JP5211704B2 - セルロース繊維樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

セルロース繊維樹脂組成物およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、セルロース繊維樹脂組成物およびその製造方法に関するものであり、特に(A)セルロース繊維、(B)ポリオレフィンに親水性高分子及び/又は酸性基が結合してなる重合体、並びに(C)ポリオレフィンを含み、低線膨張係数を示すセルロース繊維樹脂組成物およびその製造法に関する。
ポリオレフィンは安価であり、しかも、機械的物性、耐熱性、耐薬品性、耐水性などに優れていることから、広い分野で使用されている。中でも、ポリプロピレンは、自動車において、バンパー、ロッカーモール、サイドモール、オーバーフェンダー等の外装部品及びインスツルメントパネル、グローブボックス、ドアライナー、ピラー等の内装部品等に利用されている。その一方で、ポリプロピレンは高い結晶性を有していることから、温度に対する寸法変化(線膨張係数)が非常に大きいことでも知られている。そして、この性質により、ポリプロピレン系材料を用いた部品、特にバンパー、インストルメントパネル等の大型部品においては、部品の合わせ目に隙間が生じたり、部品組み付け時の建て付け性が低下したりするなどの問題が生じていた。
そこで、上記問題点を解決するために、アスペクト比の大きいフィラーを多量に添加し、線膨張係数の低下或いは寸法安定性の向上を図る方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、フィラーとしてワラストナイトを5〜30重量%及び無機質補強材を5〜30重量%配合して線膨張係数を低下させる方法が開示されている。
また、特許文献2には、特定の構造を有するプロピレン・エチレンランダム共重合体を26〜50重量%含有するプロピレン・エチレンブロック共重合体と無機質充填材0.1〜30重量%とを組み合わせて、物性バランスと低線膨張特性とに優れた組成物を提供する方法が開示されている。
特開2001−220472号公報 特開2002−97337号公報
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、ワラストナイト及び無機質補強材をそれぞれを5重量%以上もの多量に添加するため、樹脂のサーマルリサイクルに際し、多量のアッシュが発生するという問題点を有していた。
また、特許文献2に記載された方法では、低線膨張特性を充分に低下させるためには5重量%以上の無機質充填材の添加が必要であった。従って、この方法においても、樹脂のサーマルリサイクルに際し、多量のアッシュが発生するという問題点があった。
このようなことから、燃焼してもアッシュの発生の無いフィラー添加で十分な寸法安定性(低線膨張係数)を有するポリプロピレン材料の開発が望まれていた。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、燃焼時のアッシュの発生が実質的に無く、しかも物性バランス及び線膨張特性がともに優れたポリオレフィン樹脂組成物を提供することを目的する。
本発明(請求項1)のセルロース繊維樹脂組成物は、下記の(A)〜(C)成分を含むセルロース繊維樹脂組成物であって、(A)成分を5重量%以上、(B)成分を5重量%以上、(C)成分を90重量%以下含み、線膨張係数が120ppm/K以下であることを特徴とするセルロース繊維樹脂組成物。
(A)平均繊維径が4〜400nmのセルロース繊維
(B)ポリオレフィンに親水性高分子及び/又は酸性基が結合してなる重合体であって、
該ポリオレフィンが、エチレン又はプロピレンの単独重合体、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレン及び/又はプロピレンとその他のコモノマーとの共重合体から選ばれるものであり、
該親水性高分子が、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリエーテル樹脂から選ばれるものであり、
該酸性基が、カルボン酸基、スルホ基、スルフィノ基、ホスホノ基から選ばれるものである重合体
(C)(B)成分以外のポリオレフィンであって、エチレン又はプロピレンの単独重合体、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレン及び/又はプロピレンとその他のコモノマーとのオレフィン系共重合体から選ばれるポリオレフィン
請求項2のセルロース繊維樹脂組成物は、請求項1において、(B)成分のポリオレフィンがポリプロピレンで、ポリプロピレン主鎖の重量平均分子量Mwが1,000から500,000であり、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnが10以下であり、13C−NMRによって観測されるmmmmペンタッドに帰属されるピークのケミカルシフトを21.8ppmとした場合の、19.8ppmから22.2ppmに現れるピークの総面積に対する21.8ppmをピークトップとするピークの面積の比率が10%から90%の範囲であることを特徴とする。
本発明(請求項)のセルロース繊維樹脂組成物の製造方法は、請求項1〜4の何れか一項に記載のセルロース繊維樹脂組成物を製造する方法であって、(A)成分と(B)成分とを水中で混合する工程を含むことを特徴とする。
本発明によれば、(A)セルロース繊維と(C)ポリオレフィンを含むセルロース繊維樹脂組成物に、(B)ポリオレフィンに親水性高分子及び/又は酸性基が結合してなる重合体を添加することにより、セルロース繊維と樹脂との親和性が高まり、この結果、セルロース繊維の配合効果が十分に発揮され、低線膨張係数のポリオレフィン系複合材料が提供される。
特に、(A)セルロース繊維と(B)ポリオレフィンに親水性高分子及び/又は酸性基が結合してなる重合体を水中で混合することにより、セルロース繊維とポリオレフィンとを均一に混合することができ、これにより、上記効果をより一層確実に得ることができる。
しかも、セルロース繊維であれば、有機物であるため、燃焼時のアッシュの発生もなく、樹脂のサーマルリサイクルにも好適である。
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。
{セルロース繊維樹脂組成物}
本発明のセルロース繊維樹脂組成物は、下記の(A)〜(C)成分を含み、線膨張係数が120ppm/K以下であることを特徴とする。
(A)セルロース繊維
(B)ポリオレフィンに親水性高分子及び/又は酸性基が結合してなる重合体
(C)(B)成分以外のポリオレフィン
[(A)セルロース繊維]
(A)成分であるセルロース繊維とは、主としてセルロースからなる繊維である。
<繊維径>
セルロース繊維の繊維径は細いことが好ましい。具体的には1500nm以上の繊維径のものを含んでいないことが好ましく、1000nm以上の繊維径のものを含んでいないことがさらに好ましく、500nm以上の繊維径のものを含んでいないことが特に好ましい。1500nm以上の繊維径のものを含んでいないものであれば、樹脂と複合化した場合、線膨張係数が低いものが得られる点において好ましい。
なお、セルロース繊維の繊維径はSEM観察により確認することができる。
SEMより観察されるセルロース繊維の繊維径は、平均で4〜1300nmであることが好ましい。セルロース繊維の平均繊維径が1300nmを超えると組成物中の分散性が悪くなり、線膨張係数等の特性改良の効果が期待できないので好ましくない。また、繊維径が4nm未満の繊維は実質的に製造できない。セルロース繊維の平均繊維径は好ましくは4〜1000nmであり、より好ましくは4〜400nmである。
<原料>
セルロース繊維の原料としては、針葉樹や広葉樹等の木質、バクテリアが産生するバクテリアセルロース、コットンリンターやコットンリント等のコットン、バロニアやシオグサ等の海草やホヤの被嚢等が挙げられる。これらの天然セルロースは、結晶性が高いので低線膨張率になり好ましい。バクテリアセルロースは微細な繊維径のものが得やすい点で好ましい。また、コットンも微細な繊維径のものが得やすい点で好ましく、さらに原料が得やすい点で好ましい。さらには針葉樹や広葉樹等の木質も微細な繊維径のものが得られ、かつ地球上で最大量の生物資源であり、年間約700億トン以上ともいわれる量が生産されている持続型資源あることから、地球温暖化に影響する二酸化炭素削減への寄与も大きく、経済的な点から優位である。
<化学修飾>
本発明で用いるセルロース繊維は、化学修飾されていてもよい。化学修飾とは、セルロース中の水酸基が化学修飾剤と反応して化学修飾されているものである。
(種類)
化学修飾によってセルロースに導入させる官能基としては、アセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロピオニル基、プロピオロイル基、ブチリル基、2−ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、フロイル基、シンナモイル基等のアシル基、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアノイル基等のイソシアネート基、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等のアルキル基、オキシラン基、オキセタン基、チイラン基、チエタン基等が挙げられる。これらの中では特にアセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基等の炭素数2〜12のアシル基、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜12のアルキル基が好ましい。
(修飾方法)
修飾方法としては、特に限定されるものではないが、セルロースと次に挙げるような化学修飾剤とを反応させる方法がある。この反応条件についても特に限定されるものではないが、必要に応じて溶媒、触媒等を用いたり、加熱、減圧等を行うこともできる。
化学修飾剤の種類としては、酸、酸無水物、アルコール、ハロゲン化試薬、イソシアナート、アルコキシシラン、オキシラン(エポキシ)等の環状エーテルよりなる群から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
酸としては、例えば酢酸、アクリル酸、メタクリル酸、プロパン酸、ブタン酸、2−ブタン酸、ペンタン酸等が挙げられる。
酸無水物としては、例えば無水酢酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水プロパン酸、無水ブタン酸、無水2-ブタン酸、無水ペンタン酸等が挙げられる。
アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール等が挙げられる。
ハロゲン化試薬としては、例えばアセチルハライド、アクリロイルハライド、メタクロイルハライド、プロパノイルハライド、ブタノイルハライド、2−ブタノイルハライド、ペンタノイルハライド、ベンゾイルハライド、ナフトイルハライドが挙げられる。
イソシアナートとしては、例えばメチルイソシアナート、エチルイソシアナート、プロピルイソシアナート等が挙げられる。
アルコキシシランとしては、例えばメトキシシラン、エトキシシラン等が挙げられる。
オキシラン(エポキシ)等の環状エーテルとしては、例えばエチルオキシラン、エチルオキセタンが挙げられる。
これらの中では特に無水酢酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、ベンゾイルハライド、ナフトイルハライドが好ましい。
これらの化学修飾剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
(化学修飾率)
ここでいう化学修飾率とは、セルロース中の全水酸基のうちの化学修飾されたものの割合を示し、化学修飾率は下記の滴定法によって測定することができる。
〈測定方法〉
セルロース繊維0.5gを精秤しこれにメタノール6ml、蒸留水2mlを添加する。これを60〜70℃で30分攪拌した後、0.05N水酸化ナトリウム水溶液10mlを添加する。これを60〜70℃で15分攪拌しさらに室温で一日攪拌する。ここにフェノールフタレインを用いて0.02N塩酸水溶液で滴定する。
ここで、滴定に要した0.02N塩酸水溶液の量Z(ml)から、化学修飾により導入された置換基のモル数Qは、下記式で求められる。
Q(mol)=0.05(N)×10(ml)/1000
−0.02(N)×Z(ml)/1000
この置換基のモル数Qと、化学修飾率X(mol%)との関係は、以下の式で算出される(セルロース=(C10=(162.14),繰り返し単位1個当たりの水酸基数=3,OHの分子量=17)。なお、以下において、Tは置換基の分子量である。
Figure 0005211704
これを解いていくと、以下の通りである。
Figure 0005211704
本発明で用いるセルロース繊維の化学修飾率は、セルロースの全水酸基に対して、通常65mol%以下であることが好ましく、特に50mol%以下であることが好ましく、40mol%以下であることがより好ましく、さらに好ましくは35mol%以下である。化学修飾率が高すぎると、セルロース構造が破壊され結晶性が低下するため、得られる複合材料の線膨張係数が大きくなってしまうという問題点があり好ましくない。
(セルロース繊維の製造方法)
本発明で用いるセルロース繊維は、前述の好適な繊維径を満たすものであればその製造方法は特に限定されるものではない。
このようなセルロース繊維の製造方法について以下に説明する。
バクテリアセルロースをセルロース原料とする場合には、セルロースを産生するバクテリアを培養することによりセルロース繊維を得ることができる。この産生物を培地から取り出し、それを水洗、又はアルカリ処理などしてバクテリアを除去することにより、バクテリアを含まない含水バクテリアセルロースを得ることができる。バクテリアは微細なセルロースを産生するので微細化処理を行うことなく、そのまま用いることができる。
針葉樹や広葉樹等の木質、コットンリンターやコットンリント等のコットンは精製した後、微細化処理を行い微細化したセルロースを得る。また、バロニアやシオグサ等の海草やホヤの被嚢等も微細化処理を行い微細化したセルロースを得る。
セルロースを微細化する分散機としてはブレンダータイプの分散機や高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等を用いることが好ましい。特に超高圧ホモジナイザーはセルロースを均一に微細化するのに有効である。
微細化を行う際のセルロース分散液のセルロース濃度は0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.3重量%以上であることが好ましい。セルロース濃度が低すぎると後工程での処理効率が悪化するおそれがある。また、セルロース濃度は10重量%以下、好ましくは3重量%以下であることが好ましい。セルロース濃度が高すぎると粘度が高くなりすぎたり、均一な微細セルロースが得られなかったりするので好ましくない。
セルロース繊維の化学修飾は、通常の方法をとることができる。すなわち、常法に従って、セルロース繊維と化学修飾剤とを反応させることによって化学修飾を行うことができる。この際、必要に応じて溶媒や触媒を用いたり、加熱、減圧等を行ってもよい。触媒としてはピリジンやトリエチルアミン、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム等の塩基性触媒や、酢酸、硫酸、過塩素酸等の酸性触媒を用いることが好ましい。
温度条件としては、高すぎるとセルロースの重合度の低下等が懸念され、低すぎると反応速度が低下することから40〜130℃が好ましい。反応時間は化学修飾剤や化学修飾率にもよるが数分から数十時間である。
このようにして化学修飾を行った後は、反応を終結させるために水で十分に洗浄することが好ましい。未反応の化学修飾剤が残留していると、樹脂と複合化する際に問題になるおそれがあるので好ましくない。
[(B)ポリオレフィンに親水性高分子及び/又は酸性基が結合してなる重合体]
(B)成分であるポリオレフィンに親水性高分子及び/又は酸性基が結合してなる重合体としては、具体的には次のものが挙げられる。
・ポリオレフィン(a)に酸性基が結合してなる重合体(c1)(以下「ポリオレフィン重合体(c1)」と称す場合がある。)
・ポリオレフィン(a)に親水性高分子(b)が結合してなる重合体(c2)(以下「ポリオレフィン重合体(c2)」と称す場合がある。)
[1]ポリオレフィン(a)
ポリオレフィン(a)としては、公知の各種ポリオレフィンを用いることができ、特に限定されないが、例えば、エチレン又はプロピレンの単独重合体、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレン及び/又はプロピレンとその他のコモノマーとの共重合体が挙げられる。
コモノマーとしては例えばブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、シクロペンテン、シクロヘキセン、及びノルボルネンなどの炭素数2以上のα−オレフィンコモノマーが挙げられる。α−オレフィンコモノマーとして好ましくは炭素数2〜8のα−オレフィンコモノマーであり、より好ましくは炭素数2〜6のα−オレフィンコモノマーである。もしくは、これらα−オレフィンコモノマー同士2種類以上の共重合体も用いることができる。またα−オレフィンモノマーと酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどのコモノマーとの共重合体、芳香族ビニルモノマーと共役ジエンモノマーとから選ばれる2種以上のモノマーの共重合体の水素添加体なども用いることができる。これらのコモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、本明細書において、単に「共重合体」という場合は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。
更に、ポリオレフィン(a)としては、上述のポリオレフィンを塩素化した塩素化ポリオレフィンも使用しうる。塩素化ポリオレフィンの塩素化度(塩素化ポリオレフィン中に含まれる塩素の割合)は通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上であり、また塩素化度は通常50重量%以下であり、好ましくは30重量%以下である。但し環境負荷を低減する目的からは、ポリオレフィン(a)は実質的に塩素を含まないことが望ましい。ここで実質的に塩素を含まないとは、例えばポリオレフィンの塩素化度が5重量%未満であることをいう。
ポリオレフィン(a)として具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−ヘキセン共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩素化エチレン−プロピレン共重合体、塩素化プロピレン−ブテン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレントリブロック体の水素添加物(SEBS)、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック体の水素添加物(SEPS)などが挙げられる。好ましくはプロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体であり、更に好ましくはプロピレン−ブテン共重合体である。上述の如くこれらは塩素化されていてもよい。
ポリオレフィン(a)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)で測定し、ポリスチレンの検量線で換算した重量平均分子量Mwが1,000〜500,000であることが好ましい。このMwの下限値のより好ましい値は10,000、さらに好ましくは30,000、特に好ましくは50,000である。このMwの上限値のより好ましい値は300,000、さらに好ましくは250,000、特に好ましくは200,000である。Mwが下限値より高いほどべたつき度合いが小さくなり、(C)成分のポリオレフィンとの組成物とした場合、(C)成分への密着性が増す傾向があり、また上限値より低いほど粘度が低くなり、樹脂分散体(即ち、後述の重合体(B)の水性分散体。以下においても同様である。)の調製が容易になる傾向がある。なおGPC測定は、テトラヒドロフラン、オルトジクロロベンゼンなどを溶媒として、市販の装置を用いて従来公知の方法で行われる。
ポリオレフィン(a)の、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比で表される分子量分布Mw/Mnは、10以下が好ましく、さらに好ましくは5以下であり、さらに好ましくは3以下である。分子量分布Mw/Mnが小さいことは分子量分布が狭く、ポリオレフィンの分子量が均一に揃っていることを意味するが、このようなポリオレフィン(a)を用いることで、水への分散時の粒径制御がしやすくなり、分散粒径が小さく、粒径分布が狭く、かつ安定に分散した樹脂分散体が得られる利点がある。ポリオレフィン(a)のMw/Mnは通常、1以上である。
ポリオレフィン(a)は融点Tmが120℃以下であることが好ましい。ポリオレフィン(a)の融点Tmはより好ましくは110℃以下であり、更に好ましくは100℃以下である。融点Tmが120℃より低いほど、結晶性が低く溶媒への溶解性が向上し、乳化・分散作業が低温で行いやすくなるため好ましい。但し、ポリオレフィン(a)の融点Tmは通常、25℃以上であり、好ましくは35℃以上である。融点Tmが高い方が高耐熱性、高硬度、べたつきのなさなどの点で有利である。
ポリオレフィン(a)のプロピレンの含有率は50モル%以上であり、好ましくは70モル%以上である。通常、プロピレンの含量が高いほどポリプロピレン基材への密着性が増す傾向がある。
ポリオレフィン(a)として好ましい一例は、プロピレン単独重合体又は共重合体の立体規則性として、全体または部分的にアイソタクチック構造を有するものである。例えば通常のアイソタクチックポリプロピレンは勿論のこと、特開2003−231714号公報やUS4,522,982号公報に記載されているような、アイソタクチックブロックポリプロピレンや、アイソタクチックブロックとアタクチックブロックとを有するステレオブロックポリプロピレン等も好ましく使用できる。ポリオレフィン(a)がプロピレン単独重合体の場合、13C−NMRによって観測されるmmmmで表されるペンタッドに帰属されるピークのピークトップのケミカルシフトを21.8ppmとした場合の19.8ppmから22.2ppmに現れるピークの総面積に対する21.8ppmをピークトップとするピークの面積の比率(以下、この比率を「立体規則性[mmmm]」と称す場合がある。)が10%から90%の範囲にあることが好ましい。
この立体規則性[mmmm]の下限値のより好ましい値は20%、さらに好ましくは30%、特に好ましくは40%である。立体規則性[mmmm]の上限値の好ましい値は80%、さらに好ましくは70%、特に好ましくは60%、最も好ましくは55%である。立体規則性[mmmm]が上記下限値より高いほどべたつき度合いが小さくなる傾向があり、また上記上限値より低いほど結晶化度が低くなり樹脂分散体の調製が容易になる傾向がある。
但し、ポリオレフィン(a)が共重合体の場合は、見かけ上の立体規則性がより高く、例えば上記立体規則性[mmmm]の割合がより大きくても好ましく使用できる。
ポリオレフィン(a)として好ましい他の一例は、プロピレン−α−オレフィン共重合体である。より好ましくはプロピレン含量が50モル%以上100モル%未満であるプロピレン−α−オレフィン共重合体である。前述の如く、通常、プロピレン含量が高いほどポリプロピレンへの密着性が増す傾向がある。プロピレン−α−オレフィン共重合体のポリプロピレン含量は、好ましくは60モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上である。更に、プロピレン−α−オレフィン共重合体の分子量分布Mw/Mnは3.0以下であることが好ましい。プロピレン−α−オレフィン共重合体のα−オレフィンとして好ましくは炭素数2〜8のα−オレフィンであり、より好ましくは炭素数2〜6のα−オレフィンであり、更に好ましくは炭素数2〜4のα−オレフィンであり、最も好ましくは1−ブテンである。1−ブテン含量は好ましくは5モル%〜50モル%である。1−ブテン含量はより好ましくは10モル%以上であり、更に好ましくは15モル%以上である。また1−ブテン含量はより好ましくは40モル%以下であり、更に好ましくは30モル%以下である。このとき共重合体は、プロピレン及び1−ブテン以外のα−オレフィンから導かれる構成単位を少量含んでもよい。例えばエチレンを10モル%以下含んでもよいがより好ましくはエチレン含量は5モル%以下である。
プロピレン−α−オレフィン共重合体として入手可能な市販品としては、三井化学(株)製のタフマーXM−7070、XM−7080などがある。
上述のポリオレフィン(a)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
以上を総合すると、ポリオレフィン(a)として好ましいのは、ポリオレフィンが、プロピレン含量が50モル%〜100モル%であってアイソタクチックブロックとアタクチックブロックとを有するステレオブロックポリプロピレン系重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、或いはこれらの併用である。
ポリオレフィン(a)の製法については、特に限定されず、いかなる製法であってもよい。例えばラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、配位重合などが挙げられ、それぞれリビング重合的であってもよい。また、配位重合の場合は、例えばチーグラー・ナッタ触媒により重合する方法又はシングルサイト触媒により重合する方法が挙げられる。好ましい製法としては、シングルサイト触媒による製造方法を挙げることができる。この理由としては、一般にシングルサイト触媒はリガンドのデザインにより反応を精密に制御しやすく、分子量分布や立体規則性分布がシャープな重合体が得られ、チーグラー・ナッタ触媒による重合体に比べてべたつき成分が少ないことが挙げられる。シングルサイト触媒としては、例えばメタロセン触媒、ブルックハート型触媒を用いうる。メタロセン触媒ではC対称型、C対称型、C2V対称型、C対称型など、重合するポリオレフィンの立体規則性に合わせて好ましい触媒を選択すればよい。好ましくはC対称型、C対称型のメタロセン触媒を用いることができる。
また、重合は溶液重合、スラリー重合、バルク重合、気相重合などいずれの重合形態でもよい。溶液重合やスラリー重合の場合、溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族系炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒類などが挙げられる。なかでも芳香族系炭化水素、脂肪族系炭化水素、及び脂環式炭化水素が好ましく、より好ましくはトルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、シクロペンタン、及びシクロヘキサンである。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[2]ポリオレフィン(a)に酸性基が結合してなる重合体(c1)
本発明における酸性基とは電子対受容性の基を指し、特に限定されないが、例えば、カルボン酸基(−COOH)、スルホ基(−SOH)、スルフィノ基(−SOH)、ホスホノ基(−POH)などが挙げられる。中でもカルボン酸基が好ましい。カルボン酸基は、水に分散される前は、カルボン酸基、ジカルボン酸無水物基(−CO−O−OC−)、及びジカルボン酸無水物モノエステル基からなる群より選ばれる少なくとも1種であればよい。カルボン酸基としては、例えば、(メタ)アクリル酸基、フマル酸基、マレイン酸基又はその無水物基、イタコン酸基又はその無水物基、クロトン酸基などが挙げられる(なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸」と「メタクリル酸」の総称であり、他もこれに準ずる)。
酸性基の結合量は、ポリオレフィン(a)1g当たり0.4〜5mmol、即ち0.4〜5mmol/gの範囲にあることが好ましい。ポリオレフィン(a)の酸性基の結合量のより好ましい下限値は0.6mmol/gであり、更に好ましい下限値は0.8mmol/gである。また、ポリオレフィン(a)の酸性基の結合量のより好ましい上限値は3mmol/gであり、更に好ましい上限値は1.6mmol/gである。この下限値より高いほど、ポリオレフィン重合体(c1)の極性が増し親水性が増すため、樹脂分散体の分散粒子径が小さくなる傾向にあり、この上限値より低いほど(C)成分のポリオレフィンに対する密着性が増す傾向にある。なお、ジカルボン酸無水物基は基中にカルボン酸基を2つ含むとみなせるので、ジカルボン酸無水物基1モルは酸性基(又は後述の反応性基)2モルと数える。
ポリオレフィン重合体(c1)の製法については、[3−3−1]で後述するポリオレフィン(a)に反応性基が結合してなるポリオレフィン(a2)の製造方法と同様の方法を用いうる。
[3]ポリオレフィン(a)に親水性高分子(b)が結合してなるポリオレフィン重合体(c2)
ポリオレフィン(a)に親水性高分子(b)が結合してなるポリオレフィン重合体(c2)としては、ポリオレフィン(a)に親水性高分子(b)がグラフト結合したグラフト共重合体、ポリオレフィン(a)の片末端又は両末端に親水性高分子(b)が結合した状態を含むポリオレフィン(a)と親水性高分子(b)とのブロック共重合体とがあり得るが、好ましくはグラフト共重合体である。グラフト共重合体であれば、親水性高分子(b)の含有量が制御しやすく、またブロック共重合体に比べて親水性高分子(b)の含有量を上げやすい利点がある。
[3−1]親水性高分子(b)
本発明において、親水性高分子(b)とは、25℃の水に10重量%の濃度で溶解させたときに不溶分が1重量%以下の高分子を言う。
親水性高分子(b)としては、本発明の効果を著しく損なわない限り、特に限定されず用いることができ、合成高分子、半合成高分子、天然高分子のいずれも用いることができる。親水性高分子(b)は反応性基を有していてもよい。
合成高分子としては、特に限定されないが例えばポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が使用できる。
天然高分子としては、特に限定されないが例えばコーンスターチ、小麦デンプン、かんしょデンプン、馬鈴薯デンプン、タピオカデンプン、米デンプンなどのデンプン;ふのり、寒天、アルギン酸ソーダなどの海藻;アラビアゴム、トラガントゴム、こんにゃくなどの植物粘質物;にかわ、カゼイン、ゼラチンなどの動物性タンパク;プルラン、デキストリンなどの発酵粘質物;等が使用できる。
半合成高分子としては、特に限定されないが例えばカルボキシルデンプン、カチオンデンプン、デキストリンなどのデンプン質;ビスコース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース;等が使用できる。
これらの親水性高分子(b)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
親水性高分子(b)としては、なかでも好ましくは、親水性度合いの制御がしやすく、特性も安定している合成高分子である。より好ましくは、ポリ(メタ)アクリル樹脂などのアクリル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、及びポリビニルピロリドン樹脂、ポリエーテルアミン、ポリエーテルポリオール、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンイミン等のポリエーテル樹脂であり、親水性の高いポリエーテル樹脂が最も好ましい。
親水性高分子(b)としてのアクリル系樹脂は、通常、親水性を示す不飽和カルボン酸若しくはそのエステル又は無水物を、ラジカル重合、アニオン重合、又はカチオン重合により重合することで得られる。この際、親水性を示す範囲内で疎水性ラジカル重合性化合物(疎水性モノマー)を共重合することができる。
アクリル系樹脂のポリオレフィン(a)との結合方法は限定されないが、例えば、ポリオレフィン(a)の存在下でラジカル重合する方法、水酸基、アミノ基、グリシジル基、(無水)カルボン酸基等の反応性基を有するアクリル系樹脂を、反応性基を有するポリオレフィン(a2)と反応させる方法、等が挙げられる。
親水性を示す不飽和カルボン酸若しくはそのエステル又は無水物として好ましくは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル四級化物、(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
共重合可能な疎水性モノマーとしては、例えば炭素原子数1〜12のアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーや、重合性ビニルモノマーなどの1種又は2種以上が挙げられる。
炭素原子数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。
アリール基又はアリールアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
重合性ビニルモノマーとしては酢酸ビニルやスチレンモノマー等が挙げられる。
疎水性モノマーとしては、好ましくは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、酢酸ビニルが挙げられる。
なお、ラジカル重合性不飽和化合物をラジカル重合開始剤の存在下で重合して高分子を形成するとともにポリオレフィン(a)に結合させ、次いで親水性高分子(b)に変性することにより、親水性高分子(b)の合成とポリオレフィン(a)への結合とを行うこともできる。
この場合の高分子の形成と親水化方法としては、例えば、(メタ)アクリル酸t−ブチルを重合後、酸性下で加水分解しポリ(メタ)アクリル酸に変性する方法、酢酸ビニルを重合後、ケン化してポリビニルアルコールに変性する方法などが挙げられる。
この場合、ポリオレフィン(a)としては反応性基を結合してなるポリオレフィン(a2)も用いうるが、通常は反応性基を有さないポリオレフィン(a)を用いる。
ポリエーテル樹脂は、通常、環状アルキレンオキサイド又は環状アルキレンイミンを開環重合することで得られる。
この場合のポリオレフィン(a)との結合方法は限定されないが、例えば、反応性基を有するポリオレフィン(a)(後述のポリオレフィン(a2))中で環状アルキレンオキサイドを開環重合する方法、開環重合等により得られたポリエーテルポリオールやポリエーテルアミンなどの反応性基を有する親水性高分子を、反応性基を有するポリオレフィン(a2)と反応させる方法等が挙げられる。
ポリエーテルアミンは、ポリエーテル骨格を有する樹脂の片末端又は両末端に、反応性基としての1級アミノ基を有する化合物である。
ポリエーテルポリオールはポリエーテル骨格を有する樹脂の両末端に、反応性基としての水酸基を有する化合物である。
親水性を示すポリアルキレンオキサイドやポリアルキレンイミンとして好ましくは、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンイミンが挙げられる。
又はポリエーテルアミンとしては、ハンツマン社製ジェファーミンMシリーズ、Dシリーズ、EDシリーズなどを使用してもよい。
ポリビニルアルコール樹脂は、通常、酢酸ビニルを重合させポリ酢酸ビニルを得た後、ケン化することで得られる。ケン化度は完全ケン化でも部分ケン化でもよい。
ポリビニルピロリドン樹脂は、通常、ビニルピロリドンを重合させることで得られる。
本発明に用いる親水性高分子(b)はポリオレフィン(a)との結合前に、これと反応しうる反応性基を1以上有しているのが好ましい。親水性高分子(b)が有する反応性基としては、例えばカルボン酸基、ジカルボン酸無水物基、及びジカルボン酸無水物モノエステル基、水酸基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基などが挙げられるが、好ましくは少なくともアミノ基を有する。アミノ基はカルボン酸基、無水カルボン酸基、グリシジル基、イソシアネート基など多種の反応性基と反応性が高いのでポリオレフィン(a)と親水性高分子(b)を結合させることが容易である。アミノ基は1級、2級、3級のいずれでもよいが、より好ましくは1級アミノ基である。
親水性高分子(b)の反応性基は1以上あればよいが、より好ましくは反応性基を1つのみ有する。反応性基が2以上あると、ポリオレフィン(a)と結合させる際に3次元網目構造となりゲル化してしまう可能性がある。
ただし、親水性高分子(b)が反応性基を複数有していても、他より反応性の高い反応性基が1つのみであればよい。例えば複数の水酸基と、それより反応性の高い1つのアミノ基を有する親水性高分子は好ましい例である。ここで反応性とはポリオレフィン(a)の有する反応基との反応性である。
本発明における親水性高分子(b)は、ポリオレフィン重合体(c2)に十分な親水性を付与するためには高分子である必要があり、GPCで測定しポリスチレンの検量線で換算した重量平均分子量Mwが200以上のものとする。この値の下限値は好ましくは300、より好ましくは500である。但し重量平均分子量Mwが200,000以下であることが好ましい。上限値のより好ましい値は100,000であり、さらに好ましくは10,000である。親水性高分子(b)のMwが上記下限値より高いほどポリオレフィン重合体(c2)の親水性が増し、樹脂分散体の分散粒子径が小さくなり安定に分散する傾向にあり、また上記上限値より低いほど粘度が低く樹脂分散体を調製しやすい傾向にある。なおGPC測定は、テトラヒドロフランなどを溶媒として、市販の装置を用いて従来公知の方法で行れる。
[3−2]ポリオレフィン(a)と親水性高分子(b)との結合割合
ポリオレフィン(a)とこれに結合した親水性高分子(b)との重量比率は通常、(a):(b)=100:5〜100:500重量部である。
また、ポリオレフィン(a)に結合している親水性高分子(b)の量は、ポリオレフィン(a)1g当たり0.01〜5mmol、即ち0.01〜5mmol/gの範囲にあることが好ましい。ポリオレフィン(a)の親水性高分子(b)の結合量のより好ましい下限値は0.01mmol/gであり、さらに好ましくは0.05mmol/gであり、特に好ましくは0.08mmol/gである。また、ポリオレフィン(a)の親水性高分子(b)の結合量のより好ましい上限値は1mmol/gであり、更に好ましくは0.8mmol/gであり、特に好ましくは0.5mmol/gであり、最も好ましくは0.3mmol/gである。
上記下限値より親水性高分子(b)が多いほどポリオレフィン重合体(c2)の親水性が増し、樹脂分散体の分散粒子径が小さくなり、安定に分散する傾向にあり、上記上限値より親水性高分子(b)が少ないほど、(C)成分であるポリオレフィンに対する密着性が増す傾向にある。
[3−3]ポリオレフィン重合体(c2)の製造方法
親水性高分子(b)はポリオレフィン(a)に対して、種々の反応形態により結合させることができる。その形態は特に限定されないが、例えば、ラジカルグラフト反応や反応性基を利用した反応が挙げられる。ラジカルグラフト反応によれば、炭素−炭素共有結合による結合が形成される。反応性基を利用した反応は、ポリオレフィン(a)と親水性高分子(b)の双方に反応性基を有している場合にそれらを反応させて結合させるものであり、共有結合又はイオン結合が形成される。この反応としては、例えば(無水)カルボン酸基とヒドロキシル基の(開環)エステル化反応、カルボン酸基とエポキシ基との開環反応、1級又は2級アミノ基とエポキシ基との開環反応、(無水)カルボン酸基と1級又は2級アミノ基の(開環)アミド化反応又はイミド化反応、カルボン酸基と3級アミノ基の4級アンモニウム化反応、カルボン酸基とイソシアナート基のアミド化反応、1級又は2級アミノ基とイソシアナート基のウレア化反応、ヒドロキシ基とイソシアナート基のウレタン反応等が挙げられる。なかでも無水カルボン酸基と1級又は2級アミノ基の開環アミド化反応又はイミド化反応が反応性の高さの点で好ましく、更には、イミド化よりもアミド化の方がNH基とCOOH基の親水基が基中に残るため乳化の容易さの点で好ましい。各反応の反応率は1〜100%の間で任意に選べばよく、好ましくは50〜100%、さらに好ましくは70〜100%である。カルボン酸基が二塩基酸もしくはその無水物である場合は、二塩基酸もしくはその無水物一当量に対し、一当量反応させても二当量反応させてもよい。
ポリオレフィン(a)と親水性高分子(b)を結合させてポリオレフィン重合体(c2)を製造する具体的な方法としては、通常、
ポリオレフィン(a)の存在下で親水性ラジカル重合性不飽和化合物(以下「親水性モノマー」と称す場合がある。)を重合してポリオレフィン(a)に結合した親水性高分子(b)を形成する方法(R1)、
又は
予め重合した親水性高分子(b)をポリオレフィン(a)に結合させる方法(R2)
が挙げられ、ポリオレフィン(a)や親水性高分子(b)の種類及び組合せ、目的とする重合体(c2)の特性等に応じて適宜選択すればよい。ここで用いるポリオレフィン(a)は、前述のポリオレフィン(a)であってもよく、以下に述べるポリオレフィン(a)に反応性基が結合してなるポリオレフィン(a2)であってもよく、これらの併用であってもよい。
[3−3−1]ポリオレフィン(a)に反応性基が結合してなるポリオレフィン(a2)
反応性基を有するポリオレフィン(a2)としては、例えば、重合時に反応性基を有さない不飽和化合物と反応性基を有する不飽和化合物とを共重合した共重合体(a2a)、又は、反応性基を有するラジカル重合性不飽和化合物をポリオレフィン(a)にグラフト重合した共重合体(a2b)、不飽和末端基を持つポリオレフィンを周期表第13族〜17族の元素又はその元素を含む基に変換した重合体(a2c)を用いることができる。
ここで、反応性基としては、例えばカルボン酸基、ジカルボン酸無水物基、及びジカルボン酸無水物モノエステル基、水酸基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、メルカプト基、ハロゲン基などが挙げられる。より好ましくはカルボン酸基、ジカルボン酸無水物基、及びジカルボン酸無水物モノエステル基からなる群より選ばれる少なくとも1種である。これらカルボン酸基等は反応性が高く親水性高分子と結合が容易なだけでなく、これらの基を有する不飽和化合物も多くポリオレフィンへ共重合もしくはグラフト反応させることも容易である。
また、親水性高分子(b)との反応には、上記共重合体(a2a)、(a2b)、(a2c)のいずれも用いうるが、通常、好ましいのは重合体(a2b)であり、重合体(a2b)は、親水性高分子(b)の結合量の制御がしやすいなどの利点がある。
共重合体(a2a)は、反応性基を有さない不飽和化合物と、反応性基を有する不飽和化合物とを共重合して得られ、反応性基を有する不飽和化合物が主鎖に挿入された共重合体であり、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン等のα−オレフィンと、アクリル酸、無水マレイン酸等のα、β−不飽和カルボン酸又はその無水物とを共重合して得られる。共重合体(a2a)として具体的には、例えばプロピレン−ブテン−無水マレイン酸共重合体などが使用できる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。その製造方法としては、[1]ポリオレフィン(a)の項で述べた方法と同様の方法を用いることができる。
重合体(a2b)は、予め重合したポリオレフィン(a)に、反応性基を有するラジカル重合性不飽和化合物をグラフト重合して得られ、反応性基を有する不飽和化合物は主鎖にグラフトされている。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン(a)に、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸又はその無水物、イタコン酸又はその無水物、クロトン酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルや(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸(ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸(2−イソシアナト)エチル等の反応性基を有するラジカル重合性不飽和化合物をグラフトした重合体である。これらの反応性基を有するラジカル重合性不飽和化合物は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
反応性基を有するラジカル重合性不飽和化合物をグラフト重合させるポリオレフィン(a)としては、前述の反応性基を有さないポリオレフィンを使用することができる。
重合体(a2b)として具体的には、例えば無水マレイン酸変性ポリプロピレン及びその塩素化物、無水マレイン酸変性プロピレン−エチレン共重合体及びその塩素化物、無水マレイン酸変性プロピレン−ブテン共重合体、アクリル酸変性プロピレン−エチレン共重合体及びその塩素化物、アクリル酸変性プロピレン−ブテン共重合体などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
グラフト重合に用いるラジカル重合開始剤としては、通常のラジカル開始剤から適宜選択して使用することができ、例えば有機過酸化物、アゾニトリル等を挙げることができる。有機過酸化物としては、ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンなどのパーオキシケタール類、クメンヒドロパーオキシドなどのハイドロパーオキシド類、ジ(t−ブチル)パーオキシドなどのジアルキルパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキシドなどのジアシルパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボナートなどのパーオキシエステル類が使用できる。アゾニトリルとしてはアゾビスブチロニトリル、アゾビスイソプロピルニトリル等が挙げられる。なかでもベンゾイルパーオキシド及びt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボナートが特に好ましい。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ラジカル重合開始剤とグラフト共重合単位の使用割合は、通常、ラジカル重合開始剤:グラフト共重合単位=1:100〜2:1(モル比)の範囲であり、好ましくは1:20〜1:1の範囲である。
重合体(a2b)の製法については、本発明の要件を満たす重合体を製造できれば特に限定されず、いかなる製法であってもよい。例えば、溶液変性法(溶液中で加熱攪拌して反応する方法)、溶融変性法(無溶媒で溶融加熱攪拌して反応する方法、又は、押し出し機で加熱混練して反応する方法)等が挙げられる。
溶液中で製造する場合の溶媒としては、[1]ポリオレフィン(a)における溶液重合又はスラリー重合の場合に用いる溶媒として挙げた溶媒を同様に用いることができる。反応温度は、通常50℃以上であり、好ましくは80〜300℃の範囲が好適である。より好ましくは、溶液変性法の場合は80〜200℃の範囲であり、溶融変性法の場合は150〜300℃の範囲である。反応時間は、通常2〜20時間程度である。
重合体(a2c)は、通常、ブロック共重合体を製造する場合に用いられ、例えば、特開2001−288372号公報に記載されているように、末端二重結合を有するポリオレフィン(a)の二重結合部をホウ素、アルミニウムのような周期表13族元素に変換したポリオレフィン(a2c1)や、特開2005−48172号公報に記載されているように、末端二重結合を有するポリオレフィンの二重結合部をハロゲン元素に変換したポリオレフィン(a2c2)や、特開2001−98140号公報に記載されているように、末端二重結合を有するプロピレン系重合体の二重結合部をメルカプト基に変換したポリオレフィン(a2c3)を用いることができる。
末端二重結合を持つポリオレフィンの製造方法は、例えば、オレフィン重合時にα−水素脱離を起こす方法や、プロピレン系重合体を高温で熱分解させる方法などが挙げられる。
二重結合部をホウ素基やアルミニウム基に変換する方法としては、例えば、二重結合部に有機ホウ素化合物や有機アルミニウム化合物を溶媒中で反応させる方法が挙げられる。
二重結合部をハロゲン元素に変換する方法としては、例えば、上記有機ホウ素基を持つポリオレフィン(a2c1)に塩基と過酸化水素水を反応させることにより水酸基を持つポリオレフィン系重合体に変換した後、ハロゲン基含有酸ハロゲン化物を反応させて、ハロゲン基含有エステル基に変換する方法などがある。
二重結合部をメルカプト基に変換する方法としては、例えば、チオ酢酸をラジカル開始剤存在下に反応させた後、塩基で処理する方法などがある。
重合体(a2c)の製法については、本発明の要件を満たす重合体を製造できれば特に限定されず、いかなる製法であってもよいが、溶液中で加熱攪拌して反応させる方法が好ましく用いられる。
溶液中で製造する場合の溶媒としては、[1]ポリオレフィン(a)における溶液重合又はスラリー重合の場合に用いる溶媒として挙げた溶媒を同様に用いることができる。
共重合体(a2a)及び(a2b)中の反応性基の含有量は、ポリオレフィン1g当たり0.01〜5mmol、即ち0.01〜5mmol/gの範囲にあることが好ましい。反応性基の含有量の好ましい下限値は0.01mmol/gであり、さらに好ましくは0.05mmol/gであり、特に好ましくは0.08mmol/gである。また、反応性基の含有量のより好ましい上限値は1mmol/gであり、更に好ましくは0.8mmol/gであり、特に好ましくは0.5mmol/gである。反応性基を結合してなる重合体(a2c)中の周期表第13族〜17族の元素の含有量は、その製法から通常ポリマー1分子当たり1反応性基以下となり、1/数平均分子量Mn(mol/g)以下であり、共重合体(a2a)及び(a2b)に比して低くなる傾向がある。従って、反応性基量はポリオレフィン1g当たり0.004〜2mmol/gの範囲にあることが好ましい。この割合のより好ましい下限値は0.005mmol/gであり、より好ましい上限値は0.2mmol/gである。
共重合体(a2a)、(a2b)、(a2c)のいずれにおいても、反応性基量が上記下限値より高いほど、親水性高分子(b)の結合量が増し重合体(c2)の親水性が増すため、後述の樹脂分散体の分散粒子径が小さくなる傾向にあり、上記上限値より低いほど、(C)成分であるのポリオレフィンに対する密着性が増す傾向にある。なお、前述の如く、ジカルボン酸無水物基は基中にカルボン酸基を2つ含むとみなせるので、ジカルボン酸無水物基1モルは反応性基2モルと数える。
ポリオレフィン(a2)は直鎖状であっても分岐状であってもよい。ポリオレフィン(a2)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、ポリオレフィン(a)そのものと反応性基を結合してなるポリオレフィン(a2)の双方を、親水性高分子(b)との組合せや目的とする重合体(c2)の特性等に応じて適宜用いうる。但し少なくとも、反応性基を結合してなるポリオレフィン(a2)を含むことが好ましく、この場合には、親水性高分子(b)の結合量の制御がしやすく、また結合に用いうる反応が多様であるなどの利点がある。反応性基を結合してなるポリオレフィン(a2)のみを使用してもよい。
[3−3−2]ポリオレフィン重合体(c2)の製造方法(R1)
本方法では、ポリオレフィン存在下で、親水性ラジカル重合性不飽和化合物(親水性モノマー)を重合することでポリオレフィンに結合した親水性高分子(b)を得る。親水性ラジカル重合性不飽和化合物の重合方法は、例えば付加重合、縮合重合、開環重合などを用いうる。このとき重合後に親水性高分子を形成しうる範囲であれば疎水性ラジカル重合性不飽和化合物を共重合させてもよい。いずれもポリオレフィンとしては、反応性基を有さないポリオレフィン(a)、又は反応性基を結合してなるポリオレフィン(a2)、ともに用いうる。
具体的には、例えばポリオレフィン(a)とパーオキサイドやアゾ化合物などラジカル重合開始剤の存在下、親水性ラジカル重合性不飽和化合物をグラフト重合し、ポリオレフィンとポリアクリルのグラフト共重合体とする方法がある。また、特開2001−288372号公報に記載されているように、ホウ素基、アルミニウム基のような周期表13族元素基を末端に有するポリオレフィン(a2c1)と酸素の存在下、親水性ラジカル重合性不飽和化合物を重合しポリオレフィンとポリアクリルのブロック共重合体とする方法がある。更に、特開2004−131620号公報や特開2005−48172号公報に記載されているように、ハロゲン原子を末端に有するポリオレフィン(a2c2)とハロゲン化銅、ハロゲン化ルテニウム等を用い、原子移動リビングラジカル法でプロピレン系重合体とポリアクリルのブロック共重合体とする方法がある。また特開2001−98140号公報に記載されているように、末端にメルカプト基を有するポリオレフィンの存在下、ラジカル開始剤と親水性ラジカル重合性不飽和化合物を重合しポリオレフィンとポリアクリルのブロック共重合体とする方法、などがある。
親水性ラジカル重合性不飽和化合物としては、特に限定されないが、例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル四級化物、ビニルピロリドンなどが挙げられる。
共重合可能な疎水性モノマーとしては、例えば炭素原子数1〜12のアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーや、重合性ビニルモノマーなどが挙げられる。
炭素原子数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。
炭素原子数6〜12のアリール基又はアリールアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
重合性ビニルモノマーとしては酢酸ビニルやスチレンモノマー等が挙げられ、好ましくは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、酢酸ビニルである。
反応性界面活性剤や反応性乳化剤も、水性ラジカル重合性不飽和化合物として用いることができる。例えば、特開平4−53802号公報、特開平4−50204号公報に示されるアルキルプロペニルフェノールポリエチレンオキシド付加体、アルキルジプロペニルフェノールポリエチレンオキシド付加体及びそれらの硫酸エステルの塩が挙げられる。その中でもアルキルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モル付加体、同30モル付加体、同50モル付加体(第一工業製薬製、アクアロンRN−20,RN−30,RN−50)及びアルキルプロペニルフェノールポリエチレンオキシド10モル付加体の硫酸エステルアンモニウム塩、同20モル付加体の硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬製、アクアロンHS−10,HS−20)が用いられる。
又は、ラジカル重合性不飽和化合物をラジカル重合開始剤の存在下で重合して高分子を形成するとともにポリオレフィン(a)に結合させ、次いで親水性高分子(b)を変性することもできる。例えば(メタ)アクリル酸t−ブチルを重合後に酸性下で加水分解しポリ(メタ)アクリル酸に変性する方法、又はこれを更に塩基で中和する方法、或いは酢酸ビニルを重合後にケン化してポリビニルアルコールに変性する方法などが挙げられる。共重合可能な疎水性ラジカル重合性不飽和化合物としては(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、酢酸ビニルが挙げられる。この場合、プロピレン−α−オレフィン共重合体としては反応性基を有するポリオレフィン(a2)も用いうるが、通常は反応性基を有さないポリオレフィン(a)を用いる。
或いは、反応性基を有するポリオレフィン(a2)を用い、この反応性基を開始末端として、親水性開環重合モノマー等を重合して親水性高分子(b)を得る方法がある。
親水性開環重合モノマーとしてはエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エチレンイミンなどが挙げられる。共重合可能な疎水性モノマーとしては、トリメチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。
これらはいずれも、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
反応方法については、本発明の要件を満たす重合体を製造できれば特に限定されず、いかなる方法であってもよい。例えば、溶液中で加熱攪拌して反応する方法、無溶媒で溶融加熱攪拌して反応する方法、押し出し機で加熱混練して反応する方法等が挙げられる。反応温度は、通常0〜200℃の範囲であり、好ましくは30〜150℃の範囲である。溶液中で製造する場合の溶媒としては、[1]ポリオレフィン(a)の項で挙げた溶媒を同様に用いることができる。
[3−3−3]ポリオレフィン重合体(c2)の製造方法(R2)
本方法では、予め重合した親水性高分子(b)をポリオレフィン(a)に結合させる。この場合、親水性高分子(b)としては[3−1]で挙げたものを用いうる。
具体的には、例えば、まず親水性モノマーを重合して親水性高分子とする際に分子内に不飽和二重結合を残しておき、次いでラジカル重合性開始剤を用いてポリオレフィンにグラフト重合させる方法がある。この場合、ポリオレフィンとしては反応性基を有するポリオレフィン(a2)も用いうるが、通常は反応性基を有さないポリオレフィン(a)を用いる。
また、まず末端に反応性基を有する親水性高分子を重合し、次いでこれを、反応性基を結合してなるポリオレフィン(a2)に結合させる方法がある。末端に反応性基を有する親水性高分子は、開始剤や連鎖移動剤として反応性基を有する化合物を用いて親水性モノマーを重合することで得られる。もしくは、エポキシ化合物等の親水性開環重合モノマーを開環重合することによっても得られる。このとき用いうる親水性モノマーとしては、[3−3−2]で挙げた各種親水性モノマーを同様に用いうる。これらはいずれも、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
反応方法については、特に限定されず、いかなる方法であってもよい。例えば、溶液中で加熱攪拌して反応する方法、無溶媒で溶融加熱攪拌して反応する方法、押し出し機で加熱混練して反応する方法等が挙げられる。反応温度は、通常0〜200℃の範囲であり、好ましくは30〜150℃の範囲である。溶液中で製造する場合の溶媒としては、[1]ポリオレフィン(a)の項で溶液重合又はスラリー重合の場合に用いる溶媒としてで挙げた溶媒を同様に用いることができる。
[(C)(B)成分以外のポリオレフィン]
(C)成分である(B)成分以外のポリオレフィンとしては、公知の各種ポリオレフィンを用いることができ、特に限定されないが、例えば、エチレン又はプロピレンの単独重合体、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレン及び/又はプロピレンとその他のコモノマーとのオレフィン系共重合体が挙げられる。
コモノマーとしては例えばブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、シクロペンテン、シクロヘキセン、及びノルボルネンなどの炭素数2以上のα−オレフィンコモノマーが挙げられる。α−オレフィンコモノマーとして好ましくは炭素数2〜8のα−オレフィンコモノマーであり、より好ましくは炭素数2〜6のα−オレフィンコモノマーである。もしくは、これらα−オレフィンコモノマー同士2種類以上の共重合体も用いることができる。またα−オレフィンモノマーと酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどのコモノマーとの共重合体、芳香族ビニルモノマーと共役ジエンモノマーとから選ばれる2種以上のモノマーの共重合体の水素添加体なども用いることができる。
これらのオレフィン系重合体は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(C)成分のポリオレフィンとしては、分子量が重量平均分子量Mwで2,000以上であるものが好ましく、5,000以上であるものがより好ましく、10,000以上であるものが特に好ましく、また、1,000,000以下であるものが好ましく、800,000以下であるものがより好ましく、600,000以下であるものが特に好ましい。また、分子量分布Mw/Mnは、特に限定されないが、通常1以上、好ましくは2以上であって、通常10以下、好ましくは7以下、より好ましくは5以下である。
ポリオレフィンがポリプロピレンである場合、その立体規則性[mmmm]の下限は90%、好ましくは95%、さらに好ましくは97%である。立体規則性[mmmm]の上限は、通常得られるポリプロピレンであれば特に制限は無い。立体規則性[mmmm]は前述の[1]ポリオレフィン(a)の項で説明したように、13C−NMRを用いて求めることができる。
[各成分の割合]
本発明のセルロース繊維樹脂組成物に含まれる(A)〜(C)成分の含有割合は、これらの成分の合計量((A)〜(C)成分の合計)に対して、(A)成分のセルロース繊維の割合の下限が5重量%であることが好ましく、10重量%であることがより好ましく、15重量%であることが特に好ましい。また、(A)成分のセルロース繊維の割合の上限が95重量%であることが好ましく、85重量%であることがより好ましく、75重量%であることが特に好ましい。
一方、(B)成分のポリオレフィンに親水性高分子及び/又は酸性基が結合してなる重合体の割合の下限が5重量%であることが好ましく、10重量%であることがより好ましく、15重量%であることが特に好ましい。また、(B)成分のポリオレフィンに親水性高分子及び/又は酸性基が結合してなる重合体の割合の上限が95重量%であることが好ましく、90重量%であることがより好ましく、85重量%であることが特に好ましい。
また、(C)成分の(B)成分以外のポリオレフィンの割合の下限が10重量%であることが好ましく、15重量%であることがより好ましく、20重量%であることが特に好ましい。また、(C)成分のポリオレフィンの割合の上限が90重量%であることが好ましく、85重量%であることがより好ましく、80重量%であることが特に好ましい。
(A)成分のセルロース繊維の含有割合が前記範囲未満では低線膨張係数が発現し難くなり、前記範囲超過では、成形が困難になる。また、(B)成分のポリオレフィンに親水性高分子及び/又は酸性基が結合してなる重合体が前記範囲未満では(A)成分のセルロース繊維の分散が不十分になり、ひいては組成物が低線膨張係数を発現し難くなり、前記範囲超過では、線膨張係数の低下が小さくなる。
また、(C)成分の(B)成分以外のポリオレフィンの含有割合が前記範囲未満では製造コストが過大になるため工業的に好ましくなく、前記範囲超過ではセルロース繊維添加による線膨張係数低下効果が小さくなる。
[その他の成分]
本発明のセルロース繊維樹脂組成物には、必要に応じて、上記(A)〜(C)成分以外の他の成分が含まれていてもよい。
本発明のセルロース繊維樹脂組成物に含まれていてもよい他の成分としては、ポリオレフィン系樹脂組成物に通常用いられる各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、造核剤、中和剤、滑剤、ブロッキング防止剤、分散剤、流動性改良剤、離型剤、難燃剤、発泡剤、着色剤、充填材等の添加剤が挙げられ、これらの成分の含有割合は、通常、前記(A)〜(C)成分の合計に対して60重量%以下である。
なお、燃焼時のアッシュの発生をなくすという目的から、無機充填材や無機繊維については可能な限り含有量を少なくすることが望ましい。
[線膨張係数]
本発明のセルロース繊維樹脂組成物は、線膨張係数が120ppm/K以下の低線膨張係数の組成物である。この線膨張係数はより好ましくは110ppm/K以下である。ただし、線膨張係数は通常10ppm/K以上である。
{セルロース繊維樹脂組成物の製造方法}
本発明のセルロース繊維樹脂組成物を得る方法としては、特に制限はないが、好ましくは、(A)成分のセルロース繊維と(B)成分のポリオレフィンに親水性高分子及び/又は酸性基が結合してなる重合体を予め混合し、得られた組成物に、更に(C)成分のポリオレフィンを混合する方法が好ましく、これにより、セルロース繊維の均一分散性に優れ、低線膨張係数の発現に優れたセルロース繊維樹脂組成物が得られる。
(A)セルロース繊維と(B)ポリオレフィンに親水性高分子及び/又は酸性基が結合してなる重合体を混合する方法は特に制限されないが、溶媒中で混合することが好ましい。
なお、ここで溶媒としては水を用いることが好ましいが、その他、水と他の有機溶媒、具体的には、後述の溶媒(s2)との混合溶媒を用いても良く、また、場合により、後述の溶媒(s1)が含まれていてもよい。
[(B)ポリオレフィンに親水性高分子及び/又は酸性基が結合してなる重合体の水性分散体の製造方法]
本発明のセルロース繊維樹脂組成物は、(A)セルロース繊維の水性分散体に、(B)ポリオレフィンに親水性高分子及び/又は酸性基が結合してなる重合体(以下「重合体(B)」と称す場合がある。)の水分散体を予め混合して得られる組成物に、更に(C)ポリオレフィンを混合して製造することが好ましい。
以下に本発明のセルロース繊維樹脂組成物の製造に好適に用いられる重合体(B)の水性分散体の製造方法の態様の一例について説明する。
本態様では、重合体(B)が、20℃における水の溶解度が1.0重量%未満である溶媒(s1)(この溶媒(s1)は、通常、重合体(B)の製造に用いられた溶媒である。)に溶解されてなる溶液(B−s1)に対し、20℃における水の溶解度が1.0重量%以上の溶媒(s2)及び水を加えて分散させる分散工程、及び、その後、少なくとも該溶媒(s1)及び溶媒(s2)を留去する留去工程を含む。
ある溶媒に対する水の溶解度とは、溶媒と水の相互溶解度のうち、その溶媒に飽和溶解する水の量であり、溶媒に水が飽和溶解した溶液100g中の水の含有量で表す。水の溶解度を測定する方法は、例えば、Solvents Guide(C.Marsden編、Cleaver Hume Press Ltd.,London(1963)p.73)等に記載の方法を用いることができる。簡便には、「第4版 実験化学講座1 基本操作1 日本化学会編 丸善出版」153頁を参考にすることができる。水と溶媒とを20℃において十分撹拌し飽和平衡になった後静置し、2相が完全に分離するのを待ち、上相又は下相をピペットなどでサンプリングし、ガスクロマトグラフィーなどで定量する。
溶液(B−s1)の溶媒(s1)は20℃における水の溶解度が1.0重量%未満である。水の溶解度が1.0重量%以上では通常、ポリオレフィンの溶解性に乏しく、ポリオレフィンの重合や変性の際の溶媒として用いるのが困難である。溶媒(s1)の水の溶解度は好ましくは0.8重量%以下であり、より好ましくは0.5重量%以下であり、更に好ましくは0.3重量%以下である。水の溶解度の下限値は特に無いが、本発明の目的に照らして、ポリオレフィンやそのポリオレフィンに親水性高分子及び/または酸性基が結合してなる重合体を溶解しうる溶媒である必要がある。
このような水の溶解度を持つ溶媒として、好ましくは、ハロゲン化されていてもよい炭化水素系溶媒が挙げられる。具体的には芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、及びハロゲン化炭化水素からなる群より選ばれる1以上が挙げられる。例えば、芳香族系炭化水素としては、トルエン、キシレン等が挙げられる。脂肪族炭化水素は鎖式、環式の両方を含み、ヘキサン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素としては塩化メチレン、四塩化炭素、クロルベンゼン等が挙げられる。これらの溶媒は単独で溶媒(s1)として用いることができる。環境面からはハロゲンを含まない炭化水素系溶媒がより好ましい。
溶媒(s2)は、20℃における水の溶解度が1.0重量%以上のものである。溶媒(s2)の水の溶解度が1.0重量%未満では、重合体(B)の貧溶媒である水が良溶媒である溶媒(s2)に浸透せず、ポリオレフィンが微細粒子を形成しないためである。溶媒(s2)の水の溶解度は好ましくは20.0重量%以上であり、さらに好ましくは50.0重量%以上であり、さらに好ましくは80.0重量%以上であり、より好ましくは完全に混和する(水の溶解度が無限大)ことである。
このような適度な水の溶解度を持つ溶媒として、好ましくは、ケトン、アルコール及びエーテルからなる群より選ばれる1以上が挙げられる。例えば、ケトン類としては、アセトン(無限大)、メチルエチルケトン(10.4重量%)、メチルプロピルケトン(3.3重量%)、シクロヘキサノン(9.5重量%)等が挙げられる。アルコール類としては、メタノール(無限大)、エタノール(無限大)、n−プロパノール(無限大)、イソプロパノール(無限大)、n−ブタノール(20重量%)、2−ブタノール(44重量%)、イソブタノール(16重量%)、1−ペンタノール(7重量%)、シクロヘキサノール(11重量%)、エチレングリコール(無限大)、1,2−プロピレングリコール(無限大)、1,3−プロピレングリコール(無限大)、2−メトキシエタノール(無限大)、2−エトキシエタノール(無限大)、2−ブトキシエタノール(無限大)、2−メトキシプロパノール(無限大)、2−エトキシプロパノール(無限大)、ジアセトンアルコール(無限大)等が挙げられる。エーテル類としては、テトラヒドロフラン(無限大)等が挙げられる。なお括弧内は20℃における水の溶解度を表す(出典:溶剤ハンドブック(講談社)1976年発行)。
溶媒(s2)の沸点は水よりも低いことが好ましい。即ち沸点が100℃未満である。これは、分散後に留去して除きやすいためである。好ましくは沸点が95℃以下であり、より好ましくは90℃以下である。好ましい溶媒(s2)としては具体的にはn−プロパノール、イソプロパノール、2−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
2種類以上の溶媒を混合したものを溶媒(s1)や(s2)として用いてもよい。この場合、混合後の20℃における水の溶解度が上記範囲であればよい。但し、留去後の回収、再利用のしやすさ等を考慮すると、溶媒1種を単独で溶媒(s1)や(s2)として用いることが好ましい。
重合体(B)を溶媒(s1)に溶解した溶液(B−s1)の溶媒(s1)の使用量は、重合体(B)溶解後の重合体(B)濃度が5〜60重量%の範囲であることが好ましい。溶媒の使用効率を考慮すると、重合体(B)の量に対して溶媒(s1)が多すぎないことが望ましく、重合体(B)の濃度として5重量%以上が好ましい。より好ましくは10重量%以上である。一方、溶液粘度が高すぎず均一な攪拌が行え、均一な分散体を得るためには、重合体(B)の濃度は60重量%以下が好ましい。より好ましくは50重量%以下である。
重合体(B)は、予めこのような溶媒(s1)に溶解されてなる。溶解時には必要に応じて加熱してもよく、この場合の加熱濃度は通常、20℃〜150℃の温度範囲である。溶解はまた通常、1MPa以下の圧力下で行われる。但し、圧力は通常0.01MPa以上であり、最も好ましくは0.101MPa程度である。
次いで、この溶液(B−s1)に溶媒(s2)と水を加えて分散させる分散工程へ移る。この分散時にも必要に応じて加熱してもよい。分散工程は、通常、20℃〜150℃の温度範囲で行うことが好ましい。また、分散工程は、通常1MPa以下の圧力下で行うことが好ましい。より好ましくは0.5MPa以下であり、更に好ましくは0.2MPa以下である。但し、圧力は通常0.01MPa以上であり、最も好ましくは0.101MPa程度である。一般に、高温・高圧であれば分散は行いやすいものの、高温・高圧に耐える高価な装置を用いたり、高温・高圧とするため大きなエネルギーが必要となったりする。本発明に係る重合体(B)の水性分散体の製造方法によれば、高圧にする必要がなく、重合体(B)の分散が簡便に行えるので、高価な装置が不要であり大きなエネルギーも必要なく、製造プロセス上、非常に有用である。
分散工程において加える溶媒(s2)と水の量は、溶媒(s1)、溶媒(s2)の沸点によっても異なるが、通常、重量比で[溶媒(s1)]:[溶媒(s2)+水]=5:95〜95:5の範囲、好ましくは10:90〜50:50の範囲とする。また、溶媒(s2)と水の量は、通常、重量比で(s2):水=5:95〜95:5の範囲、好ましくは20:80〜80:20の範囲とする。
即ち、留去工程を行うに際し、溶媒(s1)、溶媒(s2)及び水の共沸点での溶媒(s1)の組成分率より溶媒(s1)の組成分率が小さいことが望ましい。溶媒(s1)が優先的に留去されやすいため、水性分散体を製造しやすいためである。
水と溶媒(s2)の添加速度は、重合体(B)の溶媒(s1)溶液(B−s1)100gに対し、水と溶媒(s2)の合計100gであれば0.01時間〜10時間程度の時間をかけて加えるのが好ましい。添加方法は特に限定されないが、通常、滴下にて加える。水と溶媒(s2)添加時には、溶液(B−s1)は必要に応じて攪拌または振とうする。
次いで、重合体(B)、溶媒(s1)、溶媒(s2)、及び水の混合分散体から溶媒(s1)、溶媒(s2)を留去する。この際の圧力は特に限定されず、溶媒(s1)、溶媒(s2)の沸点や分散体の温度にもよるが、通常減圧下であり、好ましくは0.101MPa〜0.001MPaの範囲である。この時、通常、一部の水も共に留出する。
溶媒(s1)、溶媒(s2)留去後の重合体(B)の水性分散体中の溶媒(s1)及び溶媒(s2)の合計量は、通常10重量%以下とする。好ましくは5重量%以下とし、更に好ましくは2重量%以下とする。
溶液(B−s1)への溶媒(s2)及び水の添加と、溶媒(s1)、溶媒(s2)の留去の順序は下記(x)、(y)、(z)が考えられるが、この何れの方法も用いうる。
(x)水と溶媒(s2)を全量添加後、溶媒(s1)と溶媒(s2)の留去を行う。
(y)水と溶媒(s2)を一部添加後、溶媒(s1)と溶媒(s2)を一部留去する。この操作を繰り返し行う。
(z)水と溶媒(s2)を添加しながら、溶媒(s1)と溶媒(s2)を連続的に留去する。
なお、水、溶媒(s1)、及び溶媒(s2)を共沸する場合、水も溶媒(s1)や溶媒(s2)と共に一部留去されるが、最終的に水性分散体に必要な量の水が残っていればよい。
本態様の水性分散体の製造方法においては、また、重合体(B)製造時の変性工程後の反応液として得られた、溶媒(s1)に重合体(B)が分散された分散液を、溶媒(s1)に対する20℃における溶解度が1.0重量%未満である溶媒(s3)で洗浄する洗浄工程を含んでいても良い。
溶媒(s3)は、溶媒(s1)に対する20℃における溶解度が1.0重量%未満であって、上記溶液中の不純物(未反応物、副反応物等)を抽出除去しうるものであれば特に限定されず、水、アルコールなどが挙げられるが、好ましくは水である。
洗浄方法は、通常、まず変性ポリオレフィンの溶媒(s1)溶液に、溶媒(s3)を加えて攪拌又は振とうを行ったのち静置し、溶媒(s1)層と溶媒(s3)層とに分離した後、溶媒(s3)層を抜き出す。この作業を1サイクルとして、これを1回以上行う。数回繰り返すことにより不純物の除去率を上げることができる。繰り返し回数は特に限定されず、不純物が十分に除去できればよいが、通常30回程度までである。
1回の洗浄で使用する溶媒(s3)の量は特に限定されないが、溶媒(s1)に対して重量比で通常1/10〜10倍程度である。
攪拌又は振とうを行う時間も特に限定されないが、通常、1分〜10時間程度である。
洗浄の際の溶媒(s3)の温度は、溶媒(s1)、(s3)の沸点にも依るが、通常5〜90℃である。不純物の抽出除去性能を高めるためには温度が5℃より高いほうが好ましい。より好ましくは15℃以上であり、更に好ましくは25℃以上であり、特に好ましくは35℃以上である。一方、変性ポリオレフィンの劣化を防ぎ、また作業性を高めるためには温度は90℃より低い方が好ましい。より好ましくは80℃以下であり、更に好ましくは70℃以下である。
溶媒(s3)での洗浄工程後、通常、溶媒(s1)中には溶媒(s3)が一部残存する。その量は、通常、溶媒(s1)に対して40重量%以下である。この溶媒(s3)は、目的に応じて、除去せずそのまま用いてもよいし、できるだけ除去してもよい。除去することで後の反応等に良い影響があれば除去するのが好ましいが、そうでなければ工程の簡略化のために除去しなくてよい。溶媒(s3)をできるだけ除去するには、例えばディーン・スターク等の脱溶媒装置等を用いることができる。
なお、本方法において分散とは、分散粒子が極めて小さく単分子で分散している状態、実質的には溶解と言えるような状態を含む概念である。
[セルロース繊維樹脂組成物の製造方法]
水中で(A)セルロース繊維と重合体(B)とを混合し、得られた組成物に更に(C)ポリオレフィンを混合して本発明のセルロース繊維樹脂組成物を製造する、好適な方法について以下に説明する。
なお、以下においては、溶媒として水を用いた場合を例示して説明するが、水の代りに前述の溶媒を用いることもできる。
(A)セルロース繊維と重合体(B)とを水中で混合するには、セルロース繊維の水性分散体と重合体(B)の水性分散体を混合することが好ましい。
この際の、セルロース繊維水性分散体のセルロース繊維濃度の下限は、通常、0.1重量%、好ましくは0.3重量%、より好ましくは0.5重量%であり、上限は10重量%、好ましくは5重量%、より好ましくは1重量%である。セルロース繊維濃度が上記下限未満であると、水が多量になり、後処理で水を除去するのに、過大な労力とエネルギーが必要になる。セルロース繊維濃度が上記上限超過になると、粘度が高くなり、取り扱いが困難になる。
重合体(B)の水性分散体としては、前述の方法で製造された重合体(B)の水性分散体を用いる。この水分散体中の重合体(B)濃度の下限は、特に限定されないが、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましく、15重量%以上が特に好ましい。また、重合体(B)の水分散体中の重合体(B)濃度の上限は、特に限定されないが、70重量%以下が好ましく、60重量%以下がより好ましく、50%以下が特に好ましい。重合体(B)濃度が上記下限未満では、水が多量になり、後処理で水を除去するのに、過大な労力とエネルギーが必要になる。重合体(B)濃度が上記上限超過では粘度が高くなり、取り扱いが困難になる。
混合温度は、混合系が液体状態である範囲であれば特に制限されないが、通常室温から80℃で行なう。室温より低温、または80℃より高温で混合を行なうとエネルギーが無駄になる。また、混合の際には、攪拌、振とう等を伴って行なうとより効率的である。混合時間は、通常、1分以上が好ましく、5分以上がより好ましい。また、3時間以下が好ましく、1時間以下がより好ましい。1分未満では、混合不良になるおそれがあり、3時間よりも長く実施しても、特段の性能向上は無い。
次いで得られたセルロース繊維・重合体(B)の混合水性分散体から水を除去する。水の除去は、通常、室温から100℃の温度範囲で、大気中で自然乾燥する方法、真空乾燥機・エバポレーターで水を除去する方法などが挙げられるが、いずれの手法で水を除去しても同様の効果が得られる。
以下、このようにして、セルロース繊維・重合体(B)の混合水性分散体から水を除去して得られる組成物を「組成物(A−B)」と称す場合がある。
この組成物(A−B)に含まれる水の量は、重量比で水/組成物(A−B)が3/100以下であることが好ましく、1/100以下であることが更に好ましい。
なお、この組成物(A−B)に含まれる水量は、TPD−MSによって測定することが可能である。
セルロース繊維・重合体(B)の混合水性分散体から水除去して得た組成物(A−B)は、そのまま次の工程に用いてもよいし、裁断、粉砕してから次の工程に用いてもよいが、裁断、粉砕したほうが、取り扱いが容易である。裁断、粉砕方法は、特に制限されない。
この組成物(A−B)と(C)(B)成分以外のポリオレフィンとを混合して本発明のセルロース繊維樹脂組成物を調製するには、両者を必要に応じて用いられる前述の添加剤等と共に、タンブラーブレンダー、リボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等により均一に混合した後、一軸又は二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、ブラベンダー等により溶融混練する。その際の混練条件としては、好ましくは100℃程度以上、より好ましくは150℃程度以上、かつ300℃程度以下、より好ましくは250℃程度以下の温度で、好ましくは0.5〜30分程度の時間が採られる。
本発明のセルロース繊維樹脂組成物の成形方法には、通常の熱可塑性樹脂組成物の成形方法と同様の方法をいずれも適用することができる。具体的には、射出成形、押出成形、中空成形、発泡成形等を採ることができる。
[用途]
本発明のセルロース繊維樹脂組成物は、その低線膨張係数、高弾性、高強度等の特性を生かして構造材料として用いることができる。特に、自動車内装材、外板、バンパー等の自動車材料や家庭電気製品の筐体、家電部品、包装用資材、建築資材、土木資材、水産資材、その他工業用資材等として好適に用いられる。
以下、製造例、実施例および比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
尚、本発明のセルロース繊維樹脂組成物の線膨張係数の測定方法、ならびにポリオレフィンの物性の測定方法は以下の通りである。
<物性測定方法及び評価方法>
(1)立体規則性
ポリプロピレンの立体規則性[mmmm]は、NMR装置(日本電子(株)製、400MHz)にて13C−NMRスペクトル測定法により測定した。
試料350〜500mgを、10mmφのNMR用サンプル管中で、約2.2mlのオルトジクロロベンゼンを用いて完全に溶解させた。次いで、ロック溶媒として約0.2mlの重水素化ベンゼンを加え、均一化させた後、130℃でプロトン完全デカップリング法により測定を行った。
測定条件は、フリップアングル90°、パルス間隔5T以上(Tは、メチル基のスピン格子緩和時間のうち最長の値)とした。
プロピレン系重合体において、メチレン基及びメチン基のスピン格子緩和時間はメチル基のそれよりも短いので、この測定条件では、すべての炭素の磁化の回復は99%以上である。ケミカルシフトは、頭尾(head to tail)結合からなるプロピレン単位連鎖部の10種類のペンタッド(mmmm,mmmr,rmmr,mmrr,mmrm,rmrr,rmrm,rrrr,rrrm,mrrm)のうち、メチル分岐の絶対配置がすべて同一である、すなわち、mmmmで表されるプロピレン単位5連鎖の第3単位目のメチル基に基づくピークのピークトップのケミカルシフトを21.8ppmとして設定し、これを基準として、他のピークのピークトップのケミカルシフトを決定した。この基準では、例えば、その他のプロピレン単位5連鎖の場合、第3単位目のメチル基に基づくピークのピークトップのケミカルシフトはおおむね次のようになる。すなわち、mmmr:21.5〜21.7ppm、rmmr:21.3〜21.5ppm、mmrr:21.0〜21.1ppm、mmrmおよびrmrr:20.8〜21.0ppm、rmrm:20.6〜20.8ppm、rrrr:20.3〜20.5ppm、rrrm:20.1〜20.3ppm、mrrm:19.9〜20.1ppmである。
(2)分子量
試料10mgを30mlのバイアル瓶に採取し、BHT(ブチルヒドロキシトルエン)0.03重量%を含有するテトラヒドロフラン10gを加え、オーブン50℃で1時間加熱溶解し一晩放置した。放置後の溶液を0.45μmPTFEフィルターで濾過し測定に供した。カラムとしてTosoh TSKgel MultiporeHxl−M(7.8mmI.D.×30cmL×2)を用い、RI検出器を装備した東ソー社製GPC8020を使用し、GPC測定を行った。測定条件としては、試料溶液のインジェクション量:100μl、カラム温度:40℃、溶媒:テトラヒドロフラン(BHT0.03%含有)、流量:1.0ml/minを採用した。
分子量の算出に際しては、標準試料として市販の単分散のポリスチレンを使用して三次曲線の較正曲線を作成し、ポリスチレン換算で分子量を計算した。
(3)融点
融点はパーキンエルマー社製Diamond DSC示差走査熱量測定装置を用いて測定した。重合体試料5mgを装置にセットし、20℃で1分間保持したのち10℃/分で210℃まで昇温、210℃で5分間保持した後、10℃/分で−20℃まで降温、−20℃で5分間保持した後、再度10℃/分で210℃まで昇温し、2回目の昇温時における吸熱ピークを融点Tmとした。
(4)グラフト率
重合体200mgとクロロホルム4800mgを10mlのサンプル瓶に入れて50℃で30分加熱し完全に溶解させた。材質NaCl、光路長0.5mmの液体セルにクロロホルムを入れ、バックグラウンドとした。次に、溶解した重合体溶液を液体セルにいれて、日本分光(株)製FT−IR460plusを用い、積算回数32回にて赤外線吸収スペクトルを測定した。無水マレイン酸のグラフト率は、無水マレイン酸をクロロホルムに溶解した溶液を測定し検量線を作成したものを用いて計算した。そしてカルボニル基の吸収ピーク(1780cm−1付近の極大ピーク、1750〜1813cm−1)の面積から、別途作成した検量線に基づき、重合体中の酸成分含有量を算出し、これをグラフト率(重量%)とした。
(5)線膨張係数
試料をレーザーカッターにより、3mm幅×40mm長にカットした。これを、SII製TMA120を用いて引っ張りモードでチャック間20mm、荷重10g、窒素雰囲気下、室温から180℃まで5℃/min.で昇温、180℃から25℃まで5℃/min.で降温、25℃から180℃まで5℃/min.で昇温した際の2度目の昇温時の60℃から100℃の測定値から線膨張係数を求めた。
[製造例1:ポリプロピレンの製造]
1,000ml丸底フラスコに、脱塩水110ml、硫酸マグネシウム・7水和物22.2g及び硫酸18.2gを採取し、攪拌下に溶解させた。この溶液に、市販の造粒モンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL)16.7gを分散させ、2時間かけて100℃まで昇温し、100℃で2時間攪拌を行った。その後、1時間かけて室温まで冷却し、得られたスラリーを濾過してウェットケーキを回収した。回収したケーキを1,000ml丸底フラスコにて、脱塩水500mlにて再度スラリー化し、濾過を行った。この操作を2回繰り返した。最終的に得られたケーキを、窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥し、化学処理モンモリロナイト13.3gを得た。
得られた化学処理モンモリロナイト4.4gに、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.4mmol/ml)20mlを加え、室温で1時間攪拌した。この懸濁液にトルエン80mlを加え、攪拌後、上澄みを除いた。この操作を2回繰り返した後、トルエンを加えて、粘土スラリー(スラリー濃度=99mg粘土/ml)を得た。
別のフラスコに、トリイソブチルアルミニウム(東ソー・アクゾ社製)0.2mmolを採取し、ここで得られた粘土スラリー19ml及びジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)ハフニウム131mg(57μmol)のトルエン希釈液を加え、室温で10分間撹拌し、触媒スラリーを得た(触媒の製造方法等については特開2004−002310号公報に記載の方法に準じた)。
次いで、内容積24リッターの誘導攪拌式オートクレーブ内に、トルエン11L、トリイソブチルアルミニウム3.5mmol及び液体プロピレン2.64Lを導入した。室温で、上記触媒スラリーを全量導入し、63℃まで昇温し重合時の全圧を0.65MPaで一定に保持しながら、同温度で2時間攪拌を継続した。攪拌終了後、未反応プロピレンをパージして重合を停止した。オートクレーブを開放してポリマーのトルエン溶液を全量回収し、粘土残渣をADVANTEC社60番濾紙で除去したところ、11.5重量%のポリプロピレントルエン溶液を11kg(1.26kgポリプロピレン)得た。
得られたポリプロピレンの重量平均分子量Mwは368,000、数平均分子量Mnは160,000、分子量分布Mw/Mnは2.3、立体規則性[mmmm]は47.2%、融点Tmは70.4℃であった。
[製造例2:ポリアルキレングリコール変性ポリプロピレンの製造]
製造例1で製造したポリプロピレントルエン溶液を一部分取し、100℃で乾燥させ、溶媒を完全に除去した。500mLガラスフラスコに還流冷却管、温度計、攪拌機を取り付け、得られたポリプロピレン60gとトルエン117gを入れ、容器内を窒素ガスで置換し、120℃に昇温し、ポリプロプレンを完全に溶解させた。その後、無水マレイン酸3.6gを加え、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボナート(日本油脂社製パーブチルI)1.8gを加え、5時間同温度で攪拌を続けて反応を行った。赤外吸収スペクトル分析で830cm−1付近に見られる無水マレイン酸の二重結合による吸収が5時間後には消滅し、全て反応したことが観測された。また反応溶液を一部採取しアセトンを加えて沈殿させ、さらにアセトンで沈殿・濾別を繰り返し未反応物および副生成物を除去した無水マレイン酸変性ポリマーを得た。反応終了後、メチルエチルケトン150gを加え、30分攪拌し、その後室温まで冷却した。さらにアセトン260mlを導入し、ポリマーを析出させた。その後、濾紙で濾過し、80℃で5時間乾燥することにより、マレイン酸変性ポリプロピレン59.7gを得た。グラフト率は0.90重量%であった。
還流冷却管、温度計、攪拌機のついたガラスフラスコ中に、上記で得られた無水マレイン酸変性ポリプロピレン50g、トルエン117gを導入し、120℃に昇温した。無水マレイン酸変性ポリプロピレンが完全に溶解したら、液温を80℃まで下げた。次いで、メトキシポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)−2−プロピルアミン(ハンツマン社製ポリエーテルアミン;ジェファーミンM−1000、分子量1,000(公称値))10g(10mmol)をイソプロパノール10gに溶解した溶液を加え、80℃で3時間反応させた。
反応物を少量採取してトルエンを減圧留去したサンプルについて、赤外吸収スペクトル分析を行った結果、1,784cm-1付近の無水マレイン酸に相当するピークは消滅し、無水マレイン酸変性ポリプロピレンとポリエーテルアミンが完全に結合していることが観察された。無水マレイン酸変性ポリプロピレンにポリエーテルアミンがグラフト結合したグラフト共重合体を形成していた。ポリプロピレン1g当たりのポリエーテルアミンの結合割合は0.09mmol/gであった。
さらにイソプロパノール200gと水50gの混合液を80℃に保ちながら40分かけて滴下した。50℃で溶媒を減圧留去した後、イソプロパノール68.3gと水273gの混合液を導入しながら、溶媒量が変わらないように溶媒を減圧除去した。導入終了後、さらに減圧蒸留を継続した。得られたエマルジョンを400メッシュの金網で濾過し、363gの樹脂分散液を得た。この樹脂分散液の樹脂固形分は16.2重量%であった。また、樹脂固形分の重量平均分子量Mwは143,000、数平均分子量Mnは14,000、分子量分布Mw/Mnは10、またアイソタクチック立体規則性[mmmm]は、46.3%であった。
[製造例3:セルロース繊維水分散液の製造]
木粉((株)宮下木材、米松100)を炭酸ナトリウム2重量%水溶液で80℃にて6時間脱脂した。脱塩水で洗浄した後、亜塩素酸ナトリウムを用いて酢酸酸性下80℃にて5.5時間脱リグニンした。脱塩水洗浄した後にさらに水酸化カリウム5重量%水溶液に16時間浸漬して脱ヘミセルロースした。脱塩水洗浄した後に、0.5重量%の水分散液とし、アルティマイザー(スギノマシン製)に245MPaで5回通した。固形分0.544重量%のセルロース繊維水分散液を得た。
[実施例1]
製造例2で得られた無水マレイン酸変性ポリプロピレンにポリエーテルアミンがグラフト結合したグラフト共重合体の水分散液6.17g(固形分1.00g)と、製造例4で得られたセルロース繊維分散液184g(固形分1.00g)を300ml丸底フラスコに導入し、50℃で1時間攪拌した。その後、溶媒を減圧留去し、80℃の真空乾燥機で8時間乾燥させた。セルロース・変性ポリプロピレン組成物1.85gを得た。このうち、1.80gを分取し、アイソタクチックポリプロピレン(日本ポリプロピレン社製:MA1B,JIS K7210:1999によるMFR公称21g/10min)1.80g、イルガノックス1010(チバスペシャルティーケミカルズ社製)18mg、イルガフォス168(チバスペシャルティーケミカルズ社製)18mgとともに、東洋精機製作所製ラボプラストミルμを用いて、190℃で4分間混練した。その後、得られたセルロース・変性ポリプロピレン・ポリプロピレン複合体を熱プレスによりシート状に成形した。プレスは190℃で10秒間予熱した後、190℃、0.5MPaで30秒プレス、さらに室温、0.5MPaで一分間プレスした。得られたフィルムの線膨張係数を測定した。結果を表1に示した。
[比較例1]
製造例2と同様にして得た無水マレイン酸変性ポリプロピレンにポリエーテルアミンがグラフト結合したグラフト共重合体の水分散液から溶媒を減圧留去し、80℃の真空乾燥機で8時間乾燥させた。得られた共重合体1.67gとアイソタクチックポリプロピレン(日本ポリプロピレン社製:MA1B)3.33g、イルガノックス1010 25mg、イルガフォス168 25mgとともに、東洋精機製作所製ラボプラストミルμを用いて、190℃で4分間混練した。その後、共重合体・ポリプロピレン複合体を熱プレスによりシート状に成形した。プレスは190℃で10秒間予熱した後、190℃、0.5MPaで30秒プレス、さらに室温、0.5MPaで一分間プレスした。得られたフィルムの線膨張係数を測定した。結果を表1に示した。
[比較例2]
アイソタクチックポリプロピレン(日本ポリプロピレン社製:MA1B)4.00g、イルガノックス1010 20mg、イルガフォス168 20mgを混合し、熱プレスを用いてシート状に成形した。プレスは190℃で10秒間予熱した後、190℃、0.5MPaで30秒プレス、さらに室温、0.5MPaで一分間プレスした。得られたフィルムの線膨張係数を測定した。結果を表1に示した。
Figure 0005211704
実施例1、比較例1,2の結果から、(A)セルロース繊維と、(B)ポリオレフィンに親水性高分子及び/又は酸性基が結合してなる重合体と、(C)ポリオレフィンを含む本発明のセルロース繊維樹脂組成物は、非常に低い線膨張係数を示すことが分かる。なお、セルロース繊維は、有機物であるため、サーマルリサイクルのために燃焼しても、実質的にアッシュは発生しない。

Claims (5)

  1. 下記の(A)〜(C)成分を含むセルロース繊維樹脂組成物であって、
    (A)成分を5重量%以上、(B)成分を5重量%以上、(C)成分を90重量%以下含み、
    線膨張係数が120ppm/K以下であることを特徴とするセルロース繊維樹脂組成物。
    (A)平均繊維径が4〜400nmのセルロース繊維
    (B)ポリオレフィンに親水性高分子及び/又は酸性基が結合してなる重合体であって、
    該ポリオレフィンが、エチレン又はプロピレンの単独重合体、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレン及び/又はプロピレンとその他のコモノマーとの共重合体から選ばれるものであり、
    該親水性高分子が、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリエーテル樹脂から選ばれるものであり、
    該酸性基が、カルボン酸基、スルホ基、スルフィノ基、ホスホノ基から選ばれるものである重合体
    (C)(B)成分以外のポリオレフィンであって、エチレン又はプロピレンの単独重合体、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレン及び/又はプロピレンとその他のコモノマーとのオレフィン系共重合体から選ばれるポリオレフィン
  2. (B)成分のポリオレフィンがポリプロピレンであり、ポリプロピレン主鎖の重量平均分子量Mwが1,000から500,000、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnが10以下であり、13C−NMRによって観測されるmmmmペンタッドに帰属されるピークのケミカルシフトを21.8ppmとした場合の、19.8ppmから22.2ppmに現れるピークの総面積に対する21.8ppmをピークトップとするピークの面積の比率が10%から90%の範囲である請求項1に記載のセルロース繊維樹脂組成物。
  3. 繊維径が1500nm以上のセルロース繊維を含まない、請求項1または2に記載のセルロース繊維樹脂組成物。
  4. 前記セルロース繊維は化学修飾率が65mol%以下である、請求項1〜3の何れか一項に記載のセルロース繊維樹脂組成物。
  5. (A)成分と(B)成分とを水中で混合する工程を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のセルロース繊維樹脂組成物の製造方法。
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