本発明に係る燃料電池の好適な実施形態を図面を用いて説明する。図1は、燃料電池の主要部分の外観構成を示す斜視図である。
<燃料電池の全体構成>
燃料電池1は、機能的に大きく分けて、発電セル保持部Aと燃料ガス発生部Bに分けることができる。発電セル保持部Aには、燃料ガスである水素ガスの供給を受けて発電する発電セルC1〜C4(各発電セルを識別する必要のないときは発電セルCと表記)が保持されている。本実施形態では4つの発電セルCが、セル保持体6に保持されている。セル保持体6の一方の端面部には、基板2が取り付けられており、この基板2に電源供給端子3が取り付けられる。電源供給端子3はUSB端子などを用いることができるが、これに限定されるものではない。
燃料ガス発生部Bは、発電セルCに供給する燃料ガスとしての水素ガスを発生する機能を有する。燃料ガス発生部Bは、水収容部B1と燃料収容部B2から構成される。水収容部B1は、基板4を介して発電セル保持部Aの他方の端面部に取り付けられている。水収容部B1と燃料収容部B2は流路プレート5(流路形成部材)を介して連結されている。流路プレート5には内部に水の流路が形成されている。
水収容部B1内の水は、燃料収容部B2内に供給され、水と燃料との科学反応により水素ガスが発生する。発生した水素ガスは、発電セル保持部Aの各発電セルCへと供給される。
なお、燃料電池1の外観図を図1に示しているが、実際には不図示の外観部材が周囲を覆うように配置される。また、図1における上方・下方を便宜上、燃料電池1の上方・下方であるものとして説明するが、実際に燃料電池1が使用される場面における状態を示すものではない。
<発電セルの構成>
本発明に係る発電セルCについて図面を用いて説明する。図3はアノード側から見た外観斜視図、図4はカソード側から見た外観斜視図である。図5は、図3,4に示す発電セルの内部構造を示す分解斜視図であり、図6は、図3,4に示す燃料電池セルの縦断面図である。
本発明の発電セルCは、図3〜図6に示すように、板状の固体高分子電解質8と、その固体高分子電解質8の一方側に配置されたアノード側電極板9と、他方側に配置されたカソード側電極板10とを備え、これら一対の電極板9,10により固体高分子電解質8が挟持される形となっている。更に、アノード側電極板9の外側にアノード側金属板11が配置され、カソード側電極板10の外側にカソード側金属板12が配置される。アノード側金属板11とアノード側電極板9の間に形成される空間に水素ガスを通過させるための後述の流路溝13(第1ガス流路に相当)が形成されている。
各金属板11,12の周縁領域11a,12aは、固体高分子電解質8及び電極板9,10を収容した後に、カシメにより封止される。また、説明の便宜上、金属板11,12の周縁領域11a,12a以外の領域を中央領域11b,12bと称することにする。カシメ加工を行なう前は、図5に示すように、カソード側金属板12の周縁領域12aは垂直な立ち曲げ部となっており、これを内側へ倒し込むことによりアノード側金属板11の周縁領域11aと重ね合わせて封止することができる。この垂直な立ち曲げ部は、絞り加工により形成することができる。
固体高分子電解質8としては、従来の固体高分子膜型電池に用いられるものであれば何れでもよいが、化学的安定性及び導電性の点から、超強酸であるスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなる陽イオン交換膜が好適に用いられる。このような陽イオン交換膜としては、ナフィオン(登録商標)が好適に用いられる。その他、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂からなる多孔質膜に上記ナフィオンや他のイオン伝導性物質を含浸させたものや、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂からなる多孔質膜や不織布に上記ナフィオンや他のイオン伝導性物質を担持させたものでもよい。
固体高分子電解質8の厚みは、薄くするほど全体の薄型化に有効であるが、イオン伝導機能、強度、ハンドリング性などを考慮すると、10〜300μmが使用可能であるが、25〜50μmが好ましい。
電極板9,10は、ガス拡散層としての機能を発揮して、燃料ガスや、酸化ガス及び水蒸気の供給・排出を行なうと同時に、集電の機能を発揮するものが使用できる。電極板9,10としては、同一又は異なるものが使用でき、その基材には電極触媒作用を有する触媒を担持させることが好ましい。触媒は、固体高分子電解質8と接する内面9b,10bに少なくとも担持させるのが好ましい。
電極板9,10の電極基材としては、例えば、カーボンペーパー、カーボン繊維不織布などの繊維質カーボン、導電性高分子繊維の集合体などの電導性多孔質材が使用できる。一般に、電極板9,10は、このような電導性多孔質材にフッ素樹脂等の撥水性物質を添加して作製されるものであって、触媒を担持させる場合、白金微粒子などの触媒とフッ素樹脂等の撥水性物質とを混合し、これに溶媒を混合して、ペースト状或いはインク状とした後、これを固体高分子電解質膜と対向すべき電極基材の片面に塗布して形成される。
一般に、電極板9,10や固体高分子電解質8は、燃料電池に供給される還元ガスと酸化ガスに応じた設計がなされる。本発明では、酸化ガスとして空気が用いられると共に、還元ガスとして水素ガスを用いるのが好ましい。
例えば、水素ガスと空気を使用する場合、空気が自然供給される側のカソード側電極板10では、酸素と水素イオンの反応が生じて水が生成するため、かかる電極反応に応じた設計をするのが好ましい。特に、低作動温度、高電流密度及び高ガス利用率の運転条件では、特に水が生成する空気極において水蒸気の凝縮による電極多孔体の閉塞(フラッディング)現象が起こりやすい。したがって、長期にわたって燃料電池の安定な特性を得るためには、フラッディング現象が起こらないように電極の撥水性を確保することが有効である。
触媒としては、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、銀、ニッケル、鉄、銅、コバルト及びモリブデンから選ばれる少なくとも1種の金属か、又はその酸化物が使用でき、これらの触媒をカーボンブラック等に予め担持させたものも使用できる。
電極板9,10の厚みは、薄くするほど全体の薄型化に有効であるが、電極反応、強度、ハンドリング性などを考慮すると、50〜500μmが好ましい。電極板9,10と固体高分子電解質8とは、予め接着、融着等を行って積層一体化しておいてもよいが、単に積層配置されているだけでもよい。このような積層体は、膜/電極接合体M(Membrane Electrode Assembly:MEA)として入手することもでき、これを使用してもよい。
アノード側電極板9の表面にはアノード側金属板11が配置され、カソード側電極板10の表面にはカソード側金属板12が配置される。アノード側金属板11には燃料ガスである水素ガスのガス供給口11c及びガス排出口11dが設けられ、更に本実施形態では、アノード側金属板11の内側に水素ガスを通過させるための流路溝13(図6参照)が一体形成されている。
カソード側金属板12には、空気中の酸素を供給するための多数の開口孔12cが設けられている。開口孔12cは、カソード側電極板10が露出可能であれば、その個数、形状、大きさ、形成位置などは何れでもよい。カソード側金属板12の開口孔12cは、例えば、規則的又はランダムに複数の円孔やスリット等を設けたり、または金属メッシュによって開口孔12cを設けたりしてもよい。
金属板11,12としては、電極反応に悪影響がないものであれば何れの金属も使用でき、例えばステンレス板、ニッケル、銅、銅合金などが挙げられる。但し、伸び、重量、弾性率、強度、耐腐食性、プレス加工性、エッチング加工性などの観点から、ステンレス板、ニッケルなどが好ましい。
アノード側金属板11に設けられる流路溝13は、アノード側電極板9との接触により水素ガス等の流路が形成できるものであれば何れの平面形状や断面形状でもよい。本実施形態では、ガス供給口11cとガス排出口11dとを流路溝13により接続しており、その流路溝13は、金属板11の幅方向に沿って周期的に折り返すジグザグ状に形成されている。流路溝13は、幅が広い横方向の溝(長辺方向)と幅が狭い縦方向の溝(短辺方向)とで構成されている。流路密度、燃料電池セル積層時の積層密度、屈曲性などを考慮して、種々の形態の流路溝13を採用することができ、図示の形態に限定されるものではない。
なお、このような金属板11に形成される流路溝13の一部を電極板9の外面に形成してもよい。電極板9の外面に流路溝を形成する方法としては、加熱プレスや切削などの機械的な方法でもよいが、微細加工を好適に行う上で、レーザ照射によって溝加工を行うことが好ましい。レーザ照射を行う観点からも、電極板9,10の基材としては、繊維質カーボンの集合体が好ましい。
金属板11の流路溝13に連通するガス供給口11c及びガス排出口11dは、図示ではそれぞれ1個であるが、それぞれ複数を形成することもできる。なお、金属板11,12の厚みは、薄くするほど全体の薄型化に有効であるが、強度、伸び、重量、弾性率、ハンドリング性などを考慮すると、0.1〜1mmが好ましい。
金属板11に流路溝13を形成する方法としては、金属板に対してプレス加工(打ち出し加工)を行うことで形成することができる。すなわち、図5に示す金属板11において裏面側からプレス打ち出し加工を行うことで、各図に示すように金属板11の裏面側に流路溝13を形成することができる。また、打ち出し加工により流路溝13を形成するので、各図に示すように金属板11の表面側には、流路溝13と同じ形状が表れる。すなわち、幅広の流路溝13に対応して幅広の突出部11f、幅狭の流路溝13に対応して幅狭の突出部11e、ガス供給口11cやガス排出口11dの周囲にも幅広の突出部11gが表れる。流路溝13の断面形状は、略四角形、略台形、略半円形、V字形などが好ましい。
金属板12への開口孔12cの形成、金属板11へのガス供給口11c及びガス排出口11dの形成についても、プレス加工(プレス打ち抜き加工)を利用して行われる。さらに、金属板11,12には、同じくプレス加工(打ち出し加工)を利用して、中央領域11b,12bに凹部が形成される。この凹部は、図6に示すように、膜/電極接合体Mを構成する電極板9,10を収容するための凹部である。従って、凹部の面積は、収容される電極板9,10の大きさに応じて加工される。
本発明では、金属板11,12の周縁領域11a,12aは、電気的に絶縁した状態でカシメにより封止されている。電気的な絶縁は、絶縁シートを用いて行うが、固体高分子電解質8の周縁領域8aを介在させることで行うこともできる。
カソード側金属板12には、図5に示すようにリング状(額縁状)の絶縁シート14が周縁領域12aに配置される。絶縁シート14の外側の縁は金属板12の縁とほぼ同じ大きさに設定され、内側の縁は、多数の開口孔12cが形成される領域よりも少し大きなサイズ(あるいは、電極板10の大きさより少し大きなサイズ)に設定される。金属板12の周縁領域12aに予め絶縁シート14を貼り付けておき、その状態で周縁領域12aを垂直に立ち曲げる加工が行なわれる。
アノード側金属板11にも、図3に示すようにリング状(額縁状)の絶縁シート15が周縁領域11aの表裏両面に配置される。この表裏両面の絶縁シート15のサイズは同じである。絶縁シート15の外側の縁は金属板11の縁とほぼ同じ大きさに設定され、内側の縁は、電極板9よりも少し大きなサイズに設定される。この絶縁シート15も予め金属板11に貼り付けておくことができる。
固体高分子電解質8は、電極板9,10の大きさよりも少し大きくなっており、図6に示すように、電極板9,10から露出した状態にある周縁領域8aが、絶縁シート14,15により挟持されるように組み立てられる。
すなわち、本発明では、カシメ封止を行う際、電極板9,10よりも外側の領域にある固体高分子電解質8の周縁領域8aを絶縁シート14,15を介して、周縁領域11a,12aにより挟持した状態とする。このような構造によると、電極板9,10の一方から他方へのガス等の流入を効果的に防止することができる。また、金属板11の表面側にも絶縁シート15が設けられており、カシメ封止した際に、絶縁性能を確実に確保した状態で封止することができる。
絶縁シート14,15としては、シート状の樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマー、セラミックスなどが使用できるが、シール性を高める上で、樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマーなどが好ましい。絶縁シート14,15は、金属板11,12を所定の形状に加工する前に、直接あるいは粘着剤を介して貼着したり、塗布したりして、予め金属板11,12に一体化しておくことができる。
カシメ構造としては、シール性や製造の容易性、厚み等の観点から図6に示すものが好ましい。つまり、一方のカソード側金属板12の周縁領域12aを他方のアノード側金属板11の周縁領域11aより大きくしておき、絶縁シート14,15を介在させつつ、カソード側金属板12の周縁領域12aをアノード側金属板11の周縁領域11aを挟圧するように折り返したカシメ構造が好ましい。このようなカシメ封止を行うための製造方法及び製造設備については、例えば、本発明者らによる特開2006−86041号公報に開示される技術を用いることができる。
<セル保持体の構造>
次に、セル保持体6の構造について図2により説明する。図2は、セル保持体6を下方から見た斜視図である。セル保持体6は、全体として筒状枠体に形成されており、ABS等の樹脂により一体成形される。発電セルCは、セル保持体6の外表面に形成されたセル保持面60(セル載置部に相当)に密着する形で保持される。セル保持面60には、発電セルCを構成するアノード側金属板11側が密着するような形で保持される。
セル保持面60の形状は、図3等に示す発電セルCの外形形状(輪郭形状:長円形)に沿った形状を呈している。セル保持面60の周囲は、セル位置決め部62が形成されており、セル位置決め部62は、セル保持面60よりも少し高くなるように突出した状態に形成される。このようなセル位置決め部62を設けることで、発電セルCの概略の位置決めを行なうことができる。
また、セル保持体6の上下方向の中央部には、発電セルC同士を接続するための接続部材21を配置するための比較的幅広の第1溝部61aが形成されている。第1溝部61aは、セル保持体6の周囲を一周する帯状の外観を呈している。また、第1溝部61aと同じ面を有する第2溝部61bが上下方向に伸びる形で形成されている。この第2溝部61bは、発電セルCと電子回路とを接続する電極部材22,23を配置するために形成される。
セル保持体6の一方の端面には、ガス導入部63とガス排出部64が一体形成されている。ガス導入部63とガス排出部64は、共に柱状に形成されており、ガス導入穴63aとガス排出穴64aが夫々形成される。後述するが、これらガス導入部63とガス排出部64は、内部のガス流路(第2ガス流路)につながっている。ガス導入部63とガス排出部64は、正方形に形成される枠形状の角の位置に植設されている。これにより、他の部品の配置に邪魔にならないようにすることができ、スペースを有効に活用することができる。
セル保持面60には、矩形の凹部60aが形成され、その中央部に穴60bが形成される。この穴60bは、セル保持体6の内部に形成されるガス流路への入口部もしくは出口部として機能する。この穴60bは所定の深さを有する袋穴として形成される。
図9(b)に内部に形成される第2ガス流路の断面構造を示す。隣接する穴60b同士は、互いに直交するガス流路65a及び65b(第2ガス流路G2)により連結される。この第2ガス流路65a,65bにより、隣接して配置される発電セルCの内部に流路溝13(第1ガス流路G1)同士を連結させることができる。
第2ガス流路65a,65bの形成方法について説明する。ガス流路65aを形成するために、図示するように矢印65Aの方向からドリルにより穴を形成する。またガス流路65bを形成するために、図示するように矢印65Bの方向からドリルにより穴を形成する。上記のように穴を形成する場合、セル位置決め部62の表面に穴(加工跡)が残り、ガスが漏れてしまいガス流路として機能しないので、当該表面の穴をふさぐようにする。図9(b)に示すように、網掛け部を樹脂で封止することで、第2ガス流路65a,65bを閉鎖した状態で形成することができる。他の箇所についても同様である。
図2に示すように、ガス導入部63を介して矢印65Cの方向からドリルで上下方向にガス流路65cを形成し、矢印65Dの方向からドリルで水平方向にガス流路65dを形成する。これらは第3ガス流路に相当し、ガス流路65cと65d(これらは第3ガス流路G3に相当)は互いに直交する関係にある。また、矢印65Dの方向から形成する場合、先ほどと同様にガス漏れしないようにセル位置決め部62の表面の加工跡を樹脂で封止する。
ガス排出部64と他の第2ガス流路G2に関しても同様の方法により形成する。すなわち、図2に示すセル保持体6は、樹脂成型による1つの部品により形成することができる。セル保持体6の内部に形成される第2ガス流路65a,65b、第3ガス流路65c,65dは、二次加工により形成することで、セル保持体6内に一体的にガス流路を形成することができる。
図8は、発電セルC内部の第1ガス流路G1とセル保持体6内の第2ガス流路G2を接続するときの接続構造を示す断面図である。発電セルCのガス供給口11cとガス排出口11dをセル保持体6内の第1ガス流路G1に連結するために、ゴムブッシュ20(連結部に相当)を介して連結している。ゴムブッシュ20は弾性を有しており、これを若干圧縮する形で、発電セルCをセル保持面60に取り付けるようにする。これにより、接続箇所において水素ガスが漏れない状態で、流路の連結を行なうことができる。
<セルの接続態様>
次に、4つの発電セルCの接続態様について図7により説明する。図7は、発電セルCをセル保持体6に取り付ける前の展開した状態を示す図である。4つの発電セルCは、接続部材21により電気的に直列に接続される。接続部材21は、薄板の金属板を加工することにより形成される。図2で説明した第1溝部61aの位置に、この接続部材21が配置されるようになっている。このような第1溝部61aを設けることで、接続部材21が接続された状態であっても、各発電セルCをセル保持面60に密着させて保持することができる。
接続部材21と発電セルCの連結は、図7(b)の側面図に示すように、隣接する発電セルC1,C2のカソード側金属板12と、アノード側金属板11とを電気的に連結する。接続部材21と金属板11,12との連結は、21aで示す点を抵抗溶接することで行なわれる。図9(a)は、発電セルC1,C2をセル保持体6に取り付けたときの断面図を示す。
また、各発電セルCの周辺領域D(図7において斜線で示す)には、スクリーン印刷によりエポキシ系の熱硬化性樹脂皮膜を形成している。これにより、接続部材21による不用意な短絡を防止する。例えば、図7(b)において、発電セルC2のアノード側金属板11に連結される接続部材21が、カソード側金属板12に接触することのないように絶縁皮膜を形成する。他の箇所も同様であり、確実な電気的接続を実現する。
上流側の発電セルC1と最下流の発電セルC4には、夫々電極部材22,23が接続されている。これら電極部材22,23も抵抗溶接により、発電セルC1,C4に電気的に接続される。これら電極部材22,23は、基板4に電気的に接続される。
次に、図7(a)によりガス流路の構成について説明する。各発電セルCの第1ガス流路G1も直列に接続される。ガスの流れる方向は矢印で示している。水素ガスの流れにおける最上流側に発電セルC1が位置しており、以下順に下流側へと向かう。
ガス導入部63から水素ガスが導入され、図2において説明した第3ガス流路G3を経由して、最初の発電セルC1のガス供給口11cに導入される。水素ガスは発電セルC1の流路溝13(第1ガス流路G1)を流れ、ガス排出口11dに到達する。発電セルC1のガス排出口11dと隣接する下流側の発電セルC2のガス供給口11cとは、図2において説明した第2ガス流路G2により連結される。以下同様にガス流路が直列に接続されている。
最下流の発電セルC4のガス排出口11dは、第4ガス流路G4を介してガス排出部64に連結される。第4ガス流路G4については、第3ガス流路G3と同様の方法で形成することができる。ガス導入部63から導入された水素ガスは、発電セルC1〜C4によりすべて消費することが好ましいが、仮に余った場合はガス排出部64から排出する。
以上の構成によれば、発電セルC同士のガス流路を接続するために、パイプなどの別部品を用いておらず、セル保持体6の内部に一体的にガス流路が形成されている。これにより、部品点数を削減することができ、パイプを配置するための余分なスペースが必要でなくなる。従って、発電セルC同士を接続するためのガス流路を簡素な構成により実現し、燃料電池1の小型化に寄与することができる。
<燃料ガス発生部の構成>
次に、燃料ガス発生部Bの構成について説明する。図10は、燃料ガス発生部Bを構成する要素を分解した状態で示す概略斜視図である。
図10において、基板4にバルブ24が搭載されている。バルブ24は、水収容部B1内の水を燃料収容部B2へ送り出す機能を有する。バルブ24は、供給パイプ24aと排出パイプ24bを有する。バルブ24は、基板4に搭載される不図示の制御回路によりオン/オフ駆動され、間歇的に水を燃料収容部B2へと送り出す。
水収容部B1は、本体ケース30と、蓋ケース31を備え、蓋ケース31の中央部にはゴム栓32が取り付けられている。本体ケース30の隅部には、貫通穴の形態でガス流路30aが形成される。このガス流路30aには、セル保持体6のガス導入部63が連結される。
本体ケース30の別の隅部30bには、斜面状の切欠30bが形成されており、排出パイプ24bを配置するスペースを確保している。
流路プレート5は、内部に水流路5aが形成されており、排出パイプ24bに圧入等により連結される入口部5bと、燃料収容部B2へと連結するための出口部5cを有する。これにより、水流路を中央へと移動させることができる。また、流路プレート5の隅部には、ガス流路5dが形成されており、水収容部B1のガス流路30aと連結される。
流路プレート5は、内部に水流路5aを形成するために、複数の部材を組み合わせて構成することができる。
燃料収容部B2は、外部本体ケース40と、外部蓋ケース44を備えている。外部本体ケース40の中央部には、水導入口40aが形成され、流路プレート5の出口部5cと連結される。また、外部本体ケース40の隅部にはガス排出口40bが形成されており、流路プレート5のガス流路5dに連結される。
上記説明した水収容部B1、流路プレート5、燃料収容部B2は適宜の方法、例えば、ネジ止め、接着等により一体化したユニットとして構成される。次に、個々の構成について詳細に説明する。
<水収容部の構成>
図11に示す分解斜視図により、水収容部の構成を説明する。本体ケース30は、全体的に直方体形状を有しており、内部に円筒形の空間部30cを有する。空間部30cの底部には、コイルスプリング35を位置決めするための位置決め凹部30dが形成される。コイルスプリング35は、スライド板33と空間部30cの底部との間に配置され、スライド板33を上方に付勢する。スライド板33は、ポリアセタールのような合成樹脂により成型され、本体ケース30はABSなどにより成型される。これにより、スライド板33の上下移動をスムーズに行なうことができる。
水収容ケース34は、外面に蛇腹部34aが形成されて、バネ性が持たせられる。水収容ケース34には、所定量の水が収容される。水収容ケース34の一方の端部には位置決め突起34bが形成され、スライド板3の位置決めスリット33aに挿入される。水収容ケース34の他方の端部には、円筒形の突出部34cが形成され、外部蓋ケース31の中央部に形成された穴31aに挿入されると共に、ゴム栓32が取り付けられる。
外部蓋体ケース31には、ネジ止め用の穴31bが形成されており、不図示のネジにより、本体ケース30に形成された下穴30eを利用して、外部蓋体ケース31が本体ケース30にネジ締結される。
ゴム栓32には、上下2箇所にフランジ32aが形成されており、図13に示すように、水収容ケース34に対して抜けないように結合させることができる。ゴム栓32には、穴は形成されていないので、図13に示す状態では、水収容ケース34内の水は外部に排出されない状態であるが、図10に示すように結合すると、バルブ24の供給パイプ24aをゴム栓32に突き刺すことができ、バルブ24を介して水の排出を行うことが可能になる。
外部蓋体ケース31の裏面側には突出部31cが形成され、円筒形の空間部30cに嵌合させることができる。図13に示すように組立を行なうと、水収容ケース34内の水には、コイルスプリング32に付勢力が常時作用する状態にセッティングされる。
なお、後述する水素発生剤と反応させる反応液としては、上記の水の他、水との反応を促進させるために、酸性分を溶解した水溶液、アルカリ分を溶解した水溶液などが使用できる。本発明では、保存性、コストなどの観点から、好ましくは水が使用できる。
<燃料収容部の構成>
図12は、燃料収容部B2の構成を示す分解斜視図である。図12は、分かりやすく構成を説明するため、上下方向を逆にして図示している。
外部本体ケース40の内部には、更に第1内部本体ケース41と第2内部本体ケース42が収容される。図13に示すように、外部本体ケース40の内部中央には、位置決め凹部40dが形成されており、その中央部に水導入口40aが位置している。第1内部本体ケース41の底面41aの中央部には、位置決め凸部41bが形成され、その中央部に水導入口41cが形成される。第1内部本体ケース41を収容する時に、位置決め凹部40dに位置決め凸部41bが嵌入され、第1内部本体ケース41が中央部に位置決めされた状態で組み込まれる。
また、外部本体ケース40の内部底面には、4隅に小さな突起40cが形成されており、この突起40cに第1内部本体ケース41の底面41aが当接した状態で組みこまれる。その結果、第1内部本体ケース41の底面側に僅かの隙間が形成された状態になる。
図13に示すように、第1内部本体ケース41には、空間の約半分を占有する綿47(脱脂綿)と、残りの約半分を占有する燃料である水素発生剤46が収容される。また、水導入口41cの近傍にも小さな綿45が収容される。かかる綿47を設けることで、水が局所的に溜まることを防止する。また、燃料は粉末の形態で収容され、水素発生剤46が第1内部本体ケース41から抜け出しにくくする。
また、水導入口41cの近傍に綿45を配置することで、一度導入された水が逆流しないように防止する。
第1内部本体ケース41の上に第2内部本体ケース42が取り付けられる。第2内部本体ケース42の底面には位置決め凸部42aが形成されており、第1内部本体ケース41の開口部側に挿入されることで位置決め結合される。
<水素ガス発生剤>
次に、水素発生剤46について説明するが、水素化マグネシウムの粒子を含有する水素発生剤であり、必要に応じて、触媒成分、アルミニウム等の金属、アルカリ性無機化合物、凝集抑制粒子を更に含有することができる。
水素化マグネシウムは、水との反応によって水素ガスを発生させるが、次のような反応が生じると考えられる。
MgH2+2H2O → Mg(OH)2+2H2
この反応は発熱反応であり、系の保温を行うことによって、昇温した状態で反応を進めることができる。
水素化マグネシウムは、その粒子に、圧縮力及び/又は剪断力を生じさせる方法などにより、反応性を向上させることができる。具体的には、ボールミル、ローラミル、高速回転ミル、媒体撹拌ミル、気流式粉砕機、圧密剪断ミル等の粉砕装置を用いる方法、各種のプレス装置を用いる方法などが挙げられる。なかでも、粉砕装置を用いる方法が好ましく、特にボールミルを用いる方法が好ましい。
ボールミルを用いる方法は、水素化マグネシウムの粒子のサイズに応じて、均一な圧縮力及び/又は剪断力を生じさせることができる点で好ましい。水素化マグネシウムの平均粒子径は、反応率を高める観点から、平均粒子径が0.1〜100μmが好ましく、1〜50μmがより好ましく、5〜20μmが更に好ましい。
水素化マグネシウムの粒子の含有量は、全水素発生剤中に、80重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、95重量%以上であることが更に好ましい。
必要に応じて含有される金属としては、アルミニウム粒子、鉄粒子、マグネシウム粒子など、水と反応して水素を発生させる金属が好ましい。なかでも、アルミニウム粒子が好ましい。また、ニッケル、バナジウム、マンガン、チタン、銅、銀、亜鉛、ジルコニウム、コバルト、クロム、カルシウム、これらの合金等の金属触媒を添加することも可能である。
アルミニウム等の金属を併用する場合、反応性を高める上で、微粒子状のものが好ましく、平均粒子径が100μm以下のものが好ましく、平均粒子径1〜50μmがより好ましく、平均粒子径1〜10μmがより好ましい。平均粒子径が1μm未満であると、製造が困難となり、また2次凝集し、シンターリングによって、昇温時に表面積の低下が著しくみられ、水素発生が低下する傾向がある。
アルミニウム粒子としては、アトマイズ法で製造したものが好ましい。また、表面の酸化被膜を除去処理したものが好ましい。このようなアルミニウム粒子としては、各種市販のものが使用可能である。
金属の含有量は、全水素発生剤中に、1〜10重量%であることが好ましい。金属の含有量が10重量%を超えると、全体の反応速度が低下すると共に、原料重量当たりの水素発生量が少なくなる傾向がある。
アルカリ性無機化合物を含有する場合、アルカリ性無機化合物としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩などが挙げられる。アルカリ性無機化合物としては、酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、ほう砂、炭酸ナトリウム、及び炭酸カルシウムからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましく、特に酸化カルシウムが好ましい。
アルカリ性無機化合物の含有量は、全水素発生剤中に、0.1〜10重量%であり、好ましくは0.2〜5重量%であり、より好ましくは0.5〜3重量%である。
凝集抑制粒子を含有する場合、凝集抑制粒子としては、水素発生反応に不活性な微粒子などを用いることができるが、凝集抑制粒子が、カーボンブラック、シリカ、酸化セリウム、酸化アルミニウム、及び酸化チタンからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。なかでも、凝集抑制効果を高める上で、特にカーボンブラックが好ましい。
凝集抑制粒子の含有量は、全水素発生剤中に、0.1〜30重量%が好ましく、1〜20重量%がより好ましい。凝集抑制粒子の含有量が、30重量%を超えると、相対的に水素化マグネシウムなどの含有量が少なくなり、水素ガスの総発生量が不十分となる傾向がある。
カーボンブラックとしては、例えばチャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファネスブラックなど、何れのものも使用することもできる。カーボンブラックとしては、親水化処理したものなども存在するが、本発明では凝集抑制効果を高める上で、未処理の疎水性のカーボンブラックが好ましく用いられる。また、これらを用いて、酸化カルシウムを担持することも可能である。カーボンブラックの一次平均粒径は、0.01〜0.5μmが好ましい。
本発明における水素発生剤46は、粉末状の混合物でもよいが、加圧プレスにより圧密化させて、ペレットやタブレットなどの圧密化物としてもよい。このような圧密化を行うことにより、単位体積当たりの水素発生量を増加させることができる。
<第2内部本体ケースの構成>
第2内部本体ケース42には、不純物としてのアンモニアを除去するための除去剤が充填される。第2内部本体ケース42には、連通孔42bを介して、第1内部本体ケース41にて発生した水素ガスが導入される。発生した水素ガスには、微量のアンモニアが含まれており、これを除去した形で発電セルCに供給する必要がある。このアンモニアの発生原理などについては後述する。
上記のアンモニア除去剤を第2内部本体ケース42内に配置し、その中を水素ガスを通過させることでアンモニアを除去するようにしている。また、できるだけ除去率を高めるために、第2内部本体ケース42内で水素ガスの流路長さを稼ぐ工夫を行なっている。この点を以下説明する。
図12、図14などに示すように、左右に延びる3本の第1仕切り壁42cが設けられている。第1仕切り壁42cは、高さは第2内部本体ケース42の高さと同一であり、その上端面は、後述の内部蓋ケース43の裏面に密着する。第1仕切り壁42cのうち、2本は左側のケース本体の内壁面から延びており、その右端と右側のケース本体の内壁面との間には所定の隙間が形成される。
また、3本の第1仕切り壁42cのうち、真ん中にある1本は、第2内部本体ケース42の右側の内壁面から延びており、その左端と左側のケース本体の内壁面との間には所定の隙間が形成される。
また、上下に延びる2本の第2仕切り壁42dが設けられており、前述の第1仕切り壁42cと直交するように配置される。第2仕切り壁42dは、その上端面は第1仕切り壁42cよりも低くなるように設定されており、その上端面と第2内部蓋ケース43の裏面との間には隙間が形成される。
次に、第2内部蓋ケース43について説明する。第2内部蓋ケース43の裏面には、4本の第3仕切り壁43aが一体的に植設されており、図14に示す破線位置に挿入される。図13にも示すように、第3仕切り壁43aの先端と、第2内部本体ケース42の底面との間には隙間が形成される。
このように各仕切り壁を構成することで、連通孔42bから導入された水素ガスは、図12、図13の矢印にも示すように、上下方向及び左右方向に蛇行しながら進行するガス流路が形成される。これにより、ガス流路をできるだけ長くとることができ、アンモニア除去の効果を高めることができる。
<アンモニア除去剤について>
上記のような水素発生剤46によって、水素組成が略100%(水分は除く)の水素ガスを発生させることができるが、この水素ガス中には、不純物である微量アンモニアが含まれる場合がある。このアンモニアは、マグネシウムを用いて水素発生剤を製造する際に、空気中の窒素と反応して窒素化合物(窒化マグネシウム等)が生成し、これが水との反応により生成すると考えられる。その際の次の反応が生じると考えられる。
Mg3N2 + 3H2O → 3Mg(OH)2 + 2NH3
従って、本発明は、このようなアンモニアが水素ガス中に含まれている場合に有効になり、即ち水素発生剤11に使用される水素化マグネシウムが窒化マグネシウム等の窒素化合物を含有する場合に、特に有効となる。
アンモニア除去剤としては、例えば、水素中のアンモニアを吸着除去する吸着剤(吸着・分解や反応吸着などの化学吸着を含む)、アンモニアを溶解除去する吸収剤、アンモニアを反応により除去する反応剤、アンモニアを分解(加熱分解・触媒反応分解等)により除去する分解手段、などが挙げられるが、アンモニアを物理吸着又は化学吸着により除去する吸着剤を備えることが好ましい。
中でも吸着剤が、物理吸着又は化学吸着によりアンモニアを除去するものであることがより好ましく、固体酸、活性炭(固体酸に相当するものを除く)、ゼオライト(固体酸に相当するものを除く)、及びモレキュラーシーブからなる群から選ばれる1種以上であることが更に好ましい。中でも、アンモニアの吸着除去能力やより高温で吸着可能な観点から、固体酸を用いることが好ましい。
固体酸としては、固体酸自体が粒状であるものや、粒状体に固体酸や液体酸を担持させたものなどがあるが、活性炭に金属塩を担持したものがコストや製造性などの観点からより好ましい。金属塩としては、硫酸塩、リン酸塩、塩化物塩、硝酸塩が挙げられ、塩を形成する金属としては、金属塩として酸性を示す金属が好適に使用できる。
活性炭(固体酸に相当するものも含む)としては、GW48/100、GW−H48/100、GG10/20、2GG、GLC10/32、2GS、GW10/32、GW20/40、KLY10/32、KW10/32、KW20/42(以上、クラレケミカル(株)製)、SWWB剤(アルカリ用)、WB剤、S剤(酸用)(以上、アニコジャパン(株)製)、4T−B、4T−C、4G−H、4SA、2GS、GW20/4042(以上、クラレケミカル(株)製)などが挙げられ、好ましくは4T−B、SWWB剤(アルカリ用)、WB剤である。
ゼオライトとしては、BX、HISIV、R−3(以上、ユニオン昭和(株)製)などが挙げられ、好ましくはBXである。
モレキュラーシーブとしては、ゼオラムA−3、ゼオラムA−4(以上、東ソー(株)製)などが挙げられ、好ましくはゼオラムA−4である。
反応剤としては、主に酸性の溶液などが使用でき、NaClO水溶液、超電水原液、さとうきび希釈液、スメルナーク希釈液、水道水、ムッシュニオワンなどが挙げられる。
具体的には、活性炭又は固体酸系の活性炭を使用する場合、水素化マグネシウム100重量部あたり、1〜100重量部の活性炭を使用するのが好ましく、10〜30重量部の活性炭を使用するのがより好ましい。
また、ゼオライトを使用する場合、水素化マグネシウム100重量部あたり、1〜100重量部の活性炭を使用するのが好ましく、40〜60重量部の活性炭を使用するのがより好ましい。
モレキュラーシーブと使用する場合、水素化マグネシウム100重量部あたり、100重量部あたり、1〜100重量部の活性炭を使用するのが好ましく、10〜30重量部の活性炭を使用するのがより好ましい。
<そのほかの構成>
内部蓋ケース43の裏面には、枠形状の位置決め突起43bが形成されており、第2内部本体ケース42に挿入することで内部蓋ケース43の位置決めがされる。
また、内部蓋ケース43の表面側には、リング状の位置決め突起43cが形成される。更に、内部蓋ケース43の隅部にはガス排出口43dが形成されており、第2内部本体ケース42内の蛇行経路を通過してきた水素ガスがここから排出される。
外部蓋体ケース44の裏面側には枠形状の位置決め突起44aが形成され、外部本体ケース40に挿入することで外部蓋体ケース44の位置決めがされる。また、外部蓋体ケース44の裏面側中央には、円筒形の位置決め凸部44bが形成されており、内部蓋ケース43の位置決め突起43cに嵌合するように構成される。この構成により、第1内部本体ケース41及び第2内部本体ケース42を中央部に位置決めすることができる。
また、図13の断面図に図示するように、外部本体ケース40の内壁面と、内部本体ケース41,42の外壁面との間には、僅かの隙間が形成された状態で組み立てられる。この隙間は、第2内部本体ケース42から排出された水素ガスをガス排出口40bへ導くための流路として機能する。上記のように内部本体ケース41,42を中央部に位置決めすることで、内部本体ケース41,42の外壁面全周に均等に隙間を形成することができ、水素ガスを確実にガス排出口40bへと導くことができる。更に、突起40cにより、第1内部本体ケース41の底面にも隙間が形成されるので、この隙間を利用して水素ガスを確実にガス排出口40bへと導くことができる。
また、第1内部本体ケース41の内部では化学反応により水素ガスを発生するものであり、熱の発生も伴う。かかる場合、外部本体ケース40と内部本体ケース41,42の間に水素ガスの流路を形成することで、断熱効果を持たせることもできる。これにより、燃料電池1を手で触れた時に熱さを感じることを抑制することができる。
<回路構成>
次に、燃料電池1を制御する回路構成について図15により簡単に説明する。各発電セルCによる出力電圧は、DC−DCコンバータ50により所定の電圧にまで昇圧される。更に、コンバータ50の下流側に付加される回路部51を介して、電源供給端子3から外部機器、携帯電話などに電源供給がされる。
回路部51には、安定化回路51aなどが備えられており、適切な出力電圧や出力電流を供給できるように制御がなされる。また、制御部51bは、バルブ24に対する駆動制御を行なう。バルブ24を間歇的にオン/オフ駆動することで、定量の水を燃料ガス発生部Bへと供給する。バルブ24の駆動電源としては、基本的には発電セルCによる出力電圧により駆動することができるが、初期の立ち上げ時には発電セルCにより駆動ができない。
そこで外部電源としてのボタン電池52を備えており、初期駆動を行なわせる。初期の駆動が終了した後は、バルブ24の駆動はボタン電池52から発電セルCへと切換制御される。
図15に示すコンバータ50、回路部51、ボタン電池52などは、セル保持体6の枠型形状の内部に収容される。
<作用>
次に、本実施形態にかかる燃料電池1の作用について説明する。燃料電池1を駆動するためには、燃料ガス発生部Bへ水を供給する必要がある。水の供給はバルブ24を駆動することで行なわれる。バルブ24を駆動するための電源は発電セルCから得られるものであるが、一番最初は発電セルCが駆動していないので、外部電源であるボタン電池52により行なう。初期動作時におけるバルブ24の開時間は例えば30msecである。これにより、所定量の水が燃料ガス発生部Bへ供給され、水素ガスが発生する。水素ガスは、各発電セルCへ供給され発電することで電気出力が得られる。以後は、この電気出力を利用してバルブ24の駆動を行なうことができる。
次に、水の供給経路と水素ガスの供給経路について説明する。バルブ24をONにして開状態にすると、水収容容器34に収容されている水の所定量が、バルブ24の排出パイプ23bから排出される。水収容容器34内の水には、コイルスプリング35により常時押圧力が作用しており、この力により水収容容器34内の水を押し出そうとしている。従って、バルブ24を開くことで、所定量の水が排出パイプ23bから排出される。
排出パイプ23bの先端は、流路プレート5の入口部5bを介して水流路5aに導かれ、出口部5cから排出される。この流路プレート5により、水の排出口を中央部に移動させることができる。
更に、水は水導入口40a及び水導入口41cを介して、第1内部本体ケース41内に導入される。水が導入されると、水素発生剤46との反応により水素ガスが発生する。発生した水素ガスは穴42aを介して、第2内部本体ケース42へと導入される。また、綿47を設けていることで水素発生剤46が不用意に第2内部本体ケース42内へ入り込むことを防止している。更に、水と水素発生剤46の反応により反応物が生成し体積が膨張するが、その場合は、綿47が圧縮されることで、体積の膨張を吸収することができる。
第2内部本体ケース42に導入された水素ガスは、内部に形成されたガス流路を蛇行しながら進行し(図12参照)、水素ガスに含まれる微量のアンモニアが除去される。ガス流路の最終端に位置する排出口43dから排出された水素ガスは、外部本体ケース40の内壁面と、内部本体ケース41,42の外壁面の間に形成される隙間を通って、外部本体ケース40の排出口40bから排出される。
さらに、流路プレート5内のガス流路5dを経由して、更に、水収容部B1のガス流路30aを通って、セル保持体6に形成されたガス導入部63へと導かれる。このガス導入部63へ導かれた水素ガスは、セル保持体6の内部に形成された第3ガス流路G3を介して、図7に示す最上流の発電セルC1へと供給される。水素ガスは、発電セルC1を通過した後、再び、セル保持体6の内部の第2ガス流路G2を経由して、次の発電セルC2へと供給される。以下、順番に、発電セルC3,C4へと供給され、余った水素ガスは、第4ガス流路G4を経由してガス排出部64から排出される。
<別実施形態>
本発明に係る燃料電池は、電子機器を駆動するための主電源としても使用することができるが、電子機器に内蔵される二次電池を充電するための充電装置としても使用することができる。例えば、携帯電話等の携帯機器に内蔵されるリチウム電池等の二次電池を充電するための充電装置として使用することができる。
第1内部本体ケース41内においては水素ガスを発生させる化学反応を行なわせるので内部の圧力が高くなる。この場合、所定以上に圧力が高まると危険であるので圧力を逃がす機構を設けておくことが好ましい。例えば、安全弁を設けておくことが好ましい。安全弁としては、ゴムブッシュにスリットを形成した簡素な構成でもよい。この場合、正常であればスリットは閉鎖しているが、圧力が高まるとスリットから水素ガスが抜けることができる。また、スリットはゴムの弾性力により閉鎖する方向に付勢されている。
セル保持体6に保持させるべき発電セルCの個数については、適宜変更することが可能である。例えば、長さを2倍にすれば8個の発電セルCを保持させることができる。
セル保持体6の内部にガス流路G2,G3,G4を形成する場合、ドリルを用いて加工することで1部品でセル保持体6を形成することができるが、複数部品を組み合わせてセル保持体6を形成してもよい。この場合、部品を組み立てることでガス流路に相当する部分が形成されるようにされる。