JP6650288B2 - 成形品 - Google Patents

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本発明は、ポリアミド樹脂部材と金属部材を有する成形品に関する。特に、ポリアミド樹脂部材と金属部材が接着剤によって貼り合わされた成形品に関する。
従来から、金属部材と樹脂部材などの異種の部材を接着剤で貼り合わせることや、樹脂部材同士であって、異なる種類の樹脂からなる樹脂部材同士を接着剤で貼り合わせることが行われている(特許文献1〜4)。
特開2010−194908号公報 特開2009−155402号公報 特許第4714948号公報 特開2008−7584号公報
しかしながら、上述のような異なる材質からなる部材同士を、接着剤を用いて貼り合わせる場合、接着性が劣る場合がある。これは、接着剤によって、接着に適した材質が異なっており、ある一つの部材との接着性に優れた接着剤が、他の異なる材質からなる部材との接着性に劣る場合があるためである。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、ポリアミド樹脂部材と金属部材を、接着剤を用いて貼り合わせてなる成形品であって、ポリアミド樹脂部材と金属部材の接着性に優れた成形品を提供することを目的とする。
上記課題のもと、本発明者が鋭意検討を行った結果、ポリアミド樹脂部材を構成するポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度および末端カルボキシル基濃度を所定の範囲とし、かつ、接着剤として、マレイン酸および無水マレイン酸の少なくとも一方がグラフト変性されているポリオレフィン系またはポリエーテル系エラストマーを用いることにより、ポリアミド樹脂部材と金属部材の接着性を向上させることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、下記手段<1>により、好ましくは<2>〜<7>により、上記課題を解決するに至った。
<1>ポリアミド樹脂部材と、前記ポリアミド樹脂部材と接している接着剤層と、前記接着剤層と接している金属部材を有し、前記ポリアミド樹脂部材は、末端アミノ基濃度が10〜100μ当量/gであり、末端カルボキシル基濃度が50〜200μ当量/gであるポリアミド樹脂を含み、
前記接着剤層は、ポリオレフィン系エラストマーおよびポリエーテル系エラストマーから選択されるエラストマーの少なくとも1種を含み、前記エラストマーは、マレイン酸および無水マレイン酸の少なくとも一方がグラフト変性されている、成形品。
<2>前記ポリアミド樹脂の、末端アミノ基濃度および末端カルボキシル基濃度の比である、末端アミノ基濃度/末端カルボキシル基濃度が0.8以下である、<1>に記載の成形品。
<3>前記ポリアミド樹脂が、芳香環を含むポリアミド樹脂である、<1>または<2>に記載の成形品。
<4>前記ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂である、<1>または<2>に記載の成形品。
<5>前記ポリアミド樹脂の融点が280℃以下である、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の成形品。
<6>前記金属部材が、アルミを含む、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の成形品。
<7>前記成形品が、カメラ部品である、<1>〜<6>のいずれか1つに記載の成形品。
本発明により、ポリアミド樹脂部材と金属部材の接着性に優れた成形品の提供が可能になった。
実施例における引張破壊応力の測定方法を示す概略図である。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本発明の成形品は、ポリアミド樹脂部材と、前記ポリアミド樹脂部材と接している接着剤層と、前記接着剤層と接している金属部材を有し、前記ポリアミド樹脂部材は、末端アミノ基濃度が10〜100μ当量/gであり、末端カルボキシル基濃度が50〜200μ当量/gであるポリアミド樹脂を含み、前記接着剤層は、ポリオレフィン系エラストマーおよびポリエーテル系エラストマーから選択されるエラストマーの少なくとも1種を含み、前記エラストマーは、マレイン酸および無水マレイン酸の少なくとも一方がグラフト変性されていることを特徴とする。このような構成とすることにより、ポリアミド樹脂部材と金属部材の接着性に優れた成形品が得られる。
<ポリアミド樹脂部材>
本発明で用いるポリアミド樹脂部材は、所定のポリアミド樹脂を含む。より具体的には、本発明のポリアミド樹脂部材は、ポリアミド樹脂、または、ポリアミド樹脂と添加剤を含むポリアミド樹脂組成物から形成される部材である。本発明におけるポリアミド樹脂部材は、好ましくは、その30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上がポリアミド樹脂で構成される。上限は特に定めるものではなく100質量%であってもよい。また、ポリアミド樹脂にガラス繊維を配合する態様では、ポリアミド樹脂とガラス繊維の合計がポリアミド樹脂部材の90質量%以上である態様が好ましい。
ポリアミド樹脂部材は、ポリアミド樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよく、2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<ポリアミド樹脂>>
本発明で用いるポリアミド樹脂は、末端アミノ基濃度が10〜100μ当量/gであり、末端カルボキシル基濃度が50〜200μ当量/gである。
末端アミノ基濃度は、好ましくは10〜100μ当量/gであり、より好ましくは15〜70μ当量/gであり、さらに好ましくは20〜50μ当量/gである。末端カルボキシル基濃度は、好ましくは50〜200μ当量/gであり、より好ましくは60〜170μ当量/gであり、さらに好ましくは70〜150μ当量/gである。
ポリアミド樹脂の末端基濃度を上記下限値以上とすることにより、接着時に、溶融したポリアミド樹脂の親和性が高くなり、接着剤が有するマレイン酸基および無水マレイン酸基とポリアミド樹脂の末端基が反応しやすくなり、接着性が向上する傾向にある。一方、ポリアミド樹脂の末端基濃度を上記上限値以下とすることにより、機械強度と接着性のバランスが採れた成形品を得ることができる。
本発明で用いるポリアミド樹脂は、末端アミノ基濃度および末端カルボキシル基濃度の比である、末端アミノ基濃度/末端カルボキシル基濃度が0.8以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましく、さらに好ましくは0.6以下、特に好ましくは0.5以下である。このような範囲とすることにより、ポリアミド樹脂がカルボキシル基リッチとなる。この結果、驚くべきことに、ポリアミド樹脂部材と接着剤の接着性が向上する。下限値については、特に定めるものではないが、例えば、0.3以上とすることができる。
末端アミノ基濃度は、ポリアミド樹脂0.5gを30mlのフェノール/メタノール(4:1)混合溶液に20〜30℃で攪拌溶解し、0.01Nの塩酸で滴定して測定することができる。また、末端カルボキシル基濃度は、ポリアミド樹脂0.1gを30mlのベンジルアルコールに200℃で溶解し、160℃〜165℃の範囲でフェノールレッド溶液を0.1ml加える。その溶液を0.132gのKOHをベンジルアルコール200mlに溶解させた滴定液(KOH濃度として0.01mol/l)で滴定を行い、色の変化が黄〜赤となり色の変化がなくなった時点を終点とすることで算出することができる。
本発明で用いるポリアミド樹脂は、その種類については、特に定めるものではなく、広く公知のポリアミド樹脂を採用できる。
具体的には、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ポリアミド6I)、ポリアミド66/6T、ポリアミド9T、ポリアミド9MT、ポリアミド6I/6T、XD系ポリアミドなどを広く用いることができる。
本発明で用いるポリアミド樹脂は、芳香環(好ましくはフェニレン環)を含むポリアミド樹脂であることが好ましく、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上、または、ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が芳香環を含む化合物に由来することがより好ましく、XD系ポリアミドであることがさらに好ましい。XD系ポリアミドは、金属との密着性が本来的に高いポリアミド樹脂である。そのため、接着剤層にムラができ、ポリアミド樹脂部材と金属部材が直接に接する領域があっても、高い接着性を維持しやすい。結果として、接着剤層の厚さを薄くすることが可能になる。
ここで、XD系ポリアミドとは、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂をいう。
XD系ポリアミドは、ジアミン由来の構成単位の、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上がキシリレンジアミン(好ましくは、メタキシリレンジアミンおよび/またはパラキシリレンジアミン)に由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%、特に好ましくは95モル%以上が、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する。
XD系ポリアミドにおける一実施形態として、ジアミン由来の構成単位が、メタキシリレンジアミン10〜90モル%とパラキシリレンジアミン90〜10モル%からなるキシリレンジアミンに由来することが例示され、メタキシリレンジアミン30〜70モル%とパラキシリレンジアミン70〜30モル%からなるキシリレンジアミンに由来することが好ましく例示される。
XD系ポリアミドの原料ジアミン成分として用いることが出来るメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
ジアミン成分として、キシリレンジアミン以外のジアミンを用いる場合は、ジアミン由来の構成単位の50モル%未満であり、30モル%以下であることが好ましく、より好ましくは1〜25モル%、特に好ましくは5〜20モル%の割合で用いる。
XD系ポリアミドの原料ジカルボン酸成分として用いるのに好ましい炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示でき、1種または2種以上を混合して使用できる。これらの中でもXD系ポリアミドの融点が成形加工するのに適切な範囲となることから、アジピン酸またはセバシン酸がより好ましい。
上記炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸といった異性体等のナフタレンジカルボン酸等を例示することができ、1種又は2種以上を混合して使用できる。
ジカルボン酸成分として、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸を用いる場合は、成形加工性、バリア性の点から、テレフタル酸、イソフタル酸を用いることが好ましい。テレフタル酸、イソフタル酸の割合は、好ましくはジカルボン酸構成単位の30モル%以下であり、より好ましくは1〜30モル%、特に好ましくは5〜20モル%の範囲である。
さらに、ジアミン成分、ジカルボン酸成分以外にも、XD系ポリアミドを構成する成分として、本発明の効果を損なわない範囲でε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類も共重合成分として使用できる。
本発明で用いるポリアミド樹脂は、数平均分子量(Mn)が6,000〜30,000であることが好ましく、より好ましくは8,000〜28,000であり、さらに好ましくは9,000〜26,000であり、よりさらに好ましくは10,000〜24,000であり、特に好ましくは11,000〜22,000である。このような範囲であると、耐熱性、弾性率、寸法安定性、成形加工性がより良好となる。
なお、ここでいう数平均分子量(Mn)とは、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度[NH2](μ当量/g)と末端カルボキシル基濃度[COOH](μ当量/g)から、次式で算出される。
数平均分子量(Mn)=2,000,000/([COOH]+[NH2])
本発明で用いるポリアミド樹脂は、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn))が、好ましくは1.8〜3.1である。分子量分布は、より好ましくは1.9〜3.0、さらに好ましくは2.0〜2.9である。分子量分布をこのような範囲とすることにより、機械物性に優れた立体構造物が得られやすい傾向にある。
ポリアミド樹脂の分子量分布は、例えば、重合時に使用する重合開始剤や触媒の種類および量、なびに反応温度、圧力および時間等の重合反応条件などを適宜選択することにより調整できる。また、異なる重合条件によって得られた平均分子量の異なる複数種のポリアミド樹脂を混合したり、重合後のポリアミド樹脂を分別沈殿させることにより調整することもできる。
分子量分布は、GPC測定により求めることができ、具体的には、装置として東ソー社製「HLC−8320GPC」、カラムとして、東ソー社製「TSK gel Super HM−H」2本を使用し、溶離液トリフルオロ酢酸ナトリウム濃度10mmol/lのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、樹脂濃度0.02質量%、カラム温度40℃、流速0.3ml/分、屈折率検出器(RI)の条件で測定し、標準ポリメチルメタクリレート換算の値として求めることができる。また、検量線は6水準のPMMAをHFIPに溶解させて測定し作成する。
本発明においては、ポリアミド樹脂の融点は、310℃以下であることが好ましく、300℃以下であることがより好ましく、280℃以下であることがさらに好ましく、260℃以下であることが一層好ましく、250℃以下であることがより一層好ましい。ポリアミド樹脂の融点を低くすることにより、接着剤の融点または軟化点との差を小さくすることができる。この結果、接着時に、ポリアミド樹脂部材と接着剤の溶融・軟化の程度を概ね同じレベルとすることができ、接着性をより向上させることができる。特に、接着剤の融点・軟化点を考慮するとポリアミド樹脂の融点を280℃以下とすることが有益である。
ポリアミド樹脂の融点の下限値としては、150℃以上が好ましく、180℃以上がより好ましい。
尚、本発明で用いるポリアミド樹脂の融点が2点以上ある場合、低い方の融点をもって、ポリアミド樹脂の融点とする。また、ポリアミド樹脂を2種以上併用する場合、配合量が最も多いポリアミド樹脂の融点を持って、ポリアミド樹脂の融点とする。
また、ポリアミド樹脂のガラス転移点は、50〜100℃が好ましく、55〜100℃がより好ましく、特に好ましくは60〜100℃である。この範囲であると、接着剤との接着性がより良好となる傾向にある。
なお、本発明における融点とは、DSC(示差走査熱量測定)法により観測される昇温時の吸熱ピークのピークトップの温度をいう。ガラス転移点とは、試料を一度加熱溶融させ熱履歴による結晶性への影響をなくした後、再度昇温して測定されるガラス転移点をいう。
測定には、DSC測定器を用い、試料量は約1mgとし、雰囲気ガスとしては窒素を30ml/分で流し、昇温速度は10℃/分の条件で室温から予想される融点以上の温度まで加熱し溶融させた際に観測される吸熱ピークのピークトップの温度から融点を求めることができる。次いで、溶融したポリアミド樹脂を、ドライアイスで急冷し、10℃/分の速度で融点以上の温度まで再度昇温し、ガラス転移点、融点を求めることができる。DSC測定器としては、島津製作所(SHIMADZU CORPORATION)社製、DSC−60を用いることができる。
<<ガラス繊維>>
本発明で用いるポリアミド樹脂組成物は、ガラス繊維を含むことが好ましい。
ガラス繊維は、Aガラス、Cガラス、Eガラス、Sガラスなどのガラス組成からなり、特に、Eガラス(無アルカリガラス)が好ましい。
本発明で用いるポリアミド樹脂組成物に用いるガラス繊維は、単繊維または単繊維を複数本撚り合わせたものであってもよい。
ガラス繊維の形態は、単繊維や複数本撚り合わせたものを連続的に巻き取った「ガラスロービング」、長さ1〜10mmに切りそろえた「チョップドストランド」、長さ10〜500μm程度に粉砕した「ミルドファイバー」などのいずれであってもよい。かかるガラス繊維としては、旭ファイバーグラス社より、「グラスロンチョップドストランド」や「グラスロンミルドファイバー」の商品名で市販されており、容易に入手可能である。ガラス繊維は、形態が異なるものを併用することもできる。
また、本発明ではガラス繊維として、異形断面形状を有するものも好ましい。この異形断面形状とは、繊維の長さ方向に直角な断面の長径をD2、短径をD1とするときの長径/短径比(D2/D1)で示される扁平率が、例えば、1.5〜10であり、中でも2.5〜10、更には2.5〜8、特に2.5〜5であることが好ましい。かかる扁平ガラスについては、特開2011−195820号公報の段落番号0065〜0072の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
本発明におけるガラス繊維は、ガラスビーズであってもよい。ガラスビーズとは、外径10〜100μmの球状のものであり、例えば、ポッターズ・バロティーニ社より、商品名「EGB731」として市販されており、容易に入手可能である。また、ガラスフレークとは、厚さ1〜20μm、一辺の長さが0.05〜1mmのりん片状のものであり、例えば、日本板硝子社より、「フレカ」の商品名で市販されており、容易に入手可能である。
本発明で用いるガラス繊維は、集束剤で集束されていてもよい。
本発明で用いるポリアミド樹脂組成物におけるガラス繊維の含有量は、ポリアミド樹脂組成物のガラス繊維40質量%以上70質量%以下であることが好ましく、ポリアミド樹脂組成物の45質量%以上であることが好ましい。上限値については、65質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。本発明で用いるポリアミド樹脂組成物は、ガラス繊維を1種類のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<離型剤>>
本発明で用いるポリアミド樹脂組成物は、離型剤を含んでいてもよい。離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸の塩、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は炭素数6〜36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラトリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。また、脂肪族カルボン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩が例示される。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族又は脂環式飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、脂肪族炭化水素の数平均分子量は好ましくは5,000以下である。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
本発明で用いるポリアミド樹脂組成物が離型剤を含む場合、離型剤の含有量は、ポリアミド樹脂組成物に対し、0.001〜2質量%であることが好ましく、0.01〜1質量%であることがより好ましい。離型剤は、1種類のみでもよいし、2種以上含んでいても良い。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<他の添加剤>>
本発明で用いるポリアミド樹脂組成物は、上記ポリアミド樹脂に加え、上記ガラス繊維以外の粉末状、繊維状、粒状及び板状等の各種有機またはフィラー、エラストマー、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、難燃剤、耐加水分解性改良剤、耐候安定剤、帯電防止剤、核剤、艶消剤、染顔料、着色防止剤、ゲル化防止剤等を配合することができる。
本発明で用いるポリアミド樹脂組成物は、例えば、ポリアミド樹脂と各種添加剤をV型ブレンダー等の混合手段を用いて混合し、一括ブレンド品を調製した後、ベント付き押出機で溶融混練してペレット化する方法が挙げられる。ガラス繊維を配合する場合には、二段階練込法として、予め、ガラス繊維以外の成分を、十分混合後、ベント付き押出機で溶融混練りしてペレットを製造した後、そのペレットとガラス繊維を混合後、ベント付き押出機で溶融混練りする方法が挙げられる。
押出機の混練ゾーンのスクリュー構成は、混練を促進するエレメントを上流側に、昇圧能力のあるエレメントを下流側に配置されることが好ましい。
混練を促進するエレメントとしては、順送りニーディングディスクエレメント、直交ニーディングディスクエレメント、幅広ニーディングディスクエレメント、および順送りミキシングスクリューエレメント等が挙げられる。
溶融混練に際しての加熱温度は、例えば、180〜360℃の範囲から適宜選ぶことができる。温度が高すぎると黄変しやすく、また、強度低下の原因になる場合がある。それ故、剪断発熱等に考慮したスクリュー構成の選定が望ましい。混練り時や、後行程の成形時の分解を抑制する為、酸化防止剤や熱安定剤の使用が望ましい。
<<ポリアミド樹脂部材の製造方法>>
本発明で用いるポリアミド樹脂部材は、ポリアミド樹脂、または、上記ポリアミド樹脂組成物を成形してなる。ポリアミド樹脂部材の製造方法は、特に限定されず、熱可塑性樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法などが挙げられる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることもできる。
<接着剤層>
本発明で用いる接着剤層は、接着剤として、ポリオレフィン系エラストマーおよびポリエーテル系エラストマーから選択されるエラストマーの少なくとも1種を含む。前記エラストマーは、マレイン酸および無水マレイン酸の少なくとも一方がグラフト変性されている。このような接着剤を用いることにより、ポリアミド樹脂部材および金属部材との接着性を向上させることができる。本発明における接着剤層は、接着剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
ここで、本発明における、マレイン酸および無水マレイン酸の少なくとも一方がグラフト変性されているエラストマーとは、ポリオレフィンおよびポリエーテルの側鎖にマレイン酸および無水マレイン酸の少なくとも一方がグラフト重合したものである。
本発明で用いる接着剤は、ポリオレフィン系エラストマーであって、マレイン酸および無水マレイン酸の少なくとも一方がグラフト変性されている接着剤がより好ましい。
本発明で用いる接着剤が融点を有する場合、その融点は、130〜200℃が好ましく、140〜185℃がより好ましい。
本発明で用いる接着剤としては、三菱化学社製、プリマロイ(登録商標)AP GQ331やモディック(登録商標)P553Aが挙げられる。
本発明で用いる接着剤は、融点を有する場合、120〜200℃が好ましく、130〜190℃がより好ましい。また、本発明で用いる接着剤は、ポリアミド樹脂部材を構成するポリアミド樹脂の融点と接着剤の融点差が、100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、ポリアミド樹脂部材との接着性がより向上する傾向にある。下限値は特に定めるものではないが、0℃であってもよい。
本発明で用いる接着剤は、本発明の成形品を構成するポリアミド樹脂部材と同じ材質からなるポリアミド樹脂部材を2つ対向させ、3cm×3cmの部分が重なるように、厚さ50μmの厚さの接着剤層で挟んで溶着したときの、ISO527に従った引張破壊応力が3000N以上(3.3MPa以上)であることが好ましく、3500N以上(3.9MPa以上)であることがより好ましい。上記引張破壊応力の上限値については特に定めるものではないが、7000N以下(7.8MPa以下)であっても十分に実用レベルである。
本発明で用いる接着剤は、本発明の成形品を構成する金属部材と同じ材質からなる金属部材を2つ対向させ、3cm×3cmの部分が重なるように、厚さ50μmの厚さの接着剤層で挟んで溶着したときの引張破壊応力が7000N以上(7.8MPa以上)であることが好ましく、8000N以上(8.9MPa以上)であることがより好ましい。上記引張破壊応力の上限値については特に定めるものではないが、15000N以下(16.7MPa以下)であっても十分に実用レベルである。
本発明で用いる接着剤は、本発明の成形品を構成するポリアミド樹脂部材および金属部材と、それぞれ、同じ材質からなるポリアミド樹脂部材と金属部材を対向させ、3cm×3cmの部分が重なるように、厚さ50μmの厚さの接着剤層で挟んで溶着したときの、引張破壊応力が3500N以上(3.9MPa以上)であることが好ましく、4000N以上(4.4MPa以上)であることがより好ましい。上記引張破壊応力の上限値については特に定めるものではないが、7000N以上(7.8MPa以上)であっても十分に実用レベルである。
これらの引張破壊応力の測定方法の詳細は、後述する実施例に記載の引張破壊応力の測定方法に従う。
本発明における接着剤層は、上記エラストマー(接着剤)を主成分とするものであり、通常は、接着剤層の90質量%以上を占める。さらに、本発明における接着剤層には、接着剤に加え、可塑剤、粘着付与剤、熱重合防止剤、紫外線吸収剤、ハレーション防止剤、光安定剤、レーザー吸収剤等の添加剤を含んでいてもよい。また、本発明における接着剤層が、上記添加剤を含む場合、それぞれ、1種のみでも、2種以上含んでいてもよい。
可塑剤としては、ナフテン油、パラフィン油等の炭化水素油、液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエンの変性物、液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、液状スチレン−ブタジエン共重合体、数平均分子量2,000以下のポリスチレン、セバチン酸エステル、フタル酸エステル等が挙げられる。
粘着付与剤としては、クマロン系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン誘導体、テレピン系粘着付与剤及び水素添加炭化水素樹脂等が挙げられる。
レーザー吸収剤は、接着剤層のレーザー吸収性を向上させる目的で用いられ、例えば、カーボンブラックや複合酸化物系顔料等の無機顔料;フタロシアニン系顔料、レーキ顔料、多環式系顔料等の有機顔料や、使用するレーザー光の波長に応じた各種染料等の公知のものを適宜使用できる。
接着剤層の厚さは、より高い接着性を実現する観点から、好ましくは1〜500μm、より好ましくは10〜200μm、さらに好ましく20〜100μmであり、特に好ましくは20〜80μmである。接着剤層の厚さが500μm以下であると、溶着時のはみ出し部分が少なくなり、金属と樹脂の線膨張係数による違いから生じる寸法ズレの問題を緩和することができ、安定した溶融接着性が得られる。また、接着剤層は、すべてが均一な層である必要はなく、接着剤層の一部がポリアミド樹脂部材と接し、接着剤層の一部が金属部材と接していればよい。
接着剤の一実施形態として、接着フィルムが例示される。接着フィルムは、ポリアミド樹脂部材と金属部材の間に挟んで溶着して接着する。これらの詳細については、後述する。
<金属部材>
本発明で用いる金属部材は、金属を含む部材であり、接着剤層と接する面の80%以上、好ましくは90%以上が金属からなる。金属は1種であっても、2種以上であってもよい。
金属部材を構成する金属は、鉄、アルミ、ステンレス鋼およびマグネシウム合金から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、鉄および/またはアルミを含むことがより好ましく、鉄を含むことがさらに好ましい。鉄を採用することにより、ポリアミド樹脂部材との接着性により優れる傾向にある。ここで、ステンレス鋼とは、鉄を主成分とし、クロムおよび/またはニッケルを含む合金である。また、マグネシウム合金に配合される添加元素としては、アルミおよび/または亜鉛が例示される。
本発明で用いる金属部材は、表面が粗面化処理されていてもよいが、粗面化処理されていない金属部材にも適用できる。
<成形品>
本発明における成形品は、ポリアミド樹脂部材と、前記ポリアミド樹脂部材と接している接着剤層と、前記接着剤層と接している金属部材を有する成形品である限り、その用途等は特に定めるものではない。通常は、本発明の成形品は、ポリアミド樹脂部材の表面の一部が接着剤層と接しており、かつ、金属部材の表面の一部が接着剤層と接しており、これによって、ポリアミド樹脂部材と金属部材が貼り合わされている。
本発明の一実施形態として、ポリアミド樹脂部材および金属部材の接着部位の内、最も薄い部分の厚さが、それぞれ独立に、0.05〜3mmであり(好ましくは、0.5〜2.5mmであり)、接着剤層の厚さが上述した範囲である成形品が挙げられる。本発明では、このように薄い部材や小さい部材を効率的に接着できる点で価値が高い。
成形品の用途としては、電子電気部品、車両部品等、ポリアミド樹脂および金属を用いる各種成形品に用いられる。
また、成形品は、最終製品である必要はなく、部品等であってもよい。具体的には、カメラ部品などが挙げられる。本発明では特に、カメラ部品としては、携帯カメラ部品や車載カメラ部品などが例示される。
<成形品の製造方法>
本発明の成形品は、金属部材またはポリアミド樹脂部材の表面に、接着剤を適用し溶着して製造することができる。
本発明における溶着とは、接着剤に熱、超音波等を付与することによって、接着剤の表面の一部または全部を溶融して、他部材と接着することをいう。接着剤は溶融し、ポリアミド樹脂部材側および金属部材側の表面と結合して接着する。本発明では、ポリアミド樹脂部材の表面の一部または全部も溶融して、接着剤と溶着することが好ましい。このような構成とすると、ポリアミド樹脂部材の表層部のポリアミド樹脂と接着剤が混ざり合い、両者の接着面積が大きくなり、ポリアミド樹脂部材と接着剤層の接着性がより向上する。
本発明の溶着方法としては、熱プレス溶着、超音波溶着、振動溶着、レーザー溶着およびスピン溶着が好ましく、熱プレス溶着およびレーザー溶着がより好ましく、レーザー溶着がさらに好ましい。すなわち、本発明の成形品の製造方法として、金属部材またはポリアミド樹脂部材の表面に、接着剤を適用し、ポリアミド樹脂部材側から、レーザーを照射して、金属部材とポリアミド樹脂部材を接着することを含む、成形品の製造方法が挙げられる。レーザー溶着では、接着剤層の表面に加え、ポリアミド樹脂部材の、接着剤層との界面も溶融させることができるため、接着性が向上する傾向にある。
以下に、具体的な接着方法の一例について述べる。本発明がこれらの構成に限定されるものではないことは言うまでもない。
本実施形態の接着方法は、レーザー光に対して透過性を有するポリアミド樹脂部材と、前記ポリアミド樹脂部材に対向して位置する金属部材と、両部材の間に位置する接着剤層とを含む成形品の製造方法であって、少なくとも、前記ポリアミド樹脂部材側からレーザー光を照射することによって、接着剤層のうち、ポリアミド樹脂部材または金属部材と接着剤層との接着部を溶融させる工程を含む方法である。
照射するレーザー光の種類としては、特に限定されず、例えば、ガスレーザー、固体レーザー、半導体レーザー等の公知のレーザー光を用いることができ、最適な波長及び出力のものを選択して用いることできる。また、レーザー光源は1つの波長からなるものに限らず、2以上の波長が混合されたものであってもよい。
また、接着範囲がレーザー光の照射径より広い場合、必要に応じてレーザー光源またはポリアミド樹脂部材と、前記ポリアミド樹脂部材に対向して位置する金属部材と、両部材の間に位置する接着剤層を含む被照射体を移動させながら、レーザー光の照射を行ってもよい。
ポリアミド樹脂部材はレーザー光に対して透過性を有しているので、ポリアミド樹脂部材側から照射されたレーザー光の少なくとも一部はポリアミド樹脂部材を透過して接着剤層に到達する。接着剤層がレーザー光を吸収し、接着剤層が加熱溶融される。このとき、接着剤層の熱がポリアミド樹脂部材にも伝わって、ポリアミド樹脂も溶融する。レーザー光の照射が終了すると、接着剤層およびポリアミド樹脂部材が冷却されてそれぞれが再度固化することにより、接着剤層とポリアミド樹脂部材が溶着される。
また、レーザー光の照射により加熱溶融された接着剤層は金属部材に融着し、レーザー光の照射終了後冷却されて再度固化することにより、接着剤層と金属部材が溶着される。このように、接着剤層と、ポリアミド樹脂部材および金属部材がそれぞれ接着界面において溶着されることにより、ポリアミド樹脂部材と金属部材の接着がなされる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
<接着剤>
接着剤1 モディックP553A、三菱化学社製、ポリオレフィン系エラストマー、50μmの厚さのフィルム、融点143℃
接着剤2 プリマロイAP GQ331、三菱化学社製、ポリエステル系エラストマー、50μmの厚さのフィルム、融点180℃
接着剤3 ラバロンQE133AT、三菱化学社製、スチレン系エラストマー、50μmの厚さのフィルム
<実施例1および2、ならびに、比較例1>
<<ポリアミド樹脂1の製造方法>>
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロートおよび窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、精秤したセバシン酸12.135kg(60mol)、次亜リン酸カルシウム(Ca(PH222)2.43g(ポリアミド樹脂中のリン原子濃度として50ppm)、酢酸ナトリウム1.25gを入れ、十分に窒素置換した後、窒素で0.3MPaに加圧、撹拌しながら190℃まで加熱しセバシン酸を均一に溶解した。
これにメタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの7:3の混合ジアミン8,172kg(60mol)を撹拌下に滴下し、圧力を0.5MPaに制御した。この間、生成する縮合水と共に所定量の未反応混合ジアミンを分縮器および冷却器を通して系外へ除きながら系内を250〜260℃まで連続的に昇温した。分縮器の温度は145〜147℃の範囲に制御した。混合キシリレンジアミンの滴下終了後、内温を250〜260℃として溶融重合反応を継続した。ジアミン滴下終了後、0.4MPa/時間の速度で降圧し、60分間で常圧まで降圧した。その後、0.002MPa/分の速度で降圧し、20分間で0.08MPaまで降圧した。その後、攪拌装置のトルクが所定の値となるまで、0.08MPaで反応を継続した。0.08MPaでの反応時間は10分であった。
その後、系内を窒素で加圧し、ストランドダイからポリマーを取り出して、これをペレット化し、約20kgのポリアミド樹脂を得た。得られたペレットを150℃にて7時間真空乾燥した。
この方法で作られたポリアミドの末端アミノ基濃度は31.0μ当量/g、末端カルボキシル基濃度は97.0μ当量/g、末端アミノ基濃度/末端カルボキシル基濃度=0.32であった。
<<コンパウンド>>
下記表1に示す組成となるように、各成分をそれぞれ秤量し、ドライブレンドした後、二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)のスクリュー根元から2軸スクリュー式カセットウェイングフィーダ(クボタ社製、CE−W−1−MP)を用いて投入し、溶融混練し、ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。押出機の温度設定は、280℃とした。
ポリアミド樹脂組成物ペレットの原料組成
Figure 0006650288
<<成形品の製造>>
上記で得られたポリアミド樹脂組成物ペレットを、120℃で5時間乾燥した後、射出成形機(住友重機械工業社製「型式:SE−50DU」)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度110℃の条件で、幅100mm、長さ100mm、厚さ2.0mmのポリアミド樹脂部材を製造し、幅30mm、長さ100mmのサイズに切断して、ポリアミド樹脂部材1を得た。
次いで、図1に示すように、上記ポリアミド樹脂部材1と幅30mm、長さ100mm、厚さ1.5mmのアルミからなる金属部材2とを、上記ポリアミド樹脂部材1および金属部材2のうち、30mm×30mmの部分が重なるように、表2に示す種類の50μmの厚さの接着フィルム3で挟み、190℃でホットプレスして、溶着した。
<<引張破壊応力の測定>>
図1に示すように、得られた成形品のポリアミド樹脂部材1と金属部材2を治具4で固定し、ISO527に従って引張破壊応力を測定した。図1中の矢印の方向が引張方向である。得られた成形品について、結果を下記表2に示す。
さらに、実施例1および2において、それぞれ、金属部材2をポリアミド樹脂部材1に置き換え、他は同様に行って、引張破壊応力を測定した。また、実施例1および2において、それぞれ、ポリアミド樹脂部材1を金属部材2に置き換え、他は同様に行って、引張破壊応力を測定した。
Figure 0006650288
上記結果から明らかなとおり、本発明の成形品は、ポリアミド樹脂部材と金属部材の引張破壊応力が高く、接着性が高いことが分かった(実施例1および2)。一方で、他の接着剤を用いた場合、溶着しなかった(比較例1)。
1 ポリアミド樹脂部材
2 金属部材
3 接着フィルム
4 治具

Claims (6)

  1. ポリアミド樹脂部材と、前記ポリアミド樹脂部材と接している接着剤層と、前記接着剤層と接している金属部材を有し、
    前記ポリアミド樹脂部材は、末端アミノ基濃度が10〜100μ当量/gであり、末端カルボキシル基濃度が50〜200μ当量/gであり、かつ、末端アミノ基濃度および末端カルボキシル基濃度の比である、末端アミノ基濃度/末端カルボキシル基濃度が0.32以下であるポリアミド樹脂を含み、
    前記接着剤層は、ポリオレフィン系エラストマーおよびポリエステル系エラストマーから選択されるエラストマーの少なくとも1種を含み、
    前記エラストマーは、マレイン酸および無水マレイン酸の少なくとも一方がグラフト変性されている、成形品。
  2. 前記ポリアミド樹脂が、芳香環を含むポリアミド樹脂である、請求項1に記載の成形品。
  3. 前記ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂である、請求項1に記載の成形品。
  4. 前記ポリアミド樹脂の融点が280℃以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形品。
  5. 前記金属部材が、アルミを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形品。
  6. 前記成形品が、カメラ部品である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の成形品。
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