、有機硫黄系、芳香族第2級アミン系などの有機系安定剤、アミン系酸化防止剤、銅化合物やハロゲン化物などの無機系安定剤が好ましい。リン系安定剤としては、ホスファイト化合物及びホスホナイト化合物が好ましい。
ホスファイト化合物としては、例えば、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジノニルフェニルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−イソプロピルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−sec−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−t−オクチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられ、特に、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましい。
ホスホナイト化合物としては、例えば、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,5−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3,4−トリメチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3−ジメチル−5−エチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−t−ブチル−5−エチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3,4−トリブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられ、特に、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトが好ましい。
ヒンダードフェノール系安定剤としては、例えば、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)等が挙げられる。これらの中では、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)が好ましい。
ヒンダードアミン系安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン骨格を有する周知のヒンダ−ドアミン化合物が挙げられる。ヒンダードアミン系化合物の具体例としては、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェニルアセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−エチルカルバモイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルカルバモイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェニルカルバモイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)エタン、α,α’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルトリレン)−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’,−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジンの重縮合物、1,3−ベンゼンジカルボキサミド−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)等が挙げられる。
アミン系酸化防止剤とは、上記のヒンダードアミン系安定剤以外のアミン系化合物をいい、N−フェニルベンゼンアミンと2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物、オクチル化ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリンなどが利用できる。
シュウ酸アニリド系安定剤としては、好ましくは、4,4’−ジオクチルオキシオキサニリド、2,2’−ジエトキシオキサニリド、2,2’−ジオクチルオキシ−5,5’−ジ−第三ブトキサニリド、2,2’−ジドデシルオキシ−5,5’−ジ−第三ブトキサニリド、2−エトキシ−2’−エチルオキサニリド、N,N’−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)オキサニリド、2−エトキシ−5−第三ブチル−2’−エトキサニリド及びその2−エトキシ−2’−エチル−5,4’−ジ−第三ブトキサニリドとの混合物、o−及びp−メトキシ−二置換オキサニリドの混合物、o−及びp−エトキシ−二置換オキサニリドの混合物などが挙げられる。
有機硫黄系安定剤としては、例えば、ジドデシルチオジプロピオネート、ジテトラデシルチオジプロピオネート、ジオクタデシルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、チオビス(N−フェニル−β−ナフチルアミン)等の有機チオ酸系化合物、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾール及び2−メルカプトベンゾイミダゾールの金属塩等のメルカプトベンゾイミダゾール系化合物、ジエチルジチオカルバミン酸の金属塩、及びジブチルジチオカルバミン酸の金属塩等のジチオカルバミン酸系化合物、並びに1,3−ビス(ジメチルアミノプロピル)−2−チオ尿素、及びトリブチルチオ尿素等のチオウレア系化合物、テトラメチルチウラムモノサルファイド、テトラメチルチウラムジサルファイド、ニッケルジブチルジチオカルバメート、ニッケルイソプロピルキサンテート、トリラウリルトリチオホスファイト等が挙げられる。
これらの中でも、メルカプトベンゾイミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸系化合物、チオウレア系化合物、及び有機チオ酸系化合物が好ましく、メルカプトベンゾイミダゾール系化合物、及び有機チオ酸系化合物がさらに好ましい。特に、チオエーテル構造を有するチオエーテル系化合物は、酸化された物質から酸素を受け取って還元するため、好適に使用することができる。具体的には、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾール、ジテトラデシルチオジプロピオネート、ジオクタデシルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)がより好ましく、ジテトラデシルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾールがさらに好ましく、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)が特に好ましい。
有機硫黄系化合物の分子量は、通常200以上、好ましくは500以上であり、その上限は通常3,000である。
芳香族第2級アミン系安定剤としては、ジフェニルアミン骨格を有する化合物、フェニルナフチルアミン骨格を有する化合物及びジナフチルアミン骨格を有する化合物が好ましく、ジフェニルアミン骨格を有する化合物、及びフェニルナフチルアミン骨格を有する化合物がさらに好ましい。具体的には、p,p’−ジアルキルジフェニルアミン(アルキル基の炭素数は8〜14)、オクチル化ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン及びN−フェニル−N’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン等のジフェニルアミン骨格を有する化合物、N−フェニル−1−ナフチルアミン及びN,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等のフェニルナフチルアミン骨格を有する化合物、及び2,2’−ジナフチルアミン、1,2’−ジナフチルアミン、及び1,1’−ジナフチルアミン等のジナフチルアミン骨格を有する化合物が挙げられる。これらの中でも4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン及びN,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミンがより好ましく、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン及び4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンが特に好ましい。
上記の有機硫黄系安定剤または芳香族第2級アミン系安定剤を配合する場合は、これらを併用することが好ましい。これらを併用することによって、それぞれ単独で使用した場合よりも、ポリアミド樹脂組成物の耐熱老化性が良好となる傾向にある。
より具体的な有機硫黄系安定剤及び芳香族第2級アミン系安定剤の好適な組み合わせとしては、有機硫黄系安定剤として、ジテトラデシルチオジプロピオネート、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾール及びペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)から選ばれる少なくとも1種と、芳香族第2級アミン系安定剤が、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン及びN,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンから選ばれる少なくとも1種との組み合わせが挙げられる。さらに、有機硫黄系安定剤が、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、芳香族第2級アミン系安定剤が、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンの組み合わせがより好ましい。
また、上記有機硫黄系安定剤と芳香族第2級アミン系安定剤とを併用する場合は、ポリアミド樹脂組成物中の含有量比(質量比)で、芳香族第2級アミン系安定剤/有機硫黄系安定剤=0.05〜15であることが好ましく、0.1〜5であることがより好ましく、0.2〜2がさらに好ましい。このような含有量比とすることにより、耐熱老化性を効率的に向上させることができる。
無機系安定剤としては、銅化合物及びハロゲン化物が好ましい。
銅化合物は、種々の無機酸または有機酸の銅塩であって、後述のハロゲン化物を除くものである。銅としては、第1銅、第2銅の何れでもよく、銅塩の具体例としては、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、リン酸銅、ステアリン酸銅の他、ハイドロタルサイト、スチヒタイト、パイロライト等の天然鉱物が挙げられる。
また、無機系安定剤として使用されるハロゲン化物としては、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物;ハロゲン化アンモニウム及び有機化合物の第4級アンモニウムのハロゲン化物;ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリル等の有機ハロゲン化物が挙げられ、その具体例としては、ヨウ化アンモニウム、ステアリルトリエチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリエチルアンモニウムアイオダイド等が挙げられる。これらの中では、塩化カリウム、塩化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム等のハロゲン化アルカリ金属塩が好適である。
銅化合物とハロゲン化物との併用、特に、銅化合物とハロゲン化アルカリ金属塩との併用は、耐熱変色性、耐候性(耐光性)の面で優れた効果を発揮するので好ましい。例えば、銅化合物を単独で使用する場合は、成形品が銅により赤褐色に着色することがあり、この着色は用途によっては好ましくない。この場合、銅化合物とハロゲン化物と併用することにより赤褐色への変色を防止することが出来る。
本発明においては、上記の安定剤のうち、加熱加圧時の加工安定性、耐熱老化性、外観、着色防止の点から、特には、アミン系酸化防止剤、無機系、有機硫黄系、芳香族第2級アミン系の安定剤が特に好ましい。
前記の安定剤の含有量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、通常0.01〜1質量部、好ましくは0.01〜0.8質量部である。含有量を0.01質量部以上とすることにより、熱変色改善、耐候性/耐光性改善効果を十分に発揮することが出来、配合量を1質量部以下とすることにより、機械的物性低下を抑制することが出来る。
[耐加水分解性改良剤−カルボジイミド化合物]
ポリアミド樹脂(A)には、耐加水分解性改良剤としてのカルボジイミド化合物を配合することも好ましい。カルボジイミド化合物としては、種々の方法で製造した芳香族、脂肪族又は脂環式のポリカルボジイミド化合物が好ましく挙げられる。これらの中で、押出し時等における溶融混練性の面から、脂肪族又は脂環式ポリカルボジイミド化合物が好ましく、脂環式ポリカルボジイミド化合物がより好ましく用いられる。
これらのカルボジイミド化合物は、有機ポリイソシアネートを脱炭酸縮合反応することで製造することができる。例えば、カルボジイミド化触媒の存在下、各種有機ポリイソシアネートを約70℃以上の温度で不活性溶媒中、もしくは溶媒を使用することなく、脱炭酸縮合反応させることによって合成する方法等を挙げることができる。イソシアネート基含有率は好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは1〜3質量%である。上記のような範囲とすることにより、ポリアミド樹脂(A)との反応が容易となり、耐加水分解性が良好となる傾向にある。
カルボジイミド化合物の合成原料である有機ポリイソシアネートとしては、例えば芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート等の各種有機ジイソシアネートやこれらの混合物を使用することができる。
有機ジイソシアネートとしては、具体的には、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソプロピルフェニルイソシアネート、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、メチレンビス(4,1−シクロへキシレン)=ジイソシアネート等を例示することができ、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、メチレンビス(4,1−シクロへキシレン)=ジイソシアネートが好ましい。
カルボジイミド化合物の末端を封止してその重合度を制御するためにモノイソシアネート等の末端封止剤を使用することも好ましい。モノイソシアネートとしては、例えば、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ジメチルフェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
なお、末端封止剤としては、上記のモノイソシアネートに限定されることはなく、イソシアネートと反応し得る活性水素化合物であればよい。このような活性水素化合物としては、脂肪族、芳香族、脂環式の化合物の中で、メタノール、エタノール、フェノール、シクロヘキサノール、N−メチルエタノールアミン、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル等の−OH基を持つ化合物、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の2級アミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン等の1級アミン、コハク酸、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸等のカルボン酸、エチルメルカプタン、アリルメルカプタン、チオフェノール等のチオール類やエポキシ基を有する化合物等を例示することができ、2種以上を併用してもよい。
カルボジイミド化触媒としては、例えば、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド及びこれらの3−ホスホレン異性体等のホスホレンオキシド等、チタン酸テトラブチル等の金属触媒等を使用することができ、これらのなかでは、反応性の面から3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシドが好適である。カルボジイミド化触媒は、2種以上併用してもよい。
カルボジイミド化合物の含有量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは0.1〜2質量部であり、より好ましくは、0.2〜1.5質量部、さらに好ましくは、0.3〜1.5質量部である。0.1質量部未満では樹脂組成物の耐加水分解性改良効果が十分ではなく、押出等の溶融混練時の吐出ムラが発生しやすく、溶融混練が不十分となりやすい。一方、2質量部を超えると、溶融混練時の樹脂組成物の粘度が著しく増加し、溶融混練性、成形加工性が悪くなりやすい。
[難燃性ポリアミド樹脂組成物の製造]
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物を製造する方法は特に限定されるものではなく、各成分を通常の加熱溶融後、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール混練機、ブラベンダー等を用いる混練法によって混練するとよい。また、スタティックミキサーやダイナミックミキサーを併用することも効果的である。混練状態をよくする意味で特に二軸の押出機を使用することが好ましい。
各成分の供給方法は、ポリアミド樹脂(A)、難燃剤(B)、必要によりその他成分をすべて一括でドライブレンドしてもよいし、またはそれぞれを個別のフィーダーを用いて溶融混練してもよい。
混練後は、ストランドとして押し出し、水冷等にて冷却後ペレット化することが好ましい。またペレットを経由せずに、押出機で溶融混練された樹脂を直接、シートやフィルム、異型押出成形品、ブロー成形品あるいは射出成形品等にすることもできる。
得られた難燃性ポリアミド樹脂組成物は、射出成形、ブロー成形、押出成形、インフレーション成形、及び、シート加工後の真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の成形方法により、各種の成形体とすることができる。なかでも、射出成形法を採ることが好ましく、一般的な射出成形法のほか、ガス射出成形、射出プレス成形等も採用できる。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本発明におけるポリアミド樹脂(A)として、以下の製造例1及び製造例2で得られたポリアミド樹脂(A−1)及び(A−2)を使用した。
<製造例1(ポリアミド樹脂(A−1)ポリメタキシリレンセバカミドの製造>
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロート及び窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、精秤したトウゴマ由来のセバシン酸12,135g(60mol)、次亜リン酸ナトリウム一水和物(NaHPO・HO)3.105g(ポリアミド樹脂中のリン原子濃度として50ppm)、酢酸ナトリウム1.61gを入れ、十分に窒素置換した後、さらに少量の窒素気流下で系内を撹拌しながら170℃まで加熱した。次亜リン酸ナトリウム一水和物/酢酸ナトリウムのモル比は0.67とした。
これにメタキシリレンジアミン8,172g(60mol)を撹拌下に滴下し、生成する縮合水を系外へ除きながら系内を連続的に昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、内温を260℃として40分間溶融重合反応を継続した。
その後、系内を窒素で加圧し、ストランドダイからポリマーを取り出して、これをペレット化し、約24kgのポリアミド樹脂(A−1)のペレットを得た。
ポリアミド樹脂(A−1)の融点(Tm)は190℃、数平均分子量は30000であった。
なお、ポリアミド樹脂の融点(Tm)は、示差走査熱量測定(DSC)法により、島津製作所社製DSC−60を用い、30℃から予想される融点以上の温度まで10℃/分の速度で昇温してポリアミド樹脂を溶融させ、この時の吸熱ピークのピークトップの温度から融点を求めた。
<製造例2(ポリアミド樹脂(A−2)ポリメタ/パラキシリレン共重合セバカミドの製造)>
製造例1において、メタキシリレンジアミンをメタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの3:7混合物(モル比)とし、混合キシリレンジアミンをセバシン酸とのモル比が1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を260℃まで上昇させた。滴下終了後、280℃まで昇温した以外は製造例1と同様にして、ポリアミド樹脂(A−2)のペレットを得た。
ポリアミド樹脂(A−2)の融点(Tm)は258℃、数平均分子量は20000であった。
<難燃剤>
難燃剤として、以下のものを使用した。
(B1)ハロゲン系難燃剤及び難燃助剤
・テトラブロモビスフェノールA
(株)鈴裕化学製、商品名「FCP−2010」
・臭素化ポリスチレン
(株)鈴裕化学製、商品名「FCP−8000」
・難燃助剤
三酸化アンチモン、(株)鈴裕化学製、商品名「FCP−AT3」
(B2)メラミン系難燃剤
・ポリリン酸メラミン、BASF社製、商品名「MELAPUR MC25」
(実施例1〜5、比較例1〜2)
上記製造例で得られた表1に記載のポリアミド樹脂のペレット、及び表1に記載の難燃剤を、表1に示す配合割合(全て質量部)になるように秤量し、二軸押出機(東芝機械社製「TEM26SS」)を用いて、シリンダー設定温度240〜270℃、回転数200rpmで押出して、ポリアミド樹脂組成物のペレットを作製した。
<難燃性評価(UL94燃焼試験)>
得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを、80℃の除湿エアー(露点−40℃)で8時間乾燥したのち、射出成形機(ファナック(株)製100α)にて、金型温度60〜90℃、シリンダー温度をポリアミド樹脂の融点+20〜30℃の条件で、125mm×13mm×厚み3.0mmのUL94燃焼試験用の試験片を作製した。
得られた試験片を、UL−94規格に準拠して、クランプに垂直に取り付け、20mm炎による10秒間の接炎を2回行い、その際の燃焼挙動によりV−0、V−1、V−2、不適合の判定を行った。
<曲げ弾性率、曲げ強度>
上記と同様にして、10mm×80mm×厚み4mmの試験片を作成し、JIS K6911に準じて、オートグラフ(株式会社島津製作所製、AG5000B)にて、常温で曲げ弾性率(GPa)、曲げ強度(MPa)を測定した。
<吸水性評価(吸水率)>
得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを用い、ファナック社製射出成形機100Tにて、シリンダー温度をポリアミド樹脂の融点+20〜30℃、金型温度60〜90℃の条件で、ISO試験片を作製した。試験片はさらに150℃に1時間保持し熱処理を行なった。得られた試験片を、23℃に保った水の容器に収容し、7日後試験片を取り出し、表面の付着水を除去し、重量を測定し、吸水前の重量との差を吸水前の重量で割った値を吸水率(%)とした。
評価結果を以下の表に示す。
Figure 0006098058
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、高剛性で低吸水性の難燃性ポリアミド樹脂材料であり、地球環境配慮型の樹脂材料として、特に、電気・電子機器の部品又は筐体、自動車用内装部品、あるいは家具等の日用品等に広く使用することができ、産業上の利用性は非常に高いものがある。

Claims (3)

  1. ジアミン構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、キシリレンジアミンが、メタキシリレンジアミン30〜100モル%及びパラキシリレンジアミン0〜70モル%から構成され、ジカルボン酸構成単位の50モル%以上がセバシン酸に由来するポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、(B1)ハロゲン系難燃剤3〜15質量部及びアンチモン系難燃助剤を1〜5質量部または(B2)メラミン系難燃剤を15〜35質量部または(B3)水和金属化合物を5〜60質量部含有し、
    さらに、無機充填剤および芳香族第2級アミン系安定剤を含まないことを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物。
  2. 前記(B1)のハロゲン系難燃剤が臭素系難燃剤であり、アンチモン系難燃助剤が三酸化アンチモンである請求項1に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
  3. 前記(B3)水和金属化合物が水酸化アルミニウムである請求項1に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
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