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Description

本発明は、光学素子の製造方法に関し、特に、小型(例えば、3mm3以下であって、好ましくは1mm3以下)の光学素子の製造方法に関する。
従来から、光ピックアップや光通信などに光学素子が利用されている。図6は、光ピックアップ100の一例を示す概略図である。光源110から出射されたレーザ光が光学素子130の光反射膜を備えた傾斜面130aで反射し、ビームスプリッタ120の偏光分離膜120aを透過した所定の偏光成分が、レンズ140を介して光ディスク150に導かれる。そして、光ディスク150からの反射光は、偏波面が回転した状態となって上記レーザ光とは逆方向に進行し、偏光分離膜120aで反射され、受光素子160にて検出される。
このような光学素子130を効率的に製造する方法として、複数のガラス製平行平板を階段状に積層して積層体を形成し、切断、再積層を繰り返して小さな光学素子を得る方法が提案されている(特許文献1参照)。
特開2006−220774号公報
ところで、上記の光学素子は、光ピックアップの小型化の要求に伴い、ますます小型化が進んでおり、3mm3以下のものが必要となっており、1mm3以下のものも要求されつつある。ここで、特許文献1の方法で1mm3以下の光学素子を作製しようとすると、厚さ1.5mm程度以下の板を使用することになる。その場合、板厚が薄いため貼り合わせたときに撓みが生じ、そこから切り出した光学素子の面精度が悪くなる。また、積層時の仮接着の面積が小さいため切断のストレスに耐えられず、切断中に仮接着が剥がれ、加工が困難となる。
また、小さな光学素子面を研磨して蒸着などによって反射膜などの光学膜を成膜することは困難である。例えば、研磨時に保持する部分を十分にとることができなかったり、蒸着時にマスクしても所望の面以外に蒸着が回り込んでしまったりする。
本発明は、簡素な工程で高精度な小型の光学素子を作製できる光学素子の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明は、仮想面に垂直な第1〜第4面を有し、第1面と第2面が平行であり、第2面と第3面とのなす角がθであり、第4面が第1及び第2面に垂直であり、第3面が鏡面である光学素子の製造方法において、θの角をなす2つの面を有するプリズムの一方の面を加工基準面とし、他方の面が鏡面であり、前記加工基準面の反対側から前記加工基準面に平行な面まで研削して前記第1面を形成する第1工程と、前記加工基準面に垂直で、且つ前記2つの面で形成される稜線に平行な面で切断して前記第4面を形成する第2工程と、前記2つの面を含む切断片を、前記加工基準面及び前記第4面に垂直な面で所定間隔に切断して個々の光学素子を得る第3工程と、を備えたことを特徴とする。
上記の光学素子の製造方法は、前記光学素子の体積が3mm3以下である場合に特に有効な製造方法である。
また上記の光学素子の製造方法において、前記鏡面に予め光学膜が成膜されていることが望ましい。
また、前記第1工程において、前記第1面を鏡面加工してもよい。
また上記の光学素子の製造方法において、例えば、前記プリズムは、底角がθである二等辺三角形を底面とする三角柱であり、
前記加工基準面が、前記二等辺三角形の底辺を含む面であってもよい。
また上記の光学素子の製造方法において、例えば、前記プリズムは、底角がθである二等辺三角形を底面とする三角柱であり、前記第1工程前に、前記プリズムの稜線に平行で、且つ前記二等辺三角形の底辺を含む面に垂直な面で切断して2つの小プリズムを形成する第4工程を備え、前記加工基準面が、前記二等辺三角形の等しい2辺の一方を含む面であってもよい。
本発明によれば、所望の傾斜面と光学面を有する大きなプリズムから切り出すという簡素な工程で、従来加工困難であった小型の光学素子を作製することができる。厳しい面精度が要求される反射面は、大きなプリズムの状態で面精度が出ている側面を加工せずに利用するため、切り出し後も高精度な光学素子を得ることができる。
まず、本発明で最終的に得られる光学素子の形状について説明する。図1(a)は、本発明の光学素子10の斜視図である。光学素子10は、底面10a、10bが台形の直角柱であり、その側面は、台形(底面10a、10b)の上底を含む面(第1面)10cと、台形(底面10a、10b)の下底を含む面(第2面)10dと、第2面10dとθ(0°<θ<90°、例えばθ=45°)の角をなす第3面10eと、第1面10c及び第2面10dに垂直な第4面10fとからなる。
そして、第3面10eは、鏡面加工(研磨)された後、反射膜が成膜されている。この鏡面加工及び成膜は、切断前のプリズムの状態で施される。また、光学素子10の使用形態に応じて第1面10c又は第2面10dが鏡面加工されている場合もある。例えば、第1面10cを鏡面加工したものは、ピックアップの組み立て時に、第1面10cに吸盤を当てて移動させることができ、ピックアップへ組み付けることができる。さらに、鏡面加工により、第1面10cと第3面10eとで形成される稜線が鋭くなるので、ピックアップへの組み付け時にその稜線を画像検出すれば、はっきりと検出でき、高精度な位置決めに利用することができる。また例えば、第2面10dを鏡面加工した場合も同様に、吸盤による移動、稜線の画像検出による高精度な位置決めができる。この鏡面加工は、後述するプリズムを研削した薄板の状態で施される。
なお、光学素子10の底面10a、10b同士は必ずしも平行でなくてもよい。その場合、第1〜第4面10c〜10fは、ある仮想面に垂直となる。
図1(b)は、本発明の他の形態の光学素子11の斜視図である。光学素子11は、光学素子10の角θ部分を面取りして面11aを形成した五角柱である。光学素子11の他の構成は光学素子10と同様である。このような光学素子11によれば、第2面10dに接着剤を塗布して光ピックアップへ固定するような場合に、接着剤がはみ出したとしても面11aで止まり、光学有効面として重要な第3面10eまで回り込むおそれがない。また、輸送時や組み立て時に角θ部分が欠けるおそれもない。
次に、以下の第1及び第2実施形態で使用するプリズム20の形状について説明する。図2は、プリズム20の斜視図である。プリズム20は、底角がθである二等辺三角形を底面20a、20bとする直角柱であり、その側面は、二等辺三角形(底面20、20b)の底辺を含む面20cと、二等辺三角形(底面20、20b)の等しい2辺の一方を含む面20dと、二等辺三角形(底面20、20b)の等しい2辺の他方を含む面20eとからなる。なお、二等辺三角形(底面20、20b)の等しい2辺の長さは、3〜5mmであることが好ましい。
このようなプリズム20は角材から切り出されるのであるが、その際の加工都合上、面20d、20eよりも面20cの方が面精度が高くなる。したがって、プリズム20から個々の光学素子を切り出す際、高い面精度が要求される面に面20cを利用することが望ましい。
〈第1実施形態〉
本実施形態では上記プリズム20を用いて上記光学素子10又は11を得る。本実施形態で用いるプリズム20は、予め、面20d、20eを鏡面加工(研磨)した後、反射膜を成膜しておく。
次に、プリズム20から個々の光学素子を切り出す方法について説明する。図3は、プリズム20を加工台30に載置した状態の正面図である。加工台30の上面30aがプリズム20の加工基準面を固定する面となる。プリズム20の加工基準面を加工台30aの上面30aに押さえつけるようにしてクランプなどの固定手段(不図示)で固定すればよい。本実施形態におけるプリズム20の加工基準面は面20cとする。
図3(a)に示すように、プリズム20を加工台30に固定した後、まず、加工基準面(面20c)の反対側の稜線から加工基準面(面20c)に平行な所定位置の面Aまで研削して薄板状にし、さらに、面Aを鏡面加工(研磨)する(第1工程)。この面Aが光学素子10、11の第1面10cに相当する。なお、面Aの鏡面加工は必ずしも必要ではない。
次に、図3(b)に示すように、薄板21を加工基準面(面20c)に垂直で、且つ面20c及び面20dで形成される稜線に平行な面Bで切断する(第2工程)。この面Bが光学素子10、11の第4面10fに相当する。これにより、面A、面B、面20c、面20dを含む棒状の切断片40が得られる。
図4は、切断片40の斜視図である。この切断片40を、図4の一点鎖線で示すように、加工基準面(20c)及び面Bに垂直な面で所定間隔に切断する(第3工程)。これにより、個々の光学素子10が得られる。
なお、図1(b)の光学素子11を作製する場合は、第3工程の前に、面20cと面20dとで形成される稜線を面取り(切断)して面11aを形成しておけばよい。
続いて、図3(b)に示すように、薄板21のもう一方の側も同様に加工する。つまり、加工基準面(20c)に垂直で、且つ面20c及び面20eで形成される稜線に平行な面Cで切断する(第2工程)。この面Cが光学素子10、11の第4面10fに相当する。これにより、面A、面C、面20c、面20eを含む棒状の切断片41が得られる。
この切断片41を、図4に準じ、加工基準面(20c)及び面Cに垂直な面で所定間隔に切断する(第3工程)。これにより、個々の光学素子10が得られる。
なお、図1(b)の光学素子11を作製する場合は、第3工程の前に、面20cと面20eとで形成される稜線を面取り(切断)して面11aを形成しておけばよい。
このように、本実施形態によれば、加工基準面を変更することなく2つの切断片40、41を得ることができるので、加工工程の効率がよい。また、本実施形態の加工法によれば、光学素子10、11の反射膜が施された第3面10eはプリズム20の面20d、20eを加工することなく利用しているので、小さな切断片40、41や光学素子10、11の状態になってから成膜する必要がない。また、光学素子10、11の第1面10cに鏡面加工が必要な場合は、第1工程で得た薄板21の状態で鏡面加工するので、小さな切断片40、41や光学素子10、11の状態になってから成膜する必要がない。したがって、簡素な工程で高精度な小型(例えば、3mm3以下であって、好ましくは1mm3以下)の光学素子10、11を作製することができる。
〈第2実施形態〉
本実施形態でも第1実施形態と同様に、上記プリズム20を用いて上記光学素子10又は11を得る。第1実施形態と異なる点は、本実施形態で用いるプリズム20は、予め、面20cを鏡面加工(研磨)した後、反射膜を成膜しておく点である。
次に、プリズム20から個々の光学素子を切り出す方法について説明する。図5(a)は、プリズム20を加工台30に載置した状態の正面図である。プリズム20の面20cを加工台30aの上面30aに押さえつけるようにしてクランプなどの固定手段(不図示)で固定すればよい。本実施形態におけるプリズム20の加工基準面は、分割した後の面20d、20eとする。
図5(a)に示すように、プリズム20を加工台30に固定した後、まず、プリズム20の稜線に平行で、且つ二等辺三角形の底辺を含む面20cに垂直な面Dで切断して2つの小プリズム22、23を形成する(第4工程)。
次に、図5(b)に示すように、加工基準面を面20d、20eとする。つまり、図5(a)の小プリズム22を紙面に垂直な回転軸で右へ回転させて面20dが加工台30の上面30aに接するようにし、一方、小プリズム23を紙面に垂直な回転軸で左へ回転させて面20eが加工台30の上面30aに接するようにする。
そして、小プリズム22を加工基準面(面20d)の反対側の稜線から加工基準面(面20d)に平行な所定位置の面Eまで研削して薄板状にし、さらに、面Eを鏡面加工(研磨)する(第1工程)。この面Eが光学素子10、11の第1面10cに相当する。なお、面Eの鏡面加工は必ずしも必要ではない。
次に、図5(c)に示すように、薄板24を加工基準面(面20d)に垂直で、且つ面20c及び面20dで形成される稜線に平行な面Fで切断する(第2工程)。この面Fが光学素子10、11の第4面10fに相当する。これにより、面E、面F、面20c、面20dを含む棒状の切断片50が得られる。
この切断片50を、図4に準じ、加工基準面(20d)及び面Fに垂直な面で所定間隔に切断する(第3工程)。これにより、個々の光学素子10が得られる。
なお、図1(b)の光学素子11を作製する場合は、第3工程の前に、面20cと面20dとで形成される稜線を面取り(切断)して面11aを形成しておけばよい。
続いて、図5(b)に示すように、小プリズム22を加工基準面(面20e)の反対側の稜線から加工基準面(面20e)に平行な所定位置の面Gまで研削して薄板状にし、さらに、面Gを鏡面加工(研磨)する(第1工程)。この面Gが光学素子10、11の第1面10cに相当する。なお、面Gの鏡面加工は必ずしも必要ではない。
次に、図5(c)に示すように、薄板25を加工基準面(面20e)に垂直で、且つ面20c及び面20eで形成される稜線に平行な面Hで切断する(第2工程)。この面Hが光学素子10、11の第4面10fに相当する。これにより、面G、面H、面20c、面20eを含む棒状の切断片51が得られる。
この切断片51を、図4に準じ、加工基準面(20e)及び面Hに垂直な面で所定間隔に切断する(第3工程)。これにより、個々の光学素子10が得られる。
なお、図1(b)の光学素子11を作製する場合は、第3工程の前に、面20cと面20eとで形成される稜線を面取り(切断)して面11aを形成しておけばよい。
このように、本実施形態の加工法によれば、光学素子10、11の反射膜が施された第3面10eはプリズム20の面20cを加工することなく利用しているので、小さな切断片50、51や光学素子10、11の状態になってから成膜する必要がない。また、高い面精度が要求される反射膜が施された第3面10eとして、面20d、20eよりも面精度の高い面20cを利用している。また、光学素子10、11の第1面10cに鏡面加工が必要な場合は、第1工程で得た薄板24、25の状態で鏡面加工するので、小さな切断片50、51や光学素子10、11の状態になってから成膜する必要がない。したがって、簡素な工程で高精度な小型(例えば、3mm3以下であって、好ましくは1mm3以下)の光学素子10、11を作製することができる。
なお、上記2つの実施形態では底面の底角がθである二等辺三角形のプリズム20を用いたが、本発明で用いるプリズムとしては、底面の少なくとも1つの角がθである多角柱であればよい。その場合、θの角をなす2つの面の一方を加工基準面とすればよい。
また、上記2つの実施形態によって得られた図1(b)の光学素子11は、例えば、面10aと面10cとの稜線が0.3mm、面10aと面10dとの稜線が0.5mm、面10aと面10fとの稜線が0.25mm、面10aと面11aとの稜線が0.05mm、面10cと面10fとの稜線が0.5mmであり、体積が約0.05mm3であった。そして、この光学素子11は必要な精度で作製できた。
本発明の光学素子の製造方法は、光ピックアップなどに利用される四角柱の光学素子の製造に利用でき、特に、小型(例えば、3mm3以下であって、好ましくは1mm3以下)の光学素子の製造に有効なものである。
(a)本発明の光学素子の斜視図、(b)本発明の他の形態の光学素子の斜視図である。 第1及び第2実施形態で用いるプリズムの斜視図である。 (a)第1実施形態でプリズムを加工台に載置した状態の正面図、(b)図3(a)に続く工程を説明する図である。 第1実施形態の切断片の斜視図である。 (a)第2実施形態でプリズムを加工台に載置した状態の正面図、(b)図5(a)に続く工程を説明する図、(c)図5(b)に続く工程を説明する図である。 従来の光ピックアップの一例を示す概略図である。
符号の説明
10 光学素子
10c 第1面
10d 第2面
10e 第3面
10f 第4面
20 プリズム
22、23 小プリズム
40、41、50、51 切断片

Claims (6)

  1. 仮想面に垂直な第1〜第4面を有し、第1面と第2面が平行であり、第2面と第3面とのなす角がθであり、第4面が第1及び第2面に垂直であり、第3面が鏡面である光学素子の製造方法において、
    θの角をなす2つの面を有するプリズムの一方の面を加工基準面とし、他方の面が鏡面であり、
    前記加工基準面の反対側から前記加工基準面に平行な面まで研削して前記第1面を形成する第1工程と、
    前記加工基準面に垂直で、且つ前記2つの面で形成される稜線に平行な面で切断して前記第4面を形成する第2工程と、
    前記2つの面を含む切断片を、前記加工基準面及び前記第4面に垂直な面で所定間隔に切断して個々の光学素子を得る第3工程と、を備えたことを特徴とする光学素子の製造方法。
  2. 前記光学素子の体積が3mm3以下であることを特徴とする請求項1記載の光学素子の製造方法。
  3. 前記鏡面に予め光学膜が成膜されていることを特徴とする請求項1又は2記載の光学素子の製造方法。
  4. 前記第1工程において、前記第1面を鏡面加工することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の光学素子の製造方法。
  5. 前記プリズムは、底角がθである二等辺三角形を底面とする三角柱であり、
    前記加工基準面が、前記二等辺三角形の底辺を含む面であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の光学素子の製造方法。
  6. 前記プリズムは、底角がθである二等辺三角形を底面とする三角柱であり、
    前記第1工程前に、前記プリズムの稜線に平行で、且つ前記二等辺三角形の底辺を含む面に垂直な面で切断して2つの小プリズムを形成する第4工程を備え、
    前記加工基準面が、前記二等辺三角形の等しい2辺の一方を含む面であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の光学素子の製造方法。
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